特許第6168739号(P6168739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168739
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ターボチャージャ用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20170713BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20170713BHJP
   F02B 39/14 20060101ALI20170713BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   F16C33/66 Z
   F02B39/00 J
   F02B39/14 B
   F16C19/06
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-159618(P2012-159618)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-20461(P2014-20461A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義樹
(72)【発明者】
【氏名】棚田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑亮
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−171796(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/30−33/66
F02B 33/00−41/10
F16C 19/00−27/08
F16C 35/00−39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラとコンプレッサインペラとを軸方向の各端部に備えた回転軸を回転自在に支持し、かつ互いに軸方向に離れて配置された一対の転がり軸受と、筒形状に形成されるとともにその内周面において一対の転がり軸受を保持する保持部材と、この保持部材の外周面との間に微小な隙間をあけて配置され、当該隙間に形成されたオイルフィルムダンパを介して前記保持部材を保持する軸受ハウジングと、を備えているターボチャージャ用軸受装置であって、
前記保持部材の外周面には、前記オイルフィルムダンパを形成するためのオイルが供給され、かつ互いに軸方向に離れて配置された一対の周溝が形成され、
前記オイルフィルムダンパを形成するための前記隙間が前記各周溝の軸方向両側に形成され、
前記軸受ハウジングには、前記各周溝に対して前記回転軸の軸心に直交する方向からオイルを供給する給油通路が形成され、
前記各周溝の軸方向両側の前記隙間には、前記給油通路から前記各周溝に供給されるオイルが軸方向両側に分かれて流入され、
前記軸受ハウジングには、一方の前記周溝の軸方向内側に形成された前記隙間と、他方の前記周溝の軸方向内側に形成された前記隙間との軸方向の間に相当する位置に、これらの隙間を通過したオイルが排出される排油通路が形成され、
一対の前記周溝のうち、前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量が、同軸方向内側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量よりも多く設定され、
前記保持部材の外周面には、前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を形成する外側ダンパ形成面と、当該外側ダンパ形成面の軸方向外端から前記保持部材の軸方向外端までの範囲において当該ダンパ形成面よりも径方向内方へ凹む外周溝とが形成されていることを特徴とするターボチャージャ用軸受装置。
【請求項2】
前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間の軸方向幅が、同軸方向内側に設けられた前記隙間の軸方向幅よりも小さい、請求項1に記載のターボチャージャ用軸受装置。
【請求項3】
前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間の径方向幅が、同軸方向内側に設けられた前記隙間の径方向幅よりも大きい、請求項1又は2に記載のターボチャージャ用軸受装置。
【請求項4】
一対の前記周溝のうち前記コンプレッサインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量が、前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量と略同一とされ、
前記コンプレッサインペラ側の前記周溝の軸方向内側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量が、前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向内側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量と略同一とされている、請求項2又は3に記載のターボチャージャ用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載されるターボチャージャ用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャは、エンジンからの排気ガスによってタービンを回転させ、その回転によってコンプレッサを駆動し、エンジンへの吸気用の空気を圧縮する装置である。このターボチャージャの回転軸は、軸方向の一端部にタービンインペラを備え、同他端部にコンプレッサインペラを備えている。そして、この回転軸は、軸方向に離れて配置された一対の転がり軸受と、この一対の転がり軸受を保持する筒形状の保持部材と、この保持部材が装入される軸受ハウジングと、を備えた軸受装置によって回転自在に支持されている。
【0003】
また、保持部材と軸受ハウジングとの間に形成された微小な隙間にエンジンオイルを供給し、このエンジンオイルによって回転軸の振動を吸収することにより、当該振動が軸受ハウジングに伝達されるのを防止するオイルフィルムダンパを備えた軸受装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7は、従来のターボチャージャ用軸受装置の要部を示す縦断面図である。
回転軸132は、軸方向に離れて配置された一対の転がり軸受111,112によって回転自在に支持されている。一対の転がり軸受111,112は、外輪が筒形状の保持部材120の内周面に嵌合されている。保持部材120の外周面には、互いに軸方向に離れて2つの周溝121,122が形成されている。軸受ハウジング136には、各周溝121,122に向けてエンジンオイルを供給するための給油通路137が形成されている。軸受ハウジング136と保持部材120との間であって周溝121,122の軸方向両側には、それぞれ隙間s1(s1a,s1b)、s2(s2a,s2b)が形成されている。そして、給油通路137から各周溝121,122に供給されたエンジンオイルは、各隙間s1,s2に入り込み、ダンパ機能によって回転軸132の振動を吸収する。
【0005】
また、周溝121,122から軸方向内側の隙間s1b,s2bを通過したエンジンオイルは、保持部材120の外周面に形成された外周溝126と排出口120cとを通って軸受ハウジング136の中央通路138aから排出される。周溝121,122から軸方向外側の隙間s1a,s2aを通過したエンジンオイルは、保持部材120の軸方向外側を通って側部通路138bから排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−92916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のターボチャージャにおいては、タービンインペラは800℃程度の高温ガスを受けて回転し、その熱はタービンインペラ側の回転軸132の端部や転がり軸受111にも伝達される。そのため、当該熱に起因する転がり軸受111の焼き付けが懸念される。
一方、従来の軸受装置においては、周溝121,122内へ向けて供給されたエンジンオイルはその軸方向両側へほぼ均等に分かれて両側の隙間s1a,s1b,s2a,s2bに供給される。タービンインペラ側の周溝121へ供給されたエンジンオイルのうち、軸方向外側の隙間s1aを通って排出されるエンジンオイルは、タービンインペラ側の回転軸132の端部や転がり軸受111の冷却のために寄与するが、軸方向内側の隙間s1bを通って中央通路138aから排出されるエンジンオイルは、ほとんどこれらの冷却には寄与せずに排出されてしまう。
【0008】
したがって、本発明は、以上のような実情に鑑み、オイルフィルムダンパ用のオイルを利用してタービンインペラ側の転がり軸受や回転軸の端部の冷却を効果的に行うことができるターボチャージャ用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るターボチャージャ用軸受装置は、タービンインペラとコンプレッサインペラとを軸方向の各端部に備えた回転軸を回転自在に支持し、かつ互いに軸方向に離れて配置された一対の転がり軸受と、筒形状に形成されるとともにその内周面において一対の転がり軸受を保持する保持部材と、この保持部材の外周面との間に微小な隙間をあけて配置され、当該隙間に形成されたオイルフィルムダンパを介して前記保持部材を保持する軸受ハウジングと、を備えているターボチャージャ用軸受装置であって、前記保持部材の外周面には、前記オイルフィルムダンパを形成するためのオイルが供給され、かつ互いに軸方向に離れて配置された一対の周溝が形成され、前記オイルフィルムダンパを形成するための前記隙間が前記各周溝の軸方向両側に形成され、前記軸受ハウジングには、前記各周溝に対して前記回転軸の軸心に直交する方向からオイルを供給する給油通路が形成され、前記各周溝の軸方向両側の前記隙間には、前記給油通路から前記各周溝に供給されるオイルが軸方向両側に分かれて流入され、前記軸受ハウジングには、一方の前記周溝の軸方向内側に形成された前記隙間と、他方の前記周溝の軸方向内側に形成された前記隙間との軸方向の間に相当する位置に、これらの隙間を通過したオイルが排出される排油通路が形成され、一対の前記周溝のうち、前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量が、同軸方向内側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量よりも多く設定され、前記保持部材の外周面には、前記タービンインペラ側の前記周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を形成する外側ダンパ形成面と、当該外側ダンパ形成面の軸方向外端から前記保持部材の軸方向外端までの範囲において当該ダンパ形成面よりも径方向内方へ凹む外周溝とが形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明におけるターボチャージャ用軸受装置によれば、タービンインペラ側の周溝に供給されたオイルは、軸方向両側に分かれて保持部材と軸受ハウジングとの隙間に流入し、オイルフィルムダンパを形成する。そして、当該周溝の軸方向外側の隙間を流れるオイルの流量が、同軸方向内側の隙間を流れるオイルの流量よりも多く設定されているので、当該周溝の軸方向外側の隙間から流出する多量のオイルを用いてタービンインペラ側の転がり軸受や回転軸の端部の効率よく冷却することができる。
【0011】
(2) 前記タービンインペラ側の周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間の軸方向幅が、同軸方向内側に設けられた前記隙間の軸方向幅よりも小さく形成されていることが好ましい。
この構成によれば、タービンインペラ側の周溝の軸方向外側の隙間を流れるオイルの流動抵抗を、同軸方向内側の隙間を流れるオイルの流動抵抗よりも小さくすることができ、その結果、軸方向外側の隙間を流れるオイルの流量を、軸方向内側の隙間を流れるオイルの流量よりも多く設定することができる。
【0012】
(3) 前記タービンインペラ側の周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間の径方向幅が、同軸方向内側に設けられた前記隙間の径方向幅よりも大きく形成されていてもよい。
この構成によれば、タービンインペラ側の周溝の軸方向外側の隙間を流れるオイルの流動抵抗を、同軸方向内側の隙間を流れるオイルの流動抵抗よりも小さくすることができ、その結果、軸方向外側の隙間を流れるオイルの流量を、軸方向内側の隙間を流れるオイルの流量よりも多く設定することができる。なお、保持部材は、前記隙間の範囲内で軸受ハウジング内を径方向に移動可能であり、この移動によって前記隙間の径方向幅も変動するが、本発明でいう「前記隙間の径方向幅」は、軸受ハウジングと保持部材とが同一軸心上に配置された状態における径方向幅をいう。
【0013】
(4) 一対の前記周溝のうち前記コンプレッサインペラ側の周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量が、前記タービンインペラ側の周溝の軸方向外側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量と略同一とされ、前記コンプレッサインペラ側の周溝の軸方向内側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量が、前記タービンインペラ側の周溝の軸方向内側に設けられた前記隙間を流れるオイルの流量と略同一とされていることが好ましい。
このような構成によって、保持部材の軸方向両側において略同等のオイルフィルムダンパの性能を得ることができ、回転軸の振動をバランスよく吸収することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オイルフィルムダンパ用のオイルを利用してタービンインペラ側の転がり軸受や回転軸の端部の冷却を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係るターボチャージャ用軸受装置を備えたターボチャージャの概略構成を示す断面図である。
図2】ターボチャージャ用軸受装置の要部を示す断面図である。
図3】ターボチャージャ用軸受装置のタービンインペラ側の一部を拡大して示す断面図である。
図4】ターボチャージャ用軸受装置のコンプレッサインペラ側の一部を拡大して示す断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るターボチャージャ用軸受装置のタービンインペラ側の一部を拡大して示す断面図である。
図6】ターボチャージャ用軸受装置のコンプレッサインペラ側の一部を拡大して示す断面図である。
図7】従来のターボチャージャ用軸受装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るターボチャージャ用軸受装置を備えたターボチャージャの概略構成を示す断面図である。図1に示されるように、本実施形態のターボチャージャTは、タービンハウジング31に形成された排気流路31aを流通する排気により、回転軸32の一端側(図1における右側)に固定されたタービンインペラ33を回転させるようになっている。
【0017】
この回転軸32の回転は、当該回転軸32の他端側(図1における左側)に固定されたコンプレッサインペラ34に伝わり、このコンプレッサインペラ34がコンプレッサハウジング35に形成された給気流路35a内で回転する。この結果、給気流路35aの上流側開口から吸引された空気が圧縮され、これにより、ガソリンや軽油等の燃料とともに圧縮された空気が、図示しないエンジンのシリンダ室内に送り込まれる。
【0018】
ターボチャージャTの回転軸32は、数万〜十数万回転/分もの高速で回転し、しかも、エンジンの運転状況に応じて回転速度が頻繁に変化する。そのため、回転軸32は、その回転損失を低減すべくターボチャージャ用軸受装置10によって小さな回転抵抗で支持されている。具体的には、軸受装置10は、軸受ハウジング36と、軸受ハウジング36によって支持された保持部材20と、この保持部材20によって保持された一対の転がり軸受11,12と、一対の転がり軸受11,12の間隔を保持する間座14を有している。そして、軸受装置10は、タービンインペラ33とコンプレッサインペラ34との間において回転軸32の軸方向中間部を回転自在に支持している。
【0019】
軸受ハウジング36には、保持部材20を支持するための筒形状の支持部36aが設けられている。そして、軸受ハウジング36には、支持部36aの内周面へ潤滑油としてのエンジンオイルを供給するための給油通路37と、エンジンオイルを排出するための排油通路38とが形成されている。給油通路37は、軸受ハウジング36の外周面から径方向内方へ向けて形成されるとともに、その径方向内端側が軸方向両側へ二股状に分岐し、支持部36aの内周面の2箇所で開口している。排油通路38は、支持部36aの下部の軸方向中央部に形成された中央通路38aと、軸方向両側に形成された側部通路38bとを有し、中央通路38aと側部通路38bとは下流側において互いに合流している。
【0020】
図2は、ターボチャージャ用軸受装置の要部を示す断面図である。
一対の転がり軸受11,12は、互いに軸方向に離れて配置されている。各転がり軸受11,12は、回転軸32に外嵌された内輪15と、この内輪15の径方向外側に配置された外輪16と、内輪15と外輪16との間に転動自在に配置された複数の玉(転動体)17と、これらの玉17を円周方向に沿って所定間隔に保持する保持器18とを備えたアンギュラ玉軸受である。各転がり軸受11,12には、定位置予圧方式によって予圧が付与されている。なお、以下の説明において、「軸方向外側」とは、一対の転がり軸受11,12の間の軸方向中央位置(図2に符号Xで示す)から各転がり軸受11,12へ向かう方向(図2における左右外側へ向かう方向)をいい、「軸方向内側」(又は「軸方向内方」)とは、その逆方向をいう。
【0021】
間座14は、軸方向の両端が開放した筒形状に形成され、回転軸32の軸方向中間部に嵌合されている。そして、各転がり軸受11,12の内輪15は、間座14の軸方向両端面に当接することによって軸方向内方への移動が制限されている。
保持部材20は、軸方向の両端が開放された円筒形状に形成されている。保持部材20の内周面における軸方向の両端部には、段差部20aを介して内径が拡大された拡径部20bが形成されている。そして、各拡径部20bに各転がり軸受11,12の外輪16が嵌合されることによって、保持部材20に各転がり軸受11,12が保持されている。各外輪16は、段差部20aに当接することによって軸方向内方への移動が制限されている。
【0022】
保持部材20の外周面には、軸方向に離れて配置された一対の周溝21,22が形成されている。各周溝21,22は、保持部材20の全周にわたって環状に形成されている。また、各周溝21,22は、一対の転がり軸受11,12の軸方向内側に近接してそれぞれ形成されている。そして、各周溝21,22は、軸受ハウジング36に形成された二股状の給油通路37に連通している。
【0023】
図3は、ターボチャージャ用軸受装置のタービンインペラ側の一部を拡大して示す断面図、図4は、ターボチャージャ用軸受装置のコンプレッサインペラ側の一部を拡大して示す断面図である。
図3及び図4にも示されるように、各周溝21,22は、段面形状が略三角形状であり、傾斜角度の異なる一対の底面21a,21b,22a,22bを有している。そして、転がり軸受11,12により近い一方の底面21a,22aの方が、他方の底面21b、22bよりも傾斜角度が小さく、軸方向に長く形成されている。
【0024】
図3に示されるように、タービンインペラ33側に形成された周溝21の一方の底面21aには、転がり軸受11に対してエンジンオイルを供給するための給油孔23が形成されている。周溝21から給油孔23を通過したエンジンオイルは、タービンインペラ33側の転がり軸受11を潤滑するとともに冷却する。ただし、本実施形態において給油孔23は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
【0025】
図2に示されるように、保持部材20の外周面において、一対の周溝21,22の軸方向両側には、それぞれオイルフィルムダンパを形成するためのダンパ形成面41,42が設けられている。このダンパ形成面41,42は、保持部材20の外周面の他の部分よりも若干径方向外方へ膨出している。このダンパ形成面41,42と、軸受ハウジング36における支持部36aの内周面との間に形成された微小な隙間s1,s2には、給油通路37から各周溝21,22に供給されたエンジンオイルが流入することによってオイルフィルム(油膜)が形成される。そして、このオイルフィルムは、回転軸32の振動を吸収することによって、当該振動が軸受ハウジング36に伝達されるのを抑制するダンパ、すなわち、オイルフィルムダンパとして機能する。
【0026】
保持部材20の下部側には、排出口25が径方向に貫通して形成されている。この排出口25は、軸受ハウジング36の支持部36aに形成された中央通路38aに対応して形成されており、排出口25から排出されたエンジンオイルは、中央通路38aを通って排出されるようになっている。
なお、保持部材20の外周面における軸方向中央部と外端部(周溝21,22及びダンパ形成面41,42を除く保持部材20の外周面)は、ダンパ形成面41,42に対して相対的に凹んだ外周溝26とされている。そして、排出口25の径方向外端部は、軸方向中央の外周溝26の底面で開口している。
【0027】
なお、以下の説明においては、図3に示されるように、一対の周溝21,22のうち、タービンインペラ33側の周溝21の軸方向外側に設けられた隙間s1を第1の外側隙間s1aといい、同軸方向内側に設けられた隙間s1を第1の内側隙間s1bという。また、第1の外側隙間s1aを形成するダンパ形成面41を第1の外側ダンパ形成面41aといい、第1の内側隙間s1bを形成するダンパ形成面41を第1の内側ダンパ形成面41bという。第1の外側ダンパ形成面41aと第1の内側ダンパ形成面41bとは同一の外径とされている。
【0028】
また、図4に示されるように、一対の周溝21,22のうち、コンプレッサインペラ34側の周溝22の軸方向外側に設けられた隙間s2を第2の外側隙間s2aといい、同軸方向内側に設けられた隙間s2を第2の内側隙間s2bという。また、第2の外側隙間s2aを形成するダンパ形成面42を第2の外側ダンパ形成面42aといい、第2の内側隙間s2bを形成するダンパ形成面42を第2の内側ダンパ形成面42bという。第2の外側ダンパ形成面42aと第2の内側ダンパ形成面42bとは同一の外径とされている。
【0029】
図3及び図4に示されるように、第1の外側ダンパ形成面41aと第2の外側ダンパ形成面42aとの軸方向の幅w1a,w2a、すなわち、第1の外側隙間s1aと第2の外側隙間s2aとの軸方向の幅w1a,w2aは、同一の寸法とされている。
また、第1の内側ダンパ形成面41bと第2の内側ダンパ形成面42bとの軸方向の幅w1b,w2b、すなわち、第1の内側隙間s1bと第2の内側隙間s2bとの軸方向の幅w1b,w2bは、同一の寸法とされている。
【0030】
図3に示されるように、第1の外側隙間s1aの軸方向幅w1aと、第1の内側隙間s1bの軸方向幅w1bとは、w1a<w1bの関係にあり、同様に、図4に示されるように、第2の外側隙間s2aの軸方向幅w2aと、第2の内側隙間s2bの軸方向幅w2bとは、w2a<w2bの関係にある。
【0031】
したがって、図3に示されるように、タービンインペラ33側の周溝21から軸方向両側に分かれて流れるエンジンオイルの流動抵抗は、軸方向幅の小さい第1の外側隙間s1a側で小さくなり、軸方向幅の大きい第1の内側隙間s1b側で大きくなる。そのため、周溝21から第1の外側隙間s1aを通って側部通路38bへ排出されるエンジンオイルの流量が、第1の内側隙間s1bを通って中央通路38aへ排出されるエンジンオイルの流量よりも多くなっている。
【0032】
タービンインペラ33は、タービンハウジング31内の排気流路31aを流れる高温(800℃程度)の排気に接するため、タービンインペラ33側の回転軸32の端部や転がり軸受11も非常に高温となる。本実施形態では、周溝21から第1の外側隙間s1aを通ってタービンインペラ33側の回転軸32の端部や転がり軸受11へ多くのエンジンオイルが供給されるため、回転軸32の端部や転がり軸受11をエンジンオイルによって効果的に冷却することが可能となっている。
【0033】
同様に、図4に示されるように、コンプレッサインペラ34側の周溝22から軸方向両側に分かれて流れるエンジンオイルの流動抵抗は、軸方向幅の小さい第2の外側隙間s2a側で小さくなり、軸方向幅の大きい第2の内側隙間s2b側で大きくなる。そのため、周溝22から第2の外側隙間s2aを通って側部通路38bへ排出されるエンジンオイルの流量が、第2の内側隙間s2bを通って中央通路38aへ排出されるエンジンオイルの流量よりも多くなっている。
【0034】
そして、第1,第2の外側隙間s1a,s2aの軸方向幅w1a,w2aが同一とされ、第1,第2の内側隙間s1b、s2bの軸方向幅w1b,w2bが同一とされているので、回転軸32をタービンインペラ33側、コンプレッサインペラ34側ともにバランスよく支持しつつ振動を吸収することができる。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るターボチャージャ用軸受装置のタービンインペラ側の一部を拡大して示す断面図である。また、図6は、ターボチャージャ用軸受装置のコンプレッサインペラ側の一部を拡大して示す断面図である。
本実施形態では、周溝21,22から第1,第2の外側隙間s1a,s2aへ流れるオイルの流量を、第1,第2の内側隙間s1b、s2bへ流れるオイルの流量よりも多く設定するための方法が第1の実施形態とは異なっている。
【0036】
すなわち、本実施形態においては、第1,第2の外側ダンパ形成面41a,42aの外径d1a,d2aが、第1,第2の内側ダンパ形成面41b,42bの外径d1b,d2bの外径よりも小さくなっており、その結果、第1,第2の外側隙間s1a,s2aにおける径方向の幅t1a,t2aが、第1,第2の内側隙間s1b,s2bの径方向の幅t1b、t2bよりも大きく形成されている。
【0037】
したがって、各周溝21,22から軸方向両側に分かれて流れるエンジンオイルの流動抵抗は、径方向幅の大きい第1,第2の外側隙間s1a,s2a側で小さく、径方向幅の小さい第1,第2の内側隙間s1b,s2b側で大きくなり、各周溝21,22から第1,第2の外側隙間s1a,s2aへ流れるオイルの流量を、第1,第2の内側隙間s1b,s2bへ流れるオイルの流量よりも多くすることができる。そのため、特に、タービンインペラ33側へ流れる多量のオイルによって、転がり軸受11や回転軸32の端部を効率よく冷却することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、第1の外側隙間s1aの径方向幅t1aと、第2の外側隙間s2aの径方向幅t2aとが同一寸法とされ、第1の内側隙間s1bの径方向幅t1bと、第2の内側隙間s2bの径方向幅t2bとが同一寸法とされている。したがって、回転軸32をタービンインペラ33側、コンプレッサインペラ34側ともにバランスよく支持しつつ振動を吸収することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、全ての隙間s1a,s1b、s2a,s2bの軸方向幅w1a,w1b,w2a,w2bが同一寸法とされている。しかしながら、第1の実施形態と同様に、第1,第2の外側隙間s1a,s2aの軸方向幅w1a,w2aを、第1,第2の内側隙間s1b,s2bの軸方向幅w1b,w2bよりも小さくすることも可能である。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記各実施形態では、各隙間s1a,s1b,s2a,s2bの軸方向幅w1a,w1b,w2a,w2bや径方向幅t1a,t1b,t2a,t2bは、保持部材20の外周面に形成されたダンパ形成面41a,41b,42a,42bの軸方向幅によって定められていたが、例えば保持部材20の外周面を、周溝21,22を除いて一定の外径とし、軸受ハウジング36の支持部36aの内周面における軸方向の一部を径方向内方へ膨出させてダンパ形成面を形成し、このダンパ形成面によって各隙間s1a,s1b、s2a,s2bの軸方向幅w1a,w1b,w2a,w2bや径方向幅t1a,t1b,t2a,t2bを規定してもよい。
【0041】
保持部材20の外周面に形成された周溝21,22は、断面略三角形状に形成されているが、断面矩形状の溝であってもよい。また、給油通路37は、周溝21,22に対して若干軸方向に位置ずれした配置とされていてもよい。
上記実施形態では、タービンインペラ33側とコンプレッサインペラ34側とで、外側隙間s1a,s2a同士、内側隙間s1b,s2b同士の軸方向幅又は径方向幅を同一寸法としていたが、コンプレッサインペラ34側の第2の外側隙間s2aと第2の内側隙間s2bとの軸方向幅や径方向幅を同一寸法としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10:ターボチャージャ用軸受装置、11:転がり軸受、20:保持部材、21:周溝、22:周溝、32:回転軸、33:タービンインペラ、34:コンプレッサインペラ、36:軸受ハウジング、36a:支持部、T:ターボチャージャ、s1a:第1の外側隙間、s1b:第1の内側隙間、t1a:径方向幅、t1b:径方向幅、w1a:軸方向幅、w1b:軸方向幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7