特許第6168708号(P6168708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キングス・カレッジ・ロンドンの特許一覧

特許6168708歯内サンプル中の生存細胞の存在を検出する方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168708
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】歯内サンプル中の生存細胞の存在を検出する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20170713BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20170713BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20170713BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20170713BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20170713BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20170713BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20170713BHJP
   G01N 21/76 20060101ALN20170713BHJP
   G01N 21/70 20060101ALN20170713BHJP
   G01N 21/66 20060101ALN20170713BHJP
【FI】
   G01N33/50 G
   A61B1/00 300D
   A61B1/24
   G01N33/52 Z
   G01N21/64 F
   G01N21/78 C
   C12Q1/04
   !G01N21/76
   !G01N21/70
   !G01N21/66
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-525431(P2014-525431)
(86)(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公表番号】特表2014-524574(P2014-524574A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】EP2012065873
(87)【国際公開番号】WO2013024088
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年8月13日
(31)【優先権主張番号】1114117.3
(32)【優先日】2011年8月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513200313
【氏名又は名称】キングス・カレッジ・ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クック、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】コラー、ギャリット
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】フォスキ、フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】マノッチ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】フェスティ、フレデリック
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−236914(JP,A)
【文献】 特開平01−107155(JP,A)
【文献】 特公昭57−026485(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0039226(US,A1)
【文献】 特表2007−537776(JP,A)
【文献】 特表2007−508065(JP,A)
【文献】 米国特許第06019605(US,A)
【文献】 特許第3244273(JP,B2)
【文献】 DELGADO RONAN J. R.,JOURNAL OF ENDODONTICS,米国,LIPPINCOTT WILLIAMS & WILKINS,2010年 8月 1日,V36 N8,P1389-1393
【文献】 PINI ROBERTO,LASERS IN SURGERY AND MEDICINE,米国,WILEY-LISS,1989年 1月 1日,V9 N4,P358-361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/50
A61B 1/24
C12Q 1/04
G01N 21/64
G01N 21/78
G01N 33/52
G01N 21/66
G01N 21/70
G01N 21/76
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の歯の歯内窩洞内又は歯内窩洞から、歯内サンプル中の生存細の存在を検出する方法であって、
生存細胞指を歯内サンプルとともに所定期間、インキュベートする工程と、
指標結果が得られるように、前記生存細胞指標に関連するパラメータの変化について測定及び検出の少なくとも一方を行う工程と、
を備え、前記パラメータの所定の変化を表す指標結果が前記歯内サンプル中の生存細を示すものである、方法。
【請求項2】
A)前記インキュベートする工程が生存細胞指標を歯内窩洞に加えることにより該歯内窩洞内において実施され、前記測定及び検出の少なくとも一方を行う工程が該歯内窩洞内で実施されるか、又は、
B)前記インキュベートする工程が生存細胞指標を前記歯内窩洞に加えることにより該歯内窩洞内において実施され、前記測定及び検出の少なくとも一方を行う工程がex vivoで実施されるか、又は、
C)前記インキュベートする工程が前記歯内窩洞から採取された歯内サンプルとともに前記生存細胞指標をインキュベートすることによりex vivoで実施され、前記測定及び検出の少なくとも一方を行う工程がex vivoで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インキュベートする工程が生存細胞指標を前記歯内窩洞に加えることにより該歯内窩洞内において実施され、前記測定及び検出の少なくとも一方を行う工程が該歯内窩洞内で実施され、さらに該測定及び検出の少なくとも一方を行う工程が、検出プローブを該歯内窩洞に挿入することと、指標結果が得られるように、前記生存細胞指標に関連するパラメータを検出すること又は該生存細胞指標に関連するパラメータに関するデータを検出器に伝送することとを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インキュベートする工程が生存細胞指標を前記歯内窩洞に加えることにより該歯内窩洞内において実施され、前記測定及び/又は検出する工程がex vivoで実施され、前記方法が前記生存細胞指標を前記歯内サンプルとともに前記歯内窩洞内においてインキュベートした後に、該歯内窩洞からインキュベートした前記サンプルの少なくとも一部を取り出すことと、指標結果が得られるように、取り出した前記一部に対して、好適な基板上で又は好適な容器内で前記生存細胞指標に関連するパラメータの測定及び検出の少なくとも一方を行うこととを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記歯内窩洞からインキュベートした前記サンプルの少なくとも一部を取り出す工程を、吸収性ペーパーポイントを用いて達成して、任意で前記基板が該吸収性ペーパーポイントである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インキュベートする工程が前記生存細胞指標を前記歯内窩洞から採取された歯内サンプルとともにインキュベートすることによりex vivoで実施され、前記測定及び検出の少なくとも一方を行う工程がex vivoで実施され、前記方法が、前記生存細胞指標とともにインキュベートする歯内サンプルが採取されるように、前記歯内窩洞を、吸収性ペーパーポイントを用いて採取、擦過又はクリーニングすることと、前記吸収性ペーパーポイントを前記生存細胞指標の溶液中に浸すことにより前記歯内サンプルを該生存細胞指標とともにインキュベートすることとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記生存細胞指標が発光媒介性指標であり、該生存細胞指標に関連するパラメータが発光であり、前記測定及び検出の少なくとも一方を行う工程が、発光について測定及び検出の少なくとも一方を行う工程である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記発光が蛍光である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生存細胞指標が、生存細胞の非存在下で蛍光性ではない不活性形態をとり、生存細胞の存在下では蛍光性である活性形態をとる蛍光色素を含み、検出及び測定の少なくとも一方を行う工程により、サンプル中の蛍光を検出して、指標結果を得ることができる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
蛍光測定工程が共焦点蛍光微小内視鏡検査を用いて行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光色素を最大10分間前記歯内サンプルとともにインキュベートする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記生存細胞指標が、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、カルセイン、メチレンブルー及びProSense 750の1つ又は複数から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記生存細胞指標がカルセイン−AMである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
患者の歯における歯内窩洞内の歯内サンプル中の生存細の存在を検出する装置であって、
前記歯内窩洞に生存細胞色素指標を適用することにより、歯内サンプルが前記歯内窩洞内でインキュベートされ、
前記装置は、外部の分光計又は光電子倍増管を含む検出ユニットに連結された光ファイバーデバイスを有する手で操作できる検出プローブを備え、且つ、前記色素指標の活性形態用の励起シグナルを提供するための発光源を備える
装置。
【請求項15】
前記光ファイバーデバイスが、100μmから500μmの直径を有する単一ファイバーコアを備え、
前記発光源が485〜500nmで放射する
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記歯内サンプルは、歯内窩洞にあるか又は歯内窩洞から採取され、前記歯内窩洞に由来の物を含む流体又はサンプルであり、前記歯内窩洞は、歯の歯冠に穴を開けること、前記歯から歯髄物、神経物及び血管と細菌とを取り除き、象牙質により固定された窩洞を形成することにより、歯内療法中の前記歯の中に形成された窩洞である
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記指標結果が前記サンプルの細胞培養なしに得られる
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
歯内治療プロセス中の殺菌の治療エンドポイントを決定するための方法である
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、歯内イメージングの分野に関する。より具体的には、本発明は歯、より具体的には歯根管の内部のイメージング、定量的測定及び/又はデータの回収を行う方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯内療法又は歯根管治療は、歯の感染、又はそれ以外に歯が感染、亀裂若しくは齲食に曝されている場合の歯髄室への若しくは歯髄室ヘと向かう(歯髄室内への又は歯髄室付近への)拡大からの予防又は回復の選択治療である。
【0003】
典型的には歯髄質を冒す歯根管又は歯内の細菌感染により、多くの場合で歯髄室又は歯内室と歯根管構造とを冒す有痛性プロセスである歯髄炎プロセスが引き起こされる。このことが歯の感染をもたらし、多くの場合で根尖又は神経域を歯の隣接する軟組織及び硬組織に繋げる他の歯根管を越えて病変がへと拡大し、これらの周辺組織内で膿瘍として現れる。歯構造内及び歯の根尖部から出た感染性及び炎症性の細菌液が、歯根の根尖を通って周辺の歯周組織へと漏出し、これにより関連する組織変化を伴う重度の炎症が引き起こされる。治療介入を行わなければ、歯は死滅し、摘出する必要があり、感染が周辺組織へと拡大することで、頭頸部領域において生命を脅かす可能性のある膿瘍が生じる。歯根管治療(歯内療法)はこのような感染の治療及び歯の構造的完全性の保持を可能にする。
【0004】
歯根管治療の目的は、歯髄及び生存組織と、任意の細菌性生物又はバイオフィルムとを全て完全に取り除き、歯髄窩洞を充填することにより歯根管を封止することである。これにより、コンポジットファイリング又は人工クラウン等の確立された修復オプションを用いて歯の歯冠部を安全に修復することによって、失活歯を構造的かつ機能的に保持することが可能となる。
【0005】
患者に対する歯根管治療において歯科医が行う通常の処置は、歯冠に穴を開けることにより歯を開放し、歯髄(血管、神経組織及び軟部組織を含み、通常歯根管治療を行う歯において感染状態にある)を取り除き、歯根管をクリーニング及び(例えば徐々に大きい(an incremental series)小型ファイルを用いて)拡大することで、全ての感染物質を取り除き、歯根管を効率的に充填するのに十分大きくすることである。複数の歯根が存在する場合、それぞれを特定、クリーニング及び治療しなければならない。さらに、歯根は全体構造に関して曲部(curvature)及び副根管を含む複雑な形態をとる。通常、歯髄質の除去及び根管の拡大は初回通院時に行なわれる。通常、抗菌剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム)を歯内窩洞に加え、残存する細菌体(microbial burden)の除去及び死滅を増進する。任意に、歯を一時的に充填し閉塞して、歯内窩洞のクリーニングを再開する2回目の通院時に再び開放する。根管充填材を歯内窩洞に挿入して、十分に適合させた充填物、例えばガラスアイオノマーセメント及び任意にクラウンで歯を封止して、再感染を予防するのが理想である。
【0006】
根管治療の失敗の最も一般的な原因は、技量不足(例えば根管の見逃し又は不適切なアクセス窩洞封止)又は医原性汚染を別とすると、根管腔に及び歯の歯尖に残存する細菌である。該細菌は歯根内部の、特に残存する組織又は細菌を内包し得る根管の歯尖領域内のあらゆる側面を可視化又はアクセスすることが困難であることに起因して生じ得る。結果として、歯科医師は感染した象牙質を取り除くのに、潜在的に不必要な時間及びコストを伴って根管を余分に調製するか、又は再感染のリスクを伴う歯構造内の相当量のバイオバーデン(bio-burden)を残して過小に調製する可能性がある。イングランド及びウェールズだけでも、2003年に百万件を超えるRCT(根管治療)がNHS手術において行われた(非特許文献1)。しかし依然として、歯内根管処置のおよそ15%〜25%が失敗している。したがって、多くの場合で専門家の介入が必要となり、治療対象の歯の予後が劇的に悪くなることに加えて、多くの場合で持続感染に起因してこれらの処置を繰り返す必要があり、多大な時間及びコストの負担がかかる。根管腔の完全な消毒が根管治療の良好な転帰見込みを改善することが実証されていることから(44%に対して80%)、根管内容物の微生物採取が細菌含量を決定する手がかりとなり得る。しかしながら、この処置は(細胞培養検査室における微生物分析が必要とされることから)処置時間に更に数日を要し、さらに細菌培養物は、得られたサンプルに存在する細菌を特定するにすぎず、また培養可能な材料に限定されるため、偽陰性となる場合があり、本質的に欠陥がある。このことにより、培養物の結果が陰性であるにもかかわらず充填の時点で感染状態のままであることから最終的に失敗となる根管が生じる。
【0007】
歯内療法、除菌及びイメージングの分野において多くの特許公報が存在する。
【0008】
特許文献1に、機器及び洗浄液では到達することが難しい根管、典型的には根管の歯尖部内に残存する細菌及びバイオフィルム集団を放射線により根絶する方法が記載されている。近赤外線放射の横方向への分散を生じるヘッドを備える光学プローブが、高温先端部(hot-tip)の問題及びこれまでのレーザアブレーション(ablatement)方法が抱える他のこのような問題を生じることなく、細菌及びバイオフィルムの熱分解による根絶を可能にする。しかしながら、この装置は高価であり、プローブが適切な根管に挿入されなければ有効とはならない。さらにこの装置は治療の前後で生菌が実際に存在しているかを評価するものではない。
【0009】
特許文献2に、誘導蛍光イメージング又は誘導蛍光分光法を用いた根管をイメージングする方法が記載されている。歯内治療を行う際、歯科医は歯内の歯根(及び根管)の構造、特に数及び形状を確定するために歯のX線画像を入手することができる。X線に伴う問題は、根管の歯尖部(構造の複雑性が存在していると考えられる部分)では、顎骨によりこのような画像が一部不明瞭になることである。装置は、細長い器具と、紫外光及び青色光を伝え、根管内に蛍光を誘導する光ファイバーとを備える。蛍光が光ファイバーによって捕捉され、戻ってくる光をモニタリングするセンサに伝送されて、根管構造の画像を構築する。ここではプローブを使用して細菌の有無を判断することは開示されておらず、プローブ及びセンサは、蛍光を励起及び検出するのに十分な放射線を送達する必要があることから複雑なキットである。
【0010】
歯内療法中に歯内腔にバイオフィルム、細菌細胞、又は他の細胞若しくは細胞残屑が存在するかを判断する迅速試験(chair-side test)が必要とされている。
【0011】
本発明者らは、細胞、特に生存細胞を特定する方法及び装置と、歯科医院において歯内療法中にその場で使用される、調製段階での(preparation-phase)治療エンドポイントを達成及び特定する方法とを考案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2005/102033号
【特許文献2】国際公開第95/08962号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Dental Practice Board, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
歯内療法の改善が依然として必要とされている。
【0015】
本発明の目的は、歯内の物質/流体/組織又は歯内窩洞での細胞、特に生存細胞の存在を特定する装置及び方法を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、上記の目的に係る物質(単数又は複数)を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、根管における生菌の存在の評価、並びに歯内細菌感染の診断及び治療に使用される装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、歯内サンプル中の細胞又は細胞性物質、特に生存細胞又は生存細胞物質の存在を検出する方法であって、細胞指標(好ましくは生存細胞指標)を歯内サンプルとともに所定期間インキュベートする工程と、指標結果が得られるように、細胞指標(又は生存細胞指標)に関連するパラメータ(又はパラメータ集合)の変化を測定及び/又は検出する工程とを含み、パラメータの所定の変化を表す指標結果がサンプル中の細胞又は細胞性物質(特に生存細胞又は生存細胞物質)を示すものである、方法が提供される。
【0019】
本発明の第2の態様では、歯内感染症又は歯内感染症の再発の診断、予防及び/又は治療に使用される細胞指標(特に生存細胞指標)が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の装置及び方法に記載される指標、例えば蛍光色素を用いることにより、歯内腔又は歯内流体においてその存在が根管治療の失敗の主な理由である細菌及び他の細胞組織又は生存細胞若しくは非生存細胞(特に生存細胞)の有無を、低コストで迅速かつ容易に利用可能な手段によって特定することができる。それにより、歯科外科医による余分な調製及び余分な治療又は専門家によって行われる再治療の時間、コスト及び潜在的な有害性を伴うことなく再感染のリスクを最小限に抑えて、要求される治療レベルを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】3つの実施方法による本発明の実施形態の実行を概略的に示すフローチャートである。
図2】次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄手順前((a))及び洗浄手順後((b)及び(c))のカルセイン−AM指標による歯根のインキュベーション後の根尖から1mmの一点共焦点蛍光微小内視鏡画像を示す図である。
図3】本発明による1つの実施例群における1% NaOCl溶液による洗浄の前後での分光光度測定値に関する波長に対する蛍光のグラフを示す図である。
図4】バックグラウンド蛍光に関して画像化したペーパーポイント((a))、次亜塩素酸ナトリウムによる反復洗浄後に観察されたペーパーポイント((b))、及び採取後の染色の後に観察されたペーパーポイント((c))の共焦点蛍光微小内視鏡画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、歯内流体又は歯内窩洞における生細胞若しくは死細胞又は細胞性物質(細胞外物質を含む)、特に細菌又は他の生存細胞若しくは生存細胞物質の存在を検出する、改良された方法、装置及び組成物を提供するものであり、該方法、装置及び組成物は、歯の膿瘍、歯の膿瘍の再発のex vivoでの迅速試験及び/又は(予防的)診断、予防若しくは治療、又は歯内療法として有用であり得る。このような迅速試験は、例えば根管治療終了時の根管における細胞性内容物(特に生存細胞性内容物)の存在及び任意に残存を迅速に評価するのに有用であり得る。
【0023】
本発明の方法は、歯内サンプル中の生存細胞又は生存細胞物質の存在又は生存性の検出を含むのが好ましい。歯内サンプル中の生存細胞の検出及び/又は生存細胞の量、集合若しくはタイプの測定は、歯内治療中の(更なる)クリーニングの必要性の特定、歯内治療プロセス中の治療エンドポイントの決定、歯内窩洞における感染の存在及び任意に残存の特定、並びに歯内窩洞における感染のタイプの特定を含む多くの目的に有用であり得る。本発明の方法(並びに装置及び組成物)には、歯内療法中の歯内窩洞の清掃時の療法エンドポイントの特定に特に有用性が見出されており、再感染のリスクが最小限に抑えられるように、生細胞物が全て排除された時点を特定することができる。本発明の方法は、生存細胞指標を歯内サンプルとともに(通常、所定期間)インキュベートする工程と、指標結果が得られるように、生存細胞指標に関連するパラメータの変化を測定及び/又は検出する工程とを含み、パラメータの変化(通常、所定の変化)を表す指標結果はサンプル中の生存細胞又は生存細胞物質を示すものである。
【0024】
本発明の方法には3つの主実施形態が存在し、それらを以下でより詳細に論考する。
【0025】
第1の主実施形態では、本方法のインキュベート工程が生存細胞指標又はその成分を歯内窩洞に加えることにより歯内窩洞内において実施され、測定及び/又は検出工程が歯内窩洞において実施される。
【0026】
第2の主実施形態では、インキュベート工程が生存細胞指標又はその成分を歯内窩洞に加えることにより歯内窩洞内において実施され、測定及び/又は検出工程がex vivoで、すなわち体外及び歯内窩洞外で実施される。
【0027】
第3の主実施形態では、インキュベート工程が生存細胞指標又はその成分を歯内窩洞から採取された歯内サンプルとともにインキュベートすることによりex vivoで実施され、測定及び/又は検出工程がex vivoで実施される。
【0028】
「歯内療法」という用語は、本明細書で使用される場合、根管治療を伴うプロセスに類似する又はプロセスの一部である。通常、歯内療法は、歯から(歯髄及び生物質を)切削すること、歯を清掃して(再感染を予防するために)細菌物又は宿主生存細胞物を根絶すること、根尖の開口部を例えば根管の充填により閉塞すること、及び歯の保存等のために歯を充填すること(任意に歯の歯冠修復を与えること)による、感染しているとして特定された歯の治療を含む。
【0029】
「歯内流体」又は「歯内サンプル」は、本明細書で使用される場合、歯内窩洞にあるか又は歯内窩洞から採取され、歯内由来の物(細胞物又は感染物若しくは炎症物である)又は歯内窩洞由来の物を含む、流体又はサンプルである。
【0030】
「歯内窩洞」は、本明細書で使用される場合、歯内療法中の歯内に存在する又は形成される窩洞である。通常、歯内窩洞は、歯冠に穴を開けること、歯から歯髄物、神経物及び血管と細菌とを取り除き、象牙質により画定された窩洞を形成することにより形成(又は拡張)される。通常歯内窩洞には、歯冠部と、各根管において根管の根尖に最も近い根管の3分の1にあたる根尖部とを含む幾つかの部分が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「生存細胞」は、生きている及び/又は機能を複製することが可能である及び/又は機能を生じることが可能である細胞を意味する。通常、生存細胞は真核細胞又は原核細胞であってもよく、真核細胞は主に宿主細胞である。「生存細胞物質」には、生存細胞に関連する又は生存細胞由来の構造又は化合物、例えばバイオフィルム構造(例えば生存バイオフィルム)内の構成多糖類及び酵素等の細胞外のこのような構造又は化合物が含まれる。
【0032】
本発明の方法は、歯内サンプルと共に生存細胞指標のインキュベーションを必要とし、該生存細胞指標は生存細胞又は生存細胞集団の存在下で検出可能及び/又は測定可能な変化を呈することが可能なパラメータ(指標パラメータ)に関連する。このようなパラメータの測定可能又は検出可能な変化は、その測定及び/又は検出が指標結果(例えば生存細胞の有無、生存細胞の所定の閾値での有無、生存細胞の存在のリスク因子、生存細胞集団の細胞数(population)又は濃度、生存細胞の存在及び任意で生存細胞のタイプとすることができる)を表すようなものとすることができる。指標結果は生存細胞の存在(すなわち所定の検出閾値を超える集団における生存細胞の存在)又は生存細胞の非存在(すなわち所定の検出閾値に満たない生存細胞の存在)のいずれかを表す二元結果であることが好ましい。
【0033】
指標の指標パラメータ又は指標特性は例えば、指標を生存細胞の非存在と比較して存在下において歯内サンプル中でインキュベートする場合に検出可能及び/又は測定可能な変化が存在する任意の好適なパラメータとすることができる。指標パラメータは例えば、温度(熱変化により示される)、pH(pHの変化により示される)、導電率(導電率の変化により示される)、酵素活性(例えばプロテアーゼ活性)又は分光光度波長(例えば或る特定の吸収発光波長の有無により示される)とすることができる。
【0034】
しかしながら、好ましくは指標は発光媒介性であり、指標に関連するパラメータ又は特性は発光又は或る特定の発光挙動(例えば発光の波長)である。発光(luminescence)は例えば、光ルミネセンス(フォトルミネッセンス)(例えば蛍光又はリン光)、化学発光(ケミルミネッセンス)、生物発光(バイオルミネッセンス)、電気発光(エレクトロルミネッセンス)又は応力発光(メカノルミネッセンス)とすることができる。
【0035】
特定のタイプの細胞指標に関する特定の実施形態が本明細書で論考されているが、その内容から必ずしも細胞指標は言及されるものに限定されるものではなく、本明細書に記載の別のタイプの生存細胞指標に置き換えることができる。
【0036】
指標は、上記の指標効果を与えるために(指標に関連するパラメータの検出及び/又は測定により指標結果がもたらされる)、生存細胞(又は関連する生存細胞物)の非存在下で第1のパラメータ挙動を呈する第1の形態と、生存細胞(又は関連する生存細胞物)の存在下で第2のパラメータ挙動を呈する第2の形態とを含むのが好ましい。第1のパラメータ挙動及び第2のパラメータ挙動は、測定可能又は検出可能に異なるもの、例えば測定可能な温度の上昇(温度が指標パラメータである)、測定可能若しくは検出可能なpH変化(pHが指標パラメータである)、測定可能若しくは検出可能な導電率の変化(導電率が指標パラメータである)、測定可能若しくは検出可能な酵素活性若しくは集団若しくは形態の変化(例えば指標パラメータが生存細胞活性に関与する酵素、例えば細胞外酵素の存在である)、測定可能若しくは検出可能な分光光度特性の変化、又は特に測定可能若しくは検出可能な発光の変化である。
【0037】
指標は、指標結果を生成するために、生存細胞(又は生存細胞に関連するシグナル若しくは分子)との相互作用が可能であり、第1のパラメータ挙動及び第2のパラメータ挙動を呈することが可能である単一成分を含んでいても、又はともに生存細胞(又は生存細胞に関連するシグナル若しくは分子)との相互作用が可能であり、第1のパラメータ挙動及び第2のパラメータ挙動を呈することが可能である2つ以上の成分を含んでいてもよい。例えば後者の場合、指標は、生存細胞と相互作用することが可能であり、好ましくは生存細胞の非存在下で休止形態及び好ましくは生存細胞の存在下で活性形態をとる、第1の成分と、指標パラメータ及び/又は指標パラメータの変化を呈することが可能であり、第1のパラメータ挙動を有する第1の形態及び第2のパラメータ挙動を有する第2の形態をとる、第2の成分とを含み得る。該第2の成分は第1の成分の活性化形態の存在下で第2の形態をとり、第2のパラメータ挙動を呈することにより、生存細胞の存在がパラメータ挙動の変化を呈することができる。しかしながら、指標の単一成分が、生存細胞と相互作用することが可能であり(例えば生存細胞の基質又は生存細胞成分であり)、好ましくは(生存細胞の非存在下で)休止形態及び(活性細胞の存在下で)活性化形態をとり、休止形態及び活性形態に関連する第1のパラメータ挙動及び第2のパラメータ挙動を呈することが可能である(例えば生存細胞の有無に関連する異なるパラメータ挙動を呈する)ことが好ましい。
【0038】
任意に、指標が2つ以上の成分を含む場合、第1の成分は、in vivoで、例えば歯内窩洞で使用することができ、歯内窩洞において歯内サンプル中でインキュベートし(生存細胞の存在下で第1の成分の活性化形態をとる)、第2の成分は、同時に若しくは後で添加してin vivoで、又は、インキュベートしたサンプルを採取して、インキュベートしたサンプルを第2の成分とともにインキュベートすることによりex vivoで使用することができ、ここで活性化した第1の成分の存在により、第2の成分により呈されるような指標パラメータの変化が引き起こされ得る。これは第1の成分が歯内窩洞での使用に適しているが、第2の成分は患者内又は患者上での使用に適していない場合に有用な実施形態であり得る。しかしながら上述のように、指標は、生存細胞と相互作用することが可能であり、かつ生存細胞の有無に関連するパラメータを呈することが可能である単一成分を含むことが好ましい。
【0039】
指標又はその成分は、例えば細胞表面受容体との反応若しくは相互作用により、酵素触媒反応により、DNA(例えば原核性DNA)若しくは細胞タンパク質との(例えば相互作用による)複合体の形成により、又は生細胞内への集積により生存細胞と相互作用することができ、この相互作用により生細胞を識別することが可能となり得る。
【0040】
上述のように指標は発光媒介性であるのが好ましい。指標結果は、歯内サンプル中の生存細胞の存在による或る特定の発光挙動(例えば発光、所定の閾値を超える発光の強度又は或る特定の異なる発光の波長)の消失により、又は好ましくは生存細胞の存在による或る特定の発光挙動(例えば発光、所定の閾値を超える発光の強度又は或る特定の異なる発光の波長)の活性化により表され得る。
【0041】
そのため本発明の方法に使用される指標は、生存細胞の非存在下で第1の発光挙動(例えば無発光、或る特定の若しくは所定の閾値強度に満たない発光、及び/又は異なる波長での発光)を呈する第1の形態、及び第2の発光挙動(例えば発光、或る特定の若しくは所定の閾値強度を超える発光、及び/又は異なる波長での発光)を呈する第2の形態をとる発光成分であるか又は該発光成分を含むことが好ましい。
【0042】
第1の形態及び第2の形態は、生存細胞若しくはその成分の存在下で化学反応(例えば保護基の除去)を示し得るか、又は生存細胞若しくはその成分の存在と非存在とで2つの立体構造間の移行を示し得る。
【0043】
指標はリン光媒介性(すなわち指標は生存細胞の有無で異なる検出可能及び/又は測定可能なリン光又はリン光の変化を呈することが可能であるとする)、又は好ましく蛍光媒介性(すなわち指標は生存細胞の有無で異なる検出可能及び/又は測定可能な蛍光又は蛍光の変化を呈することが可能であるとする)とすることができる。
【0044】
任意に指標は化学発光性とすることができる。化学発光性とは、指標が化学反応に起因して発光を呈することができることを意味する。
【0045】
上述のように、指標は好ましくはフォトルミネセンス媒介性、より好ましくは蛍光媒介性である。したがって、指標は該指標が第1の蛍光挙動(例えば無蛍光、所定の閾値強度に満たない蛍光、又は特定の波長での蛍光)を呈する第1の形態、及び該指標が第2の蛍光挙動(例えば蛍光、所定の閾値強度を超える蛍光、又は特定の波長での蛍光)を呈する第2の形態をとることが好ましい。好ましくは、蛍光媒介性指標は、蛍光形態及び非蛍光形態をとることにより生存細胞の有無を示す。任意に、生存細胞の存在が指標の蛍光を消失させてもよいが、生存細胞又はその成分の存在が指標の蛍光を活性化するのが好ましい。
【0046】
任意に指標は、インキュベートするサンプル中での生存細胞集団の非存在及び存在によって、それぞれ第1の(非蛍光)形態と第2の(蛍光)形態との間で立体構造をとることができる。これには、例えばその場で使用する場合、生存細胞を死滅させる組成物を添加することができ、指標が集団枯渇を示すか又は所望のゼロ集団エンドポイントを達成することができるという潜在的利点がある。しかしながら、生存細胞の非存在下での第1の(非蛍光)形態から生存細胞の存在下での第2の(蛍光)形態への指標の移行は単一原因による移行であるのが好ましい。このようにして、サンプル中での生存細胞の存在を、この記録を喪失することによる偽陰性結果のリスクを伴わずに記録することができる。
【0047】
発光媒介性指標は、第1の(例えば休止又は非蛍光)形態から生存細胞又はその成分の存在下での第2の(例えば活性又は蛍光)形態への移行を可能にする単一成分又は色素であるのが好ましい。
【0048】
指標(又は色素、これは可視スペクトル又はUV光若しくはIR光を放射することが可能な成分を含む指標において指標と区別なく使用することができる)は、例えば生存細胞の酵素媒介性反応(例えば指標が第1の休止形態でカルセイン−AM、又は5FAM−GPLGPペプチド及びテトラゾリウム色素等のFRETペプチドとすることができる場合)、生存細胞のDNA若しくはタンパク質の複合体形成作用、DNA挿入作用(例えば指標がDAPI(Hoechst 33258)とすることができる場合)及び/又は生細胞内に集積する効果(この効果はシグナル強度を増大させることによるものであり得る)等のような生存細胞と非生存細胞とを識別することができる任意の好適な手段により、第1の形態から第2の形態へと変換するように、生存細胞又はその成分と相互作用することができる。
【0049】
最も好ましくは、in vivoで使用する(例えばサンプルを歯内窩洞でインキュベートする)場合、指標は好ましくは生体適合性であり、より好ましくは生体色素であり、これは色素又は指標自体が細胞死を引き起こさないことを意味する。
【0050】
好ましい実施形態では、指標は生細胞を標的とするフルオロフォアを含み、好ましくは下記の指標(活性、すなわち蛍光性の第2の形態又は不活性、すなわち非蛍光性の第1の形態のいずれかを表す)の1つ又は組合せから選択することができる:DAPI、EBFP、Hoechst 33258色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、硫酸キニーネ、4−メチルウンベリフェロン、5−FAM、カルセイン、DiO、フルオレセイン、FLUO−3、FLUO−4、EGFP、GFP、オレゴングリーン514、ローダミングリーン、SYBRゴールド、SYBRグリーン、SYTO 9、SYTOXグリーン、YFP、LIVE/DEAD BacLight、アレクサフルオル555、Cy3、臭化エチジウム、エチジウムホモダイマー−1、ヨウ化プロピジウム、レゾルフィン、RFP、Rhod−2、ローダミンレッド、SYTOXオレンジ、TAMRA、テキサスレッド、TRITC、アロフィコシアニン、Cy5、DRAQ5、SYTOXレッド、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、メチレンブルー又はProSense 750。
【0051】
指標の活性形態が上述されるものである場合、指標は生存細胞の存在下で活性形態へと変換可能なその不活性プローブ形態を含むことが理解される。活性形態指標であるカルセイン等の多くの例では、指標はカルセイン−AM等の前駆体形態を必要とするか又は活性形態が5FAM−ペプチド−TAMRA(例えばペプチド長がおよそ20アミノ酸)等のペプチドで消失してもよい。ここで生存細胞の酵素媒介性の切断により活性フルオロフォアが放出され、このようにして生存細胞の存在が示される。
【0052】
(活性形態の)指標の好ましい例は、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、カルセイン、メチレンブルー及びProSense 750である。
【0053】
特に好ましい実施形態では、指標はカルセイン(好ましくは第1の非蛍光前駆体形態のカルセイン−AM)である。
【0054】
更なる実施形態では、指標を歯内サンプル中で15分以下、より好ましくは10分以下、更により好ましくは5分以下、最も好ましくは2分以下インキュベートする。
【0055】
指標組成物は、必要に応じて、採用される方法の特定の実施形態に好適な任意の形態で提供することができる。例えば指標は、歯内サンプル若しくは窩洞に直接添加するのに適切な所定の濃度で溶質中の指標が予め充填されたアンプル内に、又は使用の直前に希釈する濃縮溶液として、又は予め装填されたシリンジとして、水との溶液若しくは生理食塩水溶液用に調製済みの粉末として提供され得る。一実施形態では、指標はペーパーチップに含浸又は埋包して提供され得る。
【0056】
指標は所望の指標効果を発揮するのに適した濃度で溶液中で用いられるのが好ましい。例えば、特にカルセイン−AMが指標である場合、指標は好ましくは10nM〜10mMの範囲の濃度で用いられ得る。例えば歯内窩洞においてインキュベートするのに必要とされ得る指標溶液の容量は、根管の容量に近似させる、好ましくは10μl〜500μlの範囲であるのが好ましい。
【0057】
検出工程は指標の所望のパラメータを検出することが可能な任意の工程とすることができる。指標が蛍光媒介性である本発明の好ましい実施形態では、検出工程は蛍光検出工程又は蛍光測定工程であり、任意の好適な装置、例えば分光計(例えば共焦点蛍光分光計等の蛍光分光計等)を用いて又は共焦点蛍光微小内視鏡検査等の蛍光微小内視鏡検査(その場での検出の場合)により実施することができる。
【0058】
上記で論考された本発明の更なる態様では、本発明の方法に使用される装置が提供される。該装置は下記で論考される本発明の方法の3つの主実施形態のそれぞれに適切に適合することができる。
【0059】
これにより3つの主実施形態を好ましい形態でより詳細に論考する。
【0060】
第1の主実施形態では、本方法のインキュベート工程が生存細胞指標又はその成分を歯内窩洞に加えることにより歯内窩洞内で実施され、測定及び/又は検出工程が歯内窩洞において実施される。
【0061】
この実施形態によれば好ましくは生存細胞指標は発光媒介性、より好ましくは蛍光媒介性であり、より好ましくは生存細胞指標は、生存細胞集団の非存在下では色素が蛍光性ではない第1の形態、及び生存細胞集団の存在下では色素が蛍光性である第2の形態をとる蛍光色素を含む。第1の形態から第2の形態への移行は好ましくは、色素の第1の形態由来の部分の切断によるものである。この切断は生存細胞酵素により触媒されるのが好ましい。
【0062】
指標は上記で挙げられるような1つ又は複数の蛍光色素を含むのが好ましいが、より好ましくは生体色素である。指標は、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、カルセイン、メチレンブルー及びProSense 750の1つ又は複数から選択されるのが最も好ましい。特に好ましい実施形態では、指標はカルセイン(好ましくは第1の非蛍光前駆体形態のカルセイン−AM)である。
【0063】
好ましくはインキュベート工程は、指標を溶液、好ましくは水溶液(例えば生理食塩水溶液)の形態で歯内窩洞に加えることを含む。次いで指標を所定の期間、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、更により好ましくは5分以下、最も好ましくは2分以下、インキュベートするものとする。
【0064】
インキュベート工程は、歯内窩洞を占有するような量、そのため例えば0.1μl〜2ml、好ましくは500μl〜2mlの量の指標溶液を投与することを含むのが好ましい。
【0065】
この主実施形態による検出工程は、指標パラメータを検出するか、又は指標に関連する指標パラメータ、例えば蛍光を伝送するように構成された検出プローブを、歯内窩洞内のインキュベートサンプルに挿入することを含むのが好ましい。好ましくは、検出プローブを歯内窩洞の歯根窩洞のそれぞれに挿入する。好ましい実施形態では、検出プローブは適切な光ファイバーを備える外部の分光計又は光検出器に接続又は連結した光ファイバーデバイスである。
【0066】
本発明の方法の第1の主実施形態に使用される一実施形態による装置は、指標パラメータを検出して指標結果(又は指標結果を決定することができるデータ)を生成するとともに、データ又は指標結果を表示、伝達又は伝送するように構成された検出ユニットと連結した検出プローブ、好ましくは光ファイバーコアを含む。
【0067】
方法が発光媒介性、好ましくは蛍光媒介性の色素指標を用いたものである好ましい実施形態では、装置は上記のように検出プローブ、好ましくは光ファイバーコアと検出ユニットとを含む。検出ユニットは好ましくは、光ファイバー(単回用途又は複数回用途(single or multi-use))と連結するように構成されており、色素の活性形態に対して(すなわち色素の活性形態の吸収波長で)励起シグナルをもたらす発光源を含む。発光源は、例えばレーザ等の単色源又はLED等の狭帯域源とすることができる。カルセイン AM等の指標では、発光源は好ましくは485nm〜500nm、より好ましくは約488nmで放射するように構成される。さらに検出ユニットは用いられる色素指標からの発光波長での光を検出するように構成され、例えば通常励起波長及び続く発光波長をフィルタリングした後に放射される光を捕捉する、フォトセル又は分光デバイスを含み得る。
【0068】
その場での検出に使用されるこの装置は本質的に、ユーザーがプローブを根管壁全体にわたって又はそれに沿ってサンプルに対して上下に動かすことができることから一点測定を与えることができる。検出プローブは好ましくは光ファイバーコア又は光ファイバーであり、好ましくは単一ファイバーコアを含む。光ファイバーコアのサイズ(すなわち直径)は、最小の根管径に応じて選択され得るが、いずれの場合でも好ましくは50μm〜700μm、より好ましくは100μm〜500μm、例えば約200μm〜約300μmの範囲である。従来の単一ファイバーコアを使用することができる。光ファイバーコアは任意の好適な材料でできていてもよい。任意に光ファイバーコアは、プラスチック材料、好ましくは検出ユニットの検出範囲内又は指標色素の発光波長の100nm内での低い自己蛍光により選択されるプラスチックでできている。ガラス光ファイバーコアを使用するのが好ましい。
【0069】
好ましくは光ファイバーコアを含む検出プローブは、プローブの先端を患者の歯の歯内窩洞に挿入するユーザーの手から検出ユニットへと伸ばすのに必要となる長さを有し、通常1m以下、好ましくは50cm以下の長さを有する。好ましくは、装置全体は手で抱えられ、極めて近いところに検出ユニットを含む。プローブの先端を操作するのに片方の手を使いながら、該装置をユーザーがもう一方の手で抱えることができ、そのため光ファイバーコアは、例えば50cm以下若しくは更には30cm以下、場合によって10cm以下、又は同じ手で先端を操作しながら抱えることができる極めて小さい検出ユニットの場合、5cm以下とすることができる。さらに検出ユニットは、該検出ユニットを歯科用チェアユニットに直接組み込んだ、プローブが取り付けられたハンドピースとして設計することができる。
【0070】
好ましくは、検出プローブ(又はその一部)を装置から取り外すことができ、そのため使い捨てのプローブ又はプローブチップを用いることができることから、より小さくあまり頑丈ではないプローブチップを使用することが可能となり(根管へのより良好なアクセス及びより良好なイメージングを与える)、再び使用するのにチップをクリーニングするのに要する労力が軽減される。
【0071】
好ましくは、発光源(選択された検出色素のおよそ吸収最大で励起光をもたらす)は、LED源、例えば狭帯域フィルター(ダイクロイックフィルターへのブリードスルー(bleedthrough)を回避する)と連結したLED源を含む。通常検出器ユニットは、検出前の励起光を除去するダイクロイックフィルターを備える。検出ユニットによる最終検出工程は、分光計若しくは光電子倍増管若しくはフォトセル型検出器、又は他の好適な検出器のいずれかによって行うことができる。単色素系では、光電子倍増管が最も簡単でかつ最も費用効率が高い方法であるが、多色素系では、低コストの分光計で多重シグナルを検出することが可能である。
【0072】
第2の主実施形態では、インキュベート工程が生存細胞指標又はその成分を歯内窩洞に加えることにより歯内窩洞内で実施され、測定及び/又は検出工程がex vivoで、すなわち体外及び歯内窩洞外で実施される。
【0073】
この実施形態によれば好ましくは生存細胞指標は発光媒介性、より好ましくは蛍光媒介性であり、より好ましくは生存細胞指標は、生存細胞集団の非存在下では色素が蛍光性ではない第1の形態、及び生存細胞集団の存在下では色素が蛍光性である第2の形態をとる蛍光色素を含む。第1の形態から第2の形態への移行は好ましくは、色素の第1の形態由来の部分の切断によるものである。この切断は生存細胞酵素により触媒されるのが好ましい。
【0074】
指標は上記で挙げられるような1つ又は複数の蛍光色素を含むのが好ましいが、より好ましくは生体色素である。指標は、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、カルセイン、メチレンブルー及びProSense 750の1つ又は複数から選択されるのが最も好ましい。特に好ましい実施形態では、指標はカルセイン(好ましくは第1の非蛍光前駆体形態のカルセイン−AM)である。
【0075】
好ましくはインキュベート工程は、指標を溶液、好ましくは水溶液(例えば生理食塩水溶液)の形態で歯内窩洞に加えることを含む。次いで指標を所定の期間、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、更により好ましくは5分以下、最も好ましくは2分以下、インキュベートする。
【0076】
インキュベート工程は、歯内窩洞を占有するような量、そのため例えば0.1μl〜2ml、好ましくは500μl〜2mlの量の指標溶液を投与することを含むのが好ましい。
【0077】
この主実施形態による検出工程はex vivoで実施されることから、第1の主実施形態と比較して検出装置に対する或る特定の制限が取り除かれる。そのため歯内サンプルを、例えば検出前の採取工程により、インキュベーション期間後の歯内窩洞から取り出すことができる。採取工程は、シリンジ又は他の流体サンプル採取器を用いて歯内窩洞からインキュベート流体のサンプルを抜き取ることを含み得る。次いでサンプルを、例えばプレート(例えばマイクロプレート)、キュベット等とすることができる検出素子に適用し、そこで検出工程を行うことができる。好ましくは、採取工程は、歯内窩洞のインキュベートサンプルからの流体を、該流体に浸漬するペーパーポイントに吸収させることを含む。ペーパーポイントは歯科歯内治療に一般的に使用される。好ましくは、採取工程に使用されるペーパーポイントは流体を吸収することが可能であり、より好ましくは低い自己蛍光を有する。次いでペーパーポイントを検出素子に適用する。該検出素子は、ここでもプレート若しくはキュベット(任意に水又はゲル等の流体を含む)とすることができるか、又はペーパーポイントを収容するように構成されるデバイスとすることができ、検出工程をペーパーポイントに適用させるように構成される。ペーパーポイントを窩洞から取り出した後にペーパーポイントを汚染しないように注意しなければならない。好ましくは、ペーパーポイントサンプルを各歯根から採取し、そのようにして4つの測定値を回収することができる。
【0078】
第1の主実施形態と同様に、使用される指標溶液の容量は、歯内窩洞の容量により、例えば0.1μl〜2ml、好ましくは500μl〜2mlで決定される。
【0079】
任意に一実施形態では、指標の成分のみを歯内窩洞においてその場でインキュベートする。指標が2成分指標である特定の実施形態による第2の(指標)成分は、任意に第2の成分で予め被覆された検出素子の外に(例えば歯内サンプルを適用する前、適用する間又は適用した後、該第2の成分を適用することにより)提供することができるか、又は任意に第2の成分は歯内窩洞からサンプルを抜き取るのに使用されるペーパーポイントへと含浸させることができ、そのため活性形態での第1の成分の存在により、ペーパーポイントへと含浸された第2の成分が採取時に蛍光性になる。したがって、任意に本発明の更なる態様によれば、ペーパーポイントの少なくとも一部分に被覆及び/又は含浸された指標の成分を含むペーパーポイントが提供される。
【0080】
本発明の方法の第2の主実施形態に使用される一実施形態による装置は、指標パラメータを検出して指標結果(又は指標結果を決定することができるデータ)を生成するとともに、データ又は指標結果を表示、伝達又は伝送するように構成され、また歯内サンプルを(例えばペーパーポイント上に)受け、そこで検出工程を行うことができる検出素子が検出ユニットに関連して配置された(例えば検出ユニット上に載置された)又は検出ユニットと連結された、検出ユニットを含む。
【0081】
方法が発光媒介性、好ましくは蛍光媒介性の色素指標を用いたものである好ましい実施形態では、検出ユニットは、色素の活性形態に対して(すなわち色素の活性形態の吸収波長で)励起シグナルをもたらす発光源を含む。発光源は、例えばLED又はレーザ等の帯域通過単色源とすることができる。カルセイン AM等の指標では、発光源は好ましくは485nm〜500nm、より好ましくは(限定されるものではないが)約488nmで放射するように構成される。さらに検出ユニットは用いられる色素指標からの発光波長での光を検出するように構成され、例えば典型的には励起波長及び続く発光波長をフィルタリングした後に放射される光を捕捉する、フォトセル又は分光デバイスを含み得る。
【0082】
任意に、装置は光ファイバーコアを備え、検出素子と関連してのみ上記で論考された第1の主実施形態に関して使用されたものと同じ装置とすることができる。この場合、光ファイバーコア(検出プローブ)は上記のようなものとすることができる。
【0083】
好ましくは、発光源(選択された検出色素のおよそ吸収最大で励起光をもたらす)はLEDを含む。通常検出器ユニットは、検出前の励起光を除去するダイクロイックフィルターを備える。検出ユニットによる最終検出工程は、分光計又は光電子倍増管又はフォトセル型検出器のいずれかによって行うことができる。単色素系では、光電子倍増管が最も簡単でかつ最も費用効率が高い方法であるが、多色素系では、低コストの分光計で多重シグナルを検出することが可能である。
【0084】
第3の主実施形態では、インキュベート工程が生存細胞指標又はその成分を歯内窩洞から採取された歯内サンプルとともにインキュベートすることによりex vivoで実施され、測定及び/又は検出工程がex vivoで実施される。
【0085】
この実施形態によれば好ましくは生存細胞指標は発光媒介性、より好ましくは蛍光媒介性であり、より好ましくは生存細胞指標は、生存細胞集団の非存在下では色素が蛍光性ではない第1の形態、及び生存細胞集団の存在下では色素が蛍光性である第2の形態をとる蛍光色素を含む。第1の形態から第2の形態への移行は好ましくは、色素の第1の形態由来の部分の切断によるものである。この切断は生存細胞酵素により触媒されるのが好ましい。
【0086】
指標は上記で挙げられるような1つ又は複数の蛍光色素を含むのが好ましいが、より好ましくは生体色素である。指標は、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、カルセイン、メチレンブルー及びProSense 750の1つ又は複数から選択されるのが最も好ましい。特に好ましい実施形態では、指標はカルセイン(好ましくは第1の非蛍光前駆体形態のカルセイン−AM)である。
【0087】
上述のように、インキュベート工程はex vivoで実施され、そのため歯内窩洞からの歯内物質のサンプルを採取する必要がある。歯内物質とのサンプルのインキュベーション前に行われるこのような採取工程は、シリンジ若しくは他の流体サンプル採取器(この場合、通常初めに分散媒を歯内窩洞に適用する必要がある)を用いて又はペーパーポイント(この場合歯内窩洞への分散媒の適用は任意であり、適用しない場合はペーパーポイントを用いて、窩洞内から材料を物理的に採取することができる)を用いて歯内窩洞からサンプルを抜き取ることを含み得る。次いで、採取された歯内サンプルを、例えばプレート(例えばマイクロプレート)、キュベット又は他の容器とすることができるインキュベート/検出素子に適用することができ、ここでインキュベーション工程及び任意に検出工程を行うことができる。好ましくは、採取工程は、歯内窩洞からの流体を、該流体に浸漬したペーパーポイント(好ましくは滅菌ペーパーポイント)に吸収させることを含む。ペーパーポイントは歯科分野で一般的に使用される。採取工程に使用されるペーパーポイントは流体を吸収することが可能であるのが好ましい。次いでペーパーポイントをキュベット又は他の容器に適用することができ、そこでペーパーポイントを歯内サンプルとともにインキュベートすることができる。
【0088】
任意に指標を指標素子に予め加えて、歯内サンプルの調製前、調製中若しくは調製後に適用させるか、又は選択肢の一つとしてペーパーポイント自体に含浸させる。最後の選択肢として、既知の量の指標を含浸したペーパーポイントを用いて、歯内窩洞からの歯内サンプルを抜き取った後、キュベット内で(例えば生理食塩水溶液に)浸漬させ、そこでインキュベートすることができる。指標を所定の期間、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、更により好ましくは5分以下、最も好ましくは2分以下、インキュベートする。
【0089】
次いで検出工程を、上記の第2の主実施形態に関して記載されたのと同じようにインキュベーションが終了した後実施することができる。
【0090】
ex vivoでのインキュベーションに必要とされる指標溶液の量は、歯内窩洞の容量によって制限されないことから、明確に定められた濃度で非常に小さい容量にすることができる。
【0091】
ex vivoでの検出では、装置に対する物理的要件ははるかに少なく、より複雑なものにすることができ、いずれの場合でも検出プローブを必要としない。
【0092】
本発明の更なる態様では、歯内採取に使用されるペーパーポイントが提供され、該ペーパーポイントは指標又は指標の成分を含み、該指標は本明細書で規定されるようなものとすることができ、該指標は任意にペーパーポイントを被覆し得る及び/又はペーパーポイントに含浸され得る及び/又はペーパーポイント内に含まれ得る。この態様によるペーパーポイントは、紙、複合材料、吸収性重合体のような水性流体を吸収することが可能な任意の好適な材料でできていてもよい。ペーパーポイントの材料に、当該技術分野で知られるような多孔性フィラー、例えばシリカ又はアルミナフィラーを充填するのが好ましい。任意に指標又はその成分は、ペーパーポイント内に含まれるか、ペーパーポイントに含浸されるか、又はペーパーポイントを被覆する。これは、例えば圧延前に指標をペーパーポイントの材料に与えることにより、又は圧延前にペーパーポイント材料を被覆することにより、又は材料をペーパーポイントの形状にすることにより達成することができる。ペーパーポイントは従来の歯科用ペーパーポイントのサイズ範囲で与えられるのが好ましい。
【0093】
本発明の更なる態様では、歯の膿瘍を治療又は予防する歯内療法の方法であって、歯の膿瘍を患う又は歯の膿瘍の危険性がある患者において、歯に歯冠を通って歯髄室へと至る開口を作製する工程と、歯根から歯髄を切削して歯内窩洞を露出させることを含む切削工程と、清掃工程と、歯根(複数の場合もある)の充填を含む第1の充填工程と、歯冠の充填を含む充填工程とを含み、清掃工程後でかつ第1の充填工程前に、所定の閾値を超える生存細胞の存在を示し得る生存細胞検出工程を行うことと、生存細胞検出工程が所定の閾値を超える生存細胞の存在を示さなくなるまで清掃工程及び生存細胞検出工程を繰り返すこととを特徴とする、歯内療法の方法が提供される。
【0094】
生存細胞検出工程は、上記のような歯内サンプル中の生存細胞の存在を検出する任意の方法であって、生存細胞指標を歯内サンプルとともに所定期間、インキュベートする工程と、指標結果が得られるように、生存細胞指標に関連するパラメータの変化を測定及び/又は検出する工程とを含み、パラメータの所定の変化を表す指標結果がサンプル中の生存細胞を示すものである、方法であるのが好ましい。
【0095】
この工程に使用される指標は、上記される任意の指標とすることができるが、好ましくは発光媒介性、例えば蛍光媒介性であり、最も好ましくはカルセイン AMである。
【0096】
上記で言及される方法の清掃工程は、歯の内側、より具体的には歯根の歯内窩洞を清掃するために歯で行われる任意の動作を含み得る。例えば、清掃工程は、残存する細胞性物質を除去し、生存細胞を含み得る微小な隙間がなくなるように歯根を成形するファイリングと、生存細胞を死滅させる物質若しくは物質の溶液(例えば水酸化カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、エチレンジアミン四酢酸、硫酸フラミセチン)又は生存細胞を死滅させる配合物(例えばクエン酸と、ドシクリン(docycline)と、Tween−80との混合物を含むBiopure MTAD(商標))の適用と、歯内窩洞のリンシングとの1つ又は複数を含み得る。典型的な一実施形態では、清掃工程は、歯内窩洞を次亜塩素酸ナトリウム溶液、典型的に4%〜10%の水溶液で洗い流した後、歯内窩洞を水、生理食塩水又は緩衝溶液等のリンス水でリンスすることを含む。いずれの場合にも、歯内窩洞を生存細胞検出工程前にリンスすることが好ましい。
【0097】
清掃のエンドポイントを決定することにより、歯内外科医は、i)生存細胞(特に細菌)を歯内窩洞から排除することにより、再感染の危険性を大幅に低減させ、ii)行う清掃量を最小限に抑えることができる。清掃及び/又は治療のエンドポイントを決定する迅速試験が存在しないことから、通常この清掃段階で歯内医によって余分な治療が行われる。
【0098】
本発明の更なる態様では、上記の方法のような歯内療法の方法に使用される指標が提供される。指標は、本方法の殺菌工程又は清掃工程での治療エンドポイントを検出するもの及び/又は本方法の生存細胞検出工程に使用されるものであるのが好ましい。
【0099】
この態様による指標は本明細書に記載の任意の好適な指標とすることができる。好ましくは指標は、発光媒介性(例えば蛍光媒介性)であり、例えば(活性、すなわち蛍光形態又は消失、すなわち非蛍光形態のいずれかを表す下記の化合物の)1つ又は組合せから選択することができる:DAPI、EBFP、Hoechst 33258色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、硫酸キニーネ、4−メチルウンベリフェロン、5−FAM、カルセイン、DiO、フルオレセイン、FLUO−3、FLUO−4、EGFP、GFP、オレゴングリーン514、ローダミングリーン、SYBRゴールド、SYBRグリーン、SYTO 9、SYTOXグリーン、YFP、LIVE/DEAD BacLight、アレクサフルオル555、Cy3、臭化エチジウム、エチジウムホモダイマー−1、ヨウ化プロピジウム、レゾルフィン、RFP、Rhod−2、ローダミンレッド、SYTOXオレンジ、TAMRA、テキサスレッド、TRITC、アロフィコシアニン、Cy5、DRAQ5、SYTOXレッド、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、メチレンブルー又はProSense 750。
【0100】
指標の活性(蛍光)形態が上述されるものである場合、指標は生存細胞の存在下で活性形態へと変換可能なその不活性プローブ形態を含むことが理解される。活性形態指標であるカルセイン等の多くの例では、指標はカルセイン−AM等の前駆体形態を必要とするか又は活性形態が5FAM−ペプチド−TAMRA等のペプチドで消失してもよい。ここで生存細胞の酵素媒介性の切断により活性フルオロフォアが放出され、このようにして生存細胞の存在が示される。
【0101】
指標は生体色素であるのが好ましい。
【0102】
指標(活性形態の)の好ましい例は、インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、カルボキシフルオレセイン、カルセイン、メチレンブルー及びProSense 750である。
【0103】
特に好ましい実施形態では、指標はカルセイン−AMである。
【0104】
この態様による指標は、指標効果を発揮するのに好適な量(これは指標が、より大きなバックグラウンド蛍光が存在し得るin vivo又はex vivoで適用されるかに応じ得る)で提供され得る。任意に指標は、所望の量及び濃度で指標の溶液が予め装填されたアンプル内に提供される。この量は歯内窩洞を処理するのに十分であるものとする(上記で提示されている)。代替的には指標は、歯内サンプルを採取するペーパーポイントに特定量含浸されて提供され得る。好ましくは、カルセイン AM等の好ましい指標の場合、指標は10μl〜500μlの範囲の量及び10μM〜1mMの範囲の濃度の水溶液として、アンプル又は予め装填されたシリンジ内に提供される。
【0105】
本発明の更なる態様では、歯内療法中に歯内窩洞を清掃する方法であって、上記で規定される1つ又は複数の清掃工程を実施することと、各清掃工程の間にエンドポイント決定工程(細胞検出工程、好ましくは生存細胞検出工程)を、かかるエンドポイント決定工程がエンドポイント(生存細胞集団又はその指標が或る特定の所定値を超えない時点)を示すまで実施することとを含む、方法が提供される。
【0106】
別の態様では、ヒト又は動物の身体で歯内感染症を診断する方法であって、細菌細胞指標を歯内サンプルとともに所定期間、インキュベートする工程と、指標結果が得られるように、細菌細胞指標に関連するパラメータの変化を測定及び/又は検出する工程とを含み、パラメータの所定の変化を表す指標結果がサンプル中の細菌細胞を示すものである、方法が提供される。
【0107】
指標、好ましくは生存細胞により活性化可能な消失している蛍光色素は歯内イメージングに有用である。
【0108】
本発明の更なる態様では、指標を患者から採取された歯内物質のサンプルとともにインキュベートすること、及びサンプル中での生存細胞の存在を示す指標のパラメータを検出するのに検出工程を行うことによる歯内物質(流体/組織)サンプル中の生存細胞の検出への指標、例えば蛍光色素の使用が提供される。
【0109】
別のより包括的な態様では、歯内サンプル中の細胞又は細胞性物質の存在を検出する方法であって、細胞指標を歯内サンプルとともに所定期間、インキュベートする工程と、指標結果が得られるように、細胞指標に関連するパラメータ若しくはパラメータ集合の変化を測定及び/又は検出する工程とを含み、パラメータの所定の変化を表す指標結果がサンプル中の細胞又は細胞性物質を示すものである、方法が提供される。
【0110】
他の態様、特に上記の生存細胞検出に関連する本発明の態様に関して本明細書に記載される方法及び装置の実施形態及び特徴は、その内容から生存細胞又は生存細胞物質に対する限定を細胞又は細胞物質に置き換えられることができることから、より広範な態様の実施形態を適用し、かかる実施形態として援用される。例えば、生存細胞又は細胞性物質の存在の検出に関して上記された方法の実施形態は、細胞又は細胞性物質の存在の検出として本明細書に援用され、生存細胞指標に関して記載された実施形態は、内容の許す限り、細胞指標(細胞又は細胞指標材料の存在を示す指標とみなすことができ、細胞又は細胞指標材料の非存在と識別することができ、任意に細胞又は細胞指標材料の量を表すことができる)として本明細書に援用される。
【0111】
この方法、及びこの方法に言及するのに一般化された3つの主実施形態(生存細胞検出方法に関して上記されている)によれば、細胞は生存細胞又は非生存細胞(生細胞又は死細胞)であってもよく、細胞性物質には、細胞内成分と、細胞の存在により分泌される又は細胞の存在下で上方調節される細胞外物質とが含まれる。例えば細胞性物質には、細胞に関連する又は細胞に由来する構造又は化合物、例えばバイオフィルムを形成し得る又はバイオフィルム内に含まれ得る構成多糖類及び酵素等の細胞外のこのような構造又は化合物が含まれる。
【0112】
この態様による細胞指標の中には生存細胞検出に関して上記された指標のタイプ及び特定の指標が含まれ、該指標を細胞又は細胞物質の存在を示すように一般化することができる。指標は、生存細胞及び非生存細胞を特定することができるが、識別することができない広域指標(例えば広域色素又は着色剤)としても、又は生存細胞を特定及び識別することができ及び/又は死細胞若しくは非生存細胞を特定及び識別することができる指標としてもよい。この態様による細胞は好ましくは、潜在的に機能化する細胞、細胞若しくは細胞性物質の生存成分、最近になって死滅した細胞、又は生存細胞であり、最も好ましくは生存細胞(本発明の主態様によるもの)である。
【0113】
これより本発明を、添付の図面を参照にしてより詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0114】
図1は、本発明の方法の3つの主実施形態に従って実行するために本発明の一実施形態を示している概略的なフロータイプの図面である。図1によれば、それぞれの場合において細菌集団7を含む歯内窩洞5が形成された歯3の採取/検出工程1の3つの実施形態A、B及びCが示される。蛍光指標色素が、各方法A、B及びCにおいて指標溶液9の形態で与えられている。方法A及び方法Bでは、指標溶液9が歯内窩洞5内に与えられ、そこで指標溶液9をサンプルとともにインキュベートする。一方で方法Cでは、指標溶液9がキュベット11の形態のインキュベート容器に与えられている。採取/検出工程1の方法Aでは、指標溶液9を歯内窩洞5に添加して、歯内窩洞5内で歯内サンプルとともに所定期間(例えば10分以下、任意に2分以下)インキュベートした後、使い捨てチップを有する光ファイバーコアの形態の検出プローブ13を歯内窩洞5内の指標溶液9に浸漬させ、任意の活性化指標(細菌集団7の存在を表す)の蛍光を検出する。検出プローブ13はダイクロイックフィルター17を介して検出器15に連結している。検出器15は、ダイクロイックフィルター17と連結した、LED光源21及び励起フィルター23からなる励起ユニット19と、分析のためにデータをマイクロプロセッサ29に送り、ユーザーディスプレイ31を介して情報を表示する光検出器27を含む検出ユニット25とを含む。このため方法Aによれば、励起シグナルはダイクロイックフィルター17から検出プローブ13を通って歯内窩洞5内のサンプルへと伝送される。生細菌細胞7と接触することにより活性化された任意の指標が励起シグナルを吸収し、蛍光放射シグナルを放射し、それを検出プローブによって回収して、ダイクロイックフィルター17を通過して、細菌細胞集団の存在を確認する検出ユニット25により検出する。方法Bにおいても、指標溶液9は歯内窩洞5で与えられ、そこで所定期間インキュベートする。次いでサンプルを吸収性ペーパーポイント33の使用により歯内窩洞から採取する。任意の細胞集団又は細胞集団により活性化される指標を担持するこの吸収性ペーパーポイント33が検出器前の検出用に与えられる。検出工程は、任意に検出プローブ13を欠いており、その代わりに検出素子(図示せず)を使用している以外は方法Aと同じように行う。方法Cでは、指標溶液9を歯内窩洞5には適用しない。その代わりに、吸収性ペーパーポイント35を使用して、歯内窩洞5から任意の細菌細胞集団7を含む歯内物質のサンプルを得る。次いでこのペーパーポイント35を指標溶液9の入ったキュベット11に入れ、そこで所定期間インキュベートすることができる。その後、キュベット11を検出器に与え、歯内サンプル中の細胞集団の有無を決定するために方法Aと同じようにして、キュベット11及びその内容物に対して検出工程を行うことができる。
【実施例】
【0115】
実施例1
摘出した歯の処理
20個の新たに摘出した単根歯を倫理的承認の元に得た(サウスイーストロンドン倫理的承認番号10/H0804/056)。11−1180 Isomet低速ソー(Buehler、ドイツ、デュッセルドルフ)上で0.3mm厚のダイヤモンドウェハ形成ブレード(Extec、米国コネチカット州エンフィールド)を用いて、それぞれの歯の歯冠を除去し、15mm長の被検査物を得た。根管の開存性を、ISO 10のK−ファイルを用いて確認した。根管に冠状漸拡のためにゲーツグリッデンドリル(番号2〜4)、その後プロテーパーF3器具及び作業長が1mmと短いISO 45のK−ファイルを備えた根尖器具を適用した(instrumented)。器具の洗浄は滅菌生理食塩水を用いて行った。次いでそれぞれの歯根を、低速ソーを用いて根管を通って縦に分割した。その後、被検査物の半分を再び合わせて(reapproximated)、5ml容のビジューバイアルに入った新たに混合した印象材のブロック(Aquasil(商標) Hard Putty/Fast Set、Dentsply)に、歯根の歯冠部とともにボトルの開口部と同一面となるように設置した。セッティング後、歯根の半分を15%EDTAに1分間浸漬させ、スメア層を除去し、十分に生理食塩水でリンスした。次いで被検査物を134℃のオートクレーブ内で10分間滅菌処理した。
【0116】
in vitroバイオフィルムモデルの確立
シークエンシングより同定された、臨床単離株からの複数種の成熟バイオフィルム(アクチノミセス・ラジシデンティス(Actinomyces radicidentis)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes:アクネ菌)、ストレプトコッカス・エピデルミディス(Streptococcus epidermidis:表皮ブドウ球菌)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis))を、確立された5日間バイオフィルムプロトコル(Gmuer & Guggenheim 1983)の変法を用いて歯根の半分に対して24マルチウェルプレートにおいて2週間培養した。要約すると、菌株を、5%脱線維ウマ血液を添加したFastidious Anaerobe Agar(LabM)において37℃で常法に従って嫌気培養した。開始培養物を、増殖が適度な懸濁として現れるまで37℃で3時間嫌気的にインキュベートした濾過滅菌済みの汎用の変性液体培地中で構築した。濁度は新たなmFUMを用いて0.5の540nmでのODに調整した(LabsystemsのiEMS Reader MF)。それぞれの歯根を24ウェルトレーにおいて1.5mlの複数種のバイオフィルム培養物とともにインキュベートして、培地は初めの7日間毎日交換した。バイオフィルム増殖後、歯根の半分をシリコンブロックに再び組み込んだ。続いて被検査物を実験群にランダムに割り当て、バイオフィルムの微小内視鏡による可視化を試験した。
【0117】
実験群:
1.群A)1% NaOCl溶液洗浄(5ml)
2.群B)生理食塩水洗浄(5ml)
3.群C)対照−洗浄なし
【0118】
全ての群において、処理適用前に微小内視鏡による観察をベースラインで行った。初めにサンプルをカルセイン AMとともに10分間インキュベートした。群A)及び群B)の被検査物の観察を洗浄後に(群Cでは洗浄に必要とされる同じ時間の後に)繰り返し行った。群A)では、色素をD/E中和培地(BD DIFCO、米国ニュージャージー州フランクリンレイクス)(2ml)の後に10分間再び加えて、着色剤の脱色を抑制した。観察後、歯根の半分をグルタルアルデヒドで固定し、SEMイメージングを行い、バイオフィルムの存在又は排除を確認した。
【0119】
微小内視鏡検査
微小内視鏡観察のために、50μlの100nMカルセインアセトキシメチルエステル(Fluka Analytical、イギリス、ギリンガム)を根管腔に注入し、室温で10分間インキュベートした。イメージングを、300μmのミニ−O光ファイバープローブが取り付けられたプロトタイプのCellvizio−GI共焦点微小内視鏡(Mauna Kea Technologies、フランス、パリ)を用いて行った。プローブを、20mmシースから外す(de-sheathing)ことにより調整して、根管腔へのアクセスを可能にした。488nmのレーザ励起源を用い、515nmのロングパス放射フィルタリングを利用して反射成分からの蛍光放射を識別することで根管を検査した後、12画像/秒のフレームレートで画像を検出した。250μmのフィールド直径の画像を300μmのファイバーによって得た。各被検査物の画像を根管腔の標準深さ(−2mm、−8mm、−14mm)で得て、独占的ソフトウェア(Mauna Kea Technologies)を用いてエクスポートした。蛍光対照を純粋なバイオフィルムと、カルセイン AMを含む象牙質被検査物及びカルセイン AMを含まない象牙質被検査物(自己蛍光バックグラウンド決定)とから調製した。各サンプルタイプの代表的な画像、プローブ深さ及びプローブ径を、CellVizioソフトウェアパッケージ(Mauna Kea Technologies)を用いて得た。蛍光対照をカルセイン AMにおいてインキュベートした天然の歯髄細胞から調製した。
【0120】
細菌採取及び定量化
各歯根に対して個別の洗浄プロトコル及びイメージング工程を行った後、歯根の半分を無菌状態で9cm径のペトリ皿(SLS、イギリス、イースト・ライディング・オブ・ヨークシャー)に入れた。2つの滅菌ペーパーポイント(Dentsply、Maillefer)を歯根の半分にそれぞれ使用して、根管を採取し、生菌数を定量化した。採取されたバイオフィルムを、滅菌ガラスビーズを用いて十分にボルテックスすることにより分散させた。BHI(ブレインハートインフュージョン培地、Lab M、イギリス)を0.9mlずつ分割したものの中で段階希釈液を調製し、0.1mlずつ分割したものを、二連のFAAプレート上にプレーティングした。プレートを無菌状態で7日間インキュベートした。インキュベーション後、FAAプレートのコロニー数をカウントした。統計分析を単一因子:ANOVAを用いたSPSSPC(バージョン18.0)で行い、3つの実験群間の定量的生菌数を比較した。
【0121】
分光光度分析
処理の前後での根管腔に存在する生存細菌の蛍光を定量化するために、分光光度アプローチを考案した。LED光源と、ダイクロイックミラーと、ビームスプリッターとからなる実験構成を、先端をシースから外した200μmの単一光ファイバーケーブルに連結した。ダイクロイックミラービームスプリッターを、USBを介してラップトップに接続された分光光度計に連結し、スペクトル曲線を記録した。
【0122】
ペーパーポイントの分光光度/微小内視鏡分析
上述の微小内視鏡/分光光度法はペーパーポイント採取を用いて間接的にも試験している。
【0123】
滅菌ペーパーポイント(PTU、サイズF2、Dentsply)を記載の洗浄レジメン後かつ中和工程前に根管に挿入した。採取を、ペーパーポイントを全作業長に対して根管壁に沿ってスクラブすることにより実施した。次いでペーパーポイントを、24マルチウェルプレートに入れた200μlの100nMカルセインアセトキシメチルエステル(Fluka)中で10分間インキュベートした。
【0124】
回収した細菌の染色後、先に記載されるようにペーパーポイントの全長にわたって蛍光細胞を観察することで、微小内視鏡検査を完了した。インキュベーション後、ペーパーポイントを分光光度ファイバーでも分析し、ポイントの長さに対するピークを記録することで放射された蛍光を定量化した。インキュベートしなかったペーパーポイントと、採取を行わなかったインキュベートペーパーポイントとを画像化し、バックグラウンド及び自己蛍光を決定した。
【0125】
結果
MKTプローブの直接可視化
図2に、根管治療の異なる段階での根管の根尖部の例を示す。およそ5μm径の細菌の塊が視認可能である。摘出歯に適用する場合、根管全体に亘る優れた根管内イメージングは300μmの微小内視鏡検査プローブを用いることで得た。根管腔に感染する細菌の放射蛍光を定量化して分析することが可能であった。この方法は再検査に適用することもできたが、図2に示されるように検出可能な蛍光シグナルの非存在によって臨床エンドポイントを容易に決定することができる。
【0126】
微生物定量化
表1に、複数種のバイオフィルムの実験後の生菌数を示す。バイオフィルムは三連で増殖させ、プレーティングし、FAAプレート上で7日間、無菌状態でインキュベートした。値は三連の細菌数の平均±S.Dのlog10として表す。細菌数の値は群B)及び群C)と比較して群A)で有意に低かった。
【0127】
分光光度分析及び微生物定量の比較
図3に、群A)における1%NaOCl溶液での洗浄の前後での分光光度測定値のグラフを示す。理想的な歯内エンドポイントは、検出される蛍光性の生存細菌細胞のない分光光度計のゼロ測定値で表される。
【0128】
ペーパーポイントの分光光度/微小内視鏡分析
同様の結果を間接的ペーパーポイントアプローチによって得た。このシステムの感度は直接アプローチと同程度であった。ペーパーポイントの自己蛍光は無視できるものであり、回収された生存バイオフィルムは視認可能であり、分光光度計により定量化することができた(図4)。
【0129】
【表1】
【0130】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されている。しかしながら、本発明の範囲を逸脱することなく当業者によって変更及び修正を行うことができることが理解される。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】