特許第6168543号(P6168543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6168543ガラス衝突防止安全マーク及びガラス衝突防止安全マークの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168543
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ガラス衝突防止安全マーク及びガラス衝突防止安全マークの施工方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/09 20060101AFI20170713BHJP
   G09F 13/20 20060101ALI20170713BHJP
   E01F 9/547 20160101ALN20170713BHJP
【FI】
   C03B19/09
   G09F13/20 D
   !E01F9/547
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-190655(P2016-190655)
(22)【出願日】2016年9月29日
(62)【分割の表示】特願2016-529399(P2016-529399)の分割
【原出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-57138(P2017-57138A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-127949(P2014-127949)
(32)【優先日】2014年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509344618
【氏名又は名称】コドモエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171435
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 泰典
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/053641(WO,A1)
【文献】 特開2006−330531(JP,A)
【文献】 特開2003−084702(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090312(WO,A1)
【文献】 特開2007−112685(JP,A)
【文献】 特開2012−087035(JP,A)
【文献】 特開平11−043349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B19/00−19/14
G09F13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光顔料及びガラス材料のみからなるドロップ状の本体部を有し、
前記本体部は、平らな底面の縁から外方に向けて湾曲するように円弧状に立ち上がる膨出部と前記膨出部から中心に向けて上面が湾曲したR形状部とを備え、
前記底面は、一側が板ガラスに貼着される貼着材を有するガラス衝突防止安全マーク。
【請求項2】
前記貼着材は、その周囲に前記膨出部と前記板ガラスとの間の間隙に充填されるコーキング材を備える請求項1記載のガラス衝突防止安全マーク。
【請求項3】
前記底面は、微小な凹凸を有する請求項1又は2記載のガラス衝突防止安全マーク。
【請求項4】
蓄光顔料及びガラス材料のみからなるドロップ状の本体部を有し、
前記本体部は、平らな底面の縁から外方に向けて湾曲するように円弧状に立ち上がる膨出部と前記膨出部から中心に向けて上面が湾曲したR形状部とを備え、
前記底面に一側が板ガラスに貼着される貼着材を設け、
前記貼着材により前記板ガラスに前記本体部を貼着するガラス衝突防止安全マークの施工方法。
【請求項5】
前記貼着材の周囲の前記膨出部と前記板ガラスとの間の間隙にコーキング材を充填する請求項4記載のガラス衝突防止安全マークの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス衝突防止安全マーク及びガラス衝突防止安全マークの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の出入口等の板ガラスに通行人が誤って衝突するのを防ぐガラス衝突防止安全マークとして、例えば特許文献1に示す如きものが知られている。しかし、この安全マークには、合成樹脂に蓄光剤を混練した樹脂製の蓄光性蛍光材を用いているため、対候性の更なる向上が望まれている。
【0003】
一方、蓄光体の製造方法として、例えば特許文献2に示す如き方法が知られている。しかし、この製造方法では、スクリーン印刷を複数回繰り返すことでペースト状の混合物を積層させなければならず、作業が煩雑となっていた。また、ペースト状の混合物はメジウムを含有するため、メジウムが蓄光体に残存してしまうと黒ずんでしまい、発光性能が低下する虞もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−330531号公報
【特許文献2】特開2012−106918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、発光性能を低下させることなく、簡便且つ効率よく製造することの可能なガラス衝突防止安全マーク及びガラス衝突防止安全マークの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るガラス衝突防止安全マークの特徴は、蓄光顔料及びガラス材料のみからなるドロップ状の本体部を有し、前記本体部は、平らな底面の縁から外方に向けて湾曲するように円弧状に立ち上がる膨出部と前記膨出部から中心に向けて上面が湾曲したR形状部とを備え、前記底面は、一側が板ガラスに貼着される貼着材を有することにある。
さらに、前記貼着材は、その周囲に前記膨出部と前記板ガラスとの間の間隙に充填されるコーキング材を備えるとよい。
【0007】
上記構成によれば、加熱しガラス材料を溶解させるので、溶解したガラス材料によって粉状物は液状となり、表面張力が発生する。表面張力は、表面が自ら収縮してできるだけ小さな面積となるように表面に沿って作用する張力であり、液化したガラス材料は収縮しようとする。このように、加熱によりガラス材料を液化させて表面張力を生じさせることで、その表面張力によって上面を丸みを帯びたR形状部を形成することができる。
【0008】
前記底面には微小な凹凸を有するとよい。前記蓄光顔料の粒径は、前記ガラス材料の粒径よりも大であるとよい。蓄光顔料の粒径を大きくすることで、より多くの光を蓄積でき、発光性能は向上する。しかも、ガラス材料の粒径を小さくすることで、ガラス材料は溶解しやすく、比較的低温で表面張力を生じさせることができ、加熱時間も短縮できる。係る場合、前記蓄光顔料の粒径は120μm以上300μm以下であり、前記ガラス材料の粒径は20μm以上40μm以下であるとよい。当該数値範囲内であれば、蓄光顔料の周りには多くのガラス材料が存在することとなり、加熱によって溶解したガラス材料が蓄光顔料を取り囲み、蓄光顔料の間にもガラス材料が行き渡る。また、液化したガラス材料による表面張力によって、表面は滑らかとなる。よって、外部からの光を内部へ効率よく取り込むことができると共に発光時においてもより多くの光を効率よく放出でき、発光性能をさらに向上させることができる。
【0010】
前記粉状物は、前記蓄光顔料と前記ガラス材料とを5:95以上25:75以下の重量比で混合攪拌されたものであるとよい。当該数値範囲内であれば、蓄光顔料によって十分な光を蓄積して発光(蓄光)性能を確保でき且つガラス材料によって上面にR形状部を形成する表面張力を生じさせることができる。しかも、表面張力によって表面を平滑にすることができる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るガラス衝突防止安全マークの施工方法の特徴は、蓄光顔料及びガラス材料のみからなるドロップ状の本体部を有し、前記本体部は、平らな底面の縁から外方に向けて湾曲するように円弧状に立ち上がる膨出部と前記膨出部から中心に向けて上面が湾曲したR形状部とを備え、前記底面に一側が板ガラスに貼着される貼着材を設け、前記貼着材により前記板ガラスに前記本体部を貼着することにある。
係る場合、前記貼着材の周囲の前記膨出部と前記板ガラスとの間の間隙にコーキング材を充填するとよい。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係るガラス衝突防止安全マーク及びガラス衝突防止安全マークの施工方法の特徴によれば、発光性能を低下させることなく、簡便且つ効率よく提供することが可能となった。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る粒状蓄光体を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図2】粒状物をサヤに充填した状態(加熱前)を示す写真である。
図3】加熱後のサヤ内部の粒状蓄光体の状態を示す写真である。
図4】加熱工程を説明する図である。
図5】加熱時の表面張力の作用を説明する図である。
図6】粒状蓄光体の実施例を示す図であり、(a)は避難誘導用マークの一例、(b)はガラス衝突防止安全マークの一例を示す図である。
図7】安全マークの施工の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る粒状蓄光体1は、図1に示すように、蓄光顔料とガラス材料としてのガラスフリットを含有するドロップ状を呈する。この粒状蓄光体1の底面11は略平坦面であるが、その表面には後述の加熱用容器3の底面31によって微小な凹凸(荒れ面)が形成されている。そして、この底面11の縁から外方へ向けて膨出し、その膨出部12から中心に向かって上方へ隆起し全体として湾曲するR形状部13が形成されている。
【0018】
ここで、蓄光顔料としては、例えばアルカリ土類金属のアルミン酸塩化合物を主成分に希土類元素の賦活剤、共賦活剤を添加焼成して得られたものを用いる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の少なくとも1以上の金属元素やこれらの金属元素とマグネシウムの合金が挙げられる。希土類元素の賦活剤としては、ユウロピウム、ジスプロシウム等が挙げられる。共賦活剤としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、カドミウム、テルビウム、ジスプロシウム等の元素が挙げられる。また、蓄光顔料には、上述の如き酸化物蛍光体の他、CaS:Bi(紫青色発光),CaSrS:Bi(青色発光),ZnS:Cu(緑色発光),ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)等の硫化物蛍光体を用いることも可能である。なお、上述の化合物を適宜混合して用いてもよく、さらに他の無機蛍光顔料や有機蛍光顔料において蓄光性を有するものも用いることが可能である。
【0019】
また、ガラスフリットの材料には、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素及びアルカリ酸化物を主成分とし且つ酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化マグネシウムからなる群より選択された少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を含むものが用いられる。なお、ガラスフリットの材料は、先の材料に限定されるものではないが、上述の蓄光顔料が固体で存在可能な温度で溶融(液化)するものを用いるとよい。また、加熱後において、透明度の高いガラスフリットの材料を用いることが望ましい。蓄光顔料の発光が阻害されることがなく、発光性能の低下を防止する。
【0020】
蓄光顔料の粒径は120μm以上300μm以下が望ましい。粒径が120μm未満となると、粒が小さいため光を十分に蓄えることができず、発光(蓄光)性能が低くなる。他方、粒径が300μmを超えると、発光(蓄光)性能は確保できるが、蓄光顔料の粒が大きくなりR形状部13の表面を平滑に成形することができない。蓄光顔料の粒径は、好ましくは、170μm以上250μm以下である。なお、本明細書で示す「粒径」は、粒度分布における平均粒径d50の値を示すものとする。
【0021】
また、ガラスフリットの粒径は20μm以上40μm以下が望ましく、蓄光顔料の粒径よりガラスフリットの粒径が小さい。ガラスフリットの粒径を小さくすることで、780〜800℃の比較的低温での加熱で粒状蓄光体を製造することができ、加熱時間も2〜5時間程度と短時間となる。また、蓄光顔料の周辺に多くのガラスフリットの粒子が存在できるので、加熱することで蓄光顔料粒子の間にガラスフリットを導入することができる。よって、外部からの光を蓄光体内部までより効率よく伝達させることができると共に発光時においてもより多くの光を放出可能となる。なお、本実施形態では、例えば、蓄光顔料として粒径250μmのものを用い、ガラスフリットとして粒径30μmのものを用いる。
【0022】
ここで、粒状蓄光体1の製造工程について説明する。
まず、粉状の蓄光顔料と粉状のガラスフリットとを混合攪拌して調合し粉状物2を作成する。蓄光顔料とガラスフリットとは5:95以上25:75以下の重量比で混合攪拌される。好ましくは、蓄光顔料とガラスフリットとの重量比は、10:90以上20:80以下である。この数値範囲内であれば、蓄光顔料による発光性能が低下することなく、加熱炉4での加熱時に粉状物2の溶解時の表面張力によって上面を湾曲したR形状に成形することができる。この粉状物2は、粉状の蓄光顔料と粉状のガラスフリットの2種の粉体を混合攪拌するだけであるので、製造は極めて容易である。しかも、液状のメジウムを混合する必要もないため、メジウム等の有機溶剤が加熱後に残存することで生じる黒ずみによる発光性能の低下も生じ得ない。なお、本実施形態の粉状物2は、蓄光顔料とガラスフリットとが10:90の重量比で混合攪拌されたものである。
【0023】
ここで、表1に、蓄光顔料とガラスフリットとの配合比(蓄光顔料:ガラスフリット)とR形状部13の成形状態及び表面状態の結果の一例を示す。なお、試料1(Sample1)にはネモトマテリアル社製蓄光顔料(粒径250μm、グリーン)を用い、試料2(Sample2)には菱晃社製蓄光顔料(粒径250μm、ブルー)を用いた。表中の◎は表面平滑性、円弧形状とも良好であることを示し、○は一部分にのみザラツキがある又は一部にのみ形状不良を示し、△は全体的にザラツキがあることを示し、×は全体的な形状不良を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
蓄光顔料とガラスフリットとの配合比が4:6では、ガラスフリットが相対的に少ないため、膨出部12が外方へ向けて滑らかに湾曲して形成されず、また上方に向けて緩やかな凸状に湾曲するR形状部13も成形されないものが多く発生した。また、蓄光顔料が相対的に多いため、それら表面が滑らか(平滑)にならないものが多く発生した。配合比が3:7では、ガラスフリットが相対的に増加するので、膨出部12が外方へ向けて湾曲して形成され、上方に向けて凸状に湾曲するR形状部13も成形されるものの、表面は平滑にならず全体的にざらついていた。配合比2:8では、750℃の場合、全体的に表面がざらついて平滑とならないものが発生した。他方、800℃以上では、膨出部12及びR形状部13は成形されその表面も多くの部分で平滑となった。そして、配合比が1:9及び0.5:9.5で800℃以上の場合、ガラスフリットが相対的に多いため、他と比較し短時間で低温で成形することができ、表面平滑性及びR形状部13の湾曲(円弧)形状も良好であった。但し、配合比が1:9を超えると、蓄光顔料が相対的に少なくなるため、発光性能(輝度)が若干低下してしまう。
【0026】
次に、図2に示すように、調合した粉状物2を加熱用容器3に充填する。加熱用容器3としては、粘土質よりなる素焼きのサヤを用いる。このサヤ3は約1300℃で焼成されたものである。よって、粉状物2をサヤ3に充填し加熱しても、粉状物2とサヤ3とが化学反応することはなく、発光性能に影響を与えることがない。本実施形態において、このサヤ3は、上部が広がるテーパー状を呈し、例えば上部の開口部の径は25mm、底面の径は22mmである。また、サヤ3の底面31によって、粒状蓄光体1の底面11の表面には微小な凹凸が形成される。これにより、例えば粒状蓄光体1をガラス衝突防止安全マークに用いる場合、その凹凸により接着力を向上させることも可能となる。
【0027】
粉状物2をサヤ3に充填する際には、その前にサヤ3の内面に離型剤をスプレー塗布により付着させる。これにより、離型層32を略均等に簡単に形成できる。上述したように、サヤ3は小口径のものであるため、筆や刷毛等では略均一に離型層32を形成することが困難となる。不均一な離型層32では、それに応じて充填される混合物がサヤ3の径方向に対し不均一となる。そのため、溶解したガラスフリットによる表面張力に差が生じ、成形される形状に歪みが生じる。離型層32を設けることで、加熱された粉状物2のサヤ3内面への付着を防止し、加熱後の粒状蓄光体1の回収を容易とする。なお、例えばスプレー塗布可能な離型剤としては、ボロンナイトライド(BN)が配合されたものを用いる。
【0028】
そして、図4に示すように、粉状物2を充填したサヤ3を加熱炉4の棚板41に複数配置して窯入れし、所定の温度で加熱する。ここで、表面張力とは、液体の表面が自ら収縮してできるだけ小さな面積となるように表面に沿って作用する張力である。図5に示すように、粉状物2を加熱すると、粉状のガラスフリットが熔解して液状のガラス成分となって、表面張力Fが発生する。一方、蓄光顔料はガラスフリットよりも融点が高く、ガラスフリットの溶融温度では固体で存在する。よって、この表面張力Fは、ガラスフリットの含有率によって変化する。
【0029】
ところで、上記表1に示すように、加熱温度が850℃や900℃の場合、表面平滑性や膨出部12及びR形状部13の湾曲形状は良好となる。しかしながら、蓄光顔料は加熱(焼成)温度が高くなるほど、蓄光性能が低下する。よって、加熱温度としては、900℃以下、好ましくは850℃以下である。一方、750℃では表面にザラツキが生じるので、さらに好ましくは、750℃を超えて800℃以下である。例えば、780℃〜800℃で加熱温度を調整する。
【0030】
本実施形態における粉状物2は、粉状の蓄光顔料と粉状のガラスフリットとが1:9の比率で攪拌混合されたものである。ガラスフリットは、700℃程度の低温で溶解し、図5に示す如き表面張力Fが発生する。図5に示すように、粉状物2はその表面張力Fによって各辺及び角部に丸みが生じ、周縁に膨出部12が形成される。しかも、この表面張力Fによって、粉状物2は全体がその中心(サヤ3中央)へ縮小するので、粉状物2とサヤ3との接触部分はサヤの底面31のみとなる。そして、その接触部分の縁が外方に向けて湾曲するように円弧状に立ち上がり、その膨出部12から中心に向けて上面が湾曲したR形状部13が形成される。所定時間加熱後、徐冷して棚板41を取り出す。取り出された加熱された粒状蓄光体1は、図3に示す如く成形されている。
【0031】
このようにして、成形された粒状蓄光体1は、例えば、図6(a)に示す如く、建物の出入口等の板ガラス50に貼着し、通行人が誤って衝突するのを防ぐガラス衝突防止安全マーク1Aとして実施することができる。また、同図(b)に示す如く、住宅、工場、店舗、倉庫等の各種建物の通路60等に沿って上面のR形状部13が露出するように埋設して、停電時等に通行人等を出入口等に誘導する避難誘導用マーク1Bとしても実施することができる。
【0032】
ここで、粒状蓄光体1としてのガラス衝突防止安全マーク1Aは、その縁部に膨出部12が成形されている。これにより、図7に示すように、ガラス衝突防止安全マーク1Aを板ガラス50に貼着する際に、膨出部12と板ガラス50との間に間隙Sが形成されるので、その間隙Sにコーキング材51を充填すればよく、作業性もよく強度も向上する。しかも、上述したように、粒状蓄光体1の裏面11は、微小な凹凸が形成されている。よって、ガラス衝突防止安全マーク1Aと貼着材52との接着性は良好となり、接着強度も向上する。このように、本発明の粒状蓄光体は、特別な加工を施すことなく、各安全マークとして好適に用いることができる。
【0033】
次に、最後に他の実施形態の可能性について言及する。なお、以下の実施形態において、上記実施形態と同様の部材等には同一の符号を付してある。
上記実施形態において、加熱用容器3として、粘土質よりなる素焼きのサヤを用いた。しかし、加熱用容器3は上述の如き素焼容器(無釉)に限られるものではなく、加熱後に蓄光性能に影響を与えないものであれば、例えば施釉された容器やアルミナ製等の各種セラミック製の容器を用いることも可能である。但し、金属製の場合、約800℃で炭化が生じて表面が荒れてしまうため、耐熱性が十分でない。タングステン製容器でもよいが、高価となる。これらの点で上記実施形態が優れている。
【0034】
上記実施形態において、離型剤をスプレー塗布により離型層32を形成した。しかし、離型層32を均一に形成できるのであれば、スプレー塗布に限られるものではなく、例えば筆塗りや刷毛塗り等の手段で離型層32を形成しても構わない。係る場合、離型剤としては、例えば耐火粘土、耐火アルミナ粉やセラミックス粉等を含有させた液状のものが用いられる。もちろん、離型層32を略均一に形成できるのであれば、他の手段により離型剤を加熱用容器の内面に形成してもよい。
【0035】
なお、本発明における「粒状蓄光体」とは、加熱によりガラスフリットが溶解して蓄光顔料を包含する1つの塊として形成され、塊単体で発光(蓄光)が視認できる程度の大きさのものを指す。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ガラス衝突防止安全マーク及びガラス衝突防止安全マークの施工方法として利用することができる。本発明は、蓄光顔料とガラスフリットとにより構成されるので、耐候性、耐水性、耐熱性、耐摩擦性、耐薬品性に優れ、屋内に限らず屋外でも長期にわたり使用することができる。また、上記粒状蓄光体は、ガラス衝突防止安全マークの他、例えば、建物の床や壁等に設置される避難誘導用マーク等の安全マークとして使用することができる。さらに、例えば、人造宝石等の装身具としても利用することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:粒状蓄光体、1A:ガラス衝突防止安全マーク、1B:避難誘導用マーク、2:粉状物、3:サヤ(加熱用容器)、4:加熱炉、11:底面、12:膨出部、13:R形状部、31:底面、32:離型剤(離型層)、41:棚板、50:板ガラス、51:コーキング剤、52:貼着材、60:通路、F:表面張力、S:間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7