特許第6168749号(P6168749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168749
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】液体吐出具
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/42 20060101AFI20170713BHJP
   F16K 31/524 20060101ALI20170713BHJP
   B67D 3/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B65D25/42 B
   F16K31/524 A
   B67D3/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-234150(P2012-234150)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-84143(P2014-84143A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.展示(展示会、見本市、博覧会等)により発表 (1)展示会名:第7回国際雑貨EXPO (2)開催場所:東京都江東区有明3−11−1 東京ビッグサイト(東京国際展示場) (3)開催日:平成24年7月4日〜6日 (4)主催者:リードエグジビションジャパン株式会社 2.展示(展示会、見本市、博覧会等)により発表 (1)展示会名:中小企業総合展 JISMEE2012 (2)開催場所:東京都江東区有明3−11−1 東京ビッグサイト(東京国際展示場) (3)開催日:平成24年10月10日〜12日 (4)主催者:独立行政法人中小企業基盤整備機構
(73)【特許権者】
【識別番号】502090688
【氏名又は名称】宮坂 義政
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 義政
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−231600(JP,A)
【文献】 実公昭37−005464(JP,Y1)
【文献】 特開平11−091899(JP,A)
【文献】 特表2008−535742(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3106855(JP,U)
【文献】 実公昭33−003471(JP,Y1)
【文献】 特開2002−303287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/42
B67D 3/02
F16K 31/524
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の供給元に接続される供給孔と、
前記液体の注液先に前記液体を注液する注液孔と、
前記供給孔と前記注液孔との間に設けられる液体流路と、
前記液体流路を開閉する開閉部材と、
を有する液体吐出具において、
前記注液孔を有する第一の筒状部と、
前記第一の筒状部がその軸方向にスライド可能に内包されて一方向にスライドされたとき前記注液孔が一端から突出すると共に他端が前記液体流路と連通する第二の筒状部と、
前記第一の筒状部の外周に設けられ、前記第二の筒状部とで前記液体のシール機能を果たすリング状のシール部と、
前記第一の筒状部の外周の一部に設けられ、前記第一の筒状部をスライドさせるときに指で把持される把持部材と、
前記第二の筒状部の外周の一部に設けられ、前記把持部材の移動を許容する貫通孔と、
前記第二の筒状部の前記一端側に設置され、前記第一の筒状部を前記第二の筒状部から突出させるとき、その突出量を前記シール部が前記貫通孔に露出しないように規制する規制部と、
を有し、
前記貫通孔は、前記第二の筒状部の前記一端から切り欠くすり割り状とし、その開口部に、前記第一の筒状部を前記第二の筒状部から突出させるときに前記第一の筒状部の外周が接触しながら貫通することとなる吸液部材を保持する吸液部保持部材を係合して前記すり割りを塞ぐことで前記貫通孔を形成していること、
を特徴とする液体吐出具。
【請求項2】
請求項記載の液体吐出具において、
前記規制部は、前記第一の筒状部を前記第二の筒状部から突出させるとき前記把持部材が当接する前記吸液部保持部材で構成され、前記第一の筒状部を前記第二の筒状部に収納したときに、前記把持部材が前記貫通孔の他端に当接して止められることを特徴とする液体吐出具。
【請求項3】
請求項1または2記載の液体吐出具において、
前記シール部は、ゴム製のリングの外側外周にポリテトラフルオロエチレン加工を施して形成されたものであることを特徴とする液体吐出具。
【請求項4】
請求項1または2記載の液体吐出具において、
前記シール部は、断面形状が「ハ」字状のポリテトラフルオロエチレン樹脂製のリングで形成されたものであることを特徴とする液体吐出具。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項記載の液体吐出具において、
前記把持部材に電池を設け、前記把持部材または前記第一の筒状部の少なくとも一方に前記電池にON・OFFスイッチを介して接続された照光部材を設けたことを特徴とする液体吐出具。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項記載の液体吐出具において、
前記第一の筒状部が前記注液先に溜められた前記液体に接触したことを検知する検知部材を前記第一の筒状部に設けるとともに、前記検知部材が検知したときに報知する報知手段を設けたことを特徴とする液体吐出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の供給元から液体の注液先に液体を吐出するための液体吐出具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体の供給元、たとえば液体収容缶に収容された液体は、液体収容缶の吐出口に装着された液体吐出具を介して外部に適量だけ吐出される。特許文献1に開示されている液体吐出具は、液体収容缶の吐出口に着脱自在に装着され、ドレインコックの取手部を回転させることにより液体の吐出量を調整している。
【0003】
また、液体の注液先、たとえば石油ストーブなどに給油を行う場合には、排出口から吐出される灯油が確実に石油ストーブのタンクまたはカートリッジに注入されるように、たとえば特許文献2に記載されているような、蛇腹状の注液部などを排出口に取り付け、この注液部を石油ストーブのタンクまたはカートリッジに設けられた給油口に挿入するようにして給油を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−123202号公報(発明の詳細な説明)
【特許文献2】特開平8−144940号公報(要約等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来、石油ストーブなどに給油を行う場合には、特許文献2に示すような蛇腹状の注液部などを石油ストーブのタンクまたはカートリッジの給油口に挿入するが、給油が終了して注液部を給油口から引き抜く際に、ユーザは、注液部を手で持つ必要があるので、手が汚れてしまう。また、給油が終了して注液部を給油口から引き抜く際に、注液部の外周部に付着した灯油が液だれを生ずるという問題がある。
【0006】
本発明者は、上記の問題に鑑み、注液を終了した後の注液部の扱いに際し、液だれしないと共にユーザの手を汚すことのない新規な液体吐出具を、特願2012−013419の明細書において提案した。その提案に係る液体吐出具は、液体の供給元に接続される供給孔と、液体の注液先に液体を注液する注液孔と、供給孔と注液孔との間に設けられる液体流路と、液体流路を開閉する開閉部材とを有する液体吐出具において、注液孔を有する第一の筒状部と、第一の筒状部がスライド可能に内包されて注液孔が一端から突出すると共に他端が液体流路と連通する第二の筒状部と、第二の筒状部の一端側に設置され第一の筒状部が第二の筒状部から突出するとき、第一の筒状部の外周が接触しながら貫通する貫通孔が設けられた吸液部材とを備えたものである。本発明は、上記提案に係る液体吐出具の機能の向上を目的とする。その機能とは、広義では液漏れ防止機能であり、狭義では第一の筒状部の外周と第二の筒状部との間の液体のシール機能または/および第一の筒状部から液体供給先への液体供給時の液漏れ防止機能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、液体の供給元に接続される供給孔と、液体の注液先に液体を注液する注液孔と、供給孔と注液孔との間に設けられる液体流路と、液体流路を開閉する開閉部材とを有する液体吐出具において、注液孔を有する第一の筒状部と、第一の筒状部がその軸方向にスライド可能に内包されて一方向にスライドされたとき注液孔が一端から突出すると共に他端が液体流路と連通する第二の筒状部と、第一の筒状部の外周に設けられ、第二の筒状部とで液体のシール機能を果たすリング状のシール部と、第一の筒状部の外周の一部に設けられ、第一の筒状部をスライドさせるときに指で把持される把持部材と、第二の筒状部の外周の一部に設けられ、把持部材の移動を許容する貫通孔と、第二の筒状部の一端側に設置され、第一の筒状部を第二の筒状部から突出させるとき、その突出量をシール部が貫通孔に露出しないように規制する規制部と、を有し、
貫通孔は、第二の筒状部の一端から切り欠くすり割り状とし、その開口部に、第一の筒状部を第二の筒状部から突出させるときに第一の筒状部の外周が接触しながら貫通することとなる吸液部材を保持する吸液部保持部材を係合してすり割りを塞ぐことで貫通孔を形成していることを特徴とする。
【0009】
また、上述した本発明の液体吐出具は、前記規制部を、第一の筒状部を第二の筒状部から突出させるとき把持部材が当接する前記吸液部保持部材で構成し、第一の筒状部を第二の筒状部に収納したときに、把持部材が貫通孔の他端に当接して止められるようにすることが望ましい。
【0010】
さらに、上述した本発明の液体吐出具においては、前記シール部は、ゴム製のリングの外側外周にポリテトラフルオロエチレン加工を施して形成されたものであることが好ましい。
【0011】
さらに、上述した本発明の液体吐出具においては、前記シール部に断面形状が「ハ」字状のポリテトラフルオロエチレン樹脂製のリングで形成されたものを使用することができる。
【0012】
さらに、上述した本発明の液体吐出具においては、前記把持部材に電池を設け、把持部材または第一の筒状部の少なくとも一方に、電池にON・OFFスイッチを介して接続された照光部材を設けることが好ましい。この照光部材で照光することにより第一の筒状部の先端を確実に液体供給先に挿入することができるので、液漏れを防止することができる。
【0013】
さらに、上述した本発明の液体吐出具においては、第一の筒状部が注液先に溜められた液体に接触したことを検知する検知部材を第一の筒状部に設けるとともに、検知部材が検知したときに報知する報知手段を設けることが望ましい。この報知手段を設けることにより、液体供給時に満杯になったことを知らずに液漏れを発生させてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体吐出具において、第一の筒状部と第二の筒状部との間のシール機能が果たされるため、液漏れをさせることなく注液を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出具を構成要素の一部として使用している注液装置の側面図である。
図2図1の注液装置における液体吐出具の縦断面図である。
図3図2の液体吐出具の内筒が外筒に収納されている状態を示す図である。
図4図2の液体吐出具の内筒が外筒から突出されている状態を示す図である。
図5図2の液体吐出具の吸液部の分解斜視図である。
図6図2のシール部の一具体例を示す縦断面図である。
図7図2のシール部の他の具体例を示す縦断面図である。
図8図2のシール部のさらに他の具体例を示す縦断面図である。
図9】本発明の他の実施の形態に係る液体吐出具の縦断面図である。
図10】本発明のさらに他の実施の形態に係る一部を省略した液体吐出具の縦断面図である。
図11図10の液体吐出具の一部を省略した分解図である。
図12】本発明のさらに他の実施の形態に係る一部を省略した液体吐出具の縦断面図である。
図13図1の注液装置における液体供給タンクの蓋の他の例を示した斜視図である。
図14図13に示す液体供給タンクの蓋の部分断面図である。
図15図13に示す液体供給タンクの蓋に使用される栓部材の斜視図である。
図16図1の注液装置における台座部の他の例を示した斜視図である。
図17】本発明のさらに他の実施の形態に係る液体吐出具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す注液装置1は、たとえば石油ストーブの灯油タンク(または灯油カートリッジ)などのタンクTの蓋Cを外して現れる注液口Hから灯油を供給するための装置である。なお、灯油は一例であり、灯油に代えて水やアルコールなどの他の液体であってもよい。
【0017】
注液装置1は、図1に示すように、液体の供給元である液体供給タンク2と、本発明の実施の形態に係る液体吐出具3と、台座部4と有する。液体供給タンク2は、たとえば家庭用のストーブなどに灯油を供給するときに使用する18リットルポリタンクである。しかし、数十リッタあるいは数百リッタなどの比較的容量の大きなオイルタンクやその他のタンクでもよい。液体供給タンク2の上部には、液体を液体供給タンク2に注入するための蓋5付きの供給口5aと、液体供給タンク2を持ち運ぶための持ち手6とが設けられている。液体供給タンク2の下部には接続部7が設けられ、その接続部7に液体吐出具3の接続リング8がねじ込まれる。接続部7の形状は、蓋5付きの供給口5aの蓋5を取り外した形状と同じであるので、供給口5aの側を接続部7としてもよい。
【0018】
液体吐出具3は、液体供給タンク2の接続部7にねじ込まれる内向きフランジ付き円筒状の接続リング8と、液体流路18を形成する円筒状の本体部9と、後述するスライドノズル構造を有し、注液時には、突出した注液孔DがタンクTに差し込まれて注液を行う注液部10と、液体流路18を開閉するための開閉レバー11とを外観上の構成として有する。
【0019】
台座部4は、これに液体供給タンク2を載置すると共に、液体供給タンク2の載置高さを調整することができる。たとえば液体吐出具3の注液部10は、後述するスライドノズル構造を有し、さらに、注液時には、注液部10の下にタンクTが設置される。したがって、液体吐出具3の下部と台座部4が置かれる床面との間には、一定の間隔が必要になる。また、その間隔は、タンクTの給油口Hの高さによって、様々に変化する。よって、台座部4は、液体供給タンク2の重量を支えられる強度を有すると共に、台座の高さを自在に変更できることが好ましい。なお、図1に図示した台座部4の形状は、台座を模式的に表したものであり、台座部4の形状および構成はどのようなものであってもよい。たとえば、段差のある床面を台座部にしてもよい。
【0020】
次に、図2を参照して液体吐出具3について詳細に説明する。上述したように、液体吐出具3は、接続リング8、本体部9、注液部10、および開閉レバー11を外観上の構成として有する。
【0021】
接続リング8の円形の開口部を形成する内向きフランジ部12の内側には、円筒形のパッキング部材13が装着されている。また、パッキング部材13と内向きフランジ部12の内側との間には、本体部9の端部となる外向きフランジ部14が挟まれている。また、接続リング8の内周部には、螺子15が切られている。螺子15は、図1に示した液体供給タンク2の接続部7の外周部に切られている螺子と螺合するように形成されている。
【0022】
本体部9は、外向きフランジ部14の内周部に液体供給タンク2から液体が供給される円形の供給孔16を有する。また、本体部9は、図2において下方に伸びる円筒状の接続部17が設けられ、その接続部17に注液部10が接続されている。接続部17は、注液部10に接続される排出孔17aを有する。また、本体部9は、液体供給タンク2に接続される供給孔16と注液部10に接続される排出孔17aとの間に、液体流路18を有する。液体流路18には、液体流路18を開閉するための開閉部材となる弁体19が設置されている。弁体19は、横長の円柱部19aの一端部(図2の左側の端部)に先端の径が最大となる円錐状の弁部19bを有している。弁部19bは、後述するコイルバネ25により図2の右方向に付勢されて本体部9の円錐状の内壁により形成されている弁座9aと接触し、本体部9の供給孔16から流入してくる液体を止めることができる。弁体19の弁部19bが本体部9の弁座9aと接触する部分には円形の溝19cが形成され、その溝19cの中にOリング20が嵌め込まれていて、弁部19bが液体流路18を閉塞する際の液密性を高めている。また、弁体19の円柱部19aは、本体部9の内側に設けられている筒部21に軸方向にスライド可能に内接されている。
【0023】
筒部21の内壁と弁体19の円柱部19aの外壁との間には、前後2つのOリング22が設けられている。これにより筒部21の内周と弁体19の外周との間の液密性が確保され、液体が開閉レバー11の側の室23に流入しない。
【0024】
弁体19の円柱部19aは、筒部21からさらに室23まで延出されて開閉レバー11の位置まで達している。なお、円柱部19aの開閉レバー11側の先端部には、円形でかつ円柱部19aとの結合部を有する接触部材24が固着されている。また、接触部材24と筒部21との間には、コイルバネ25が設けられている。接触部材24は、開閉レバー11に当接する部材とコイルバネ25の一端を止める部材を兼ねている。ここで接触部材24は、コイルバネ25からの力を弁体19に伝える役割を果たしている。
【0025】
開閉レバー11は、一端に片側にカム面11aを有する基部11b有し、その基部11bが本体部9の弁座9aと反対側の端部の内側に、すなわち、室23の接触部材24の背後に挿入され、軸部26を中心にして回動させることができるように設けられている。なお、接触部材24を自己潤滑性樹脂などで構成すれば、開閉レバー11の動きをスムーズにすることができると共に、開閉レバー11と接触部材24との接触面の磨耗を少なくし、液体吐出具3の寿命を延ばすことができる。開閉レバー11を図2において時計方向に回動させると、開閉レバー11のカム面11aが接触部材24を押すため、弁体19は図2の左方に動く。この結果、弁部19bと弁座9aとの間には隙間が生じる。これにより液体供給タンク2の液体は液体流路18に流れ込み、排出孔17aから注液部10に流れ込む。開閉レバー11に対する力を取り除くと、弁体19は、コイルバネ25の伸び力によって図2の右方に動き、開閉レバー11は当初の位置に復帰する。この結果、弁部19bと弁座9aとの間の隙間が無くなり液体の液体流路18への流れ込みは止まる。
【0026】
注液部10は、注液部接続リング27によって本体部9の下面に突設された接続部17に取り付けられている。すなわち、排出孔17aの外周には、螺子28が切ってあり、また、注液部接続リング27の内周にも螺子29が切ってある。螺子28と螺子29とを螺合することによって、注液部10は、本体部9に取り付けられる。さらに、排出孔17aの下縁にはゴム製またはシリコン製のリング状のパッキング部材30が設けられている。このパッキン部材30によって、排出孔17aと後記外側筒状部32との間で、液密性が確保される。
【0027】
注液部10は、円筒状の内側筒状部(以下、「内筒」という。)31、円筒状の外側筒状部(以下、「外筒」という。)32、リング状の吸液部33、および小径と大径の円筒部を軸方向に結合してなる吸液部保持部材34を有して構成される。内筒31は特許請求の範囲に記載の第一の筒状部に相当し、外筒32は特許請求の範囲に記載の第二の筒状部に相当する。なお、図2図3には、内筒31が外筒32に対して最も内方に収納された状態が示されている。
【0028】
外筒32は、内部に内筒31を内包している。内筒31は、外筒32の内部を中心軸N方向、かつ本体部9とは反対方向とその逆方向に移動可能なスライドノズル構造を構成する。また、内筒31が外筒32の内部を移動するときに、吸液部材33の中心に設けられる貫通孔Pの内周と接触しながら移動する。吸液部材33は、フェルトなどの液体を吸収する能力が高い材質によって形成されている。吸液部材33は、その吸収力の良さと伸縮性がある点でフェルトが好ましい。
【0029】
吸液部保持部材34は、内側に吸液部材33を保持し、外筒32に設けられた凹部35と吸液部保持部材34に設けられた凸部36とが嵌合する。これにより吸液部保持部材34は、外筒32の端部に係止される。この係止関係は逆の構成、すなわち外筒32に凸部を設け、吸液部保持部材34に凹部を設ける構成としてもよい。
【0030】
また、図3に示すように、注液部10の内筒31には把持部材37が設けられている。把持部材37は、内筒31を手動でスライド移動させるために、ユーザが指などで把持するものである。また、外筒32には、把持部材37の縦方向の移動を許容する切欠部38が設けられ、把持部材37は、この切欠部38から外側に突出されている。切欠部38は、外筒32の切割部39まで続いている。すなわち切欠部38は、外筒32の図2図3における下端まで続き、すり割りとなっている。なお、切割部39が設けられている外筒32の外周部には、図2に示したように、外筒32の凹部35に対して吸液部保持部材34の凸部36が嵌合しているので、切割部39が外側に開いてしまうことを防ぐことができる。また、この切欠部38の存在によって、外筒32の径が細くなることを防止するため、吸液部保持部材34には切割部39から切欠部38に挿入される後述する係合部43が設けられている。このように、吸液部保持部材34により切割部39が外側に開かないように、かつ内側にしぼまないようにしているため、外筒32の内壁と内筒31の外壁との間には、隙間が無く、かつ内筒31の軸方向のスライドをスムーズにできる。
【0031】
また、図3に示すように、吸液部保持部材34は、すり割り状の隙間40を多数有する。この隙間40により吸液部保持部材34は、吸液部33を保持する際に、吸液部材33が十分に空気に触れるように保持することができる。これによれば、吸液部材33が液体を吸液した際に、この液体が自然に空気中に蒸発することを促進することができる。また、吸液部保持部材34は、隙間40を形成する複数の突出部41を有している。この突出部41の先端は、図2に示すように内側に折れ曲がる爪部42となっている。この爪部42によって、吸液部材33が外れないように保持されている。一方で、突出部41は弾性を有し、突出部41を外側に引っ張ることで爪部42が吸液部材33から離れるので、古い吸液部33を取り外して新品の吸液部材33に交換することは容易である。これによれば、吸液部保持部材34は、通常時には確実に吸液部材33を保持するが、吸液部材33の交換時には、吸液部材33の脱着を容易に行うことができる。
【0032】
また、図4に示すように、把持部材37をユーザが指で把持し、把持部材37を切欠部38の下方に移動させることによって、内筒31を外筒32から下方に突出させることができる。把持部材37は、吸液部保持部材34の図4における上端に当たってさらなる下方への移動が阻止される。図4は、内筒31が外筒32から最も突出した状態を示す。
【0033】
吸液部保持部材34の凸部36は、図5に示す例では、多数の凸部36によって構成されている。この他にも凸部36を、1つの環状の凸部によって構成してもよい。なお、この実施の形態では、吸液部保持部材34には、切割部39から切欠部38に入り込む係合部43が設けられている。この係合部43は外筒32の径が小さくなるのを防ぎ、切欠部38の径方向の大きさを上方から下方まで一定にし、把持部材37の動きをスムーズにすると共に、内筒31と外筒32との間の隙間を無くし、かつ内筒31のスライドをスムーズに行わせる働きを有している。
【0034】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る液体吐出具3は、台座部2に載置された容量が大きい液体供給タンク2に接続され、容量が小さいタンクTに液体を小分けする際に用いられる。
【0035】
液体吐出具3からタンクTに液体を注液する際には、タンクTからキャップCを取り去って現れる給液口Hの真上に、注液部材3の吸液部保持部材34が位置するようにタンクTを置く。
【0036】
次に、ユーザが指などで把持部材37を下方に押し下げると、内筒31の先端部が給液口HからタンクT内に挿入される。この状態で、ユーザが指などで開閉レバー11を図1図2の右方向に回動操作して弁体19を開けると、液体供給タンク2内の液体が液体吐出具3を通過してタンクT内に流れ込む。
【0037】
やがてタンクT内に所定量の液体が供給され、供給を終了したいときには、ユーザは開閉レバー11から手を離すか、または指などで開閉レバー11を図1図2の左方向に操作する。すると弁体19が閉じられ、液体吐出具3からの液体の流出は止まる。
【0038】
次に、ユーザが指などで把持部材37を押し上げると、図4の状態であった内筒31が図3の状態に戻る。このとき、内筒31の外周は、吸液部材33の貫通孔Pの内周に触れながら移動する。これにより吸液部材33は、内筒31の外周に付着していた液体を吸液する。したがって、内筒31の外周からの液だれは完全に防止することができる。
【0039】
また、これらの操作の際に、ユーザの指は、液体には一切触れることがない。したがって、タンクTへの液体の供給に際し、ユーザの手や指などが汚れることは一切ないようにできる。また、図2図3に示すように、把持部材37を最も上方に押し上げると、内筒31の下端は、吸液部33の下端より上方に位置する。すなわち吸液部材33の下端側が内筒31の側に向かってわずかではあるが突出し、内筒31の下端面に接触することとなり、内筒31の下端は、吸液部材33に完全に収納される。このため、内筒31の下端面や内側面に残っていた液体も吸収できる可能性が高くなり、液だれ防止の効果がより高くなる。
【0040】
吸液部材33は、フェルトまたは紙などで形成することができる。また、吸液部材33は、吸液部保持部材34が有する多数の隙間40によって、大きな表面積が空気に触れる。これにより、吸液部材33が吸液した液体は、短時間に吸液部材33から空気中に蒸発する。したがって、次回、液体吐出具3から吸液を行う際には、吸液部材33は乾いた状態に戻っていて、吸液部材33は、再び良好に内筒31の外周などに付着した液体を吸液することができる。また、吸液部材33は、容易に交換可能である。なお、内筒31は図2図3の状態から図4の状態までの移動およびその逆の移動ができるが、タンクTの大きさ、台座部4の大きさなど、注液装置1の構成や使用形態によって内筒31の移動終了位置(=タンクTに入れた状態の位置)は適宜変更してもよい。また、同様に、液体排出後、内筒31の戻し位置は、図2図3の位置ではなく途中の位置としてもよいが、液だれ防止の観点からは図2図3の位置が最も好ましい。
【0041】
以上の液体吐出具3の構成は、特願2012−013419の明細書において提案した液体吐出具と同じである。この実施の形態に係る液体吐出具3においては、以上の構成に加え、内筒31の外周に外筒32とで液体のシール機能を果たすリング状のシール部44、たとえばOリングが設けられている。このシール部44は内筒31の上端部に設けられ、把持部材37を下方に押して内筒31を吸液部材33から下方に突出させると、シール部44も外筒32の外周に密着したまま下方にスライドする。この場合、内筒31の外筒32から突出量は、把持部材37が外筒32の貫通孔38の下端を塞いでいる吸液部保持部材34の上端に当たって規制されるが、そのときの突出量はシール部44が貫通孔38に露出しないように設定されている。このように、吸液部保持部材34は、内筒31の下方向への移動を規制する規制部となっている。図3はシール部44が最上位置に存する状態、図4はシール部44が最下位置に存する状態をそれぞれ示していて、最下位置に存するシール部44は貫通孔38に露出していない。これにより、シール機能が確保されている。
【0042】
図2のシール部44は、図6に例示するように、ゴム製のリング44aの外側外周にテフロン(登録商標)による加工44bを施して形成された構造のもの(44A)であることが好ましい。これにより、シール部44の摩擦係数が小さいものとなるので、すなわち、リング44aと外筒32との間の摩擦力が小さくなるので、内筒31が外筒32に対してスムーズに移動可能である。
【0043】
また、図2のシール部44には、図7に例示するように、断面形状が「ハ」字状のテフロン(登録商標)樹脂製のリング44cで形成された構造のもの(44B)を使用することができる。リング44cは断面形状が、図7において、倒立「ハ」字状となるように装着しても良い。
【0044】
また、図8に示すように、内筒31の上端部の外周に溝31aを形成するとともに内筒31の外周から若干突出する断面形状が三角状の突縁31bを形成した構造のもの(44C)をシール部44としても良い。このシール構造44Cは、先端が細いので、適宜の弾性を有するため、シール効果を発揮する。内筒31の外周に突縁31bから離れた位置において突縁31bと略同径の突条31cを設けると、突縁31bのみで突条31cが無い場合に比し、内筒31の移動安定性が高くなるので好ましい。
【0045】
本発明の好ましい実施の形態においては、把持部材37の外部または内部に電池(図示せず)を設け、把持部材37または内筒31の少なくとも一方に、ON・OFFスイッチ(図示せず)を介して電池に接続された照光部材(図示せず)、たとえばLEDを設けることが好ましい。この照光部材を設けると、突出された内筒31の先端をタンクTに挿入するとき、その内筒31の先端又はその周辺を明るくして、内筒31の先端を容易・確実にタンクTに挿入することができる。ON・OFFスイッチは、把持部材37を把持する指の力によりONされる圧電スイッチまたはトグルスイッチなどでよい。
【0046】
さらに、本発明の好ましい実施の形態においては、内筒31がタンクTに溜められた液体に接触したことを検知する検知部材(図示せず)、たとえば周知の液面センサーを内筒3の下端部に設けるとともに、その検知部材が検知したときに報知する報知手段(図示せず)、たとえば、発光素子やブザーなどが設けられている。これにより、液体吐出具3からタンクTに液体を供給している際に、満杯近くになると報知手段が作動するので、満杯になっていることを知らずに溢出させてしまうことが防止される。これも広義の液漏れ防止である。
【0047】
[他の実施の形態]
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限りで様々に変更することができる。たとえば図9に示す液体吐出具3Aは、注液部10Aの部分についても本体部9Aと一体成形したものである。これによれば液体吐出具3と比較して部品点数を削減することができる。
【0048】
また、図2の例では、本体部9と注液部10との接続構造として、本体部9の接続部17に注液部接続リング27を螺合し、その注液部接続リング27で注液部10の外筒32の上端部の外向きフランジを接続部17との間に挟持する構造を取っているが、図10図11に示す液体吐出具3Bのように、本体部9の接続部17の下端の外周の互いに反対側の位置に外側に突出する突起17bを2個設けるとともに、外筒32の上端部外周に外筒リング32aを形成し、その外筒リング32aの互いに反対側の位置に2個の孔32bを形成して、接続部17と外筒リング32aの材料弾性を利用して、突起17bを孔32bの中に圧入することにより、本体部9と注液部10とを接続してもよい。この接続構造では本体部9と注液部10とが堅固に結合され、図2の注液部接続リング27の螺合が緩むような事態は発生しない。なお、突起17bと孔32bを各2個ではなく、各3個としたり、各4個としたりなど、3個以上の同数としてもよい。また、孔32bの数を突起17bの数より多くしてもよい。
【0049】
図12に示す液体吐出具3Cでは、開閉レバー11の基部11bの付近の弁体9側の面に複数個の歯11cを形成するとともに、本体部9の開閉レバー11を挿通させているスリット9bに、先端に爪45aを有するスライダ45を図12において左右方向、すなわち、開閉レバー11に遠近する方向に移動可能に装着してある。図12には、弁体9が閉められている状態が示されている。
【0050】
この状態の開閉レバー11を図12において時計方向に回動し、任意の位置で止め、スライダ45を図12において右方向に移動して爪45aを開閉レバー11に当てると、爪45aがいずれかの歯11cと噛み合うため、指からの力を除かれた開閉レバー11はその位置に止められる。すなわち、開閉レバー11を任意の角度まで回動した後、スライダ45を開閉レバー11方向に移動することにより、開閉レバー11をその位置に止め、弁部19bと弁座9aとの間をわずかな隙間とし、その状態を保持することができる。換言すると、注液部10からの液体注出量を、数段階のうち、任意のものに設定し、その設定量を固定することができる。また、歯11cと爪45aとを設けない開閉レバー11とスライダ45を使用し、開閉レバー11を任意の位置にわずかに回動させ、コイルバネ25の力で元に戻らないように(図12において反時計方向に開閉レバー11が回動しないように)、スライダ45を右方向に移動させ、回動止めとするようにしてもよい。その位置でスライダ45が位置固定されれば、開閉レバー11は、コイルバネ25の力で元に戻らないため、少量の注液が可能となるとともに、液体注出量を無段階に設定可能となる。
【0051】
図1に示す蓋5付きの供給口5aは、図13図14に示す蓋5Aによって供給口5aをふさぐようにするのが好ましい。この蓋5Aは、吸気孔51を有する吸気筒部52と、供給口5aをふさぐために蓋5Aを手で持ち供給口5aに対し相対回動させるための把持部53と、供給口5aを覆うと共に吸気筒部52および把持部53を一体化させている本体部54とを有する。蓋5Aを取り付ける際、吸気筒部52が図1の状態で最も上方に位置するようにセットする。このため、吸気筒部52は、図1の状態時には略垂直状態となる。
【0052】
吸気筒部52の吸気孔51には、図15に示す栓部材56の栓部57が抜き差し可能に設置される。栓部材56は、栓部57と、吸気筒部52の外周がその中央の孔部58に入り込み、吸気筒部52に係止される係止部59と、栓部57側と係止部59側とを結び両者を一体化させる連結部60と、吸気孔51に差し入れられた栓部57を抜くときに人がつかむつかみ部61とを有する。
【0053】
液体供給タンク2が図1に示す状態ではなく、図1の状態から反時計方向に90度回転した、いわゆる普通の状態のときには、吸気筒部52の吸気孔51には、栓部材56の栓部57が差し入れられ、吸気孔51から液体が外部に漏れないようにされている。液体供給タンク2を図1に示す状態として、タンクTに注液しようとしたとき、吸気筒部52が図1の状態で最も上方に位置するようにセットされ、吸気筒部52は、略垂直状態となっている。その状態で、吸気孔51に差し入れられた栓部57を抜く。この結果、空気が吸気孔51から液体供給タンク2に入り込み、タンクTへのスムーズな注液が可能となる。また、吸気筒部52は、略垂直状態となっているため、吸気孔51の先端は、液体供給タンク2内の液体の最上端より上方に位置することとなり、液体供給タンク2内の液体が外部に漏れることはない。液体供給タンク2を図1の状態から反時計方向に90度回転して再度、いわゆる普通の状態に戻すときには、その戻す動作を行う前に、吸気孔51に栓部材56の栓部57が差し入れられ、栓がされる。
【0054】
台座部4は、図16に示す台座部4Aとしてもよい。この台座部4Aは、支持体部71と、保持体部72とで主に構成されている。保持体部72は、支持体部71にて支持されると共に、図16に示す状態と、その状態から図16の矢示する方向(A方向)に70〜90度、好ましくは80〜85度、回転させた状態との2つの状態を取ることができる。
【0055】
支持体部71は、各端部にキャスター72を有する2つの棒状の支持脚部73,73と、2つの支持脚部73,73をつなぐ平板状の脚連結部74と、脚連結部74の中央から垂直に上方に伸びる1つの垂直支持部75と、垂直支持部75の上端から水平に伸びる水平部76およびその水平部から垂直上方に伸びる垂直部77を有する回動支持部78と、を有する構成とされている。垂直支持部75は、固定部75aと、その固定部75aに対し上下に可動できる可動部75bとを有し、可動部75bを上下させ、所定の高さとなったら、ねじなどの固定部材(図示省略)によって、その位置を固定できるようになっている。
【0056】
保持体部72は、液体供給タンク2を保持するもので、四角状の板部材で形成される底部81と、長方形状の板部材で形成される2つの側部82,82と、長方形状の板部材で形成される注液用底部83と、を有する。注液用底部83には、液体吐出具3が位置する部分に吐出具用切り欠き84が設けられ、液体吐出具3を配置しやすくしている。
【0057】
支持体部71と保持体部72とには、保持体部72が回動可能となるように、両者をつなぐネジ86,86が設けられている。また、支持体部71の一方の垂直部77(図16において手前側の垂直部77)には、保持体部72の2つの状態を位置決めさせるとともにその各状態を維持するための切り替え部材87が設けられている。この切り替え部材87は、垂直部77から遠ざかる方向に引っ張ることで、側部82に設けられている2つの穴88,88の一方から切り替え部材87の係合部が抜け出て、保持体部72が回動可能となる。保持体部72を90度回転させて2つの穴88,88の他方が切り替え部材87の係合部の位置に来ると、係合部がその穴88に入り込み、保持体部72のその状態を位置決めさせるとともにその状態を維持する。この切り替え部材87は、内部にバネ部材と係合部を有し、垂直部77から遠ざかる方向に引っ張られるとバネ部材が伸び、切り替え部材87を離すと、バネ部材の戻り力によって係合部が穴88に入り込む、という動作をする。
【0058】
上述した実施の形態では、開閉レバー11が弁体19を押圧して弁部20を開閉する構成としたが、開閉レバー11と弁体19に代えてドレインコックの取手を回すことにより液体流路が開閉する構成でもよい。その他にも液体流路の構成については、様々に変更してよい。また、手を汚さないようにするため、把持部材37と切欠部38を設けたが、手が汚れてもよい場合や他の方法で内筒31をスライド可能に構成すれば、把持部37と切欠部38は省略してもよい。
【0059】
上述した実施の形態では、内筒31の長さは、外筒32の長さよりも短いとして説明した。これにより内筒31の下端が完全に吸液部材33の内部に収納されるので液だれが無くなり好ましい。しかしながら多少の液だれは許容してもよい場合には、内筒31の長さを外筒32の長さよりも長くしてもよい。また、このような場合には、完全収納時の内筒31の下端が吸液部材33の下端から突出してもよい。また、吸液部保持部材34は、多数の隙間40および突出部41を有するとして説明したが、これらの隙間40および突出部41を無くした筒状としてもよい。
【0060】
また、開閉レバー11の回動範囲を大きくするために、スリット9bに加え、本体部9の図2図12などにおける右端部の薄板部にも、開閉レバー11の動きを許容するスリットを、スリット9bに連続するように設けてもよい。このようなスリットは、右端部に続けて下端部にも設けるようにしてもよく、また、スリットではなく、右端部の薄板部全体を削除する構成(図17参照)としてもよい。図17に示す液体吐出具3Dは、開閉レバー11の回動範囲を大きくするためと開閉レバー11を大きくするために、スリット9bを幅方向一杯の大きさとし、かつ右端部の薄板部全体を削除したものとなっている。
【0061】
このように、スリットを設けたり、その部分全体を削除したりする構造にすると、開閉レバー11の回動範囲を大きくすることができる。回動が大きいとき(約90度の回動を超えるとき)には、図2等に示されているカム面11aの形状から、コイルバネ25の力では開閉レバー11が元に戻らないようになる。すなわち、一定以上の回動によって、開閉レバー11は開の状態が維持されることになる。この結果、注液のオン、オフがメカ的にたやすく達成される。このような構造に加え、図12に示すスライダ45を加えたり、無段階設定のスライダを加えたりすることで、注液ゼロ(オフ)と注液大量(オン)の2段階に加え、その間の注液量を多数設定可能となる。
【0062】
液体吐出具3,3A,3B,3C,3Dの主な材質は、パッキング部材13,30、コイルバネ25、および吸液部材33などを除いて合成樹脂を想定しているが、合成樹脂に代えて金属製であってもよい。本体部9と注液部10を形成する合成樹脂としては、その硬度(耐久性、精度)を考慮すると、POM(ポリオキシメチレン(polyoxymethylene))またはナイロンが好ましく、コストと硬度の両者を考慮すると、POMが好ましい。シール部44、44cは、米国デュポン社製のフッ素ゴムであるバイトン(登録商標)とすると、動きやシール性が長い期間、良好なものとなり好ましい。なお、硬度55〜60のバイトン(登録商標)、特に硬度55のものが好ましい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、吸液部保持部材34が内筒31の下方向への移動を規制する規制部となっているが、他の部品を外付けし規制部としたり、貫通孔の形状を工夫して、貫通孔を囲む部分を規制部としてもよい。また、貫通孔として、すり割り状の切欠部38を示したが、周囲を囲まれる孔としてもよい。
【0064】
また、注液装置1は、台座部4を有しているが台座部4を有しない構成としてもよい。さらに、把持部材37と切欠部38は、それぞれ1つとしたがそれぞれ2つなど複数としてもよい。液体吐出具3,3A,3B,3C,3Dは、液体供給タンク2に設置するものとしたが、貯蔵量200リットル以上の灯油のホームタンクなど各種のホームタンクに設置するものとしても良い。また、開閉レバー11とその周辺および/または弁体19の構造は、水タンク用の液体吐出具に適用してもよい。さらには、液体吐出具3,3A,3B,3C,3Dを水タンク用に適用してもよい。水タンクの場合、手が汚れてしまうや液だれを生ずるという問題がそれほど深刻にはならないため、液体吐出具3,3A,3B,3C,3Dを水タンク用に使用するメリットはそれほど高くはないが、場所や使用する人によっては、同じような問題が重要となる場合があるからである。
【符号の説明】
【0065】
3,3A,3B,3C,3D…液体吐出具、16…供給孔、18…液体流路、19…弁体(開閉部材)、19a…弁部(弁体の一部)、31…内筒(第一の筒状部)、32…外筒(第二の筒状部)、33…吸液部材、37…把持部材、38…切欠部(貫通孔)、34…吸液部保持部材(規制部)、D…注液孔、T…タンク(注液先)、P…貫通孔、44,44A,44B,44C…シール部
図1
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