(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどに搭載する撮像素子として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ(以下、CISと称する)が知られている。CISは、その多画素化や光学サイズの縮小化などにより、画素の縮小化と高密度化が進められている。
【0003】
しかしながら、画素の縮小化と高密度化が進められたことにより、単位画素あたりの感度が減少してしまい、ノイズ(Noise)に対する信号(Signal)の比であるS/Nが悪化して画質劣化が生じてしまうことがあった。また、隣接画素間の距離が短くなったことにより、本来ある特定の波長領域(例えば、Green)の光のみを受光すべき画素が、受光すべきではない波長領域(例えば、RedまたはBlue)の光を受光してしまうことにより混色が発生してしまい、色再現性が劣化しまうことがあった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するものとして、隣接画素間に格子状の遮光性材料を設けた裏面照射型CISが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そのような裏面照射型CISでは、配線層が形成されている表面とは反対側の裏面に入射光が照射され、その入射光が配線層に阻害されることなくSi(シリコン)基板のPD(Photo Diode)領域に到達できる。したがって、単位画素あたりの感度の減少を解決できる。
【0006】
また、隣接する画素間に設けた格子状の遮光性材料により、斜め方向から入射した光が反射され、本来入射すべき画素以外の画素に入射してしまうことが抑制できる。したがって、混色を抑制して色再現性の劣化を解決できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を実施するための最良の形態(以下、実施の形態と称する)について説明が、その前に、隣接画素間に格子状の遮光性材料を設けた裏面照射型CISに対して本発明者らが発見した問題点について説明する。
【0023】
図1は、隣接画素間に格子状の遮光性材料を設けた裏面照射型CISを光の入射側から見た図を示している。
図2は、
図1に示された裏面照射型CISの、
図1に示す線分P1,P2と、線分P3,P4における断面図を示している。
【0024】
該裏面照射型CIS10は、光電変換を行なうPD(photo Diode)領域を含むSi(シリコン)基板13上の各画素12の間に格子状のトレンチ(溝)を形成し、そのトレンチに遮光性材料11を充填したものである。
【0025】
裏面照射型CIS10においては、隣接する画素間に設けた格子状の遮光性材料11により、混色が抑制されて色再現性の劣化を解決できる。しかしながら、トレンチを格子状に設けたことにより、垂直方向のトレンチと水平方向のトレンチとが交差する箇所(以下、トレンチ交差部と称する)が出現し、トレンチ交差部において以下の不都合が生じ得る。
【0026】
すなわち、トレンチ交差部に充填された遮光性材料11により、トレンチ交差部の周囲のSi基板13に応力集中が発生して、画像信号に対するノイズ源となってしまうことがある。
【0027】
また、
図2Aに示されるように、トレンチ交差部は、比較的深くエッチング(Etching)され易いので、そこに欠陥が生じて画像信号に対するノイズ源となってしまうことがある。
【0028】
さらに、トレンチ交差部は、トレンチが交差していない箇所に比較して、遮光性材料11を充填する際にVoidが発生し易く、トレンチ全体に遮光性材料11を均一に充填することの妨げとなり易いという側面もある。
【0029】
またさらに、
図2Bに示されるように、格子状のトレンチに遮光性材料11を充填するに際してはSi基板13上に比較的厚い絶縁膜(遮光性材料膜)15が形成されてしまい、この絶縁膜15が、光が斜め方向から入射した場合における混色特性を悪化させてしまう。
【0030】
なお、Si基板13上の絶縁膜15は、CMP(化学機械研磨)処理により薄膜化することが可能ではある。しかしながら、CMP処理を実施した場合には工数増、コスト高となるので、量産には適していない。
【0031】
本実施形態は、上記問題点を裏面照射型CISの生産工程にCMP処理を適用することなく解決するためのものである。
【0032】
以下、本開示を実施するための最良の形態(以下、実施の形態と称する)について、図面を参照して説明する。
【0033】
<1.実施の形態>
[裏面照射型CISの第1の構成例]
図3は、本開示の実施の形態である裏面照射型CIS30を光の入射側から見た図であり、同
図AはSi上層43を、同
図BはSi基板44を示している。なお、裏面照射型CIS30は、光の入射側から順に、オンチップレンズ41、カラーフィルタ42、Si上層43、Si基板44、および配線層45(いずれも
図4)の6層構造を有する。
【0034】
なお、
図3における白色正方形は画素の位置を示しており、そこに記述されたR,GまたはBは画素が受光する光の波長領域を示している。また、R,G,Bの配置は、本実施の形態においてはベイヤ配列を採用しているが、これに限るものではない。また3原色はR,G,Bに限るものではなく、さらに例えばW(白色)などの他の色を追加してもよい。以降の図面についても同様である。
【0035】
同
図Aに示されるように、Si上層43(Si基板44の上の層)には、各画素の間に格子状のSi上層
遮光性
材料31が設けられている。
【0036】
同
図Bに示されるように、Si基板44には、隣接する各画素33の間に、トレンチ交差部が生じないように縦横にトレンチ(溝)が形成され、そこに充填された遮光性材料から成るSi基板中遮光性材料32が設けられている。
【0037】
Si上層
遮光性
材料31およびSi基板中遮光性材料32は、例えば、酸化シリコン、酸化チタン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの絶縁材料の他、タングステン、アルミニウム、チタンナイトライド、チタン、銅などの金属材料でもよい。
【0038】
図4、
図5、および
図6は、
図3の裏面照射型CIS30の、同
図Bに示す線分P11,P12、線分P21,P22、または線分P31,P32における断面図を示している。
【0039】
上述したように、裏面照射型CIS30は、光の入射側から順に、オンチップレンズ41、カラーフィルタ42、Si上層43、Si基板44、および配線層45の6層構造を有する。
【0040】
オンチップレンズ41は、入射光をSi基板44に含まれる光電変換部に集光させる。カラーフィルタ42は、特定の波長領域の光のみを透過させる。Si上層43にはSi上層
遮光性
材料31が設けられている。Si基板44は、P型拡散層34およびN型拡散層35からなるPD(Photo Diode)領域を含む。配線層45は、PD領域により生成される電荷を電気信号として後段に出力する。
【0041】
図4乃至
図6から明らかなように、裏面照射型CIS30は、Si基板44においてトレンチ交差部が生じないようにトレンチを形成してSi基板中遮光性材料32を設けたので、従来の裏面照射型CIS10におけるトレンチ交差部に起因する問題の発生を防止できる。
【0042】
図示は省略するが、Si基板44に形成するエッジは、一部だけまたは全体的にSi基板44を貫通するようにしてもよい。
【0043】
[第1の変形例]
図7は、Si基板44に形成するトレンチの端の形状の変形例を示している。すなわち、
図3においては、トレンチの端が先鋭状に形成されていたが、例えば
図7に示されるように、トレンチの端を直線状に形成してもよい。また、図示は省略するが、トレンチの端を円弧状としたり、凹上に形成してもよい。
【0044】
[第2の変形例]
図8は、画素(Si基板開口部)の形状の変形例を示している。すなわち、
図3においては、画素(Si基板開口部)33の形状を正方形としていたが、例えば
図8に示されるように、画素(Si基板開口部)33の形状を円形としてもよい。また、図示は省略するが、菱形や多角形であってもよい。画素(Si基板開口部)33の形状を円形や多角形にすることにより斜め部の遮光能力を向上させることができる。
【0045】
[第3の変形例]
図9は、Si上層43のSi上層遮光性
材料31の形状の変形例を示している。すなわち、
図3においては、Si上層遮光性
材料31を格子状としていたが、例えば
図9に示されるように、Si基板中遮光性
材料32が設けられていない位置(すなわち、トレンチ交差部)にだけSi上層遮光性
材料31を設けるようにしてもよい。この場合、Si基板開口部33の面積を広げることになるので、FD領域の感度上昇を期待することができる。なお、図示は省略するが、Si上層遮光性
材料31の幅は、Si基板中遮光性
材料32の幅と同じであったり、Si基板中遮光性
材料32の幅よりも細くてもよい。また、太さを部分的に変更してもよい。
【0046】
[第4の変形例]
図10は、電荷固定膜51を追加した変形例を示している。すなわち、Si基板中遮光性
料材32の周囲とSi基板44の裏面(図における上側)に、負の固定電荷をもつ電荷固定膜51を形成してもよい。この場合、電荷固定膜51に接するSi界面に反転層が形成され、反転層中のホールが界面で発生し得る暗電流と再結合するので、暗電流の影響を抑制することができる。
【0047】
[混色特性の改善について]
次に、混色特性の改善について言及する。上述したように、
図3に示された裏面照射型CIS30によれば、トレンチ交差部がノイズ源(白点暗電流の発生源)となってしまうことを防止できる。
【0048】
しかしながら、トレンチが形成されていない箇所が存在することにより、光電変換によって得られた電子がそこを通って容易に隣接する画素間を移動してしまい、トレンチによる混色抑制の効果を低下させてしまう。図面を参照して具体的に説明する。
【0049】
図11は、光の入射角に対する混色特性を示しており、横軸は光の入射角を示している。縦軸は、緑色光(G)を各入射角で入射した時の赤色(R)画素の出力と緑色(G)画素の出力との比から、緑色光(G)を入射角0度で入射した時の赤色(R)画素の出力と緑色(G)画素の出力との比を引いた値を示している。
【0050】
同図中の曲線L1は、画素間にトレンチが設けられている裏面照射型CISの混色特性を示している。同図中の曲線L2は、画素間に格子状のトレンチが設けられた裏面照射型CISの混色特性を示している。ただし、トレンチに充填された遮光性材料によってSi基板上に形成される絶縁膜(遮光性材料膜)はCMP(化学機械研磨)処理により薄膜化されているものとする。同図中の曲線L3は、
図3に示された裏面照射型CIS30の混色特性を示している。
【0051】
同図においては、縦軸の値が大きいほど、混色特性が悪化していることを表すので、換言すれば、U字型の曲線L1乃至L
3の上方の開き方が大きいほど、混色特性が良いことになる。
【0052】
したがって、混色特性については、
図3に示された裏面照射型CIS30は、画素間に格子状のトレンチが設けられた裏面照射型CISよりも悪化していることが分かる。そこで、以降においては、トレンチ交差部を設けることなく、混色特性についても改善した変形例について説明する。
【0053】
[第5の変形例]
図12は、画素間に存在する格子状の領域に、垂直方向に長いトレンチと、水平方向に長いトレンチとを交互に形成した変形例を示している。同
図Aはトレンチの端の形状が先鋭状である場合、同
図Bはトレンチの端の形状が直線状である場合を示している。
【0054】
同図いずれの場合においてもトレンチ交差部は存在しないので、トレンチ交差部に起因する問題の発生を防止できる。また、
図3の場合に比較して、トレンチを形成していない領域が少なくなるので、混色特性が
図3の場合に比較して改善される。さらに、
図3の場合に比較して、トレンチ長を長くしているので、その形成が容易である、したがって、裏面照射型CIS30を全体的に微細化する場合に適している。
【0055】
図13は、
図11に示された混色特性に、第5の変形例に対応する曲線L4を追加したものである。
図13から明らかなように、第5の変形例は、
図3に示された裏面照射型CIS30よりも、混色特性が改善したものとなる。
【0056】
[第6の変形例]
図14は、画素間に存在する格子状の領域の水平方向または垂直方向の一方に連続的なトレンチを形成し、他方に断続的なトレンチを形成した変形例を示している。同
図Aは水平方向に連続したトレンチを形成した場合、同
図Bは垂直方向に連続したトレンチを形成した場合を示している。なお、同図のように、水平方向と垂直方向のトレンチの長さが異なる場合、トレンチの深さが異なってしまうことが起こり得るが、その場合、トレンチの幅を調整すれば、水平方向と垂直方向のトレンチの深さを同一にすることができる。
【0057】
同図いずれの場合においてもトレンチ交差部は存在しないので、トレンチ交差部に起因する問題の発生を防止できる。また、
図3の場合に比較して、トレンチを形成していない領域が少なくなるので、混色特性が
図3の場合に比較して改善される。さらに、同
図Aの場合には、
図3の場合に比較して、上下(垂直)方向に隣接した画素間での遮光性能を向上させることができる。同
図Bの場合には、
図3の場合に比較して、左右(水平)方向に隣接した画素間での遮光性能を向上させることができる。
【0058】
[第7の変形例]
図15は、幅が一部分で異なり、対角端においてその体積が増加しないようにトレンチが形成されている変形例を示している。
【0059】
[第8の変形例]
図16は、対角方向の画角端において、交差するトレンチが交差角(90度)以下の角度を有して接続されるように形成されている変形例を示している。
【0060】
[第9の変形例]
図17は、画角方向によりトレンチの分
断されている箇所を変化させ、光が傾く方向に対してトレンチの分断されていない箇所を多く設けるようにした変形例を示している。
【0061】
[第10の変形例]
図18は、トレンチの分断箇所の対
称性を1画素毎に設定せず、特定の画素(波長が最も長いBの画素、または波長が最も短いRの画素)についてはトレンチで囲まれた状態とした変形例を示している。
【0062】
[その他の変形例]
本実施の形態である裏面照射型CIS30は、カラーの画像信号を出力するために、カラーフィルタ42を設けて3原色の配置にベイヤ配列を採用したが、ストライプ配列を採用するようにしてもよい。また、モノクロの画像信号を出力するのであれば、カラーフィルタ42を省略するようにしてもよい。
【0063】
本実施の形態である裏面照射型CIS30においては、Si基板44に形成したトレンチに遮光性材料を充填するようにしたが、遮光性材料を充填せず中空のままにしてもよい。
【0064】
なお、本実施の形態である裏面照射型CIS30は、例えば、ディジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどのいわゆるカメラのみならず、静止画や動画の撮影機能を有するスマートフォン、携帯電話、各種のパーソナルコンピュータなどに搭載することが可能である。
【0065】
なお、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。