特許第6168934号(P6168934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6168934トリアセトンアミン含有反応混合物の後処理に際して発生する廃水流の処理法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168934
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】トリアセトンアミン含有反応混合物の後処理に際して発生する廃水流の処理法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/26 20060101AFI20170713BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20170713BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20170713BHJP
   C02F 9/04 20060101ALI20170713BHJP
   C02F 9/10 20060101ALI20170713BHJP
   C02F 9/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C02F1/26 A
   C02F1/28 D
   C02F1/28 E
   C02F1/04 D
   C02F9/04
   C02F9/10
   C02F9/02
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-186517(P2013-186517)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2014-50834(P2014-50834A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2016年5月17日
(31)【優先権主張番号】10 2012 215 903.7
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ニーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ブレーメ
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ミヒェル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュヴァーツ
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−17995(JP,A)
【文献】 特開2011−50920(JP,A)
【文献】 特開平2−111405(JP,A)
【文献】 特開2005−21890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/02−18、26−38、66−68、9/00−14
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用された水相の処理法であって、以下の工程
a)該使用された水相から第一の有機成分を、抽出剤を用いた抽出によって除去し、その際、第二の水相と該抽出剤を含む抽出物とを得る工程;
b)該第二の水相から第二の有機成分を除去し、その際、第三の水相を得る工程;
c)該第三の水相から水を除去し、その際、第四の水相及び分離された水相を得る工程、ここで、該分離された水相は、該第三の相から除去された水を包含する;
d)該第四の水相から第三の有機成分を除去し、かつ該第四の水相を清澄化し、その際、第五の水相を得る工程;
から成り、その際、付加的な工程e)において、前記の使用された水相、第二の水相、第三の水相、第四の水相及び/又は第五の水相のpH値を助剤により調節し、かつ前記水相のpH値が、工程e)における前記pH値の調節後、pH5〜pH9の範囲にある、使用された水相の処理法。
【請求項2】
工程c)を工程b)に続けて直接行い、かつ工程e)において、前記の使用された水相、第二の水相、第四の水相及び/又は第五の水相のpH値を助剤により調節し、かつ前記水相のpH値が、工程e)における前記pH値の調節後、pH5〜pH9の範囲にあることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程e)において、前記の使用された水相、第二の水相及び/又は第三の水相のpH値を助剤により調節し、かつ前記水相のpH値が、工程e)における前記pH値の調節後、pH5〜pH9の範囲にあることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
付加的な工程f)において、工程a)で得られた前記抽出物を後処理し、その際、前記抽出された有機成分と前記抽出剤とへの分離を行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
付加的な工程g)において、固体を前記第五の水相から単離することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程a)における前記抽出剤を、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、エーテル、ハロゲン化溶媒、エステル及びケトンから成る群から選択することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程a)における、使用された水相:抽出剤の質量比が2:1〜40:1であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程e)で使用される助剤が塩基であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程d)における前記第四の水相からの前記第三の有機成分の除去及び前記第四の水相の清澄化を吸着によって行うことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程d)における前記第四の水相からの前記第三の有機成分の除去及び前記第四の水相の清澄化を、吸着剤を用いた吸着によって行い、かつ該吸着剤を、活性炭、ゼオライト及びシリカゲルから成る群から選択することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程b)における前記第二の有機成分を、アンモニア、アセトン、メシチルオキシド、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、TMDH−ピリジン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン;ベンゼン;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから成る群から選択することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程c)における前記第三の水相からの水の除去を蒸留によって行うことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一系触媒を用いたトリアセトンアミンの製造法から生じ得る廃水流の処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアセトンアミン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン;TAA)は、重要な化学中間体であり、これは多数の一連の生成物の合成のために用いられる。ここで、重要な一連の生成物とは、例えば光安定剤(ヒンダード・アミン系光安定剤[HALS])、酸化剤及び重合調節剤(例えばニトロキシルラジカル)である。
【0003】
アセトンとアンモニアからのトリアセトンアミンの製造は、種々の方法の形で文書に記録されている。その際、これらの製造法は、まず大まかに、例えばDE2429937、US4536581、JP54088275に又はZeitschrift fuer Naturforschung 1976,328−337及び338−345に記載される、原料からのTAAの直接(単段)合成、並びに、例えばDE2429935又はDE2429936に記載される、アセトニン(2,2,4,4,6−ペンタメチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリミジン)を介した、又は、例えばDE2352127に記載される、ホロン(2,6−ジメチル−2,5−ヘプタジエン−4−オン)を介した間接(2段階)合成に区分される。アセトニンを介した2段階のTAA合成の場合、まずアセトンとアンモニアから出発してアセトニン形成され、そして次いで引き続く工程においてアンモニア当量の脱離下で反応してさらにTAAになり得る。アセトニンを介した合成法の場合、常に両方の種類(TAA及びアセトニン)が同時に形成されるが、ただし、アセトニン形成はTAA形成と比べて反応速度論的に大いに有利である。"単段"TAA合成においては、発生するアセトニンが単に単離されない。
【0004】
TAAの製造は、原則的に、均一系触媒を用いても(たいてい、アンモニウム塩による)、不均一系触媒を用いても(例えば酸性イオン交換体上で)可能である。
【0005】
先行技術からのたいていの文献は、均一系触媒を用いた反応に関する。その際、可能な触媒として最も頻繁に挙げられるのは、塩化カルシウム(例えばChemical Industries 2003,89,559−564;Zeitschrift fuer Naturforschung 1976,328−337及び338−345)、塩化アンモニウム(例えばJP2003−206277;JP2001−031651;JP04154762)及びヒドラジン誘導体(例えばJP54088275;JP54112873A)である。
トリアセトンアミンの製造に際しては、有機反応生成物のほかに副生成物として水が形成される。それゆえ、反応の終わりに、有機成分、水及び触媒から成る反応混合物が得られ、ここで、触媒は均一に溶解している。
それゆえ、反応混合物の完全な後処理に際しては、いかなる場合においても、水(反応水、すなわち、付加的に供給されていない水)から成るか、又は少なくとも水を含んでいる流が発生する。この流は反応には返送されることができず、それゆえ、廃棄処理に供給されなければならない。
そのうえまた、反応混合物の後処理のために助剤を用いることもありえ、これらは反応混合物中に含まれる水と一緒に水相を形成するか、又は水溶液として直接用いられる。これらの助剤若しくはその水溶液が使用される場合、付加的な含水流が生じ、これらは、たしかに場合によりまず内部で返送することができるが、しかし、最終的には同様に廃棄処理に供給しなければならない。トリアセトンアミンの製造に際して得られた個々の廃水流は、以下でより詳細に記載する。
【0006】
形成された反応水から生じる水流
反応において形成された反応水(アセトンとアンモニアが縮合してTAAになる際には2当量の水が発生する)はプロセスから排出しなければならないが、完全には返送することができず、それというのも、さもなければ反応平衡に不都合な影響を及ぼすからである。
トリアセトンアミン粗生成物の蒸留による後処理に際しては、反応水が蒸留留分として得られる。しかしながら、TAA形成反応に際しては、(共沸混合物、例えばメシチルオキシド[4−メチルペンタ−3−エン−2−オン]の形成によって)水から全く分離され得ないか、又は(非常に似た沸点に基づき)非常に分離され得難い副生成物が形成される。メシチルオキシド−水の共沸混合物の場合、縮合後に、混和性ギャップに基づき、たしかに低温で水相と有機相との分離を実施することが可能であるが、しかしながら、有機成分で負荷されている水相が得られる。殊に、水を含むこの流は、水と似た沸点を有するか又はこれと共沸混合物を形成する有機成分で負荷されている(例えば、アセトン、メシチルオキシド、ジアセトンアルコール[4−ヒドロキシ−4−メチルペンタ−2−オン]、ジアセトンアミン[4−アミノ−4−メチルペンタン−2−オン]、TMDH−ピリジン[2,2,4,6−テトラメチル−2,3−ジヒドロピリジン]又はアセトニン)。
強く負荷されたこの水相は、外部放出(例えば浄化装置)には適しておらず、それゆえまず後処理を受けなければならない。
【0007】
触媒の失活のために付加的な助剤を使用したことにより生じる水流
均一に溶解した触媒(例えばアンモニウム塩)を含むトリアセトンアミン含有反応混合物の蒸留による後処理前には、触媒の失活が行われなければならない。これが行われない場合、最初に反応混合物中に含まれたTAAのほんの一部しか蒸留中に純粋な生成物として単離することができない(JP04154763;第5頁、第14行目〜第16行目、第4頁からの表を参照されたい)。蒸留中に触媒が存在することで、一方では低分子量成分へのTAAの分解(形成反応の逆反応)が生じ、他方では更なる縮合反応が生じて、更なる使用に供給することのできない、より高分子量の成分が形成される。
その限りでは、反応混合物の後処理前に触媒の失活を行うことがどうしても必要である。"触媒の失活"とは、例えばTAA含有粗生成物中に存在している酸触媒が、触媒的に活性ではない形に変えられることを意味する。これは、適した助剤の添加によって、殊に、用いられる触媒の量を基準として少なくとも1モル当量の塩基の添加によって行われる[例えば、JP2003−206277;JP2001−031651;JP04154763;US4536581;G.Sosnovsky & M.Konieczny,Synthesis,1976,735−736;JP05140104;Plastic Additives 2006,5(59)、46;A.Formenti & P.Piccinelli,Chimica e l'lndustria,2000,82(5),569−571]。特に有利とされるのは、用いられる触媒の量を基準として1〜2モル当量の塩基、極めて有利には1〜1.4モル当量の塩基、最も有利には1.2モル当量の塩基である。塩基(M+-)は、相応する酸触媒と反応する。触媒がアンモニウム塩(AH+-)である場合、塩基(M+-)は反応して、相応する遊離アミン(A)、共役酸(HB)並びに不活性塩(M+-)となる。特にNaOH(M+-)による塩化アンモニウム(AH+-)の失活を考慮した場合、アンモニア(A)、水(HB)及び塩化ナトリウム(M+-)が発生する。いわば、NaOH(M+-)による硝酸アンモニウム(AH+-)の失活に際しては、生成物としてアンモニア(A)、水(HB)及び硝酸ナトリウム(M+-)が発生する。
この添加に際しては、水相がたびたび形成され、これは水及び塩の一部を含み、また分離することができる。その時、有機相は更なる後処理(例えば蒸留)に供給することができる。
分離された水相は、触媒の失活に際して発生した成分の少なくとも一部、並びに助剤自体の少なくとも一部を(これが過剰量で用いられた場合)含む。それに従って、助剤として塩基(例えばNaOH又はKOH)が使用された場合、遊離アミン(A;例えばアンモニア、アミン又はヒドラジン)、共役酸(HB;例えば水)及び発生した塩(M+-;例えばNaCl、KCl、NaNO3又はKNO3)の(それぞれ少なくとも一部)、並びに場合によっては塩基(M+-;例えばNaOH又はKOH)の一部を(これが過剰量で用いられた場合)含む。
そのうえまた、水相は、それが有機相と直接接触していたという事実に基づき、有機成分で負荷されている。その際、水相中での有機成分の濃度は、有機相中での濃度並びに有機相と水相とのそのつどの分配平衡に依存する。このように、水相は、アセトン、トリアセトンアミン、メシチルオキシド、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、TMDH−ピリジン、アセトニン又はホロン等で特に負荷されている。特にTAAによる負荷が問題であり、それというのも、これは非常に僅かしか生分解性を有していないからである。
塩基(M+-)の存在及び有機アミンの存在に基づき、水相は、そのうえ高いpH値を有する。これはpH>7であり、たいていの場合、それどころかpH>12である。
それゆえ、強く負荷されたこの水相は、外部放出(例えば浄化装置)には適していない。特に塩(生物学的な後処理には適していない)の存在、低いpH値、並びに有機成分(例えばTAA)の存在には、特別な後処理が必要である。
【0008】
失活させられた触媒を完全に抽出するために付加的な助剤を使用したことにより生じる水流
(上記の通り)助剤の添加による触媒の失活及び生じる水相の分離が行われる場合、水(反応水及び/又は助剤からの水)の一部並びに失活により形成された成分(例えば形成された塩)の一部若しくは失活のために添えられた助剤自体の一部が有機相中に留まる。例えば、塩化アンモニウムの失活のためにNaOHが使用される場合、有機相中には、水のほかに塩(NaCl)の一部も存在する。
【0009】
更なるプロセス操作のために、有機相中に残留した有機塩を完全に除去することが場合により所望されている。そのためには、付加的な助剤の使用が不可欠である。そのため、例えば塩基を新たに添加してよい。その結果、触媒の失活の事例において記載したように負荷されている(A、HB、M+-、M+-、有機成分)水相が新たに形成する。強く負荷されたこの水相も同様に、外部放出(例えば浄化装置)には適していない。
【0010】
均一系触媒を用いたTAAの製造法から生じ、そして有利には本発明による方法によって処理することができる廃水流の一般組成
上記の理由から、均一系触媒を用いたTAAの製造に際しては、1つ以上の廃水流が発生し、これらは浄化装置又は環境への放出に適しておらず、それゆえ処理されなければならない。ここで、廃水の発生につながる処理工程の詳しい説明は、単に例示的なものであり、完全なものであることを自負するものではなく、かつ本発明による方法によって処理することができる廃水に関して何ら制限するものではない。
【0011】
先行技術においては、トリアセトンアミン製造法に続く廃水の後処理がPlastic Additives 2006,5(59)、46(Abbildung 2(図2))に記載されている。
そこでは、水酸化ナトリウム(固体)の添加による硝酸アンモニウム触媒の失活が実施されている。その結果、アンモニア、硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム(過剰量)並びに有機成分を含む水相が生じる。後処理は、以下の通りに行われる:
1)濾過;
2)ストリッピング;
3)硝酸ナトリウムの冷却及び晶出;
4)残留したNaOH/NaNO3溶液の濃縮;
5)触媒を失活させるためのこの溶液の再利用(固体NaOHの代わりに)
【0012】
ただし、この処理は、個々に記載された工程に関しても、処理全体の適用に関してもいくつかの欠点を示す。
【0013】
個々の記載された後処理工程に関して、この廃水後処理は、Plastic Additives 2006,5(59),46の中で、以下の不十分な点を示す:
1)NaOH/NaNO3溶液の冷却(工程3)によって、NaNO3の良好な可溶性に基づき、NaNO3を完全に除去することが可能ではない。つまり、その結果、たしかにNaNO3はたしかに減少しているが、しかしながら相当の量のNaNO3を含む溶液が生じる。そのため、本発明の発明者により、この方法では硝酸ナトリウムは単に約30%しか除去されないことが見出された。つまり、全体的には、非常に大量の硝酸ナトリウムが単に内部で返送されており、晶出によるプロセスからの排出は効果的ではない。
2)NaOH/NaNO3溶液の再利用を可能にするために、これは、すでに言及した通り濃縮されなければならない。蒸留による濃縮に際しては、それ自体更なる後処理なしに(例えば浄化装置へと)放出することができる留出物を作り出す手法が見出されなければならない。しかしながら、Plastic Additives 2006,5(59),46には、このことは詳しくは説明されていない。それゆえ、蒸留の終わりには、浄化装置への放出には適していないほど負荷されている、利用可能ではない大量の廃棄流が再び生じると考えられる。
効果的なTAA製造に処理全体を適用することに関して、Plastic Additives 2006,5(59),46に記載された廃水後処理は、以下の不十分な点を示す。
3)晶出による硝酸ナトリウムの記載された除去は不完全なものでしかない。この方法では、硝酸ナトリウムの主たる部分が水相の返送に際して再びプロセスに導入され、そこで有機相と新たに接触させられる。相応する分配平衡に基づき、これは有機相中での硝酸ナトリウムの増大につながる。これは、のちのプロセス操作にとって不都合であり、それというのも、硝酸ナトリウムは、有機相の蒸留による後処理に際して蒸留塔底物中に集積するからである。
4)有機相の蒸留による後処理に際して、硝酸ナトリウムのこのような集積が妨げられるべき場合、蒸留前に硝酸ナトリウムを実質的に除去することが可能性として考えられる。かかる除去は、抽出剤を用いた有機相の抽出によって行われることができるが、しかしながら、これは硝酸ナトリウムを含んでいてはならず、それというのも、さもなければ分配平衡に基づき有機相からの実質的な除去が可能ではなくなるからである。それゆえ、抽出剤として、Plastic Additives 2006,5(59),46に記載される濃縮されたNaOH/NaNO3溶液は使用することができず、代替的に、例えば純粋なNaOH溶液を付加的に使用しなければならないが、これはまた廃棄流を生む。かかる廃棄流の処理は、Plastic Additives 2006,5(59),46に記載された方法を用いて可能ではない。
【0014】
先行技術の他の文献も同様に、トリアセトンアミンの均一系触媒的製造を記載するが、しかしながら、廃水を生む中で、触媒の失活のために塩基を添加することについて述べるにとどまっており、発生した廃水の更なる処理については述べていない(JP2003−206277;JP2001−031651;JP04154763;Synthesis 1976,735−736,US4536581)。
【0015】
どのように上記の不十分な点を取り除くことができるかは、技術文献全般からもわからない。例えば、James W.Patterson,"Industrial Wastewater Treatment Technology",Second Edition,1985(下記に挙げた頁数はこの著作物に関する)により記載された文献は、TAA製造において生じる廃水の処理には適していない。そのため、硝酸塩の再利用(第263頁)は、どんな場合も可能ではない。生物学的脱窒素(第264頁〜第266頁)並びにイオン交換法(第266頁〜第268頁)も、TAA製造に際して生じる、水を含む流の高い塩濃度に基づき適用することはできない。有機成分の除去に関して、James W.Patterson,"Industrial Wastewater Treatment Technology",Second Edition,1985は、たしかにストリッピング法に言及しているが(第304頁)、それにも関わらず、有機成分の除去のために挙げられたこの更なる方法は、ここに記載した廃水流の場合には適用可能でない。そのため相分離(第301頁)が適用可能ではなく、それというのも廃水流に存在する有機成分は溶解しているからである。TAA製造から直接的に生じる廃水流にも、吸着法(第329頁)が同じようにほとんど適用可能ではなく、それというのも、これらはあまりにも高い割合の有機化合物を含んでいるからである。有機成分を除去するための生物学的処理(第340頁)は、すでに硝酸塩除去の事例において考察した通り、有機不純物の場合も高い塩濃度に基づき可能ではなく、加えて、トリアセトンアミンが生分解し難いことによって複雑化する。TAA廃水流の場合のように、硝酸塩が存在し、かつ中和後に化学的に可能な限り均一な溶液が得られるべき場合、硫酸又は塩酸の添加によるpH値の調節も同様に、第363頁に記載されている通り好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】DE2429937
【特許文献2】US4536581
【特許文献3】JP54088275
【特許文献4】DE2429935
【特許文献5】DE2429936
【特許文献6】DE2352127
【特許文献7】JP2003−206277
【特許文献8】JP2001−031651
【特許文献9】JP04154762
【特許文献10】JP54112873A
【特許文献11】JP04154763
【特許文献12】JP05140104
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Zeitschrift fuer Naturforschung 1976,328−337及び338−345
【非特許文献2】Chemical Industries 2003,89,559−564;Zeitschrift fuer Naturforschung 1976,328−337及び338−345)
【非特許文献3】G.Sosnovsky & M.Konieczny,Synthesis,1976,735−736
【非特許文献4】Plastic Additives 2006,5(59)、46
【非特許文献5】A.Formenti & P.Piccinelli,Chimica e l'lndustria,2000,82(5),569−571
【非特許文献6】Synthesis 1976,735−736
【非特許文献7】James W.Patterson,"Industrial Wastewater treatment Technology",Second Edition,1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
それゆえ、先行技術に照らして、トリアセトンアミンの製造に際して発生する水性流を処理するための改善された方法を提供するという課題が生まれた。殊に本方法は、上に記載した廃水流を役立てることを可能にする。その際、これらの流の処理は可能な限り単純かつ低コストであるべきである。廃水処理の最終的な生成物は、商業的な価値を有する生成物となるべきであり、かつ同時に、燃焼、保管又はそれ以外の廃棄処理に供給されなければならない構成成分の割合は可能な限り低く保たれるべきである。そのうえ、この改善された方法は、混合物から除去された水を、この水を浄化装置に直接放出するか又はそれどころか環境に放出することができる品質にまで後処理できることを可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
ここで意想外にも、上述の課題は、本発明に従った方法によって解決されることを見出した。その際、本発明による方法は、特別な後処理シーケンスにおいて、廃棄処理が難しい特別な有害廃棄物の発生を最小にするという利点を提供し、その際、高純度の水並びに高純度の生成物(若しくは高純度の生成物溶液)が後処理から得られる。それに従って、本発明の第一の対象は、
1.使用された水相(eingesetzte waessrige Phase)の処理法であって、以下の工程
a)使用された水相から第一の有機成分を、抽出剤を用いた抽出によって除去し、その際、第二の水相と抽出剤を含む抽出物とを得る工程;
b)第二の水相から第二の有機成分を除去し、その際、第三の水相を得る工程;
c)第三の水相から水を除去し、その際、第四の水相及び分離された水相を得る工程、ここで、分離された水相は、第三の相から除去された水を包含する;
d)第四の水相から第三の有機成分を除去し、かつ第四の水相を清澄化し、その際、第五の水相を得る工程;
から成り、その際、付加的な工程e)において、使用された水相、第二の水相、第三の水相、第四の水相及び/又は第五の水相のpH値を助剤により調節する、使用された水相の処理法である。
【0020】
2.本発明の更なる実施形態においては、対象1に従った方法は、工程c)を工程b)に続けて直接行い、かつ工程e)において、使用された水相、第二の水相、第四の水相及び/又は第五の水相のpH値を助剤により調節することを特徴としている。
【0021】
3.本発明の更なる実施形態においては、対象1又は2の1つ以上に従った方法は、工程c)を工程b)に続けて直接行い、かつ工程e)において、使用された水相及び/又は第二の水相のpH値を助剤により調節することを特徴としている。
【0022】
4.本発明の更なる実施形態においては、対象1に従った方法は、工程e)において、使用された水相、第二の水相及び/又は第三の水相のpH値を助剤により調節することを特徴としている。
【0023】
5.本発明の更なる実施形態においては、対象1から4の1つ以上に従った方法は、工程e)において、第二の水相のpH値を助剤により調節することを特徴としている。
【0024】
6.本発明の更なる実施形態においては、対象1から5の1つ以上に従った方法は、付加的な工程f)において、工程a)で得られた抽出物を後処理することを特徴としている。
【0025】
7.本発明の更なる実施形態においては、対象1から6の1つ以上に従った方法は、付加的な工程f)において、工程a)で得られた抽出物を後処理し、その際、抽出された有機成分と抽出剤とへの分離を行うことを特徴としている。
【0026】
8.本発明の更なる実施形態においては、対象1から7の1つ以上に従った方法は、付加的な工程f)において、工程a)で得られた抽出物を後処理し、その際、抽出された有機成分と抽出剤とへの分離を行い、かつ蒸留による分離を行うことを特徴としている。
【0027】
9.本発明の更なる実施形態においては、対象1から8の1つ以上に従った方法は、付加的な工程f)において、工程a)で得られた抽出物を後処理し、その際、抽出された有機成分と抽出剤とへの分離を行い、かつこの後処理を0.1〜10barの圧力で行うことを特徴としている。
【0028】
10.本発明の更なる実施形態においては、対象1から9の1つ以上に従った方法は、付加的な工程f)において、工程a)で得られた抽出物を後処理し、その際、抽出された有機成分と抽出剤とへの分離を行い、かつこの後処理を0.5〜5barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0029】
11.本発明の更なる実施形態においては、対象1から10の1つ以上に従った方法は、付加的な工程f)において、工程a)で得られた抽出物を後処理し、その際、抽出された有機成分と抽出剤とへの分離を行い、かつこの後処理を1〜3barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0030】
12.本発明の更なる実施形態においては、対象1から11の1つ以上に従った方法は、付加的な工程f)において、工程a)で得られた抽出物を後処理し、その際、抽出された有機成分と抽出剤とへの分離を行い、かつこの後処理を1barの圧力で行うことを特徴としている。
【0031】
13.本発明の更なる実施形態においては、対象1から12の1つ以上に従った方法は、付加的な工程g)において、固体を第五の水相から単離することを特徴としている。
【0032】
14.本発明の更なる実施形態においては、対象1から13の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤を、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、エーテル、ハロゲン化溶媒、エステル及びケトンから成る群から選択していることを特徴としている。
【0033】
15.本発明の更なる実施形態においては、対象1から14の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤が脂肪族溶媒であり、かつペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン及びシクロヘキサンから成る群から選択していることを特徴としている。
【0034】
16.本発明の更なる実施形態においては、対象1から14の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤が芳香族溶媒であり、かつベンゼン、トルエン及びキシレンから成る群から選択していることを特徴としている。
【0035】
17.本発明の更なる実施形態においては、対象1から14の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤がエーテルであり、かつジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル及びメチル−t−ブチルエーテルから成る群から選択していることを特徴としている。
【0036】
18.本発明の更なる実施形態においては、対象1から14の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤がハロゲン化溶媒であり、かつこれをジクロロメタン、クロロホルム及びテトラクロロメタンから成る群から選択していることを特徴としている。
【0037】
19.本発明の更なる実施形態においては、対象1から14の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤がエステルであり、かつこれを酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロプル及び酢酸ブチルから成る群から選択していることを特徴としている。
【0038】
20.本発明の更なる実施形態においては、対象1から14の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤がケトンであり、かつこれをジエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びフェニルメチルケトンから成る群から選択していることを特徴としている。
【0039】
21.本発明の更なる実施形態においては、対象1から14の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出剤を、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル及びメチルイソブチルケトンから成る群から選択していることを特徴としている。
【0040】
22.本発明の更なる実施形態においては、対象1から21の1つ以上に従った方法は、工程a)における第一の有機成分が、TAA、アセトン縮合生成物、アセトン−アンモニア縮合生成物から成る群から選択される1種以上の化合物であることを特徴としている。
【0041】
23.本発明の更なる実施形態においては、対象1から22の1つ以上に従った方法は、工程a)における使用された水相:抽出剤の質量比が2:1〜40:1であることを特徴としている。
【0042】
24.本発明の更なる実施形態においては、対象1から23の1つ以上に従った方法は、工程a)における使用された水相:抽出剤の質量比が5:1〜20:1であることを特徴としている。
【0043】
25.本発明の更なる実施形態においては、対象1から24の1つ以上に従った方法は、工程a)における使用された水相:抽出剤の質量比が10:1であることを特徴としている。
【0044】
26.本発明の更なる実施形態においては、対象1から25の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出時間が0.1〜5時間の範囲にあることを特徴としている。
【0045】
27.本発明の更なる実施形態においては、対象1から26の1つ以上に従った方法は、工程a)における抽出時間が0.5〜2時間の範囲にあることを特徴としている。
【0046】
28.本発明の更なる実施形態においては、対象1から27の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去をストリッピング及び/又は蒸留によって行うことを特徴としている。
【0047】
29.本発明の更なる実施形態においては、対象1から28の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去を0.1〜10barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0048】
30.本発明の更なる実施形態においては、対象1から29の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去を0.5〜5barの範囲の圧力で実施することを特徴としている。
【0049】
31.本発明の更なる実施形態においては、対象1から30の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去を1〜3barの範囲の圧力で実施することを特徴としている。
【0050】
32.本発明の更なる実施形態においては、対象1から31の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去を1barの圧力で実施することを特徴としている。
【0051】
33.本発明の更なる実施形態においては、対象1から32の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去をストリッピング及び/又は蒸留によって行い、かつ40〜200℃の範囲の蒸留温度で実施することを特徴としている。
【0052】
34.本発明の更なる実施形態においては、対象1から33の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去をストリッピング及び/又は蒸留によって行い、かつ60〜160℃の範囲の蒸留温度で実施することを特徴としている。
【0053】
35.本発明の更なる実施形態においては、対象1から34の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の水相からの第二の有機成分の除去をストリッピング及び/又は蒸留によって行い、かつ80〜120℃の範囲の蒸留温度で実施することを特徴としている。
【0054】
36.本発明の更なる実施形態においては、対象1から34の1つ以上に従った方法は、工程b)における第二の有機成分を、アンモニア、アセトン、メシチルオキシド、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、TMDH−ピリジン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン;ベンゼン;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、キシレン等から成る群から選択していることを特徴としている。
【0055】
37.本発明の更なる実施形態においては、対象1から36の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行うことを特徴としている。
【0056】
38.本発明の更なる実施形態においては、対象1から37の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行い、かつ、その際の圧力が0.1〜10barの範囲にあることを特徴としている。
【0057】
39.本発明の更なる実施形態においては、対象1から38の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行い、かつ、その際の圧力が0.5〜5barの範囲にあることを特徴としている。
【0058】
40.本発明の更なる実施形態においては、対象1から39の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行い、かつ、その際の圧力が1〜3barの範囲にあることを特徴としている。
【0059】
41.本発明の更なる実施形態においては、対象1から40の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行い、かつ、その際の圧力が1barであることを特徴としている。
【0060】
42.本発明の更なる実施形態においては、対象1から41の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行い、かつ蒸留温度が40〜200℃の範囲にあることを特徴としている。
【0061】
43.本発明の更なる実施形態においては、対象1から42の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行い、かつ蒸留温度が60〜160℃の範囲にあることを特徴としている。
【0062】
44.本発明の更なる実施形態においては、対象1から43の1つ以上に従った方法は、工程c)における第三の水相からの水の除去を蒸留によって行い、かつ蒸留温度が80〜120℃の範囲にあることを特徴としている。
【0063】
45.本発明の更なる実施形態においては、対象1から44の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を吸着によって行うことを特徴としている。
【0064】
46.本発明の更なる実施形態においては、対象1から45の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を、吸着剤を用いた吸着によって行い、かつ吸着剤を活性炭、ゼオライト及びシリカゲルから成る群から選択していることを特徴としている。
【0065】
47.本発明の更なる実施形態においては、対象1から46の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を、吸着剤を用いた吸着によって行い、かつ吸着剤が活性炭であることを特徴としている。
【0066】
48.本発明の更なる実施形態においては、対象1から47の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を、吸着剤を用いた吸着によって行い、かつ用いた吸着剤の量が0.01〜10%(第四の水相の質量を基準とした質量%値)であることを特徴としている。
【0067】
49.本発明の更なる実施形態においては、対象1から48の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を、吸着剤を用いた吸着によって行い、かつ用いた吸着剤の量が0.1〜5%(第四の水相の質量を基準とした質量%値)であることを特徴としている。
【0068】
50.本発明の更なる実施形態においては、対象1から49の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を、吸着剤を用いた吸着によって行い、かつ用いた吸着剤の量が0.2〜1%(第四の水相の質量を基準とした質量%値)であることを特徴としている。
【0069】
51.本発明の更なる実施形態においては、対象1から50の1つ以上に従った方法は、工程d)における塩含有の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を0〜150℃の範囲の温度で行うことを特徴としている。
【0070】
52.本発明の更なる実施形態においては、対象1から51の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を0〜100℃の範囲の温度で行うことを特徴としている。
【0071】
53.本発明の更なる実施形態においては、対象1から52の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を10〜50℃の範囲の温度で行うことを特徴としている。
【0072】
54.本発明の更なる実施形態においては、対象1から53の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を1〜10barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0073】
55.本発明の更なる実施形態においては、対象1から54の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を1〜5barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0074】
56.本発明の更なる実施形態においては、対象1から55の1つ以上に従った方法は、工程d)における第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化を1〜3barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0075】
57.本発明の更なる実施形態においては、対象1から56の1つ以上に従った方法は、工程e)で使用される助剤が塩基であることを特徴としている。
【0076】
58.本発明の更なる実施形態においては、対象1から57の1つ以上に従った方法は、工程e)で使用される助剤が塩基であり、その際、塩基を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから成る群から選択していることを特徴としている。
【0077】
59.本発明の更なる実施形態においては、対象1から56の1つ以上に従った方法は、工程e)で使用される助剤が酸であることを特徴としている。
【0078】
60.本発明の更なる実施形態においては、対象1から56及び59の1つ以上に従った方法は、工程e)で使用される助剤が酸であり、その際、酸を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸及び有機酸から成る群から選択していることを特徴としている。
【0079】
61.本発明の更なる実施形態においては、対象1から56及び59又は60の1つ以上に従った方法は、工程e)で使用される助剤が酸であり、その際、酸を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸及び有機酸から成る群から選択しており、かつ、その際、有機酸が酢酸又は安息香酸であることを特徴としている。
【0080】
62.本発明の更なる実施形態においては、対象1から61の1つ以上に従った方法は、水相のpH値が、工程e)におけるpH値の調節後にpH5〜pH9の範囲にあることを特徴としている。
【0081】
63.本発明の更なる実施形態においては、対象1から62の1つ以上に従った方法は、水相のpH値が、工程e)におけるpH値の調節後にpH6〜pH8の範囲にあることを特徴としている。
【0082】
64.本発明の更なる実施形態においては、対象1から63の1つ以上に従った方法は、工程e)におけるpH値の調節を0〜150℃の範囲の温度で行うことを特徴としている。
【0083】
65.本発明の更なる実施形態においては、対象1から64の1つ以上に従った方法は、工程e)におけるpH値の調節を10〜100℃の範囲の温度で行うことを特徴としている。
【0084】
66.本発明の更なる実施形態においては、対象1から65の1つ以上に従った方法は、工程e)におけるpH値の調節を20〜80℃の範囲の温度で行うことを特徴としている。
【0085】
67.本発明の更なる実施形態においては、対象1から66の1つ以上に従った方法は、工程e)におけるpH値の調節を1〜10barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0086】
68.本発明の更なる実施形態においては、対象1から67の1つ以上に従った方法は、工程e)におけるpH値の調節を1〜6barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0087】
69.本発明の更なる実施形態においては、対象1から68の1つ以上に従った方法は、工程e)におけるpH値の調節を1〜3barの範囲の圧力で行うことを特徴としている。
【0088】
70.本発明の更なる実施形態においては、対象1から69の1つ以上に従った方法は、付加的な工程g)において、固体を第五の水相から単離することを特徴としている。
【0089】
71.本発明の更なる実施形態においては、対象1から70の1つ以上に従った方法は、付加的な工程g)において、固体を第五の水相から単離し、かつ、その際、固体を、晶出、温度低下、溶媒の更なる除去又はこれらの処置の組合せによって単離することを特徴としている。
【0090】
72.本発明の更なる実施形態においては、対象1から71の1つ以上に従った方法は、無機塩0.1〜49.9%及び塩基0.1〜49.9%を包含し、かつpH7以上のpH値を有する、使用された水相の処理のために用いることを特徴としている。
【0091】
73.本発明の更なる実施形態においては、対象1から72の1つ以上に従った方法は、無機塩1〜29.9%、塩基0.1〜30%、アセトン0.1〜20%及びTAA0.1〜20%を包含し、かつpH7〜14のpH値を有する、使用された水相の処理のために用いることを特徴としている。
【0092】
74.本発明の更なる実施形態においては、対象1から73の1つ以上に従った方法は、無機塩1〜29.9%、塩基1〜30%、アセトン0.1〜20%及びTAA0.1〜20%を包含し、かつpH10〜14のpH値を有する、使用された水相の処理のために用いることを特徴としている。
【0093】
75.本発明の更なる実施形態においては、対象1から74の1つ以上に従った方法は、無機塩5〜20%、塩基5〜20%、アセトン0.1〜10%、TAA0.1〜10%、アセトン−縮合生成物0.1〜10%及び更なる有機成分0.1〜10%を包含し、かつpH12〜14のpH値を有する、使用された水相の処理のために用いることを特徴としている。
【0094】
76.本発明の更なる実施形態においては、対象1から75の1つ以上に従った方法は、無機塩5〜20%、塩基5〜20%、アセトン0.1〜5%、TAA0.1〜3%、アセトン−縮合生成物0.1〜10%及び更なる有機成分0.1〜3%を包含し、かつpH12〜14のpH値を有する、使用された水相の処理のために用いることを特徴としている。
【0095】
本発明の詳細な説明
本方法により、任意の種類の水性廃水(waessrigen Abwaessern)を処理することができる。ただし、該方法は、トリアセトンアミンの製造に際して発生し、かつ殊に無機塩、塩基、アセトン、TAA、アセトン−縮合生成物、及び更なる有機成分の群から選択される1種以上の構成成分を含む水溶液の処理に適している。
【0096】
ここで"無機塩"とは、殊にNaCl、KCl、NaNO3、KNO3、Na2SO4
2SO4、NaHCO3又はKHCO3を意味する。
ここで"塩基"とは、殊にNaOH、KOH;Na2CO3又はK2CO3を意味する。
ここで"アセトン−縮合生成物"とは、殊にメシチルオキシド、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、TMDH−ピリジン、アセトニン又はホロンを意味する。
ここで"更なる有機成分"とは、殊にアンモニアを意味する
全ての"%"値は、別記していない限り、質量%と解されるべきである。
【0097】
TAA製造に際して生じ、かつ本発明による方法が処理のために殊に適しており、かつそのために本方法を用いることができる溶液は、無機塩0.1〜49.9%及び塩基0.1〜49.9%を包含し、かつpH7以上のpH値を有する水溶液である。有利には、本発明による方法が適しており、かつ無機塩1〜39.9%、塩基1〜20%、アセトン0.1〜20%及びTAA0.1〜20%を包含し、かつpH値7〜14を有する水溶液の処理のために用いられる。特に有利には、本発明による方法が適しており、かつ無機塩1〜29.9%、塩基1〜30%、アセトン0.1〜20%及びTAA0.1〜20%を包含し、かつpH値10〜14を有する水溶液の処理のために用いられる。極めて有利には、本発明による方法が適しており、かつ無機塩5〜20%、塩基5〜20%、アセトン0.1〜10%、TAA0.1〜10%、アセトン−縮合生成物0.1〜10%及び更なる有機成分0.1〜10%を包含し、かつpH値12〜14を有する水溶液の処理のために用いられる。最も有利には、本発明による方法が適しており、かつ無機塩5〜20%、塩基5〜20%、アセトン0.1〜5%、TAA0.1〜3%、アセトン−縮合生成物0.1〜3%及び更なる有機成分0.1〜3%を包含し、かつpH値12〜14を有する水溶液の処理のために用いられる。
【0098】
本発明による方法の第一の工程[工程a)]においては、使用された水相、有利にはTAA製造由来の廃水からの第一の有機成分の除去が、適した抽出剤を用いた抽出によって行われ、その際、第二の水相と抽出剤を含む抽出物とが得られる。抽出剤は、有利には水と混和し得ない。使用された水相は、任意の水相であってよい。殊に、"使用された水相"との用語は、しかし、トリアセトンアミンの製造に際して発生し、かつ有利には無機塩、塩基、アセトン、TAA、アセトン−縮合生成物及び更なる有機成分の群から選択される1種以上の構成成分を含む水溶液と解される。
抽出は、水相を抽出剤と混合しながら合一し、引き続き両層を分離することから成る。抽出は、連続的に又はバッチ運転で実施してよい。抽出は、そのために適した任意の容器中で実施してよい(例えば撹拌槽又は連続撹拌槽)。必要とされる相分離も同様に、そのために適した任意の容器中で実施してよい(例えば撹拌槽、撹拌可能ではない分離槽又は連続分離機)。
工程a)を実施する温度は、原則的に制限されていない。有利な温度は、0〜100℃の範囲、特に有利には10〜60℃の範囲、極めて有利には20〜40℃の範囲にある。工程a)を実施する圧力も同様に制限されていない。有利な圧力は、1〜10barの範囲、特に有利には1〜6barの範囲、極めて有利には1〜3barの範囲にある。有利なのは、低温並びに1barの常圧での抽出であり、それというのも、これらの条件はより良好な相分離を生み、かつ装置的により簡単に実現されるからである。
抽出に適しているのは、基本的に、水と混和し得ない任意の抽出剤である。有利には、抽出されるべき構成成分がその中で高い可溶性を示し、かつ所定の条件下で安定性を示す抽出剤が用いられる。殊に、工程c)において簡単に水から分離可能である抽出剤が用いられる。有利には、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、エーテル、ハロゲン化溶媒、エステル及びケトンから成る群から選択されている抽出剤を用いてよい。ここで脂肪族溶媒は、特に有利には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン及びシクロヘキサンから成る群から選択される。ここで芳香族溶媒は、特に有利には、ベンゼン、トルエン及びキシレンから成る群から選択される。ここでエーテルは、特に有利には、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル及びメチル−t−ブチルエーテルから成る群から選択される。ここでハロゲン化溶媒は、特に有利には、ジクロロメタン、クロロホルム及びテトラクロロメタンから成る群から選択される。ここでエステルは、特に有利には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチルから成る群から選択される。ここでケトンは、特に有利には、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びフェニルメチルケトンから成る群から選択される。極めて有利には、抽出のために用いられる溶媒は、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル及びメチルイソブチルケトンから成る群から選択される。
【0099】
ここで"第一の有機成分"とは、殊にTAA並びにアセトン縮合生成物及び/又はアセトン−アンモニア縮合生成物を表す。
【0100】
使用された水相:抽出剤の有利な質量比は、2:1〜40:1、特に有利には5:1〜20:1、極めて有利には10:1である。
【0101】
抽出時間は、0.1〜5時間の範囲、有利には0.5〜2時間の範囲にある。
【0102】
使用された水相が工程a)に供されると、それに従って、第二の水相と抽出剤を含む抽出物とが生じる。
【0103】
第二の工程[工程b)]においては、第二の水相からの第二の有機成分の除去が行われ、その際、第三の水相が得られる。第二の水相は、工程a)で得られる水相である。"第二の有機成分"との用語は、易揮発性有機成分を表す。ここで"易揮発性有機成分"とは、殊に、沸点が常圧(1bar)にて水の沸点より低いか、又は水と共沸混合物(その沸点は常圧(1bar)にて水の沸点より低い)を形成する有機成分と解される。殊に、これらはアンモニア、アセトン、メシチルオキシド、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン及びTMDH−ピリジンである。それらには、a)で使用される溶媒も、その沸点が常圧(1bar)にて水の沸点より低いか、又は水と共沸混合物(その沸点は常圧(1bar)にて水の沸点より低い)を形成する場合に含まれる。
このことは、殊にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン;ベンゼン;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン;酢酸メチル又は酢酸エチルに当てはまる。
【0104】
"易揮発性有機成分"とは、トルエン、キシレン、オクタン、デカン;ジブチルエーテル;n−酢酸プロピル、酢酸ブチル;ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はフェニルメチルケトンとも解される。
【0105】
易揮発性有機成分の除去は、殊に蒸留及び/又はストリッピングによって行ってよい。
ここでストリッピングとは、液相をガスと向流で接触させることによる、液相から気相への物質の変化と解される。ストリッピングは、分離タスクに適した塔を用いて行ってよい(例えば棚段塔、不規則充填塔又は構造化充填物を有する塔)。蒸留は、不連続的に又は連続的に行ってよい。その際、適した容器(例えばジャケット付き反応器、外部熱交換器を有する反応器又は内部熱交換器を有する反応器)並びに分離タスクに適した蒸留塔(例えば例えば棚段塔、不規則充填塔又は構造化充填物を有する塔)が使用される。
ストリッピング及び/又は蒸留によって、そのつどの水相の有機負荷が下げられる。有利には、蒸留もストリッピングも、塔底生成物のTOC(全有機性炭素量)が20〜5000ppmの範囲に、特に有利には50〜2000ppmの範囲に、極めて有利には100〜1000ppmの範囲になるように実施される。
工程b)を実施する圧力も同様に制限されていない。有利な圧力は、0.1〜10bar、特に有利には0.5〜5barの範囲に、極めて有利には1〜3barの範囲にある。特に有利なのは、常圧(1bar)での蒸留である。その際、有利な蒸留温度は、40〜200℃の範囲、特に有利には60〜160℃の範囲、極めて有利には80〜120℃の範囲にある。
第二の水相を用いた工程b)の実施に際しては、第三の水相が得られる。
【0106】
第三の工程[工程c)]においては、第三の水相からの水の除去が行われ、その際、第四の水相及び分離された水相が得られ、その際、分離された水相は、第三の相から除去された水を包含する。ここで、第三の相からの水の除去は、殊に蒸留によって実施される。この場合、"分離された水相"との用語は、得られた留出物流を表す。蒸留は、不連続的に又は連続的に行ってよい。蒸留が実施される場合、適した容器(例えばジャケット付き反応器、外部熱交換器を有する反応器又は内部熱交換器を有する反応器)並びに分離タスクに適した蒸留塔(例えば棚段塔、不規則充填塔又は構造化充填物を有する塔)が使用される。その際、有利には、水のほかに非常に少量の有機不純物のみを含む留出物流が得られる。有利なのは、TOC<1000ppm、特に有利にはTOC<250ppm、極めて有利にはTOC<100ppmの炭素負荷量である。ここで、蒸留は、常圧で又は減圧下若しくは高圧下で行ってよい。有利な圧力は、0.1〜10bar、特に有利には0.5〜5bar、極めて有利には1〜3barの範囲にある。特に有利なのは、常圧下での蒸留である。その際、有利な蒸留温度は、40〜200℃の範囲、特に有利には60〜160℃の範囲、極めて有利には80〜120℃の範囲にある。第三の水相からの水の除去は、所望の濃度を第四の水相中で調節するために行われる。水の除去後の、第四の水相中での塩、殊に無機塩の濃度は、5〜75%、有利には10〜70%、特に有利には20〜65%、極めて有利には30〜60%、最も有利には40〜60%である。
【0107】
更なる実施形態においては、工程b)及びc)は、そのままの順序で、すなわち、1個の容器中で実施してよい。その際、分別蒸留によって、まず易揮発性有機成分が第一の蒸留留分として分離され[工程b)に相当]、引き続き第二の蒸留留分としての水の除去[工程c)に相当]が行われる。その際、有利には、工程b)及びc)で挙げたパラメータ領域及び実施形態が使用される。
【0108】
第四の工程[工程d)]においては、第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化が行われ、その際、第五の水相が得られる。一般に、第三の有機成分は、残留する揮発性でない有機成分である。揮発性ではない有機成分とは、c)で使用される条件にて水相中で残留する有機成分、例えば、沸点が常圧下で水のそれを上回り、かつ、それに応じてc)での蒸留による水の除去に際して第四の水相中で残留する成分と解される。殊にこれらは、トリアセトンアミン及びトリアセトンアミン高沸点物である。有利な実施形態においては、第一及び第二の有機成分は化学的に等しい。
第四の水相からの第三の有機成分の除去及び第四の水相の清澄化は、殊に吸着によって、有利には吸着剤を用いて行われる。
【0109】
吸着剤を用いた処理は、連続的に又はバッチ運転で実施してよい。その際、吸着剤を工程c)からの第四の水相と接触させるために任意の適した容器を使用してよい(例えば撹拌槽、ループ型反応器又は流管)。任意の適した吸着剤を使用してよい。有利には、活性炭、ゼオライト及びシリカゲルから成る群から選択されている。特に有利には、吸着剤として活性炭が用いられる。
吸着剤は、殊に粉末として又は顆粒として用いてよい。その際、吸着剤と水溶液との接触は、直接的な混合によってか又は吸着剤が充填された容器に流過させることによって行ってよい。用いた吸着剤の有利な量は、(水相の質量を基準として)0.01〜10%、特に有利には0.1〜5%、極めて有利には0.2〜1%である。
工程d)を実施する温度は、原則的に制限されていない。有利には、工程d)は、0〜150℃の範囲の温度、特に有利には0〜100℃の範囲の温度、極めて有利には10〜50℃の範囲の温度で実施される。工程d)を実施する圧力は、原則的に制限されていない。有利には、工程d)は、1〜10barの範囲の圧力、特に有利には1〜5barの範囲の圧力、極めて有利には1〜3barの範囲の圧力で実施される。
処理後の吸着剤の除去は、任意の適した方法で行ってよい。そのため、粉末状の吸着剤の分離は、例えば濾過又は遠心分離によって行ってよい。吸着剤顆粒を使用した場合、これは適した技術的な措置によって取り除かれることができる(例えば多孔板)。
吸着剤の除去後、水及び溶解した無機塩のほかに非常に少量の有機不純物のみを含む溶液が得られる。有利なのは、TOC<1000ppm、特に有利にはTOC<250ppm、極めて有利にはTOC<100ppmの炭素負荷量である。吸着剤の除去後、僅かな固有色のみを有する溶液が得られる。有利なのは、色数APHA<100、特に有利には色数APHA<50、極めて有利には色数APHA<10である。
【0110】
第五の工程[工程e)]においては、使用された水相、第二の水相、第三の水相、第四の水相及び/又は第五の水相のpH値の調節が行われる。これは、得られた廃水流がpH7を超えるpH値、有利にはpH7〜pH14の範囲のpH値、特に有利にはpH10〜pH14の範囲のpH値、極めて有利にはpH12〜pH14の範囲のpH値を有しているために必要である。
ここで"使用された水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液、第四の水溶液及び/又は第五の水溶液のpH値の調節"とは、工程の全ての可能な組合せを包含する。これは、例えば以下の組合せを包含するが、それらに制限されていない:それは、用いられた溶液のみの、第二の水性のみの、第三の水相のみの、第四の水相のみの、第五の水相のみのpH値の調節を包含する。それはまた、使用された水相及び第二の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相及び第三の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相、第三の水相及び第四の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相、第三の水相、第四の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第三の水相、第四の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第四の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相、第四の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相及び第二の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相、第三の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相及び第三の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第二の水相、第四の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。それはまた、使用された水相、第四の水相及び第五の水相のpH値の調節も包含する。
【0111】
pH値の調節のために、市販の任意の酸又は塩基が適用可能である。酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸(酢酸又は安息香酸)から成る群から選択される。有利なのは、工程e)で使用される助剤が塩基であることである。塩基は、有利には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから成る群から選択される。
有利には、化学的に可能な限り均一な溶液が生じるように廃水と反応する酸又は塩基が使用される。それゆえ、特に有利なのは、その共役塩基(又は酸)が塩のアニオン(又はカチオン)としてすでに反応混合物中に含まれている酸(又は塩基)の使用である。このようにして、化学的に定義される、溶解した単に塩であって、それゆえに有価物質である塩を含む塩溶液が得られる。
水酸化ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む廃水の場合、それゆえ塩酸の使用が有利である。このようにして、更なる無機塩を含まない塩化ナトリウムの水溶液が発生する。水酸化ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含む廃水の場合、それゆえ硫酸の使用が有利である。このようにして、更なる無機塩を含まない硫酸ナトリウムの水溶液が発生する。水酸化ナトリウム及び硝酸ナトリウムを含む廃水の場合、それゆえ硝酸の使用が有利である。このようにして、更なる無機塩を含まない硝酸ナトリウムの水溶液が発生する。このならびは、他の考えられる廃水流についても同じように顧慮され得る。
工程e)を実施する温度は、基本的に制限されていない。有利には、工程e)は、0〜150℃の範囲の温度で、特に有利には10〜100℃の範囲の温度で、極めて有利には20〜80℃の範囲の温度で実施される。工程d)を実施する圧力は、基本的に制限されていない。有利には、工程d)は、1〜10barの圧力で、特に有利には1〜6barの範囲の圧力で、極めて有利には1〜3barの範囲の圧力で実施される。
ここで"使用された水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液、第四の水溶液及び/又は第五の水溶液のpH値の調節"とは、工程e)におけるpH値の調節を、その際、基本的に本発明による方法の任意の時点で行ってよいことを意味する。したがって、工程e)は、使用された水相で[つまり、工程a)の前に]かつ/又は第二の水相で[つまり、工程a)とb)との間で]かつ/又は第三の水相で[つまり、工程b)とc)との間で]かつ/又は第三の水相で[つまり、工程b)とc)との間で]かつ/又は第四の水相で[つまり、工程c)と工程d)との間で]かつ/又は第五の水相で[つまり、工程d)の後に]実施してよい。
【0112】
工程d)を工程c)に続けて直接行う上記の実施形態の場合、使用された水相、第二の水相、第四の水相及び/又は第五の水相のpH値は、助剤を用いて調節してよい。
【0113】
工程e)を水蒸留[工程c)]後に実施する場合、本方法に続く更なる工程なしに固体としての塩の単離は可能ではなく、かつ塩の濃度は任意に高く調節することができない。したがって、工程e)においては、有利には、使用された水相、第二の水相及び/又は第三の水相のpH値は、助剤を用いて調節される。
【0114】
工程d)を工程c)に続けて直接行う上記の実施形態の場合、工程e)において、したがって有利には、使用された水相及び/又は第二の水相のpH値は、助剤を用いて調節してよい。特に有利には、工程e)において、第二の水相のpH値が調節される。
【0115】
工程a)〜e)の実施を行った後(上で挙げた可能な順序の1つで)、本発明による方法は完全に成し遂げられる。使用された水相、有利にはTAA処理からの廃水流は、双方の最も大量に発生する流を後処理において、浄化装置に供給することができるか若しくは環境に直接放出することができるか{第三の相から除去された水を包含する分離された水相[工程c)]}又は商品価値を持つ純粋物質の水溶液となる[工程d)からの第五の水相]ように精製された。
【0116】
更なる好ましい実施形態においては、工程a)で得られた抽出物は、更なる工程f)で後処理してよい。この後処理は、有利には蒸留によって行われる。その際、有利には、溶媒と抽出された有機成分との蒸留による分離が行われる。蒸留を行う有利な実施形態においては、これは、例えば蒸留塔により行われる。蒸留は、不連続的又は連続的に行ってよい。その際、適した容器(例えばジャケット付き反応器、外部熱交換器を有する反応器又は内部熱交換器を有する反応器)並びに分離タスクに適した蒸留塔(例えば例えば棚段塔、不規則充填塔又は構造化充填物を有する塔)が使用される。
工程f)を実施する圧力は、基本的に制限されていない。有利には、工程f)は、0.1〜10barの範囲の圧力、特に有利には0.5〜5barの範囲の圧力、極めて有利には1〜3barの範囲の圧力、最も有利には常圧にて実施される。
不連続的な蒸留の場合まず前留出物を捕集してよく、これは、沸点が抽出のために使用された溶媒のそれを下回っているか又は純粋な抽出剤のそれより低い沸点の共沸混合物を抽出剤と形成する、低沸点の抽出された物質を保持する(例えばアセトン)。引き続き、抽出剤の純粋な留分を捕集してよく、これは引き続き工程a)で再利用されることができる。蒸留の塔底物中には、抽出剤より高い沸点を有する抽出された成分が残留する(例えばTAA)。
【0117】
本発明による方法の更なる好ましい実施形態においては、第五の水相から更なる工程g)において廃水後処理の生成物が固体の形で単離される。これは、廃水後処理の生成物が固体の純物質として(溶液の形の代わりに)得られるという利点をもたらす。
固体の製造は、その際、全ての公知の方法によって行ってよい。そうして、例えば、晶出によって、温度低下によって、溶媒の更なる除去によって又はこれらの工程の組合せによって行ってよい。固体の単離は、例えば濾過、遠心分離又は他の適した方法によって行ってよい。生じる固体の純度を高めるために、全ての公知の方法、例えば、適した洗浄液[すなわち、固体が僅かな可溶性を示し、その一方で、存在する不純物は高い可溶性を示す溶媒、例えば、a)での抽出のために挙げた全ての有機溶媒]、適した溶媒(すなわち、固体が高い温度にて良好な可溶性を示す溶媒、例えば水)からの再結晶又は他の適した方法を適用してよい。
生じる固体は、適した方法に従って乾燥してよい(例えば棚形乾燥機、櫂形乾燥機等)。
固体の単離に際して発生する母液は、工程a)において又は工程c)において返送されることができ、それゆえ廃棄流とならない。
【0118】
本発明による方法は、次の本発明に固有の観点に基づき上記課題を解決する:
廃水中に含まれる、中性塩と塩基/酸とからの混合物は、酸/塩基の使用によって工程e)におけるpH値の調節に際して化学的に均一な中性の塩溶液に変えられる。これは、有価物質としてさらに使用可能である。硝酸ナトリウム溶液の製造においては特に、多数の使用分野が見出される(肥料として、セメント製造における添加剤として)。
生じる物質流(工程c)及びg)からの水留出物及び有価物質)の有機負荷は、非常に低い値に減らされる。このようにして、水留出物は浄化装置に直接放出されることができる。生じる有価物質は、有機成分によって負荷されていない。
有機成分はプロセスの複数の箇所で適切に単離される[有利には蒸留/ストリッピングによって実施される工程c)、工程d)で吸着剤を用いて、工程a)からの抽出物において工程f)での該抽出物の後処理に際して]ため、廃棄物として処理されなければならない物質の発生は最小量のみである。
【0119】
本発明による方法は、次の意想外の利点を有する:
工程a)とc)との組合せは、c)において高純度の水留出物の製造を可能にする。廃棄物として処理される単に非常に少量の有機負荷された前留出物が取り除かれなければならない。続く水蒸留は、更なる特別な処理を必要とせず、浄化装置に直接放出してよい。有利には蒸留によって行われる工程c)での水除去の前に抽出が行われない場合、分別蒸留においても主留分として純粋な水は得られない。水と似たような沸点を有する有機副成分は、つまり、まず抽出によって実質的に除去されなければならず、それというのも、それらは蒸留により水から分離され得ないからである。
pH値の調節に際しての適した酸/塩基の使用によって、化学的に均一な塩溶液[工程c)、d)及びe)]若しくは化学的に純粋な固体が工程g)で得られる。適した酸/塩基の使用によって、混合された塩溶液若しくは混合塩の形成が回避される。
【0120】
さらに詳しい説明を行わずとも、当業者であれば、前述の記載内容を極めて広い範囲で利用することができると考えられる。それゆえ、有利な実施形態及び例は、単に説明のためのものに過ぎず、決して本開示内容を何からの形で制限するものではないと理解されるべきである。
以下では、本発明を、例を手がかりにして詳細に説明する。
【実施例】
【0121】
1.使用した測定法
1.1 硝酸塩含有量の測定
硝酸塩イオンの測定を、イオンクロマトグラフィーによりDIN EN ISO 10304に従って行った。装置として、電気伝導度検出器を備えたメトローム社製イオンクロマトグラフを利用した。使用したカラムは、メトローム社製Metrosep Anion Dual 2であった。溶離液として、NaHCO32.0ミリモル、Na2CO31.3ミリモル及びアセトン2%の水溶液を利用した。10μl若しくは100μl(<20mg/kgの限界値を有する試料について)のインジェクションループを利用した。10μlのループの検量範囲は0.5〜100mg/lであった。100μlのループの検量範囲は0.05〜2.0mg/lであった。
【0122】
2.1 有機成分の含有量の測定
全ての有機成分の含有量の測定を、ガスクロマトグラフHP 5890を用いたガスクロマトグラフィーにより実施した。利用したカラムは、HP−50+、30m×0.25mm×0.25mmであった。キャリアガスとして窒素を利用した。検出器の温度は280℃であり、インジェクターの温度は250℃であった。温度プロファイルは2分で50℃であり、それから5℃/分の割合で260℃(0分)に加熱した。
【0123】
3.1 TOC値を、島津社製TOC−V CPN Total Organic Carbon Anlyzer(全有機炭素計)を用いて測定した。色数(APHA)は、Dr.Lange LICO 200により、5cmのガラスキュベットを使って測定した。
【0124】
2.方法に関する試験例、工程a)〜e)の実施:
硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び有機不純物(なかでもアセトン、TAA)を含む廃水流を処理する。これは以下の通りに行う:
【0125】
− 工程a)抽出剤による抽出によって、使用された水相から第一の有機成分を除去し、第二の水相を得る工程
【0126】
NaNO316.3%及び水酸化ナトリウム15.9%を含む廃水("使用された水相")を用いる。この流は有機成分で負荷されている(TOC:6700ppm)。
【0127】
a1)トルエンによる抽出:
廃水500gにトルエン50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第一の抽出工程)。水相(495g、TOC:2030ppm)並びに有機相(53.0g)が得られる。第一の抽出工程からの水相480gに再びトルエン50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第二の抽出工程)。水相(480g、TOC:930ppm)並びに有機相(50.0g)が得られる。第二の抽出工程からの水相465gに再びトルエン50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第三の抽出工程)。水相("第二の水相";464g、TOC:921ppm)並びに有機相(50.4g)が得られる。
【0128】
a2)MTBEによる抽出:
廃水500gにMTBE50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第一の抽出工程)。水相(495g、TOC:4540ppm)並びに有機相(53.8g)が得られる。第一の抽出工程からの水相485gに再びMTBE50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第二の抽出工程)。水相(485g、TOC:1230ppm並びに有機相(50.1g)が得られる。第二の抽出工程からの水相475gに再びMTBE50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第三の抽出工程)。水相("第二の水相";473g、TOC:990ppm)並びに有機相(49.8g)が得られる。
【0129】
a3)メチルイソブチルケトンによる抽出:
廃水500gにメチルイソブチルケトン50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第一の抽出工程)。水相(499g、TOC:2644ppm)並びに有機相(51.0g)が得られる。第一の抽出工程からの水相490gに再びメチルイソブチルケトン50.0gを混ぜる。この二相混合物を、振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第二の抽出工程)。水相(485g、TOC:3120ppm並びに有機相(54.1g)が得られる。第二の抽出工程からの水相475gに再びメチルイソブチルケトン50.0gを混ぜる。この二相混合物を振り混ぜることによって均質化し、次いで相を分離する(第三の抽出工程)。水相(471g、TOC:2040ppm)並びに有機相(55.2g)が得られる。
【0130】
− 工程e)助剤による第二の水相のpH値の調節
e1)(a1)[NaOH73.4g及びNaNO371.6gを含有、pH値>14]からの抽出された廃水450gに、冷却しながら硝酸(65%、173g)を混ぜる。pH値7及び620ppmのTOCを有する黄色味を帯びた溶液が得られる。
【0131】
e2)(a2)[NaOH73.4g及びNaNO371.6gを含有、pH値>14]からの抽出された廃水450gに、冷却しながら硝酸(65%、173g)を混ぜる。pH値7及び180ppmのTOCを有する黄色味を帯びた溶液が得られる。
【0132】
e3)(a3)[NaOH73.4g及びNaNO371.6gを含有、pH値>14]からの抽出された廃水450gに、冷却しながら硝酸(65%、173g)を混ぜる。pH値7及び1410ppmのTOCを有する黄色味を帯びた溶液が得られる。
【0133】
− 工程b)第二の水相から第二の(易揮発性)有機成分を除去し、その際、第三の水相を得る工程、及び工程c)溶液の濃度を調節するために第三の水相から水を除去し、その際、第四の水相を得る工程
b+c1)硝酸ナトリウム364gを含む(e1)からの中和された廃水1000gを常圧(1bar)で分別蒸留する。その際、水留出物(塔頂温度100℃)が得られ、ここで個々の留分は、様々に有機成分で負荷されている。以下の留分を単離する:
【表1】
【0134】
黄褐色の蒸留塔底物("第四の水相";728g、NaNO3を364g含有、TOC:670ppm)が得られる。
得られた蒸留留分3(全体の留出物の70.3%)は非常に僅かしか有機成分で負荷されておらず、それゆえ浄化装置に放出するのに適している。単に蒸留留分1及び2(全体の留出物の29.7%)のみが特別な廃棄処理に供給されなければならない。
【0135】
b+c2)硝酸ナトリウム364gを含む(e2)からの中和された廃水1000gを常圧(1bar)で分別蒸留する。その際、水留出物(塔頂温度100℃)が得られ、ここで個々の留分は、様々に有機成分で負荷されている。以下の留分を単離する:
【表2】
【0136】
黄褐色の蒸留塔底物("第四の水相";728g、NaNO3を364g含有、TOC:490ppm)が得られる。
得られた蒸留留分2及び3(全体の留出物の72.3%)は非常に僅かしか有機成分で負荷されておらず、それゆえ浄化装置に放出するのに適している。単に蒸留留分1(全体の留出物の27.7%)のみが特別な廃棄処理に供給されなければならない。
【0137】
b+c3)硝酸ナトリウム364gを含む(e3)からの中和された廃水1000gを常圧(1bar)で分別蒸留する。その際、水留出物(塔頂温度100℃)が得られ、ここで個々の留分は、様々に有機成分で負荷されている。以下の留分を単離する:
【表3】
【0138】
黄褐色の蒸留塔底物("第四の水相";728g、NaNO3を364g含有、TOC:570ppm)が得られる。
得られた蒸留留分3(全体の留出物の70.0%)は非常に僅かしか有機成分で負荷されておらず、それゆえ浄化装置に放出するのに適している。単に蒸留留分1及び2(全体の留出物の30.0%)のみが特別な廃棄処理に供給されなければならない。
【0139】
− 工程d)第四の水相から第三の(すなわち、残留する揮発性でない有機成分)を除去し、かつ第四の水相を清澄化し、その際、第五の水相を得る工程
(b+c2)[硝酸ナトリウム499g、TOC:490ppm、APHA:297]からの蒸留塔底物1000gに活性炭5.0g(Norit SA−Super)を混ぜ、この混合物を30分間撹拌する。活性炭を濾紙により分離し、そして硝酸ナトリウム489g(TOC:63ppm、APHA:2)を含有む清澄な無色の溶液("第五の水相")998gを得る。
【0140】
この工程を繰り返し、その際、異なる量の活性炭を添加した。これを以下の第4表に示している。
【0141】
【表4】
【0142】
− 工程f)工程(a)からの抽出物の後処理
【0143】
f1)工程(a1)からの抽出物の後処理
(a1)からの一つにまとめた有機相(153g)を蒸留装置中で50mbar及び80℃にて沸騰するまで加熱する。トルエン(98.6%)のほかにアセトン(1.4%)を含む留出物137gが得られる。
この留出物を新たに工程(a)における留出のために用いてよく、これは88.1%のトルエン返送率に相当する。
【0144】
f2)工程(a1)からの抽出物の後処理
(a1)からの一つにまとめた有機相(154g)を蒸留装置中で1000mbarにて沸騰するまで(56℃)加熱する。MTBE(98.9%)のほかにアセトン(1.1%)を含む留出物138gが得られる。
この留出物を新たに工程(a)における留出のために用いてよく、これは89.0%のMTBE返送率に相当する。
【0145】
f3)工程(a1)からの抽出物の後処理
(a1)からの一つにまとめた有機相(160g)を蒸留装置中で1000mbarにて沸騰するまで(116℃)加熱する。メチルイソブチルケトン(96.7%)のほかにアセトン(3.3%)を含む留出物140gが得られる。
この留出物を新たに工程(a)における留出のために用いてよく、これは90.2%のメチルイソブチルケトン返送率に相当する。
【0146】
g)固体の単離
硝酸ナトリウム364gを含む(a2)からの中和された廃水1000gを常圧(1bar)で分別蒸留する。その際、水留出物(塔底温度100℃)が得られ、ここで個々の留分は、様々に有機成分で負荷されている。以下の留分を単離する:
【表5】
【0147】
生じる懸濁液(518g)を室温に冷却し、かつ濾過する。硝酸ナトリウムの固体(210g、純度>99.9%)及び母液(305g、硝酸ナトリウム153gを含有)が得られる。
【0148】
比較例:事前の抽出を行わない蒸留
廃水("使用された水相";NaOH16.3%及び水酸化ナトリウム15.9%を含有、TOC:6700ppm)500gに冷却下で硝酸(65%、193g)を加える。NaNO3252gを含有し、pH値7及びTOC5020ppmを有する黄色味を帯びた溶液が得られる。この溶液を常圧(1bar)で分別蒸留する。その際、水留出物(塔底温度100℃)が得られ、ここで個々の留分は、様々に有機成分で負荷されている。以下の留分を単離する:
【表6】
【0149】
事前の抽出なしでは、非常に僅かな有機成分の負荷量(TOC<100ppm)しか有さない蒸留留分は得られないことがはっきりとわかる。そのうえ、すべての留分の中で最も低いTOC値を有する留分5〜7は、留出物全体の52.8%でしかない。
【0150】
本発明による例と比較例とを対比させた場合に明らかとなるように、蒸留のみでは留出物中で低いTOCを達成することはできない。抽出と蒸留、つまり、工程a)とc)の組合せにおいてしか、これは可能ではない。活性炭を用いた更なる処理によって、第四の水相の塔底物中でTOCを低下させることができる。活性炭を用いた処理は、工程a)に続けて直接行われず、それというのも、その場合には活性炭の量を著しく高めなければならないからである。そのうえ、その場合には濃度の調節も可能ではない。