特許第6168788号(P6168788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6168788-加熱調理器 図000002
  • 特許6168788-加熱調理器 図000003
  • 特許6168788-加熱調理器 図000004
  • 特許6168788-加熱調理器 図000005
  • 特許6168788-加熱調理器 図000006
  • 特許6168788-加熱調理器 図000007
  • 特許6168788-加熱調理器 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168788
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20170713BHJP
   F24C 15/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   F24C1/00 330Z
   F24C15/02 L
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-29295(P2013-29295)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-156994(P2014-156994A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】神谷 耕想
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安在 英将
(72)【発明者】
【氏名】福井 敬助
(72)【発明者】
【氏名】増田 翔太郎
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−020861(JP,U)
【文献】 実開平06−051485(JP,U)
【文献】 特公昭35−018503(JP,B1)
【文献】 特開昭47−010157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C1/00−1/16
F24C7/00−7/10
F24C9/00−15/14
A47J27/00−27/13
A47J27/20−29/06
A47J33/00−36/42
F16J15/00−15/14
E06B7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理庫の開口部を扉で押圧封止した状態で加熱調理を行う加熱調理器において、加熱調理庫の開口端縁と扉との間に設けられるパッキンの断面形状を、加熱調理庫開口端縁のパッキン取付溝へ嵌め込むための肉厚の長方形の形状を呈する基部を成し、当該長方形の中央部にその周囲に肉厚の部分が残存する形で嵌込み時の変形吸収のための中空部を有するとともに、当該長方形の前記パッキン取付溝の底側に面する辺が内側に湾曲して嵌込み時の変形吸収のための逃げ部を有している第一の部分と、前記第一の部分の加熱調理庫内側空間に面する前端部から加熱調理庫外側空間の前方へ徐々に曲がりながら弧状に延びる第二の部分と、前記第一の部分の加熱調理庫外側空間に面する前端部から途中にU字形の折れ曲がり部を介在して加熱調理庫外側空間の前方に延びる第三の部分とを連結して、第一の部分、第二の部分および第三の部分で囲まれた閉じた中空の図形とした
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、前記第三の部分が前記U字形の折れ曲がり部の前後両側に直線部を形成してなる
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱調理器において、前記第三の部分の前記U字形の折れ曲がり部のU字形が、前記第一の部分に近い方の側でより深く、前記第一の部分に遠い方の側でより浅い形状を呈する
ことを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スチーム対流式オーブンなどの加熱調理器に関し、特に、扉を閉めた状態のとき加熱調理庫と扉の間の密閉を保持するために、扉の内側面に当接する加熱調理庫の開口端縁に沿って設けられたパッキンに関し、長期の繰返し使用に対して疲労・劣化しにくいようにパッキンの断面形状を工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器は、食材を加熱調理するための装置であり、前面に開閉扉を有するハウジングの中に食材加熱用の加熱調理庫を備えて構成されており、それに加えて加熱用の電気ヒータ、送風ファン、制御回路などを備えており、さらに、スチーム対流式オーブンの場合は、蒸気加熱用の蒸気発生装置を備えて構成されている。一般に、前面の開閉扉は、ハウジングの一部を形成する外扉の内側にさらに耐熱ガラス製の内扉を有する二重構造になっており、この内扉で加熱調理庫の手前側の開口端縁を封止した状態で加熱調理を行う仕組みになっている。加熱調理庫の開口端縁の内扉に面する箇所には、開口端縁に沿ってパッキンが設けられていて、調理中はパッキンに内扉が押し当てられて加熱調理庫を密封状態にする。
【0003】
図1は、加熱調理器10の一例を図解する斜視図であり、ハウジング11の前面の開閉扉13が右方に開かれた状態を示している。加熱調理庫12は、手前側に開口した直方体状の収納室を形成しており、開口端縁12aの周囲に沿ってパッキン20が設けられている。他方、開閉扉13は、ハウジング11の一部を形成する外扉13aの内側に耐熱ガラス製の内扉13bを有しており、開閉扉13を閉めた状態では、内扉13bがパッキン20に押し当てられて、加熱調理庫12の庫内空間を密封し、熱風や蒸気の漏れを防いでいる。運転中は、庫内の温度は高温になり、加熱調理時に300℃に達する場合もある。
【0004】
図2は、従来の加熱調理器において、加熱調理庫開口部の上側の端縁12aに沿って設けられたパッキン20の断面を、内扉によって押圧されていない状態で示し、パッキン20は、内扉に当接する側(図示では、右側)の部分が中空で薄肉の扇形状を呈していて、庫外側の空間OUTに面している側(図示では、上側)21は、前方(図示では、右方)に行くに従って庫内側の空間INのある側(図示では、下側)に向かって徐々に曲がりながら傾斜した面になっており、庫内側の空間INに面している側(図示では、下側)22は、前方に向かってほぼ直線的に延びた面になっている。パッキン20の加熱調理庫端縁取付け側の部分23は、加熱調理庫開口端縁12aのパッキン取付溝12bへの嵌込み時の変形吸収のための中空部を有する肉厚の長方形状を呈している。二点鎖線Y−Yは、開閉扉13を閉めた場合に内扉13bの内側面が来る位置を示す。
【0005】
図3は、開閉扉13を閉めた場合に、図2のパッキン20が内扉13bによって押圧された状態を示し、パッキン20の庫内側の空間INに面している側(図示では、下側)22が、ジグザグに折れ曲げられている。この部分は、庫内の高温の空間INに通じているので、高温下での圧縮歪みにより材質の劣化やひび割れが生じやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記のような不具合を解消することを目的とし、加熱調理器において、加熱調理庫の開口端縁を内扉で押圧封止するためのパッキンの形状を改良することによって、加熱調理器運転に伴う材料の劣化が生じにくいパッキンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明による加熱調理器は、加熱調理庫の開口部を扉で押圧封止した状態で加熱調理を行うべく加熱調理庫の開口端縁と扉との間に設けられるパッキンの断面形状を、加熱調理庫開口端縁のパッキン取付溝へ嵌め込むための肉厚の長方形の形状を呈する基部を成し、当該長方形の中央部にその周囲に肉厚の部分が残存する形で嵌込み時の変形吸収のための中空部を有するとともに、当該長方形の前記パッキン取付溝の底側に面する辺が内側に湾曲して嵌込み時の変形吸収のための逃げ部を有している第一の部分と、第一の部分の加熱調理庫内側空間に面する前端部から加熱調理庫外側空間の前方へ徐々に曲がりながら弧状に延びる第二の部分と、第一の部分の加熱調理庫外側空間に面する前端部から途中にU字形の折れ曲がり部を介在して加熱調理庫外側空間の前方に延びる第三の部分とを連結して、第一の部分、第二の部分および第三の部分で囲まれた閉じた中空の図形としたことを特徴とする。
【0008】
この発明に加熱調理器では、前記第三の部分をU字形の折れ曲がり部の前後両側に直線部が形成された形状とすることができる。
【0009】
この発明に加熱調理器では、前記第三の部分のU字形の折れ曲がり部のU字形を、第一の部分に近い方の側でより深く、第一の部分に遠い方の側でより浅い形状とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、加熱調理器において、加熱調理庫の開口端縁と扉との間に設けられるパッキンの断面形状を、加熱調理庫の内側空間に面する側では前方に向かって外側に向かって徐々に曲がる弧状とし、加熱調理庫の外側空間に面する側では途中にU字形の折れ曲がり部を介在させて前方に延ばして、連結して閉じた中空の図形としたので、中空部の変形によるパッキンとしての順応封止性に優れているとともに、高熱側では弧状面の単純な屈曲によりパッキンの部材自体に異常な変形力が作用せず、常温側では前後方向の押圧変形をU字形の折れ曲がり部が吸収することによりパッキンの部材自体に異常な変形力が作用せず、長期の使用に対してもパッキンの劣化が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】加熱調理器の一例を示す斜視図である。
図2】従来の加熱調理器における、パッキンを図解する断面図である。
図3】従来の加熱調理器における、パッキンの作用状態を図解する断面図である。
図4】この発明による加熱調理器におけるパッキンの第一の実施形態を図解する断面図である。
図5】この発明による加熱調理器におけるパッキンの第一の実施形態の作用状態を図解する断面図である。
図6】この発明による加熱調理器におけるパッキンの第二の実施形態を図解する断面図である。
図7】この発明による加熱調理器の実施形態における芯温センサ保持部を設けたラックフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明による加熱調理器を、図面を参照しながら説明する。この発明による加熱調理器は、この発明による改良点以外は、一般の加熱調理器と同様であるので、図1を参照してまず概要を説明する。加熱調理器10のハウジング11は、前面(使用者から見て手前側)に開閉扉13が設けられており、開閉扉13は、ハウジング11の一部を形成する外扉13aと、その内側に設けられた耐熱ガラス製の内扉13bとの二重扉構造になっている。ハウジング11の内部には、直方体容器状の加熱調理庫12が手前側に開口して設けられており、この中に調理すべき食材を入れて加熱する。加熱調理庫12の開口端縁12aには、その周囲に沿ってパッキン30が設けられている。開閉扉13を閉めた状態では、内扉13bがパッキン30に押し当てられて、加熱調理庫12の庫内空間を密封し、熱風や蒸気の漏れを防ぐ。
【0013】
この発明による加熱調理器では、当該パッキンの構造に特徴があるので、以下パッキンの構造について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図4は、この発明による加熱調理器におけるパッキンの第一の実施形態を図解する断面図である。この実施形態において、加熱調理庫開口部の上側の端縁12aに沿って設けられたパッキン30は、加熱調理庫端縁取付け側の部分は、加熱調理庫開口端縁12aのパッキン取付溝12bへ嵌め込むために肉厚のほぼ長方形の形状を呈する基部33を成し、当該長方形の中央部にその周囲に肉厚の部分が残存する形で嵌込み時の変形吸収のための中空部33aを有するとともに、当該長方形の前記パッキン取付溝の底側に面する辺が内側に湾曲して嵌込み時の変形吸収のための逃げ部33bを有している。パッキン30の内扉に当接する側(図示では、右側)の部分は、内扉13bによって押圧されていない状態では、中空で薄肉の概略扇形状を呈していて、庫内側の空間INに面している側(図示では、下側)は、基部33の加熱調理庫内側空間に面する前端部から加熱調理庫外側空間OUTの前方(図示では、右方)に向かって徐々に曲がりながら弧状に延びる傾斜面部31になっており、庫外側の空間OUTに面している側(図示では、上側)は、基部33の加熱調理庫外側空間に面する前端部から途中にU字形の折れ曲がり部32aを介して加熱調理庫外側空間OUTの前方(図示では、右方)に延びる屈曲面32になっている。基部33、傾斜面31および屈曲面32は、互いに順次連結して囲まれた内部に中空部35を有する閉じた図形を形成して、パッキンとしての適度のクッション性を持たせてある。なお、二点鎖線Y−Yは、開閉扉13を閉めた場合に内扉13bの内側面が来る位置を示す。
【0015】
図5は、開閉扉13を閉めた場合に、図4のパッキン30が内扉13bによって押圧された状態を示し、パッキン30の庫内側の空間INに面している側(図示では、下側)の傾斜面部31は、弧状面が単純に屈曲し、パッキン部材自体に無理な変形が生じない。また、パッキン30の庫外側の空間OUTに面している側(図示では、上側)の屈曲面32は、U字形部分で屈曲変形して前後方向(図では、左右方向)の押圧力が吸収され、パッキン部材自体に無理な変形が生じない。なお、図4、5から分かるように、U字形の折れ曲がり部32aの前後両側に所定寸法の直線部を形成してあると、U字形部分が折れ曲がった場合に、パッキン30の中空部35の内壁にぶつからないための余裕があるので、材料の劣化を招かない変形の余裕が取れる。
【0016】
図6は、この発明による加熱調理器におけるパッキンの第二の実施形態を図解する断面図である。この実施形態では、パッキン30の庫外側の空間OUTに面している側のU字形の折れ曲がり部32aのU字形が、基部33に近い側の脚部32a1と基部33から遠い側の脚部32a2とで深さが異なっており、脚部32a2を脚部32a1よりも浅い形状としてある。このようにすると、U字形の内部がより開かれた状態になるので、掃除がし易くなり、また、扉の開閉に対して空間的な余裕がより大きく取れるという利便もある。
【0017】
次に、この発明の実施形態におけるさらなる工夫について説明する。この種の加熱調理器では、被加熱食材の芯温(厚みのある食材の内部の温度)を測定する必要のある場合が多い。そのため、この種の加熱調理器には、芯温センサが付属していて、調理の進行程度を確認しながら調理を進めるられるように用意されている場合が多い。芯温センサは、測定に使用しない間は邪魔にならない所に保持しておくのが望ましい。図7は、不使用時に芯温センサを保持しておくためのホルダー部を設けた実施形態を図解するものである。この種の加熱調理器10の加熱調理庫12の庫内には、図1に見られるように、左右壁面近傍にラックフレームが設けられており(図1では、右側壁面近傍のラックフレーム50が見えている)、このラックフレーム50のレールの所望箇所に被加熱食材を載せたトレイを配置する。図7は、右側のラックフレーム50を右前方から見た図解で、2本の垂直の支柱51に5段のトレイ保持レールが溶接されている。前方の支柱51の下方には、支柱51の後側板金折り曲げ面に芯温センサ40の温度検知部41を挿入する孔51aが穿設されており、支柱51の前側板金折り曲げ面に芯温センサ40の取っ手部42を受けるための切欠き51bが、孔51aの位置より僅かに高い位置に設けられている。切欠き51bの下辺は、取っ手部42が安定して載せられるように、僅かにしたに凹ませてある。これらにより、芯温センサ40を、不使用時には、僅かに斜めに差し込んで載置しておくことができる。この場合、芯温センサ40の温度検知部41を挿入する孔51は、単純な丸孔でもよいが、図示のようなダルマ孔の方が挿入しやすさおよび保持の安定性の両面で好都合である。また、切欠き51bは、図示のような右方に開放した形状に限らず、周囲の閉じた大きめの孔とすることもできる。
【0018】
以上説明したように、この発明の加熱調理器の実施形態では、加熱調理庫の開口端縁を内扉で封止する箇所のパッキンの断面形状を、加熱調理庫開口端縁に取り付けるための基部を成す第一の部分と、第一の部分の加熱調理庫内側空間に面する前端部から加熱調理庫外側空間の前方へ徐々に曲がりながら弧状に延びる第二の部分と、第一の部分の加熱調理庫外側空間に面する前端部から途中にU字形の折れ曲がり部を介在して加熱調理庫外側空間の前方に延びる第三の部分とを連結して、閉じた中空の図形としたので、中空部の変形によるパッキンとしての順応封止性に優れているとともに、高熱側では弧状面の単純な屈曲によりパッキンの部材自体に異常な変形力が作用せず、常温側では前後方向の押圧変形をU字形の折れ曲がり部が吸収することによりパッキンの部材自体に異常な変形力が作用せず、長期の使用に対してもパッキンの劣化が生じにくい。
【符号の説明】
【0019】
10…加熱調理器、11…ハウジング、12…加熱調理庫、12a…開口端縁、12b…パッキン取付溝、13…開閉扉、13a…外扉、13b…内扉、30…パッキン、31…傾斜面、32…屈曲面、32a…U字形の折れ曲がり部、33…基部、35…中空部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7