【実施例】
【0014】
図1に示すように、遠心式圧縮機1は、ケーシング10、回転軸20、及び、インペラ30等から構成されている。具体的に、ケーシング10は、中空形状をなしており、その中空部内には、回転軸20が軸受を介して回転可能に支持されている。そして、回転軸20には、インペラ30が外嵌されている。
【0015】
インペラ30は、ハブ31、前側シュラウド32、及び、複数の羽根33から構成されている。ハブ31は、外径が回転軸方向
前方側から
後方側に向かうに従って漸次拡径するような、円環状に形成されており、その中心孔に回転軸20が嵌入されている。また、前側シュラウド32は、ハブ31の径方向外側に配置されており、内径が回転軸方向
前方側から
後方側に向かうに従って漸次拡径するような、円環状に形成されている。
【0016】
更に、羽根33は、ハブ31の外周面と前側シュラウド32の内周面との間において、回転軸20を中心として、放射状に介在されており、回転軸方向
前方側から
後方側に向かうに従って、回転軸径方向外側に向けて漸次湾曲するように形成されている。
【0017】
即ち、インペラ30には、ハブ31の外周面、前側シュラウド32の内周面、及び、回転軸
周方向に隣接する2つの羽根33によって囲まれる複数の空間が、回転軸20を中心として、放射状に形成されており、これらの空間は、流体Gが通過する流路34となっている。そして、流路34の前壁面34a及び後壁面34bは、前側シュラウド32の内周面及びハブ31の外周面によって形成されており、流路34全体としては、回転軸方向
前方側から
後方側に向かうに従って、回転軸径方向外側に向けて漸次湾曲するように形成されている。
【0018】
以上より、インペラ30は、回転軸20と共に回転することによって発生する遠心力を利用して、流体Gを、流路34の入口を構成する羽根33の前縁33a側から取り込んだ後、流路34の出口を構成する羽根33の後縁33b側から回転軸径方向外側に向けて吐出可能となっている。このとき、インペラ30内に取り込まれた流体Gは、流路34を通過する過程において昇圧される。
【0019】
これに対して、ケーシング10には、吸入通路11と、排出通路となるディフューザ12とが形成されている。
【0020】
吸入通路11は、インペラ30の回転軸方向
前方側(流体流れ方向上流側)に配置されており、ケーシング10の外部から吸い込んだ流体Gを、回転軸方向に沿って、インペラ30における羽根33の前縁33a側に案内する環状通路となっている。
【0021】
また、
ディフューザ12は、インペラ30の回転軸径方向外側(流体流れ方向下流側)に配置されており、回転軸径方向に延びる環状通路となっている。つまり、ディフューザ12には、環状の前壁面12a及び後壁面12bが形成されている。そして、ディフューザ12の環状入口12cは、前壁面12aの径方向内側端(流体流れ方向上流端)と後壁面12bの径方向内側端(流体流れ方向上流端)とによって形成されており、インペラ30における流路34の出口(羽根33の後縁
33b)と、回転軸径方向において対向している。
【0022】
以上より、
ディフューザ12は、インペラ30の流路34内で圧縮された流体Gを、前壁面
12aと後壁面
12bとの間に取り込んだ後、その取り込んだ流体Gを減速させながら、回転軸径方向外側に向けて排出するようになっている。
【0023】
なお、ディフューザ12は、所謂、羽根なしディフューザとなっており、ディフューザ内における圧力損失の抑制を図るためのディフューザ羽根を、有してはいない。
【0024】
従って、遠心式圧縮機1を
運転させると、回転軸20が回転し、この回転軸20と共にインペラ30も回転する。これにより、ケーシング10の吸入通路11
内に吸い込まれた流体Gは、回転するインペラ30の流路34内に取り込まれることによって圧縮された後、当該流路34内から吐き出される。次いで、インペラ30から吐き出された流体Gは、ディフューザ12内に取り込まれることによって、減速及び整流化された後、当該
ディフューザ12内から排出される。
【0025】
ここで、
図2に示すように、インペラ30においては、流路34の出口を構成する羽根33の後縁33bを、回転軸径方向内側に向けて円弧状に窪ませている。
【0026】
具体的に、後縁33bは、縁前端41及び縁後端42から縁中央部43に向かうに従って、回転軸径方向内側に向けて漸次湾曲するように形成されている。即ち、縁前端41及び縁後端42を、回転軸径方向において同じ位置に配置すると共に、縁中央部
43よりも回転軸径方向外側に配置している。
【0027】
なお、縁前端41は、後縁33bにおいて最も前側シュラウド32側に位置して、当該前側シュラウド32における内周面の下流端(流路34における前壁面34aの下流端)と接合されている。また、縁後端42は、後縁33bにおいて最もハブ31側に位置して、当該ハブ31における外周面の下流端(流路34における後壁面34bの下流端)と接合されている。そして、縁中央部43は、縁前端41と縁後端42との間の中間部に位置して、流路34を流れる流体Gの主流れが通過する部位となっている。
【0028】
以上より、縁前端41及び縁後端42における回転軸20の回転中心を中心とする半径は、縁中央部43における回転軸20の回転中心を中心とする半径よりも、長くなる。これにより、流路34の前壁面34aに沿って流れて縁前端41を通過する流体G、及び、流路34の後壁面34bに沿って流れて縁後端42を通過する流体Gは、流路34の中央部を流れて縁中央部43を通過する流体Gよりも、大きな遠心力が作用する。
【0029】
従って、後縁33bを通過する流体Gの全圧分布Pを、縁中央部43から縁前端41及び縁後端42に向かうに従って、漸次大きくすることができるので、インペラ30からディフューザ12内に吐き出された流体Gに対して、前壁面12a及び後壁面12bとの間で摩擦が起きて、圧力損失が生じても、その
ディフューザ12内を流れる流体Gの全圧分布を、一定(均一)にすることができる。この結果、遠心式圧縮機1における運転効率の向上を図ることができる。
【0030】
なお、上述した実施形態においては、後縁33bの凹形状を円弧形状としているが、後縁33bの凹形状は、縁前端41及び縁後端42が縁中央部43よりも回転軸径方向外側に配置されていればよく、例えば、後縁33bの凹形状を、
図3(a)乃至(d)に示すような、凹形状としても構わない。
【0031】
具体的に、
図3(a)に示した凹形状では、羽根33の後縁33bを、回転軸径方向内側に向けて円弧状に窪ませているものの、縁前端41と縁後端42とを、回転軸径方向においてずらして配置している。即ち、縁前端41及び縁後端
42を、縁中央部
43よりも回転軸径方向外側に配置するだけでなく、更に、縁前端41を縁後端42よりも回転軸径方向外側に配置させている。なお、その逆であっても良く、縁後端42を縁前端41よりも径方向外側に配置させても構わない。
【0032】
また、
図3(b)に示した凹形状では、羽根33の後縁33bを、回転軸径方向内側に向けて円弧状に窪ませているものの、縁中央部43のみを回転軸径方向内側に向けて窪ませている。即ち、縁前端41及び縁後端
42を、回転軸径方向において同じ位置に配置すると共に、縁中央部
43よりも回転軸径方向外側に配置している。
【0033】
このように、縁中央部43のみを回転軸径方向内側に向けて窪ませる場合には、
図3(c),(d)に示すように、縁中央部43を、矩形状やくさび状に切り欠いても構わない。
【0034】
更に、上述した実施形態においては、羽根33の後縁33bを凹形状とすることにより、縁前端41及び縁後端42を通過する流体Gの全圧を、縁中央部43を通過する流体Gの全圧よりも高くするようにしているが、これに加えて、後縁33bの厚さを、縁前端41側及び縁後端42側と、縁中央部43側とにおいて変えることにより、更なる全圧差を発生させても構わない。
【0035】
即ち、
図4に示すように、後縁
33bの厚さを、縁中央部43から縁前端41及び縁後端42に向かうに従って、漸次薄くする。これにより、羽根33の後縁33bにおいては、厚さが薄くなるに従って、圧力損失が抑制されるため、縁前端41及び縁後端42を通過する流体Gの全圧を、縁中央部43を通過する流体Gの全圧よりも、より高くすることができる。
【0036】
従って、ディフューザ12内に吐き出された流体Gに対して、前壁面12a及び後壁面12bとの間で摩擦が起きて、大きな圧力損失が生じても、その
ディフューザ12内を流れる流体Gの全圧分布を、一定(均一)にすることができる。