特許第6168336号(P6168336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168336
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】鋼管杭の埋込み方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/72 20060101AFI20170713BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20170713BHJP
   E02D 7/28 20060101ALI20170713BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   E02D5/72
   E02D5/28
   E02D7/28
   E02D13/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-2139(P2013-2139)
(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-134007(P2014-134007A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康司
(72)【発明者】
【氏名】稲川 雄宣
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−142036(JP,U)
【文献】 実開昭62−120531(JP,U)
【文献】 特開昭62−037415(JP,A)
【文献】 特開2002−348862(JP,A)
【文献】 特開2004−270357(JP,A)
【文献】 特開昭48−025347(JP,A)
【文献】 特開平10−299005(JP,A)
【文献】 特開2006−348510(JP,A)
【文献】 特開昭48−037905(JP,A)
【文献】 特開2001−059219(JP,A)
【文献】 米国特許第04293242(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22−5/80,7/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤又は地盤内の改良体に形成された掘削孔内に鋼管杭を建て込むとともに、該鋼管杭と前記掘削孔の底面及び孔壁との間にグラウト材を充填する鋼管杭の埋込み方法において、
前記鋼管杭を建て込む際、該鋼管杭の先端にスペーサーを予め取り付けることで、該スペーサーを前記鋼管杭の先端と前記掘削孔の底面との間に介在させるとともに、前記スペーサーから前記鋼管杭と反対の側であって該鋼管杭の材軸方向に延びる貫入手段を該スペーサー又は前記鋼管杭の先端に取り付けたことを特徴とする鋼管杭の埋込み方法。
【請求項2】
前記グラウト材の充填を前記鋼管杭の建込み後に行う請求項1記載の鋼管杭の埋込み方法。
【請求項3】
前記掘削孔を斜め下方に向けて前記地盤に形成した請求項1又は請求項2記載の鋼管杭の埋込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として杭径が小さな鋼管杭を地盤に埋め込む際に適用される鋼管杭の埋込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を支持するための杭基礎は、支持機構の観点からは、良質な支持層に下端を貫入させることで支持力を確保する支持杭と、良質な支持層がない場合に周辺地盤との摩擦によって支持力を確保する摩擦杭とに大別されるが、施工方法の観点からは、打込み杭、埋込み杭、場所打ち杭等に分類されるとともに、杭径の観点からは、φ300mm以下の埋込み杭や打込み杭を用いたマイクロパイル工法と呼ばれる杭工法が知られている。
【0003】
マイクロパイル工法は、比較的小規模な施工機械で実施が可能であるため、狭隘な場所、空頭制限がある場所、山間部、傾斜地その他十分な施工スペースを確保できない場合に有効な手段として実績がある。
【0004】
マイクロパイル工法において鋼管杭を埋込み杭として用いる場合には、まず、地盤に掘削孔を先行形成し、次いで、該掘削孔内に鋼管杭を建て込んだ後、該鋼管杭の下方及び周囲にグラウト材を充填する。
【0005】
このようにすると、充填されたグラウト材は、鋼管杭の下方で固化して該鋼管杭を根固めし、鋼管杭の軸力を分散された状態で地盤に伝達するとともに、鋼管杭の周囲で固化して該鋼管杭と周辺地盤との間で水平力や鋼管杭の周面に沿った摩擦力を伝達する役目を果たし、かくして鋼管杭の支持力が十分に確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−81770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、建て込まれた鋼管杭が自重で沈下したり、孔壁保護のためのケーシングを掘削孔から引き抜く際にその反動で鋼管杭が沈下したりする場合があり、かかる場合においては、鋼管杭の下端側においてグラウト材の充填空間が十分に確保されなくなり、根固めによる荷重分散作用が発揮されることなく、鋼管杭からの軸力の多くが根固めを介さずに地盤に直接伝達される結果を招き、鉛直方向の支持力が不足するという問題を生じていた。
【0008】
また、掘削孔を斜め下方に向けて形成する場合においては、掘削孔内に建て込まれた鋼管杭が該掘削孔の孔壁と接触してその周囲にグラウト材の充填空間が確保されなくなり、その結果、上述した鉛直方向の支持力不足のみならず、水平方向の支持力や周面に沿った摩擦力も不足するという事態が生じる。
【0009】
加えて、鋼管杭がその下端や周面で地盤と接触すると、地盤内の地下水の影響で鋼管杭に腐食が生じるため、それを見込んだ断面設計を行わねばならないという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、鋼管杭の下方又はそれに加えて該鋼管杭の周囲にグラウト材の充填空間を確実に形成可能な鋼管杭の埋込み方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼管杭の埋込み方法は請求項1に記載したように、地盤又は地盤内の改良体に形成された掘削孔内に鋼管杭を建て込むとともに、該鋼管杭と前記掘削孔の底面及び孔壁との間にグラウト材を充填する鋼管杭の埋込み方法において、
前記鋼管杭を建て込む際、該鋼管杭の先端にスペーサーを予め取り付けることで、該スペーサーを前記鋼管杭の先端と前記掘削孔の底面との間に介在させるとともに、前記スペーサーから前記鋼管杭と反対の側であって該鋼管杭の材軸方向に延びる貫入手段を該スペーサー又は前記鋼管杭の先端に取り付けたものである。
【0012】
また、本発明に係る鋼管杭の埋込み方法は、前記グラウト材の充填を前記鋼管杭の建込み後に行うものである。
【0013】
また、本発明に係る鋼管杭の埋込み方法は、前記掘削孔を斜め下方に向けて前記地盤に形成したものである。
【0014】
本発明に係る鋼管杭の埋込み方法を用いて鋼管杭を埋め込むには、地盤又は地盤内の改良体に形成された掘削孔内に鋼管杭を建て込むとともに、該鋼管杭と掘削孔の底面及び孔壁との間にグラウト材を充填するが、本発明においては、鋼管杭を建て込む際、該鋼管杭の先端と掘削孔の底面との間にスペーサーを介在させる。
【0015】
このようにすると、建て込まれた鋼管杭は、自重又は自重の材軸方向成分がスペーサーを介して掘削孔の底面で支持されるとともに、先端が掘削孔の底面から離隔した状態で保持される。
【0016】
そのため、鋼管杭の先端と掘削孔の底面との間にはグラウト材の充填空間が確実に形成されるとともに、自重やケーシングの引抜き等が原因でグラウト材の固化前に鋼管杭が沈下するおそれもなくなり、かくして根固めによる荷重分散作用が確実に発揮され、それに伴って鉛直方向の支持力も十分に確保される。
また、本発明に係る鋼管杭の埋込み方法においては、スペーサーから鋼管杭と反対の側であって該鋼管杭の材軸方向に延びる貫入手段を該スペーサー又は鋼管杭の先端に取り付けた構成としてある。
かかる構成においては、鋼管杭を掘削孔に建て込んだとき、貫入手段が掘削孔の底面にて上述の地盤又は改良体に貫入されるため、鋼管杭は、その先端近傍で地盤又は改良体に位置決めされ、材軸直交方向の動きが拘束される。
そのため、鋼管杭をその基端側でも別途位置決めすることで、鋼管杭をその周面が掘削孔の孔壁と接触しないように姿勢保持することが可能となり、腐食による強度低下の懸念がなくなって鋼管杭の断面をより合理的に定めることが可能になる。
グラウト材の充填と鋼管杭の建込みのいずれを先行させるかは任意であって、グラウト材を掘削孔に先行充填した後、該グラウト材が固化する前に、掘削孔に鋼管杭を建て込むようにしてもかまわないが、グラウト材の充填を鋼管杭の建込み後に行うようにした場合においては、貫入手段によって鋼管杭の周囲にグラウト材の充填空間が十分に確保されているので、水平方向の支持力や周面に沿った摩擦力が不足するといった事態を未然に回避することができる。
【0018】
掘削孔は、地盤に形成されたものをはじめ、地盤内に設けられた改良体、例えばソイルセメント柱に形成されたものが包摂される。なお、掘削孔を形成するための工法は任意であり、ボーリングマシン等の掘削機械を適宜選定しつつ、必要に応じてケーシングで孔壁保護を図りながら、公知の掘削工法を用いて適宜掘削すればよい。
【0019】
スペーサーは、鋼管杭の先端と掘削孔の底面との間に介在させることによって、鋼管杭の自重又はその材軸方向成分を掘削孔の底面にて地盤に伝達することが可能でかつ鋼管杭の先端側にグラウト材の充填空間が確実に形成される限り、その構成や介在時期は任意であって、鋼管杭を建て込む前に掘削孔に先行配置することも可能であるが、本発明においては、鋼管杭を建て込む前に該鋼管杭の先端に取り付けるものとする。
【0020】
このようにすれば、鋼管杭に対するスペーサーの位置決めが容易になるため、鋼管杭の自重支持及びグラウト材の充填空間確保というスペーサーの作用を確実に発揮させることが可能となる。
【0021】
鋼管杭は、マイクロパイル工法で採用される概ね300mm以下のものが主たる対象となるが、先端側に充填されたグラウト材が固化して根固めされ、該グラウト材を介して軸力が地盤に伝達されるようになっているとともに、周囲に充填されたグラウト材によって水平方向の支持力や周面に沿った摩擦力が確保されるものであれば、外径300mmを上回る鋼管杭であってもかまわない。
【0022】
鋼管杭の建込みは、掘削孔を先行形成した後で行うようにしてもよいし、掘削孔を形成しながら行うようにしてもかまわない。また、鋼管杭の建込みには、掘削孔への直接的な建込みをはじめ、掘削の際にケーシングを建て込んで孔壁保護を図る場合において、そのケーシングが建て込まれた掘削孔への建込みも包摂される。
【0023】
鋼管杭の建込みは、鉛直下方に向けて形成された掘削孔に建て込まれる場合をはじめ、斜め下方に向けて形成された掘削孔に建て込まれる場合も包摂されるが、後者の場合であっても、上述した貫入手段によって鋼管杭の姿勢が保持されるため、鋼管杭の周面が掘削孔の孔壁と接触したり、鋼管杭の周囲にグラウト材の充填空間が確保されなかったりするおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態に係る鋼管杭の埋込み方法の実施手順を示したフローチャート。
図2】本実施形態に係る鋼管杭の埋込み方法における鋼管杭1の配置図であり、(a)は側面図、(b)はA−A線方向から見た矢視図。
図3】本実施形態に係る鋼管杭の埋込み方法を実施する手順を示した説明図。
図4】変形例に係る鋼管杭の埋込み方法において埋込み後の様子を示した側面配置図。
図5】別の変形例に係る鋼管杭の埋込み方法における鋼管杭1の配置図であり、(a)は側面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図。
図6】別の変形例に係る鋼管杭の埋込み方法における鋼管杭1の配置図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る鋼管杭の埋込み方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る鋼管杭の埋込み方法の実施手順を示したフローチャートである。本実施形態に係る鋼管杭の埋込み方法においては、まず図2に示すように、鋼管杭1の先端にスペーサー5を取り付ける(ステップ101)。
【0030】
鋼管杭1は、地盤2に設けられた掘削孔3内に建て込まれるものであり、先端と掘削孔3の底面6との間に充填されるグラウト材によって根固めされることにより、図示しない上部構造物からの鉛直荷重である軸力を分散させて地盤2に伝達できるようになっているとともに、掘削孔3の孔壁7との間に充填されるグラウト材によって水平方向の支持力や周面に沿った摩擦力が確保されるように構成してあり、例えばマイクロパイル工法で採用される概ね300mm以下の鋼管杭で構成することが可能である。
【0031】
スペーサー5は、外径が鋼管杭1の内径よりも小さな円筒部材で構成してあるとともに、その上縁を鋼管杭1の先端開口に架け渡された十字状の取付け部材8の下面に溶接やボルトで固着してあり、鋼管杭1を掘削孔3内に建て込んだときに該鋼管杭の先端を掘削孔3の底面6から離隔させることができるようになっている。
【0032】
スペーサー5は、例えば鋼管パイプで構成することができるが、図示しない上部構造物からの鉛直荷重を地盤2に伝達できるだけの断面積や強度が必要になる鋼管杭1とは異なり、グラウト材の充填前後において鋼管杭1の自重を支持できれば足りる。スペーサー5の取付けは、例えば鋼管杭1を横置きした状態で行えばよい。
【0033】
次に、図3(a)に示したように、先端にスペーサー5が取り付けられた鋼管杭1を、ケーシング21が建て込まれた掘削孔3内に建て込む(ステップ102)。
【0034】
ケーシング21は、地盤2をボーリング機械で二重管掘削して該地盤に掘削孔3を形成する際、孔壁保護のために該掘削孔内に建て込まれたケーシングであって、図示しないボーリングロッドについては予め引き抜いて撤去しておく。
【0035】
次に、鋼管杭1の基端側に連通接続された図示しないグラウト注入装置を駆動することにより、鋼管杭1の中空空間にグラウト材を注入する(ステップ103)。
【0036】
このようにすると、鋼管杭1は図3(b)に示すように、その自重がスペーサー5を介して掘削孔3の底面6で支持されるとともに、先端が該底面からΔhだけ離隔した状態で保持されているので、鋼管杭1の中空空間に注入されたグラウト材22は、図3(c)に示すように該鋼管杭の先端開口に設けられた十字状の取付け部材8をすり抜けるようにして吐出され、一部がスペーサー5を構成する円筒部材内に満たされつつ、鋼管杭1の先端と掘削孔3の底面6との間に充填されるとともに、同時並行で行われるケーシング21の引抜きに伴って、鋼管杭1の外周面と掘削孔3の孔壁7との間に充填される。
【0037】
図3(d)は、鋼管杭1の先端と掘削孔3の底面6との間、及び該鋼管杭の外周面と掘削孔3の孔壁7との間にグラウト材22が充填された様子を示したものである。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼管杭の埋込み方法によれば、掘削孔3に建て込まれた鋼管杭1は、スペーサー5を介して該鋼管杭の自重が掘削孔3の底面6で支持されるとともに、先端が掘削孔3の底面6から離隔した状態で保持される。
【0039】
そのため、鋼管杭1の先端と掘削孔3の底面6との間にはグラウト材22の充填空間が確実に形成されるとともに、自重やケーシングの引抜きが原因でグラウト材22の固化前に鋼管杭1が沈下するおそれもなくなり、かくして鋼管杭1の先端と掘削孔3の底面6との間で固化したグラウト材22は、荷重分散作用が発揮される形で鋼管杭1を根固めし、かくして鉛直方向の支持力が十分に確保される。
【0040】
また、本実施形態に係る鋼管杭の埋込み方法によれば、鋼管杭1を建て込む前に該鋼管杭の先端にスペーサー5を取り付けるようにしたので、鋼管杭1に対するスペーサー5の位置決めが容易になり、かくして鋼管杭1の自重支持及びグラウト材22の充填空間確保というスペーサー5の作用を確実に発揮させることが可能となる。
【0041】
本実施形態では、鋼管杭1を建て込んでから該鋼管杭の中空空間を介してグラウト材22を注入するようにしたが、これに代えて、掘削孔3内にグラウト材22を先に注入し、次いで、グラウト材22が固化する前に鋼管杭1を掘削孔3内に建て込むようにしてもかまわない。
【0042】
また、本実施形態では、地盤2に掘削孔3を直接形成するようにしたが、これに代えて、図4に示すように、地盤2に改良体としてのソイルセメント柱41を形成してから該ソイルセメント柱に掘削孔3を形成し、しかる後、上述したと同様のステップを実施することにより、鋼管杭1を地盤2に埋め込むようにしてもかまわない。
【0043】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、スペーサー5が掘削孔3の底面6にめり込んで鋼管杭1の先端が底面6から十分に離隔しないおそれがある場合には、スペーサー5を構成する円筒部材の肉厚を大きくする、該円筒部材の下縁に鍔部を設けるなど、底面6への応力集中が緩和される対策を適宜講ずればよい。
【0044】
また、本実施形態では、地盤2をボーリング機械で二重管掘削することで該地盤に掘削孔3を形成するものとしたが、孔壁保護の必要がないのであれば、二重管掘削に代えて単管掘削としてもかまわない。その場合、ケーシング21を用いる必要はないので、ケーシング21の引抜きも不要となる。
【0045】
また、本実施形態では、鋼管杭1を掘削孔3に建て込む際、ケーシング21を建込みガイドとして用いることにより、掘削孔3の孔軸とほぼ同軸になるように鋼管杭1を建て込むことができるとともに、グラウト材22を注入する際も、ケーシング21によって鋼管杭1の同軸配置が維持されるものとして説明したが、例えばケーシング21がないことが理由で、グラウト材注入時に鋼管杭1の同軸配置が維持されないおそれがある場合には、図5に示すように、スペーサー5から鋼管杭1と反対の側にかつ該鋼管杭の材軸方向に延びる貫入手段としての位置決めロッド51を該スペーサを貫通する形で鋼管杭1の先端に取り付けるようにすればよい。
【0046】
位置決めロッド51は、例えば十字状をなす取付け部材8の交点箇所に基端側が溶接された鉄筋で構成することができる。
【0047】
かかる構成においては、図示しないガイドやリーダーを必要に応じて用いながら鋼管杭1を掘削孔3に建て込んだとき、位置決めロッド51が掘削孔3の底面6にて地盤2に貫入されるため、鋼管杭1は、その先端近傍で地盤2に位置決めされ、材軸直交方向の動きが拘束される。
【0048】
そのため、鋼管杭1をその基端側でも別途位置決めすることにより、グラウト材注入時において、鋼管杭1をその周面が掘削孔3の孔壁7と接触しないように姿勢保持することが可能となり、かくして鋼管杭1の周囲にグラウト材22の充填空間を十分に確保することができるとともに、その結果として水平方向の支持力や周面に沿った摩擦力が不足するといった事態を未然に回避することができる。
【0049】
加えて、鋼管杭1の周囲がグラウト材22で確実に被覆されることから、該鋼管杭の腐食を防止しあるいはその進行を抑制することが可能となり、かくして鋼管杭1の断面設計を行う際、地盤2の地下水に起因した腐食を見込む必要がなくなり、該鋼管杭の肉厚を低減することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、鋼管杭1を鉛直下方に向けて地盤2に埋め込む場合について説明したが、これに代えて、図6に示すように、鋼管杭1を斜め下方に向けて地盤2に埋め込むようにしてもよい。
【0051】
この場合、上述した実施形態と概ね同様の手順で鋼管杭1を地盤2に埋め込むようにすればよいが、図5に係る変形例と同様、スペーサー5から鋼管杭1と反対の側にかつ該鋼管杭の材軸方向に延びる位置決めロッド51を該スペーサを貫通する形で鋼管杭1の先端に取り付ける。
【0052】
かかる構成においては、図示しないガイドやリーダーを用いながら鋼管杭1を掘削孔3に建て込んだとき、位置決めロッド51が掘削孔3の底面6にて地盤2に貫入されるため、鋼管杭1は、その先端近傍で地盤2に位置決めされ、材軸直交方向の動きが拘束される。
【0053】
そのため、鋼管杭1をその基端側でも別途位置決めすることにより、鋼管杭1が斜め下方に向けて建て込まれる場合であっても、図5に示した変形例と同様、鋼管杭1の周囲にグラウト材22の充填空間を十分に確保し、もって水平方向の支持力や周面に沿った摩擦力を確保することができるとともに、鋼管杭1の腐食を見込む必要がなくなることにより、該鋼管杭の断面を合理的に定めることも可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 鋼管杭
2 地盤
3 掘削孔
5 スペーサー
6 底面
7 孔壁
22 グラウト材
41 改良体
51 位置決めロッド(貫入手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6