(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1には、基材や印刷用のインク等についての具体的な開示はなく、例えば、インクジェットプリンタのような印刷装置に適用する場合に、印刷コストを低減するために、前記基材として、インクの吸水性の高い上質紙や専用紙ではなく、インクの吸水性の低い安価な普通紙等を使用し、UV(紫外線硬化)インク等に比べて安価で安全性の高い水系のインクを使用して印刷速度を高速にするための具体的な構成についての開示はない。
【0005】
上記のように印刷速度を高速にするために、特許文献1の乾燥ドラムの温度や熱風送風装置の熱風を高温にすることが考えられるが、高温にすると、塗料である水系のインクの水分や基材である普通紙に含まれる水分が突沸し、印刷面が荒れて品質不良となる。
【0006】
一方、塗料である水系のインクには、水分よりも高沸点の高沸点溶媒が含まれており、吸水性の低い普通紙に印刷した場合に、かかる高沸点溶媒を蒸発させて乾燥させる必要がある。しかしながら、高沸点溶媒を蒸発させるために、特許文献1の乾燥ドラムの温度や熱風送風装置の熱風を高温すると、上記のように水分による突沸が生じてしまう。
【0007】
このように特許文献1等の従来の技術では、インク等の塗料に含まれる水分の突沸を防止しつつ、吸水性の低い普通紙等の基材を使用して、高速な印刷をするのは困難である。
【0008】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、吸水性の低い安価な基材に塗布されたインク等の塗料を、安価な構成で高速に乾燥させて印刷コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0010】
(1)本発明の乾燥装置は、基材の表面に塗布された塗料を乾燥する乾燥装置であって、
搬送される前記基材の裏面に接触しながら回転して、前記基材を加熱する
単一の熱ロールと、
前記熱ロールに接触しながら搬送される前記基材の表面に、熱風を送風する第1熱風送風手段と、
該第1熱風送風手段よりも前記基材の搬送方向の下流側に設けられると共に、搬送される前記基材に、前記第1熱風送風手段よりも高温の熱風を送風する第2熱風送風手段とを備える。
【0011】
本発明によると、
単一の熱ロール、第1熱風送風手段の熱風、及び、第2熱風送風手段の熱風の各温度を適切に設定することによって、塗料に含まれる溶媒の内、沸点の最も低い溶媒、例えば、水系インクの場合の水分による突沸を防止しつつ、水分及び高沸点溶媒を蒸発させて乾燥させることができ、特に、熱ロールによる加熱温度及び第1熱風送風手段の熱風による加熱温度を比較的に低く設定して、塗料に含まれる水分による突沸を防止しつつ、水分を蒸発させ、第2熱風送風手段の高温の熱風による加熱温度を比較的高く設定して、塗料に含まれる高沸点溶媒を蒸発させて乾燥させることができる。
【0012】
これによって、吸水性の低い安価な基材に塗布された塗料を、熱ロール及び第1,第2熱風送風手段という比較的簡単な構成で高速に乾燥させて印刷コストの低減を図ることができる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記第2熱風送風手段は、前記熱ロールに接触しながら搬送される前記基材の表面に、前記高温の熱風を送風する。
【0014】
この実施態様によると、熱ロールに接触しながら搬送される基材の表面に、高温の熱風を送風するので、熱ロールから剥離された状態で搬送される基材の表面に、高温の熱風を送風する場合に比べて、高沸点溶媒を確実に蒸発させて乾燥させることができる。
【0015】
(3)本発明の他の実施態様では、前記基材が、ロール状の紙またはフィルムであり、前記塗料が、基材の表面に吐出される水系インクである。
【0016】
この実施態様によると、基材が、吸水性の低い安価なロール状の普通紙やフィルムであっても、水系インクに含まれる水分による突沸を防止しつつ、水分を蒸発させ、更に、水系インクに含まれる高沸点溶媒を蒸発させて乾燥させることができる。
【0017】
これによって、吸水性の低い安価な普通紙やフィルムに塗布された水系インクを、比較的簡単な構成で高速に乾燥させて印刷コストの低減を図ることができる。
【0018】
(4)上記(3)の実施態様では、前記第2熱風送風手段が送風する熱風の温度を、前記水系インクに含まれる高沸点溶媒の沸点以上としてもよい。
【0019】
この実施態様によると、第2熱風送風手段は、高沸点溶媒の沸点以上の高温の熱風を送風するので、水系インクに含まれる高沸点溶媒を確実に蒸発させて乾燥させることができる。
【0020】
(5)本発明の他の実施態様では、前記熱ロールの表面温度を、前記塗料に含まれる溶媒の内、沸点の最も低い溶媒の沸点以下としてもよい。
【0021】
この実施態様によると、搬送される基材の裏面が接触する熱ロールの表面温度を、塗料に含まれる溶媒の内、沸点の最も低い溶媒の沸点以下としているので、塗料に含まれる沸点の最も低い溶媒、例えば、水系インクの水分による突沸を効果的に防止することができる。
【0022】
(6)本発明の他の実施態様では、前記熱ロールの表面温度が、前記第1熱風送風手段が送風する熱風の温度以下である。
【0023】
この実施態様によると、搬送される基材の裏面が接触する熱ロールの表面温度が、第1熱風送風手段が送風する熱風の温度以下であるので、塗料に含まれる水分による突沸を効果的に防止することができる。
【0024】
(7)本発明の更に他の実施態様では、前記熱ロールの表面温度が、80℃以下である。
【0025】
この実施態様によると、搬送される基材の裏面が接触する熱ロールの表面温度が、80℃以下であるので、塗料に含まれる水分による突沸を一層効果的に防止することができる。
【0026】
(8)本発明の他の実施態様では、前記第2熱風送風手段が送風する熱風の温度が、前記塗料に含まれる溶媒の内、沸点の最も高い溶媒の沸点以上である。
【0027】
この実施態様によると、第2熱風送風手段が送風する熱風の温度が、塗料に含まれる最も沸点の高い溶媒の沸点以上であるので、塗料に含まれる高沸点溶媒を十分に蒸発させて乾燥させることができる。
【0028】
(9)本発明の更に他の実施態様では、前記基材の搬送速度が、25m/分以上である。
【0029】
この実施態様によると、基材を25m/分以上の搬送速度で搬送しながら、塗料を乾燥させることができる。
【0030】
(10)本発明の印刷装置は、基材に対して、インクを吐出して印刷する印刷部と、印刷された基材を乾燥する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の乾燥装置とを備える。
【0031】
本発明によると、吸水性の低い安価な基材に塗布されたインクを、比較的簡単な構成で高速に乾燥させて印刷コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、
単一の熱ロール、第1熱風送風手段の熱風、及び、第2熱風送風手段の熱風による基材の加熱によって、基材に塗布された塗料を乾燥させるので、熱ロールによる加熱温度及び第1熱風送風手段の熱風による加熱温度を比較的に低く設定して、塗料に含まれる水分による突沸を防止しつつ、水分を蒸発させ、第2熱風送風手段の高温の熱風による加熱温度を比較的高く設定して、塗料に含まれる高沸点溶媒を蒸発させて乾燥させることができる。
【0033】
これによって、吸水性の低い安価な基材に塗布された塗料を、熱ロール及び第1,第2熱風送風手段という比較的簡単な構成で高速に乾燥させて印刷コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態の印刷装置としてのインクジェットプリンタである。
【0037】
このインクジェットプリンタ1は、いわゆる、業務用プリンタであって、給送部2から送られるロール状の原紙3に印刷を行う印刷部4と、原紙3に印刷したインクを乾燥させる乾燥部5と、乾燥が完了した原紙3をロール状に巻き取る巻取り部6とを備える。
【0038】
原紙3は、上質紙やインクジェットプリンタ用の専用紙ではなく、安価な普通紙である。ここで、普通紙とは、インクジェットプリンタ用に製造または調整された被印刷用媒体を除く被印刷用媒体をいい、具体的には、オフセット印刷、グラビア印刷および凸輪転印刷用として汎用的に使用されている被印刷媒体を指す。より具体的には、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の紙媒体のみならず、合成紙やPETフィルムに代表される樹脂フィルム等、「紙」に分類されない被印刷用媒体も含まれる。かかる普通紙は、一般に、インクジェットプリンタ用の専用紙に比して、吸湿性が悪いため、インクがにじみやすい。
【0039】
印刷部4は、給送部2から搬送される原紙3の表面に対して、図示しないインクジェットヘッドから水系のインクを噴射して印刷を行う。水系のインクは、UV(紫外線硬化)インクに比べて安価であると共に、安全であり、食品用途の印刷に好適である。
【0040】
乾燥部5は、インクが噴射された原紙3上のインクドットを後述のように乾燥させる。
【0041】
図2は、
図1の乾燥部5の概略構成を示す図である。
【0042】
この実施形態の乾燥部5は、本発明の実施形態に係る乾燥装置によって構成されている。乾燥部5は、印刷部4から搬送される原紙3が巻掛けられる熱ロール7と、この熱ロール7の外周面に対向して、原紙3の表面3aに熱風をそれぞれ吹付ける第1,第2熱風送風機8,9と、原紙3の搬送軌道を変更する支持ローラ10〜14とを備えている。
【0043】
熱ロール7は、図示しない駆動装置によって駆動され、搬送される原紙3と共に、矢符A方向へ回転する。この熱ロール7は、円柱状であって、その内部には、図示しない熱媒流路が形成されており、オイル等の熱媒を循環させることによって、熱ロール7の表面温度を比較的低温としている。
【0044】
この熱ロール7に、搬送される原紙3の裏面3bが接触して加熱され、主としてインクの水分が蒸発する。
【0045】
第1熱風送風機8は、熱ロール7に巻掛けられて搬送される原紙3の表面3aに、乾燥した空気を吹付けてインクを乾燥させるものであり、熱ロール7の外周面に対向する円弧状の対向面を備えている。この対向面に沿って、熱風を噴出する複数の噴出口8aが形成されている。
【0046】
第2熱風送風機9は、第1熱風送風機8よりも原紙3の搬送方向の下流側に配置され、熱ロール7に巻掛けられて搬送される原紙3の表面3aに、第1熱風送風機8よりも高温の熱風を吹付けてインクを乾燥させるものであり、熱ロール7の外周面に対向する円弧状の対向面を備えている。この対向面に沿って、熱風を噴出する複数の噴出口9aが形成されている。
【0047】
第1熱風送風機8は、第2熱風送風機9に比べて、熱ロール7を取囲む円弧状の対向面、すなわち、熱風を噴出する領域が長くなっており、熱ロール7の円周の略1/2に亘って対向している。なお、第1,第2熱風送風機8,9の熱風を噴出する領域の長さは、
図2の例に限らず、熱風の温度や搬送速度等に応じて、適宜設定すればよい。
【0048】
熱ロール7は、主にインクや原紙3に含まれる水分を蒸発させるのであるが、突沸させることなく、水分を蒸発させるためには、その表面温度は、塗料である水系のインクに含まれる溶媒の内、沸点の低い溶媒である水の沸点以下であることが好ましい。例えば、90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。この熱ロール7の表面温度の下限値は、50℃、好ましくは、60℃である。
【0049】
ここで熱ロール7の表面温度とは、原紙3を搬送させながら、熱ロール7、第1,第2熱風送風機8,9で熱風を吹付けて乾燥処理を行なっている状態で、熱ロール7の表面付近に埋め込まれた接触式の温度計で計測した温度をいう。
【0050】
第1熱風送風機8は、熱ロール7と共に、主にインクや原紙3に含まれる水分を蒸発させるものであって、比較的低温の熱風、例えば、50℃〜150℃、好ましくは、70℃〜100℃の温度範囲にある熱風を、搬送される原紙3の表面3aに吹付けるものである。
【0051】
この第1熱風送風機8の熱風の風速は、10m/s〜40m/sであり、好ましくは20m/s〜30m/sである。
【0052】
第1熱風送風機8の熱風よりも高温の熱風を送風する第2熱風送風機9は、主にインクに含まれる水分よりも高沸点の高沸点溶媒を蒸発させるものである。従って、インクに含まれる溶媒のうち、最も沸点の高い溶媒の沸点より高い温度であることが好ましい。例えば、150℃〜250℃、好ましくは、200℃〜230℃の温度範囲にある熱風を、搬送される原紙3の表面3aに吹付けるものである。
【0053】
この第2熱風送風機9の熱風の風速は、20m/s〜70m/sであり、好ましくは40m/s〜60m/sである。
【0054】
これら熱ロール7及び第1,2熱風送風機8,9によって加熱される原紙3の搬送速度は、25m/分以上、好ましくは30m/分以上、より好ましくは40m/分以上、更に好ましくは50/分以上である。
【0055】
この実施形態では、原紙3は、比較的低温の熱ロール7に巻掛けられて搬送される間に、裏面3b側から加熱されると共に、表面3a側では、先ず、第1熱風送風機8によって比較的低温の熱風が吹付けられ、原紙3の表面3aに塗布されたインクや原紙3に含まれる水分を突沸させることなく蒸発させ、更に、第2熱風送風機9によって高温の熱風が吹付けられることによって、インクに含まれる高沸点溶媒を蒸発させて乾燥させることができる。
【0056】
次に、熱ロール7の表面温度と水分による突沸との関係を評価するために行った実験について説明する。
【0057】
この実験では、
図3に示すように、熱風を吹付けることなく、熱ロール7の表面温度を異ならせて、原紙3が熱ロール7に巻掛けられる手前の塗布位置Pcでマゼンタのインクを手動で塗布した。原紙3として普通紙であるキャストコートタック紙を使用し、インクの塗布量は、28g/m
2とした。原紙3が、矢符A方向へ回転する熱ロール7に接触する接触位置Ptの手前の第1の位置P1と、前記接触位置Ptを原点(0mm)とし、この接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って343mmの第2の位置P2と、前記接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って1029mmの第3の位置P3と、前記接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って1715mmの第4の位置P4と、前記接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って2401mmの第5の位置P5において、原紙3の表面3aにインクが塗布されていない無地部分の温度、及び、インクが塗布された塗膜部分の温度を、非接触式の温度計を用いてそれぞれ測定した。また、乾燥中の塗膜の突沸(泡立ち)の有無を目視で判定した。なお、原紙3の熱ロール7からの分離位置Prは、前記接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って2720mmの位置であった。
【0058】
下記の表1は、その実験結果を示すものである。
【0060】
この表1に示すように、熱ロール7の温度を異ならせて実験No.1〜4を行った。この実験No.1〜4では、熱ロール7の表面の実測温度は、63℃、70℃、81℃、91℃であった。各実験No.1〜4では、原紙3の搬送速度は、50m/分、30m/分とした。
【0061】
表1に示すように、熱ロール7の表面温度が、63℃及び70℃の実験No.1,2では、いずれの搬送速度でも突沸は認められず、良好(○)であった。
【0062】
これに対して、熱ロール7の表面温度が81℃の実験No.3では、搬送速度が50m/分の場合には、接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って1029mmの第3の位置P3付近で突沸が生じ、搬送速度が30m/分の場合には、接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って343mmの第1の位置P1付近で突沸が生じ、印刷不良(×)となった。
【0063】
また、熱ロール7の表面温度が91℃の実験No.4では、搬送速度が50m/分及び30m/分のいずれの場合においても、接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って343mmの第1の位置P1付近で突沸が生じ、印刷不良(×)となった。
【0064】
このように熱ロール7の表面温度が、高過ぎると、インクや原紙3に含まれる水分による突沸が生じ、したがって、突沸を防止するには、熱ロール7の表面温度は、比較的低温に設定する必要があることが分る。
【0065】
次に、第2熱風送風機9の熱風の温度と乾燥状態との関係を評価するために行った実験について説明する。
【0066】
この実験では、
図4に示すように、原紙3を熱ロール7に巻掛けて第2熱風送風機9
1によって異なる温度の熱風を吹付けた。マゼンタのインクを手動で、原紙3が熱ロール7に巻掛けられる手前の塗布位置Pcで塗布した。原紙3としてキャストコートタック紙を使用し、インクの塗布量は、28g/m
2とした。原紙3が、矢符A方向へ回転する熱ロール7に接触する接触位置Ptの直前の第1の位置P1と、第1熱風送風機8
1から低温の熱風が吹付けられる領域の終端付近の第2の位置P2と、第2熱風送風機9
1からの高温の熱風が吹付けられる領域の第3の位置P3とでそれぞれ紙面温度を測定した。
【0067】
第1熱風送風機8
1では、前記接触位置Ptから熱ロール7の円周に沿って1030mmの位置までに亘って熱風を吹付け、第2熱風送風機9
1では、熱ロール7の円周に沿って390mmに亘って熱風を吹付けた。
【0068】
更に、第2熱風送風機9の熱風と熱ロール7による加熱との関係を評価するために、
図5に示すように、搬送される原紙3を熱ロール7から剥離させた状態で第2熱風送風機9
1から熱風を吹付けた場合について、前記各測定点P1〜P3でそれぞれ原紙3の紙面温度を測定した。
【0069】
また、乾燥中の塗膜の突沸の有無を目視で判定し、乾燥状態を、原紙3の印刷部分を指で擦ることにより、また、裏移りによって判定した。
【0070】
下記の表2は、その実験結果を示すものである。
【0072】
表2の上欄において、接触の有無とは、第2熱風送風機9
1による熱風を吹付ける原紙3と熱ロール7との接触状態の有無をいい、接触「有り」は、
図4に示すように、熱ロール7に接触して搬送される原紙3に対して第2熱風送風機9
1から熱風を吹付けている状態をいい、接触「無し」は、
図5に示すように、熱ロール7から剥離されて搬送される原紙3に対して第2熱風送風機9
1から熱風を吹付けている状態をいう。また、熱風[1]とは、第1熱風送風機8
1による熱風を、熱風[2]とは、第2熱風送風機9
1による熱風をいう。
【0073】
図4に示す接触「有り」の状態の実験No.1,2では、第2熱風送風機9
1による熱風(熱風[2])の風速を20m/s、60m/sとし、温度を、80℃、227℃とし、搬送速度を20m/分、30m/分とした。第1熱風送風機8
1による熱風(熱風[1])は、いずれの実験No.1〜3も風速を20m/s、温度を80℃とした。
【0074】
熱ロール7の表面温度は、略同じ70℃であり、実験No.1,2が70℃、実験No.3が71℃であった。
【0075】
第2熱風送風機9
1の熱風(熱風[2])の風速は、実験No.1が20m/s、実験No.2,3が60m/sとした。第2熱風送風機9
1の熱風(熱風[2])の温度は、実験No.1が80℃、実験No.2が227℃、実験No.3が230℃とした。
【0076】
原紙3の搬送速度は、実験No.1が20m/分、実験No.2,3が30m/sとした。
【0077】
この表2に示すように、熱ロール7に原紙3を接触させた状態で、第2熱風送風機9
1からの80℃の熱風を吹付けた実験No.1では、突沸は生じないものの(○)、原紙3の印刷部分を指で擦ると、インクがとれ(××)、また、裏移りが生じ(××)、全く乾燥していなかった。この実験No.1では、全く乾燥していなかったので、上記各位置P1,P2,P3での紙面の温度測定は行わなかった。
【0078】
この実験No.1に対して、熱ロール7に原紙3を接触させた状態で、第2熱風送風機9
1から227℃の熱風を吹付けた実験No.2では、突沸が生じることもなく(○)、原紙3の印刷部分を指で擦ってもインクがとれることもなく(○)、裏移りが生じることもなく(○)、十分に乾燥していた。
【0079】
一方、熱ロール7から原紙3を剥離させた状態で、第2熱風送風機9
1からの230℃の熱風を吹付けた実験No.3では、突沸は生じなかったけれども(○)、原紙3の印刷部分を指で擦るとインクがとれ(×)、裏移りが生じ(×)、実験No.1に比べると乾燥していたが、乾燥が不充分であった。
【0080】
このように第2熱風送風機9
1による熱風は、高沸点溶媒を飛ばして乾燥させるためには、高温にする必要があることが分る。実験No.1〜3において用いたインクに含まれる高沸点溶媒のうち、最も高い沸点を持つ溶媒の沸点は、180〜200℃であると考えられることから、該沸点より高い200℃以上において、良好な乾燥状態が得られたと考えられる。
【0081】
更に、第2熱風送風機9
1による高温の熱風は、熱ロール7に原紙3を接触させて、原紙3を裏面側から加熱することが、充分に乾燥させる上で有効であることが分る。
【0082】
上記のように低温の熱ロール7によって突沸を防止しつつ水分を蒸発させ、第2熱風送風機9からの高温の熱風によって、高沸点溶媒を蒸発させて乾燥させるので、二つの第1,第2熱風送風機8,9によって異なる温度の熱風を吹付けるのではなく、単一の熱風送風機から高温の熱風のみを吹付けることが考えられる。
【0083】
しかしながら、単一の熱風送風機によって、高温の熱風のみを吹付ける構成では、熱ロール7の温度を低温に維持するのが容易でない。
【0084】
図6に示すように、原紙3を巻き掛けることなく、熱ロール7のみを回転させ、第2熱風送風機9
1によって230℃の熱風を吹付けた場合の熱ロール7の表面温度を測定位置Pで測定すると共に、第2熱風送風機9
1の熱風炉内の温度、熱ロール7を循環する熱媒であるオイルの温度をそれぞれ測定した。なお、第2熱風送風機9
1の熱風を吹付ける領域の長さは、熱ロール7の円周に沿って390mmであり、これは、熱ロール7の全円周の約13%である。
【0085】
図7は、その測定結果を示す図であり、横軸は経過時間を、左縦軸は熱ロール及び熱媒の温度を、右縦軸は熱風の温度にそれぞれ対応する。
【0086】
この
図7に示されるように、時間の経過と共に、熱ロール7の表面温度及び熱媒の温度が徐々に上昇し、約1時間半経過すると、熱ロール7の表面温度は、約6℃上昇し、熱媒の温度は、約4℃上昇した。
【0087】
このように熱ロール7の全円周の約13%程度に亘って高温の熱風を吹付けるだけで、熱ロール7の表面温度が上昇するので、突沸を防ぐために、熱ロール7の表面温度を低く維持するには、大きな冷却能力を備え、熱媒の温度制御を行う必要があり、その分、構成が複雑となって、大型化すると共に、コストが増加することになる。
【0088】
したがって、装置の小型化及びコストの低減を図るためには、第1熱風送風機8によって、熱ロール7に比較的低温の熱風を吹付けることが、熱ロール7の温度を低温に維持する上で有効である。
【0089】
上述の実施形態では、第2熱風送風機9は、熱ロール7に巻掛けられた状態の原紙3に対して高温の熱風を吹付けたけれども、本発明の他の実施形態として、
図8または
図9に示すように、原紙3を熱ロール7から剥離した状態で、第2熱風送風機9
2,9
3から高温の熱風を吹付けるようにしてもよい。この場合、原紙3の表面3a側及び裏面3b側の少なくとも一方の側に高温の熱風を送風する。ただし、上述したように、熱風[2]を単に吹付けるよりも、熱ロールを併用した方が、乾燥効率が上がるため、原紙3を熱ロール7から剥離した状態で、第2熱風送風機9
2,9
3から高温の熱風を吹付ける場合は、第2熱風送風機9
2,9
3の風速を上げる、温度を上げる、吹きつけ時間を長くするなどの追加手段を行うことが望ましい。
【0090】
かかる追加手段を必要とせず、熱ロール7に巻掛けられた状態の原紙3に対して、第2熱風送風機9から高温の熱風を吹付ける上述の実施形態は、熱ロール7に接触しているために、原紙3の加熱温度が安定し、高沸点溶媒を確実に蒸発させて効率的に原紙3を乾燥させることができる。
【0091】
上述の実施形態では、2台の第1,第2熱風送風機8,9によって熱風を送風したけれども、更に熱風送風機を追加してもよい。
【0092】
上述の実施形態では、吸水性の低い普通紙に印刷する場合について説明した。既に述べたように、普通紙には、フィルムも含まれる。基材としてフィルムを用いる場合に、熱ロール7の表面温度は、比較的低温であるので、この比較的低温の熱ロール7にフィルムを巻掛けることによって、フィルムの温度上昇を抑制し、フィルムが変形するのを有効に防止することができる。
【0093】
上述の実施形態では、熱ロール7は、内部に熱媒を循環させて所要の加熱温度としたけれども、内部にヒータ等を配設して所要の加熱温度にしてもよい。