特許第6168507号(P6168507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6168507
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】導電性生地
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/564 20060101AFI20170713BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   D06M15/564
   B32B5/28 Z
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-164196(P2016-164196)
(22)【出願日】2016年8月24日
【審査請求日】2017年4月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭作
(72)【発明者】
【氏名】鴻野 勝正
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3187265(JP,U)
【文献】 特開昭60−225499(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/115441(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/115440(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/001577(WO,A1)
【文献】 特開2013−191551(JP,A)
【文献】 特開平1−40603(JP,A)
【文献】 特開2011−54297(JP,A)
【文献】 特開平11−128187(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202786882(CN,U)
【文献】 国際公開第1991/14574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00〜15/715
B32B 1/00〜43/00
H05B 1/00〜 3/00
H01R12/00〜12/91
24/00〜24/86
A41D 1/00〜31/02
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子部を有する生地本体と、該生地本体に設けられる配線とを備えており、
少なくとも前記端子部は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、前記パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備え、
前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分は、前記生地本体に含浸されており、
前記パターン導電層は、前記生地本体の露出表面に沿って配置され、前記配線と電気的に接続されていることを特徴とする導電性生地。
【請求項2】
前記配線および端子部は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、前記パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備えており、
前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分は、前記生地本体に含浸されており、
前記パターン導電層は、前記生地本体の露出表面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性生地。
【請求項3】
前記配線は、第1配線部と第2配線部とを備えており、
前記端子部及び第1配線部は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、前記パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備えており、
前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分は、前記生地本体に含浸されており、
前記パターン導電層は、前記生地本体の露出表面に沿って配置され、前記第1配線部と第2配線部とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性生地。
【請求項4】
前記生地本体は、部分的に突出する生地片を備えており、
前記端子部が、前記生地片に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性生地。
【請求項5】
前記生地片は、前記生地本体の表面から外方に突出して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の導電性生地。
【請求項6】
前記端子部の少なくとも先端部において、前記パターン導電層が配置される面とは反対側の面に補強部材が配置されていることを特徴とする請求項1から5に記載の導電性生地。
【請求項7】
前記生地本体は、熱融着糸および熱合着糸の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の導電性生地。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂層は、前記パターン導電層に対して前記生地本体側に設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の導電性生地。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂層は、ポリウレタンを含有する樹脂製であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の導電性生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性生地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、心電図や筋電図等のデータ採取、或いは電気治療や電磁波治療などを対象者に対して行う場合に使用する電極付き着衣が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような着衣は、布生地に導電性糸を編み込むことにより電極を形成し、当該電極を介して心電信号や筋電信号を外部装置が検出できるように、或いは、電極を介して電流等を対象者に付与できるように構成されている。
【0003】
また、布生地から構成される湿度感知生地も知られている(例えば、特許文献2参照)。湿度感知生地は、導電性に乏しい糸が導電性の糸の間に置かれるようにして、導電性の糸と導電性に乏しい糸とが編製されて構成されている。このような湿度感知生地は、湿度が変化すると電気抵抗が変化するため、導電性の糸の間の電気伝導度を外部装置を介して監視すれば、生地内に湿気が発生したことを検知できるというものであり、例えば、病院や介護施設におけるベッドマットやベッドシーツに適用され、入院等する患者の発汗状況等の確認に用いられている。
【0004】
また、布生地に導電性糸を編み込むことにより電極を形成し、当該電極に外部装置である電源を接続して電圧を印加することにより電極が発熱できるように構成された布ヒータも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4609923号公報
【特許文献2】特開2011−106084号公報
【特許文献3】特開2014‐157824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、多種多様な機能を発揮させるべく、例えば電極や配線が設けられた布生地(導電性生地)自体の開発については盛んに行われているが、導電性生地と外部装置との間の接続部構造については、大きな工夫がなされておらず、十分な強度を持たせつつ、生地の風合いを損なわない構造を得るには至っていない。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、十分な強度を持たせつつ、生地の風合いを損なうことのない、外部装置との接続部構造を有する導電性生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、端子部を有する生地本体と、該生地本体に設けられる配線とを備えており、少なくとも前記端子部は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、前記パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備え、前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分は、前記生地本体に含浸されており、前記パターン導電層は、前記生地本体の露出表面に沿って配置され、前記配線と電気的に接続されていることを特徴とする導電性生地により達成される。
【0009】
この導電性生地において、前記配線および端子部は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、前記パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備えており、前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分は、前記生地本体に含浸されており、前記パターン導電層は、前記生地本体の露出表面に沿って配置されるように構成してもよい。
【0010】
また、前記配線は、第1配線部と第2配線部とを備えており、前記端子部及び第1配線部は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、前記パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備えており、前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分は、前記生地本体に含浸されており、前記パターン導電層は、前記生地本体の露出表面に沿って配置され、前記第1配線部と第2配線部とが電気的に接続されているように構成してもよい。
【0011】
また、前記生地本体は、部分的に突出する生地片を備えており、前記端子部が、前記生地片に配置されるように構成してもよい。
【0012】
また、前記生地片は、前記生地本体の表面から外方に突出して形成されるように構成してもよい。
【0013】
また、前記端子部の少なくとも先端部において、前記パターン導電層が配置される面とは反対側の面に補強部材が配置されるように構成してもよい。
【0014】
また、前記生地本体は、熱融着糸および熱合着糸の少なくとも一方を含むように構成してもよい。
【0015】
また、前記熱可塑性樹脂層は、前記パターン導電層に対して前記生地本体側に設けるように構成してもよい。
【0016】
また、前記熱可塑性樹脂層は、ポリウレタンを含有する樹脂製によって構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、十分な強度を持たせつつ、生地の風合いを損なうことのない、外部装置との接続部構造を有する導電性生地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る導電性生地を模式的に示した平面図である。
図2図1に示す導電性生地のA−A断面における要部拡大図である。
図3】本発明に係る導電性生地の製造方法を説明するためのブロック図である。
図4】本発明に係る導電性生地を製造するに際して用いるプリント電極体を示す概略構成断面図である。
図5】本発明に係る導電性生地の製造途中段階を示す説明図である。
図6】(a)は、本発明に係る手法により構成した導電性生地に関する画像であり、(b)は、導電性繊維構造体に直接印刷してパターン導電層を形成した導電性生地に関する画像である。
図7】本発明に係る導電性生地の効果の一例を説明するための説明図である。
図8】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した概略平面図である。
図9】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した概略平面図である。
図10】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した断面図である。
図11】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した断面図である。
図12】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した断面図である。
図13】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した断面図である。
図14図13に示す導電性生地の使用例を説明するための説明図である。
図15】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した断面図である。
図16】本発明に係る導電性生地の変形例を模式的に示した断面図である。
図17】本発明に係る導電性生地を製造するに際して用いるプリント電極体の変形例を示す概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態にかかる導電性生地について、添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。本発明に係る導電性生地1は、例えば図1に示すような導電パーツを製造する際において、その構成要素の一つとして使用することができる。この導電性生地1(導電パーツ)は、偏平の長尺状(帯状)に形成され、幅方向に配線2及び非導電部3が交互に配設されるように構成される繊維構造体10を備えており、例えば、心電図や筋電図等のデータ採取、或いは電気治療や電磁波治療などを対象者に対して行う場合に、対象者の腕や脚、胴部などに巻きつけて装着できるように構成されている。
【0021】
なお、図1に示す形態においては、長尺状の形状を有するように繊維構造体10を形成しているが、このような形態に特に限定されず、例えば、筒形状(ストレート形やテーパ形、或いは瓢箪形など)や、平面視矩形状、平面視円形状としてもよい。また、繊維構造体10をシャツ、パンツ、ズボン、靴下、手袋、帽子といった衣類として構成してもよい。なお、図1においては、各配線2が、繊維構造体10の長手方向に沿う細帯状に形成され、各非導電部3も同様に繊維構造体10の長手方向に沿う細帯状に形成されているが、このような形態に特に限定されず、導電性生地1の使用目的や装着個所等に応じて、種々の形状となるように配線2及び非導電部3を構成することができる。また、配線2及び非導電部3の各個数についても特に限定されず、適宜変更することができる。
【0022】
このような繊維構造体10は、配線2を構成するための導電性糸21と、非導電部3を構成するための非導電性の地糸31とを用いて様々な方法により形成することができる。繊維構造体10としては開口を有する編地または織地を含む布帛、不織布、その他生地が使用可能である。例えば、上記導電性糸21及び地糸31を用いて製編することにより形成される場合、その編地構造は特に限定されず、例えば、平編、ゴム編、スムース編、パール編又はそれらの変化組織(例えば、ミラノリブや段ボールニットなど)や、トリコット編、ラッシェル編、ミラニーズ編等の各種編地構造を採用することができる。また織地構造の場合は、平織、綾織、朱子織等の織り方を例示できる。なお、非導電性の地糸31により構成される部分が、繊維構造体10のおける生地本体を構成する。また、繊維構造体10の製造方法は、上記方法に限定されず、例えば、非導電性の地糸31によってまず生地本体を形成した後、所定部分に導電性糸21を編み込み、刺繍等して配線2を形成し製造することもできる。
【0023】
ここで、配線2を構成するための導電性糸21には、樹脂繊維や天然繊維、或いは金属線等を芯として、この芯に湿式や乾式のコーティング、メッキ、真空成膜、その他の適宜被着法を行って金属成分を被着させた金属被着線(メッキ線)を使用するのが好適である。芯には、モノフィラメントを採用することも可能ではあるが、モノフィラメントよりも、複数の単繊維の集合体であるマルチフィラメントや紡績糸のほうが好ましく、更にはウーリー加工糸やSCY、DCYなどのカバリング糸、毛羽加工糸などの嵩高加工糸がより好ましい。
【0024】
芯に被着させる金属成分には、例えばアルミ、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、錫、亜鉛、鉄、銀、金、白金、バナジウム、モリブデン、タングステン、コバルト等の純金属やそれらの合金、ステンレス、真鍮等を使用することができる。
【0025】
なお、導電性糸21に弾性糸を混用してもよい。弾性糸には、ポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を単独で用いてもよいし、「芯」にポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を用い、「カバー」にナイロンやポリエステルを用いたカバリング糸などを採用することができる。
【0026】
また、非導電部3を構成するための非導電性の地糸31には、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維やナイロン繊維等)や天然繊維、合成繊維と弾性糸とを混用した素材等を使用することができる。弾性糸には、例えば、ポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を単独で用いてもよいし、「芯」にポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を用い、「カバー」にナイロンやポリエステルを用いたカバリング糸などを採用することができる。また、非導電性の地糸31には、モノフィラメントを採用することも可能ではあるが、モノフィラメントよりも、複数の単繊維の集合体であるマルチフィラメントや紡績糸のほうを好ましく用いることができる。
【0027】
また、繊維構造体10(生地本体)は、図1の平面図に示すように、端子部4を備えている。この端子部4は、外部デバイス回路のコネクタに直接挿入されて接続される接続端子であり、長尺状の繊維構造体10(生地本体)の一方の端部に設定されている。ここで、外部デバイス回路のコネクタは、繊維構造体10の端子部4を挿入して接続されるものであればその種類は特に限定されず、スライドロック式、フロントフリップロック式、バックフリップブロック式等のコネクタといったフラットケーブル(FFCやFPC)に使用されるような一般的なコネクタ(汎用のフラットケーブル用コネクタ)を例示することができる。
【0028】
この端子部4は、図1の平面図や、この図1のA−A断面における要部拡大図である図2に示すように、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層5を備えている。このパターン導電層5は、電極や配線としての機能を有するものであり、その一方端が、外部装置が備える外部デバイス回路のコネクタに電気的に接続可能に構成され、また、パターン導電層5の他方端は、繊維構造体10における配線2と電気的に接続されるように、当該配線2の一部分上に載置固定される形態で構成されている。パターン導電層5の厚みは、1μm以上30μm以下であることが好ましく、特に、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。パターン導電層5は、例えば、導電性糸21によって形成される配線2や地糸31によって形成される生地本体2の露出表面に沿って配置されている。繊維構造体10の表面には、製編される導電性糸21や地糸31によって形成される凹凸がある。パターン導電層5は、これら製編された導電性糸21や地糸31によって形成される凹凸の上側の表面(露出表面)に沿った状態で配置され、図2に示すように断面視波状となるように構成されている。
【0029】
パターン導電層5は、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリウレタン、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体等から選ばれた少なくとも一種よりなるバインダ(樹脂)中に、銀、塩化銀、チタン、ニッケル、白金、アルミニウム、ステンレス等から選ばれた少なくとも一種の微細粒子を含む導電性材料を混合して形成されている。その他、導電性の材料として、カーボン微粒子や、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細導電炭素繊維や、PEDOT:poly(3,4-ethylenedioxythiophene)などの導電性ポリマー(導電性高分子)を混合してもよい。またパターン導電層5の材料として、アクリルゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム等のエラストマー材料を含むことが好ましい。エラストマー材料を含むことで、繊維構造体10の伸縮に対して、パターン導電層5が追従できるため、クラックや導通不良を防ぐことができる。
【0030】
また、本発明に係る導電性生地1における端子部4は、熱可塑性樹脂層6を備えている。熱可塑性樹脂層6は、図2に示すように、上記パターン導電層5に対して繊維構造体10側に設けられ、パターン導電層5の一方の面に接しつつ、繊維構造体10(配線2や生地本体)に含浸されている。この熱可塑性樹脂層6の接着作用によって、パターン導電層5が、繊維構造体10上に強固に固定されている。なお、本実施形態においては、熱可塑性樹脂層6が繊維構造体10に含浸される領域を、図1において一点鎖線で示している。また、繊維構造体10に含浸される熱可塑性樹脂層6は、配線2及び非導電部3における編地構造内(或いは、織地構造内)の他、地糸31と地糸31の間、地糸31と導電性糸21との間、導電性糸21と導電性糸21との間、地糸31及び導電性糸21をマルチフィラメント等の単繊維の集合体として構成した場合には、各短繊維の間等に存在することとなる。
【0031】
熱可塑性樹脂層6を構成する樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタールや、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。特に、柔軟性、加工性及び価格面から、ポリウレタンを含有する樹脂(ポリウレタン樹脂)が好ましく用いられる。
【0032】
次に、上記本発明に係る導電性生地1の製造方法について説明する。この導電性生地1の製造方法は、図3のブロック図に示すように、繊維構造体形成ステップS1と、載置ステップS2と、加熱・加圧ステップS3とを備えている。
【0033】
繊維構造体形成ステップS1は、上述の生地本体と当該生地本体の所定位置に形成された配線2とを備える繊維構造体10を形成する工程である。繊維構造体10の具体的な形成方法は、特に限定されないが、例えば、配線2を構成するための導電性糸21と、非導電部3を構成するための非導電性の地糸31とを用いて、所定形状(例えば、長尺状(帯状)、筒形状、平面視矩形状、平面視円形状、衣類(シャツ、パンツ、ズボン、ベルト、靴下、手袋、帽子など)およびそれらの部材の形状の繊維構造体10を製編する方法を挙げることができる。
【0034】
載置ステップS2は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層5と、該パターン導電層5の少なくとも一方の面側に配置される熱可塑性樹脂層6とからなるプリント電極体7を、端子部4に対応する位置において、繊維構造体10における配線2の少なくとも一部分上にパターン導電層5が重なるようにして載置する工程である。
【0035】
ここで、上記プリント電極体7について説明する。このプリント電極体7としては、図4の断面図に示すように、離型フィルム71上に、印刷技術によりパターン導電層5を形成した後、当該パターン導電層5上に、熱可塑性樹脂層6を配設して構成されるものを例示することができる。印刷技術としては特に限定されず、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷や、フォトリソグラフィ等の細線パターニングなど、周知の印刷方法を用いることができる。熱可塑性樹脂層6として、例えば、ポリウレタンを含有する樹脂を接着剤として採用する場合には、当該接着剤をパターン導電層5上に塗布して構成することができる。また、パターン導電層5上に配設される熱可塑性樹脂層6の厚みは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、特に、5μm以上30μm以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂層6(接着剤)の厚みが1μm未満の場合、接着強度に問題がある。50μmより厚い場合、印刷で形成することが難しい。
【0036】
このようなプリント電極体7を図5に示すように、繊維構造体10における配線2の少なくとも一部分上に、プリント電極体7の熱可塑性樹脂層6側を向けて載置することにより載置ステップS2は完了する。
【0037】
加熱・加圧ステップS3は、繊維構造体10上の所定位置(端子部4を形成する位置)に載置されたプリント電極体7を加熱及び加圧することにより、プリント電極体7の熱可塑性樹脂層6を溶融させて繊維構造体10の内部側に流動させて含浸させつつ、プリント電極体7のパターン導電層5を繊維構造体10の表面凹凸形状に沿った状態で配置して配線2に電気的に接続する工程である。この加熱・加圧ステップS3において、導電性糸21の頂部よりも上方に配置される溶解前の熱可塑性樹脂層6は、ヒートプレスによる加熱により溶解して下方に流動していくと共に、加圧によるパターン導電層5の移動によって導電性糸21の頂部近傍から下方に押し出されていき、露出面側に配置される導電性糸21とパターン導電層5とが互いに直接接触した状態で、また、地糸31とパターン導電層5とが互いに直接接触した状態で接続固定される。なお、この加熱・加圧ステップS3が終了した後、プリント電極体7における離型フィルム71を取り外すことにより、図2の断面図に示す本発明に係る導電性生地1が形成される。
【0038】
本発明に係る導電性生地1は、フラットケーブル(FFCやFPC)に使用される一般的なコネクタ(汎用のフラットケーブル用コネクタ)に直接挿入することが可能な端子部4を備えているため、外部装置の有する外部デバイス回路のコネクタと直接的に接続できる。つまり、導電性生地1にFPC等の接続配線を別途設けることなく、端子部4を介して、外部デバイス回路との電気信号の入出力が可能となる。
【0039】
また、本発明に係る導電性生地1は、印刷技術により形成されるパターン導電層5によって、導電性生地1と外部装置との間の接続部構造を形成したものである。このパターン導電層5は、例えば図2に示すように、導電性糸21及び地糸31を用いて製編されて形成される繊維構造体10の露出表面(表面凹凸形状)に沿った状態で、断面視波状となるように配置されているため、パターン導電層5と繊維構造体10との密着性が高くなり、パターン導電層5の断線、剥離等を効果的に防止することが可能となる。また配線2とパターン導電層5との接触面積が大きくなるため、接触抵抗が低くなる。なお、本発明に係る導電性生地1の場合、図6(a)の画像に示すように、繊維構造体10の露出表面に沿って、断線等を生じることなくパターン導電層5が綺麗に形成されており、抵抗値不良や導通不良が発生することが防止されていることが分かる。一方、繊維構造体10に直接印刷してパターン導電層5を形成した場合、導電性材料及び樹脂からなる導電性ペーストが液状のため、図6(b)の画像に示すように、開口部(地糸31同士の隙間、導電性糸21同士の隙間、或いは、地糸31と導電性糸21との隙間)に導電性ペーストが落ち込んでしまい、断線や抵抗値不良が発生しやすくなる。ここで、図6(a)における導電性生地1は、ナイロン40%及びポリエステル60%の混合糸で編成された厚みが300μmの生地に対して、プリント電極体7として、離型フィルム71上に厚み10μmのパターン導電層5(銀)を形成し、当該パターン導電層5上に、厚みが10μmのポリウレタン系接着剤(熱可塑性樹脂層6)を配設したものを使用して上記方法により形成されている。また、図6(b)における導電性生地は、ナイロン40%及びポリエステル60%の混合糸で編成された厚みが300μmの生地に対して、直接、銀ペーストをその厚みが10μmとなるように設定して印刷したものである。
【0040】
また、パターン導電層5と、繊維構造体10における配線2とが一体化されて構成されるため、電気的な接合強度が強いという効果も発揮する。また、パターン導電層5は、図2に示すように、繊維構造体10の露出表面に沿って設けられているため、繊維構造体10を構成する導電性糸21や地糸31との接触面積が大きいという特徴がある。これにより、パターン導電層5が繊維構造体10の表面から剥離してしまうことを、効果的に防止することが可能となる。
【0041】
また、パターン導電層5と導電性繊維構造体10における配線2とが一体化される際、熱可塑性樹脂層6が導電性繊維構造体10の反対側の露出表面(パターン導電層5が配置される露出表面とは反対側の表面)ににじみ出ない構成とすることが好ましい。本構成とすることで、熱可塑性樹脂層6が導電性生地1の反対側の露出表面より内側に存在するため、導電性繊維構造体10の反対側の風合いや肌触りを損なわない。
【0042】
また、本発明に係る導電性生地1は、繊維構造体10における導電性糸21で形成された配線2のパターン幅やピッチよりもパターン導電層5のパターン幅やピッチを小さくすることができる。配線2のパターンは、その編成構造や糸径によって最小幅が規定されたり、導電糸の毛羽立ちによる短絡等の問題から隣接パターンとのピッチを小さくし難い。それに対し、パターン導電層5は印刷技術により形成される為、線幅や線間ピッチを小さくすることが可能になる。特に、パターン導電層5によって、導電性生地1と外部装置との間の接続部構造を形成する場合に好適であり、導電性生地1と外部装置との間の接続部構造における電極間距離を狭く形成することが可能となる。例えば、各配線間隔が3mmの配線2に対し、本発明の構造でパターン導電層5を接続することで、各配線間隔を0.2〜1mm程度の狭ピッチに変換することができ、フラットケーブル(FFCやFPC)に使用されるような一般的なコネクタ(汎用のフラットケーブル用コネクタ)に直接挿入することも可能となる。例えば、導電性生地1上に形成された心拍、心電あるいは筋電などの生体情報を測定する電極と、その測定データを処理する外部装置との間の接続が容易になる。
【0043】
また、繊維構造体10に含浸されている熱可塑性樹脂層6は、パターン導電層5と電気的に接続する配線2を構成する導電性糸21の周りにおいて当該導電性糸21をコーティングする部材として機能しつつ、パターン導電層5との強固な接着作用をも奏することとなる。したがって、パターン導電層5と配線2との接続部分における導電性糸21が酸化することや当該導電性糸21の金属皮膜が脱落してしまうことを効果的に防止し、その劣化を抑制することが可能となり、パターン導電層5と配線2との良好な導通状態を維持することが可能となる。
【0044】
また、本発明に係る繊維構造体10は、編地構造を有することが好ましい。この構造を採用することにより、溶解した熱可塑性樹脂が、導電性生地1の開口から内部に含浸されやすく、また、含浸された熱可塑性樹脂を良好に保持できる。また、溶解した熱可塑性樹脂が、パターン導電層5が設けられる側とは反対側に大きく移動することを抑制することができる。
【0045】
また、パターン導電層5として、複数本が平行に配置された配線パターンを採用する場合に、例えば、図7(a)に示すように、当該配線パターンを構成する配線51を有する導電性プリント層5を離型フィルム71上に形成する。この導電性プリント層5上に、熱可塑性樹脂層6(例えば、ポリウレタンを含有する樹脂接着剤)をそれぞれの配線を覆うように(配線間は覆わないように)してプリント電極体7を形成し、当該プリント電極体7を繊維構造体10上の所定位置に載置して加熱及び加圧することにより、導電性生地1を構成する。このような導電性生地1は、図7(b)に示すように、含浸される熱可塑性樹脂層6が、各配線51の下方領域に存在し、配線51同士の間には存在しないように形成されるため、繊維構造体10の通気性や柔軟性への影響を少なくできる。一方、図7(c)に示すように配線51間も熱可塑性樹脂層6で覆うようにしてプリント電極体7を形成して、導電性生地1を構成した場合、配線パターンの耐久性や、高いパターン精度を確保することが可能となる。
【0046】
以上、本発明に係る導電性生地1について説明したが、具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、端子部4の接続端子(パターン導電層5で形成される)において、コネクタとの抜挿の信頼性を高めるために、端子表面処理をしてもよい。端子表面処理としては、ニッケル等の端子メッキや、導電ペースト印刷などが例示できる。
【0047】
また、上記実施形態においては、導電性糸21を用いて配線2を製編して構成する例について説明したが、このような構成に特に限定されず、例えば、非導電性の地糸31を用いて製編した生地本体の所定領域に対して導電性樹脂を印刷することにより、所定形状の配線2を生地本体上に形成してもよい。導電性樹脂を印刷する方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷や、フォトリソグラフィ等の細線パターニングなど、周知の印刷法を用いることができる。また、導電性樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリウレタン、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体等から選ばれた少なくとも一種よりなるバインダ(樹脂)中に、銀、塩化銀、チタン、ニッケル、白金、アルミニウム、ステンレス等から選ばれた少なくとも一種の微細粒子を含む導電性材料を混合して形成することができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、端子部4が、パターン導電層5と、繊維構造体10(生地本体)に含浸される熱可塑性樹脂層6とを備えるように構成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、図8の概略平面図に示すように、配線2および端子部4の両方について、上記端子部4と同様な構造を有するように構成してもよい。つまり、端子部4に加えて、生地本体が有する配線2が、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層5と、パターン導電層5の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層6とを備え、熱可塑性樹脂層6の少なくとも一部分が、生地本体に含浸されており、配線2を形成するパターン導電層5が、生地本体の露出表面に沿って配置されるように構成してもよい。このように配線2についても上記端子部4と同様な構造を採用する場合、プリント電極体7として、例えば、離型フィルム71上に、印刷技術により、配線2と端子部4とに対応するパターン導電層5を形成したものを用いればよい。なお、導電性生地1が、配線2を複数備える場合、全ての配線2について、上記端子部4と同様な構造を有するように構成してもよく、或いは、一部の配線2についてのみ上記端子部4と同様な構造を有するように構成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、生地本体に形成される配線2の具体的構成は、特に限定されず、例えば、図9に示すように、配線2が互いに電気的に接続される第1配線部25と第2配線部26とを備えるように構成してもよい。この図9における構成においては、繊維構造体10(生地本体)上に所定間隔を空けて配置される機能部50に、第2配線部26が電気的に接続されるように構成されており、端子部4におけるパターン導電層5に第1配線部25が電気的に接続されるように構成されている。なお、機能部50としては、タッチセンサ等の各種センサ、発光素子、表示装置、スイッチ、発熱体、アクチュエータ、などの機能を有する電極や部材を例示することができる。
【0050】
ここで、第1配線部25及び第2配線部26は、それぞれ同一の材料によって形成してもよく、或いは、異なる材料によって形成してもよい。異なる材料によって形成する場合、例えば、導電性糸21を製編することにより第2配線部26を形成する一方、第1配線部25については、上記端子部4と同様な構造を有するように形成してもよい。つまり、端子部4に加えて、第1配線部25が、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備え、熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分が、生地本体に含浸されており、第1配線部25を形成するパターン導電層が、生地本体の露出表面に沿って配置されるように構成してもよい。このように第1配線部25についても上記端子部4と同様な構造を採用する場合、プリント電極体7として、例えば、離型フィルム71上に、印刷技術により、第1配線部25と端子部4とに対応するパターン導電層5を形成したものを用いればよい。なお、導電性生地1が、第1配線部25を複数備える場合、全ての第1配線部25について、上記端子部4と同様な構造を有するように構成してもよく、或いは、一部の第1配線部25についてのみ上記端子部4と同様な構造を有するように構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態に係る導電性生地1については、主に、心電図や筋電図等のデータ採取、或いは電気治療などを対象者に対して行う場合に、対象者の腕や脚、胴部などに巻きつけて装着できるように構成されるものとして説明しているが、このような構成に特に限定されない。例えば、タッチパネルや表示装置、発光装置、発熱体といった様々な機能を発揮する装置と、該装置の作動を制御等する外部装置や電源装置との間を電気的に接続する配線部材としても用いることができる。
【0052】
また、上記実施形態において、図10の模式断面図(図1に示す導電性生地1の長手方向に沿った断面に対応)に示すように、パターン導電層5の露出面を被覆する被覆体8を備えるように構成してもよい。このような被覆体8を設けるように構成することにより、パターン導電層5の表面保護を図ることができ、導電性生地1と外部装置との間の接続部構造であるパターン導電層5の強度を向上させることができる。なお、外部装置との電気的な接続を考慮して、パターン導電層5に対して繊維構造体10側とは反対側の被覆体8の一部を部分的に除去して、パターン導電層5が露出するように構成する。ここで、被覆体8として、例えば、樹脂フィルムや不織布、生地本体を構成する地糸31から形成した編地構造体等種々のものを採用することができる。被覆体8をパターン導電層5上に配設する手法は特に限定されず、例えば、上記熱可塑性樹脂層6を形成する熱可塑性樹脂と同一の樹脂材料を介して熱融着させて配設することができる。また、上述の導電性生地1を製造する方法で説明した転写フィルムを被覆体8として活用することもできる。更に、樹脂によるコーティング層を被覆体8とすることもできる。
【0053】
また、上記実施形態においては、熱可塑性樹脂層6が、パターン導電層5に対して繊維構造体10側に設けられるように構成しているが、このような形態に特に限定されず、図11図12の模式断面図に示すように、パターン導電層5に対して、繊維構造体10側とは反対側に熱可塑性樹脂層6の一部が設けられるような構成を採用することもできる。このような構成の場合、外部装置との電気的な接続を考慮して、パターン導電層5に対して繊維構造体10側とは反対側の熱可塑性樹脂層6の一部を部分的に除去して、パターン導電層5が露出するように構成する。この図11図12に示す構成の場合、パターン導電層5の露出面が熱可塑性樹脂層6によって被覆される形態となり、パターン導電層5の表面保護を図ることができる。
【0054】
また、上記実施形態において、図13に示すように、配線2が設けられる生地本体3が、部分的に突出する生地片9を備え、当該生地片9の先端部に端子部4を配置するように構成し、図14(a)(b)の模式図に示すように、当該生地片9を外部装置が備える外部デバイス回路のコネクタに直接的に挿入して接続するようにしてもよい。なお、図14(b)は、図14(a)の断面に対応する模式図である。このような構成を採用する場合、端子部4が備える熱可塑性樹脂層6及びパターン導電層5の少なくとも一部分が、該生地片9に配置されるように構成する。なお、この生地片9は、非導電性の地糸31から形成することができる。また、生地片9の長さ(生地本体3からの突出長さ)は、適宜設定することができる。
【0055】
また、図13に示すように生地片9を設ける場合には、図14(b)に示すように、当該生地片9に補強部材91を設けるように構成してもよい。補強部材91は、生地片9上においてパターン導電層5が配置される面とは反対側の面であって、生地片9の先端部分に配置されることが好ましい。なお、補強部材91をパターン導電層5の露出面上に設けるようにしてもよい。このような場合、外部装置との電気的な接続を考慮して、補強部材91の一部を部分的に除去して、パターン導電層5が露出するように構成する。また、補強部材91としては、例えば、樹脂フィルムや不織布、生地本体を構成する地糸31から形成した編地構造体等種々のものを採用することができる。また、樹脂によるコーティング層を補強部材91とすることもできる。このような補強部材91を設けることにより、生地片9の先端側の剛性を高めることができるため、外部装置における電気信号取得用のコネクタ100に生地片9を挿入しやすくなるという効果を得ることができる。また、補強部材91の厚みを適宜設定して生地片の先端部分の厚み寸法を、コネクタ100における挿入孔の厚み方向寸法と同程度に構成することにより、コネクタ100に挿入された生地片9の先端部が、挿入孔内で浮いてしまうことを防止して、しっかりと固定させることが可能となる。なお、図1に示すように長尺状に導電性生地1を構成し、その一方端を端子部4とする場合においても、上記補強部材91を、端子部4の先端部であって、パターン導電層5が配置される面とは反対側の面に配置するようにしてもよい。
【0056】
また、生地片9を設ける場合、図15の模式断面図に示すように、生地片9が、生地本体(繊維構造体10)の表面から外方に突出するように形成してもよい。このような形態を採用することにより、例えば、繊維構造体10を衣類(シャツ、パンツ、ズボン、靴下、手袋、帽子等の衣服、およびそれらの部材)として形成する場合であっても、そのデザイン性の自由度が高まり、また、外部装置との接続部構造である生地片9が着用者にとって邪魔になってしまうことを効果的に抑制することが可能となる。なお、このような効果は、繊維構造体10を衣類形体状(シャツ形やズボン形など)に形成する場合に限らず、図1に示すように長尺状に導電性生地1を構成し、例えば、心電図や筋電図等のデータ採取、或いは電気治療や電磁波治療などを対象者に対して行う場合に、対象者の腕や脚、胴部などに巻きつけて装着する場合であっても同様である。
【0057】
また、上記実施形態において、繊維構造体10における配線2の少なくとも一部分が、図16の模式断面図に示すように、繊維構造体10においてパターン導電層5が設けられる面とは反対側の面に露出するように構成してもよい。このような形態を採用することにより、例えば、心電図や筋電図等のデータ採取、或いは電気治療などを行う場合に、反対側の面に露出した配線2が電極として機能する。導電性生地1を対象者の腕や脚、胴部などに巻きつけて装着する場合に、対象者の身体の表面に配線2を密着させつつ、装着された導電性生地1の外表面側に外部装置との接続部構造であるパターン導電層5が露出することになるため、使用上の簡便性を確保しつつ、確実に生体信号の取得等を行うことが可能となる。
【0058】
また、上述した本発明の導電性生地1の製造方法は、プリント電極体7における熱可塑性樹脂層6及びパターン導電層5を繊維構造体10に転写することにより導電性生地1を形成する方法であるが、このような転写技術を利用する他、以下のような方法によっても導電性生地1を形成することができる。すなわち、図17に示すように、フィルム状の熱可塑性樹脂層6上に、印刷技術によりパターン導電層5を形成することによりプリント電極体7を形成し、繊維構造体10における配線2の少なくとも一部分上に、このプリント電極体7の熱可塑性樹脂層6側を向けて載置し(載置ステップS2)、その後、上記加熱・加圧ステップS3における工程を施すことにより、フィルム状の熱可塑性樹脂層6を溶融させて繊維構造体10に含浸させつつ、パターン導電層5を繊維構造体10の表面に設けるようにしてもよい。なお、フィルム状の熱可塑性樹脂層6の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、特に、20μm以上80μm以下であることがより好ましい。フィルム状の熱可塑性樹脂層6の厚みが10μm未満の場合、強度や取扱い性に問題がある。100μmより厚い場合、コストが高くなり、また導電性生地1に十分な厚みがないと熱可塑性樹脂が裏面へにじみ出るおそれがある。
【0059】
上記フィルム状の熱可塑性樹脂層6は、上述した熱可塑性樹脂層6を構成する樹脂から形成することができるが、特にポリウレタン樹脂製のフィルムを熱可塑性樹脂層6として採用することが好ましい。繊維構造体10に含浸されたポリウレタン樹脂製のフィルムの厚み(量)が大きくなると、繊維構造体10における含浸領域が僅かに固くなるため、パターン導電層5が形成される導電性生地部分の強度を向上させることが可能となる。例えば、外部装置との接続部として用いる場合、端子間の幅精度を確保するために本構造を用いることが好ましい。
【0060】
また、上記実施形態において説明した導電性生地1の製造方法においては、離型フィルム71上に、印刷技術によりパターン導電層5を形成した後、当該パターン導電層5上に、熱可塑性樹脂層6を配設して構成されるプリント電極体7を用い、このプリント電極体7におけるパターン導電層5及び熱可塑性樹脂層6を繊維構造体10に転写するようにしているが、このような手法の他、離型フィルム71上に印刷技術によりパターン導電層5を形成してプリント電極体7を構成し、例えば、シート状、液状、粉状、或いは、粒状の熱可塑性樹脂を、繊維構造体10における配線2の少なくとも一部分上に塗布又は配置した上で、当該プリント電極体7を載置し、加熱・加圧ステップS3によるヒートプレスを行うようにして、シート状、液状、粉状、或いは、粒状の熱可塑性樹脂を溶融させて繊維構造体10に含浸させつつ、パターン導電層5を繊維構造体10の表面に設けるようにしてもよい。なお、ヒートプレスを、繊維構造体10の形状を保ちつつ、繊維構造体10の露出表面にパターン導電層5が密着する加熱・加圧条件とすることで、生地の風合いを損なわない。
【0061】
また、上記実施形態において、地糸31又は導電性糸21に、熱融着糸および熱合着糸の少なくとも一方を混合して、繊維構造体10(生地本体)にほつれ止め処理を施してもよい。ほつれ止め処理は、繊維構造体10の形成に用いた地糸31や導電性糸21が編織等組織の中で交差している部分を固定させる処理であって、このほつれ止め処理を施すことで、地糸31や導電性糸21の糸端が浮遊状態となるのを阻止している。ほつれ止め処理の実施方法は、繊維構造体10の形成に用いる地糸31や導電性糸21に対し、熱融着糸および熱合着糸の少なくとも一方を混用させ、そのうえで繊維構造体10を製編し、製編後に熱セットを行うという手順とする。導電性生地1を所定形状に切断する場合に、少なくともその形状の外縁部に対しこのようなほつれ止め処理を施すことで、導電性生地1の切断端縁がほつれることがなくなる。特に、端子部4(生地片9)にほつれ止め処理を行うことで、外部デバイス回路のコネクタと確実に接続することができる。
【0062】
ここで、熱融着糸と熱合着糸との差異は、半溶融状態からの冷却により生じる結合力の強弱によって区別すればよく、結合力が強い(熱融着)ものは熱融着糸とし、これよりも結合力が弱い(合着)ものは熱合着糸とする。この区別は明確とは言えず曖昧模糊とした部分を含むが、要は、本発明では熱セットによって地糸31や導電性糸21の交差部を結合できるものであればよい。従って、伸縮性(弾性)に優れ、加熱によって熱融着し、かつ、熱融着部位においては伸縮性(弾性)が失われることなく、高度の伸縮性(弾性)が保有されるものを用いることができる。
【0063】
熱融着糸や熱合着糸を構成する材料としては、代表例として低融点ポリウレタンを挙げることができる。その他、ポリエチレンやナイロン(6や66)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ビニル系ポリマー、ポリアミド等の縮合系ポリマーなどを採用可能である。
【0064】
更なる具体例をとしては、低融点ポリアミド繊維糸、低融点ポリエステル系繊維糸(低融点ポリエステル共重合体繊維糸、低融点脂肪族ポリエステル繊維糸)等が挙げられる。なかでも、低融点ポリエステル系繊維糸が好ましい。
【0065】
上記低融点ポリエステル共重合体繊維糸を構成する低融点ポリエステル共重合体の好ましい共重合成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキ シカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタ エリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、 2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタ ル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0066】
また、上記低融点脂肪族ポリエステル繊維糸を構成する低融点脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバ リレート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0067】
また、熱融着糸の市販品としては、他に、80〜130℃の乾熱や、50〜100℃の湿熱で溶融する低融点ポリアミド繊維糸、例えば、フロール(ユニチカ社製)、エルダー(東レ社製)、ジョイナー(フジボウ社製)等を用いることができる。
【0068】
また、80〜130℃の乾熱や、50〜100℃の湿熱で溶融する低融点ポリエステル繊維糸、例えば、ソフィット(クラレ社製)、メルティ(ユニチカ社製)、ソルスター(三菱レイヨン社製)、ベルコンビ(鐘紡社製)、エステナール(東洋紡績社製)等を用いてもよい。
【0069】
また、地糸31又は導電性糸21に対して熱融着糸や熱合着糸を混用させる方法には、地糸31や導電性糸21を「芯」とし、熱融着糸又は熱合着糸を「カバー」とするカバリング糸(SCYでもDCYでもよい)を用いる方法や、地糸31や導電性糸21に熱融着糸又は熱合着糸を引き揃える(プレーティング編としてもしなくてもよい)方法などがある。
【符号の説明】
【0070】
1 導電性生地(導電パーツ)
10 繊維構造体
2 配線
21 導電性糸
3 非導電部
31 地糸
4 端子部
5 パターン導電層
6 熱可塑性樹脂層
7 プリント電極体
8 被覆体
9 生地片
91 補強部材
【要約】
【課題】十分な強度を持たせつつ、生地の風合いを損なうことのない、外部装置との接続部構造を有する導電性生地を提供する。
【解決手段】端子部を有する生地本体と、該生地本体に設けられる配線とを備えており、少なくとも前記端子部は、導電性材料及び樹脂を含むパターン導電層と、前記パターン導電層の少なくとも一方の面に接する熱可塑性樹脂層とを備え、前記熱可塑性樹脂層の少なくとも一部分は、前記生地本体に含浸されており、前記パターン導電層は、前記生地本体の露出表面に沿って配置され、前記配線と電気的に接続されていることを特徴とする導電性生地。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17