(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂管を接続するための管継手として種々のものが知られている。一般にこの種の管継手として、特許文献1に記載の接続用金具が知られている。
図5に示すように、前記接続用金具100は、内筒部を有する本体101と、本体101のテーパ面に係合するテーパ状の割リング102と本体101のねじ部に螺合される袋状ナット103と、袋状ナット103を締め付けた際に袋状ナットと割りリングとの共回りを防止する座金104と、パイプ105の端面と継手との間をシールする環状のシールリング106を有している。このような構成の接続用金具100では、パイプ105を袋状ナット103へ挿通した状態で本体101の内筒部に外挿させた後、袋状ナット103を本体101に対して締め付けることで、割りリング102が金具奥側へ押し込まれると共に、本体のテーパ面と係合して内周方向へ縮径し、パイプの抜け出しを防止する。
【0003】
また、特許文献2に記載の管継手では、特許文献1に記載の接続用金具の構成に加え、内筒部の先端部の外周面に周方向に沿う凹部が設けられ、凹部内にはパッキングが装着されることでその漏水防止性能を高めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献2に記載の管継手の様に、凹溝内にOリングが装着される場合、凹溝と内筒部外周面とが交差する部分にエッジが形成される。そのため、Oリングを内筒部に装着する際にOリングが傷つくおそれがある。Oリングが傷付くのを防止するために、凹溝と内筒部の外周面とが交差する部分には0.1〜0.2mm程度の面取りが施されるのが一般的である。また、この面取りは、パイプがクランプされた際に凹溝内へ入り込める様にある程度大きくすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、前記面取りを大きくすると、シール部材が凹溝からはみ出すおそれがあった。このような場合、管継手のシール性能の低下を招くばかりか、凹溝よりはみ出したシール部材が原因で漏水にいたる可能性があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、かかる管継手のシール機能の向上を図り、接続管の挿入時にはシール部材がはみ出しにくい継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の管継手は、筒状をなし、外周面にねじ部が設けられた外筒部を有する継手本体と、前記継手本体より一体的に設けられ、接続管の内周面に嵌入される内筒部と、前記接続管に外嵌された状態で継手本体に係合される割リングと、前記接続管に遊嵌された状態で外筒部に設けられた前記ねじ部と螺合され、前記継手本体と共働して、前記割リングを継手奥側へ押し込みつつ縮径させる締付け部材と、を有する管継手であって、前記内筒部には、少なくとも1つ以上の、割リングが縮径した際に接続管内周面に食い込む環状突起部を有し、前記環状突起部は、継手手前側又は奥側の少なくとも一方に端面を有し、前記環状突起部の継手本体奥側には、シール部材が嵌着されるシール部材嵌着溝が設けられ、前記シール部材は、前記シール部材嵌着溝に取り付けられた際に、その外径が前記環状突起部の外径よりも小さくされ、前記シール部材嵌着溝の壁面と、前記内筒部の外周面が交差する部分には面取り部が設けられて
おり、前記割リングは内周面に3本の突条が周設され、当該割リングが縮径した際には、当該3本の突条のうち、軸線方向の中央に位置する突条が、前記接続管の外周面に対して前記シール部材嵌着溝に径方向で重なる位置で食い込むとともに、残りの2本の突条が、当該食い込み位置に対して軸線方向の前方及び後方でかつ、前記シール部材嵌着溝に径方向で重ならない位置で、前記接続管の外周面に対して食い込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の継手では、上述の如き構成が採用されている。そのため、凹溝に設けられた面取りを大きくしながらも、パイプの挿入時にはシール部材がはみ出しにくい。その結果、シール機能の向上が達成されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明を具体化した一実施例について
図1〜4に従って説明する。
【0016】
(最良の実施形態)
この実施形態の管継手1において、継手本体手前(
図2の左)側には樹脂管50を接続する樹脂管挿入部11を有し、継手本体奥(
図2の右)側には図示しない熱源機器等へ接続するための機器接続部12が形成された、いわゆる、オスアダプターについての例である。
【0017】
図1又は
図2に示すように、管継手1は継手本体10、割リング20、締付ナット30及びシール部材40で構成されている。
【0018】
真鍮製の継手本体10は、筒状であって、手前側に樹脂管50が挿入される樹脂管挿入部11と、奥側に図示しない熱源機器等へ接続するための機器接続部12とを有している。
【0019】
樹脂管挿入部11は、該継手本体10から延設される外筒部13と内筒部14とで構成され、樹脂管50が挿入されるようになっている。
【0020】
外筒部13の外周面には、ねじ部18が設けられると共に、継手本体手前側に位置する先端部の内周面には第1の傾斜面19が設けられている。また、ねじ部18の奥側にはニゲ部51が設けられ、ニゲ部51には3箇所の樹脂管挿入状態確認窓52が設けられている。
【0021】
内筒部14は、その外径が樹脂管50の内径とほぼ同径とされ、その外周面には2つの環状突起部が設けられている。環状突起部をそれぞれ、内筒の継手本体手前側に位置する環状突起部15aと、継手本体奥側に位置する環状突起部15bとし、それぞれ継手本体奥側に向かうにつれ漸次拡径する傘状となっている。
【0022】
図3(a)及び
図4に示すように、環状突起部15bの継手本体手前側から見た直後には、シール部材嵌着溝16が設けられ、リング状のシール部材40が嵌着される。このシール部材嵌着溝16の継手本体手前側に位置する壁面16aは、傘状の環状突起部15bの継手本体奥側の端面と同一面であり、また、継手本体の奥側に位置する壁面16bと内筒部14の外周面とが交差する部分には、面取り角度α=45°の面取り部17が設けられる。
【0023】
この、面取り部17の寸法X(mm)は、下式で算出される範囲の寸法で設けられている。
0.5(mm)<X<A/2(mm)
【0024】
ここで言うAの寸法は、非嵌着時のシール部材40の線径(太さ)ではなく、シール部材40をシール部材嵌着溝16に嵌着した時のシール部材40の太さである。A寸法は通常、
図4に示すように、シール部材嵌着溝の底面部から、シール部材がシールをする相手物の内径までの高さ寸法とするのが一般的である。
【0025】
割リング20は、円環状の一部が切りかかれたCリング形状をなし、その両側面にテーパ部21、22を有すると共に、その内周面には3本の断面半円状の突条23が周設されている。
【0026】
締付ナット30は、樹脂管50が挿通する樹脂管挿通孔33が設けられ、割リング20のテーパ部22に係合する第2の傾斜面31を有すると共に、内周面にはねじ部32を有している。
【0027】
シール部材40は、断面円形のリング状をなし、主にEPDM(エチレンプロピレンゴム)等で成形され、シール部材嵌着溝16に嵌着された際には、その外径が、環状突起部15bの外径と同一又はそれ以下となるようにされている。
【0028】
樹脂管50は架橋ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂等のオレフィン系樹脂で形成される。
【0029】
次に、以上のように構成された管継手1についてその作用を説明する。
さて、
図3(a)に示すように、管継手1に対し樹脂管50を接続する際には、管継手1から分離させた締付ナット30を樹脂管50に遊嵌させ、次に割リング20を樹脂管50に外嵌させる。
【0030】
次いで、
図3(b)に示すように、締付ナット30と割リング20とが装着された状態の樹脂管50を、その挿入状態を樹脂管挿入状態確認窓52で確認しつつ、樹脂管挿入部11に挿入する。
【0031】
そして、割リング20を、テーパ部21が継手本体10の第1の傾斜面19に係合するまでスライドさせると共に、締付ナット30のねじ部32を継手本体10のねじ部18に螺合させる。さらに、締付ナット30を手等で締付けると、第2の傾斜面31が割リング20のテーパ部22に係合する。
【0032】
続いて、締付ナット30を、図示しないスパナやレンチ等の工具を用いて締付けることで継手本体奥側へ螺進させる。この時、割リング20は両側がテーパ状であり、かつリングの一部が切りかかれたCリング形状とされているため、第1及び第2の傾斜面19、31間で摺動しつつリングが縮径する。また、割リング20の内周面には突条23が設けられているため、割リング20が縮径すると共に突条23が樹脂管50の外周面に食い込む。
【0033】
その後、さらに締付ナット30を螺進させると、
図3(c)に示すように割リング20の端部が、締付ナット30の樹脂管挿通孔33と樹脂管50との間で目視可能となり、この状態になった時点で工具による締め付けを止め、樹脂管50と管継手1との接続を完了する。
【0034】
以上の実施形態により得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態の管継手1では、シール部材嵌着溝16の継手本体手前側に位置する壁面16aは、傘状の環状突起部15bの後端面と同一面とされている。そのため、環状突起部15bの直後にシール部材嵌着溝16が設けられることとなる。その結果、内径が通常のものより小径の樹脂管を接続する場合であっても、該樹脂管は環状突起部で拡径された直後にシール部材40上を通過することとなり、樹脂管の端部がシール部材40に引っかかり難い。
【0035】
また、継手本体の奥側に位置する壁面16bと内筒部14の外周面とが交差する部分には、45°の面取り部17が設けられており、該面取り部の寸法X(mm)は、{0.5(mm)<X<A/2(mm)}の条件を満たす範囲で設けられている。そのため、たとえ樹脂管50の端部がシール部材40に引っかかり、シール部材40が継手奥方に押し込まれた場合であっても、シール部材40がシール部材嵌着溝16からはみ出し難くなっている。
【0036】
(2)外筒部13の外周面には、ねじ部18の奥側にニゲ部51が設けられ、ニゲ部51には3箇所の樹脂管挿入状態確認窓52が設けられている。そのため、樹脂管50を樹脂管挿入部11へ挿入した際に、確実に奥まで挿入されているか否かを目視で確認可能となっている。また、樹脂管挿入状態確認窓52がニゲ部51に設けられているため、樹脂管と管継手の接続が完了した後でも、適切に接続がなされていることを確認できる。
【0037】
(3)割リング20はその両側面にテーパ部21、22を有し、継手本体10及び締付ナット30には、割リングの両側面に係合する部分に第1の傾斜面19及び第2の傾斜面31が設けられている。そのため、割リングが縮径する際には軸線方向での移動がほとんどなく、割リングの縮径に伴って樹脂管50が更に奥方へ押し込まれるというおそれが少ない。よって、2層管等の層間が接着された管を用いた場合であっても、無理な奥方への押し込みが少ないため、層間の接着が破壊され難く、樹脂管と管継手との接続が適切に維持される。
【0038】
(4)樹脂管と管継手との接続の際、締付ナット30を締めこんでいくと、割リング20の端部が、締付ナット30の樹脂管挿通孔33と樹脂管50との間で目視可能となる。そのため、十分な締付けを行ったことが目視で判断できる。これにより、必要以上の締付けを抑制することが可能であり、締付けすぎによる不具合、例えば、締付ナットが応力時期割れ等により破壊されることを適切に予防できる。
【0039】
なお、実施形態は、次のように具体化して実施することも可能である。
・継手本体10の材質は真鍮製に限られるものではなく、用途に応じて、青銅、合成樹脂等種々の材質を選択できるものである。
・内筒部14は、継手本体10から延設されるばかりでなく、継手本体10に螺合や接着、融着等によって設けられてもよく、最終的に一体的になっていればよい。
【0040】
・内筒部14に設けられた環状突起部15a、15bは、1つ又は2つより多く設けられてもよく、樹脂管50内へ挿入する際の挿入抵抗と、樹脂管50を接続した後の抜けにくさを考慮して、設計者が適宜に選択するものである。
・シール部材嵌着溝16が設けられる場所は、環状突起部15bの直後が好ましいが、環状突起部15aの直後に設けても良い。また、環状突起部を複数箇所設けた場合には、いずれかの環状突起部の直後に設けることが好ましい。
【0041】
・実施例では、割リング20の内周面には断面半円状の突条23が周設されるとしたが、これに限られるものではなく、断面を三角形状としたものものでもよい。また、これらの突条を軸線方向に螺旋状に設けてもよいし、突条に代えてローレット加工等を設けてもよく、割リングの内周面と樹脂管の外周面との滑動が抑制されるものであればよい。
・樹脂管50については、耐圧性、耐熱性及び伸縮性を有する架橋ポリエチレン管が好ましいが、酸素透過防止機能が付加された架橋ポリエチレン管や、通常のポリエチレン管、ポリブテン管等であってもよい。また、ゴムホースや柔らかな金属管、例えば、銅管等を用いることもできる。
【0042】
・面取り部17の面取り角度αについては、寸法Xが保たれていれば45°でなくともよく、30°や60°等であっても良い。この面取り角度が大きいほど接続管が入り込みやすく、接続の強度を高めることができる。
・シール部材40は、管継手中を流れる流体に合わせて適宜変更することができる。例えば、高温の蒸気や薬品が流れる場合にはFKM(フッ素樹脂)が好ましい。
【0043】
・実施例ではオスアダプタの例について説明したが、これに限られるものではなく、機器接続部12がメスねじになっているメスアダプタであっても良い。また、両側に樹脂管挿入部11が設けられるソケット形状であっても良いし、樹脂管挿入部を3方、4方とした、チーズソケット形状や、クロスソケット形状としても良い。