(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による成膜マスクの実施形態を示す中心線断面図である。この成膜マスク1は、基板上に薄膜パターンを形成するためのもので、第1のマスク2と、第2のマスク3と、を備えて構成されている。
【0011】
上記第1のマスク2は、基板上に開口パターン4を介して成膜し、薄膜パターンを形成するためのものであり、メインマスクとなるもので、
図2(a)に示すように、樹脂製のフィルム(以下「樹脂マスク5」という)と、金属薄膜6と、第1のフレーム7と、を備えて構成されている。
【0012】
ここで、上記樹脂マスク5は、基板上に成膜される複数の薄膜パターンに対応して該薄膜パターンと形状寸法の同じ貫通する複数の開口パターン4を形成したもので、例えば厚みが10μm〜30μm程度のポリイミド又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の可視光を透過する樹脂製フィルムである。なお、以下の説明においては、線膨張係数が被成膜基板としてのガラスの線膨張係数に近似した3×10
−6〜5×10
−6/℃程度のポリイミドの場合について説明する。
【0013】
詳細には、上記開口パターン4は、ポリイミドのフィルムを後述の第1のフレーム7に架張して固定した状態で、形成しようとする開口パターン4の形状に整形されたレーザビームを上記フィルムの一面側からポリイミドのフィルムに照射して形成される。この場合、形成しようとする複数の開口パターン4の形成位置に対応して複数の基準マークを形成した透明なガラス基板上に上記フィルムを設置し、透明なポリイミドを透して観察される上記基準マークを目標に上記レーザビームを照射して、上記フィルムに複数の開口パターン4を形成するとよい。又は、上記レーザビームを予め定められた所定のピッチでステップ移動させながら、上記フィルムの面内に複数の開口パターン4を形成してもよい。
【0014】
また、上記樹脂マスク5の一面5aにて、上記複数の開口パターン4が形成される有効領域の外側領域には、孤立した複数のパターンからなる金属薄膜6が樹脂マスク5の周縁部に沿って設けられている。この金属薄膜6は、後述の第1のフレーム7の一端面7aにスポット溶接されて、上記樹脂マスク5を第1のフレーム7に固定するためのもので、例えばニッケル等の金属膜を30μm程度の厚みにめっき形成したものである。又は、専用のメタルマスクを使用してスパッタリング又は蒸着により形成してもよく、樹脂マスク5の一面5aの全面に金属薄膜を成膜した後、エッチングして孤立した複数の金属薄膜6のパターンを形成してもよい。
【0015】
さらに、上記樹脂マスク5の一面5a側には、第1のフレーム7が設けられている。この第1のフレーム7は、上記樹脂マスク5を架張した状態で、樹脂マスク5の金属薄膜6の部分を一端面7aにスポット溶接して樹脂マスク5を支持するもので、上記樹脂マスク5の複数の開口パターン4を内包する大きさの開口8を有し、外形が上記樹脂マスク5の外形に略等しい大きさの枠状を成した、例えば厚みが30mm〜50mm程度の例えばインバー又はインバー合金等の磁性金属部材である。なお、
図2(b)において、符号10は、第1のマスク2を第2のマスク3に固定するためのねじ穴である。
【0016】
上記第1のマスク2の樹脂マスク5の一面5a側には、樹脂マスク5に対して予め定められた所定の隙間9を設けて第2のマスク3が設置されている。この第2のマスク3は、上記樹脂マスク5に薄膜材料が堆積し、樹脂マスク5と薄膜材料との線膨張係数の差に起因して樹脂マスク5が変形するのを防止するためのものであり、サブマスクとなるもので、
図2(b)に示すように、メタルマスク11と、第2のフレーム12とを備えて構成されている。
【0017】
ここで、上記メタルマスク11は、少なくとも一つの開口パターン4を内包する大きさの貫通孔13を形成した、例えば厚みが30μm〜50μm程度の磁性金属部材であり、外形が上記第1のフレーム7の開口8内に収まる大きさになっており、上記樹脂マスク5に対して上記隙間9を設けて設置されている。この隙間9は、基板の裏面に設置される磁石の磁力がメタルマスク11に作用するとメタルマスク11を吸引して樹脂マスク5に密着させ、磁石の磁力の作用が取り去られるとメタルマスク11をその弾性復元力により樹脂マスク5から離隔させ得る大きさに設定されるのが望ましく、例えば300μm程度である。なお、上記貫通孔13の大きさは、複数の開口パターン4を内包する大きさであってもよいが、樹脂マスク5上への薄膜材料の堆積面積を減らして、マスク材料と薄膜材料との線膨張係数の差に起因して生じる樹脂マスク5の変形を抑制するためには、貫通孔13は一つの開口パターン4を内包する大きさとするのがより望ましい。
【0018】
詳細には、上記貫通孔13は、
図3に示すようにレジストマスク14を使用して磁性金属部材のシートをウェットエッチングして形成するとよい。この場合、ウェットエッチングにおいては、磁性金属部材は、等方性エッチングされるため、同図(a)に示すように一方の面側からのみエッチングすると、貫通孔13は、その開口面積がレジストマスク14の形成面側から他面側に向かって狭くなるように形成される。また、同図(b)に示すように、磁性金属部材を両面側からエッチングすると、貫通孔13は、両面側の開口面積が内部よりも広くなるように形成される。したがって、成膜時に貫通孔13の側壁に薄膜材料が付着するのを抑制し、成膜後、メタルマスク11を樹脂マスク5から容易に離隔させるためには、メタルマスク11は、同図(c)に示すように貫通孔13の開口面積が広い面側を樹脂マスク5に対面させるとよい。なお、本実施形態においては、貫通孔13の縁部が成膜の影となるのを抑制するために、貫通孔13の開口面積が狭い面側を樹脂マスク5側とした場合について説明する。但し、スパッタリング成膜の場合は、蒸着に比べてスパッタ粒子の回り込みが多いため、
図3(c)に示すように、貫通孔13の開口面積が広い面側を樹脂マスク5側としても貫通孔13の縁部が成膜に及ぼす影響は小さい。
【0019】
上記メタルマスク11の上記樹脂マスク5側とは反対側には、第2のフレーム12が設けられている。この第2のフレーム12は、上記メタルマスク11を架張した状態で、
図2(b)に示すように、メタルマスク11の周縁部を一端面12aにスポット溶接してメタルマスク11を支持するもので、上記メタルマスク11の複数の貫通孔13を内包する大きさの開口15を有し、外形が上記第1のフレーム7の開口8内に収まる大きさの枠状を成した、例えば厚みが30mm〜50mm程度の例えばインバー又はインバー合金等の磁性金属部材である。さらに、上記第2のフレーム12の他端面12b側には、上記開口15側とは反対側に張り出したつば16が設けられ、該つば16に上記第1のフレーム7の他端面7bがねじ17(
図1参照)で着脱自在に固定されるようになっている。この場合、第1のフレーム7が第2のフレーム12の上記つば16に固定された状態で、上記隙間9が生じるように、第1のフレーム7、第2のフレーム12及びつば16の各厚みが決定される。なお、
図2(b)において、符号18は、ねじ17を通すための孔である。
【0020】
次に、このように構成された成膜マスク1を使用した成膜について説明する。なお、以下の説明においては、成膜装置が、
図4に示すようなスパッタリング装置の場合について述べる。
先ず、第1のマスク2の第1のフレーム7と第2のマスク3の第2のフレーム12とをねじ17で固定して組み立てて成膜マスク1が準備される。
【0021】
次いで、スパッタリング装置の真空チャンバー19内に設けられたマスクホルダー20に第1のマスク2が被成膜基板
(以下、単に「基板22」という)側となるようにして成膜マスク1が取り付けられる。また、基板ホルダー21に設置された基板22面に平行に矢印A,B方向に往復移動可能に構成されたターゲットホルダー23には、成膜材料としての例えば円柱状の酸化インジウムスズ(以下「ITO(Indium Tin Oxide)」という)のターゲット24が
、その円柱軸を上記移動方向に対して交差させて取り付けられている。
【0022】
成膜マスク1の取り付けが終了すると、ガス導入バルブ25を閉じた状態で排気バルブ26を開き、真空チャンバー19内の空気が排気され、予め定められた所定の真空度となるまで真空引きされる。
【0023】
真空チャンバー19内の真空度が所定の値に達すると、ゲートバルブ27で仕切られ、略同じ真空度に保たれた図示省略の前室(
図4において、真空チャンバー19に隣接して奥側に設けられている。)から図示省略の基板ローディング機構によっ
て透明ガラス
から成る基板22が搬送され、基板ホルダー21に設置される。その後、上記基板ローディング機構は上記前室まで退避し、ゲートバルブ27は閉じられる。
【0024】
次に、マスクホルダー20が
図4において矢印C方向に移動して成膜マスク1を基板22上に設置する。詳細には、
図5(a)に示すように、第1のマスク2の樹脂マスク5が基板22の成膜面上に設置される。このとき、
図6(a)に示すように、樹脂マスク5とメタルマスク11との間には、所定の隙間9が保たれている。その後、
図5(b)に示すように、基板ホルダー21に内蔵された磁石28の磁力が作用されて第2のマスク3のメタルマスク11が吸引され、該メタルマスク11が弾性的に撓んで樹脂マスク5を押圧し、樹脂マスク5が基板22の成膜面に密着して固定される。同時に、
図6(b)に示すように、メタルマスク11が樹脂マスク5の表面に密着する。
【0025】
続いて、ガス導入バルブ25を開くと共に排気バルブ26を調節して、真空チャンバー19内にアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスが予め定められた所定値となるまで導入される。
【0026】
真空チャンバー19内のガス圧が上記所定値となると、ターゲットホルダー23に高電圧が付与されて、
図7に示すようにターゲット24と基板22との間にプラズマ29が生成される。そして、ターゲット24をその円柱軸を中心に回転させながら、
図7に示す矢印A,B方向に往復移動させてスパッタリングが実行される。なお、詳細には、本スパッタリングが開始される前の一定時間(プリスパッタリング時間)は、ターゲット24と基板22との間に図示省略のシャッターが挿入されており、スパッタ粒子が基板22に付着するのを阻止している。
【0027】
予め定められた所定時間のスパッタリングが実行されて、基板22上に一定厚みのITO導電膜が堆積すると、上記シャッターが閉じられてスパッタリングが終了する。そして、ターゲットホルダー23に対する高電圧の付与が解除され、
図8(a)に示すようにプラズマ29の生成が停止される。このとき、
図9(a)に示すように、ITO導電膜30は、開口パターン4内の基板22の面、開口パターン4の側壁、樹脂マスク5の開口パターン4周縁部、貫通孔13の側壁及びメタルマスク11のターゲット24側の表面に堆積している。
【0028】
次いで、
図8(b)に示すように、基板ホルダー21に内蔵された磁石28の磁力によるメタルマスク11に対する吸引作用が取り去られると、
図9(b)に示すように、メタルマスク11はその弾性復元力により元の状態に戻る。これにより、樹脂マスク5に堆積したITO導電膜30は、メタルマスク11と切り離される。また、同時に、メタルマスク11による樹脂マスク5の基板22の成膜面への押圧力が解放されるため、樹脂マスク5は基板22の成膜面から剥がれる。こうして
、透明なガラス
の基板22に
、図10に示すようにITO導電膜30の複数の電極31(薄膜パターン)が形成されたタッチパネル基板32が形成される。
【0029】
次に、マスクホルダー20を、
図4に示す矢印D方向に移動して成膜マスク1を基板22から離隔すると共に、真空チャンバー19内の不活性ガスが排気される。そして、真空チャンバー19と上記前室とを仕切るゲートバルブ27が開かれて、上記基板ローディング機構によりタッチパネル基板32が真空チャンバー19内から上記前室に搬出される一方で、上記前室から新たな基板22が搬入されて基板ホルダー21に設置される。
【0030】
以降、前述と同様にして新たな基板22に成膜が実行され、新たなタッチパネル基板32が形成される。そして、基板22に対する成膜が完了する都度、メタルマスク11は、樹脂マスク5から離隔するために、樹脂マスク5に堆積するITO導電膜30は、その都度メタルマスク11から切り離される。したがって、樹脂マスク5に堆積するITO導電膜30は、開口パターン4の周縁部のみとなり、隣接する開口パターン4間で分断されているため、ITO導電膜30の収縮応力が分断されて樹脂マスク5の変形が抑制される。それ故、ITO導電膜30からなる電極31の位置精度を向上することができる。また、同時に、樹脂マスク5の変形が抑制されるため、樹脂マスク5の寿命が長くなるという利点もある。
【0031】
なお、上記実施形態においては、第1のマスク2及び第2のマスク3が夫々フレーム付きの場合について説明したが、本発明はこれに限られず、第1のマスク2は、樹脂マスク5のみであってもよく、第2のマスク3はメタルマスク11のみであってもよい。この場合、樹脂マスク5とメタルマスク11との間に隙間9が形成されるように、両者間に金属スペーサを設けるとよい。
【0032】
また、上記実施形態においては、成膜装置がスパッタリング装置である場合について説明したが、本発明はこれに限られず、成膜装置は、蒸着装置であってもよい。
【0033】
さらに、上記実施形態においては、薄膜がITO導電膜30である場合について説明したが、本発明はこれに限られず、薄膜は有機物質の薄膜、無機物質の薄膜又は金属薄膜のいずれであってもよい。