特許第6168859号(P6168859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168859
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】スパウト
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20170713BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20170713BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20170713BHJP
   B65D 75/58 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B65D33/38
   B65D33/00 C
   B65D30/16 Z
   B65D75/58
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-120438(P2013-120438)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237466(P2014-237466A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100094813
【弁理士】
【氏名又は名称】庄子 幸男
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】石井 理恵
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将仁
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−086867(JP,A)
【文献】 特開2007−308146(JP,A)
【文献】 特開2007−076696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
B65D 30/16
B65D 33/00
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内容物を収納するパウチ容器の周縁に溶着して用いられるスパウトであって、
該スパウトの下方には、溶着用リブが形成されており、該溶着用リブは、該パウチ容器を構成する一のプラスチックフィルム側に溶着される第一溶着用リブと、該パウチ容器を構成する他のプラスチックフィルム側に溶着される第二溶着用リブとで構成され、
前記第一溶着用リブの頂部の高さ(H1)は、前記第二溶着用リブの頂部の高さ(H2)より高く(H1>H2)形成されていることを特徴とするスパウト。
【請求項2】
前記第一溶着用リブと、前記第二溶着用リブの縦方向断面形状の断面積が同一である請求項1記載のスパウト。
【請求項3】
前記スパウトは、上端が閉塞部により閉塞されており、
前記閉塞部は、破断可能な弱化部を介して前記スパウトの上端に接続した引き剥がし部であり、その一部に開口用つまみ部が設けられている請求項1または2記載のスパウト。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のスパウトを備えたスパウト付パウチ容器。
【請求項5】
前記一のプラスチックフィルム側に前記スパウトの第一溶着用リブが溶着されており、前記他のプラスチックフィルムと前記スパウトの第二溶着用リブの間に開口部が形成されている請求項4記載のスパウト付パウチ容器。
【請求項6】
前記パウチ容器がスタンディングパウチである請求項4または5記載のスパウト付パウチ容器。
【請求項7】
請求項4ないし6の何れか1項記載の前記パウチ容器内に内容物が充填されたスパウト付パウチ包装体。
【請求項8】
請求項1ないし3の何れか1項記載のスパウトをパウチ容器に装着し、内容物を充填した後、閉塞するスパウト付きパウチ包装体の製造方法であって、
前記パウチ容器を構成する一の前記プラスチックフィルム側に前記スパウトの第一溶着用リブを溶着する仮溶着工程と、
前記パウチ容器を構成する他の前記プラスチックフィルムと前記スパウトの第二溶着用リブの間に形成される前記パウチ容器の開口部から内容物を充填する充填工程と、
前記パウチ容器を構成する一の前記プラスチックフィルム側の該第一溶着用リブおよび他の前記プラスチックフィルム側の該第二溶着用リブを一の前記プラスチックフィルムおよび他の前記プラスチックフィルムへ同時に溶着する本溶着工程と、を備え、
前記プラスチックフィルムと溶着用リブとの溶着において、その溶着工程を二段階に分けたことを特徴とするスパウト付きパウチ包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器の周縁に溶着して用いられるスパウトに関するものであって、より詳しくは、パウチ容器の周縁に、先にスパウトの片面だけを溶着した状態で、未溶着側からパウチ内への内容物の充填を可能にし、その後でパウチ容器とスパウトを密封状態で溶着することにより、スパウトをパウチ容器の周縁の任意の部位に付設しても内容物の充填作業において邪魔にならないスパウトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例を示す図11において、パウチ50の周縁に溶着され、上端が閉塞部51で閉塞されてその閉塞部51を引き裂くことで開封する、所謂ワンピースタイプのスパウト52は、その口部から内容物を充填することが出来ないため、パウチ50の上部を斜めにカットし、その斜めカット部53に上記のスパウト52を溶着することで、パウチ50の上部に内容物を充填する開口部分54を確保して、その開口部分54からパウチ50に内容物を矢印A方向から充填した後、その開口部分54を溶着して閉じることになる(特許文献1参照)。
【0003】
あるいは、図12に示すように、パウチ50の上部中央にワンピースタイプのスパウト52Aを溶着し、パウチ50の底部55は溶着しない状態にしておき、パウチ50に内容物を充填する際、スパウト52Aを下方に向けて、パウチ50の底部55から内容物を矢印B方向から充填した後、その底部55を溶着して閉じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−129689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11のものは、パウチ50の上部にある開口部分54から内容物を充填することが出来るが、スパウト52がパウチ50の斜めカット部53に溶着してあるため、スパウト52が出っ張り部分となって、輸送や保管に悪影響を及ぼしたり、パウチ50の有効充填量が減るなどの虞がある。また、スパウトをパウチの上方中央部に溶着することが出来ないという不都合がある。
【0006】
また、図12のものは、予めスパウト52Aが溶着されたパウチ50の底部55から内容物を充填した後、その底部55を溶着して閉じるため、スパウトをパウチの中央部に溶着することが出来るが、パウチに自立性を持たせたい場合、スタンディングタイプとなるように底部55を閉じるのが極めて困難であり、事実上適用することが出来ない。
かかる従来技術の問題点に鑑みて、パウチ50の上部をすべて溶着しないで開口部分を残しておき、パウチ50に内容物を充填した後に、その開口部分にパウチ50を溶着することも考えられる。すなわち、パウチ50の上部中央に予めワンピースタイプのスパウト52を溶着してあるのに、パウチ50の上部から内容物を充填することが出来る、スパウトが望まれていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、パウチ容器の周縁にスパウトの片面だけを先に溶着した状態で未溶着側から内容物の充填を可能にし、内容物充填後に、未溶着側を溶着することにより、その結果、スパウトをパウチ容器の周縁の任意の部位に付設しても内容物の充填作業において邪魔にならないスパウトを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記スパウトを付設したスパウト付きパウチ容器及びスパウト付包装体を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記スパウト付包装体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、
内部に内容物を収納するパウチ容器の周縁に溶着して用いられるスパウトであって、
該スパウトの下方には、溶着用リブが形成されており、該溶着用リブは、該パウチ容器を構成する一のプラスチックフィルム側に溶着される第一溶着用リブと、該パウチ容器を構成する他のプラスチックフィルム側に溶着される第二溶着用リブとで構成され、
前記第一溶着用リブの頂部の高さ(H1)は、前記第二溶着用リブの頂部の高さ(H2)より高く(H1>H2)形成されていることを特徴とするスパウトが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、前記第一溶着用リブと、前記第二溶着用リブの縦方向断面形状の断面積が同一である上記スパウトが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記スパウトは、上端が閉塞部により閉塞されており、前記閉塞部は、破断可能な弱化部を介して前記スパウトの上端に接続した引き剥がし部であり、その一部に開口用つまみ部が設けられている上記スパウトが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記スパウトを備えたスパウト付パウチ容器が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記一のプラスチックフィルム側に前記スパウトの第一溶着用リブが溶着されており、前記他のプラスチックフィルムと前記スパウトの第二溶着用リブの間に開口部が形成されている上記スパウト付パウチ容器が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記パウチ容器がスタンディングパウチである上記スパウト付パウチ容器が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、前記パウチ容器内に内容物が充填されたスパウト付パウチ包装体が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、上記スパウトをパウチ容器に装着し、内容物を充填した後、閉塞するスパウト付きパウチ包装体の製造方法であって、
前記パウチ容器を構成する一の前記プラスチックフィルム側に前記スパウトの第一溶着用リブを溶着する仮溶着工程と、
前記パウチ容器を構成する他の前記プラスチックフィルムと前記スパウトの第二溶着用リブの間に形成される前記パウチ容器の開口部から内容物を充填する充填工程と、
前記パウチ容器を構成する一の前記プラスチックフィルム側の該第一溶着用リブおよび他の前記プラスチックフィルム側の該第二溶着用リブを一の前記プラスチックフィルムおよび他の前記プラスチックフィルムへ同時に溶着する本溶着工程と、を備え、
前記プラスチックフィルムと溶着用リブとの溶着において、その溶着工程を二段階に分けたことを特徴とするスパウト付きパウチ包装体の製造方法が提供される。
【0016】
本発明のスパウトは、スパウト下部にある第一溶着用リブの頂部の高さ(H1)と第二溶着用リブの頂部の高さ(H2)とに差があるため、第一及び第二溶着用リブをプラスチックフィルムに溶着する際、時間差を付けることが出来、第一溶着用リブをプラスチックフィルムのいずれか一方に溶着し、第二溶着用リブをプラスチックフィルムのいずれか他方の未溶着側から内容物をパウチに充填した後、未溶着側を溶着すると共に既溶着側も再溶着する。
【0017】
また、第一溶着用リブと第二溶着用リブの縦方向断面形状の断面積が同一となっているため、最終的に熱溶着によって得られるパウチ容器との接着強度にムラを発生させることなく、安定した接着を達成することが出来る。
【0018】
また、スパウトの上端の開口用つまみ部を手指でつかみ、引き剥がし方向に力を加え弱化部を破砕して、引き剥がし部を除去し閉塞部を開口することが出来る。
【0019】
上記スパウトは、パウチの周縁に付設してスパウト付パウチ容器とし、さらにこの容器に内容物を充填したスパウト付包装体として用いることが出来、なかんずく、パウチの上部中央付近に開口を有するスタンディングパウチにも適用することが出来る。
【0020】
また、上記スパウト付包装体は、(1)前記パウチ容器を構成する一の前記プラスチックフィルム側に前記スパウトの第一溶着用リブを溶着する仮溶着工程と、(2)前記パウチ容器を構成する他の前記プラスチックフィルムと前記スパウトの第二溶着用リブの間に形成される前記パウチ容器の開口部から内容物を充填する充填工程と、(3)前記パウチ容器を構成する一の前記プラスチックフィルム側の該第一溶着用リブおよび他の前記プラスチックフィルム側の該第二溶着用リブを一の前記プラスチックフィルムおよび他の前記プラスチックフィルムへ同時に溶着する本溶着工程、からなる二段階の溶着工程の間に内容物の充填工程を介することによって製造されるものであり、係る製造方法は、スパウトの構成が本発明において規定する特定のものであることによってなし得る特有のものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に規定した発明によれば、第一溶着用リブの頂部の高さ(H1)と第二溶着用リブの頂部の高さ(H2)を(H1>H2)に形成することにより、ワンピースタイプのスパウトであるのに、スパウトをパウチの片面に溶着した状態で内容物を充填することが可能になるため、スパウトの溶着位置を自在に決めることができ、ワンピースタイプのスパウトをパウチの上部周縁にも付設することが可能になる。
【0022】
また、請求項2に規定した発明によれば、上記の効果に加えて、溶着工程を二回に分けて、片面づつ時間差で溶着してもスパウトの第一及び第二溶着用リブとプラスチックフィルムとの溶着が、より容易且つ確実になる効果がある。
【0023】
また、請求項3に規定した発明によれば、上記の効果に加えて、パウチの密封性が保持され且つワンタッチで容易に開口できる効果がある。
【0024】
また、請求項4、5,6、7に規定した発明は、上記効果を備えたスパウト付きパウチ容器ならびに内容物を充填したスパウト付きパウチ包装体を提供するものであり、従来のスパウトではなしえなかったスタンディングパウチを提供できる効果がある。
【0025】
また、請求項8は、仮溶着工程と本溶着工程の間に内容物の充填工程を介在させることによって、従来のスパウトではなしえなかった内容物が充填された状態のスタンディングパウチを製造することが可能になった特有の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態を示すスパウトをパウチに溶着した状態の側面図である。
図2】同じく本発明のスパウトの側半断面図である。
図3】同じく本発明のスパウトの側半断面図である。
図4】同じく本発明のスパウトの下部の拡大側面図である。
図5】本発明のスパウトをパウチに溶着する工程の断面図である。
図6】同じく本発明のスパウトをパウチに溶着する工程の断面図である。
図7】同じく本発明のスパウトをパウチに溶着する工程の断面図である。
図8】同じく本発明のスパウトをパウチに溶着する工程の断面図である。
図9】同じく本発明のスパウトをパウチに溶着する工程の断面図である。
図10】同じく本発明のスパウトをパウチに溶着する工程の断面図である。
図11】特許文献1に示されたスパウトとパウチの付設状態を示す側面図である。
図12】従来例のスパウトとパウチの付設状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0028】
図1および図4に示す通り、スパウト1は、2枚のプラスチックフィルム2及び3の周縁2a及び3aを溶着し、内部に内容物を収納するパウチ容器4のスパウト溶着側周縁2b及び3bに溶着して用いられる、上端が閉塞部5により閉塞されたものであって、このスパウト1の下部外周面には、横方向に延びる複数の溶着用リブ6が形成されており、溶着用リブ6は、パウチ容器4を構成する一のプラスチックフィルム2の側、すなわち、周縁2bに溶着される第一溶着用リブ7、パウチ容器4を構成する他のプラスチックフィルム3の側、すなわち、周縁3bに溶着される第二溶着用リブ8とで構成され、この第一溶着用リブ7と第二溶着用リブ8の縦方向断面形状の断面積が同一であり、且つ、外方へ突出する第一溶着用リブ7の頂部の高さ(H1)は、第二溶着用リブ8の頂部の高さ(H2)より高く(H1>H2)形成されているものである。よって言うまでもなく、第一溶着用リブ7の幅(W1)は、第二溶着用リブ8の幅(W2)より狭く形成されている。
【0029】
前記パウチ容器4は、2枚のプラスチックフィルム2及び3の上縁を除く周縁2a及び3aを溶着して袋状にし、内容物を収納できるようにして、パウチ容器4の開口している部分の周縁2b及び3bに、スパウト1の下部を溶着してなるものである。そして、パウチ容器4は、その下部が少なくとも内部に内容物が収納された状態で、スタンディングポーズをとることが出来るように形成されている、いわゆるスタンディングパウチと呼ばれる形態で形成されている。すなわち、後に詳述するように、パウチ容器4の内部に内容物を収納する際、パウチ4の底部から充填する必要がないため、パウチ容器4の底部の形状をいかようにも加工できるからである。
【0030】
図2、3に示す通り、前記スパウト1は、上端が閉塞部5によって閉塞される中空の注出筒形状を有しており、その下部がパウチ溶着部となっている。また、スパウト1は、図2、3の縦断面形状からもわかるように扁平形であり、横断面形状で略楕円形状を有している。
前記スパウト1の閉塞部5は、破断可能な弱化部10を介してスパウト1の注出筒上端に接続した引き剥がし部11であり、その一部に開口用つまみ部12が設けられ、さらに、この開口用つまみ部12には、手指の入る孔12aが設けられている。したがって、開口用つまみ部12の孔12aに手指を差し込み、引き剥がし方向に力を加え弱化部10を破砕して、引き剥がし部11を除去することで、閉塞部5を開口することができる。その結果、パウチ容器4の密封性が保持され、且つパウチ容器4をワンタッチで容易に開口することができる。
【0031】
図2、3に示す通り、前記スパウト1の下部のパウチ溶着部外周面には、その側面に横方向に延在する溶着用リブ6が形成されており、実施例では縦方向に一定間隔をおいて4本並んでいる。この溶着用リブ6は、スパウト1の下部の一側面に一のプラスチックフィルム2の側における周縁2bに溶着される第一溶着用リブ7と、他側面に他のプラスチックフィルム3の側における周縁3bに溶着される第二溶着用リブ8とで構成されている。溶着部の拡大側面図である図4を参照して理解されるように、第一溶着用リブ7、第二溶着用リブ8は注出筒の約半周分に亘って各々形成されており、上方から見て楕円形状を有する注出筒の楕円長軸の両端側において、第一溶着用リブ7と第二溶着用リブ8との境界が存在している。
【0032】
そして、この溶着用リブ6における第一溶着用リブ7と第二溶着用リブ8とは、既述のとおり、縦方向断面形状の断面積が同一で、且つ第一溶着用リブ7の頂部の高さ(H1)は、第二溶着用リブ8の頂部の高さ(H2)より高く(H1>H2)形成されている。
図面を参照して本発明のスパウトをパウチに溶着する工程を説明する。
これにより、頂部の高さ(H1)の高い第一溶着用リブ7は、(H1−H2)の高さの溶着用リブ部分が初めの溶着(仮溶着)に利用されて、先にプラスチックフィルム2の周縁2bにのみ溶着される(図6参照)。すると、未溶着の第二溶着用リブ8とプラスチックフィルム3の周縁3bとの間に出来た開口部20(図7参照)から、パウチ4内に内容物を充填することが出来る(図8参照)。そのあと、第二溶着用リブ8の高さ(H2)と同じ高さ(H2)となった第一溶着用リブ7は、第二溶着用リブ8と同時にプラスチックフィルム2の周縁2bに再溶着されるが、互いのリブの同じ高さとなっている為、第一溶着用リブ7と第二溶着用リブ8は、均一な加熱がかかることになり、プラスチックフィルム3の周縁2b、3bに安定して溶着されて、開口部20が閉じられることになる。
【0033】
したがって、スパウト1の第一及び第二溶着用リブ7及び8と、プラスチックフィルム2及び3との溶着、すなわち、パウチ4の開口している部分の周縁2b及び3bとの溶着に、時間差を設けても、一方側を再溶着しても、より容易且つ確実に溶着することが可能となる。加えて、パウチ4の周縁2bにスパウト1の第一溶着用リブ7を溶着していても、パウチ4の周縁3bとスパウト1の第二溶着用リブ8とは未溶着であるから開いていて、その開口部20からパウチ4内に内容物を充填出来るため、パウチ4にスパウト1を溶着する際の位置的な制約が無くなる。このため、パウチ4にスパウト1を溶着する位置は、輸送や保管時に邪魔にならない位置(例えば中央部)にすることが出来、パウチの有効充填量が減らない位置とすることなども可能となる。
【0034】
次に、上記構成になるスパウト1をパウチ4に採用した場合の包装体の製造方法について説明する。
まず、例えば、2枚の矩形のプラスチックフィルム2及び3の周縁2a及び3aにおける3辺を溶着し、袋状のパウチ4にする。そのあと、袋状のパウチ4の未溶着のスパウト溶着側周縁2b及び3bの間に、スパウト1の下部を挿入する(図5参照)。そして、溶着機のヒートシールバー21、22にて、パウチ4の周縁2bに、スパウト1の複数の溶着用リブ6のうち、第一溶着用リブ7のみを加熱溶着する(図6参照)。その溶着の際、第一溶着用リブ7に対応するヒートシールバー21を加熱状態、第二溶着用リブ8に対応するヒートシールバー22を非加熱状態でスパウトを挟み押圧することで、フィルム3側のみを非溶着状態にすると共に、第一溶着用リブ7における(H1−H2)の頂部の高さに相当する溶着用リブ部分を溶着材として利用し、パウチ4のフィルム2側にスパウト1を仮付けした状態(仮溶着状態)にする。
【0035】
この状態では、第二溶着用リブ8と袋状のパウチ4の周縁3bとは溶着されていないから、前記開口部20が形成されて(図7参照)、その開口部20から内容物をパウチ4内に充填でき(図8参照)、内容物の充填後に、今度はヒートシールバー21、22の両方を加熱状態でスパウトを挟み押圧することにより第一溶着用リブ7、第二溶着用リブ8と袋状のパウチ4の周縁2b、3bとを完全に溶着した状態(本溶着状態)にする。このようにして開口部20を閉じれば(図9参照)、内容物収納済みの本発明のスパウト1を装着したパウチ4の商品化が完成して(図10参照)、パウチ4の密封性が高く保持された、輸送や保管が容易な商品として、市場に流通させることが出来る。この商品を手にした消費者は、スパウト1の開口用つまみ部12の孔12aに手指を差し込み、引き剥がし方向に力を加え弱化部10を破砕して、引き剥がし部11を除去することで閉塞部6を開口でき、内容物を利用することも出来る。このように予め、第一溶着用リブ7の高さを第二溶着用リブ8の高さより高く、また両者の断面積を同一にすることで、片面側の仮溶着、両面側の本溶着という二回の溶着行程を経た場合でも安定した溶着が可能となるのである。
【0036】
以上、本発明の実施例1を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は、適宜可能であることが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のスパウトは、ワンピースタイプのスパウトにして、輸送や保管時にスパウトが邪魔にならず、パウチの有効充填量が減らず、しかも仮溶着工程と本溶着工程の間に内容物充填工程を介在させることが出来るため、スタンディングパウチにも適用できて内容物をスムーズに充填したい場合に、その利用可能性が極めて高くなる。
【符号の説明】
【0038】
1、52、52A スパウト
2、3 プラスチックフィルム
2a、3a 周縁
2b、3b スパウト溶着側周縁
4、50 パウチ
5、51 閉塞部
6 溶着用リブ
7 第一溶着用リブ
8 第二溶着用リブ
10 弱化部
11 引き剥がし部
12 開口用つまみ部
12a 孔
20 開口部
21、22 ヒートシールバー
53 斜めカット部
54 開口部分
55 底部
A、B 矢印
H1、H2 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12