特許第6168512号(P6168512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 泉陽硝子工業株式会社の特許一覧

特許6168512焼成用造形物形成材料及び造形物形成方法
<>
  • 特許6168512-焼成用造形物形成材料及び造形物形成方法 図000002
  • 特許6168512-焼成用造形物形成材料及び造形物形成方法 図000003
  • 特許6168512-焼成用造形物形成材料及び造形物形成方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168512
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】焼成用造形物形成材料及び造形物形成方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/00 20060101AFI20170713BHJP
   C22C 5/02 20060101ALI20170713BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20170713BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20170713BHJP
   C22C 32/00 20060101ALN20170713BHJP
   C22C 29/12 20060101ALN20170713BHJP
【FI】
   B22F3/00 A
   C22C5/02
   C22C5/04
   C22C5/06 Z
   !C22C32/00 A
   !C22C32/00 Z
   !C22C29/12 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-10196(P2013-10196)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-141705(P2014-141705A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592198699
【氏名又は名称】泉陽硝子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171435
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】柏 保介
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−134501(JP,A)
【文献】 特開2000−327462(JP,A)
【文献】 特開2007−119807(JP,A)
【文献】 特開2008−169426(JP,A)
【文献】 特開2003−299515(JP,A)
【文献】 特開2000−080404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/02− 5/06
C22C 1/04− 1/05
C22C 29/12
C22C 32/00
B22F 1/00
B22F 3/00− 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属粉末を100重量部に対して、
Bi23を70〜90質量%、ZnOを1〜20質量%、B23を1〜20質量%で、且つ、0.1μm〜10mmの粒径からなるガラス組成物の粉末を30〜99重量部を配合し、
前記貴金属粉末及び前記ガラス組成物の粉末からなる混合粉末100重量部に対して、焼成時に気体になって消失する水、油、有機バインダーの中から選択された少なくとも1種から成る液体を、常温で所定形状に成形体を造形可能に、5〜100重量部添加して可塑性材にしてある焼成用造形物形成材料。
【請求項2】
前記請求項1に記載の可塑性材を用いて所定形状の成形体を造形し、
その成形体を乾燥した後、前記成形体をバーナーで加熱して、前記貴金属粉末又は前記ガラス組成物の内の少なくとも一方を溶融させて前記成形体を一体化する造形物形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用造形物形成材料及び造形物形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼成用造形物形成材料は、従来例えば焼成することにより金属光沢が出る材料として銀粘土と称するものがあり、これは銀粉末、水分、有機バインダー、界面活性剤等の混合物で、粘土状の可塑性物に形成してあるものがあり(例えば、特許文献1参照)、また、その銀粘土による造形物の形成方法(例えば、特許文献2参照)が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2760134号公報
【特許文献2】特許第2774974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の銀粘土は、予め常温で成形した造形物を、焼成により銀粉末どうしが融着して造形物の形状を維持したまま銀の塊になるものである。
しかし、その表面は、焼結現象による融着のために、表面が凹凸で銀が露出しているために、金属光沢を得るためには表面を研磨する必要があったり、空気中で銀表面が腐食して黒化したりする問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、常温で造形できながら焼成を行っても、従来の銀粘土などにない特徴が得られるものを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の焼成用造形物形成材料の特徴構成は、貴金属粉末を100重量部に対して、Bi23を70〜90質量%、ZnOを1〜20質量%、B23を1〜20質量%で、且つ、0.1μm〜10mmの粒径からなるガラス組成物の粉末を30〜99重量部を配合し、前記貴金属粉末及び前記ガラス組成物の粉末からなる混合粉末100重量部に対して、焼成時に気体になって消失する水、油、有機バインダーの中から選択された少なくとも1種から成る液体を、常温で所定形状に成形体を造形可能に、5〜100重量部添加して可塑性材にしたところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、貴金属粉末とガラス組成物の混合粉末100重量部に、5〜100重量部の液体を添加して可塑性材にしてあるために、粘土を成形するように常温で自在な形状に造形でき、その造形した可塑性材を、焼成することにより貴金属粉末が焼結して金属塊になろうとするばかりか、貴金属粉末100重量部に対して30〜99重量部のガラス組成物が軟化溶融して金属表面に保護被膜を形成し、そのために、金属塊の表面は腐食しにくく、光沢が得られる。
また、ガラス組成物に含まれる酸化物が金属粉と化学反応を起こすと、鮮やかな色彩が得られる。
従って、使用する金属粉が金属特有の光沢のある表面状態を、長期に亘って維持し、且つ、本来金属にはない質感や色彩を表面に持った造形物が得られる。
【0008】
【0009】
水、油、有機バインダーの中から選択された少なくとも1種から成る液体が、混合粉体100重量部に対して5〜100重量部添加してあるために、常温で造形しやすく、しかも、前記液体は焼成時には気体になって消失し、造形物の強度が大きくなる。
従って、造形しやすくしながら高強度の造形物を形成することができる。
【0010】
【0011】
ガラス組成物の粒径が0.1μmより小さくなると、ガラス組成物、自体の製造が困難になり、10mmより大きくなると、可塑性材を形成するのが困難になるために、0.1μm〜10mmの粒径のガラス組成物により、本発明の焼成用造形物形成材料を良好に製造できる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
本発明の第2の特徴構成は、前記可塑性材を用いて所定形状の成形体を造形し、その成形体を乾燥した後、前記成形体をバーナーで加熱して、前記貴金属粉末又は前記ガラス組成物の内の少なくとも一方を溶融させて前記成形体を一体化するところにある。
【0017】
本発明の第2の特徴構成によれば、前記成形体をバーナーで加熱することにより、短時間で成形体表面にガラス組成物の軟化による保護皮膜層を形成でき、成形体全体の形状を変形させずに強固な造形物を製造できる。
【0018】
【0019】
金属の特色である光沢ばかりか、ガラスとの反応で生じる発色を具備した独特の造形物が得られる。
また、ガラスの有する光沢が、金属を一層輝かせることができるばかりか、長期に亘ってその輝きが維持できる造形物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の造形物形成材料により製作したアクセサリーの写真である。
図2】本発明の造形物形成材料により製作したアクセサリーの写真である。
図3】本発明の造形物形成材料により製作したアクセサリーの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の焼成用造形物形成材料は、金属粉末を100重量部に対して、ガラス組成物の粉末を0.1〜99重量部を配合し、金属粉末及びガラス組成物の粉末からなる混合粉末100重量部に対して液体を5〜100重量部添加して可塑性材にしてある。
前記金属粉末としては、金、銀、白金等の貴金属粉を一種以上使用し、ガラス組成物は、粒径0.1μm〜10mmの酸化鉛や酸化ビスマスを主成分とする低融点ガラスとして、例えば、Bi23を70〜90質量%、ZnOを1〜20質量%、B23を1〜20質量%のガラス組成物、又は、ガラス瓶や板ガラス等に使用される高融点ガラス、あるいは、それらの両方のガラスを混合したりして使用される。
また、前記液体は、水、油、有機バインダーの中から選択された少なくとも1種から成るものが使用され、可塑性材の加工形状や焼成温度、あるいは、混合粉末の粒径や混合割合によって選択使用される。
【0022】
次に、焼成用造形物形成材料による造形物形成方法を説明する。
(焼成用造形物形成材料による造形物形成方法)
前記可塑性材を用いて、常温で粘土を用いて成形するように所定形状の成形体を造形し、乾燥工程によりその成形体中の含有液体の一部を気化させて形状を安定化した後、加熱炉内での焼成工程によって、金属粉末又はガラス組成物の内の少なくとも一方を溶融させて成形体を一体化する。
【実施例】
【0023】
次に、前記焼成用造形物形成材料によりペンダント等のアクセサリーを、銀(Ag)粉末100重量部に対して、ガラス組成物の粉末を30重量部配合し、それらの混合粉末100重量部に対して有機バインダーを25重量部添加して粘土状の可塑性材にした材料を使用して、製作した例の写真を、図1図3に示す。
図1の写真のリング形状に成形して焼成した第1アクセサリー1は、焼成によって銀の光沢を示す金属光沢部2と、金属がガラス組成物と化学反応して発色した発色部3とが形成されている。
図2の写真では、リング状の第2アクセサリー4、及び、略ひし形の第3アクセサリー5の主装飾部7に対する枠体6は、焼成により銀(Ag)の金属光沢が出ているもので、その銀の表面がガラス層に覆われて光沢を更に強くしている。
図3に示す第4アクセサリー8は、主装飾部7の周囲を取り囲む枠体6を、本発明の造形物形成材料で形成されたものである。
この枠体6も、焼成により銀の金属光沢がガラスの被覆層により、更に強調されている。
【0024】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
〈1〉 前記金属粉末は、上記貴金属以外の金属を使用することもでき、この場合には、貴金属にはない酸化物や、硫化物などの異なった状態の金属化合物として、特有の色彩の表面状態を有する造形物が得られる。
〈2〉 前記焼成用造形物形成材料による造形物形成方法以外の方法としては、成形体を乾燥した後、成形体をバーナーで加熱して、金属粉末又はガラス組成物の内の少なくとも一方を溶融させて成形体を一体化するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 第1アクセサリー
2 金属光沢部
3 発色部
4 第2アクセサリー
5 第3アクセサリー
6 枠体
7 主装飾部
8 第4アクセサリー
図1
図2
図3