【文献】
ASUNI A.A. et al.,J. Neurosci.,27(34)(2007),p.9115-9129
【文献】
JICHA G.A. et al.,J. Neurosci. Res.,55(1999),p.713-723
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215よって分泌されることを更に特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
細胞株が、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215である、請求項9に記載の単離された細胞株。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、リン酸化タウ並びにリン酸化タウ凝集体及び/又はタウ断片を測定するための改良された方法及び/又はアッセイに関する。本発明は更に、リン酸化タウ及びリン酸化タウ凝集体をその身体部分において発現している又は発生させていることが確認された患者の治療に基づくある種の治療法に関する。本発明は、リン酸化タウ並びに/又はリン酸化タウ凝集体及び/もしくはタウ断片に結合するモノクローナル抗体、並びにそのようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供する。本発明は、本発明のモノクローナル抗体に結合するエピトープも提供する。本発明のいくつかの実施形態をクレーム形式で以下に直接示す。
【0016】
一実施形態(1)は、リン酸化タウ凝集体に結合することを特徴とする、単離されたタウ抗体、抗体様スカフォード(scaffold)、又は抗体断片に関する。
【0017】
一実施形態(2)は、軽鎖可変領域が、CDR1領域中に配列番号9に記載のアミノ酸配列を、CDR2領域中に配列番号10に記載のアミノ酸配列を、及びCDR3領域中に配列番号11に記載のアミノ酸配列を更に含み;かつ重鎖可変領域が、CDR1領域中に配列番号12に記載のアミノ酸配列を、CDR2領域中に配列番号13に記載のアミノ酸配列を、及びCDR3領域中に配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0018】
一実施形態(3)は、配列番号12〜配列番号14及び配列番号9〜配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜配列番号11及び配列番号12〜配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0019】
一実施形態(4)は、配列番号12〜配列番号14及び配列番号9〜配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜配列番号11及び配列番号12〜配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0020】
一実施形態(5)は、配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0021】
一実施形態(6)は、配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0022】
一実施形態(7)は、配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0023】
一実施形態(8)は、配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0024】
一実施形態(9)は、配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0025】
一実施形態(10)は、配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0026】
一実施形態(11)は、配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0027】
一実施形態(12)は、軽鎖可変領域が、CDR1領域中に配列番号22に記載のアミノ酸配列を、CDR2領域中に配列番号23に記載のアミノ酸配列を、及びCDR3領域中に配列番号24に記載のアミノ酸配列を更に含み;かつ重鎖可変領域が、CDR1領域中に配列番号19に記載のアミノ酸配列を、CDR2領域中に配列番号20に記載のアミノ酸配列を、及びCDR3領域中に配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0028】
一実施形態(13)は、配列番号19〜配列番号21及び配列番号22〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19〜配列番号21及び配列番号22〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%もしくは90%もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0029】
一実施形態(14)は、配列番号25及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号25及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%もしくは90%もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含むことを更に特徴とする、実施形態1による抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0030】
一実施形態(15)は、モノクローナル抗体である、実施形態1〜14のいずれか1つによる抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0031】
一実施形態(16)は、マウスモノクローナルIgG1サブタイプである、実施形態1〜14のいずれか1つによる抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0032】
一実施形態(17)は、例えば、単鎖抗体、Fv”断片、Fab断片(例えば、Fab’断片もしくはF(ab’)断片)、又は単一ドメイン抗体のヒト化抗体又はその断片である、実施形態1〜14のいずれか1つによる抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0033】
一実施形態(18)は、ヒト抗体又はその断片である、実施形態1〜14のいずれか1つによる抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0034】
一実施形態(19)は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、実施形態1による単離されたタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体に関する。
【0035】
一実施形態(20)は、リン酸化タウ凝集体及び非リン酸化タウに結合することを特徴とする、実施形態1による単離されたタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体に関する。
【0036】
一実施形態(21)は、
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx210(寄託者の名前:Dr Eugeen Vanmechelen;寄託時(2011年4月7日)の寄託者の住所:Innogenetics N.V.,Industriepark 7,box 4,B−9052 Zwijnaarde;寄託者の現住所:ADx NeuroSciences,Industriepark Zwijnaarde 4,9052 Gent−Zwijnaarde)、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx211(寄託者の名前:Dr Eugeen Vanmechelen;寄託時(2011年4月7日)の寄託者の住所:Innogenetics N.V.,Industriepark 7,box 4,B−9052 Zwijnaarde;寄託者の現住所:ADx NeuroSciences,Industriepark Zwijnaarde 4,9052 Gent−Zwijnaarde)、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215
からなる群から選択される細胞株によって分泌されることを更に特徴とする、実施形態1の抗体又は抗体断片に関する。
【0037】
一実施形態(22)は、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx210によって分泌されることを更に特徴とする、実施形態1〜19のいずれか1つによる抗体又は抗体断片に関する。
【0038】
一実施形態(23)は、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx211によって分泌されることを更に特徴とする、実施形態1〜19による抗体又は抗体断片に関する。
【0039】
一実施形態(24)は、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215によって分泌されることを更に特徴とする、実施形態12〜18及び20による抗体又は抗体断片に関する。
【0040】
一実施形態(25)は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)を更に含む、先の実施形態1〜24のいずれか1つによるタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0041】
一実施形態(26)は、タンパク質送達系、例えば、細胞形質膜を横断して、タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を細胞内に送達するペプチド又はタンパク質モチーフを更に含む、先の実施形態1〜24のいずれか1つによるタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0042】
一実施形態(27)は、該タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を媒介するタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を更に含む、先の実施形態1〜24のいずれか1つによるタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0043】
一実施形態(28)は、タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片と複合体化することができる、該タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を促進するための、キャリア試薬、例えば、脂質リポソームなどを更に含む、先の実施形態1〜24のいずれか1つによるタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0044】
一実施形態(29)は、タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を促進し、それにより、該細胞をトランスフェクトするためのキャリア試薬を更に含み、例えば、キャリア試薬が、生体活性細胞膜透過試薬、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)(すなわち、約15〜約30残基を含む単一ペプチド配列)を含有する他のペプチドであり、かつそのような膜形質導入ペプチドが、Trojanペプチド、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)−1転写アクチベーター(TAT)タンパク質又はその機能ドメインペプチド、並びに転移タンパク質、例えば、ショウジョウバエホメオティック転写因子アンテナペディア(Antp)及び単純ヘルペスウイルスDNA結合タンパク質VP22などに由来するタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含有する他のペプチドからなる群のものである、先の実施形態1〜24のいずれか1つによるタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0045】
一実施形態(30)は、タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を促進し、それにより、該細胞をトランスフェクトするためのキャリア試薬を更に含み、例えば、キャリア試薬が、生体活性細胞膜透過試薬、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)(すなわち、約15〜約30残基を含む単一ペプチド配列)を含有する他のペプチドであり、かつそのような膜形質導入ペプチドが、ペネトラチン1、Pep−1(Chariot試薬、Active Motif社、CA)、及びHIV GP41断片(519−541)からなる群のものである、先の実施形態1〜24のいずれか1つによるタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0046】
一実施形態(31)は、該タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達の効率を高めるためのヘルパー試薬を更に含み、例えば、そのようなヘルパー試薬が、DEAE−デキストラン、デキストラン、ポリリジン、ポリエチルアミン、ポリエチレングリコール、アクリルアミド、
RGDペプチド、例えば、Arg−Gly−Asp−Ser(配列番号52)、Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Ala−Ser−Ser−Lys−Pro(配列番号53)、及びヒドロゲルと
RGDペプチドの混合物などである、先の実施形態1〜24のいずれか1つによるタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片に関する。
【0047】
一実施形態(32)は、実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸に関する。
【0048】
一実施形態(33)は、実施形態1〜24のいずれか一項による抗体又は抗体断片を産生する単離された細胞株に関する。
【0049】
一実施形態(34)は、
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx210、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx211、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215
からなる群から選択される、実施形態33の細胞株に関する。
【0050】
一実施形態(35)は、動物においてリン酸化タウ凝集体に対する免疫応答を誘導する方法であって、該動物に、pho85Δ酵母株におけるタウの発現を含む方法によって得られるリン酸化タウ凝集体を投与することを含む、方法に関する。
【0051】
一実施形態(36)は、リン酸化タウ凝集体に結合するタウ特異的抗体又は抗体断片を得るための、実施形態35による方法に関する。
【0052】
一実施形態(37)は、リン酸化タウ凝集体の検出における又はタウオパチーのインビトロ診断における実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片の使用に関する。
【0053】
一実施形態(38)は、試料中のリン酸化タウ凝集体を検出するための又は対象におけるタウオパチーのインビトロ診断もしくはモニタリングのための方法であって、以下の工程:
−実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片と試料とを抗原−抗体複合体を生成させるのに好適な条件下で接触させる工程;及び
−該抗原−抗体複合体の形成を検出する工程
を含む、方法に関する。
【0054】
一実施形態(39)は、リン酸化タウ凝集体の検出のための又は対象におけるタウオパチーのインビトロ診断もしくはモニタリングのためのキットであって、実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片を含む、キットに関する。
【0055】
一実施形態(40)は、初期のアルツハイマー認知症を、とりわけ、対象におけるその他のタイプの認知症と区別するためのキットであって、実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片を含む、キットに関する。
【0056】
一実施形態(41)は、そのようなリン酸化タウ凝集体の形成又は安定性を妨げる組成物を同定するための、実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片を含む、キットに関する。
【0057】
一実施形態(42)は、リン酸化凝集タウの検出のための及びリン酸化凝集タウを伴う疾患の診断のための、実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片を含む、キットに関する。
【0058】
一実施形態(43)は、リン酸化タウ凝集体の形成又は安定性を妨げる組成物の同定のための方法であって、以下の工程:
−タウを、被検組成物の存在下で、リン酸化タウ凝集体の形成を可能にすることが知られている条件下でインキュベートする工程、又はリン酸化タウ凝集体を被検組成物の存在下でインキュベートする工程;
−リン酸化タウ凝集体を実施形態38の方法に従って検出する工程;
−前工程で検出されるリン酸化タウ凝集体の量を被検組成物の非存在下でのインキュベーション後に検出されるリン酸化タウ凝集体の量と比較する工程;
−前工程の比較から、該被検組成物がリン酸化タウ凝集体の形成又は安定性を妨げるかどうかを結論付ける工程
を含む、方法に関する。
【0059】
一実施形態(44)は、疾患の治療で使用するための、実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体又は抗体断片に関する。
【0060】
一実施形態(40)は、疾患の治療で使用するための、例えば、pho85Δ酵母株におけるタウの発現を含む方法によって得られる、リン酸化タウ凝集体に関する。
【0061】
一実施形態(45)は、実施形態1〜31のいずれか1つによる抗体、抗体様断片、又は抗体断片を含む、タウオパチーの予防又は治療のための予防的又は治療的組成物に関する。
【0062】
一実施形態(46)は、リン酸化タウ凝集体、例えば、pho85Δ酵母株におけるタウの発現を含む方法によって得られるものを含む、タウオパチーの予防又は治療のための予防的又は治療的組成物に関する。
【0063】
一実施形態(47)は、タウ関連疾患又はタウオパチーの治療で使用するための、実施形態1〜31のいずれか1つによる抗体、抗体様断片、又は抗体断片を含む、タウオパチーの予防又は治療のための予防的又は治療的組成物に関する。
【0064】
一実施形態(48)は、1〜24のいずれか一項によるそのような抗体、抗体様断片、又は抗体断片をコードする核酸に関する。
【0065】
一実施形態(49)は、タウタンパク質のエピトープを表すペプチドであって、該エピトープが、実施形態1〜24のいずれか1つによる抗体によって認識される、ペプチドに関する。
【0066】
一実施形態(50)は、配列番号27によって表される配列を含むか、該配列から本質的になるか、又は該配列からなる、実施形態49によるペプチドに関する。
【0067】
一実施形態(51)は、配列番号29によって表される配列を含むか、該配列から本質的になるか、又は該配列からなる、実施形態49によるペプチドに関する。
【0068】
一実施形態(52)は、9〜19アミノ酸長である、実施形態49によるペプチドに関する。
【0069】
一実施形態(53)は、リン酸化タウ凝集体に結合する抗体によって特異的に認識される、配列番号27又は28によって表される配列からなる実施形態49によるペプチドに関する。
【0070】
一実施形態(54)は、抗体ADx215によって特異的に認識される、配列番号27又は28によって表される配列からなる実施形態49によるペプチドに関する。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明は、一般に、リン酸化タウ、並びにリン酸化タウ及びリン酸化タウ凝集体に対する抗体に関する。本発明は、方法、アッセイ、キット、及び物質の組成物としてのものを含む、いくつかのやり方で実施することができる。一般に、開示された方法の工程の順序は、本発明の範囲内で変更することができる。実施形態は、1以上の例示的実施形態を示す添付の図面を参照して論じられる。実施形態は、多くの異なる形態で具体化されることができ、本明細書に示され、図面に示され、及び/又は以下に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。それどころか、これらの例示的実施形態は、特許請求の範囲に示されるような本発明の原理を当業者に伝達する完全な開示を可能にするために提供される。明確にするために、本発明に関する技術分野で公知である技術資料は、本発明が不必要に曖昧にならないように、詳細には記載されていない。別途表示又は定義されない限り、使用される用語は全て、当業者には明らかである、当技術分野におけるその通常の意味を有する。標準的な手引き書、例えば、(1994;Sambrook and Russell,2001;Delves et al.,2006;Krebs et al.,2009)、及び本明細書に引用される一般的な背景技術を更に参照する。
【0073】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」の使用は、文脈からそうでないことが明らかに示されない限り、言及された複数の主題に対する言及を含む。従って、例えば、「タンパク質(a protein)」に対する言及は、単一の触媒及び2種以上のタンパク質の組合せ又は混合物を含み、「抗原(an antigen)」に対する言及は、異なる抗原の組合せ又は混合物及び単一の抗原を包含し、などである。
【0074】
別の用語に従属する用語は、その用語が使用される文脈の範囲内で適切である場合、より広い用語に、又はより狭い特定の用語に包含されることができる。本発明を説明するために使用される用語は全て、文脈内で使用される。
【0075】
本発明は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、単離されたタウ抗体及び抗体断片を提供する。本発明は、リン酸化タウ凝集体に結合するが、非リン酸化タウには結合しないことを特徴とする単離されたタウ抗体及び抗体断片を提供する。本発明はまた、リン酸化タウ凝集体及び非リン酸化タウに結合することを特徴とする単離されたタウ抗体及び抗体断片を提供する。本発明は更に、単離されたタウ抗体及び抗体断片によって認識されるエピトープを提供する。
【0076】
本明細書で使用されるように、「タウ」、「タウタンパク質」、「タウアイソフォーム」、「タウ分子」、「タウ変異体」、「タウ突然変異体」、「タウホモログ」、及び「タウアイソフォーム」は、翻訳後修飾が存在するかどうかを問わず、タウ遺伝子の少なくとも1つのエキソンによってコードされるポリペプチド又はタンパク質を示すために互換的に使用される。そのような遺伝子は、上述のタウタンパク質ファミリーのタンパク質及びその誘導体をコードすることができる。そのようなタンパク質は、繰り返される会合及び分解のサイクルの間に微小管と共精製される多くの数のタンパク質ファミリーの中の1つのファミリーとして特徴付けられており(Shelanski et al.,1973)、微小管関連タンパク質(MAP)として知られている。タウファミリーは更に、このファミリーの全てのメンバーによって共有される特徴的なN末端セグメント、脳において発生的に調節されている、N末端セグメント中に挿入された〜50アミノ酸の配列、31〜32アミノ酸の3つ又は4つのタンデムリピートからなる特徴的なタンデムリピート領域、及びC末端尾部の存在によって特徴付けられる。タウタンパク質は、一実施形態において、Goedert et al.,1989に記載されている配列を有する「T40」のアミノ酸配列を含む実施形態で用いることができる。
【0077】
「タウ遺伝子」、「タウ核酸」、「タウポリヌクレオチド」、「タウ遺伝子コンストラクト」、「タウ遺伝子変異体」、「タウ遺伝子ホモログ」という用語は互換的に使用され、タウ、タウアイソフォーム、タウ変異体、タウホモログ、タウ突然変異体、又はこれらの部分をコードする、一本鎖DNA(ssDNA)、相補的DNA(cDNA)、合成DNA、メッセンジャーRNAを含むが、これらに限定されない、天然のタウ遺伝子、そのアレル変異体、そのホモログ、その突然変異した変異体、その転写物、その部分、又はその組換え誘導体を意味する。
【0078】
タウは、ニューロンで合成される微小管関連タンパク質(MAP)である。異なる生理的役割を有するタウの6つの主なアイソフォームは、選択的スプライシングによって単一の遺伝子から生じる(Goedert et al.,1989)。これらのアイソフォームは、エキソン2及び3によってコードされる0、1、又は2個のN末端挿入(それぞれ、0N、1N、及び2Nアイソフォームと表される)、並びにエキソン10によってコードされる更に0又は1個の余分なC末端微小管結合ドメイン(それぞれ、3R及び4Rと表される)を含有することができる。従って、これらのアイソフォームは、0N/3R、0N/4R、1N/3R、1N/4R、2N/3R、及び2N/4Rと表される。例えば、本発明の一実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日にアクセッション番号NP_058519 wで寄託されたNCBI参照配列:NP_058519.3を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム1[ホモ・サピエンス](本出願中、配列番号1)である。例えば、本発明の別の実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日付けで、アクセッション番号NP_005901 NP_776088の下で寄託されたNCBI参照配列:NP_005901.2を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム2[ホモ・サピエンス](本出願中、配列番号2)である。例えば、本発明の別の実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日付けで、アクセッション番号NP_058518、バージョンNP_058518.1 GI:8400711で寄託されたNCBI参照配列:NP_058518.1を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム3[ホモ・サピエンス](本出願中、配列番号:3)である。例えば、本発明の別の実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日付けで、アクセッション番号NP_058525、バージョンNP_058525.1 GI:8400715で寄託されたNCBI参照配列:NP_058525.1を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム4[ホモ・サピエンス](本出願中、配列番号4)である。例えば、本発明の別の実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日付けで、アクセッション番号NP_001116539 バージョンNP_001116539.1 GI:178557736で寄託されたNCBI参照配列:NP_001116539.1を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム5[ホモ・サピエンス](本出願中の参照番号:5)である。例えば、本発明の別の実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日付けで、アクセッション番号NP_001116538 バージョンNP_001116538.2 GI:294862258で寄託されたNCBI参照配列:NP_001116538.2を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム6[ホモ・サピエンス](本出願中、配列番号6)である。例えば、本発明の別の実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日付けで、アクセッション番号NP_001190180 バージョンNP_001190180.1 GI:322303720で寄託されたNCBI参照配列:NP_001190180.1を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム7[ホモ・サピエンス](本出願中、配列番号7)である。例えば、本発明の別の実施形態において、アイソフォームは、2011年6月26日付けで、アクセッション番号NP_001190181 バージョンNP_001190181.1 GI:322303747で寄託されたNCBI参照配列:NP_001190181.1を有する微小管関連タンパク質タウアイソフォーム8[ホモ・サピエンス](本出願中、配列番号8)である。
【0079】
タウの生理的機能はリン酸化によって更に調節される。最も長いアイソフォームであるタウ−2N/4Rは441アミノ酸長であり、85個の推定リン酸化部位を有し、その大部分は、微小管結合ドメインの中及びその付近に位置する。タウオパチーでは、対らせん状線維(PHF又はPHFタウ)及び神経原線維のもつれ(NFT)などのタウ凝集体のニューロン内沈着の形成をもたらす、タウの過剰リン酸化及び凝集が認められる(Mandelkow et al.,2003;Drewes,2004)。
【0080】
本明細書で使用されるように、「リン酸化タウ」及び「ホスホ−タウ」は、少なくとも1つのアミノ酸がリン酸化されているタウタンパク質を表すために互換的に使用される。「過剰リン酸化タウ」とは、少なくとも2つのアミノ酸がリン酸化されているタウタンパク質を意味する。
【0081】
「タウ凝集体」、「凝集タウ」、「タウオリゴマー」、「オリゴマータウ」、「オリゴマー形態のタウ」、及び「タウ配座異性体」は、「単量体タウ」及び「タウ単量体」とは対照的に、2以上のタウ分子を含むタンパク質構造を表すために互換的に使用される。従って、これらの用語は、限定されないが、タウの二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体(enneamer)、十量体、十二量体、二十量体、三十量体、四十量体、又は高次オリゴマー及び多量体を含み、その非限定的な例は、粒状凝集体、PHF、直線状フィラメント、及びNFTである。タウ凝集体中の単量体は、上記のような、タウの任意の形態であることができる。タウ凝集体中の個々の単量体は、凝集体の全ての単量体が似ているという点において、均質であることができ、又は個々の凝集体が異なる形態のタウを含むという点において、不均質であり得る。タウ凝集体中の単量体は、互いに共有結合的に結合し得、或いは限定されないが、疎水性もしくは親水性相互作用、水素結合、塩架橋、又はファンデルワールス力を含む、弱い分子間力によって非共有結合的に結合することができる。凝集体の集団は、その集団内の全ての個々の凝集体が似ているという点において、均質であることができ、又はその集団内の個々の凝集体が他のものと異なり得るという点において、不均質であることができる。
【0082】
「リン酸化タウ凝集体」とは、リン酸化タウの凝集体を意味する。
【0083】
タウ凝集体は、可溶性又は不溶性であることができる。特定の実施形態において、リン酸化タウ凝集体は、可溶性である。「可溶性」とは、タウ凝集体が流体中で溶解することを意味する。「流体」という用語は、CSF、血液、血漿、血清、尿などのような体液、当業者に公知であり、かつ限定されないが、生理的塩溶液を含む、生理的溶液を含み、緩衝剤、洗剤、界面活性剤、糖類、キレート剤、酵素阻害剤、還元剤、酸化剤などのような追加の薬剤を含むことができる。「不溶性」とは、タウ凝集体が流体から沈殿することを意味する。
【0084】
従って、タウ凝集体の溶解性は、生理的条件下で、又は例えば、サルコシル(同義語:N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩及びN−ドデカノイル−N−メチルグリシンナトリウム塩)もしくはSDS(同義語:ラウリル硫酸ナトリウム塩)のような洗剤の存在下で決定することができる。当業者は、サルコシル含有流体中でのタウ凝集体の溶解性を決定するための、並びにサルコシル可溶性及びサルコシル不溶性タウ凝集体を単離するための既存のプロトコルを知っている。そのようなプロトコルの例は、実施例及び(Greenberg and Davies,1990;Vandebroek et al.,2005)に見出される。
【0085】
更に、タウ凝集体は、SDS及び/又はβ−メルカプトエタノール(β−ME)のような還元剤の存在下で安定であることができ、或いはそれらは、より低次のオリゴマーもしくは単量体に分解することができ、並びに/又はSDS及び/もしくはβ−MEの存在下で可溶化することができる。タウ凝集体の分解及び/又は可溶化は、還元剤の存在下又は非存在下、0.1〜10%の範囲、又はそれより多くのSDSで起こることができる。好ましくは、それは、還元剤の存在下又は非存在下、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、7.5、10%、又はそれより多くのSDSで起こることができる。タウ凝集体の分解及び/又は可溶化は、SDSの存在下又は非存在下、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、7.5、10mM、又はそれより多くの還元剤で起こることができる。タウ凝集体の分解及び/又は可溶化は、煮沸なしで又は煮沸後に起こることができる。
【0086】
本発明の特定の実施形態において、リン酸化タウ凝集体は、PHO85遺伝子が欠失している酵母株(pho85Δ株)におけるタウの産生によって得られる。リン酸化タウ凝集体は、産生酵母の全抽出物中で、又は精製後に使用することができる。リン酸化タウ凝集体の精製のためのあり得るプロトコルは、(Vandebroek et al.,2005)に記載されており、また更に、実施例に記載されている。より好ましい実施形態において、産生されるタウは、ヒトタウである。更により好ましい実施形態において、産生されるタウは、ヒトタウの2N/4Rアイソフォームである。
【0087】
特定の実施形態において、リン酸化タウ凝集体は、電気泳動移動度によって推定される、単量体タウの分子質量よりも大きい見かけの分子質量を有する。より好ましい実施形態において、リン酸化タウ凝集体は、リン酸化タウの二量体及び/又は三量体を含む。更により好ましい実施形態において、タウは、ヒトタウの2N/4Rアイソフォームであり、リン酸化タウ凝集体は、75kDaよりも大きい、より好ましくは、80、90、100、110、120、130、又は140kDaよりも大きい見かけの分子質量を有する。
【0088】
タウオパチーは、神経変性の場合はヒトの脳細胞における、及び2型糖尿病タウオパチーの場合はβ−細胞における、タウタンパク質の病的凝集に起因する変性疾患群である。最近、2型糖尿病(T2DM)とアルツハイマー病(AD)の同時発症が頻発することが、疫学的研究によって示された。β−細胞とニューロンの間には、極めて特異的な分子の厳しく制御された様式での必要に応じた分泌などの、機能的類似性がある。更なる類似性は、AD患者における過剰リン酸化タウの加齢に関連した変化である。同様に、T2DM患者のβ−細胞において変化が確認されている。島アミロイドポリペプチドは、β−細胞アポトーシスと関連付けられている。加齢の結果として、高度に修飾されたタンパク質の蓄積は、再生能の減少とともに、アポトーシスの割合の増加をもたらし得る。更に、β−細胞複製能力の低下は、哺乳動物におけるβ−細胞集団の減少をもたらし、耐糖能異常を同時に伴う。新しい課題は、加齢に関連したタンパク質修飾についてより一層多くのことを学ぶことである。これは、T2DM及びADの発生率を低下させるための新しい治療戦略につながり得る(Maj et al.,2011)。最もよく知られているタウオパチーは、アルツハイマー病(AD)であり、この場合、タウタンパク質は、神経原線維のもつれ(NFT)の形態でニューロン内に沈着している。神経原線維のもつれは、名祖アロイス・アルツハイマーにより、この障害に罹患した彼の患者の一人において最初に記載された。もつれは、タウとして知られる微小管関連タンパク質の過剰リン酸化により形成され、それを不溶性形態で凝集させる。もつれ形成の正確なメカニズムは完全には理解されておらず、もつれが、この疾患における主要な原因であるのか、それとも、より周辺的な役割を果たしているのかについては、今なお意見が分かれている。老人斑が存在するため、ADは、アミロイドーシスにも分類される。ADにおける過剰リン酸化タウタンパク質(PHF)の凝集、又は「対らせん状線維」病変の度合いは、ブラークステージによって定義される。ブラークステージI及びIIは、NFT病変が、主に脳の移行嗅内(transentorhinal)領域に限定されている場合に、ステージIII及びIVは、海馬などの辺縁領域の病変もある場合に、V及びVIは、広範な新皮質病変がある場合に使用される。これは、異なる形で進行する老人斑病変の度合いと混同されるべきではない。神経原線維のもつれが一般に観察される他の疾病としては:ボクサー認知症(慢性外傷性脳症)、前頭側頭認知症、及び17番染色体と連鎖するが、検出可能なβ−アミロイド斑を伴わないパーキンソニズム、リティコ・ボディング病(グアム島のパーキンソン認知症複合)、ADと類似したNFTを伴うが、斑は伴わず、超高齢者で見られる傾向にあるもつれ優位型認知症、神経節膠腫及び神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性汎脳炎、並びに鉛脳症、結節硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病、及びリポフスチン症が挙げられる。ピック病及び大脳皮質基底核変性症では、タウタンパク質は、腫脹した又は「膨脹した」ニューロン内に封入体の形態で沈着する。別のタイプの認知症である嗜銀性顆粒病(AGD)は、脳組織の顕微鏡検査での大量の嗜銀性顆粒及びコイル体の存在を特徴とする。それをアルツハイマー病の一種と考える人もいる。それは、進行性核上まひ及び大脳皮質基底核変性症などの他のタウオパチーと共存することができる。いくつかの他のタウオパチーとしては:前頭側頭認知症、前頭側頭葉変性症が挙げられる。非アルツハイマー型タウオパチーは、「ピック複合」としてグループ化されることもある。
【0089】
「抗体(antibody)」及び「抗体(antibodies)」という用語は、当技術分野で認めらており、抗原に結合する免疫グロブリンとしても知られるタンパク質を指す。これらの用語は、少なくとも2つの重鎖及び2つの軽鎖から構成される、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgT、IgX、及びIgYのような従来の脊椎動物抗体、並びに2つの重鎖からのみ構成される抗体(V
HH抗体、IgNAR、重鎖抗体、単一ドメイン抗体、又はナノボディ)、及び単鎖抗体を包含することが理解されるべきである。従来の抗体の場合、抗原結合部位は、重鎖と軽鎖の両方の可変ドメイン(V
H及びV
L)によって寄与されている。「可変ドメイン」という用語は、部分的に又は完全に抗原結合に関与する抗体の部分又はドメインを指す。一般に、可変ドメインは、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)から本質的になるアミノ酸配列、又は通常、これらのCDRのうちの少なくとも1つを形成するアミノ酸残基の少なくとも一部を含有するそのようなアミノ酸配列の任意の好適な断片である。そのような可変ドメイン及び断片は、それらが、免疫グロブリンフォールドを含み、又は好適な条件の下で、免疫グロブリンフォールドを形成することができるようなものであることが最も好ましい。各々のCDRは、多かれ少なかれ、抗体による抗原結合に寄与することができる。単一ドメイン抗体又は重鎖抗体は、ラクダ科動物及びサメに見出すことができ、これらの抗体の抗原結合部位の各々は、単一の重鎖可変ドメイン(V
HH)のみによって形成される。従って、3つのCDRだけが、多かれ少なかれ、各々の抗原結合部位に寄与する。単鎖抗体(scFv)は、柔軟なリンカーで分離されたV
HドメインとV
Lドメインを単一の抗原結合ドメインへと翻訳融合することにより、従来の抗体から誘導される。抗体のフレームワーク配列は、抗体の抗原特異性を改変しないで、又は抗体の結合親和性を変化させるために、改変することができる。更に、従来の抗体は、抗原結合特性に実質的に影響を及ぼさないで、クラス又はアイソタイプをスイッチさせることができる。
【0090】
「抗体断片」という用語により、それが由来する抗体の抗原結合能力を大部分保持する抗体の断片を意味する。従って、本発明のタウ特異的抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することができる。抗原結合能力は、1つ又は複数の可変ドメイン、より具体的には、従来の単鎖抗体の場合、V
H及び/又はV
Lドメインに位置する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDR、並びに単一ドメイン抗体の場合、1つ、2つ、又は3つのCDRによって決定される。従って、本発明の好ましい抗体断片は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRを含む抗原結合部位を含む。2つ以上のCDRは、CDRにフレームワーク構造を提供する領域を接続することにより、互いに物理的に分離されることができる。本発明のより好ましい抗体断片は、1つ又は2つの可変ドメインを含む抗原結合部位を含む。抗体断片の例は、当業者に周知であり、一価抗原結合断片(Fab)、二価F(ab’)
2断片、Fv断片(例えば、単鎖抗体scFv)、小型化抗体、ナノボディのような単一ドメイン抗体断片(Nelson,2010)を含む。本発明の抗体断片は、酵素的もしくは化学的タンパク質分解によって、又は当業者に周知の組換えDNA技術の手法によって得ることができる。
【0091】
本発明の抗体及び抗体断片を更に、他のタンパク質に化学的にコンジュゲートするか、非共有結合的に結合させるか、又は翻訳によって融合させることができる。単鎖抗体scFvは、V
HドメインとV
Lドメインの翻訳融合の一例である。更なる例は、アルブミンコンジュゲート抗体又は抗体断片、二価ダイアボディ、並びに単一特異性及び二重特異性タンデムsvFc(Nelson,2010)である。
【0092】
本発明の抗体及び抗体断片を更に修飾することができる。そのような修飾の例としては、ストレプトアビジンなどの、検出において作用する検出可能な酵素、蛍光、発光、又は放射性マーカー基又は分子の付加が挙げられる。他の例としては、PEG化などの、抗体及び抗体断片の半減期を改変するための化学修飾が挙げられる。更に他の例では、抗体及び抗体断片に、毒素、放射性アイソトープ、酵素、サイトカイン、及び抗原などの、エフェクター部分が付加される(Nelson,2010)。
【0093】
抗体又は抗体断片を更に、それが由来する抗体又は抗体断片の抗原結合能力を大部分保持する抗体由来スカフォード又は抗体様スカフォードへと修飾することができる。抗体由来スカフォード又は抗体様スカフォードの例は、天然の抗体と同じエピトープに選択的又は優先的に結合するドメイン抗体(dAb)、例えば、完全にヒトのフレームワークを有するdAb、例えば、ヒトFcドメインに融合したdAb、又は例えば、ヒトでIgG様の循環半減期を有する分子中で改変されたナノボディもしくは保持された抗原結合能力を有する抗体断片もしくは制御送達及び細胞送達のための活性スカフォードを有するドメイン抗体についてのものである。
【0094】
一実施形態において、本発明の抗体及び抗体断片をヒト化する。ヒト化抗体及び抗体断片を得るために、本発明の抗体に由来する抗体断片をヒト抗体のFc領域に融合させることができる。ヒト化抗体又は抗体断片は、1以上のCDR、又はその特異性決定残基(SDR)のみを、任意に最適なCDR機能性に重要な、所望の抗原結合特異性を有する非ヒト抗体の、1以上のフレームワーク残基とともに、ヒト抗体又は抗体断片のフレームワークポリペプチド配列に、又は更には、普遍的なヒト化ナノボディスカフォードに移植することによって得ることもできる。抗体をヒト化する方法は、当業者に周知である(例えば、(De Pascalis et al.,2002;Kashmiri et al.,2005;Almagro and Fransson,2008;Vincke et al.,2009;Borras et al.,2010;Harding et al.,2010)を参照されたい)。
【0095】
本発明の抗体断片は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて作製することもできる。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面に提示される。特に、そのようなファージを利用して、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えば、ヒト又はマウス)から発現されるエピトープ結合ドメインを提示することができる。関心対象の抗原に結合するエピトープ結合ドメインを発現するファージは、抗原で、例えば、固体表面又はビーズに結合した又は捕捉された標識抗原を用いて選択又は同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合された抗原結合抗体ドメインを有するファージから発現されるfd及びM13結合ドメインを含む糸状ファージである。本発明の抗体又は抗体断片を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の例としては、(Kettleborough et al.,1994;Burton and Barbas,III,1994;Brinkmann et al.,1995;Ames et al.,1995;Persic et al.,1997);WO/1992/001047号;WO590102809号;WO91/10737号;WO92/01047号;WO92/18619号;WO93/11236号;WO95/15982号;WO95/20401号;並びに米国特許第5,698,426号;5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号及び第5,969,108号に開示されているものが挙げられる。
【0096】
ファージ選択の後、これらの断片をコードするファージの領域を単離し、使用し、組換えDNA技術を用いた哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む選択された宿主内での発現によって、エピトープ結合断片を作製することができる。例えば、組換えによって抗原結合断片を産生する技術は、当技術分野で公知の方法、例えば、WO92/22324号;(Better et al.,1988;Mullinax et al.,1992;Sawai et al.,1995)に開示されている方法を用いて利用することもできる。単鎖Fv及び抗体を産生するために使用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号;(Skerra and Pluckthun,1988;Huston et al.,1991;Shu et al.,1993)に記載されているものが挙げられる。
【0097】
抗体がそのコグネートなエピトープを認識し、それに結合する能力を妨げることなく、CDRを含む残基を変化させることができる。例えば、エピトープ認識に影響を及ぼさないが、エピトープに対する抗体の結合親和性を増大させる変化を生じさせることができる。いくつかの研究により、一次抗体配列の知識に基づく、抗体の配列中の様々な位置への1以上のアミノ酸変化の導入の、その特性、例えば、結合及び発現レベルに対する効果が調査されている(Yang et al.,1995;Vaughan et al.,1998;Rader et al.,1998)。これらの研究(いわゆる、親和性成熟技術)では、オリゴヌクレオチド介在性部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、エラーを起こしやすいPCR、DNAシャッフリング、又は大腸菌(E.coli)のミューテーター株などの方法を用いて、CDR1、CDR2、CDR3、又はフレームワーク領域中のコード遺伝子の配列を変化させることにより、改変型の抗体が作製されている(Vaughan et al.,1998)。抗体の配列を変化させるこれらの方法により、得られる抗体の親和性の改善がもたらされている(Gram et al.,1992;Davies and Riechmann,1996;Thompson et al.,1996;Boder et al.,2000;Furukawa et al.,2001;Short et al.,2002)。
【0098】
「タウ抗体」及び「タウ抗体断片」とは、それぞれ、タウに結合する抗体及び抗体断片を意味する。従って、本発明のタウ抗体及びタウ抗体断片は、タウに結合し、かつリン酸化タウ凝集体に優先的に結合する抗体及び抗体断片である。当業者が認識するように、これは、本発明の抗体又は抗体断片が、これらの凝集体中のタウのリン酸化エピトープを介してリン酸化タウ凝集体に結合するということを必ずしも意味するものではない。
【0099】
ペプチドに言及する場合の「好ましく結合する」又は「特異的に結合する(specifically bind(s))」又は「特異的に結合する(bind(s) specifically)」という語句は、標的分子に対する、排他的な又は優先的な、中間の又は高い結合親和性を有するペプチド分子を指す。「に好ましく結合する」又は「に特異的に結合する」という語句は、不均質なタンパク質集団及び他の生物製剤の存在下で標的タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。従って、指定されたアッセイ条件下で、特定の結合部分は、特定の標的タンパク質に優先的に結合し、被検試料中に存在する他の成分にそれほど多くの量では結合しない。そのような条件下での標的タンパク質に対する特異的結合は、特定の標的抗原に対するその特異性について選択されている結合部分を必要とする場合がある。種々のアッセイ形式を用いて、特定のタンパク質と特異的に反応するリガンドを選択することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイ、免疫沈降、典型的には、特異的又は選択的反応は、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍であり、より典型的には、バックグラウンドの10倍を超える。例えば、本発明の抗体及び抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合し、そのため、「優先的に結合する」、「優先的に認識する」、又は「と優先的に反応する」とは、これらの抗体又は抗体断片が、リン酸化及び非リン酸化タウ単量体を含む任意の他の抗原と比較して、リン酸化タウ凝集体に対するより大きい結合能力を示すことを意味する。抗体又は抗体断片の抗原に対する結合能力は、その抗原に対するその親和性及び/又は結合力を反映する。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の抗体はモノクローナルである。「モノクローナル抗体」という用語は、当技術分野で十分に認識されており、単一のクローンに由来する抗体又は均質な抗体集団を指す。モノクローナル抗体集団に由来する個々の抗体は、小規模な天然の突然変異が存在し得るという点において、本質的に同一である。モノクローナル抗体集団由来の抗体は、特定のエピトープに対する均質な結合特異性及び親和性を示す。
【0101】
物に適用される場合の「天然の」という用語は、物を天然に見出すことができるという事実を指す。例えば、天然の源から単離することができ、実験室で人間によって意図的に修飾されていない生物体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、天然である。
【0102】
「再編成された」という用語は、Vセグメントが、それぞれ、完全なVH又はVLドメインを本質的にコードする構造においてD−J又はJセグメントに直接隣接して位置している、重鎖又は軽鎖免疫グロブリン座の配置を指す。再編成された免疫グロブリン遺伝子座は、生殖系列DNAとの比較によって同定することができ;再編成された座は、少なくとも1つの組み換えられたヘプタマー/ノナマー相同エレメントを有する。
【0103】
Vセグメントとの関連における「再編成されていない」又は「生殖系列配置」という用語は、Vセグメントが、D又はJセグメントに直接隣接するように組換えられていない配置を指す。
【0104】
そのような抗体又は再編成された抗体を取得するためのマニュアルは、当業者に利用可能である。概説は、近著Handbook of Therapeutic Antibodies,Stefan Dubel,Wiley−VCH Verlag GmBH & Co,KGaA編に提供されている。
【0105】
「核酸」という用語は、DNA分子及びRNA分子を含むことが意図される。核酸は、一本鎖又は二本鎖であることができる。
【0106】
2つの核酸又はポリペプチドの文脈における「実質的に同一な」という用語は、最大の対応について比較し、整列させたとき、以下の配列比較法を用いて及び/又は目視検査によって測定される、少なくとも約80%、約90、約95%、又はそれより高いヌクレオチド又はアミノ酸残基同一性を有する2以上の配列又はサブ配列を指す。そのような「実質的に同一な」配列は、通常、相同であると考えられる。「実質的同一性」は、比較されるべき2つの配列の少なくとも約50残基長である配列の領域にわたって、該2つの配列の少なくとも約100残基の領域にわたって、又は該2つの配列の少なくとも約150残基の領域にわたって、又は該2つの配列の全長の領域にわたって存在することができる。抗体の場合、任意の2つの抗体配列は、Kabatの付番方式を用いることによって、一方向に整列させることしかできない(下記参照)。従って、抗体について、パーセント同一性は、独特のかつ明確に定義された意味を有する。
【0107】
免疫グロブリンの成熟した重鎖及び軽鎖の可変領域由来のアミノ酸は、それぞれ、Hx及びLxと表され、ここで、xは、Kabat、Sequences of Proteins of Immunological Interestの方式に従ったアミノ酸の位置を表す番号である(National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991)。Kabatは、各々のサブグループの抗体について多くのアミノ酸配列を記載し、そのサブグループにおける各々の残基位置についての最もよく見られるアミノ酸を記載して、コンセンサス配列を生成させた。Kabatは、残基番号を記載された配列中の各々のアミノ酸に割り当てる方法を使用し、残基番号を割り当てるこの方法は、この分野で標準となった。Kabatの方式は、問題になっている抗体を、保存されたアミノ酸に関してKabatのコンセンサス配列のうちの1つと整列させることにより、その一覧表に含まれない他の抗体に拡張可能である。Kabat付番方式の使用により、異なる抗体中の等価な位置のアミノ酸が容易に特定される。例えば、ヒト抗体のL50の位置のアミノ酸は、マウス抗体のアミノ酸位置L50と等価な位置を占める。同様に、抗体鎖をコードする核酸は、それぞれの核酸によってコードされるアミノ酸配列をKabatの付番慣習に従って整列させたときに整列される。
【0108】
「に選択的に(又は特異的に)ハイブリダイズする」という語句は、その配列が複合混合物(例えば、全細胞DNAもしくはRNA又はライブラリーDNAもしくはRNA)中に存在するとき、分子が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列に結合するか、該配列と二重鎖を形成するか、又は該配列にハイブリダイズすることを指し、ここで、この特定のヌクレオチド配列は、バックグラウンドの少なくとも約10倍で検出される。一実施形態において、核酸は、別の方法で本発明の範囲内にあると決定される核酸(例えば、本明細書に記載の例示的な配列)にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするその能力によって本発明の範囲内にあると決定することができる。
【0109】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、プローブが、通常、核酸の複合混合物中で、その標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列に顕著な量ではハイブリダイズしない条件を指す(陽性シグナル(例えば、本発明の核酸の同定)は、バックグラウンドハイブリダイゼーションの約10倍である)。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる状況下で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な指針は、例えば、Sambrook編,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(第2版),第1〜3巻,Cold Spring Harbor Laboratory,(1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Ausubel編.John Wiley & Sons,Inc.,New York(1997);LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY:HYBRIDIZATION WITH NUCLEIC ACID PROBES,第I部.Theory and Nucleic Acid Preparation,Tijssen編.Elsevier,N.Y.(1993)に見出される。
【0110】
通常、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度pHでの特定の配列の熱的融点(Tm)よりも約5〜10℃低い温度となるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(規定されたイオン強度、pH、及び核酸濃度下での)温度である(標的配列が過剰に存在するとき、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占められている)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3で、約1.0M未満のナトリウムイオン、通常、約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、かつ温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、及び長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)については少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は、(以下に引用される)Sambrookに記載されているような、ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によって達成することもできる。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションについて、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示的な高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は:50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でのインキュベーション、又は5×SSC及び1%SDS、65℃でのインキュベーション、0.2×SSC及び0.1%SDS中、65℃での洗浄を含む。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションについて、陽性シグナル(例えば、本発明の核酸の同定)は、バックグラウンドハイブリダイゼーションの約10倍である。本発明の範囲内の核酸を同定するために使用されるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDSを含むバッファー中、42℃でのハイブリダイゼーション、又は5×SSC及び1%SDSを含むバッファー中、65℃でのハイブリダイゼーションを含み、どちらも0.2×SSC及び0.1%SDSによる、65℃での洗浄を含む。本発明において、本発明の核酸を含むゲノムDNA又はcDNAは、本明細書に開示される核酸配列を用いて、ストリンジェントな条件下、標準的なサザンブロットで同定することができる。(本発明の範囲内の核酸を同定する)そのようなハイブリダイゼーションのための更なるストリンジェントな条件は、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSのバッファー中、37℃でのハイブリダイゼーションを含む条件である。
【0111】
しかしながら、ハイブリダイゼーション形式の選択は重要ではない−−核酸が本発明の範囲内にあるかどうかを決定する条件を示すのは、洗浄条件のストリンジェンシーである。本発明の範囲内の核酸を同定するために使用される洗浄条件は、例えば:約0.02モル濃度の塩濃度、pH7、及び少なくとも約50℃もしくは約55℃〜約60℃の温度;又は約0.15M NaClの塩濃度、72℃、約15分間;又は約0.2×SSCの塩濃度、少なくとも約50℃もしくは約55℃〜約60℃の温度、約15〜約20分間;又はハイブリダイゼーション複合体を、0.1%SDSを含む約2×SSCの塩濃度の溶液で、室温で15分間、2回洗浄し、その後、0.1%SDSを含む0.1×SSCで、68℃で15分間、2回洗浄すること;又は同等の条件を含む。SSCバッファー及び同等の条件の説明については、Sambrook、Tijssen、及びAusubelを参照されたい。
【0112】
本発明の核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、又は部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態で存在する。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び当技術分野で周知の他のものを含む標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の夾雑物、例えば、他の細胞核酸又はタンパク質から精製分離されたときに、「単離された」又は「実質的に純粋にされた」ものとなる。例えば、Sambrook、Tijssen、及びAusubelを参照されたい。本発明の核酸配列及び本発明を実施するために使用される他の核酸は、RNAであれ、cDNAであれ、ゲノムDNAであれ、これらのハイブリッドであれ、種々の供給源から単離し、遺伝的に改変し、増幅させ、及び/又は組換えにより発現させることができる。細菌の他に、例えば、酵母、昆虫、又は哺乳動物系を含む、任意の組換え発現系を使用することができる。或いは、これらの核酸は、インビトロで化学的に合成することができる。例えば、発現ベクター中へのサブクローニング、プローブの標識、シークエンシング、及びハイブリダイゼーションなどの核酸の操作のための技術は、科学文献及び特許文献に十分に記載されており、例えば、Sambrook、Tijssen、及びAusubelを参照されたい。核酸は、当業者に周知のいくつかの一般的な手段のいずれかによって解析及び定量することができる。これらには、例えば、分析的な生化学的方法、例えば、NMR、分光光度法、ラジオグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、及び超拡散クロマトグラフィー、様々な免疫学的方法、例えば、流体又はゲル沈降反応、免疫拡散(一元又は二元)、免疫電気泳動、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、サザン解析、ノーザン解析、ドットブロット解析、ゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)、RT−PCR、定量PCR、他の核酸又は標的又はシグナル増幅法、放射性標識法、シンチレーション計測、並びに親和性クロマトグラフィーが含まれる。
【0113】
本発明の核酸組成物は、cDNA、ゲノム、又はこれらの混合物のいずれかに由来するネイティブ配列(修飾された制限部位などを除く)中にあることが多いが、これを、標準的な技術に従って突然変異させて、遺伝子配列を提供することができる。コード配列について、これらの突然変異は、望ましいように、アミノ酸配列に影響を及ぼすことができる。特に、本明細書に記載のそのような配列と実質的に相同な又は該配列に由来するDNA配列が企図される(この場合、「由来する」とは、配列が同一であるか、又は別の配列から修飾されていることを示す)。
【0114】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれているとき、「機能的に連結されている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、このコード配列に機能的に連結されている。転写調節配列に関して、機能的に連結されているとは、連結されているDNA配列が連続的であり、また、2つのタンパク質コード領域を接続する必要がある場合、連続的でかつリーディングフレーム中にあることを意味する。スイッチ配列について、機能的に連結されているとは、配列がスイッチ組換えをもたらすことができることを示す。
【0115】
「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を運搬することができる核酸分子を指すことが意図される。1つのタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは、その中に追加のDNAセグメントを連結し得る環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターは、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム中に連結し得るウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター、及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内への導入によって、宿主細胞のゲノム中に組み込まれることができ、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。更に、ある種のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を導くことができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(又は単に、「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用することができるが、それは、プラスミドが最も一般的に使用されるベクター形態であるからである。しかしながら、本発明は、等価な機能を果たす、他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含むことが意図される。
【0116】
「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指す。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されることが理解されるべきである。突然変異か、又は環境の影響のどちらかが理由で、ある種の修飾が後続の世代で起こり得るので、そのような子孫は、実際、親細胞と同一でなくてもよいが、それでも、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0117】
「ミニ遺伝子座(minilocus)トランス遺伝子」という用語は、ゲノム免疫グロブリン座の一部を含む、又は天然の生殖系列Ig遺伝子座と比較したとき、非必須DNA部分(例えば、介在配列;イントロンもしくはその部分)の少なくとも1つの内部(すなわち、その部分の末端にない)欠失を有する選択された疾患抗原の遺伝子座上のトランス遺伝子を指す。
【0118】
「標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的手段で検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで一般に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はそれに対する抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用可能であるハプテン及びタンパク質が挙げられる(例えば、本発明のポリペプチドを、例えば、放射性標識をペプチド中に組み込むことによって検出可能なものとし、このペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用することができる)。
【0119】
「ソーティング」という用語は、本明細書で使用される細胞との関連において、例えば、蛍光活性化細胞ソーターを用いて達成することができるような、細胞の物理的ソーティングと、細胞表面マーカーの発現に基づく細胞の解析、例えば、ソーティングの非存在下でのFACS解析の両方を指す。
【0120】
特記する場合を除き、「患者」又は「対象」という用語は互換的に使用され、ヒト患者を指す。
【0121】
「治療する」又は「治療」という用語は、疾患を予防するか、又はその症状、合併症、もしくは生化学的兆候の発症を遅延させるか、症状を緩和するか、或いは疾患、疾病、又は障害(例えば、自己免疫疾患)の更なる進展を停止させるか、又はそれらを阻害するための本発明の化合物又は薬剤の投与を含む。治療は、疾患の発症後の症状の予防的な(疾患を予防するか、もしくはその発症を遅延させるための、又はその臨床的もしくは亜臨床的症状の発症を予防するための)、或いは治療的な抑制又は緩和であってもよい。
【0122】
「遺伝子送達ビヒクル」は、1以上の望ましい特性を有する核酸分子を生物体内の宿主細胞に送達することができる、組換えビヒクル、例えば、組換えウイルスベクター、核酸ベクター(例えば、プラスミド)、裸の核酸分子、例えば、遺伝子、核酸分子上の負電荷を中和し、この核酸分子を凝集させて、コンパクトな分子にすることができるポリカチオン性分子と複合体化した核酸分子、リポソームと関連した核酸(Wang et al.,PNAS 84:7851,1987)、細菌、及び特定の真核細胞、例えば、プロデューサー細胞を指す。
【0123】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、相補性決定領域(CDR)の残基の少なくとも一部が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト動物の抗体(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、及びウサギの抗体のCDRに由来する残基と置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を意味する。場合により、ヒト免疫グロブリン中のFvフレームワーク(FR)の残基は、対応する非ヒト抗体の残基と置換されている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体又は導入されたCDRもしくはフレームワーク中には見られない残基を更に含むことができる。これらの変化は、得られる抗体の特性を最適化又は改善するために行なわれる。これらの変化に関するより詳細な情報は、Jones et al.,1986;Reichmann et al.,1988;EP−B−239400;Presta,1992;及びEP−B−451216に言及されている。
【0124】
単鎖抗体(「scFv」とも称される)は、抗体の重鎖V領域と軽鎖V領域を連結することによって調製することができる(scFvの総説については、Pluckthun “The Pharmacology of Monoclonal Antibodies” 第113巻,Rosenburg and Moore編,Springer Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい)。単鎖抗体を調製する方法は当技術分野で公知である(例えば、米国特許第4,946,778号、第5,260,203号、第5,091,513号、及び第5,455,030号を参照されたい)。そのようなscFvにおいて、重鎖V領域と軽鎖V領域は、リンカー、好ましくは、ポリペプチドリンカーを介して連結されている(Huston,1988)。scFv中の重鎖V領域及び軽鎖V領域は、同じ抗体に、又は異なる抗体に由来することができる。
【0125】
「Fv」断片は最小の抗体断片であり、完全な抗原認識部位及び結合部位を含有する。この領域は、重鎖と軽鎖の各々の可変領域が非共有結合で強く接続されている二量体(VH−VL二量体)である。可変領域の各々の3つのCDRが互いに相互作用して、VH−VL二量体の表面に抗原結合部位を形成する。言い換えると、重鎖及び軽鎖由来の合計6つのCDRが一緒になって、抗体の抗原結合部位として機能する。しかしながら、可変領域(又は3つの抗原特異的CDRしか含有しない半分のFv)のみでも、抗原を認識し、それに結合することができることが知られているが、その親和性は、結合部位全体の親和性よりも小さい。従って、本発明の好ましい抗体断片はFv断片であるが、それに限定されない。
【0126】
そのような抗体断片は、保存されている、及びその抗原を認識し、それに結合することができる、重鎖又は軽鎖CDRの抗体断片を含むポリペプチドであることができる。
【0127】
Fab断片(F(ab)とも称される)もまた、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域(CH1)を含有する。例えば、抗体のパパイン消化によって、2種類の断片:重鎖及び軽鎖の可変領域を含有し、単一の抗原結合ドメインとしての役割を果たす、Fab断片と呼ばれる抗原結合断片;及び容易に結晶化されるので「Fc」と呼ばれる、残りの部分が生じる。Fab’断片は、Fab’断片が、抗体のヒンジ領域に由来する1以上のシステイン残基を含有する、重鎖CH1領域のカルボキシル末端に由来するいくつかの残基も有するという点で、Fab断片と異なる。
【0128】
しかしながら、両方とも、重鎖及び軽鎖の可変領域を含み、単一の抗原結合ドメインとしての役割を果たす抗原結合断片であるという点で、Fab’断片は、Fabと構造的に等価である。本明細書において、単一の抗原結合ドメインとしての役割を果たす重鎖及び軽鎖の可変領域を含む抗原結合断片であって、パパイン消化によって得られるものと等価である抗原結合断片は、プロテアーゼ消化によって生じる抗体断片と同一ではない場合でも、「Fab様抗体」と称される。Fab’−SHは、その定常領域中に遊離チオール基を有する1以上のシステイン残基を有するFab’である。F(ab’)断片は、F(ab’)2のヒンジ領域中のシステイン残基間のジスルフィド結合を切断することによって生じる。他の化学的に架橋された抗体断片も当業者に公知である。
【0129】
抗体のペプシン消化によって、2つの断片が生じる;1つは、2つの抗原結合ドメインを含み、かつ抗原と交差反応することができるF(ab’)2断片であり、もう1つは、残りの断片(pFc’と称される)である。本明細書において、ペプシン消化によって得られるものと等価な抗体断片は、それが、2つの抗原結合ドメインを含み、かつ抗原と交差反応することができる場合、「F(ab’)2様抗体」と称される。そのような抗体断片は、例えば、遺伝子工学によって生じさせることもできる。そのような抗体断片は、例えば、上記の抗体ファージライブラリーから単離することもできる。或いは、F(ab’)2−SH断片を、宿主、例えば、大腸菌から直接回収し、その後、化学架橋によってF(ab’)2断片を形成させることができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。
【0130】
単一ドメイン抗体を抗体様断片に人為改変することができる。単一ドメイン抗体は、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。例としては、重鎖抗体、軽鎖を天然に欠いている抗体、従来の4鎖抗体から誘導される単一ドメイン抗体、人為改変抗体、及び抗体から誘導されるもの以外の単一ドメインスカフォードが挙げられるが、これらに限定されない。単一ドメイン抗体は、当技術分野のものの全て、又は任意の今後の単一ドメイン抗体であることができる。単一ドメイン抗体は、限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシを含む、任意の種に由来することができる。本発明の一態様によれば、本明細書で使用される単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られる天然の単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、例えば、WO9404678号に開示されている。明確にするために、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体に由来するこの可変ドメインは、本明細書では、それを4鎖免疫グロブリンの従来型VHと区別するVHH又はナノボディとして知られる。そのようなVHH分子は、ラクダ科種、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、及びグアナコ、又は板鰓亜綱種、例えば、ガンギエイ、エイ(ray)(エイ(batoidea))、及びサメ(軟骨魚類)で惹起された抗体に由来することができる。ラクダ科以外の他の種が、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を産生する場合もあり;そのようなVHHは、本発明の範囲内にある。単鎖ポリペプチドは、遺伝子工学技術及び化学合成などの当技術分野で周知の様々な方法によって産生することができる。遺伝子工学技術は、複製可能クローニングベクター又は発現ベクターを構築すること、宿主細胞をこのベクターで形質転換すること、形質転換された宿主細胞を培養して、その中で核酸を発現させること、単鎖ポリペプチドを回収及び精製することを含む。ベクターは、通常、本発明によるダイアボディ型二重特異性抗体を構成する2つの単鎖ポリペプチドのうちの1つをコードする核酸を含む。そのような場合、得られる2種類のベクターは、同じ宿主細胞に導入されることが好ましい。或いは、互いに異なる単鎖ポリペプチドをコードする2種類の核酸を同じベクターに含めることができる。
【0131】
本明細書で使用される「複製可能発現ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、その中に挿入された外来DNA断片の断片を含み得る(通常、二本鎖の)DNA片を指す。外来DNAは、関心のある宿主細胞内に天然には見出すことができない「異種DNA」としても定義される。ベクターは、外来又は異種DNAを適当な宿主細胞に運搬又は伝達するために使用される。ひとたびベクターが宿主細胞に導入されると、それは、宿主細胞の染色体DNAとは独立に複製して、ベクター及びその中に挿入された外来DNAのコピーを産生することができる。ベクターは、外来DNAによってコードされるポリペプチド分子が非常に速やかに合成されるように、外来DNAをポリペプチドに翻訳するのに不可欠なエレメントも含む。
【0132】
上記のベクターは、機能的に連結されている(すなわち、外来DNAを発現することができるように連結されている)適当な制御配列及びDNA配列を含むDNAコンストラクトを意味する。制御配列には、転写用のプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適当なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー、ポリアデニル化配列、並びに転写及び翻訳の終結を制御する配列が含まれる。ベクターは、制限酵素切断部位、マーカー遺伝子(選択遺伝子)、例えば、薬剤耐性遺伝子、シグナル配列、及びリーダー配列などの、当技術分野で公知の様々な配列を更に含むことができる。これらの配列及びエレメントは、外来DNA及び宿主細胞の種類、並びに培養培地の条件に応じて、当業者により任意に選択されてもよい。
【0133】
ベクターは、任意の形態、例えば、プラスミド、ファージ粒子、又はただ単にゲノム挿入物であることができる。ひとたび適当な宿主細胞がベクターで形質転換されると、ベクターは、宿主細胞のゲノムとは独立に複製され、もしくは機能し、又はベクターは、その代わりに、細胞のゲノムに組み込まれる。
【0134】
当技術分野で公知の任意の細胞を宿主細胞として使用することができ、例えば、大腸菌を含む原核細胞、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びヒト細胞、酵母、並びに昆虫細胞を挙げることができる。
【0135】
宿主細胞内での発現によって得られる単鎖ポリペプチドは、通常、分泌され、培養培地から回収されるが、それが分泌シグナルなしで直接発現されるとき、それを細胞溶解物から回収することもできる。単鎖ポリペプチドが膜結合特性を有する場合、それをTriton−X100などの適当な界面活性剤で膜から放出させることができる。
【0136】
ポリペプチドの精製は、当業者に公知の任意の方法、例えば、遠心分離、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換クロマトグラフィーでの分離、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカクロマトグラフィー、ヘパリン−セファロースクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン樹脂クロマトグラフィー、例えば、ポリアスパラギン酸カラム、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫安沈殿、及び親和性クロマトグラフィーにより実施することができる。単鎖ポリペプチドのペプチドタグとの親和性を利用する親和性クロマトグラフィーは、高い効率を有する好ましい精製技術のうちの1つである。
【0137】
回収された単鎖ポリペプチドは、多くの場合、不溶性画分に含まれ得るので、ポリペプチドは、可溶化し、変性させた後に精製されることが好ましい。可溶化処理は、エタノールなどのアルコール、塩酸グアニジン及び尿素などの溶解剤を含む、当技術分野で公知の任意の薬剤の使用により実施することができる。
【0138】
本発明による抗体様断片は、単鎖ポリペプチドを、最終的に、スカフォード上にアセンブルさせ、このようにして形成された抗体様断片を分離し、回収することによって産生される。
【0139】
アセンブリング処理により、単鎖ポリペプチドは、所望の生物学的活性が示される適当な空間的配置に戻る。従って、この処理により、ポリペプチド又はドメインがアセンブリング状態に戻るので、それを「再アセンブリング」と考えてもよい。また、所望の生物学的活性の獲得を考慮して、それを「再構築」又は「再フォールディング」と呼んでもよい。
【0140】
アセンブリング処理は、当技術分野で公知の任意の方法により、好ましくは、単鎖ポリペプチドを含む溶液中の変性剤、例えば、塩酸グアニジンの濃度を、透析によって徐々に低下させることにより実施することができる。これらのプロセスにおいて、酸化を促進するために、抗凝固剤又は酸化剤を反応系に任意に添加してもよい。形成された抗体様断片の分離及び回収も同様に、当技術分野で公知の任意の方法により行なうことができる。
【0141】
本発明による、及び当業者に公知のVHHは、WO9404678号に記載されている、ラクダ科に由来する免疫グロブリンなどの、軽鎖を天然に欠く免疫グロブリンに由来する重鎖可変ドメインである(以後、VHHドメイン又はナノボディと称される)。VHH分子は、IgG分子よりも約10倍小さい。それらは、単一のポリペプチドであり、非常に安定で、極端なpH及び温度条件に耐える。更に、それらはプロテアーゼの作用に耐性があり、これは、従来型抗体には当てはまらない。更に、VHHのインビトロ発現は、高収率の、適切にフォールディングされた、機能的VHHを産生する。更に、ラクダ科動物で作製される抗体は、インビトロで抗体ライブラリーの使用によって、又はラクダ科動物もしくは板鰓亜綱種以外の哺乳動物の免疫化によって作製される抗体によって認識されるエピトープ以外のエピトープを認識する(WO9749805号)。従って、抗アルブミンVHHは、キャリアタンパク質であることが知られている血清アルブミンとより効率的な形で相互作用することができる。キャリアタンパク質として、血清アルブミンのエピトープのいくつかは、結合したタンパク質、ペプチド、及び小さい化学的化合物によるアクセスが不可能である場合がある。VHHは、「稀な」又は非従来型のエピトープ、例えば、キャビティに結合することが知られているので(WO9749805号)、循環アルブミンに対するそのようなVHHの親和性は、増大し得る。
【0142】
一実施形態において、本発明の抗体又は抗体断片は、配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0143】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0144】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号12との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号13との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号14との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号10との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号11との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0145】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0146】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0147】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0148】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0149】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0150】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0151】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0152】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0153】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0154】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0155】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0156】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0157】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0158】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号15及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0159】
一実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0160】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0161】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号12との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号13との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号14との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号10との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号11との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0162】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0163】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0164】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0165】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号13との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号14との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号9との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号10との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号11との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0166】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0167】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0168】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0169】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0170】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0171】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0172】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0173】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0174】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0175】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合することを特徴とする、配列番号15及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0176】
一実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号19〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0177】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号19〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0178】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号20との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号21との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号22との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号23との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号24との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0179】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0180】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0181】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0182】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0183】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0184】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0185】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0186】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0187】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0188】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0189】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0190】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0191】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0192】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0193】
一実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号19〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソフォームhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は(高分子質量タウ複合体)上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は(高分子質量タウ複合体)上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0194】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号19〜配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19〜24からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0195】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号20との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号21との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号22との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号23との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号24との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は(高分子質量タウ複合体)上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0196】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24との少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0197】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる);これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0198】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号12との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号19との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号20との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号21との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号22との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号23との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0199】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、
−CDRトリプレットH1/H2/H3;及び
−CDRトリプレットL1/L2/L3;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRトリプレットを含み、
ここで、H1は、配列番号19との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H2は、配列番号20との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、H3は、配列番号21との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L1は、配列番号22との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L2は、配列番号23との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、及びL3は、配列番号24との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0200】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は(高分子質量タウ複合体)上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0201】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0202】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0203】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0204】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0205】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0206】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0207】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25のアミノ酸配列、又は配列番号25のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0208】
特定の実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号26のアミノ酸配列との少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み、かつ該抗体又は抗体断片は、それが、例えば、ヒトタウアイソトープhTAU40の高分子質量タウ複合体及びエピトープ16−GTYGLGDRK−24(配列番号27)を認識することを特徴とする(そのような抗体を以後ADx215と称することができる)。これは、それがはるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有することを更に特徴とする。これは、該抗体又は断片が、30nM以下のKd、好ましくは10nM以下のKd、及び更により好ましくは3nM未満のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。これは、該抗体又は断片が、10nM〜1nMの値のKdを特徴とする配列番号27のエピトープ又は高分子質量タウ複合体上の配列番号27のエピトープに対する結合親和性を有することを特徴とすることができる。
【0209】
代わりの実施形態において、抗体又は抗体断片は、配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号25及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0210】
「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、H(重)鎖又はL(軽)鎖のいずれかの可変領域(それぞれ、V
H及びV
Lと略される)を指し、抗原性標的に特異的に結合することができるアミノ酸配列を含有する。これらのCDR領域が、特定の抗原性決定構造に対する抗体の特異性の主要因である。そのような領域は、「超可変領域」とも称される。CDRは、可変領域内のアミノ酸の不連続なストレッチを表すが、種を問わず、可変重鎖及び軽鎖領域内のこれらの重要なアミノ酸配列の位置的配置は、可変鎖のアミノ酸配列内で同様の配置を有することが分かっている。抗体の認められているCDR領域及び可変ドメインは、当業者に公知であり、(Kabat et al.,1991)及び(Padlan et al.,1995)に記載されている。
【0211】
当業者は、同様の抗原特異性を有する異なる抗体の対応するCDRのアラインメントにより、アラインメント中の全ての配列で保存されている、すなわち、同一であるアラインメント中の位置が、抗体の抗原特異性に重要であるという概念をよく知っている。これらの重要な位置における特定のCDRの残基は、「特異性決定残基」又は「SDR」として知られている。結果として、保存されていない位置は、抗体の特異性にはそれほど寄与せず、抗体の抗原特異性に実質的に影響を及ぼすことなく置換することができる。従って、当業者は、抗体又は抗体断片の抗原特異性に実質的に影響を及ぼすことなく、どの残基を置換することができるかを決定することができる。同様に、当業者は、特定のCDRが本発明の抗体の対応するCDRと同様の抗原特異性を有するために必要とされる抗体の特定のCDRと本発明の抗体の対応するCDRの間の最小配列同一性を決定することができる。可変領域についても同じことが言える。
【0212】
本明細書で使用されるように、2以上のアミノ酸配列又は2以上のヌクレオチド配列間の「パーセンテージ同一性」又は「%同一性」は、%で表された:
−両方の配列で同一である(すなわち、一致する)アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の最適なアラインメント中のアミノ酸又はヌクレオチドの数
−アラインメントの長さ、すなわち、もしあれば、ギャップを含めて、アラインされた位置の数
の割合を指す。
【0213】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBで寄託されたハイブリドーマ細胞株によって分泌される。このハイブリドーマ細胞株及び分泌されたモノクローナル抗体を、以後、ADx210、IGH−593、及び/又は7G1G3と称する。本発明の別の好ましいモノクローナル抗体は、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBで寄託されたハイブリドーマ細胞株によって分泌される。このハイブリドーマ細胞株及び分泌されたモノクローナル抗体を、以後、ADx211、IGH−603、及び/又は23H5G11と称する。本発明の別の好ましい抗体は、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215によって分泌される。このハイブリドーマ細胞株及び分泌されたモノクローナル抗体を、以後、ADx210と称する。「ハイブリドーマ」という用語は、当技術分野で十分に認識されており、単一の抗体産生細胞クローンと不死細胞又は腫瘍細胞の融合によって得られる細胞株を指す。本テキストの全体を通じて使用されるように、ADx及びADXという用語は互換的に使用される。
【0214】
タンパク質送達を用いて、本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を細胞内に送達することができる。タンパク質送達、すなわち、タンパク質形質導入は、ペプチド又はタンパク質モチーフが細胞形質膜を横断するプロセスである。送達タンパク質としては、細胞内タンパク質、細胞表面タンパク質、生体活性ペプチド、タンパク質−核酸コンジュゲート、ペプチド−核酸コンジュゲート、融合タンパク質、合成ペプチド、タンパク質−ナノ粒子コンジュゲート、タンパク質−ポリマーコンジュゲート、タンパク質−有機化学物質もしくはタンパク質−無機化学物質のコンジュゲート、多タンパク質複合体、又は任意のアミノ酸含有部分を挙げることができる。研究者により、細胞内へのタンパク質送達を媒介するいくつかのタンパク質形質導入ドメイン(PTD)が開発されている。これらのPTD又はシグナルペプチド配列は、細胞内でのタンパク質分泌を通常媒介する15〜30アミノ酸の天然のポリペプチドである。それらは、正電荷を有するアミノ末端、中央の疎水性コア、及びシグナルペプチダーゼによって認識されるカルボキシル末端切断部位から構成される。最近、研究者により、いくつかの膜転移ペプチドが、溶液ベースのタンパク質トランスフェクションプロトコルを用いて、抗体を含む、ポリペプチド、タンパク質ドメイン、及び全長タンパク質の細胞内への送達をうまく媒介することができることが示された。最近、研究者により、タンパク質送達のための脂質リポソームなどの使用も示された。これらの技術は、本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を細胞に送達するために有用である。
【0215】
本発明はまた、表面媒介性送達を用いて生細胞を本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片でトランスフェクトする方法を開示している。本方法の一実施形態によれば、細胞に導入されるべき本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を有する基質表面を、細胞の培養に使用する。細胞に導入されるべき本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を、表面に適用する前に、キャリア試薬と予め複合体化させる。その後、細胞を調製した表面に重層する。キャリア試薬は、関心対象のタンパク質の細胞内への送達を促進し、それにより、細胞をトランスフェクトする。或いは、本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を好適な基質表面に付着させ、その後、キャリア試薬をタンパク質に添加し、この表面上で複合体化させる。別の実施形態において、融合タンパク質を直接使用する。融合タンパク質は、自発的な細胞内浸透の特性を示す任意の種類のタンパク質又はペプチド(例えば、単純ヘルペスタンパク質、VP22)と共有結合的に融合した、本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を含有する。好ましくは、本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片及びキャリア試薬を含有する混合物は、タンパク質送達効率を高めるためのヘルパー試薬を含む。本方法は、タンパク質の細胞取込みのための最適化された条件下で90%を超える効率をもたらす。本表面媒介性タンパク質送達技術は、「逆タンパク質送達」とも称される。そのような送達をインビボ又はインビトロで使用することができる。
【0216】
本発明の特定の実施形態をキャリア試薬に関して説明する。キャリア試薬は、種々の種を含むことができる。一実施形態において、キャリア試薬は、生体活性細胞膜透過試薬、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)(すなわち、約15〜約30残基を含む単一ペプチド配列)を含有する他のペプチドである。タンパク質形質導入ドメイン(PTD)は、タンパク質分泌を媒介し、正電荷を有するアミノ末端、中央の疎水性コア、及びシグナルペプチダーゼによって認識されるカルボキシル末端切断部位から構成される。そのような膜形質導入ペプチドの例としては、Trojanペプチド、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)−1転写アクチベーター(TAT)タンパク質又はその機能ドメインペプチド、並びに転移タンパク質、例えば、ショウジョウバエホメオティック転写因子アンテナペディア(Antp)及び単純ヘルペスウイルスDNA結合タンパク質、VP22などに由来するタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含有する他のペプチドが挙げられる。いくつかの市販のペプチド、例えば、ペネトラチン1、Pep−1(Chariot試薬,Active Motif社,CA)、及びHIV GP41断片(519−541)を使用することができる。他のキャリア試薬としては、タンパク質を原核細胞と真核細胞の両方における特定の場所にターゲッティングするために効率良く使用されているシグナル配列、及びいくつかの膜転移ペプチドが挙げられる。膜転移ペプチドは、膜転移、及び標準的な溶液ベースのトランスフェクションプロトコルを用いた細胞内へのポリペプチド、タンパク質ドメイン、全長タンパク質、又は抗体の導入を媒介するためにうまく適用されている。キャリア試薬は、細胞表面受容体に特異的に結合し、それを活性化することができる生体活性ペプチド又はリガンドである。細胞表面受容体に結合した後、受容体及び結合したキャリア−タウ抗体複合体、キャリア−タウ抗体様スカフォード複合体、又はキャリア−タウ抗体断片複合体は、内在化を受けて、リガンド−抗体、リガンド−抗体断片、又はリガンド−抗体様スカフォード複合体を細胞内に送達する。タンパク質を、事前に又はインサイチュでリガンドと複合体化させることができる。リガンドを、非共有結合的相互作用、例えば、疎水性相互作用もしくは静電相互作用もしくはその両方によって、細胞に導入されるべきタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片と複合体化させるか、又は共有結合的に、もしくはリガンド−受容体結合相互作用によってタンパク質と共役させることができる。例えば、キャリア試薬を、関心対象のタンパク質に特異的に結合することができるリガンドで修飾することができる。例を示すと、「Streptaphage」と呼ばれる合成リガンドは、細胞形質膜のコレステロール及びスフィンゴ脂質に富む脂質ラフトサブドメインとの非共有結合的相互作用を促進することにより、ストレプトアビジンを哺乳動物細胞に効率良く送達した(Hussey,S.L.& Peterson,B.R.,J.Am.Chem.Soc.,124,6265−6273(2002))。
【0217】
別の実施形態において、キャリア試薬は、本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片と複合体化し、細胞内へのタンパク質の送達を促進することができる脂質リポソームなどである。例えば、製剤中にカプセル化されたタンパク質は、送達用の負の電荷を有するビヒクルに結合する(O.Zelphati et al.,J.Bio.Chem.,276,35103−19(2001))。BioPORTER(Gene Therapy Systems)、又はProVectin(Imgenex,San Diego,Calif.)などの、市販の製品を使用することができる。
【0218】
タンパク質送達試薬(例えば、Active Motif製のChariot(商標)、又はGene Therapy Systems製のBioPORTER(登録商標))は、遺伝子発現と関連する従来のDNAトランスフェクション、転写、及びタンパク質翻訳プロセスを迂回することにより、時間の節約を助けることができる。利用される特定の試薬の性質によっては、いくつかの実施形態において、融合タンパク質又は化学的結合は、必要とされない。試薬は、タンパク質との複合体を形成し、この巨大分子を安定化し、それが送達中に分解するのを防止する。ひとたび細胞内に内在化されると、複合体は解離し、巨大分子が生物学的に活性のある状態になり、その標的オルガネラへと自由に向かうことができる。これは、本発明のタウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を標的細胞内に送達する代替システムである。
【0219】
本発明の特定の実施形態についてヘルパー試薬に関して説明する。一実施形態において、ヘルパー試薬は、DEAE−デキストラン、デキストラン、ポリリジン、及びポリエチルアミンなどのポリマーである。別の実施形態において、ヘルパー試薬は、フィブロネクチン及びゼラチンなどの細胞接着増強タンパク質であることもできる。ヘルパー試薬は、糖に基づくゼラチン(例えば、ポリエチレングリコール)又は合成もしくは化学物質に基づくゼラチン、例えば、アクリルアミドであることができる。更なる実施形態において、ヘルパー試薬は、RGDペプチド、例えば、Arg−Gly−Asp−Ser(配列番号52)、Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Ala−Ser−Ser−Lys−Pro(配列番号53)などであることができる。或いは、ヘルパー試薬は、ヒドロゲルとRGDペプチドの混合物、及び前述の分子のいずれかの組合せであることができる。ヘルパー試薬の使用は、細胞内へのタンパク質送達の効率を高める。
【0220】
本発明の抗体又は抗体断片を産生する単離された細胞株も提供される。遺伝的に安定であり、培養することができる真核細胞の均質な集団が「細胞株」に含まれることが理解されるべきである。好ましくは、細胞株は、動物起源である。より好ましくは、細胞株は、不死化されている。或いは、細胞株は、植物又は真菌起源である。一実施形態において、本発明の細胞株は、本発明の抗体又は抗体断片をコードするポリヌクレオチドを、この抗体又は抗体断片の効率的な産生を可能にするための当業者に公知の好適な転写及び翻訳制御エレメントの下に含む核酸による遺伝的形質転換によって得られる。別の実施形態において、細胞株は、
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADX210、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADX211、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215
からなる群から選択されるハイブリドーマ細胞株である。
【0221】
本発明の抗体又は抗体断片をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸が更に提供される。好ましい実施形態において、該ポリヌクレオチドは、配列番号15〜配列番号18及び配列番号19〜配列番号26の抗体断片をコードするヌクレオチド配列を含むか、又は該配列から本質的になるか、又は該配列からなる。より好ましい実施形態において、該ポリヌクレオチドは、配列番号15〜配列番号18又は配列番号25〜配列番号26又は配列番号9〜配列番号14又は配列番号19〜配列番号24又は配列番号25〜配列番号26の抗体断片をコードするヌクレオチド配列を含むか、又は該配列から本質的になるか、又は該配列からなる。更により好ましい実施形態において、該ポリヌクレオチドは、配列番号9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、及び26から選択される抗体断片をコードするヌクレオチド配列を含むか、又は該配列から本質的になるか、又は該配列からなる。
【0222】
重鎖及び軽鎖から構成される従来型抗体について、個々の鎖をコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体を産生する成熟B細胞又はハイブリドーマから、例えば、重鎖及び軽鎖遺伝子又はcDNAの増幅に好適である、当業者に公知の、プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は逆転写(RT)−PCRによって単離することができる。重鎖抗体について、単一の鎖をコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体を産生する成熟B細胞又はハイブリドーマから、例えば、重鎖遺伝子又はcDNAの増幅に好適であるプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は逆転写(RT)−PCRによって単離することができる。
【0223】
得られたポリヌクレオチドを更に操作して、本発明の抗体断片をコードする別のポリヌクレオチドを得るか、又は本明細書に記載されるような、本発明の抗体及び抗体断片をコードする組換え遺伝子コンストラクトを作製することができることが当業者には明らかである。本発明のポリヌクレオチドをランダムな又は部位特異的な突然変異誘発によって更に改変し、コードされる抗体又は抗体断片の特異性又は親和性を改善することができる。当業者は、原核及び真核発現に好適な遺伝子コンストラクトを得るための、すなわち、遺伝子コンストラクトへのプロモーター及びターミネーターなどの転写制御エレメントの付加、並びにリボソーム侵入部位などの翻訳制御エレメントの付加による、組換えDNA技術にも十分に精通している。従って、本発明の核酸を、本発明の抗体及び抗体断片の異種産生を得るために、原核又は真核宿主細胞、例えば、細胞株又は生殖系列細胞に導入することができる。
【0224】
本発明の抗体のうちの1つに結合するタウ抗原断片をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸が更に提供される。好ましい実施形態において、該ポリヌクレオチドは、ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託された細胞株ADx215によって産生された抗体に結合するタウ抗原断片をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号27のタウ抗原断片をコードするヌクレオチド配列を含むか、又は該配列から本質的になるか、又は該配列からなる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号28のタウ抗原断片をコードするヌクレオチド配列を含むか、又は該配列から本質的になるか、又は該配列からなる。
【0225】
動物においてリン酸化タウ凝集体に対する免疫応答を誘導する方法であって、該動物にリン酸化タウ凝集体を投与することを含む、方法も本発明によって提供される。好ましい実施形態において、リン酸化タウ凝集体は、(Vandebroek et al.,2005)及び実施例に記載されているような、PHO85遺伝子が欠失している酵母株(pho85Δ株)における2N/4Rタウの産生によって得られる。より好ましい実施形態において、リン酸化タウ凝集体は可溶性である。更により好ましい実施形態において、リン酸化タウ凝集体は、リン酸化タウの二量体及び/又は三量体を含む。
【0226】
免疫原性リン酸化タウ凝集体は、単独で又は好適なアジュバントと組み合わせて投与することができる。好適なアジュバントは、免疫原性リン酸化タウ凝集体の投与の前、その後、又はそれと同時に投与することができる。好ましいアジュバントは、アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウムである。アジュバントは、他の特定の免疫刺激剤、例えば、3−de−O−アセチル化モノホスホリル脂質A(3−DMP)、ポリマーアミノ酸もしくは単量体アミノ酸、例えば、ポリグルタミン酸もしくはポリリジンとともに、又はこれらなしで使用することができる。そのようなアジュバントは、他の特定の免疫刺激剤、例えば、ムラミルペプチド(例えば、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、リポソーム性ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン(MTP−PE)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP、Theramide(商標))、もしくは他の細菌細胞壁成分とともに、又はこれらなしで使用することができる。水中油型エマルジョンとしては、微小流動化装置を用いてサブミクロン粒子に製剤化される、5%スクアレン、0.5%Tween 80、及び0.5%Span 85を含有する(任意に様々な量のMTP−PEを含有する)MF59(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Van Nest et al.に対するWO90/14837号を参照されたい);サブミクロンエマルジョンになるように微小流動化されているか、又はより大きい粒径のエマルジョンを生成するようにボルテックス処理されているかのいずれかの、10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%プルロニックブロック化ポリマーL121、及びthr−MDPを含有するSAF;並びに2%スクアレン、0.2%Tween 80、並びにモノホスホリル脂質A(MPLA)、ジミコール酸トレハロース(TDM)、及び細胞壁骨格(CWS)からなる群から選択される1以上の細菌細胞壁成分、好ましくは、MPL+CWS(Detox(商標))を含有するRibi(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi ImmunoChem、Hamilton、Mont.)が挙げられる。他のアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、及びサイトカイン、例えば、インターロイキン(IL−I、IL−2、及びIL−12)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、並びに腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。アジュバントの選択は、アジュバントを含有する免疫原性製剤の安定性、投与の経路、投与スケジュール、ワクチン接種されている種に対するアジュバントの効力によって決まり、ヒトにおいて、薬学的に許容されるアジュバントは、関連規制機関によってヒト投与が承認されているか、又は承認され得るアジュバントである。例えば、ミョウバン、MPL、又は不完全フロイントアジュバント(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Chang et al,Advanced Drug Delivery Reviews 32:173−186(1998))単独又は任意にこれらの全ての組合せは、ヒト投与に好適である。
【0227】
好ましい実施形態において、リン酸化タウ凝集体に対する免疫応答を誘導する方法は、リン酸化タウ凝集体に優先的に結合するタウ特異的抗体又は抗体断片を得るためのものである。免疫化後に抗体を得る方法は、当業者に公知である。
【0228】
代替法として、本発明の抗体及び抗体断片を、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて得ることができる。ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面に提示される。特に、そのようなファージを利用して、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現されるエピトープ結合ドメインを提示することができる。関心対象の抗原に結合するエピトープ結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、固体表面又はビーズに結合した又は捕捉された標識抗原を用いて選択又は同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合された抗原結合抗体ドメインを有するファージから発現されるfd及びM13結合ドメインを含む糸状ファージである。本発明の抗体又は抗体断片を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の例としては、(Kettleborough et al.,1994;Burton and Barbas,III,1994;Brinkmann et al.,1995;Ames et al.,1995;Persic et al.,1997);WO/1992/001047号;WO590102809号;WO91/10737号;WO92/01047号;WO92/18619号;WO93/11236号;WO95/15982号;WO95/20401号;並びに米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号及び第5,969,108号)に開示されているものが挙げられる。
【0229】
ファージ選択後、断片をコードするファージの領域を単離し、組換えDNA技術を用いて、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む、選択された宿主内での発現によってエピトープ結合断片を作製するために使用することができる。例えば、抗原結合断片を組換えによって産生する技術を、当技術分野で公知の方法、例えば、WO92/22324号;(Better et al.,1988;Mullinax et al.,1992;Sawai et al.,1995)に開示されている方法を用いて利用することもできる。単鎖Fv及び抗体を産生するために使用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号;(Skerra and Pluckthun,1988;Huston et al.,1991;Shu et al.,1993)に記載のものが挙げられる。
【0230】
本発明の抗体は、リン酸化タウポリペプチドもしくはその機能断片及び/又はオリゴマー形態のリン酸化タウポリペプチドを検出することによる、アルツハイマー病などの神経学的障害の診断又は検出方法で使用することができる。
【0231】
タウ関連疾患もしくは状態又は個体におけるタウ関連疾患もしくは状態の素因の診断又は検出は、試料中で又はインサイチュでタウタンパク質のエピトープに対するモノクローナル抗体又はその機能断片の免疫特異的結合を検出することによって達成することができ、該診断又は検出には、タウ抗原を含むことが疑われる試料又は特定の身体部分もしくは身体領域をタウタンパク質のエピトープに結合する抗体と接触させること、抗体をタウ抗原と結合させて、免疫学的複合体を形成させること、免疫学的複合体の形成を検出すること、及び免疫学的複合体の有無を試料又は特定の身体部分もしくは身体領域中のタウ抗原の有無と関連付けること、任意に該免疫学的複合体の量を正常対照値と比較することが含まれ、ここで、正常対照値と比較した該複合体の量の増加は、該個体が、タウ関連疾患もしくは状態に罹患しているか、又はそれを発症するリスクがあることを示す。好ましい実施形態において、タウ関連疾患もしくは状態又は個体におけるタウ関連疾患もしくは状態の素因の診断又は検出は、凝集タウに対する本発明のモノクローナル抗体の免疫特異的結合を検出することによって達成される。好ましくは、本検出方法で使用するための抗体は、ADX210又はその機能断片である。好ましくは、本検出方法で使用するための抗体は、ADX215又はその機能断片である。
【0232】
「診断」は、本明細書において、疾患の状態及び進行をモニタリングすること、治療後の疾患の再発をチェックすること、及び特定の治療の成功をモニタリングすることを含むものと定義される。検査は、予後値を有する場合もある。検査の予後値は、タウオパチーに対する潜在的感受性のマーカーとして使用することができる。従って、リスクのある患者を、患者において同定可能な症状に関して、疾患が発症する前に同定することができる。
【0233】
従って、本発明は、本発明の抗体及び抗体断片が使用されるリン酸化タウ凝集体の検出方法を提供する。一実施形態において、本方法は、以下の工程:
−本発明の抗体又は抗体断片を試料と抗原−抗体複合体を産生するのに好適な条件下で接触させる工程;及び
−該抗原−抗体複合体の形成を検出する工程
を含む。
【0234】
免疫特異的結合を検出するための免疫学的方法には、流体もしくはゲル沈降反応、免疫拡散(一元もしくは二元)、凝集アッセイ、免疫電気泳動、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、ドットブロット、スロットブロット、リポソーム免疫アッセイ、ライン免疫アッセイ(LIA)、補体固定アッセイ、蛍光免疫アッセイ、Luminex(商標)xMAP(商標)、免疫蛍光フローサイトメトリー、プロテインA免疫アッセイ、又は免疫PCRが含まれるが、これらに限定されない。様々な免疫アッセイの概説は、(Wild D.(2001),The Immunoassay Handbook 第2版.Nature Pr.,London,UK)及び(Ghindilis A.L.,Pavlov A.R.,Atanassov P.B.(編)(2002)Immunoassay Methods and Protocols.Humana Press,Totowa,NJ,US)に示されている。免疫学的検出方法は、免疫組織化学、免疫蛍光顕微鏡法、及び免疫電子顕微鏡法を更に含む。
【0235】
一実施形態において、本発明の抗体又は抗体断片は、捕捉抗体として使用され、固相、例えば、ビーズ、プレート、膜、又はチップに(例えば、共有結合的もしくは非共有結合的に、疎水性もしくは親水性相互作用、水素結合、又はファンデルワールス力を介して)結合することができる。生体分子、例えば、抗体又は抗原を固相にカップリングさせる方法は、当技術分野で周知である。それらは、例えば、二官能性連結剤を利用することができ、又は固相を、接触時に分子に結合することができる、反応基、例えば、エポキシドもしくはイミダゾールで処理することができる。リン酸化タウ凝集体を捕捉するために、2種以上の本発明の抗体又は抗体断片を同時に使用することができることが理解されるべきである。その後、固定化された本発明の抗体又は抗体断片を、リン酸化タウ凝集体について検査されるべき試料と接触させる。検査されるべき試料には、体試料、例えば、CSF、血液、血漿、血清、尿などだけでなく、インビトロで作製された試料も含まれてよい。未結合の試料を除去した後、抗原−抗体複合体を、結合したリン酸化タウ凝集体の検出によって検出することができる。この検出は、凝集タウ、リン酸化タウ、又はタウに結合することができる抗体を用いることによって実施することができる。或いは、抗体−抗原複合体全体を検出する。
【0236】
代わりの実施形態において、捕捉は、凝集タウ、リン酸化タウ、又はタウに結合することができる抗体を用いて行なわれ、検出は、本発明の抗体又は抗体断片を用いることによって実施される。いずれの場合も、リン酸化タウ凝集体のアッセイの特異性は、捕捉用又は検出用のいずれかの本発明の抗体又は抗体断片を用いることによって得られる。
【0237】
抗原−抗体複合体の検出は、当業者に公知の様々な方法によって実施することができる。
【0238】
アッセイで使用される特定の標識又は検出可能基は、通常、それが、抗原に対する抗体又は抗体断片の特異的結合を顕著に妨げない限り、本発明の重要な側面ではない。検出可能基は、検出可能な物理的又は化学的特性を有する任意の材料であることができる。そのような検出可能標識は、免疫アッセイの分野において十分に開発されており、一般に、そのような方法で有用なほとんど全ての標識を本発明の方法に適用することができる。従って、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、放射線学的、又は化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明における有用な標識としては、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン)、放射性標識(例えば、3R、1251、35S、14C、又は32p)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、及びELISAで一般に使用される他のもの)、並びに比色標識、例えば、コロイド金、色ガラス、又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)製のビーズが挙げられるが、これらに限定されない。上に示したように、多種多様な標識を使用することができ、標識の選択は、必要とされる感度、化合物とのコンジュゲーションの容易さ、安定性要件、利用可能な機器、及び使い捨ての設備によって決まる。非放射性標識は、間接的手段によって結合していることが多い。通常、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、抗体に共有結合している。その結果、リガンドは、そもそも検出可能であるか、又はシグナル系、例えば、検出可能な酵素、蛍光化合物、もしくは化学発光化合物に共有結合しているかのいずれかである、抗リガンド(例えば、ストレプトアビジン)分子に結合する。いくつかのリガンド及び抗リガンドを使用することができる。リガンドが、天然の抗リガンド、例えば、ビオチン、チロキシン、及びコルチゾールを有する場合、それを、標識された天然の抗リガンドとともに使用することができる。或いは、ハプテン性又は抗原性化合物を抗体と組み合わせて使用することができる。抗体を、例えば、酵素又はフルオロフォアとのコンジュゲーションによって、シグナル発生化合物に直接コンジュゲートすることもできる。関心対象の酵素は、主に、ヒドロラーゼ、特に、ホスファターゼ、エステラーゼ、及びグリコシダーゼ、又はオキシドレダクターゼ、特に、ペルオキシダーゼである。蛍光化合物には、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれる。化学発光化合物には、ルシフェリン、及び2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが含まれる。他の標識又はシグナル発生系の総説は、米国特許第4,391,904号において入手可能である。標識を検出する手段は、当技術分野で周知である。従って、例えば、標識が放射性標識である場合、検出手段には、オートラジオグラフィーで見られるような、シンチレーションカウンター又は写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識である場合、それを、適当な波長の光でフルオロフォアを励起し、結果として生じる蛍光を検出することによって検出することができる。蛍光は、目視によって、写真フィルムによって、電子検出器、例えば、電荷結合素子(CCD)又は光電子倍増管の使用によって、及び同様の方法によって検出することができる。同様に、酵素標識を、酵素の適当な基質を提供し、結果として生じる反応生成物を検出することによって検出することができる。最後に、簡単な比色標識は、標識と関連する色を単に観察することによって検出することができる。
【0239】
本明細書で使用されるように、「タウオパチー」又は「タウ関連疾患」は、脳内での微小管タンパク質タウの病的凝集を伴う任意の神経変性疾患を包含する。従って、家族性アルツハイマー病と孤発性アルツハイマー病の両方に加えて、本発明の方法を用いて治療することができる他のタウオパチーには、限定されないが、前頭側頭認知症、第17番染色体と連鎖するパーキンソニズム(FTDP−17)、進行性核上まひ、大脳皮質基底核変性症、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、もつれのみの認知症、石灰化を伴うびまん性の神経原線維のもつれ、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン−認知症症候群、ボクサー認知症、ダウン症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、ハーラーフォルデン・スパッツ病(Hallerworden−Spatz disease)、封入体筋炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、多系統萎縮症(multiple system atropy)、ニーマン・ピック病C型、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、亜急性硬化性全脳炎、筋強直性ジストロフィー、神経原線維のもつれを伴う非グアム型(non−guanamian)運動ニューロン疾患、脳炎後パーキンソニズム、及び慢性外傷性脳症が含まれる。
【0240】
本発明の抗体は、ワクチン組成物による治療の後に、アルツハイマー病などの残存疾患をモニタリングする方法で使用することができる。ワクチン組成物による治療の後の個体における最小残存疾患のモニタリングは、試料中で又はインサイチュでタウタンパク質のエピトープに対するモノクローナル抗体又はその機能断片の免疫特異的結合を検出することによって達成することができ、該モニタリングには、タウ抗原を含むことが疑われる試料又は特定の身体部分もしくは身体領域をタウタンパク質のエピトープに結合する抗体と接触させること、抗体をタウ抗原と結合させて、免疫学的複合体を形成させること、免疫学的複合体の形成を検出すること、及び免疫学的複合体の有無を試料又は特定の身体部分もしくは身体領域中のタウ抗原の有無と関連付けること、任意に該免疫学的複合体の量を正常対照値と比較することが含まれ、ここで、正常対照値と比較した該凝集体の量の増加は、該個体が依然として最小残存疾患に罹患していることを示す。好ましい実施形態において、ワクチン組成物による治療の後の個体における最小残存疾患のモニタリングは、凝集タウに対する本発明のモノクローナル抗体の免疫特異的結合を検出することによって達成される。好ましくは、本検出方法で使用するための抗体は、ADX210又はその機能断片である。好ましくは、本検出方法で使用するための抗体は、ADX215又はその機能断片である。
【0241】
本発明の抗体は、ワクチン組成物による治療に対する患者の応答性を予測する方法で使用することもできる。ワクチン組成物による治療に対する患者の応答性の予測は、試料中で又はインサイチュでタウタンパク質のエピトープに対するモノクローナル抗体又はその機能断片の免疫特異的結合を検出することによって達成することができ、該予測には、タウ抗原を含むことが疑われる試料又は特定の身体部分もしくは身体領域をタウタンパク質のエピトープに結合する抗体と接触させること、抗体をタウ抗原と結合させて、免疫学的複合体を形成させること、免疫学的複合体の形成を検出すること、及び免疫学的複合体の有無を試料又は特定の身体部分もしくは身体領域中のタウ抗原の有無と関連付けること、任意に治療の開始前及び開始後の該免疫学的複合体の量を比較することが含まれ、ここで、該複合体の量の減少は、該個体が治療に応答性である可能性が高いことを示す。代わりに、ワクチン組成物による治療に対する患者の応答性を予測する方法は、治療の開始前及び開始後の免疫学的複合体の量の減少がないことを検出し、従って、個体が治療に応答性である可能性が低いことを示すことができる。好ましい実施形態において、個体におけるワクチン組成物による治療に対する応答性の予測は、凝集タウに対する本発明のモノクローナル抗体の免疫特異的結合を検出することによって達成される。好ましくは、本検出方法で使用するための抗体は、ADx210又はその機能断片である。好ましくは、本検出方法で使用するための抗体は、ADx215又はその機能断片である。
【0242】
本発明は、タウタンパク質のエピトープを表すペプチドも提供し、このエピトープは、本発明による抗体によって認識される。好ましい実施形態において、ペプチドは、配列番号27によって表されるアミノ酸配列を含むか、該配列から本質的になるか、又は該配列からなる。免疫反応性を改善するために、好適な追加のアミノ酸配列を付加する必要がある場合もある。実際、実施例のパートで示されるように、配列番号27によって表される最小エピトープの最適な認識のために、配列番号28によって表されるような、α−ヘリックスを形成すると予測されるタウのN末端部分(DeLeys,R.et al.,1995)が必要とされる。従って、キャリブレータとしてのYT1.15のエピトープとしての役割を果たすために合成ペプチド中で必要とされる配列は、E
7FEVMEDHAG
16TYGLGDRK
24(配列番号29)である。従って、一実施形態において、ペプチドは、配列番号27によって表されるアミノ酸配列を含み、9〜19アミノ酸長である。好ましくは、ペプチドは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23アミノ酸長であり、配列番号27によって表されるアミノ酸配列を含むか、又は該配列から本質的になるか、又は該配列からなる。好ましい実施形態において、ペプチドは、配列番号29によって表される配列から本質的になり、又は該配列からなる。
【0243】
本発明のペプチドは、限定されないが、タウ関連疾患もしくは状態又は個体におけるタウ関連疾患もしくは状態の素因の診断又は検出方法、ワクチン組成物による治療の後にアルツハイマー病などの残存疾患をモニタリングする方法、或いはワクチン組成物による治療に対する患者の応答性を予測する方法などの、様々な方法及び検査においてその用途を見出す。ペプチドは、これらの方法及び検査が適切に機能することを保証するために、好適な対照として使用することができる。ペプチドは、例えば、陽性対照として、内部標準として、キャリブレータとして、又は定量目的で使用することができる。
【0244】
本発明は、本発明の方法を実施するために使用し得るキットも提供する。キットは、本明細書に記載の本発明の様々な方法及び使用に関して言及された好ましい特徴のいずれかを組み込むことができる。従って、本発明は、タウ関連疾患もしくは状態又は個体の体試料におけるタウ関連疾患もしくは状態の素因を検出するためのキットを提供し、少なくとも1つ又は複数の本発明の抗体、好ましくは、抗体ADx210及び/又はADx215を含む。特に、検査キットは、診断アッセイを実施するための取扱説明書とともに、所定量の試薬、例えば、本発明による1以上の抗体の包装された組合せを収容する容器を含む。抗体が酵素で標識されている場合、キットは、酵素によって必要とされる基質及び共因子を含む。更なる添加物、例えば、安定化剤、緩衝剤などを含めることができる。1以上の本発明の抗体を含むキットを用いて、例えば、個体における初期のアルツハイマー認知症をその他のタイプの認知症と区別することができる。1以上の本発明の抗体を含むキットを用いて、リン酸化タウ凝集体の形成又は安定性を妨げる組成物を同定することができる。キットは、この方法及び検査が適切に機能することを保証するために、好適な対照を組み込むことができる。キットは、その目的のために、1以上の本発明のペプチドを組み込むことができる。好ましくは、キットは、ペプチドを組み込む。1以上の抗体及び1以上のペプチドの特徴は、詳細な説明及び下記の実験のパート中の別所にまとめられている。
【実施例】
【0245】
1.ヒト化タウモデル
ヒト化酵母株から精製されたとき、タンパク質タウは、示されたようなその(過剰)リン酸化状態及びタウ線維の形成をシードするその傾向を維持している(Vandebroek et al.,2005)。質量分析研究により、酵母から精製されたヒトタウ内の13の異なるリン酸化部位が確認され、これらは全て、AD脳で以前に報告されていた(J.Gobom,U.Goteborg,Swedenによって提供されたデータ;データは示さない)。
【0246】
2.凝集タウに特異的な抗体の作製
酵母から精製されたタウをBALB/Cマウスの免疫化に使用した。モノクローナル抗体(mAb)の融合及びスクリーニングの後、細菌から精製された組換え非リン酸化タウ及び酵母から単離されたタウに対する免疫反応性の違いに基づいて15のクローンを選択した。
【0247】
3.凝集タウに特異的な抗体のリン酸化特異性
リン酸化特異性は、当初、ヒト化野生型酵母株、並びにタウリン酸化の低下及び増大を示すそのコンジェニックなmds1Δ及びpho85Δ突然変異体から得られた抽出物で検査された。大腸菌によって産生された組換えタウは、対照としての役割を果たした。
【0248】
図2Aに示すように、ADX210などのmAbは、pho85Δ突然変異体中に存在する過剰リン酸化タウに対する増大した親和性を示し、その場合、それは、高分子質量の、おそらくはオリゴマーのタウ複合体を特異的に認識した。抗体は、大腸菌によって産生された組換えタウと反応せず、そのリン酸化依存性を示した。対照的に、ADx215は、酵母から得られたタウと大腸菌から得られたタウの両方を検出し、従って、このmAbは、リン酸化非依存的であることが知られている市販の汎タウmAb Tau−5で得られる免疫反応性と同様の免疫反応性を示した。しかしながら、ADx215が、はるかにより高い親和性(短縮された露光時間)を有すること、及びそれが、酵母試料中の高分子質量タウ複合体の一部をはっきりと認識することに留意されたい。
【0249】
新規のmAbのリン酸化特異性の確認は、
図2Bに示すようなアルカリホスファターゼで処理したヒト化酵母抽出物の解析によって得られた。ADX210について得られた結果は、脱リン酸化がタウ複合体を解体して単量体形態に戻すことを示し、タウ(過剰)リン酸化がタウ凝集に必要とされるという仮説を裏付けている。
【0250】
4.4.ヒト脳及びヒトタウトランスジェニックマウスモデルにおけるオリゴマータウの検出
ヒトタウは、AD脳における高次オリゴマー複合体の形成を推進するのに必要とされるリン酸化エピトープ及び立体構造変化を獲得しなければならない。そのような選択されたMab、すなわち、ADX210及びADx215を用いて、過剰リン酸化タウタンパク質の神経原線維のもつれの脳領域を染色することができ、高親和性mAb ADx215は、後期AD患者由来の脳抽出物由来の高分子質量タウ複合体を特異的に検出することができる。
【0251】
対照マウス(野生型、すなわち、FVB、及びタウ−KO)並びにヒトタウ−P301Lを発現するトランスジェニック体から得られた脳抽出物のウェスタンブロット解析は、Mab ADx215(YT1.15)、ADx210(YT1.10)、及びAT100が、ヒトタウを特異的に認識し、内在性マウスタウを認識しないことを示した(F.Van Leuven,K.U.Leuvenによって提供されたデータ;図
3A)。ADx215(YT1.15)について、この結果は、図
3Bに示すようなエピトープマッピングによって確認された。免疫組織化学的解析により、選択されたMabのうちの2つ、すなわち、ADx210(YT1.10)及びADx215(YT1.15)が、年老いたTgマウスの脳の様々な領域におけるもつれを染色することが明らかになった(F.Van Leuven,K.U.Leuvenによって提供されたデータ;図
3C)。更に、高親和性Mab ADx215(YT1.15)は、Tgマウス(図
3A)
の脳抽出物中の高分子質量タウ複合体を特異的に検出し
た。
これらのデータを合わせて、酵母で発現されたとき、ヒトタウが、AD脳で見られるような高次オリゴマー複合体の形成を推進するのに必要とされるリン酸化エピトープ及び立体構造変化を獲得しなければならないことが確認された。
【0252】
5.ELISAにおける凝集タウの免疫検出
凝集タウ特異的ELISAの調製のために、プレートを、凝集タウに特異的な1以上の異なる捕捉抗体でコーティングする。
【0253】
ELISA検査を実施するために、検査されるべき試料をプレートに添加する。任意に、陽性対照として、精製凝集タウをELISAプレートの個別のウェルに添加する。任意に、標準として、既知の量の精製凝集タウをELISAプレートの個別のウェルに添加する。次に、プレートを洗浄した後、結合した凝集タウを、凝集タウに結合することができる二次抗体を用いて検出する。これは、tau−5もしくはHT−7などの全タウを認識する抗体、AT270などのリン酸化特異的抗タウ抗体、又は第二の凝集タウ特異的抗体、或いは2以上のそのような抗体の組合せであることができる。
【0254】
或いは、プレートをコーティングするために使用される捕捉抗体は、tau−5もしくはHT−7などの全タウを認識する抗体、AT270などのリン酸化特異的抗タウ抗体、又は凝集タウ特異的抗体、或いは2以上のそのような抗体の組合せであり、結合した凝集タウは、凝集タウ特異的抗体又は2以上のそのような抗体の組合せを用いて検出される。
【0255】
二次抗体の結合は、二次抗体に直接的に又は間接的に(例えば、ストレプトアビジン−ビオチン結合によって)結合している、アルカリホスファターゼ又はルシフェラーゼなどの、酵素の活性を測定することによって可視化することができる。或いは、二次抗体の結合は、フィコエリスリンなどの蛍光色素、又は二次抗体に直接的にもしくは間接的に結合している蛍光タンパク質によって放出される蛍光を測定することによって可視化することができる。また、二次抗体の結合は、二次抗体に特異的に結合する三次抗体を使用し、次いで、二次抗体に対するこれらの三次抗体の結合を可視化することによって間接的に可視化することができる。
【0256】
検査されるべき試料は、脳脊髄液(CSF)、全血、血漿、もしくは血清、又は任意の他の試料であることができる。
【0257】
Nunc ELISAプレートに100μl/ウェルの5μg/ml ADx215を37℃で1時間コーティングした。その後、コーティング媒体を、ブロッキング用のPBS中の0.5%カゼイン(300μl/ウェル)と37℃で1時間交換した。その一方で、pho85d酵母タウ抽出物の希釈系列を5000ng/mlから320pg/mlまで調製し、これを、ADx215がコーティングされたプレートに37℃で1時間入れた。0.05%Tween20−PBSで3回洗浄した後、ビオチン化検出抗体(ADx201−bio又はADx210−bio、ADx201は、汎タウ抗体である)を37℃で1時間添加した。3回洗浄した後、ストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(Jackson)を37℃で30分間プレートに入れた。洗浄(3回)後、ペルオキシダーゼの量を、H2O2/TMB基質溶液を用いて、室温で30分間測定した。最後に、反応を100μlの1N H2SO4で停止させ、450nmで読み取った。
【0258】
解釈:pho85d酵母タウ抽出物のこの調製物は、AD210−bioによって検出されるのに十分なオリゴマータウを含有していなかった。
【0259】
6.xMAP技術を用いた凝集タウの免疫検出
ELISAの代替法として、INNO−BIA AlzBio3(Olsson et al.,2005)について記載されているような同時マルチパラメトリック解析を可能にする、Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)技術のようなビーズに基づくアッセイで凝集タウの免疫検出を実施することができる。
【0260】
凝集タウ特異的xMAP(登録商標)アッセイの調製のために、ビーズに、凝集タウに特異的な1以上の異なる捕捉抗体をコーティングする。
【0261】
xMAP(登録商標)アッセイを実施するために、検査されるべき試料を、抗体がコーティングされたビーズに添加する。次に、ビーズを洗浄した後、結合した凝集タウを、凝集タウに結合することができる二次抗体を用いて検出する。これは、tau−5もしくはHT−7などの全タウを認識する抗体、AT270などのリン酸化特異的抗タウ抗体、又は第二の凝集タウ特異的抗体、或いは2以上の抗体の組合せであることができる。
【0262】
或いは、ビーズをコーティングするために使用される捕捉抗体は、tau−5もしくはHT−7などの全タウを認識する抗体、AT270などのリン酸化特異的抗タウ抗体、又は凝集タウ特異的抗体、或いは2以上のそのような抗体の組合せであり、結合した凝集タウは、凝集タウ特異的抗体又は2以上のそのような抗体の組合せを用いて検出される。
【0263】
二次抗体の結合は、フィコエリスリンなどの蛍光色素、又は二次抗体に直接的にもしくは間接的に結合している蛍光タンパク質によって放出される蛍光を測定することによって可視化することができる。また、二次抗体の結合は、二次抗体に結合する三次抗体を使用し、次いで、これらの三次抗体の結合を可視化することによって間接的に可視化することができる。
【0264】
検査されるべき試料は、脳脊髄液(CSF)、全血、血漿、もしくは血清、又は任意の他の試料であることができる。
【0265】
7.凝集タウに特異的な抗体を用いたタウオパチーの診断
タウオパチーに罹患している患者及び対照対象の試料を、本発明の凝集タウ特異的抗体を用いて、凝集タウの有無について検査する。凝集タウは、上記の方法のいずれか、又は本発明の凝集タウ特異的抗体を利用する任意の他の方法によって検出される。
【0266】
凝集タウは、タウオパチーに罹患している患者の試料の多数のx%で検出することができるが、対照対象由来の試料の少数のy%でしか検出することができない。その場合、疾患マーカーとしての凝集タウに基づくタウオパチーの診断検査の感度は、x/100であり、一方、診断検査の特異性は、(100−y)/100である。
【0267】
代替法として、タウオパチーに罹患している患者及び対照対象の試料を、本発明の凝集タウ特異的抗体を用いて凝集タウの量について検査する。凝集タウを上記の方法のいずれか、又は本発明の凝集タウ特異的抗体を利用する任意の他の方法によって定量する。
【0268】
平均して、対照対象の試料中よりもより多くの凝集タウがタウオパチーに罹患している患者の試料中に存在する。従って、それを超えると対象がタウオパチーに罹患していると分類される閾値の慎重な選択によって、診断検査の所望の感度及び/又は特異性を得ることが可能になる。
【0269】
測定される凝集タウの各々の量について、感度及び1−特異性を、この値が、それを超えると対象がタウオパチーに罹患していると分類される閾値となる検査について計算する。測定される凝集タウの各々の量について、感度(Y軸)を1−特異性(X軸)に対してプロットする曲線は、受信者動作特性(ROC)曲線である。特異性
2+感度
2が1に最も近い閾値をこの検査の最良の閾値と考えることができる。或いは、より高い感度又は特異性が望ましい場合があり、これは、それぞれ、閾値を下げる又は上げることによって得られる。
【0270】
8.タウ凝集を妨げる組成物の同定
本発明の抗体は、試料中の凝集タウの検出、定性、及び/又は定量を可能にし、従って、タウの凝集及び/又は凝集タウの安定性を妨げる組成物を同定することを可能にする。
【0271】
凝集タウを、以前に記載されたヒト化酵母モデル(Vandebroek et al.,2005)からの精製によって得ることができる。その後、凝集タウを、検査されるべき組成物とともにインキュベートする。インキュベーション後、インキュベートされた試料中の凝集タウの量を、本発明の抗体を用いて決定し、組成物とともにインキュベートされていない試料中の凝集タウの量と比較する。インキュベートされた試料中の凝集タウの量が、組成物とともにインキュベートされていない試料中の凝集タウの量と異なる場合、検査された組成物が凝集タウの安定性を妨げたと結論付けることができる。
図2Bに示すように、そのような組成物の1つの例は、アルカリホスファターゼである。
【0272】
タウ凝集体を、上記のヒト化酵母モデルから精製されたタウのインキュべーションによってインビトロで形成させることができる(Vandebroek et al.,2005)。このインビトロ凝集体形成では、検査されるべき組成物を添加する。インキュベーション後、凝集タウの量を、本発明の抗体を用いて決定し、組成物に暴露されなかったインビトロ凝集タウの量と比較する。暴露された試料中の凝集タウの量が、組成物に暴露されていない試料中の凝集タウの量と異なる場合、検査された組成物が凝集タウの形成を妨げたと結論付けることができる。
【0273】
9.タウモノクローナル抗体のエピトープマッピング
標準的な技術を用いて、全長ヒトタウ、2つのN末端突然変異体、及び1つのC末端突然変異体を大腸菌で発現させた。全てのコンストラクトは、抗hisモノクローナル体による発現の制御を可能にするmTNF−His6融合体であった。細胞上清をゲル上で泳動し、ウェスタンブロットを行なった。モノクローナル体のいくつかについて、エピトープ又は領域は既知であり(BT2、AT120、及びBT3)、これらのモノクローナル体を用いて、方法を制御し、最適化した。表1は、検査されたモノクローナル抗体によって認識されるヒトタウ(全長タウ、N末端が短いタウ、N末端が長いタウ、C末端タウ)中のエピトープの位置の概観を提供する。
【表1】
表1.検査されたモノクローナル抗体によって認識されるものにおけるエピトープの位置
【0274】
これらの実験から、本発明者らは、それを結論付けることができた(
図5A)。エピトープマッピングを更に精緻化するために、本発明者らは、Pepscanを行ない、小さい重複ペプチドに対して抗体を検査することによってエピトープを更に詳細に記述した。
【0275】
短いバージョンのヒトタウの最初の163aaにわたるアミノ酸配列をPepscanに伝達した。この配列は、1つの既知のエピトープ、HT7(Vanmechelen,E.et al.,2000)と、タウのN末端にマッピングされた、3つの抗体のエピトープを含有し、これらの抗体は、YT 1.15を含み、全てIgG1サブタイプのモノクローナル抗体である。重複する15−merを有するminiPEPSCANカードを用いて、Slootstra et al,1995に記載されている通りにエピトープマッピングを実施した。コメントとして、本発明者らは、このPepscanについて、通常は1ng/mlで十分であるシグナルの取得のために、10μg/mlのモノクローナル体を使用しなければならなかったということを指摘しておかなければならない。これは、固定されたキャリア上でのペプチドの提示によるものである可能性があり、又は正確な立体構造を欠く(短い)長さのペプチドと関係している可能性がある。結果を
図5Bに示す。
【0276】
ADx215(YT1.15)は、aa16−24又はGTYGLGDRK(配列番号27)であると同定された。これは、文献にまだ記載されていない新しいエピトープである。最小エピトープ要件は、Pepscanとは異なる供給源由来の新たに合成されたペプチドで確認された。他のタウ抗体と同様に(Gamblin,T.C.,2005)、最小エピトープG
16−K
18の最適な認識のために、α−ヘリックスを形成すると予測されるタウのN末端部分(DeLeys,R.et al.,1995)が必要とされ、従って、キャリブレータとしてのYT1.15のエピトープとしての役割を果たすために合成ペプチド中で必要とされる配列は、E
7FEVMEDHAG
16TYGLGDRK
24(配列番号29)である。
【0277】
参考文献リスト
【0278】
配列表フリーテキスト
【表2】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕リン酸化タウ凝集体に結合することを特徴とする、単離されたタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔2〕軽鎖可変領域が、CDR1領域中に配列番号9に記載のアミノ酸配列を、CDR2領域中に配列番号10に記載のアミノ酸配列を、及びCDR3領域中に配列番号11に記載のアミノ酸配列を更に含み;かつ重鎖可変領域が、CDR1領域中に配列番号12に記載のアミノ酸配列を、CDR2領域中に配列番号13に記載のアミノ酸配列を、及びCDR3領域中に配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔3〕配列番号12〜配列番号14及び配列番号9〜配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜配列番号11及び配列番号12〜配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔4〕配列番号12〜配列番号14及び配列番号9〜配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9〜配列番号11及び配列番号12〜配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔5〕配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔6〕配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔7〕配列番号15、16、17、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔8〕配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔9〕配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔10〕配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔11〕配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号16及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖可変ドメインを含むことを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔12〕モノクローナル抗体である、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔13〕マウスモノクローナルIgG1サブタイプである、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔14〕例えば、単鎖抗体、Fv”断片、Fab断片(例えば、Fab’断片もしくはF(ab’)断片)、又は単一ドメイン抗体のヒト化抗体又はその断片である、前記〔1〕〜〔11〕の
いずれか一項に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔15〕ヒト抗体又はその断片である、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔16〕リン酸化タウ凝集体に優先的に結合する、前記〔1〕に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体。
〔17〕リン酸化タウ凝集体及び非リン酸化タウに結合する、前記〔1〕に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体。
〔18〕−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx210、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx211、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215
からなる群から選択される細胞株によって分泌されることを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体又は抗体断片。
〔19〕ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx210によって分泌されることを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体又は抗体断片。
〔20〕ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx211によって分泌されることを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体又は抗体断片。
〔21〕ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215によって分泌されることを更に特徴とする、前記〔1〕に記載の抗体又は抗体断片。
〔22〕タンパク質形質導入ドメイン(PTD)を更に含む、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔23〕タンパク質送達系、例えば、細胞形質膜を横断して、タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片を細胞内に送達するペプチド又はタンパク質モチーフを更に含む、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔24〕該タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を媒介するタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を更に含む、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔25〕タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片と複合体化することができる、該タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を促進するための、キャリア試薬、例えば、脂質リポソームなどを更に含む、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔26〕タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を促進し、それにより、該細胞をトランスフェクトするためのキャリア試薬を更に含み、例えば、キャリア試薬が、生体活性細胞膜透過試薬、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)(すなわち、約15〜約30残基を含む単一ペプチド配列)を含有する他のペプチドであり、かつそのような膜形質導入ペプチドが、Trojanペプチド、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)−1転写アクチベーター(TAT)タンパク質又はその機能ドメインペプチド、並びに転移タンパク質、例えば、ショウジョウバエホメオティック転写因子アンテナペディア(Antp)及び単純ヘルペスウイルスDNA結合タンパク質VP22などに由来するタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含有する他のペプチドからなる群のものである、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔27〕タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達を促進し、それにより、該細胞をトランスフェクトするためのキャリア試薬を更に含み、例えば、キャリア試薬が、生体活性細胞膜透過試薬、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)(すなわち、約15〜約30残基を含む単一ペプチド配列)を含有する他のペプチドであり、かつそのような膜形質導入ペプチドが、ペネトラチン1、Pep−1(Chariot試薬、Active Motif社、CA)、及びHIV GP41断片(519−541)からなる群のものである、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔28〕該タウ抗体、タウ抗体様スカフォード、又はタウ抗体断片の細胞内への送達の効率を高めるためのヘルパー試薬を更に含み、例えば、そのようなヘルパー試薬が、DEAE−デキストラン、デキストラン、ポリリジン、ポリエチルアミン、ポリエチレングリコール、アクリルアミド、RDGペプチド、例えば、Arg−Gly−Asp−Ser(配列番号52)、Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Ala−Ser−Ser−Lys−Pro(配列番号53)、及びヒドロゲルとRDGペプチドの混合物などである、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のタウ抗体、抗体様スカフォード、又は抗体断片。
〔29〕前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸。
〔30〕前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片を産生する単離された細胞株。
〔31〕−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8347CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx210、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 8348CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx211、及び
−ブダペスト条約の下、ベルギー・コーディネイティッド・コレクションズ・オブ・マイクロオーガニズムズBCCM(商標)/LMBPコレクションに、番号LMBP 9679CBの下で寄託されたハイブリドーマ細胞株ADx215
からなる群から選択される、前記〔30〕に記載の細胞株。
〔32〕動物においてリン酸化タウ凝集体に対する免疫応答を誘導する方法であって、該動物に、pho85Δ酵母株におけるタウの発現を含む方法によって得られるリン酸化タウ凝集体を投与することを含む、方法。
〔33〕リン酸化タウ凝集体に優先的に結合するタウ特異的抗体又は抗体断片を得るための、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕リン酸化タウ凝集体の検出における又はタウオパチーのインビトロ診断における前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片の使用。
〔35〕試料中のリン酸化タウ凝集体を検出するための又は対象におけるタウオパチーのインビトロ診断もしくはモニタリングのための方法であって、以下の工程:
−前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片と試料とを抗原−抗体複合体を生成させるのに好適な条件下で接触させる工程、及び
−該抗原−抗体複合体の形成を検出する工程、
を含む、方法。
〔36〕リン酸化タウ凝集体の検出のための又は対象におけるタウオパチーのインビトロ診断もしくはモニタリングのためのキットであって、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片を含む、キット。
〔37〕初期のアルツハイマー認知症を、とりわけ、対象におけるその他のタイプの認知症と区別するためのキットであって、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片を含む、キット。
〔38〕そのようなリン酸化タウ凝集体の形成又は安定性を妨げる組成物を同定するための、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片を含むキット。
〔39〕リン酸化凝集タウの検出のための及び凝集タウを伴う疾患の診断のための、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片を含む、キット。
〔40〕リン酸化タウ凝集体の形成又は安定性を妨げる組成物の同定のための方法であって、以下の工程:
−タウを、被検組成物の存在下で、リン酸化タウ凝集体の形成を可能にすることが知られている条件下でインキュベートする工程、又はリン酸化タウ凝集体を被検組成物の存在下でインキュベートする工程、
−リン酸化タウ凝集体を前記〔35〕に記載の方法に従って検出する工程、
−前工程で検出されるリン酸化タウ凝集体の量を被検組成物の非存在下でのインキュベーション後に検出されるリン酸化タウ凝集体の量と比較する工程、
−前工程の比較から、該被検組成物がリン酸化タウ凝集体の形成又は安定性を妨げるかどうかを結論付ける工程、
を含むことを特徴とする方法。
〔41〕疾患の治療で使用するための、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
〔42〕疾患の治療で使用するための、例えば、pho85Δ酵母株におけるタウの発現を含む方法によって得られる、リン酸化タウ凝集体。
〔43〕前記〔1〕〜〔28〕のいずれか一項に記載の抗体、抗体様断片、又は抗体断片を含む、タウオパチーの予防又は治療のための予防的又は治療的組成物。
〔44〕リン酸化タウ凝集体、例えば、pho85Δ酵母株におけるタウの発現を含む方法によって得られるものを含む、タウオパチーの予防又は治療のための予防的又は治療的組成物。
〔45〕タウ関連疾患又はタウオパチーの治療で使用するための、前記〔1〕〜〔28〕のいずれか一項に記載の抗体、抗体様断片、又は抗体断片を含む、タウオパチーの予防又は治療のための予防的又は治療的組成物。
〔46〕前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載のそのような抗体、抗体様断片、又は抗体断片をコードする核酸。
〔47〕タウタンパク質のエピトープを表すペプチドであって、該エピトープが、前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の抗体によって認識される、ペプチド。
〔48〕配列番号27によって表される配列を含むか、該配列から本質的になるか、又は該配列からなる、前記〔47〕に記載のペプチド。
〔49〕配列番号29によって表される配列を含むか、該配列から本質的になるか、又は該配列からなる、前記〔47〕に記載のペプチド。
〔50〕9〜19アミノ酸長である、前記〔47〕に記載のペプチド。
〔51〕リン酸化タウ凝集体に結合する抗体によって特異的に認識される、配列番号27又は28によって表される配列からなる前記〔47〕に記載のペプチド。
〔52〕抗体ADx215によって特異的に認識される、配列番号27又は28によって表される配列からなる前記〔47〕に記載のペプチド。
〔53〕配列番号27又は配列番号29によって表されるアミノ酸配列から本質的になるか、又は該アミノ酸配列からなるペプチドを含むキット。
〔54〕前記ペプチドが、陽性対照、内部標準、キャリブレータ、又は定量目的のためのものである、前記〔53〕に記載のキット。