特許第6168363号(P6168363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6168363発射体の電気機械式信管及び信管を制御する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168363
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】発射体の電気機械式信管及び信管を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   F42C 11/00 20060101AFI20170713BHJP
   F42C 11/06 20060101ALI20170713BHJP
   F42C 11/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   F42C11/00
   F42C11/06
   F42C11/02
【請求項の数】26
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-502511(P2014-502511)
(86)(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公表番号】特表2014-512503(P2014-512503A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】SG2012000097
(87)【国際公開番号】WO2012138298
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】201102356-1
(32)【優先日】2011年4月2日
(33)【優先権主張国】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】513246089
【氏名又は名称】アドバンスド マテリアル エンジニアリング ピーティーイー エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】エーダブリュー,チェン ホック
(72)【発明者】
【氏名】クエック,ジュアン キアット,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヨン リム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フアン,シウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シエ,スー チュー
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04603635(US,A)
【文献】 特表平08−501870(JP,A)
【文献】 米国特許第03954061(US,A)
【文献】 米国特許第04176608(US,A)
【文献】 米国特許第03633510(US,A)
【文献】 米国特許第04580498(US,A)
【文献】 特開昭55−060200(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0136290(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02221521(GB,A)
【文献】 特開2004−229322(JP,A)
【文献】 特開2001−116500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42C 1/02
F42C 9/06
F42C 11/00 −11/06
F42C 15/188
F42C 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射体の信管であって、
電力を供給するセットバック発電機、
電子発火回路に結合されている衝撃センサトリガ回路及び安全ロックアウト回路であって、前記衝撃センサトリガ回路は圧電センサを含む、衝撃センサトリガ回路及び安全ロックアウト回路、及び
撃針を作動させるように実質的に同軸に一列に配置される電気起爆筒、を備え、
前記発射体は戦術的距離を推進され終わるまで前記安全ロックアウト回路によってロックアウトされ、
前記信管は衝撃感知モードと自爆モードを備え、
衝撃感知モードにおいては、標的に対する前記発射体の衝突時に、前記圧電センサが発火信号を生成するとともに前記電子発火回路に送信し、前記電子発火回路が前記安全ロックアウト回路に依存して前記電気起爆筒に点火し、前記電気起爆筒の爆轟は更に前記撃針を作動して刺突起爆筒に点火し、
一方、自爆モードにおいては、衝撃感知モードにおいて発火信号が生成されない場合に前記電子発火回路が前記電気起爆筒に点火する、ように動作可能である、信管。
【請求項2】
前記撃針は、前記撃針が前記刺突起爆筒に点火することを可能にするよう前記発射体の進行方向に対して前方方向には移動できないが、後方方向には移動可能であり、前記電気起爆筒が点火されるときに、推力が生成されて前記撃針を前記刺突起爆筒に対して作動する、請求項1に記載の信管。
【請求項3】
前記安全ロックアウト回路は、nチャネル電界効果トランジスタ(FET)を含み、前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)のドレインはシリコン制御整流子(SCR)のゲートに接続されており、ソースは接地に接続されており、
前記発射体が戦術的距離を推進した後、前記セットバック発電機が発生させる電圧パルス(Vin)が所定の低いレベルに低下し、前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)のゲート電圧ラインに印加される電圧がもはや前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)を導通状態に保つことができず、前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)がオフになり、その結果、前記安全ロックアウト回路が非アクティブ化され、
次に、前記発火信号が前記シリコン制御整流子(SCR)の前記ゲートに送信されて前記シリコン制御整流子(SCR)をオンにし、前記シリコン制御整流子(SCR)はこれに応答して前記電気起爆筒に点火するように動作可能である、請求項1又は2に記載の信管。
【請求項4】
前記圧電センサの出力は電圧比較器の非反転端子に接続されており、一方で分圧器からタッピングされる基準電圧は反転端子に接続されている、請求項3に記載の信管。
【請求項5】
マイクロコントローラをさらに備え、前記マイクロコントローラは、設定される所定のクロック周期に従ってARM信号、圧電イネーブル(PIEZO_EN)信号及び圧電クリア(PIEZO_CLR)信号を出力する、請求項4に記載の信管。
【請求項6】
スピンロスセンサをさらに備え、前記スピンロスセンサの出力が前記マイクロコントローラにフラグを設定し、前記フラグに応じて前記マイクロコントローラがTIME_OUT自爆信号を出力する、請求項5に記載の信管。
【請求項7】
前記衝撃センサトリガ回路はゲートつきDラッチを含み、該衝撃センサトリガ回路の出力が前記ゲートつきDラッチのクロック(CLK)入力に接続されており、前記圧電イネーブル(PIEZO_EN)信号はD入力に接続されており、前記圧電クリア(PIEZO_CLR)信号はクリア(CLR)入力に接続され、圧電トリガ(PIEZO_TRG)信号はQ端子において出力される、請求項6に記載の信管。
【請求項8】
前記マイクロコントローラは、前記電圧比較器において前記基準電圧を駆動するように動作可能なデジタル−アナログ(DAC)信号を出力する、請求項7に記載の信管。
【請求項9】
前記DAC信号は、高いレベルから比較的低いレベルに時間変化するため、前記圧電センサの感度は前記発射体がその標的に近づくにつれてそれに応じて増大する、請求項8に記載の信管。
【請求項10】
前記ARM信号は前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)の前記ゲート電圧ラインに接続される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の信管。
【請求項11】
前記ARM信号は高−低信号を含む、請求項10に記載の信管。
【請求項12】
前記電子発火回路はORゲートを含み、前記圧電イネーブル(PIEZO_EN)信号は、前記圧電トリガ(PIEZO_TRG)信号又はTIME_OUT自爆信号を前記ORゲートに入力して前記発火信号を生成することを可能にする、請求項7〜11のいずれか一項に記載の信管。
【請求項13】
さらにセーフアームアセンブリユニットを備え、前記セーフアームアセンブリユニット上で前記刺突起爆筒が回転可能であり、それによって前記発射体が最小砲口安全距離を推進された後で、前記刺突起爆筒が前記撃針と位置合わせされる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の信管。
【請求項14】
発射体の信管を制御する方法であって、前記方法は、
圧電センサの信号及び安全ロックアウト回路を電子発火回路に結合するステップであって、前記電子発火回路は、前記発射体が戦術的距離を推進し終わるまで前記安全ロックアウト回路によってロックアウトされるステップ、
標的に対する前記発射体の衝突時に、前記圧電センサが、前記安全ロックアウト回路に応じて、発火信号を生成し、前記電子発火回路に送信するステップ、
前記電子発火回路が電気起爆筒に、前記圧電センサが発火信号を生成する衝撃感知モード、又は前記衝撃感知モードにおいて発火信号が生成されない場合に前記電子発火回路が前記電気起爆筒に点火する自爆モードで点火するステップ、及び、
前記電気起爆筒の爆轟が撃針を作動して刺突起爆筒に点火するステップであって、前記電気起爆筒は前記撃針と実質的に同軸に一列に配置されるステップを含む、方法。
【請求項15】
前記圧電センサの前記信号を前記電子発火回路に結合することは、前記信号を送信してシリコン制御整流子(SCR)のゲートを制御することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
安全ロックアウト回路を前記電子発火回路に結合することは、nチャネル電界効果トランジスタ(FET)のゲート電圧ラインを制御することを含み、
前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)のドレインはシリコン制御整流子(SCR)のゲートに接続され、ソースは接地に接続されており、
セットバック発電機からの電圧パルス(Vin)によって供給される前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)のゲート電圧は、前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)をオンにするほど最初は十分に高く、それによって、前記発火信号が接地に下げられて前記信管用の電子回路を安全化し、
所定の時間後に前記発射体が戦術的距離に達すると、前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)のゲート電圧は低くなりすぎて前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)を導通状態に保つことができず、前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)はオフになり、その結果、前記安全ロックアウト回路が非アクティブ化され、
次に、前記発火信号が前記シリコン制御整流子(SCR)の前記ゲートに送信されて前記シリコン制御整流子(SCR)をオンにし、前記シリコン制御整流子(SCR)は前記発火信号に応答して前記電気起爆筒に点火するように動作可能である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
マイクロコントローラをさらに備え、前記マイクロコントローラが、設定される所定のクロック周期に従ってARM信号、圧電イネーブル(PIEZO_EN)信号及び圧電クリア(PIEZO_CLR)信号を出力し、前記電子発火回路を制御する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロコントローラがTIME_OUT自爆信号を出力するように前記マイクロコントローラにスピンロス信号を入力することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記圧電センサの出力によって提供されるクロック信号、及び前記マイクロコントローラからの圧電クリア(PIEZO_CLR)信号に応答して前記圧電イネーブル(PIEZO_EN)信号をラッチして圧電トリガ(PIEZO_TRG)信号を提供することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記圧電センサの出力電圧を基準電圧と比較することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マイクロコントローラは、前記基準電圧を駆動するように動作可能なデジタル−アナログ(DAC)信号を出力する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記デジタル−アナログ(DAC)信号は、高いレベルから比較的低いレベルに時間変化するため、前記圧電センサの感度は前記発射体がその標的に近づくにつれてそれに応じて増大する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ARM信号を前記nチャネル電界効果トランジスタ(FET)の前記ゲート電圧ラインに接続することを更に含む、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ARM信号は高−低信号を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記発射体が最小砲口安全距離を推進した後で、セーフアームアセンブリユニット上で前記刺突起爆筒を回転させて、前記撃針と一列であるように配置することを更に含む、請求項14〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記撃針は、前記刺突起爆筒にポイント爆轟モードで点火するように動作可能であり、前記電子発火回路は前記電気起爆筒に衝撃感知モード又は自爆モードで点火するように動作可能である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発射体の電気機械式信管に関する。特に、本発明は、機械的なポイント衝撃機構を補完するための衝撃感知・自爆機能部を有する電子発火回路に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、兵器の砲身から発射される砲弾10は、図1に示されているように、カートリッジケース20、本体30、及びノーズコーン40からなり、これらは長手方向軸12に沿ってこの順で配置されている。ノーズコーン40内に収容されている信管(図示せず)は、発射体が砲身の砲口から離れて所定の距離を推進されるまで安全であることを確実にする安全装置であり;換言すると、発射体は、最小安全砲口距離にわたって推進されて初めて安全解除される。従来の機械的な信管をここで例示する:発射体が砲身を通って推進されてから、スピン作動されるロックがアンバランスロータを解放する。ロータの回転速度は、ピニオンアセンブリ及び近接アセンブリによって調整され、それによって、所定の遅延時間の後、発射体が戦術的距離に達した後で、ロータが回転してその安全解除位置になり、ロータの刺突起爆筒が弾頭(PD)ピンと位置合わせされる。ロータは、安全解除されると、アーミングロックピンによってこの安全解除位置に保持されたままとなる。ノーズコーンが設計角度又は最適角度で標的に衝突すると、すなわちそのようなポイント衝撃モードの間に、衝撃力によって、ロータが取り付けられているセーフアームアセンブリユニットが前方に押しやられ、次いでPDピンが刺突起爆筒に点火する。刺突起爆筒は更に、発射体の本体内に配置されている伝爆薬32及び/又は爆破装薬34に点火することができる。
【0003】
幾つかの発射体には、セーフアームアセンブリユニットとノーズコーンとの間に配置されている機械的な自爆機構がある。機械的な自爆機構は、発射体がその標的から外れ、柔らかい地面に落ちるか又は見通し角で地面に落ちて非常にゆっくりと停止した後で刺突起爆筒に点火する第2の安全装置である。機械的な自爆機能部は、発射体のポイント衝撃による爆発の失敗後、ばね式の自爆(SD)撃針を刺突起爆筒に対して解放するのにスピン減衰機構を用いることができる。本出願人が所有しているスピン減衰自爆信管が特許文献1に記載されている。
【0004】
上記のポイント衝撃爆轟(PD)機構及び自爆(SD)機構は、機械的部品の正確な動きを必要とする。場合によっては、発射体は斜角で標的に衝突し;これは都市地形において遭遇する場合が多いが;幾らかの角度で配置されている本体プレートを有して特別に設計されている装甲車両は斜めの標的面にも遭遇する。斜角での衝撃は多くの場合にPD機構及び/又はSD機構に損傷を与える可能性がある。市街戦(MOUT)による「Weapon Effect_MOUT_B0386」において示唆されているように、都市地形において用いられる発射体の約25%が動作不能になる。爆発しなかった発射体は危害を及ぼすため、新たに開発される爆発物装置は自爆機能を有することが必要となる。
【0005】
Action Manufacturing Companyに譲渡された特許文献2の手法では、発射体において用いる低電流マイクロコントローラ回路が記載されている。特許文献2には、信管回路の正確なタイミングを計るシステムも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,237,495号
【特許文献2】米国特許第7,729,205号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、配備された後のほとんどの発射体が衝撃及び/又は自爆トリガによって爆発することを確実にする高い信頼性の新たな信管システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下では、本発明の基本的な理解を提供する簡単な概要を提示する。この概要は本発明の広範な概略ではなく、本発明の重要な特徴を特定することを意図するものではない。むしろ、この概要は、以下の詳細な説明に対する前置きとして本発明の発明の概念の幾つかを包括的な形態で提示するものである。
【0009】
本発明は、95%以上の信頼水準で約99%以上の高い信頼性を有する電気機械式信管を提供しようとするものである。これは機械信管及び電子信管回路によって達成される。
【0010】
1つの実施形態では、本発明は、発射体の信管であって:電力を供給するセットバック発電機;電子発火回路に結合されている衝撃センサトリガ回路及び安全ロックアウト回路;並びに、撃針と一列に配置される電気起爆筒を備え;標的に対する上記発射体の衝撃時に、上記衝撃センサトリガ回路が、上記安全ロックアウト回路に応じて、上記電子発火回路に発火信号を送信して上記電気起爆筒に点火し、電気起爆筒は更に上記撃針を作動して刺突起爆筒に点火するように動作可能である、信管を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、発射体の信管を制御する方法であって:圧電センサの信号及び安全ロックアウト回路を電子発火回路に結合することであって;上記電子発火回路は、電気起爆筒に衝撃感知モードで点火するように動作可能であり、電気起爆筒は更に撃針を作動して刺突起爆筒に点火するように動作可能である、結合することを含む、方法を提供する。1つの実施形態では、圧電センサの信号を電子発火回路に結合することは、圧電出力信号を送信してSCRのゲートを制御することを含む。
【0012】
撃針の1つの実施形態では、撃針は、当該撃針が上記刺突起爆筒に点火することを可能にするよう上記発射体の進行方向に対して前方方向には適合しないが、後方方向には適合し、それによって、上記電気起爆筒が点火されるときに、推力が生成されて上記撃針を上記刺突起爆筒に対して作動する。
【0013】
安全ロックアウト回路の1つの実施形態では、安全ロックアウト回路は、nチャネル電界効果トランジスタ(FET)を含み、そのドレインはシリコン制御整流子(SCR)のゲートに接続されており、ソースは接地に接続されており、それによって、上記発射体が戦術的距離を推進された後で、上記セットバック発電機が発生させる電圧パルスVinが所定の低いレベルに低下するため、上記nチャネルFETのゲート電圧ラインに印加される電圧がもはや上記nチャネルFETを導通状態に保つことができず、上記nチャネルFETはオフになり、その結果、上記安全ロックアウト回路が非アクティブ化され、次に、上記発火信号が上記SCRの上記ゲートに送信されて当該SCRをオンにし、当該SCRはこれに応答して上記電気起爆筒に点火するように動作可能である。
【0014】
衝撃センサトリガ回路の1つの実施形態では、衝撃センサトリガ回路は、圧電センサ、ゲートつきDラッチ及び電圧比較器を含む。
【0015】
信管の別の実施形態では、信管はマイクロコントローラ及びスピンロスセンサを含む。スピンロスセンサの出力はマイクロコントローラ出力の入力に接続されており、一方でマイクロコントローラは、PIEZO_EN信号、PIEZO_CLR信号、ARM信号、TIME_OUT信号及びDAC信号を出力する。1つの実施形態では、DAC信号は電圧比較器の基準電圧を駆動し;DAC信号は、発射体がその標的に近づくにつれて高いレベルから比較的低いレベルに変化することができる。また別の実施形態では、ARM信号は、nチャネルFETのゲート電圧ラインに接続され;ARM信号は高−低信号であるものとすることができる。
【0016】
本発明を、添付の図面を参照して本発明の非限定的な実施形態によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】既知の発射体の構造を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による発射体を示す図である。
図2A】本発明の一実施形態による、図2に示されている発射体のノーズコーンの内部に配置されている電気機械式信管の切欠き斜視図である。
図2B】安全位置及び安全解除位置間の種々の回転段階における、図2Aに示されている信管において用いられるセーフアームアセンブリユニットの後面図である。
図2C】安全位置及び安全解除位置間の種々の回転段階における、図2Aに示されている信管において用いられるセーフアームアセンブリユニットの後面図である。
図2D】安全位置及び安全解除位置間の種々の回転段階における、図2Aに示されている信管において用いられるセーフアームアセンブリユニットの後面図である。
図2E】安全位置及び安全解除位置間の種々の回転段階における、図2Aに示されている信管において用いられるセーフアームアセンブリユニットの後面図である。
図3】本発明の別の実施形態による、図2Aに示されている電気機械式信管に実装される電子信管システムのブロック図である。
図3A】本発明の別の実施形態による、図3に示されている信管システムにおいて用いられる発電・電圧調整回路を示す図である。
図3B】本発明の別の実施形態による、図3に示されている信管システムとともに用いられるコントローラを示す図である。
図3C】本発明の別の実施形態による、図3に示されている信管システムとともに用いられる衝撃感知トリガ回路を示す図である。
図3C1】本発明の別の実施形態による衝撃感知トリガ回路を示す図である。
図3D】本発明のまた別の実施形態による、図3に示されている信管システムとともに用いられる発射・安全ロックアウト回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、本発明の1つ又は複数の特定の実施形態及び代替的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。しかし、当業者には、そのような特定の詳細を伴うことなく本発明を実施することができることが明らかであろう。詳細の幾つかは、本発明を不明瞭にしないために長々とは説明しない場合がある。参照しやすいように、複数の図に共通の同じであるか又は同様の特徴を参照する場合は、図を通して共通の参照符号又は一続きの符号が用いられる。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態による発射体50を示している。電気機械式信管100が発射体50のノーズコーン40内に配置されている。図2Aに示されているように、電気機械式信管100は、機械信管101及び電子信管回路200を含む。電気機械式信管100は、ハウジング104、及びハウジング104上に作られるフレーム106を含む。ハウジング104は、セーフアームアセンブリユニット110及び撃針150を包囲している。電子信管回路200を含むプリント回路基板(PCB)204が、セットバック発電機202及び電気起爆筒295とともにフレーム106に取り付けられている。電気起爆筒295は、撃針150の上部に位置合わせされている。図2Aにおいて分かるように、セーフアームアセンブリユニット110は保持ばね112によって後方へ付勢される。ハウジング104のベースが開口部を有し、ここに伝爆薬32が取り付けられている。
【0020】
ハウジング104内では、アンバランスロータ114、ピニオンアセンブリ116及び近接アセンブリ117が回動する。ロータ114は、刺突起爆筒120及びアーミングロックピン122を含む。ロータ114は、図2Bの後面図に示されているように「安全」位置に取り付けられているため、刺突起爆筒120は撃針150とは位置合わせされていない。ロータ114を「安全」位置に保つために、セーフアームアセンブリユニット110は、デテント118、及びデテントに対して作用するばね119を含む。この「安全」位置では、デテント118は延びてロータ114を回転しないようにロックする。発射体50は、砲身を通って推進されるときに、その長手方向軸12の周りでスピンし、遠心力がデテント118に対して作用してデテント118をばね119に対して後退させる。図2Cは、デテント118が部分的に後退しているところを示し、一方で図2Dはデテント118が完全に後退したところを示す。図2B図2Dにおいて分かるように、ピニオンアセンブリ116は、振動してピニオンアセンブリ116の回転を周期的に遅延させるように動作可能な近接アセンブリ117に係合し、それによって、発射体50が最小安全砲口距離を越えて推進された後で、ロータ114がその「安全解除」位置に回転し、すなわち、所定の遅延安全時間後に;「安全解除」位置になり、刺突起爆筒120が図2Aにおいて分かるように撃針150と位置合わせされる。図2Eに示されているように、ロータ114はアーミングロックピン122によってこの安全解除位置に保持されたままとなる。ノーズコーン40が、そのようなポイント衝撃爆轟モード中に設計角度又は最適角度で標的に衝突すると、衝撃力によってセーフアームアセンブリユニット110が撃針150に対して前方に突き刺され、それによって刺突起爆筒120を作動させる。撃針150は、理解されるように、電気起爆筒295によって作動されると、刺突起爆筒120が撃針150に対して突き刺されるため前方方向には適合しないが、後方方向には適合する。このように、刺突起爆筒120の起爆によって、更に、発射体50の本体30内に配置されている伝爆薬32及び/又は爆破装薬34に点火する。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態による電子信管回路200の機能ブロック図を示している。図3に示されているように、電子信管回路200は、少なくとも発電回路210、マイクロコントローラ220、スピンロスセンサ240、衝撃センサトリガ回路260、発火回路280及び安全ロックアウト回路290を含む。
【0022】
図3Aに示されているように、発電回路210は、少なくともセットバック発電機202、ダイオードD1、電荷貯蔵コンデンサC1、C2及び電圧レギュレータ208を含む。セットバック発電機202はフレーム106に取り付けられている。発射体50が兵器の砲身内で発火されるとすぐに、セットバック発電機202内での磁石の変位によって電圧パルスVinが発生する。VinはダイオードD1によって整流され、次に電力が2つの電荷貯蔵コンデンサC1、C2に貯蔵される。ツェナーダイオードD2及びレジスタR1がコンデンサC1、C2の両端に設けられている。ツェナーダイオードD2は、コンデンサC1、C2へのピーク電圧を制限し、一方で約1メガオームのR1は、発射体50の爆発が失敗した場合にコンデンサC1、C2が例えば30分以内にゆっくりと放電することを可能にする。貯蔵コンデンサC1からの最初に放電される電圧Vcapは高すぎるため下流のデジタル回路が用いることができない。したがって、Vcapは電圧レギュレータ208によって調整され、電圧レギュレータ208は、例えば約3.3Vである調整された電圧Vccを供給する。電圧レギュレータ208は低電圧ドロップアウト及び低静止電流タイプのものである。コンデンサC3が、電圧レギュレータ208の安定した動作を維持するように設けられている。
【0023】
図3及び図3Bにおいて分かるように、調整された電圧Vccはマイクロコントローラ220に供給される。マイクロコントローラ220は低出力8ビット混合信号マイクロプロセッサである。マイクロコントローラ220は、その電力消費を減らすように発振器230によってそのスリープモードから周期的に作動される。マイクロコントローラ220は時間管理を行い、幾つかの安全阻害ラインを制御し、その機能は、電子信管回路200の他の構成要素を説明するときにより明らかとなるであろう。1つの実施形態では、マイクロコントローラ220はARM信号を出力し;別の実施形態では、マイクロコントローラ220はデジタル−アナログコンバータ(DAC)信号を出力する。
【0024】
図3Bを再び参照すると、スピンロスセンサ240は、マイクロコントローラ220の入力に接続されている。図3B1は、その電気接点A1、A2、A3を有するスピンロスセンサ240を示している。発射体50が砲身内で推進された後で、スピンロスセンサ240は高い初期遠心加速を受け、これは、発射体50が砲口から出るときに、遠心加速がゆっくりと低下する前に最高に達する。高遠心加速に応じて、スピンロスセンサ240内のボール241がチャネルに沿ってばね242に対して径方向に摺動させられる。図3B1に示されているように、ボール241の移動によってA1、A2及びA3において電気接点が閉じる。最大の加速を受けた後で、ボール241に対する遠心力は徐々に低下し、ばね242はそれに応じてボール241をその非作動位置に向かって戻し、それによって、ボール241が、逆に、すなわちA3からA2へ、次にA1の位置に戻るように電気接点を閉じる。安全上の考慮から、A1電気接点が二度目に作動されて初めてA1信号がマイクロコントローラ220にフラグを設定する。それに応じて、マイクロコントローラ220は実質的に9秒〜30秒後に自爆TIME_OUT信号を出力し、それによって、発射体が配備されてから爆発に失敗した後で、TIME_OUT信号が発射体50の自爆を開始することができる。マイクロコントローラ220は、PIEZO_CLR信号、PIEZO_EN信号及びARM信号も出力する。PIEZO_CLR信号は、圧電出力信号が電子信管回路200によって処理される前に図3C又は図3C1に示されている圧電センサ262の状態をクリアするためのものである。PIEZO_CLR信号に対して相補的な圧電イネーブル(すなわちPIEZO_EN)信号が、衝撃の感知中に圧電センサ262の出力が発火信号を生成することを可能にするように提供される。1つの実施形態では、ARM信号は高−低パルスであり、電子信管回路200が過ったノイズによって作動されないことを確実にする。
【0025】
図3Cは、本発明の別の実施形態による衝撃センサトリガ回路260を示している。図3Cに示されているように、圧電センサ262は、電圧比較器264の非反転(+)端子に接続されており、一方で基準電圧は反転(−)端子に接続されている。基準電圧は、レジスタR3及びR4によって形成される分圧器において調整された電圧供給Vccをタッピングすることによって供給される。発射体50が衝撃を受けると、圧電センサ262が発生させる電圧ノイズが基準電圧よりも一時的に高くなり、したがって電圧比較器264の出力が高くなる。図3Cに示されているように、電圧比較器264の出力はDラッチ270のクロック端子に接続されている。それに応じて、Dラッチ270のクロック端子における上昇パルスに伴って、Dラッチ270のD端子におけるPIEZO_EN信号入力がQ出力を高くする。次に、圧電感知トリガ(すなわちPIEZO_TRG)信号が発火回路280に送信される。別の実施形態では、マイクロコントローラ220によって、PIEZO_CLR信号はDラッチ270のクリア(すなわちCLR)入力端子となり、一方でPIEZO_EN信号が衝撃感知をイネーブルにする。
【0026】
図3C1は、本発明の別の実施形態による衝撃センサトリガ回路260aを示している。衝撃センサトリガ回路260aは、図3C1に示されているように基準電圧がこの場合はマイクロコントローラ220からのDAC出力によって駆動される以外は、前述の回路260と同様である。1つの実施形態では、DAC出力は、経時にわたって高いレベルから比較的低いレベルに変化する。これは、発射体50がその標的に近づくにつれて衝撃センサトリガ回路260aがより感度が高くなるという点で有利である。試験によって、電子信管回路200は、機械的なポイント衝撃爆轟モードが無効である間に発射体50がそれらの標的に斜角で衝突するとしても衝撃を検出することが可能であることが示されている。他の利点は、衝撃センサトリガ回路260、260aの応答時間が機械的なポイント爆轟応答時間よりも短いことである。
【0027】
図3Dは、本発明の他の実施形態による発火回路280及び安全ロックアウト回路290を示している。発火回路280では、マイクロコントローラ220からのTIME_OUT信号出力及びDラッチ270からのPIEZO_TRG出力がORゲート282に接続されている。ORゲート282の出力は、シリコン制御整流子SCRのゲート電圧ラインを駆動するように動作可能である。図3Dに示されているように、SCRゲート電圧ラインは安全ロックアウト回路290に接続されている。
【0028】
図3Dに示されているように、安全ロックアウト回路290はnチャネル電界効果トランジスタ(FET)292を含み、そのドレインはSCRゲート電圧ラインに接続されており、ソースは接地に接続されている。FET292のゲートは分圧器に接続されており、ツェナーダイオードD4はセットバック発電機202によって電圧パルスVinが供給される。正のFETゲート電圧によってFET292のゲートチャネルが導通し;その結果、SCRゲート電圧が接地に下げられ、これによって電子信管回路200が安全解除されるまで安全ロックアウトが提供される。FET292のゲートにおける電圧は、発射体50がその標的に向かって推進されるにつれて低下する。FET292のゲートにおける電圧が低すぎてFET292を導通状態に保つことができず、FET292がオフになると、電子信管回路200は安全解除される。ORゲート282の入力におけるPIEZO_TRG信号又はTIME_OUT信号は、ORゲート282の出力を高にし、SCRに発火信号を提供する。SCRゲートにおいて発火信号がSCRをオンにし、次いで、電荷コンデンサC1、C2に貯蔵されている電気エネルギーVcapが送達されて電気起爆筒295を始動させる。
【0029】
安全ロックアウト回路290の別の実施形態では、マイクロコントローラ220からのARM信号は、nチャネルFET292のゲート電圧ラインに接続される。ARM信号は高−低信号である。電子信管回路200が安全解除される前は、ARM信号は高く、nチャネルFET292のゲートにおけるこの強制電圧によってnチャネルFET292が導通状態となり、SCRのゲート電圧ラインが接地に下げられる。電子信管回路200が安全解除されると、ARM信号は低になり、nチャネルFET292はオフになるため、発火信号がSCRゲートに送信されてSCRをオンにし、それによって、電荷コンデンサC1、C2に貯蔵されている電気エネルギーVcapが送達されて電気起爆筒295を始動させることが可能となる。
【0030】
別の実施形態では、衝撃センサトリガ回路260は機能的に独立している。これが、例えばマイクロコントローラ220の故障又は誤動作の場合の本発明の電子信管回路200のフェイルセーフ機能である。図3Cから分かるように、調整された電圧供給VccはPIEZO_CLRライン及びPIEZO_ENラインの双方に結合され;したがって、PIEZO_ENラインは発射体50が配備されるとすぐに常にイネーブルにされる。
【0031】
図2Aから、機械信管101が、ロータ114、ピニオンアセンブリ116、近接アセンブリ117及び撃針150等の多くの精密部品の移動を伴うことが認識されるであろう。例えば、発射体50は、硬い標的に斜角で衝突すると、跳ね返る可能性があり、その間に、発射体50の本体30がその標的に対して叩き付けられる可能性がある。幾つかの場合、この結果として撃針150が刺突起爆筒120の中心からオフセットされ、すなわち刺突起爆筒120の中心からずれる可能性がある。フレーム104もずれる可能性がある。他の場合では、機械信管101の構成要素がずれて動作不能になる可能性がある。刺突起爆筒120のずれは、伝爆薬32との火薬系列に影響を及ぼす可能性がある。発射体50の本体内の爆破装薬34は伝爆薬32の後方の或る距離にあるため、伝爆薬32のいかなるずれも爆破装薬34の爆轟に影響を及ぼす可能性がある。電子信管回路200の応答時間は機械信管101の応答時間よりも速いため、機械信管101のいかなるオフセット又はずれも生じる前に発火信号をトリガするために衝撃センサトリガ回路260、260aが設けられる。衝撃センサトリガ回路260、260aがトリガし発火回路280が応答するのは、発射体50が硬い標的に斜角で衝突した後の1000分の1秒の間であり;本発明の電子信管回路200はこれを達成するように設計されている。行った試験から、本発明の電気機械式信管100の全体的な信頼性は、95%以上の信頼水準で約99%以上に高まる。
【0032】
特定の実施形態を説明及び図示したが、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に対する多くの変化、変更、変形及びその組み合わせが可能であることが理解される。本発明の範囲は次に添付の特許請求の範囲に規定され、明細書及び図面によって裏付けられる。
図1
図2
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図3A
図3B
図3B1
図3C
図3C1
図3D