特許第6168857号(P6168857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168857
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】椅子式マッサージ機
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20170713BHJP
   A61H 15/00 20060101ALI20170713BHJP
   A47C 1/034 20060101ALI20170713BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   A61H7/00 323H
   A61H7/00 320
   A61H15/00 350C
   A47C1/034
   A47C7/54 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-119379(P2013-119379)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-236765(P2014-236765A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136491
【氏名又は名称】株式会社フジ医療器
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏久
(72)【発明者】
【氏名】古谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】大江 哲広
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−140757(JP,A)
【文献】 特開2013−081664(JP,A)
【文献】 特開2009−022789(JP,A)
【文献】 特開2009−112790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A47C 1/034
A47C 7/54
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、背もたれ部と、これらの左右両側で前記座部の下方の下部構造を隠ぺいする壁状のアームレストを備え、前記座部の前後方向前方への移動と、前記背もたれ部を起倒させるリクライニング動作とを連動させた椅子式マッサージ機であって、
前記アームレストにおける少なくとも前記座部に対応する高さから下側となる下側領域が、前記背もたれ部が起立し前記座部が後方に移動した状態における前記座部の前端位置よりも前方に突出する長さで形成され、
前記アームレストの下側領域の前端位置が、前記座部の前後動領域の前端位置に位置している
椅子式マッサージ機。
【請求項2】
座部と、背もたれ部と、これらの左右両側で前記座部の下方の下部構造を隠ぺいする壁状のアームレストを備え、前記座部の前後方向前方への移動と、前記背もたれ部を起倒させるリクライニング動作とを連動させた椅子式マッサージ機であって、
前記アームレストにおける少なくとも前記座部に対応する高さから下側となる下側領域が、前記背もたれ部が起立し前記座部が後方に移動した状態における前記座部の前端位置よりも前方に突出する長さで形成され、
前記下部構造の前後動領域の前端位置が、前記アームレストの下側領域の前端より後方に位置している
椅子式マッサージ機。
【請求項3】
座部と、背もたれ部と、これらの左右両側で前記座部の下方の下部構造を隠ぺいする壁状のアームレストを備え、前記座部の前後方向前方への移動と、前記背もたれ部を起倒させるリクライニング動作とを連動させた椅子式マッサージ機であって、
前記アームレストにおける少なくとも前記座部に対応する高さから下側となる下側領域が、前記背もたれ部が起立し前記座部が後方に移動した状態における前記座部の前端位置よりも前方に突出する長さで形成され、
前記アームレストの少なくとも下側領域の前端縁部に、最も前方に移動した座部の前記下部構造を隠ぺいする前端隠ぺい部を有する
椅子式マッサージ機。
【請求項4】
前記座部の先端位置にフットレストを備え、
前記アームレストの下側領域の前端位置が前記背もたれ部を起立させた状態において前記フットレストの前後方向の中間位置に設定された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項5】
前記アームレストの上端部に、腕に対して施療を行う腕施療部を有する
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項6】
前記腕施療部が上面に開口を有するとともに、前端に、前端を閉じる閉鎖壁を有する形状である
請求項5に記載の椅子式マッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着座した姿勢の人体をマッサージする椅子式マッサージ機に関し、より詳しくは、所望のマッサージ効果が得られる上に、安全性が高く外観も良好であるような椅子式マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子式マッサージ機では、背もたれ部を後ろに倒した時に、人体に対する施療位置がずれたり、椅子式マッサージ機の後方空間が狭くて背もたれ部がつかえたりすることがある。このような不都合を回避するため、背もたれ部と座部を連動させた椅子式マッサージ機が提案されている。つまり、この種の椅子式マッサージ機は、背もたれ部の後方への傾き角に応じた座部のせり出し(前方への移動)が行える構成である。
【0003】
このような椅子式マッサージ機として、例えば下記特許文献1に開示されたものがある。
【0004】
特許文献1の椅子式マッサージ機は、背もたれ部と、この背もたれ部に連動する座部と、背もたれ部と座部の左右両側に位置する壁状のアームレストを有している。背もたれ部は前後に可動する背もたれ用リンクで支持され、座部は前後に可動する座部用リンクで支持され、背もたれ部と座部は、背もたれ用リンクによる支持点よりも下方側の部分で連結されている。このような構成により、背もたれ部がリクライニングするときに、座部は、背もたれ部の後方へ傾きが大きくなるにつれて前方へと移動する。このため、施療位置のずれやリクライニング不能の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3069361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来アームレストの前端位置は、座部が前方へ移動していない状態において、座部の前端面に対応する位置までの大きさに形成されている。このため、特許文献1の第1図(a)に示されているように、背もたれ部が起立した状態では座部とその下方の下部構造は壁状のアームレストに隠ぺいされているが、背もたれ部をリクライニングさせ、座部が前方に移動すると、特許文献1の第1図(b)に示されているように、座部とその下部構造がアームレストの存在する範囲を超えて前方に大きく飛び出してしまう。
【0007】
座部のみならず、リンク等のその下部構造まで飛び出してしまうため、座部の移動時に人体や衣服などを不測に挟み込んでしまうおそれがある。そのうえ、外観の点でも必ずしも好ましいものではない。
【0008】
そこで、この発明は、施療位置のずれが抑えられ所望のマッサージ効果が得られる上に、安全性が高く外観も良好であるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための第1の手段は、座部と、背もたれ部と、これらの左右両側で前記座部の下方の下部構造を隠ぺいする壁状のアームレストを備え、前記座部の前後方向前方への移動と、前記背もたれ部を起倒させるリクライニング動作とを連動させた椅子式マッサージ機であって、前記アームレストにおける少なくとも前記座部に対応する高さから下側となる下側領域が、前記背もたれ部が起立し前記座部が後方に移動した状態における前記座部の前端位置よりも前方に突出する長さで形成され、前記アームレストの下側領域の前端位置が、前記座部の前後動領域の前端位置に位置している椅子式マッサージ機である。
【0010】
そのための第2の手段は、座部と、背もたれ部と、これらの左右両側で前記座部の下方の下部構造を隠ぺいする壁状のアームレストを備え、前記座部の前後方向前方への移動と、前記背もたれ部を起倒させるリクライニング動作とを連動させた椅子式マッサージ機であって、前記アームレストにおける少なくとも前記座部に対応する高さから下側となる下側領域が、前記背もたれ部が起立し前記座部が後方に移動した状態における前記座部の前端位置よりも前方に突出する長さで形成され、前記下部構造の前後動領域の前端位置が、前記アームレストの下側領域の前端より後方に位置している椅子式マッサージ機である。
【0011】
そのための第3の手段は、座部と、背もたれ部と、これらの左右両側で前記座部の下方の下部構造を隠ぺいする壁状のアームレストを備え、前記座部の前後方向前方への移動と、前記背もたれ部を起倒させるリクライニング動作とを連動させた椅子式マッサージ機であって、前記アームレストにおける少なくとも前記座部に対応する高さから下側となる下側領域が、前記背もたれ部が起立し前記座部が後方に移動した状態における前記座部の前端位置よりも前方に突出する長さで形成され、前記アームレストの少なくとも下側領域の前端縁部に、最も前方に移動した座部の前記下部構造を隠ぺいする前端隠ぺい部を有する椅子式マッサージ機である。
【0012】
前記「下部構造」とは、座部における座面よりも下方に存在する部分であって、座部の前後動とともに動く部分である。前記「下部構造を隠ぺいする」とは、下部構造の全体、またはほとんどの部分に隠ぺいする意味であり、下部構造の一部がわずかに露出する場合も含む意味である。
【0013】
これらの構成では、アームレストにおける少なくとも下側領域が、背もたれ部を起立させて後方に位置した座部の前端位置よりも前方に突出しているので、座部を前方に移動したリクライニング時でも、アームレストの下側領域は、座部とその下方の下部構造を隠蔽し得る。
【0014】
アームレストの下側領域の前端位置を座部の前後動領域の前端位置、またはその近傍としたり、下部構造の前後動領域の前端位置を、アームレストの下側領域の前端より後方または前端近傍としたりすると、座部が前方へ移動しきったときでも、アームレストの下側領域が座部および下部構造と重なる部分を隠ぺいする。
【0015】
アームレストの少なくとも下側領域の前端縁部に前端隠ぺい部を備えると、座部が前方に移動しきったときでも、前端隠ぺい部が、下部構造を完全に隠ぺいする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、背もたれ部の後方への傾きと座部の前方への移動を連動させて所望のマッサージ効果を得られるようにした場合でも、座部がせり出したときに座部と下部構造がアームレストの前端から前方に大きく突出することを抑えられる。このため、人体や物品等を不測に挟み込んでしまうおそれがなく、安全性を向上できるうえに、椅子式マッサージ機の下部構造等の露出を極力抑えられるので、外観を棄損してしまうことも防止できる。
【0017】
そのうえ、アームレストを前後方向に長く形成できるので、アームレストの上端部に腕施療部を備える場合には、腕施療部とこれを含む全体の形態についてデザインの幅が広がるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】椅子式マッサージ機の斜視図。
図2】背もたれ起立状態における椅子式マッサージ機の側面視の概略形状と内部構造を示す側面図。
図3】背もたれ傾倒状態における椅子式マッサージ機の側面視の概略形状と内部構造を示す側面図。
図4】背もたれ起立状態における椅子式マッサージ機の側面図。
図5】他の例に係る椅子式マッサージ機の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、椅子式マッサージ機11の斜視図であり、この図に示すように椅子式マッサージ機11は、座部12と、背もたれ部13と、これらの左右両側に設けられたアームレスト14と、座部12の前端部に軸支され回転可能に設けられたフットレスト15を備えている。フットレスト15は、人体の下腿と足の全体をすっぽりと収めることができる大きさである。
【0020】
これらはそれぞれ、もみ玉やエアバッグなどの適宜の施療具(図示せず)を有する。アームレスト14における施療具は、腕に対して施療を行うためアームレスト14の上端部に設けられた腕施療部14aに備えられる。
【0021】
この椅子式マッサージ機11の背もたれ部13は、図1に矢印で示したように、リクライニング可能に構成されている。また、背もたれ部13と座部12は連動機構によって連結されており、背もたれ部13のリクライニング動作と、座部12の前後方向の移動が連動するように構成されている。
【0022】
座部12が前方へ移動するときには、座部12の前端部に軸支されたフットレスト15も前方に移動する。また、アームレスト14の腕施療部14aは、座部12の前後動に連動するように連結されており、座部12の前方への移動に伴って腕施療部14aが後方に移動する。
【0023】
まず、このような動きを実現するための概略構造について説明する。図2図3は、椅子式マッサージ機11の側面視の概略形状と内部構造を示し、図2は背凭れ起立状態、図3は背凭れ傾倒状態を示す。
【0024】
これらの図に示すように椅子式マッサージ機11は、骨組みの基本となる基台フレーム16と、基台フレーム16に支持された状態で前後方向に移動可能な座部フレーム21と、座部フレーム21に回転可能に連結されて座部フレーム21の前方への移動に伴って後方へ倒れる背もたれフレーム(図示せず)と、基台フレーム16の上部の左右方向外側に固定されて座部フレーム21の移動方向と平行に延びるガイドレール部61と、このガイドレール部61に沿って移動するスライダ62と、座部フレーム21の前方への動きをスライダ62の後方への動きに変換する動作変換機構63と、前記座部フレーム21と基台フレーム16との間に設けられて座部フレーム21を前後動させるリクライニング用伸縮機構17と、座部フレーム21とフットレストフレーム(図示せず)との間に設けられてフットレストフレームを押し上げるフットレスト用伸縮機構18を備えている。
【0025】
基台フレーム16は、角型鋼管を組んで構成され、前後方向にのびる左右両側の2本の基底材64と、これら基底材64の上に間隔をあけて立設される複数本ずつの垂直材65を有する。左右の垂直材65同士の下端部間は互いに連結されている。
【0026】
前記複数本の垂直材65は、図2図3に示したように、椅子式マッサージ機11の前方のものほど長く形成され、複数本の垂直材65の上端位置を直線でつなぐと、その直線が後方ほど低く傾くように配設されている。これらの左右両側の垂直材65の上端部には、傾斜レール部66を有する。
【0027】
この傾斜レール部66よりも左右方向の外側に、傾斜レール部66と平行に延びる前記ガイドレール部61が支持されている。ガイドレール部61は、所定間隔をあけて配設される2本の支持杆61aと、これら支持杆61aの下部同士を連結する連結支持杆61bと、支持杆61aの上端位置に架設されたガイドレール61cを有する。
【0028】
前記座部フレーム21は、前記傾斜レール部66に対して上から被さって前後方向に移動する左右一対のスライド部22を有する。これらスライド部22は横架材23で左右に連結されて一体となっている。
【0029】
このスライド部22のほかに、座部フレーム21には、座部フレーム21の前端位置の上端において左右方向に延びる前端横架材24と、左右のスライド部22と前記横架材23をスライド部22より下方位置で連結する枠状の支持枠25を有する。この支持枠25も角型鋼管を組んで構成されている。
【0030】
前記前端横架材24を含む座部フレーム21の上面部には、必要な前記施療具とクッション材(図示せず)等を内蔵して、すわり心地の良い座面26が得られるように構成されている。
【0031】
前記前端横架材24の長手方向における中間部分の下方部位には、前記リクライニング用伸縮機構17の一端を回転可能に連結する連結金具27が設けられている。リクライニング用伸縮機構17の他端は基台フレーム16の底部に回転可能に連結されている。
【0032】
座部フレーム21の支持枠25の下端後部には、フットレスト用伸縮機構18の一端を回転可能に連結する連結部25aが形成されている。フットレスト用伸縮機構18の他端は、前記連結金具27の左右方向の隣接位置に枢着された押上金具28の、枢着点28aより下方の位置に枢着されている。押上金具28の他端つまり下端には、ローラ28bが設けられており、フットレスト用伸縮機構18の伸長に伴ってフットレスフレームを押し上げるように構成されている。
【0033】
このような座部フレーム21における前記座面26、より詳しくは前記スライド部22よりも下方に存在する、支持枠25を中心とする各部材からなる部分が、下部構造21aである。
【0034】
前記動作変換機構63は、前記ガイドレール部61の連結支持杆61bに枢着された中間連結杆63aと、この中間連結杆63aの一端に枢着されたアームレスト側連結杆63bと、中間連結杆63aの他端に枢着された座側連結杆63cで構成される。アームレスト側連結杆63bの先端は、ガイドレール61c上を前後方向に摺動する前記スライダ62の側面に回転可能に連結されている。座側連結杆63cの先端は、前記座部フレーム21のスライド部22の後方下端部に形成された突片22aの外側面に回転可能に連結されている。
【0035】
前記アームレスト14は、前記座部12の下方の下部構造21aと、前記基台フレーム16を隠ぺいする壁状であって、前記腕施療部14aとこれを支持する本体部14bからなる。本体部14bは、前記座部12に対応する高さ、つまり前方斜め上に向けて前後動する座部12が最も前方に移動した場合に、少なくとも座部フレーム21の高さから下側に配置される部分である。この本体部14bの位置及び形状をこの発明では下側領域という。
【0036】
アームレスト14の幅は、人体の腕の太さよりも幅広に形成されており、前端面の側面視形状は、下から上に向けて、緩やかなカーブを描いて後方に傾くように下側領域の前端部を形成している。つまり本体部14bから腕施療部までが一連に連なった形状となっている。
【0037】
腕施療部14aは、図1に示したように、上面に開口41を有する。この開口41は腕(手を含めた前腕全体)をすっぽり収められる大きさで、深さも腕が十分に入るように設定されている。そして、前端には、前端を閉じる平面視U字形状の閉塞壁42が形成されている。腕施療部14aは、図2図3に示した前記スライダ62に連結されている。図2図3中、67は背もたれ部13を支持する支持杆である。
【0038】
このようなアームレスト14のうち、前記下側領域(本体部14b)の前端部は、図1図2に示したように、背もたれ部13が起立し、座部12が後方に移動した状態において座部12の前端位置よりも前方に突出する長さで形成される。
【0039】
この前方に突出する長さとは、アームレスト14の下側領域(本体部14b)の前端部が、座部12の前後動領域の前端位置、またはその近傍になるように形成するものである。あるいは、少なくとも下部構造21aの前後動領域の前端位置が、アームレスト14の下側領域(本体部14b)の前端より後方または前端近傍になるように形成してもよい。
【0040】
フットレスト15との関係でいえば、前後方向にある程度の長さを有する大きさであるので、アームレスト14の下側領域(本体部14b)の前端位置がフットレスト15の前後方向の中間位置となる。
【0041】
好ましくは、下側領域(本体部14b)の前端部を、座部12の前後動領域の前端位置よりも前方、あるいは下部構造21aの前後動領域の前端位置が、アームレスト14の下側領域(本体部14b)の前端部よりも後方となるように設定するとよい。アームレスト14の下側領域(本体部14b)が下部構造21a全体を完全に隠ぺいできるからである。
【0042】
従来、アームレスト14の座部12の前端に対応する部分は、座部12の前端位置に設定されていた。これを前記椅子式マッサージ機11の側面図に図示すると、図4に仮想線で示したようになる。つまり、この仮想線よりも前方の部分が、最も前方に移動した座部12の下部構造21aを隠ぺいする前端隠ぺい部43(上記段落でいう、前方に突出する長さ部分)である。
【0043】
以上のように構成された椅子式マッサージ機11では、背もたれ部13を起立させた状態や後ろに倒した状態で、内蔵した施療部により人体の各部のマッサージを行う。背もたれ部13を倒したときには、座部12は前方に移動し、腕施療部14aは後方に移動して、人体と施療部の位置ずれを抑制できるので、所望のマッサージ効果を得られる。
【0044】
背もたれ部13の後方への傾倒は、背もたれ部13の前方への移動を伴うので、椅子式マッサージ機11を設置する空間のうち背もたれ部13よりも後方の空間を小さくできるという利点も有する。
【0045】
また、背もたれ部13を起こした状態では、図1図2に示したように、アームレスト14の前端位置は、座部12の座面26の前端位置よりも前方にあり、背もたれ部13を後ろに倒して座部12が前方に移動した場合でも、図3に示したようにアームレスト14の下側領域(本体部14b)の前端位置は、座部12の下部構造21aの前端位置にあり、いずれの場合も、座部12の下部構造21aはアームレスト14の下側領域(本体部14b)に隠ぺいされる。このため、使用中に人体や物品等を不測に挟み込んでしまうおそれがなく、高い安全性を得られる。そのうえ、下部構造21aを隠すことができるので、良好な外観を得ることができる。
【0046】
隠ぺいするのは下部構造21aの全体ではなく、少なくとも支持枠25を隠ぺいできれば、たとえ押上金具28の一部や全部が露出する状態であっても、下部構造21aを大きく露出させることはないので、良好な外観を得ることができるという効果は得られる。
【0047】
背もたれ部13を起立して、座部12を後方に移動させた状態においては、フットレスト15の長手方向の中間部にアームレスト14の前端が対応するように構成されているので、フットレスト15の存在や位置を使用者に認識させ、着座しやすくできる。
【0048】
着座するときには、アームレスト14の前端位置が座部12の前端位置よりも前に位置していることと、フットレスト15が存在していることによって、座部12が遠い印象を受けるが、アームレスト14の前端部、具体的には腕施療部14aの前端部が座部12よりも前方に存在するので、着座時に腕施療部14aの前端部に手をつくことができる。このため、後ろ向きになっての着座が、無理なく容易に行える。アームレストの前後方向の長さが短かった従来の椅子式マッサージ機と比較して、着座動作が容易である。同様に、椅子式マッサージ機11からの起立も腕施療部14aに手をつくことで、体に無理をかけずに楽に行える。
【0049】
特に、腕施療部14aは、上面に開口41を有し、その前端部に閉壁42を有するので、前後両端が開放された断面U字形の腕施療部を備えた場合とは異なって、着座時や起立時に手をついても安定して支えることがきる。このため、たとえお年寄りであっても着座や起立が安心して楽に行え、不測の転倒を防止して高い安全性を得られる
また、アームレスト14の前端部は、下から上まで緩やかな円弧を描くように形成したので、腕施療部14aを有しながらも従来にない斬新なデザインを得ることができる。従来、アームレストは、着座した時に腕を自然に載せられる長さに設定されていたので、腕をすっぽり収める形状の腕施療部を設けると、どうしても腕施療部のほうが大きくなって、アームレストにおいて目立つ存在であった。つまり、アームレストの上端部が肥大化したような印象があった。これに対して、アームレスト14の前端位置が、背もたれ部13の起立状態、つまり後方に移動した状態の座部12の前端位置よりも前方に突出しているので、アームレスト14の前後方向の長さ長くとれる。このため、腕を無理なく自然に収める腕施療部14aを形成できるうえに、デザインの幅を広げることができる。
【0050】
さらに、アームレスト14は前後方向に長い形状であるが、フットレスト15よりも前方に突出しているわけではなく、フットレスト15の前後方向の中間位置にアームレスト14の前端位置を合わせているので、占有床面積を抑えることができる。
【0051】
しかも、座部12の前方への移動と背もたれ部13のリクライニングを、斜め上方に向けて座部12を押し出し、これに追従して背もたれ部13が後ろに傾き、腕施療部14aも後方ななめ下に移動する構成としたので、従来のように、背もたれ部と座部をそれぞれ前後に可動するリンクで支持し、背もたれ部と座部を、背もたれ用のリンクによる支持点よりも下方側の部分で連結した構成と比較して、座部12がせり出す量を比較的抑えることができる。このため、下部構造21aの前後動領域の前端位置をアームレスト14の下側領域(本体部14b)の前端位置よりも後方に収めやすい。つまり、椅子式マッサージ機11全体をコンパクトに構成できる。
【0052】
以下、他の例について説明する。この説明において、前記構成と同一又は同等の部位については、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0053】
図5は、椅子式マッサージ機11の側面図であり、前述の例ではアームレストの前端の側面視形状を、下から上まで統一された形態としたのに対して、アームレスト14の本体部14bと腕施療部14aで前端の側面視形状、詳しくは曲率を違えており、本体部14bの上端部14cが張り出すように構成している。このような形状とすることで、リクライニング時に下部構造21aの全体を完全に隠ぺいすることができる。
【0054】
また、腕施療部14a下端の前端位置が本体部14b上端の前端位置よりも後退していることによって、アームレスト14の中での腕施療部14aの存在感を示しつつも大きさが小さい印象を付与できる。
【0055】
このように様々な形態を採用することで、自由なデザインが可能である。
【0056】
この発明の構成と、前記一形態の構成との対応において、
この発明の下側領域は、前記本体部14bに対応するも、
この発明は前記構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0057】
例えば、座部の前後動と背もたれ部の傾動は、前述の機構以外の機構で構成してもよい。
【0058】
また、腕施療部やフットレストを省略することができる。一方、例えば座部に対して、人体の大腿部の側面にマッサージを行う施療部を備えるなど、その他の施療部を備えることもできる。
【符号の説明】
【0059】
11…椅子式マッサージ機
12…座部
13…背もたれ部
14…アームレスト
14a…腕施療部
14b…本体部
15…フットレスト
41…開口
42…閉鎖壁
43…前端隠ぺい部
21a…下部構造
図1
図2
図3
図4
図5