【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例について、
図1〜
図8を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施例に係る噴霧ノズルの正面側の平面図であり、
図2は、噴霧ノズルの背面側の平面図である。
図3〜
図5は、
図1又は
図2に示す噴霧ノズルのAA線,BB線,CC線それぞれにおける断面図である。
【0020】
噴霧ノズル1は、液体燃料と空気や蒸気などの噴霧媒体を混合して噴霧するものであり、
図1〜
図5に示すように外側部材1aと内側部材1bとで構成されている。外側部材1aには、
図1に示すように4つのスリット状の噴出孔3が形成されている。内側部材1bの正面側の表面には、
図1に示すように流路溝部13,24,25が形成されている。内側部材1bの背面には、
図2に示すように中央部に液体燃料供給部10が形成され、外周部に噴霧媒体供給部20が形成されている。内側部材1bの内部には、
図3に示すように噴霧媒体供給部20をそれぞれ流路溝部24,25(以下、噴霧媒体流路溝部)に接続する流路22,23(以下、噴霧媒体流路)が形成され、
図5に示すように液体燃料供給部10及び噴霧媒体供給部20を流路溝部13に接続する流路11,12,21が形成されている。
【0021】
液体燃料供給部10及び噴霧媒体供給部20には、それぞれ図示しない供給系統(ノズル管等)から液体燃料及び噴霧媒体が供給される。液体燃料供給部10に供給された液体燃料は、流路11,12を介して流路溝部13に供給される。噴霧媒体供給部20に供給された噴霧媒体は、流路21,12を介して流路溝部13に供給されると共に、噴霧媒体流路22,23を介してそれぞれ噴霧媒体流路溝部24,25に供給される。流路11(以下、液体燃料流路という)を介して流路12に供給される液体燃料と流路21(以下、噴霧媒体流路という)を介して流路12に供給される噴霧媒体は、流路12内で混合流体となり、流路溝部13(以下、混合流体流路溝部13という)に供給される。このように流路12は、液体燃料と噴霧媒体の混合流体を供給する混合流体流路を構成している。
【0022】
図1において、混合流体流路溝部13及び噴霧媒体流路溝部24,25は、内側部材1bの正面側の表面に同心円状に形成されている。混合流体流路溝部13は、4つの噴出孔3それぞれの長手方向中間部(以下単に、中間部という)においてそれぞれの長手方向と直交し、噴霧媒体流路溝部24,25は、4つの噴出孔3の長手方向両端部(以下単に、両端部という)の壁面3a,3aの上流側においてそれぞれの長手方向と直交している。噴出孔3と混合流体流路溝部13とが交差する位置には、混合流体が噴出する混合流体出口孔13aが形成され、噴出孔3と噴霧媒体流路溝部24,25とが交差する位置には、それぞれ噴霧媒体が噴出する噴霧媒体出口孔24a,25aが形成されている。
【0023】
混合流体流路12を介して混合流体流路溝部13に供給された混合流体は、噴出孔3の中間部の上流側で衝突した後、混合流体出口孔13aから噴出し、
図4に示すように扇形の噴霧2を形成する。このように混合流体を互いに衝突させて扇形に噴霧させる方式を一般にファンスプレイ式噴霧という。
図1において、噴霧媒体流路22,23を介して噴霧媒体流路溝部24,25に供給された噴霧媒体は、噴霧媒体出口孔24a,25aから噴出する。
【0024】
ここで、従来型のファンスプレイ式噴霧の問題点について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6及び
図7は、それぞれ本実施例に係る噴出孔3周辺の断面図及び平面図である。従来型のファンスプレイ式噴霧では、
図6に示すように噴出孔3の長手方向に沿って薄い扇型の噴霧2が形成されるため、噴霧角度が広くなる。そのため、噴出孔3の両端部壁面3a,3aに微細化した液体燃料の粒子が衝突し、衝突した微粒子同士が合体して粗大粒子を形成する可能性がある。粒子径が300μm以上の粗大粒子は体積当たりの表面積が小さく、燃焼反応が微粒子や大粒子に比べて遅いため。未燃分や煤塵の発生源となりやすい。
【0025】
また、特に薄厚の外側部材1aで構成された噴霧ノズルを、熱負荷の高い条件で運用した場合、外側部材1aが熱変形することにより外側部材1aと内側部材1bの間隙が拡大し、この間隙に液体燃料の粒子が侵入することで、粗大粒子が生成される恐れがある。そのため、外側部材1aには、ある程度の厚みが必要となる。しかし、外側部材1aを厚くすると、噴出孔3の両端部壁面3a,3aの高さが増すため、液体燃料の粒子が噴出孔3の両端部壁面3a,3aと衝突する頻度が増し、粗大粒子の形成が促進される。従って、外側部材1aの熱変形を抑制しつつ、噴出孔3の両端部壁面3a,3aへの噴霧2の衝突を防止することが重要となる。
【0026】
〜効果〜
本実施例では、
図6に示すように噴出孔3の両端部壁面3a,3aの上流側にそれぞれ噴霧媒体流路溝部24、25が形成されているため、噴霧媒体出口孔24a,25aから噴出される噴霧媒体が、噴出孔3の両端部壁面3a,3aに沿った流れ26,26を形成する。すなわち、
図7において、噴霧媒体出口孔24a、25aから噴出孔3の両端部壁面3a,3aに沿って噴霧媒体のみが均一に噴出することにより、噴出孔3の両端部壁面3a,3a全体が噴霧媒体の流れによって覆われるため、混合流体出口孔13aから噴出される液体燃料の粒子が噴出孔3の両端部壁面3a,3aに衝突することを確実に防止できる。さらに、噴霧媒体出口孔24a,25aから噴出される噴霧媒体のせん断力で噴霧2の微粒化をより促進できる。さらに、図中の矢印27,27で示すように、混合流体流路溝部24,25から外側部材1aと内側部材1bの間隙にも噴霧媒体を流通させることで、液体燃料の粒子が間隙に侵入することを防止し、部材同士の固着や各部材の熱変形も抑制できる。また、外側部材1aに形成される噴出孔3の長手方向の長さを変更するだけで噴霧媒体出口孔24a,25aの開口面積を変更できるため、噴霧媒体の噴出量を容易に調整できる。また、噴霧媒体流路溝部24,25が噴出孔3の長手方向と直交する方向に形成されているため、噴出孔3の形成位置が加工精度によって噴出孔3の長手方向と垂直な方向にずれた場合でも、噴出孔3の両端部壁面3a,3aに沿って均一に噴霧媒体を噴出させることができるため、噴霧ノズル1の製作が容易となる。
【0027】
〜変形例〜
本実施例では、
図7に示すように噴出孔3の両端部壁面3a,3aは円弧形状であるが、その他の形状(例えば矩形状)であっても良い。また、噴霧媒体流路溝部24、25は、
図1に示すように内側部材1bの全周にわたって形成されているが、噴出孔3近傍のみに形成しても良い。
【0028】
本実施例に係る噴霧ノズル1は、
図1に示すように外側部材1aに噴出孔3を4つ形成し、各々の噴出孔3から異なった方向に噴霧2を形成することで、火炎を4つに分割するように構成されている。火炎を分割することにより、火炎全体の表面積が大きくなり、火炎からの放射冷却の効果が高まる。このため、高温で生成しやすい窒素酸化物(NOx)を低減することができる。また、火炎を分割することにより燃焼用空気が火炎の周囲から混合しやすくなるため、未燃分や煤塵の発生を低減できる。さらに、噴出孔3を多く設けるほど、液体燃料の噴出量を増やし燃焼量を増やすことができる。但し、本発明は、分割火炎を必須の構成要件とするものではないため、外側部材1aに形成する噴出孔の数は、3つ以下あるいは5つ以上でも良い。
【0029】
本実施例では、噴霧媒体流路溝部24,25の断面形状は、
図6に示すように矩形であるが、
図8に示すように逆三角形としても良い。この場合、噴霧媒体流路溝部24A,25Aの混合流体流路溝部13側の壁面24Aa,25Aaが、それぞれ噴出孔3の中央下流側に向かうように傾斜しているため、噴霧媒体出口孔24a,25aから噴出される噴霧媒体は、噴霧2の中心に向かう流れ26A,26Aを形成する。これにより、噴霧2の噴霧角度をさらに抑制でき、液体燃料の微粒子が噴出孔3の両端部壁面3a,3aに衝突することをより確実に防止できる。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2の実施例に係る噴霧ノズルについて、
図9〜
図12を用いて説明する。
図9は、本実施例に係る噴霧ノズルの背面側の平面図であり、
図10〜
図12は、
図9に示す噴霧ノズル1AのAA線,BB線,CC線それぞれにおける断面図である。
【0031】
本実施例に係る噴霧ノズル1Aと第1の実施例に係る噴霧ノズル1(
図1〜
図5に示す)との違いは、内側部材背面の液体燃料供給部と噴霧媒体供給部の配置と内側部材内部の流路構造にある。以下、第1の実施の形態に係る噴霧ノズル1との相違点を中心に説明する。
【0032】
本実施の形態に係る噴霧ノズル1Aの内側部材1Abは、
図9に示すように背面中央部に噴霧媒体供給部50が形成され、背面外周部に液体燃料供給部40が形成されている。液体燃料供給部40は、
図12に示すように流路41,54を介して混合流体流路溝部13に接続され、噴霧媒体供給部50は、
図10に示すように流路51,52を介してそれぞれ噴霧媒体流路溝部24,25に接続されると共に、
図12に示すように流路53,54を介して混合流体流路溝部13に接続されている。
【0033】
液体燃料供給部40に供給された液体燃料は、流路41,54を介して混合流体流路溝部13に供給され、噴霧媒体供給部50に供給された噴霧媒体は、流路51,52を介してそれぞれ噴霧媒体流路溝部24,25に供給されると共に、流路53,54を介して混合流体流路溝部13に供給される。流路54は、液体燃料を供給する流路41(以下、液体燃料流路という)と噴霧媒体を供給する流路53(以下、噴霧媒体流路)とに接続しており、液体燃料と噴霧媒体の混合流体を供給する混合流体流路を構成している。
【0034】
上記のように構成した噴霧ノズルにおいても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0035】
本発明の第3の実施例に係る噴霧ノズルについて、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13は、本実施例に係る噴霧ノズルの背面図であり、
図14は、
図13に示す噴霧ノズル1BのCC線における断面図である。なお、噴霧ノズル1BのAA線及びBB線における断面図は、それぞれ
図3及び
図4と同様である。
【0036】
本実施例に係る噴霧ノズル1Bと第1の実施例に係る噴霧ノズル1(
図1〜
図5に示す)との違いは、内側部材内部の流路構造にある。以下、第1の実施の形態に係る噴霧ノズル1との相違点を中心に説明する。
【0037】
本実施の形態に係る内側部材1Bbにおいては、
図13又は
図14に示すように、それぞれの混合流体流路12は、噴霧媒体供給部20と噴霧媒体流路21,28を介して接続されている。
【0038】
本実施例に係る混合流体流路12では、液体燃料流路11から供給される液体燃料の流れに対し、2つの噴霧媒体流路21,28を介して供給される噴霧媒体が二方向から挟み込むように合流する。
【0039】
特に、液体燃料に対し一方向のみから噴霧媒体を合流させる方式の噴霧ノズルを噴霧媒体流量が少ない運用形態で使用した場合、液体燃料への噴霧媒体の合流によるミキシング効果が低くなるため、噴霧される液体燃料の粒子径が全体的に大きくなり、それに伴い噴出孔3の両端部壁面3a,3aで生成される粗大粒子の粒子径がさらに大きくなる恐れがある。
【0040】
本実施例では、液体燃料流路11を介して供給される液体燃料に対し、2つの噴霧媒体流路21,28を介して二方向から噴霧媒体を合流させることで、同じ流量の噴霧媒体を一方向から合流させた場合よりもミキシング効果を高めることができる。
【0041】
上記のように構成した噴霧ノズルにおいては、第1の実施例と同様の効果が得られると共に、噴霧媒体の流量が少ない運用形態でも液体燃料の微粒化を促進することができる。
【実施例4】
【0042】
本発明の第4の実施例に係る燃焼装置について、
図15を用いて説明する。
図15は、本実施例に係る燃焼装置の一例を示す概略図である。
図15に示すように、燃焼装置100は、燃焼炉33と、燃焼炉33に燃焼用空気を供給する保護管31と、保護管31に内包され、燃焼炉33内に向けて配置された第1の実施例に係る噴霧ノズル1と、噴霧ノズル1に液体燃料と噴霧媒体を供給するノズル管30と、ノズル管30に液体燃料を供給する液体燃料供給ライン14と、ノズル管30に噴霧媒体を供給する噴霧媒体供給ライン29とを備えている。図中の矢印34は、燃焼用空気の流れを示している。
【0043】
燃焼装置100は、所定の液体燃料、噴霧媒体及び燃焼用空気を燃焼炉33内に供給し、安定燃焼させることで、必要な熱量を確保する。このように構成された燃焼装置100は、例えば発電用ガスタービンの燃焼装置として用いられる。
【0044】
噴霧ノズル1からの噴霧2の噴霧角度が大きい場合、噴霧2を構成する液体燃料の微粒子が、保護管31や噴霧ノズル1の周辺に存在する構造材(図示せず)に衝突し、粗大粒子の生成により煤塵が増大し、あるいは液体燃料が高温の構造材に固着してコーキングが発生する恐れがある。
【0045】
上記のように構成した燃焼装置においては、第1の実施例と同様の効果が得られると共に、噴霧角度が抑えられることで燃焼装置100を構成する構造材への噴霧2の衝突が抑制され、安定燃焼に加えて、煤塵濃度の低減、コーキングの発生を抑制できる。なお、本実施例に係る燃焼装置100は、第2又は第3の実施例に係る燃焼ノズル1A又は1Bを備える構成としても良い。