【実施例】
【0097】
実施例を説明目的で記載する。実施例には、本発明の範囲を制限する意図はない。
【0098】
本明細書において、参照されるが明示的に記載されない化学、分子生物学、タンパクおよびペプチドの生化学、および免疫学の方法、ならびに実施例は文献で報告されており、当業者に周知である。
【0099】
材料および方法
緑色蛍光タンパク質:オワンクラゲ(
Aequoria victoria)の緑色蛍光タンパク質(Prasherら、1992)をコードするDNA配列はClontech(米国)から入手した。
【0100】
赤色蛍光タンパク質:赤色蛍光タンパク質(Matzら、1999)をコードするDNA配列のpDsRed2およびpDsRed2-nucはClontech(米国)から入手した。このコンストラクトは、イソギンチャクモドキ(
Discosoma sp.)に由来するタンパク質をコードする。
【0101】
COS細胞およびHEK細胞は、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection;Washington, D.C.)から入手した。細胞の培地は、トロント大学のラボラトリーサービスに調製を依頼した。
【0102】
拮抗物質化合物および作動物質化合物は、Sigma Chemical Company(米国)などの様々な業者から入手した。
【0103】
エピトープタグの免疫検出用の
抗体は、以下の業者から入手した。抗HAモノクローナル抗体はRoche Diagnostics(米国)から入手した。抗FLAGモノクローナル抗体はSigma Chemical Company(米国)から入手した。抗c-mycモノクローナル抗体はSanta Cruz(米国)から入手した。
【0104】
受容体結合アッセイ法に使用する
放射リガンド3H-SCH 23390はNEN Perkin Elmer(米国)から入手した。
【0105】
DNAコンストラクトの作製
GPCRまたは輸送体をコードするヌクレオチド配列は、国立科学図書館(National Library of Science)が設立したゲンバンクのウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez)から得た。選択された膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、選択した検出用シグナルタンパク質をコードするヌクレオチド配列に結合させた。このコンストラクトをベクター系pEGFP(Clontech)、またはpDsRed2-N1ベクターもしくはベクターpcDNA3にクローン化した。
【0106】
1a.近位カルボキシ端(ヘリックス8)にNLSを有し、GFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-GFPおよびD1-NLS-GFP)の構築
以下の実験条件によるPCR法で、ベクターpcDNA3中にヒトD1ドーパミン受容体をコードするDNAを対象にPCRを行った。反応混合物は、水(32マイクロリットル)、10×Pfu緩衝液(Stratagene)(5マイクロリットル)、dNTP(2'-デオキシヌクレオシド5'-三リン酸、10 mM)(5マイクロリットル)、DMSO(5マイクロリットル)、オリゴヌクレオチドプライマー(100 ng)(各1マイクロリットル)、DNAテンプレート(100 ng)、Pfu酵素(5ユニット)を含むものとした。総容積は50マイクロリットルとした。PCR条件は、94℃で2分間を1サイクル、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を30〜35サイクル、また続いて72℃で5分間を1サイクルとした。
【0107】
D1ドーパミン受容体をコードするDNAの増幅用プライマーセット:
【0108】
HD1-P1プライマーにEcoRI制限酵素切断部位を導入し、HD1-P2プライマーにKpnI制限酵素切断部位を導入した。停止コドンを含まないPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0109】
ヒトAT1受容体に由来するNLS配列KKFKRを、D1ドーパミン受容体のTM7の基部(ヘリックス8)をコードするDNAに、DFRKAをコードする天然の配列を置き換えるようにPCRで挿入した。
【0110】
D1-NLSをコードするDNAの構築用プライマーセット:
【0111】
D1-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーおよびHD1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#1)で1000 bpの産物を得た。D1-GFPをコードするDNAを用いて、HD1-P2プライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。続くPCRを、HD1-P1プライマーおよびHD1-P2プライマーを用いて、テンプレートとしてPCR#1の産物およびPCR#2の産物を用いて実施し、1300 bpの産物を得た。結果として得られた、D1-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0112】
後述する他のすべてのコンストラクトを、D1ドーパミン受容体の場合と同じ、上述のPCR法および実験条件で作製した。ただし、後述する特定のプライマーを使用した。
【0113】
1b.NLSを含み、REPを融合させたヒトドーパミンD1受容体(D1-NLS-RFP)の構築
NLS配列KKFKRを、ヒトD1受容体の細胞内カルボキシ端のヘリックス8セグメントに、以下の手順でPCR法で挿入した。pcDNA3ベクター中にヒトD1をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーおよびHD1-NLSRプライマーによる第1のPCRで1 kbの産物を得た。HD1-P2プライマーおよびHD1-NLSFプライマーによる第2のPCRを行い、300 bpの産物を得た。PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーおよびHD1-P2プライマーによる最終PCRを行い、1.3 kbの産物を得た。
【0114】
D1-NLSをベクターpDsRed(Clontech)のEcoRI〜KpnIにサブクローン化し、RFPと融合した。
【0115】
プライマーの配列:
【0116】
1c.赤血球凝集素(HA)エピトープタグをアミノ末端に有するドーパミンD1受容体の構築
HA-Tagは以下の通りである:
ヌクレオチド配列:
HAのアミノ酸配列:
【0117】
HAエピトープタグを、D1-pcDNA3をテンプレートとして、また以下のプライマーを用いてヒトD1受容体のアミノ末端に挿入した:
結果として得られた増幅後のcDNA(1.3 kb)を、pcDNA3ベクターのBamHI〜NotIにサブクローン化した。
【0118】
1d.HAエピトープおよびNLSを近位カルボキシ端(ヘリックス8)に有するヒトドーパミンD1受容体(D1HA-NLS)の構築
D1-HAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、D1-NLS(ヘリックス8)をコードするDNAのPCRによる増幅用プライマーセット。D1-HAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1000 bpのDNAを得た。D1-HAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、Sp6プライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#2)で300 bpのDNAを得た。T7プライマーとSp6プライマーを用いて、またPCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いたPCR(PCR#3)で1300 bpのDNAを得た。
【0119】
結果として得られたD1HA-NLS(ヘリックス8)のPCR産物の末端を平滑化してpcDNA3のEcoRVに挿入した。正しい方向のクローンの配列を決定した。
【0120】
1e.NLSを細胞内ループ3に有し、GFPを融合させたドーパミンD1受容体(D1-NLS-IC3-GFP)の構築
D1-NLS-IC3-GFPの構築用プライマーセット:
【0121】
pcDNA3中のD1をテンプレートを用いる:
PCR#1:HD1-P1プライマーとD1-NLSR-IC3プライマー
PCR#2:HD1-P2プライマーとD1-NLSF-IC3プライマー(500 bp)
PCR#3:PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレート(1.3 kb)として使用し、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーを使用する。
結果として得られた、D1-NLS-IC3をコードするDNA断片を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnIにサブクローン化した。
【0122】
NLS配列KKFKRを、D1受容体のICループ3セグメントに、pcDNA3中のD1をテンプレートとして用いて、配列MFSKRを置き換えるように挿入した。
【0123】
pcDNA3中のD1をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとD1-NLSR-IC3プライマーによるPCR(PCR#1)で800 bpの産物を得た。pcDNA3中にD1をコードするDNAを用いた、HD1-P2プライマーとHD1-NLSF-IC3プライマーによるPCR(PCR#2)で500 bpの産物を得た。続いてPCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーによるPCRで1300 bpの産物を得た。結果として得られた、D1-NLSをコードするコンストラクトを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0124】
1f.NLSを細胞内ループ2に有し、GFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-NLS-IC2-GFP)の構築
D1NLS-IC2をコードするDNAの構築用プライマーセット
【0125】
pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとD1NLSR-IC2プライマーによるPCR(PCR#1)で500 bpの産物を得た。pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P2プライマーおよびD1-NLSF-IC2によるPCR(PCR#2)で800 bpの産物を得た。続いてPCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用い、HD1-P1プライマーとプライマーHD1-P2を用いたPCRで1300 bpの産物を得た。
【0126】
結果として得られた、D1-NLS-IC2-GFPをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI部位にサブクローン化した。
【0127】
1g.細胞内ループ1内にNLSを有し、GFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-NLS-IC1-GFP)の構築
D1-NLS-IC1をコードするDNA構築用のプライマーセット:
【0128】
pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとD1-NLSR-IC1プライマーによるPCR(PCR#1)で300 bpの産物を得た。pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P2プライマーとD1NLSF-IC1プライマーによるPCR(PCR#2)で1000 bpの産物を得た。続くPCRを、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーを用いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施して1300 bpの産物を得た。
【0129】
結果として得られた、D1-NLS-IC1をコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI部位にサブクローン化した。
【0130】
1h.2種類のNLSを近位カルボキシ端に有し、GFPを融合させたヒトドーパミンD1受容体(D1-NLS2-GFP)の構築
PCR法で、NLS配列PKKKRKVを、D1受容体中の天然の配列ADFRKAFと置き換える形で導入した。pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAを対象に、HD1-P1プライマーとHD1-NLS2RプライマーによるPCR(PCR#1)で1 kbの産物を得た。pcDNA3中のD1を用いた、HD1-P2プライマーとHD1-NLS2Fプライマーによる別のPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとした、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーによる第3のPCRで1.3 kbの産物を得て、これをベクターpEGFPのEcoRI〜KpnIにサブクローン化した。
【0131】
2.GFPを融合させたドーパミンD2受容体およびD2-NLSドーパミン受容体(D2-GFPおよびD2-NLS-GFP)の構築
D2ドーパミン受容体をコードする、pcDNA3中のDNAの増幅用プライマーセット:
【0132】
HD2-P1プライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、HD2-P2プライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないD2-PCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0133】
D2-NLS-GFP構築用のプライマーセット:
【0134】
NLS配列KKFKRをD2受容体のTM7セグメントの基部に、配列IEFRKと置き換えるように、D2-GFPのDNAコンストラクトをテンプレートとして用いて挿入した。
【0135】
D2-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD2-P1プライマーとHD2-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1300 bpの産物を得た。D2-GFPをコードするDNAを用いた、HD2-P2プライマーとHD1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。次に、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD2-P1プライマーとHD2-P2プライマーによるPCRで1400 bpの産物を得た。結果として得られた、D2-NLSをコードするコンストラクトを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0136】
3.GFPを融合させた、D3およびD5ドーパミン受容体をコードするDNA(D3-GFPおよびD5-GFP)の構築
D3ドーパミン受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:
【0137】
HD3-HindプライマーにはHindIII制限酵素切断部位が含まれ、HD3-KpnプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないD3-PCR産物を、ベクターpEGFPのHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0138】
D5ドーパミン受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:
【0139】
HD5-KpnプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないD5-PCR産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0140】
4.GFPを融合させた、Histamine1受容体およびHistamine1-NLS受容体(H1-GFPおよびH1-NLS-GFP)の構築
H1ヒスタミン受容体をコードする、ヒトゲノムDNAに由来するDNAの増幅用プライマーセット:
【0141】
このH1-PCR産物を、続くPCR実験のテンプレートとして用いた。
【0142】
H1-GFPコンストラクトをコードするDNA増幅用のプライマーセット:
【0143】
H1-PSTプライマーにはPstI制限酵素切断部位が含まれ、H1-APAプライマーにはApaI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まない、このH1-PCR産物を、ベクターpEGFPのPstI〜ApaI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0144】
H1-NLS-GFPをコードするDNA増幅用のプライマーセット:
【0145】
NLS配列KKFKRを、H1受容体のTM7セグメントをコードするDNAに配列ENFKKを置き換えるように、H1-GFPをテンプレートとしたPCR法で挿入した。HI-PSTプライマーとH1-NLSRプライマーによるPCRで1500 bpの産物を得た。結果として得られた、H1-NLSをコードする断片を、ベクターpEGFPのPstI〜ApaI切断部位にサブクローン化した。
【0146】
5.GFPを融合させた、システイニルロイコトリエン受容体1およびCysLT1 NLS(CysLT1-GFPおよびCysLT1-NLS-GFP)の構築
CysLT1受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:
【0147】
LT1-EcoRIプライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、LT1-KpnIプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないCysLT1-PCRのDNA産物を、ベクターPGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0148】
CysLT1-NLS-GFPをコードするDNA増幅用のプライマーセット:
【0149】
NLS配列KKFKRを、CysLT1のTM7セグメントをコードするDNAに、テンプレートとしてCysLT1-GFPをコードするDNAを用いたPCR法で、配列GNFRKと置き換えるように挿入した。CysLT1-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、LT1-EcoRIプライマーとLT1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で900 bpの断片を得た。CysLT1-GFPをコードするDNAを用いた、LT1-KpnIプライマーとLT1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの断片を得た。続くPCRを、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用い、LT1-EcoRIプライマーとLT1-KpnIプライマーを用いて実施し、1000 bpの産物を得た。結果として得られた、CysLT1-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0150】
6.GFPを融合させたシステイニルロイコトリエン受容体CysLT2およびCysLT2-NLS(CysLT2-GFPおよびCysLT2-NLS-GFP)の構築
CysLT2受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:
【0151】
LT2-EcoRIプライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、LT2-KpnIプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないCysLT2産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0152】
CysLT2-NLS-GFPの増幅用のプライマーセット:
【0153】
NLS配列KKFKRを、CysLT2のTM7セグメントに、配列ENFKDを置き換えるようにPCR法で挿入した。CysLT2-EGFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、LT2-EcoRIプライマーとLT2-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で900 bpの断片を得た。LT2-KpnIプライマーとLT2-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で200 bpの断片を得た。続くPCRを、LT2-EcoRIプライマーとLT2-KpnIプライマーを用いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施し、1100 bpの産物を得た。結果として得られた、CysLT2-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0154】
7.GFPを融合させた、M1ムスカリン受容体およびムスカリンNLS受容体(M1-GFPおよびM1-NLS-GFP)の構築
ヒトゲノムDNA由来のムスカリン受容体(M1)をコードするDNA増幅用のプライマーセット:
【0155】
MR1-EGFP用のプライマーセット:
【0156】
M1-PSTプライマーにはPstI制限酵素切断部位が含まれ、M1-BAMHプライマーにはBamHI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないM1 PCR産物を、ベクターpEGFPのPstI〜BamHI切断部位に、EGFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0157】
M1-NLS EGFP用のプライマーセット:
【0158】
NLS配列KKFKRを、M1のTM7セグメントに、MR1テンプレートを用い他PCR法で、配列KAFRDと置き換えるように挿入した。MR1をコードするDNAをテンプレートとして用いた、M1-PSTプライマーとM1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1200 bpの産物を得た。MR1をコードするDNAを用いた、M1-BAMHプライマーとM1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。続くPCRを、M1-PSTプライマーとM1-BAMHプライマーを用いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施し、1300 bpの産物を得た。MR1-NLSをコードする同断片を、ベクターpEGFPのPstI〜BamHI切断部位にサブクローン化した。
【0159】
8.GFPを融合させた、セロトニン受容体(5HT1B)およびセロトニンNLS受容体(5HT1B-GFPおよび5HT1B-NLS-GFP)の構築
5HT1B受容体をコードするpcDNA3プラスミドから、5HT1B受容体をコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:
【0160】
5HT1B-E1プライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、5HT1B-KPNプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まない5HT1B-PCR産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0161】
5HT1B-NLS EGFP用のプライマーセット:
【0162】
NLS配列KKFKRを、5HT1BのTM7セグメントに、5HT1B-EGFPテンプレートとして用いたPCRで、配列EDFKQを置き換えるように挿入した。5HT1B-EGFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、5HT1B-E1プライマーとHD1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#1)で1100 bpの産物を得た。5HT1B-EGFPをコードするDNAを用いた、5HT1B-KPNプライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。続くPCRを、5HT1B-E1プライマーと5HT1B-KPNプライマーを用いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施し、1200 bpの産物を得た。結果として得られた、5HT1B-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0163】
9.GFPを融合させた、β2-アドレナリン受容体(β2-AR)およびβ2-AR-NLS1受容体(β2-AR-GFPおよびβ2AR-NLS1-GFP)の構築
pcDNA3から、β2-AR受容体をコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:
【0164】
β2-KpnプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないβ2-AR産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0165】
NLS配列KKFKRを、β2-ARのTM7セグメントに、β2-AR-EGFPテンプレートを用いたPCRで、配列PDFRIを置き換えるように挿入した。β2-AR-EGFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとB2-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1100 bpの産物を得た。β2-AR-EGFPをコードするDNAと、β2-KpnプライマーとB2-NLSFプライマーを用いたPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。続いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとβ2-KpnプライマーによるPCRを行い、1300 bpの産物を得た。結果として得られた、β2-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0166】
10.2種類のNLSを有し、GFPを融合させたβ2-アドレナリン受容体(β2-NLS2-GFP)の構築
pcDNA3から、β2-NLS2受容体をコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:
【0167】
β2-AR-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとB2D1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1000 bpの産物を得た。β2-AR-GFPをコードするDNAを用いた、β2-KpnプライマーとB2D1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。続いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとβ2-KpnプライマーによるPCRを行い、1300 bpの産物を得た。結果として得られた、β2-NLS2をコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0168】
NLS配列AFSAKKFKRを、β2-ARのTM7セグメントに、β2-GFPテンプレートを用いたPCRで、配列CRSPDFRIAを置き換えるように挿入した。
【0169】
結果として得られた、β2-NLS2をコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0170】
11.2種類のNLSを有し、GFPを融合させたβ2-アドレナリン受容体(β2-NLS3-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、β2-ARのカルボキシ端の近位セグメントの別の位置に挿入した。pcDNA3ベクター中にβ2ARをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとB2-NLS3RプライマーによるPCRで1000 bpの産物を得た。β2-KpnプライマーとB2-NLS3FプライマーによるPCRで300 bpの産物を得た。PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとβ2-KpnプライマーによるPCRで1300 bpの産物(β2AR-NLS3)を得た。これをベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0171】
β2-NLS3-GFP用のプライマーセット:
【0172】
12.GFPを融合させたドーパミン輸送体(DAT-GFP)の構築
ヒトドーパミン輸送体(hDAT)をコードする完全長のcDNAを、pcDNA3中のDATをテンプレートとした、T7プライマーとDT-1プライマー
によるPCRで増幅した。停止コドンを含まない、このPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0173】
13a.NLSを含み、REPを融合させたヒトドーパミン輸送体(DAT-NLS-RFP)の構築
ヒトドーパミン輸送体(hDAT)をコードするcDNAを、1718プライマーとhDAT-NLSFプライマーによるPCRで増幅し、100 bpの断片を得た。ヒトドーパミン輸送体(hDAT)をコードするcDNAも、T7プライマーとhDAT-NLSRプライマーによるPCRで増幅し、1.7 kbの断片を得た。これら2つのPCR断片をテンプレートとして用いた、T7プライマーと1718プライマーによるPCRで1.8 kbの断片を得た。
【0174】
このPCR産物をベクターpRFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、RFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0175】
TM12の下流にNLS配列KKFKRをコードする、結果として得られたPCR断片は以下の通りである:
【0176】
13b.NLSを有し、GFPを融合させたヒトドーパミン輸送体(DAT-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、ヒトDATの膜貫通12セグメントの下流の近位カルボキシ端に挿入した。pcDNA3中にヒトDATのcDNAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとhDAT-NLSRプライマーによる第1のPCRで1.7 kbの産物を得た。1718プライマーとhDAT-NLSFプライマーによる第2のPCRで100 bpの産物を得た。次にPCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーと1718プライマーによる最終PCRで1.8 kbの産物(DAT-NLS)を得た。これをベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化してGFPと融合した。
【0177】
プライマーの配列:
【0178】
14.GFPを融合させたヒトセロトニン輸送体(SERT-GFP)の構築
完全長のヒトSERTのcDNAを、SERTのcDNAを含むpcDNA3から、以下の2種類のプライマーによるPCRで単離した:
【0179】
停止コドンを含まないこのPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0180】
15.GFPを融合させたヒト低密度リポタンパク質受容体(LDL-R-GFP)の構築
LDLをコードする完全長のcDNAを対象に、LDLR-HINDプライマーとLDLR-KPNプライマーによるPCRを行った:
【0181】
停止コドンを含まない、このPCR産物(2600 bp)を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0182】
16.NLSを有し、GFPを融合させたヒト低密度リポタンパク質受容体(LDLR-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、LDL受容体をコードするDNAに、天然のRLKNIをコードする配列を置き換えるようにPCRで挿入した。
【0183】
LDL-NLSをコードするDNAを構築するためのプライマーセット:
【0184】
pcDV1中のLDLのcDNAをコードするヒトDNAをテンプレートとして用いた、LDLR-HINDプライマーとLDL-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で2450 bpの産物を得た。LDLをコードするDNAをテンプレートとして用いた、LDLR-KPNプライマーとLDL-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で150 bpの産物を得た。続いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとした、LDLR-HINDプライマーとLDLR-KPNプライマーによるPCRを行い、2600 bpの産物を得た。
【0185】
結果として得られたPCRは、以下のようにNLS配列KKFKR変異を含む:
【0186】
停止コドンを含まない、このPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0187】
17.GFPを融合させた上皮成長因子受容体(EGFR-GFP)の構築
Prkfベクター中のヒトEGFRの完全長のcDNAを、以下の2種類のプライマーによるPCRで単離した:
【0188】
停止コドンを含まない、このPCR産物(3600 bp)を、ベクターpEGFP(Clontech)のXhoI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0189】
18.NLSを有し、GFPを融合させたヒトセロトニン輸送体(SERT-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、SERTをコードするDNAに、GTFKEをコードする天然の配列と置き換えるようにPCRで挿入した。
【0190】
SERT-NLSをコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:
【0191】
pcDNA3中のヒトSERT-cDNAをテンプレートとして用いた、SERT-HINDプライマーとSERT-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1800 bpの産物を得た。SERTをコードするDNAをテンプレートとして用いた、SERT-KPNプライマーとSERT-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。続いて、PCR#1の産物およびPCR#2をテンプレートとして用いた、SERT-HINDプライマーとSERT-KPNプライマーによるPCRを行い、1900 bpの産物を得た。
【0192】
結果として得られたPCR産物は、以下のようにSERTのTM12の下流にNLS配列KKFKR変異をコードしていた:
【0193】
停止コドンを含まない、このPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0194】
19.NLSを含むか、または含まない、GFPを融合させた代謝共役型グルタミン酸-4-受容体(mGluR4-GFPおよびmGluR4-NLS-GFP)の構築
mGluR4をコードするDNAを、以下のプライマーセットを用いてラットのcDNAから単離した:
【0195】
GLUR4-HINDプライマーにはHindIII制限酵素切断部位が含まれ、GLUR4-ECORIプライマーにはEcoRI切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないmGluR4-PCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜EcoRI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0196】
NLS KKFKRを、mGluR4をコードするDNAに導入し、天然の配列KRKRSと置き換えた。
【0197】
NLSをラットのmGluR4-EGFPに導入するためのDNAを増幅するためのプライマーセット:
【0198】
GluR4をコードするラットDNAをテンプレートとして用いた、GLUR4-HINDプライマーとGLUR4-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で2600 bpの産物を得た。GluR4をコードするDNAを用いた、GLUR4-ECORIプライマーとGLUR4-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で160 bpの産物を得た。続いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、GLUR4-HINDプライマーとGLUR4-ECORIプライマーによるPCRで2760 bpの産物を得た。
【0199】
結果として得られたPCRは、NLS配列KKFKR変異を以下のように含んでいた:
【0200】
このPCR産物をベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜EcoRI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0201】
20.GFPを融合させたヒトインスリン受容体(IR-GFP)の構築
プラスミドpRK5中のIRの完全長のcDNAを、以下の2種類のPCRプライマーを用いて単離した:
停止コドンを含まない、このPCR産物(4.2 kb)を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜ApaI切断部位に一方向的にサブクローン化して、GFPタンパク質と融合させた。
【0202】
21.NLSを有し、GFPを融合させたヒトインスリン受容体(IR-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRをヒトインスリン受容体に導入し、配列LYASSと置き換えた。
【0203】
pRK5ベクター中のヒトインスリン受容体のcDNAをテンプレートとして用いた、HIR-HINDプライマーとHIR-NLSRプライマーによる第1のPCR#1で2.9 kbの産物を得た。またHIR-APAプライマーとHIR-NLSFプライマーによる第2のPCR#2で1.3 kbの産物を得た。次に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HIR-HINDプライマーとHIR-APAプライマーによる第3のPCR#3で断片(4.2 kb)を得た。停止コドンを含まないこの断片を、ベクターpEGFPのHindIII〜ApaI切断部位に一方向的にサブクローン化することで、GFPタンパク質と融合させた。
HIR-NLS用のプライマー:
【0204】
22.GFPを融合させたヒトエリスロポイエチン受容体(EPO-GFP)の構築
ヒトエリスロポイエチン受容体(EPO)をコードする、pc3.1ベクター中のcDNAをテンプレートとしたPCRで、完全長のcDNAを以下のプライマーにより単離した:
停止コドンを含まない、このPCR産物(1.6 kb)を、ベクターpEGFPのHindIII〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化して、GFPタンパク質を融合させた。
【0205】
23.NLSを有し、GFPを融合させたヒトエリスロポイエチン受容体(EPO-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、EPO受容体をコードするDNAにPCRで挿入し、天然の配列RRALKと置き換えた。
【0206】
pc3.1中のヒトEPO-cDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとEPO-NLSRプライマーによる第1のPCR#1で900 bpの産物を得た。EPO-KPNプライマーとEPO-NLSFプライマーによる第2のPCR#2で700 bpの産物を得た。次に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとEPO-KPNプライマーによる第3のPCR#3で1.6 kbの断片を得た。停止コドンを含まないこのPCR産物(1.6 kb)を、ベクターpEGFPのHindIII〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化することで、GFPタンパク質を融合させた。
プライマーの配列:
【0207】
24.GFPを融合させたヒト上皮成長因子受容体(EGFR-GFP)の構築
pRK5ベクター中のヒト上皮成長因子受容体のcDNAをテンプレートとして用いて、完全長のcDNAを、以下の2種類のプライマーによるPCRで単離した:
停止コドンを含まないこのPCR産物(3.6 kb)を、ベクターpEGFP(Clontech)のXhoI〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化し、GFPタンパク質を融合させた。
【0208】
25.NLSを有し、GFPを融合させたヒト上皮成長因子受容体(EGFR-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、ヒト上皮成長因子受容体の配列に、以下の手順によるPCR法で挿入した。pRK5中のヒトEGFRのcDNAをテンプレートとして用いた、HER-XHOプライマーとEGF-NLSRプライマーによる第1のPCRで2.1 kbの産物を得た。HER-KPNプライマーとEGF-NLSFプライマーによる第2のPCRで1.5 kbの産物を得た後に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HER-XHOプライマーとHER-KPNプライマーによる最終PCRを行い、3.6 kbの産物(EGFR-NLS)を得た。これをベクターpEGFP(Clontech)のXhoI〜KpnI切断部位にサブクローン化し、GFPを融合させた。
プライマーの配列:
【0209】
26.2つのNLSを含み、RFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-NLS(Helix 8 and C-tail)-RFP)の構築
第2のNLS配列KKKRKを、ヒトD1-NLS-Helix 8のカルボキシ端セグメントに、以下の手順によるPCR法で挿入した。pDsRedベクター中のヒトD1-NLS-Helix 8をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとHD1-NLSCRプライマーによる第1のPCRで1.2 kbの産物を得た。またHD1-P2プライマーとHD1-NLSCFプライマーによる第2のPCRで100 bpの産物を結果として得た。次に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーによる最終PCRを行い、1.3 kbの産物(D1-NLS-Helix 8 and C-tail)を得た。これをpDsRedベクターのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化し、DsRedタンパク質を融合させた。
プライマーの配列:
【0210】
27.GFPを融合させたMuオピオイド受容体(Mu-GFP)の構築
pcDNA3ベクター中にMuオピオイド受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、以下の2種類のプライマーによるPCRを行った:
RATMU-1プライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれるようにした。RATMU-2プライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。
【0211】
次に、停止コドンを含まないPCR産物(1.2 kb)を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化することで、GFPを融合させた。
【0212】
28.NLSを含み、GFPを融合させたMuオピオイド受容体(Mu-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、Muオピオイド受容体の近位カルボキシ端セグメント(ヘリックス8)に、以下の手順によるPCRで挿入した。pcDNA3中のラットMuをコードするDNAをテンプレートとして用いた、RATMU1プライマーとMU-NLSRプライマーによる第1のPCRで1000 bpの産物を得た。そして第2のPCRを、RATMU-2プライマーとMU-NLSFプライマーを用いて実施し、200 bpの産物を得た。PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、RATMU1プライマーとRATMU2プライマーによる最終PCRで1200 bpの産物(Mu-NLS)を得た。これをベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化し、GFPを融合させた。
プライマーの配列:
【0213】
細胞培養とトランスフェクション
COS-7サル腎細胞およびHEK293Tヒト胚性腎細胞(American Type Culture Collection、Manassa、VA)は、単層培養として37℃で5% CO
2雰囲気中で、10%ウシ胎仔血清および抗生物質を添加した最小必須培地で維持した。細胞膜の回収では、100 mmの細胞プレートを、70〜80%のコンフルエンシーで、リポフェクタミン試薬(Life Technologies、Rockville、MD)を用いて一過的にトランスフェクトした。共焦点顕微鏡による観察用には、60 mmの細胞プレートを、10〜20%のコンフルエンシーで、リポフェクタミン試薬を用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後に溶液を除去し、新鮮な培地を添加し、トランスフェクションの24時間後に、新鮮な培地に再び交換した。
【0214】
トランスフェクション用培地を、抗生物質を含まない120マイクロリットルの培地、および/またはウシ胎仔血清(FBS)、および15マイクロリットルのリポフェクタミンを14 mlのチューブ内に混合して調製した。所望の融合タンパク質をコードする2マイクログラムのDNAコンストラクトと120マイクロリットルの培地を混合し、これを14 mlのチューブに移し、緩やかに混合して室温で25分間インキュベートした。さらに4 mlの培地を添加して混合した。複数の膜貫通型タンパク質をトランスフェクトする場合は、cDNAを混合して同時にトランスフェクトする。成長用培地を細胞プレートから除去し、14 mlのチューブ内のトランスフェクション混合物と交換した。細胞をトランスフェクション混合物と5〜6時間インキュベートした後に、同混合物を除去し、FBSおよび抗生物質を含む通常の成長培地と交換した。2日目に通常の成長培地と交換して細胞をインキュベートした。
【0215】
試験化合物による処理
細胞表面からの転位の遅延を決定するためのプロトコル
試験化合物を、1ミリモル濃度のストック溶液中に調製し、成長培地で希釈し、最終濃度を10ナノモル濃度〜10マイクロモル濃度として細胞プレートに添加した。新鮮な化合物含有培地を、トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で細胞に添加した。
【0216】
細胞表面からの転位の促進を決定するためのプロトコル
試験化合物を、1ミリモル濃度のストック溶液中に調製し、37℃で成長培地で希釈し、最終濃度を10マイクロモル濃度として細胞に添加した。細胞培養物を顕微鏡で観察し、1個の細胞に焦点をあて、検出用標識タンパク質の、表面における発現の存在を検出した。成長用培地を化合物含有培地と交換し、細胞を顕微鏡で、化合物を添加してから5分後、10分後、15分後、20分後、30分後、および35分後に、検出用部分の分布の変化をリアルタイムで観察した。
【0217】
顕微鏡による観察
LSM510 Zeiss共焦点レーザー顕微鏡で細胞を可視化した。GFPは、アルゴンレーザー(励起波長、488 nm)で励起して可視化し、DsRedは、ヘリウムネオンレーザー(励起波長、543 nm)による励起して可視化した。共焦点像をディスクに記録して評価した。各実験において、複数の視野の細胞(各30〜90個の細胞を含むn=6〜8)をカウントし、細胞表面、細胞質内、および核内におけるシグナルの局在を評価した。
【0218】
蛍光細胞測定
96ウェルプレートをポリ-L-オルニチン(PBS中に1/10)でコーティングし、1時間インキュベートした。50,000個の細胞を各ウェルに添加し、エピトープタグを付加した受容体をコードするcDNAを、リポフェクタミン(Invitrogen、米国)を用いてトランスフェクトした。培地(MEM)を12時間毎に交換し、さまざまな濃度の試験薬剤または培地を含むようにした。48時間後に細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、氷上で30分間インキュベートした。次に細胞を、エピトープに対する一次抗体とともにインキュベートした後に、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を結合させた二次抗体とインキュベートし、遮光下で保存した。過剰な抗体を洗浄して除き、Cytofluor 4000(PerSpective Biosystems、米国)でプレートを読み取ってシグナルを検出した。FITCを、488 nmの光で励起させて活性化させ、530 nmの放射波長におけるシグナルを読み取った。
【0219】
放射リガンドの結合
D1-NLSをコードするDNAで細胞をトランスフェクトし、さまざまな濃度の拮抗物質剤で処理するか、または非処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロン(polytron)でホモジナイズした。膜画分を遠心して回収した後に、35%ショ糖溶液に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重い膜画分を回収した。上清を再び遠心(4℃、35,000 rpm、60分)して軽い膜画分を回収した。これらの膜を対象に、[
3H]-SCH 23390を用いる放射リガンド結合アッセイ法を行い、10マイクロモル濃度の(+)ブタクラモールを用いて特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベートした後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。
【0220】
培養細胞からの核の単離
10 mlのPBSで細胞を3回洗浄し、培養ディッシュから丁寧にかきとる。細胞をプールし、軽く遠心する(4℃、500 g、5分)。ペレット状の細胞を溶解緩衝液(Tris-HCl 10 mM、pH 7.4、NaCl 10 mM、MgCl
2 3 mM)、および阻害剤カクテル(0.5%ロイペプチン、1%ダイズトリプシン、1%ベンズアミジン)に5000万個の細胞/mlの密度で再懸濁する。滅菌処理したガラス製のTeflon pestle B(タイトクリアランス20〜50 mm;Bellco Glass)を用いて、100回の上下運動でホモジナイズする。
【0221】
軽く遠心(4℃、700 g、10分)した後に、上清を遠心(4℃、10000 g、15分)してミトコンドリアを除去し、遠心(4℃、120000 g、60分)して形質膜を除去する。
【0222】
核ペレットを、溶解緩衝液(阻害剤を含む)および0.1%のNP-40に再懸濁し、氷上で5分間維持した後に遠心する(4℃、700 g、10分)。上清を捨て、洗浄工程を15 mlの溶解緩衝液で3回繰返す。核ペレットを、2 mlの溶解緩衝液に再懸濁し、MgCl
2(1 mM)を含む4.5 mlの2.0 Mおよび1.6 Mの不連続ショ糖層に重層して遠心(4℃、100,000g、60分)して作製した不連続なショ糖勾配上にロードする。チューブの底のペレットを回収する(ペレットには純粋な核が含まれる)。
【0223】
実施例1:赤色蛍光タンパク質を融合させたドーパミンD1受容体(D1-RFP)、またはNLSを含み、赤色蛍光タンパク質を融合させた同受容体(D1-NLS-RFP)
NLSを含まないドーパミンD1受容体の配列を、TM7ドメインの基部のアミノ酸DFRKAがNLS配列KKFKR(ヒトAT1受容体のNLSに対応する)と置き換わるように上記の方法で修飾した(
図1参照)。DNAコンストラクトは、D1ドーパミン受容体融合タンパク質であるD1-RFPおよびD1-NLS-RFPをコードするように作製した。COS細胞に、D1-NLS-RFPまたはD1-RFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、24時間および48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡(100倍)で観察した。細胞数を8〜10個の顕微鏡視野を対象にマニュアルでカウントし、異なる細胞内区画で標識されたパーセンテージを算出した。
【0224】
24時間および48時間の時点で、D1-RFPをトランスフェクトした細胞には、大多数の細胞で細胞表面における発現が認められたが、D1-NLS-RFPをトランスフェクトした細胞には、細胞表面における受容体発現はほとんど認められず、核内における局在は24時間後に60%の細胞で、また48時間後に80%の細胞で認められた。
【0225】
実施例2:NLSを含むドーパミンD1受容体融合タンパク質(D1-NLS-RFP)の拮抗物質処理
COS細胞に、D1-NLS-RFPをコードするコンストラクト、および野生型のD1(2マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をドーパミンD1受容体拮抗物質SCH 23390(最終濃度10マイクロモル濃度)で処理した。またトランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を拮抗物質(+)ブタクラモール(最終濃度10 μM)で処理した。対照細胞には拮抗物質処理を行わなかった。
【0226】
48時間後の時点で、大半の対照細胞では、核でD1-NLS-RFPが検出可能であった。これとは対照的に、大半の拮抗物質処理細胞の蛍光は細胞表面でしか認められず、42%は蛍光が表面上および核内の両方で認められた。
【0227】
実施例3:NLSを含むD1受容体(D1-NLS)と同時発現させたドーパミンD1受容体(D1-GFP)
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAコンストラクト(3マイクログラム)、および/またはD1-GFP(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。この細胞をさらに、DsRed-NUCをコードするプラスミド(1マイクログラム)でトランスフェクトして、核における局在を検証した。
【0228】
細胞にさらに、D1-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0229】
D1-GFPの単独発現により、90%の細胞で細胞表面が標識されており、また10%の細胞で、核および細胞表面の両方が標識されていたことがわかった。GPCRをコードする任意のDNAのトランスフェクションでは、最大10%の細胞で、核内における局在が認められる可能性がある。
【0230】
D1-GFPおよびD1-NLSを発現する細胞では、35%の細胞で、核および細胞表面の両方が標識されており、70%は細胞表面だけで受容体の発現が認められた。この実験は、D1-GFPが、D1-NLSとD1-GFPのオリゴマー形成によってD1-NLSともに輸送されたことを意味していた。
【0231】
実施例4:用量反応試験で拮抗物質で処理した、NLSを含むドーパミンD1受容体(D1-NLS-GFP)
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)、およびD1-WTをコードするDNA(6マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。これらの細胞を、SCH-23390(10マイクロモル濃度)、または(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)で、トランスフェクションの6時間後に処理した。拮抗物質を含む培地を、トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後に交換した。対照細胞には拮抗物質処理を行わなかった。
【0232】
48時間のSCH-23390処理により、58%の細胞でD1-NLS-GFPの細胞表面における発現が認められ、10%未満の細胞で核における受容体発現が認められ、また32%の細胞で細胞表面と核内の両方における受容体発現が認められた。
【0233】
48時間の(+)ブタクラモール処理により、62%の細胞でD1-NLS-GFP受容体の細胞表面における発現が認められ、10%で核における受容体発現が認められ、また28%の細胞で細胞表面と核内における受容体発現が認められた。
【0234】
48時間後の時点における対照細胞では、約65%でD1-NLS-GFP受容体の核における発現が認められ、35%で細胞質内における受容体発現が認められた。D1-NLS-GFP受容体の発現は、対照細胞の細胞表面では認められなかった。
【0235】
NLSを受容体配列に組み入れたことで、細胞表面からのD1-NLS-GFP受容体の極めて効率のよい除去、および核内局在がもたらされた。
【0236】
同様の試験をさまざまな用量のSCH-23390または(+)ブタクラモールで行った。結果を表2と表3に示す。32%〜35%の対照細胞で、細胞質における受容体の存在が認められた。
【0237】
(表2)
【0238】
(表3)
【0239】
NLSを受容体配列に組み入れたことで、D1ドーパミン受容体の細胞表面からの極めて効率のよい除去、および核内における局在がもたらされた。D1に選択的な拮抗物質による処理は、このような受容体転位を用量反応的に妨げた。
【0240】
実施例4a:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS-GFP)の発現と作動物質処理
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、D1作動物質SKF-81297(10マイクロモル濃度)とともに48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を、SKF-81297(最終濃度10マイクロモル濃度)を含む新鮮な培地で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0241】
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、作動物質pergolide(10マイクロモル濃度)とともに48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を、SKF-81297(最終濃度10マイクロモル濃度)を含む新鮮な培地で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0242】
対照のHEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、後の処理は行わなかった。
【0243】
非処理細胞では48時間後に、細胞表面で受容体は検出されなかった。SKF-81297で処理した細胞では、59%の細胞で細胞表面における受容体の発現が認められた。perglolideで処理した細胞では、表面における受容体の発現は59%の細胞で認められた。したがって、作動物質で長期処理すると、修飾型D1受容体の核への輸送が妨げられることがわかった。
【0244】
実施例5:野生型D1受容体と同時発現させた、NLSが組み入れられたドーパミンD1受容体(D1-NLS-RFP)
COS細胞に、D1-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(1マイクログラム)と、天然のドーパミンD1受容体をコードするDNA配列(D1-WT、7マイクログラム)を同時にトランスフェクトし、24時間または48時間インキュベートした。
【0245】
24時間後の時点で、D1-NLS-RFPは細胞表面でのみ検出されたが、48時間後の時点では、80%の細胞でD1-NLS-RFPが核内に検出された。野生型受容体は、ホモオリゴマーの形成により、D1-NLS-RFPの核への移動を遅らせた。
【0246】
実施例6:D1-GFPと同時発現させた、NLSが組み入れられたD1ドーパミン受容体(D1-NLS-RFP)
COS細胞に、D1-NLS-RFPをコードするコンストラクト(4マイクログラム)、およびドーパミンD1-GFP(4マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0247】
D1-GFPは細胞表面で検出され、黄色の蛍光が核内で検出された。後者は、D1-NLS-RFPとD1-GFPの両方が核内に共存することを意味し、D1-NLS-RFPとD1-GFPがオリゴマーを形成して、D1-GFPが核内に入ることがわかる。
【0248】
実施例6a:NLSが第3細胞内細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC3-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、D1-IC3-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0249】
D1-IC3-NLS-GFPをトランスフェクトした細胞では、受容体が85%の細胞の核で検出された。したがって第3細胞内ループへNLSを挿入すると、受容体の核への輸送が可能となる。
【0250】
実施例6b:NLSが第1細胞内細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC1-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、D1-IC1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0251】
D1-IC1-NLS-GFPをトランスフェクトした細胞では、受容体が85%の細胞の核で検出された。したがって第1細胞内ループへNLSを挿入すると、受容体の核への輸送が可能となる。
【0252】
実施例6c:拮抗物質ブタクラモールまたはSCH-23390が、NLSが第1細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC1-NLS-GFP)の輸送に及ぼす作用
HEK細胞に、D1-IC1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、ブタクラモール(最終濃度1マイクロモル濃度)またはSCH-23390(1マイクロモル濃度)のいずれかで48時間処理した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0253】
ブタクラモールで処理した細胞の場合、82%が受容体を細胞表面または細胞質内に有していた。18%の細胞は、受容体を核内に有していた。したがって、ブタクラモール処理は、D1-IC1-NLS-GFPの核への輸送を低下させた。
【0254】
SCH-23390で処理した細胞の場合、77%の細胞が受容体を細胞表面または細胞質内に有していた。23%の細胞は、受容体を核内に有していた。したがってSCH-23390処理は、受容体の核への輸送を低下させた。
【0255】
非処理細胞の場合、76%で受容体が核および細胞質で発現されていた。
【0256】
実施例6d:拮抗物質SCH-23390が、NLSが第3細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC3-NLS-GFP)の輸送に及ぼす作用
HEK細胞に、D1-IC3-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、4通りの異なる濃度のSCH-23390(10マイクロモル濃度、1マイクロモル濃度、500ナノモル濃度、および100ナノモル濃度)で48時間処理した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0257】
D1-IC3-NLS-GFPをトランスフェクトした86%の細胞が受容体を核内に有し、受容体を表面上に有していた細胞はなかった。SCH-23390で処理した細胞の場合、84%が受容体を核内に有しており、15%の細胞が受容体を表面上に有していた。GPCRの同位置にNLSを挿入することで、受容体は核へ効率的に移行するが、薬剤には応答しない。
【0258】
実施例6e:NLSが第2細胞内細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC2-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、D1-IC2-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0259】
D1-IC2-NLS-GFPをトランスフェクトした細胞では、同受容体が51%の細胞の核で検出された。
【0260】
実施例6f:スタッガードトランスフェクション(staggered transfection)による、ドーパミンD1受容体がホモ二量体を形成する能力
HEK細胞に、D1-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、24時間のインキュベーション後に、細胞に、D1-NLS-GFPをコードする第2のDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトした。対照細胞にD1-RFPコンストラクト(2マイクログラム)だけをトランスフェクトした。この細胞を、第2のトランスフェクション後に48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0261】
D1-RFPのみをトランスフェクトした細胞の90%では、受容体が細胞表面で発現されており、6%の細胞では、受容体が核内で発現されていた。これとは対照的に、両方の型の受容体を発現する97%の細胞は、両受容体(赤色+緑色=黄色の蛍光)を核内で発現していた。したがって、NLSを含まないD1受容体は、NLSを含むD1受容体と相互作用して、核へ輸送された。
【0262】
実施例7:ドーパミンD5受容体(D5-GFP)
ドーパミンD5受容体-GFP(D5-GFP)をコードするコンストラクトを調製し、COS細胞のトランスフェクトに使用した(4マイクログラム)。
【0263】
ドーパミンD5-GFPをトランスフェクトした細胞は、48時間後の時点で、受容体の細胞質における局在が主に認められ、細胞表面における局在はわずかな細胞でしか認められず、また核における局在は認められなかった。
【0264】
実施例8:D5ドーパミン受容体(D5-GFP)と同時発現させた、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)
HEK細胞に、2種類のDNAコンストラクト(D1-NLSをコードするもの(7マイクログラム)と、D5-GFPをコードするもの(1.5マイクログラム))をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。
【0265】
D1-NLSおよびD5-GFPをトランスフェクトした約70%の細胞で、細胞表面におけるD5-GFPの発現が認められ、20%の細胞では、表面と細胞質の両方におけるD5-GFPの発現が認められ、また10%では、D5-GFPの核内発現が認められた。D1-NLSを同時発現させたD5ドーパミン受容体の核への転位はみられなかったことから、D1受容体とD5受容体がオリゴマーを形成しなかったことがわかる。
【0266】
実施例9:2つのNLSモチーフを含むD1ドーパミン受容体(D1-2NLS-RFP)の拮抗物質処理
D1-NLS-RFPをコードするコンストラクトを修飾することでDNAコンストラクト(D1-2NLS-RFP)を作製し、第2のNLSを、ドーパミンD1受容体のカルボキシ端に、野生型のD1ドーパミン受容体KKEEA配列を、NLSのKKKRKと置き換えるように導入した。
【0267】
HEK細胞に、このコンストラクトをコードするDNA(D1-2NLS-RFP)をトランスフェクトし、上述の手順で間隔をおいて拮抗物質SCH-23390(10 μM)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。
【0268】
D1-2NLS-RFPをトランスフェクトしたCOS細胞とHEK細胞の両方において、同受容体は、24時間後の時点で100%の細胞で核内に位置していたことから、第2のNLSが存在すると核への転位が促進されることがわかる。
【0269】
48時間後の時点で、拮抗物質で処理しなかった90%の細胞では、核内に蛍光が認められ、細胞表面で蛍光が認められた細胞はなかった。拮抗物質で処理した細胞では、51%の細胞で細胞表面における標識が認められ49%の細胞では核に標識が認められた。
【0270】
第2のNLSを組み入れたことで、受容体の核への輸送がより効率的となり、またこの輸送は、拮抗物質処理でさらに遅れた。
【0271】
実施例10:D2ドーパミン受容体(D2-GFP)
HEK細胞に、D2-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびDsRed-NUCをコードするDNAコンストラクト(1マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0272】
D2-GFPを発現する約90%の細胞で細胞表面における発現が認められ、10%で核または細胞質における発現が認められた。内在性NLSをもたないD2ドーパミン受容体は、もっぱら細胞表面で発現している。
【0273】
実施例11a:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)およびドーパミンD2(D2-GFP)
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAコンストラクト(7マイクログラム)、およびD2-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。この細胞にさらにDs-Red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0274】
D1-NLSおよびD2-GFPをトランスフェクトした細胞では、33%の細胞でD2-GFPの核における発現が認められたことから、D1-NLSとD2-GFPの両方の核への輸送が、D1受容体とD2受容体のオリゴマー形成によることがわかる。67%の細胞では、D2-GFP受容体が細胞表面だけで、または表面および細胞質で認められた。
【0275】
実施例11b:D2ドーパミン受容体D2ショート(D2S)がドーパミン受容体D2ロング(D2L)と二量体を形成する能力
HEK細胞に、D2S-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびD2L-NLSをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0276】
D2S-GFP受容体は、29%の細胞の核内で可視化された。これは、D2SがD2Lと二量体を形成し、核へ輸送されたことを意味していた。
【0277】
実施例11c:ドーパミン受容体D2Sがドーパミン受容体D2Lと二量体を形成する能力
HEK細胞に、D2S-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびD2L-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0278】
40%の細胞では、核内に黄色の蛍光(赤色+緑色のオーバーレイ)が認められたことから、D2L-NLSとD2S-RFPが二量体を形成し、これが核へ輸送されることがわかる。
【0279】
実施例12:NLSが挿入されたD2ドーパミン受容体(D2-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、D2-NLS-GFPをコードするDNAをトランスフェクトし、この細胞をD2ドーパミン受容体拮抗物質である(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)、またはラクロプリド(raclopride)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を拮抗物質で処理した。細胞を薬剤処理後に48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0280】
拮抗物質の非存在下では、D2-NLS-GFPを発現する細胞では、核の標識が70%の細胞で認められ、細胞質の標識は20%の細胞で認められ、また細胞質および細胞表面の標識は10%の細胞で認められた。(+)ブタクラモール処理では、核の標識は5%の細胞でしか認められず、5%の細胞で細胞質の標識が認められ、90%の細胞で細胞表面の標識が認められた。ラクロプリド処理では、5%の細胞で核の標識が認められ、15%の細胞で細胞質の標識が認められ、80%の細胞で細胞表面の標識が認められた。D2受容体の両拮抗物質とも、受容体の細胞表面から離れて核へ至る転位を妨げた。
【0281】
実施例13:β2-アドレナリン受容体-GFP(β2-AR-GFP)
ヒトβ2-アドレナリン受容体とGFPを含む融合タンパク質(β2-AR-GFP)をコードするDNAコンストラクトを作製した。β2-AR-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を細胞にトランスフェクトし、24時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0282】
β2-AR-GFPを発現する細胞では、42%の細胞で受容体の発現が細胞質のみで認められ、また58%の細胞で細胞質および細胞表面における受容体発現が認められた。受容体の核内における局在は認められなかった。
【0283】
実施例14:NLSが組み入れられたβ2-アドレナリン受容体(β2-AR-NLS3-GFP)
ヒトβ2-AR-NLS3-GFPを含む融合タンパク質をコードするDNAコンストラクトを作製した。HEK細胞に、β2-AR-NLS3-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)、およびDs-Red-NUCをコードするDNA(1マイクログラム)をトランスフェクトし、細胞を48時間インキュベートした。
【0284】
β2-AR-NLS3-GFPをトランスフェクトした45%の細胞で受容体の核内における局在が認められ、また55%の細胞で表面および細胞質における発現が認められた。β2-ARにNLSを組み入れたことで、受容体の核への転位が誘導された。
【0285】
実施例15:NLSが組み入れられたβ2-アドレナリン受容体(β2-AR-NLS3-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、β2-AR-NLS3-GFPをコードするDNA(1マイクログラム)、およびDs-Red-NUCをコードするDNA(1マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。細胞を間隔をおいて、アドレナリン受容体の拮抗物質であるアテノロール(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。
【0286】
対照細胞には拮抗物質を加えなかった。対照細胞では、60%で核における受容体発現が認められ、21%で細胞表面における受容体発現が認められ、19%で細胞質における受容体発現が認められた。
【0287】
拮抗物質アテノロールで処理した細胞では、70%で細胞表面における受容体発現が認められ、14%で核における受容体発現が認められ、また16%で細胞質における受容体発現が認められた。拮抗物質アテノロールによる処理は、β2-AR-NLS3-GFPの核への輸送を妨げ、受容体を細胞表面に保持した。
【0288】
実施例16:β2-アドレナリン受容体(β2-AR-GFP)と、NLSが組み入れられたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の同時発現
HEK細胞に、β2-AR-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)、およびD1-NLSをコードするDNAコンストラクト(3マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。
【0289】
約40%の細胞で、核におけるβ2-AR-GFP受容体の発現がみられ、NLSを含まないβ2-ARが核へ輸送されたことがわかった。これは、β2-AR受容体と、NLSを含むD1ドーパミン受容体がオリゴマーが形成したことを意味していた。45%の細胞でβ2-AR-GFPが細胞質に認められ、また15%で細胞質および細胞表面で認められた。
【0290】
実施例17:β2-アドレナリン受容体(β2-AR-GFP)、およびNLSが組み入れられたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の拮抗物質処理
HEK細胞に、β2-AR-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)、およびD1-NLSをコードするDNAコンストラクト(3マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を、アドレナリン拮抗物質であるプロプラノロール(5マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0291】
25%の対照細胞でβ2-AR-GFPの核内発現が認められ、また75%の細胞で細胞質および細胞表面で標識が認められた。
【0292】
プロプラノロール処理細胞では、β2-AR-GFPの核内発現は10%で認められ、また90%の細胞では細胞質および表面に標識が認められた。β2-AR-GFPとD1-NLS間のヘテロオリゴマーの形成は、β2-AR-GFPの核への輸送を招いた。この輸送は、アドレナリン受容体に対する拮抗物質の存在により減じた。
【0293】
実施例18:NLSが組み入れられたβ2-アドレナリン受容体(β2-AR-NLS3-GFP)
HEK細胞に、β2-AR-NLS3-GFPをコードする、NLSを含むDNAコンストラクト(8マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。さらにこの細胞に、Ds-Red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトして、核における局在を検証した。
【0294】
80%の細胞でβ2-AR-NLS3-GFP受容体が核内に認められた。NLSの効率は改善され、結果として、核における受容体の局在が増した。
【0295】
実施例19:NLSが組み入れられたセロトニン1B受容体(5HT1B-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、セロトニン5HT1B-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトした。この細胞にDs-red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。細胞を、セロトニン受容体拮抗物質であるメチセルジド(methysergide)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0296】
拮抗物質で処理しなかった対照細胞では、55%で受容体の核内局在が認められ、20%で受容体が細胞表面に局在していた。48時間後の時点で、メチセルジド処理細胞では、25%の細胞で受容体が核内に認められ、また62%の細胞で細胞表面における局在が認められた。
【0297】
セロトニン5HT1B受容体は、NLSの挿入によって、細胞表面から核へ効率的に転位した。セロトニン拮抗物質メチセルジドによる処理は受容体の転位を妨げた。
【0298】
実施例20:NLSが組み入れられたシステイニルロイコトリエン受容体-2(CysLT2-NLS-GFP)
HEK細胞に、CysLT2-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(8マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。この細胞にさらにDs-RED-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0299】
Cys-LT2-NLS-GFPを発現する83%の細胞で受容体の核内発現が認められ、細胞表面で受容体を発現している細胞は認められなかった。この結果は、Cys-LT2-NLS-GFP受容体が核内に局在することを意味する。
【0300】
実施例21:NLSが組み入れられたシステイニルロイコトリエン受容体-2(Cys-LT2-NLS-GFP)の拮抗物質処理
Cys-LT2-NLS-GFPをコードするDNA(3マイクログラム)を用いてHEK細胞をトランスフェクトした。これらの細胞を、システイニルロイコトリエン受容体拮抗物質であるモンテルカスト(montelukast)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0301】
拮抗物質の非存在下では、Cys-LT2-NLS-GFPを発現する70%の細胞で、受容体の核内局在が認められ、30%の細胞で細胞質における局在が認められ、細胞表面に受容体が認められた細胞はなかった。拮抗物質で処理した細胞に関しては、10%のみが受容体の核内局在を示し、90%では受容体は細胞表面で発現していた。したがって、システイニルロイコトリエン受容体拮抗物質であるモンテルカストは、細胞表面から離れて核内に至るCys-LT2-NLS-GFP受容体の輸送を妨げた。
【0302】
実施例22:NLSが組み入れられたMuオピオイド受容体(muオピオイド-NLS-GFP)
HEK細胞に、muオピオイド-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。さらにこの細胞にDs-Red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトして、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0303】
muオピオイド-NLS-GFPをトランスフェクトした65%の細胞で、核における受容体の発現がみられた。15%の細胞に細胞表面における受容体の局在がみられ、20%の細胞では受容体が細胞質で標識されていた。したがってNLSの挿入は、Muオピオイド受容体の核への輸送を可能とした。
【0304】
実施例23:NLSが組み入れられたMuオピオイド受容体(mu-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、muオピオイド-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、Muオピオイドの拮抗物質であるナロキソン(naloxone)(10マイクロモル濃度)、またはナルトレキソン(naltrexone)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0305】
非処理時には、62%の細胞でMu-NLS-GFPが核内に認められ、20%の細胞で、受容体が細胞表面で検出可能であった。ナロキソン処理により、21%の細胞で、受容体の核内発現が認められ、66%の細胞で、受容体が細胞表面に認められた。ナルトレキソン処理により、22%の細胞で受容体の核内発現が認められ、58%の細胞で、受容体が細胞表面に認められた。したがって、Muオピオイド拮抗物質であるナロキソンおよびナルトレキソンは、細胞表面から離れて核に至る受容体の転位を低下させた。
【0306】
実施例24:NLSが組み入れられたムスカリンM1受容体(M1-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、M1-NLS-GFPをコードするDNA(1マイクログラム)、およびDs-Red-NUC(1マイクログラム)をコードするDNAを48時間かけてトランスフェクトした。これらの細胞を、臭化イプラトロピウム(iprotropium bromide;10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクション後の6時間、22時間、30時間、および42時間の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質処理を行わなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0307】
臭化イプラトロピウム処理により、72%の細胞で細胞表面における受容体の発現が認められ、17%で細胞質内のみにおける受容体の発現が認められ、11%の細胞で受容体の核内発現が認められた。
【0308】
対照細胞に関しては、64%で核内における受容体の発現が認められ、23%で細胞表面における受容体の発現が認められ、13%の細胞で細胞質における受容体の発現が認められた。
【0309】
ムスカリン拮抗物質による処理は、細胞表面から離れて核へ至るM1-NLS-GFPの輸送を妨げた。
【0310】
実施例25:NLSが組み入れられたヒスタミンH1受容体(H1-NLS-GFP)
HEK細胞に、ヒスタミンH1-NLS-GFP受容体をコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびDs-Red-NUCをコードするコンストラクト(1マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。
【0311】
約65%の細胞で、核内における受容体の発現が認められ、35%の細胞で、表面と細胞質の両方における受容体の発現が認められた。H1ヒスタミン受容体へのNLSの挿入は、表面を離れて核へ至る受容体の転位を招いた。
【0312】
実施例26:NLSが挿入されたH1ヒスタミン受容体(H1-NLS-GFP)の輸送に拮抗物質プロメタジン(promethazine)が及ぼす作用
HEK細胞に、H1-NLS-GFP(2マイクログラム)、およびDsRED-NUC(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。この細胞をプロメタジン(10マイクロモル濃度)で48時間処理した。核をDsRED-NUCで可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0313】
プロメタジン処理細胞では、88%の細胞で受容体が細胞表面に認められ、10%の細胞で受容体が核内に認められた。非処理細胞では、85%で核および細胞質における受容体の発現が認められた。したがって、プロメタジン処理は、H1-NLS-GFPの核への輸送を低下させた。
【0314】
実施例26:アンジオテンシンAT1受容体(AT1R)
DNAコンストラクト(AT1R-RFP)を、NLS含有ヒトアンジオテンシンAT1受容体とDsRed2(RFP)を含む融合タンパク質をコードするように作製した。
【0315】
COS細胞にDNAコンストラクトAT1R-RFP(4マイクログラム)をトランスフェクトし、37℃で48時間インキュベートした。
【0316】
細胞を共焦点顕微鏡で観察したところ、受容体は、細胞の核内にもっぱら位置することがわかった。これはAT1Rが、基本的に作動物質に依存せずに核内へ転位することを意味する。
【0317】
実施例27:ドーパミン受容体(D1-NLS-GFP)の作動物質による短時間処理
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびD1-WTをコードするDNAコンストラクト(4マイクログラム)をトランスフェクトし、細胞を24時間インキュベートした。この細胞を、ドーパミンD1作動物質であるSKF 81297(10マイクロモル濃度)で35分間処理した。1つのグループの細胞を、共焦点顕微鏡でリアルタイムで可視化した。
【0318】
核内における受容体発現の上昇が認められ、最大の上昇は20分の時点で認められた。これは、作動物質の作用が短期間に発揮されることを意味する。
【0319】
実施例28:NLSを有し、GFPおよびRFPを融合させたドーパミン輸送体(DAT-NLS-GFPおよびDAT-NLS-RFP)
HEK細胞に、DAT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)を用いて共焦点顕微鏡で可視化した。
【0320】
48時間の時点で、DAT-GFPが、86%の細胞の表面または細胞質内で検出された。14%の細胞では、輸送体は核内に存在した。
【0321】
HEK細胞に、DAT-NLS-RFPをコードするコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間後に共焦点顕微鏡で可視化した。DAT-NLS-RFPは、85%の細胞の核内で検出された。18%の細胞では、輸送体は、表面または細胞質のいずれかに存在していた。
【0322】
次にHEK細胞に、DAT-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間後に共焦点顕微鏡で可視化した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。DAT-NLS-GFPは、77%の細胞の核内で検出された。
【0323】
実施例29:DAT-GFPとDAT-NLS-RFPの共輸送
【0324】
HEK細胞に、DAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびDAT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0325】
56%の細胞の核で黄色の蛍光が検出された。これは、DAT-NLS-RFPとDAT-GFPが核内に共存することを意味し、DAT-NLS-RFPとDAT-GFPがオリゴマーを形成することが確認されたことになる。
【0326】
実施例30:DAT-NLS-RFPの核への輸送にコカインが及ぼす作用
HEK細胞に、DAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をコカインまたはアンフェタミン(最終濃度10マイクロモル濃度)で処理するか、処理せずにおいた。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0327】
非処理のHEK細胞では、77%の細胞でDAT-NLS-RFPの核内発現が認められた。
【0328】
コカイン処理により、75%の細胞で細胞表面または細胞質におけるDAT-NLS-RFPの発現が認められ、25%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。コカイン処理は、DAT-NLS-RFPの核への輸送を低下させた。
【0329】
アンフェタミン処理により、34%の細胞で細胞表面/細胞質における発現が認められ、66%の細胞で核/細胞質における輸送体の発現が認められた。アンフェタミン処理(DATを標的とせず、小胞モノアミン輸送体、VMATを標的とする)には、核へのDAT-NLS-RFPの輸送に対する阻害作用はなかった。
【0330】
実施例31:NLSを有するドーパミン輸送体(DAT-NLS-GFP)の発現と拮抗物質処理
HEK細胞に、DAT-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をGBR-12909(最終濃度1マイクロモル濃度)で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0331】
HEK細胞に、DAT-NLS-GFPをコードするコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をマジンドール(mazindol)(最終濃度1マイクロモル濃度)で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0332】
対照HEK細胞にDAT-NLS-GFPをトランスフェクトし、48時間インキュベートし、薬剤処理は行わなかった。
【0333】
DAT-NLS-GFPをトランスフェクトした、非処理のHEK細胞では、77%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められ、23%で細胞質内にのみにおける発現が認められ、細胞表面で発現が認められた細胞はなかった。
【0334】
GBR-12909処理により、62%の細胞で細胞表面および細胞質内で輸送体の発現が認められ、38%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。GBR-12909処理は、細胞表面から離れて核に至る、DAT-NLS-GFPの転位を低下させた。
【0335】
マジンドール処理により、61%の細胞で細胞表面および細胞質における輸送体の発現が認められ、39%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。マジンドール処理は、細胞表面および核に至るDAT-NLS-GFPの転位を低下させた。
【0336】
実施例32:DAT-GFPおよびDAT-NLS-RFPのスタッガード発現を用いる、ドーパミン輸送体がホモオリゴマーを形成する能力
HEK細胞に、DAT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、この24時間後にDAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(0.5、1、および2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。対照として、細胞にDAT-GFPのみをトランスフェクトした。第2のトランスフェクション後に、細胞を48時間インキュベートした。総インキュベーション時間は72時間とした。
【0337】
DAT-GFPのみをトランスフェクトした85%の細胞は、輸送体を細胞質に含んでおり、7%は核内に含んでいた。スタッガード実験(比率1:0.5)では、97%の細胞で核内に黄色(=赤色+緑色)の蛍光が認められた。スタッガード実験(比率1:1)では、94%の細胞で核内に黄色の蛍光が認められた。スタッガード実験(比率1:2)では、94%の細胞で核内に黄色の蛍光が認められた。したがってDAT-GFPは、DAT-NLS-RFPと相互作用して二量体を形成し、これを核へ輸送することができる。
【0338】
実施例33:代謝共役型グルタミン酸-4-受容体(mGluR4-GFP)の発現
HEK細胞に、mGluR4-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0339】
89%の受容体が細胞表面で発現していた。したがってmGluR4受容体は、大半が細胞表面に位置していた。
【0340】
実施例34:NLSが挿入された代謝共役型グルタミン酸-4受容体(mGluR4-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、mGluR4-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。さらにこの細胞にDs-Red-NUC(2マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0341】
mGluR4-NLS-GFPを発現する60%の細胞は、核における受容体の発現を示した。
【0342】
したがって、mGluR4受容体へのNLSの挿入は、受容体の核内における局在を増加させた。
【0343】
実施例35:NLSを含む、または含まないムスカリンM1受容体(M1-GFPおよびM1-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、M1-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、またはM1-NLS-GFPをコードするコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0344】
M1-GFPによるトランスフェクション後に、67%の細胞で、受容体の発現が細胞表面または細胞質内で認められた。
【0345】
M1-NLS-GFPのトランスフェクションの結果、92%の細胞で、核における受容体の発現が認められたことから、NLSが受容体を核へ導いたことがわかる。
【0346】
実施例36:H1ヒスタミン受容体(H1-GFP)の発現
HEK細胞に、H1-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0347】
97%の細胞で、受容体が細胞表面に発現していた。したがって、この非修飾型受容体は核へ輸送されなかった。
【0348】
実施例37:NLSが挿入されたシステイニルロイコトリエン受容体(CysLT1-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、CysLT1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0349】
対照となる非処理細胞に関しては、細胞表面で受容体の発現がみられた細胞はなく、100%の細胞で核内発現がみられた。この結果は、受容体が細胞表面から離れて確実に除去されたことを意味する。
【0350】
実施例38:GFPを融合させたセロトニン輸送体(SERT-GFP)の発現
HEK細胞に、SERT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。91%の細胞が、細胞表面および細胞質で輸送体を発現していた。
【0351】
実施例39:フルオキセチン処理による、NLSが挿入されたセロトニン輸送体(SERT-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、SERT-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、フルオキセチン(最終濃度1マイクロモル濃度)で48時間処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をフルオキセチン(最終濃度1マイクロモル濃度)で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0352】
SERT-NLS-GFPを発現する非処理細胞では、輸送体を細胞表面で発現していた細胞はなく、26%で細胞質内で輸送体が発現されており、60%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。
【0353】
フルオキセチン処理により、68%の細胞で、SERT-NLS-GFP輸送体の細胞表面および細胞質における発現が認められ、27%の細胞で、核および細胞質における輸送体の発現が認められた。したがって、フルオキセチン処理は、SERT-NLS-GFPの、細胞表面から離れて核に至る輸送を抑制した。
【0354】
実施例40:2種類の異なる細胞表面膜タンパク質(D2-GFPとDAT-NLS-RFP)の相互作用能力の評価
HEK細胞に、D2-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)と、DAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を同時にトランスフェクトし、48時間インキュベートした。また対照として細胞を、D2-GFP単独、またDAT-NLS-RFP単独で別個にトランスフェクトした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0355】
DAT-NLS-RFPをトランスフェクトした85%の細胞は、核内に輸送体を含んでいた。D2-GFPをトランスフェクトした97%の細胞が、細胞表面に受容体を含んでおり、4%の細胞が、核内に受容体を含んでいた。同時にトランスフェクトした細胞の86%が、黄色(赤色+緑色)の蛍光を核内で示した。これは、D2とDATの両タンパク質が核内に存在することを意味し、同時発現されたタンパク質が二量体を形成することがわかる。
【0356】
実施例41:膜タンパク質と非膜タンパク質(D1-NLSとβ-アレスチン1-GFP)が複合体中で会合する能力、および相互作用する能力の評価
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)と、β-アレスチン1-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を同時にトランスフェクトし、48時間インキュベートした。さらに細胞に、β-アレスチン1-GFPのみをトランスフェクトした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で調べた。
【0357】
β-アレスチン1-GFPのみをトランスフェクトした100%の細胞で、蛍光タンパク質が細胞質で発現していた。これらの細胞の15%では、核でも蛍光が認められた。両タンパク質を同時にトランスフェクトした89%の細胞では、蛍光タンパク質が核内で発現されており、このうち16%では細胞質で発現されていた。したがって、GPCRと非膜タンパク質との相互作用は、NLSを含まないβ-アレスチンタンパク質の核への輸送を可能とした。
【0358】
実施例42:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(HA-D1-NLS)の拮抗物質処理時の発現、および蛍光定量法による検出
マルチウェルプレートのウェルをポリ-L-オルニチンでコーティングし、50,000個の細胞を各ウェルにプレーティングした。次にこの細胞に、HAエピトープタグを付加したD1-NLS受容体をコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(10ナノモル濃度〜10マイクロモル濃度)で48時間以上処理した。続いて、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、細胞表面の受容体を、ラット抗HA抗体で検出し、次にFITC結合ヤギ抗ラット抗体で検出した。蛍光シグナルを蛍光定量法(Cytofluor)で検出した。結果は、1回の実験条件につき5個のウェルの平均である(
図2)。ブタクラモールは、受容体を細胞表面に用量依存的に保持する作用を示したことから、同拮抗物質が細胞表面からの受容体の輸送を低下させることがわかる。したがって、蛍光定量法で、細胞表面に保持された受容体を検出することができる。
【0359】
実施例43:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(HA-D1-NLS)の発現、および作動物質による拮抗物質の用量反応作用の遮断、ならびに蛍光定量法による検出
マルチウェルプレートのウェルをポリ-L-オルニチンでコーティングし、50,000個の細胞を各ウェルにプレーティングした。この細胞に、HAエピトープタグを付加したD1-NLS受容体をコードするDNAをトランスフェクトし、作動物質SKF 81297(1マイクロモル濃度)を添加または非添加して、拮抗物質SCH 23390(1ナノモル濃度〜1マイクロモル濃度)で48時間処理した。これに続いて、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、細胞表面の受容体を、ラット抗HA抗体で検出し、次にFITCを結合させたヤギ抗ラット抗体で検出した。蛍光シグナルを蛍光定量法で検出した(Cytofluor)。結果は、1回の実験条件につき5個のウェルの平均である。SCH 23390には、受容体を細胞表面に保持する用量依存的な作用を示したので、同拮抗物質が細胞表面からの受容体の輸送を低下させることがわかる。作動物質を同時に添加すると、拮抗物質の作用は低下した(
図3)。したがって、作動物質の作用は、拮抗物質の作用を遮断することで検出可能であり、また蛍光定量法で作動物質の作用を定量することができる。
【0360】
実施例43b:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(HA-D1-NLS)の発現、および作動物質による拮抗物質の用量反応作用の遮断、ならびに蛍光定量法による検出
HEK細胞に、1個のウェルあたり50,000個の細胞となるように、ポリ-L-オルニチンでコーティングしたマルチウェルプレート上でHA-D1-NLSをトランスフェクトした。この細胞を、拮抗物質SCH 23390(0.5マイクロモル濃度)で48時間かけて処理した。作動物質SKF 81297(100ナノモル濃度〜1マイクロモル濃度)とSCH 23390を、インキュベーションの最後の1時間共存させた。続いて、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、細胞表面の受容体をラット抗HA抗体で、次にFITCを結合させたヤギ抗ラット抗体で検出した。蛍光シグナルを蛍光定量法で検出した(Cytofluor)。結果は、1回の実験条件につき5個のウェルの平均である。
【0361】
SCH 23390による処理は、HA-D1-NLSを細胞表面に保持した(
図4のバー1とバー6)。作動物質の短期添加は、SCH 23390の作用による用量依存的な遮断を招いた。インキュベーションの最後の1時間(作動物質の非存在下)で、細胞からSCH 23390を除去したところ、HA-D1-NLS受容体が細胞表面から33%失われた(
図4のバー5とバー6)。一方で、SCH 23390の存在が続いている間における、100ナノモル濃度の作動物質SKF 81297の添加により、受容体は細胞表面から66%失われ(
図4のバー4とバー6)、1マイクロモル濃度のSKF 81297の添加により、受容体は最大78%が失われた(
図4のバー2とバー6)。
【0362】
拮抗物質SCH 23390の作用は、細胞表面における受容体の保持を招いた。これは、同拮抗物質が、細胞表面からの受容体の輸送を低下させたことを意味する。作動物質の同時添加は、拮抗物質の作用を低下させ、細胞表面からの受容体の除去を用量反応的に加速させた。したがって相互作用化合物は、NLS含有受容体を細胞表面に保持する化合物の作用の遮断により検出することが可能であり、この作用を蛍光定量法で定量することができる。
【0363】
実施例44:10マイクロモル濃度の(+)ブタクラモール処理による、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の発現、ならびに放射リガンド結合による検出
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)で処理するか、または未処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロンでホモジナイズした。膜画分を遠心して回収後、35%ショ糖溶液上に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重膜画分を回収した。
【0364】
膜画分を対象に、[
3H]-SCH 23390と(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)を用いて放射リガンド結合アッセイ法を行い、特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベート後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。
【0365】
D1-NLSの拮抗物質処理は、細胞表面から離れて核に至る転位を妨げ、細胞表面に保持された受容体を放射リガンド結合アッセイ法で定量した(
図5)。
【0366】
実施例45:500ナノモル濃度の(+)ブタクラモール処理による、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の発現、ならびに放射リガンド結合による検出
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(500ナノモル濃度)で処理するか、または未処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロンでホモジナイズした。膜画分を遠心して回収後、35%ショ糖溶液上に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重膜画分を回収した。
【0367】
この膜を対象に、[
3H]-SCH 23390と(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)を用いて放射リガンド結合アッセイ法を行い、特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベート後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。結果を表4および表5に示す。
【0368】
(表4)対照の形質膜画分
【0369】
(表5)ブタクラモール処理した形質膜画分
NSB:非特異的結合 SB:特異的結合
(+)ブタクラモールによるD1-NLSの拮抗物質処理は、核への転位を妨げ、細胞表面に保持された受容体を放射リガンド結合アッセイ法で定量した。
【0370】
実施例46:100ナノモル濃度の(+)ブタクラモール処理による、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の発現、ならびに放射リガンド結合による検出
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(100ナノモル濃度)で処理するか、または未処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロンでホモジナイズした。膜画分を遠心して回収後、35%ショ糖溶液上に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重膜画分を回収した。
【0371】
この膜を対象に、[
3H]-SCH 23390と(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)を用いて放射リガンド結合アッセイ法を行い、特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベート後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。
【0372】
(+)ブタクラモール(100ナノモル濃度)による拮抗物質処理は、D1-NLSの核への転位を妨げ、細胞表面に保持された受容体を放射リガンド結合アッセイ法で定量した。ブタクラモール処理を行わない場合は、0.03 pmol/mgの受容体タンパク質が細胞表面の膜で検出され、またブタクラモール処理時には、0.09 pmol/mgの受容体タンパク質が細胞表面の膜で検出された。
【0373】
実施例47:上皮成長因子受容体(チロシンキナーゼ受容体)EGFR-GFPおよびEGFR-NLS-GFPの発現
HEK細胞に、EGFR-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトした。HEK細胞に、EGFR-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)もトランスフェクトし、24時間インキュベートした。
【0374】
EGFR-GFPは73%の細胞の細胞表面で発現されており、また12%の細胞で受容体は核内に認められた。EGFR-NLS-GFPは、91%の細胞で核内で発現されており、細胞表面で受容体を発現させていた細胞はなかった。EGF受容体の配列にNLSを組み入れることで、細胞表面から離れて核内に至る、確実な転位が誘導された。
【0375】
実施例48:低密度リポタンパク質受容体(LDL-GFP)の発現
HEK細胞に、LDL-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、24時間インキュベートした。この受容体は、67%の細胞で細胞表面で、また8%の細胞で核内に発現されていた。
【0376】
LDL受容体は、大半の細胞で細胞表面で発現され、多くの細胞では核内に受容体を含んでいない。
【0377】
実施例49:NLSを有するLDL受容体(LDL-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、LDL-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)、およびDsRED-NUCをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0378】
LDL-NLS-GFPは、22%の細胞では核で、また67%では細胞表面で発現していた。LDL受容体へNLSを組み入れたことで、受容体の核内への転位が誘導された。
【0379】
実施例50:エリスロポイエチン受容体(サイトカイン受容体)EPO-GFPおよびEPO-NLS-GFPの発現
HEK細胞に、EPO-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトした。HEK細胞にEPO-GPF(2マイクログラム)をトランスフェクトした。さらにこの細胞にDsRED-NUC(2マイクログラム)をトランスフェクトした。これらの細胞を48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0380】
EPO-NLS-GFPは、72%の細胞で核に位置しており、細胞表面に位置していた細胞は認められなかった。EPO-GFPは、79%の細胞で細胞表面に位置しており、28%の細胞で核における受容体の発現が認められた。EPO受容体の配列にNLSを組み入れたことで、細胞表面から離れて核内に至る転位が誘導された。
【0381】
実施例51:NLSを有するセロトニン輸送体(SERT-NLS-GFP)の発現とセルトラリン処理
HEK細胞に、SERT-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、セルトラリン(最終濃度500ナノモル濃度)で48時間処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をセルトラリンで処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0382】
SERT-NLS-GFPを発現する非処理細胞では、細胞表面に輸送体を発現していた細胞はなく、75%の細胞で、輸送体は核および細胞質で発現していた。
【0383】
セルトラリン処理により、69%の細胞で、SERT-NLS-GFP輸送体の細胞表面および細胞質における発現が認められ、また21%の細胞で、核および細胞質における輸送体の発現が認められた。したがって、セルトラリン処理により、細胞表面から離れて核に至るSERT-NLS-GFPの輸送が阻害された。
【0384】
実施例52:2種類のNLSを有するD1ドーパミン受容体(D1-NLS2-GFP)の発現と拮抗物質処理
HEK細胞に、D1-NLS2-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、(+)ブタクラモールまたはSCH 23390(1マイクロモル濃度)で48時間処理した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0385】
ブタクラモール処理により、81%の細胞で、受容体が細胞表面または細胞質内で認められ、また19%の細胞で、核における受容体の発現が認められた。SCH 23390処理により、78%の細胞で、受容体が細胞表面または細胞質内で認められ、また22%の細胞で、核における受容体の発現が認められた。
【0386】
非処理細胞では、89%の細胞で、核および細胞質における受容体の発現が認められた。
【0387】
したがって、ドーパミンD1拮抗物質処理により、表面を離れ核に輸送されるD1-NLS2-GFP受容体の転位が妨げられた。
【0388】
本発明は、本明細書に記載された態様の特徴に制限されず、特許請求の範囲に含まれる、あらゆる変更および修正を含む。
【0389】
参考文献:
【0390】
(表1)核局在配列の例(Jansら、2002を改変)
RAG-1=組換え活性化Gタンパク質1、RCP=赤色細胞タンパク質、RB=網膜芽腫タンパク質、STAT=signal transducer and activator of transcription(TF);CBP80=キャップ結合タンパク質、LEF=リンパ球エンハンサー因子、EBNA=エプスタイン-バーウイルス核抗原、IN=HIV-1インテグラーゼ、tTG=組織トランスグルタミナーゼ、ICP=感染細胞タンパク質(infected cell protein)。