(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗物用シートにおけるシートクッションの前後方向の位置を調整するため、所定間隔をおいて一対配設されるスライダをモータの駆動力によって調整するパワーシートスライド装置であって、
前記一対のスライダは、それぞれ、
前記乗物用シートのフロアに前記シートクッションの前後方向に長手方向が沿うように固定されるロアレールと、
前記ロアレールの長手方向に沿って移動可能に配設され、前記シートクッションのクッションフレームを支持するアッパーレールと、
前記各アッパーレールを前記各ロアレールに対して適宜のスライド位置でロックするロック機構と
を有してなると共に、
前記ロアレールの長手方向に沿って設けられるラックと、
前記アッパーレール又は前記クッションフレームに支持され、前記ラックに噛合し、前記モータの駆動力が伝達されることによって回転するピニオンと
を有し、
前記モータの通電時には前記ロック機構の解除操作に連動して前記モータが作動して前記ピニオンが回転し、前記アッパーレールが前記ロアレールに沿って前後動し、
前記モータの非通電時であって前記ロック機構がロック解除モードのときには、前記アッパーレールを前記ロアレールに沿って手動調整で前後動可能であり、
さらに、前記モータと、前記モータに電流を供給する電源との間に、整流素子及び抵抗の並列回路からなる制御回路が介在されており、
前記モータを一方向に回転させるようにスイッチングされた場合には、前記電源から、前記モータ及び前記並列回路の整流素子の順に電流が流れ、前記モータを他方向に回転させるようにスイッチングされた場合には、前記電源から、前記並列回路の抵抗及び前記モータの順に電流が流れるように設定されていることを特徴とするパワーシートスライド装置。
前記ロック機構が、前記各アッパーレールの両側に設けられ、そのそれぞれが前記各ロアレールに係合してロック可能な構成であり、かつ、前記ロック機構の解除操作に連動して前記モータが作動して前記ピニオンが回転し、前記アッパーレールが前記ロアレールに沿って前後動する構成である請求項1又は2記載のパワーシートスライド装置。
前記各ロック機構は、前記各アッパーレールに支持され、前記各ロアレールに形成された被係合部に係合するロック爪を有する弾性部材から形成された弾性ロック部材を備えてなり、前記弾性ロック部材が弾性支点となって前記各ロアレール及び前記各アッパーレールに前記弾性ロック部材の弾性が作用する構成である請求項3記載のパワーシートスライド装置。
前記モータの非通電時に前記アッパーレールを前記ロアレールに沿って前後動させると、前記モータの駆動軸の回転により前記モータに電磁力が発生し、前記モータが前記アッパーレールの前後方向の移動を抑制するダンパとして機能する請求項1〜8のいずれか1に記載のパワーシートスライド装置。
前記モータと前記ピニオンとの間にクラッチが介在されており、前記モータの通電時には、前記クラッチが前記モータの回転力を前記ピニオンに伝達し、電動で調整できる一方、前記モータの非通電時には、前記クラッチが、前記ピニオンの回転力を前記モータに伝達せず、前記アッパーレールの前後方向の移動を手動調整可能である請求項1〜8のいずれか1に記載のパワーシートスライド装置。
前記入力側回転力伝達部材が、複数個のプレートを備えてなり、各プレートの周面に前記入力側歯部が形成されていると共に、前記モータの駆動軸に連結され、前記駆動軸と共に回転すると、前記各プレートを径方向に変位させ、前記入力側歯部を前記出力側歯部に噛合させるカムを備えてなる請求項11記載のパワーシートスライド装置。
前記付勢部材は、前記入力側回転力伝達部材の前記各プレートに連結され、前記プレート側テーパ面の頂部又は底部を、前記カム側テーパ面の底部又は頂部に対向する位置となるように径方向に付勢する部材である請求項13記載のパワーシートスライド装置。
前記リンク機構を構成する複数のリンクは、前記各アッパーレール及び前記各サイドフレームの前後方向にそれぞれ離間して配置される前部リンクと後部リンクとを有し、前記前部リンク及び後部リンクのそれぞれの上部が前記一対のスライダの各アッパーレールに軸支され、下部が前記シートクッションの左右の各サイドフレームに軸支され、前記各サイドフレームを前記各アッパーレールに対して吊り下げ支持する構成であると共に、
前記シートクッションの前後移動に伴う前記前部リンクの下限位置と上限位置との変位量が、前記後部リンクの下限位置と上限位置との変位量よりも小さく、それにより、前記シートクッションの前端かつ上限における座面角度が、後端かつ下限における座面角度よりも小さくなる構成である請求項16〜18のいずれか1に記載のパワーシートスライド装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーシートスライド装置は、特許文献1に示されているように、スライドスクリューとスライドナットを用いて電動での制御を行っており、非通電状態においてパワーシートスライド装置を手動操作することはできない。また、スライドスクリューはパワーシートスライド装置において強度部材としての役割も果たしており、パワーシートスライド装置において、このスライドスクリューを廃止することは困難である。一方、手動操作によるスライダの場合、ロック機構によるスライドロック位置が、数mmから十数mm間隔となっているため、ロック機構のロック爪が被係合部に中途半端に引っかかったハーフロック状態となってしまう場合がある。このような状態で走行すると、走行中にロック爪が被係合部に嵌合し、シートが位置ずれする場合がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、電動だけでなく手動操作に切替可能なパワーシートスライド装置及び該パワーシートスライド装置を備えた乗物用シートを提供することを課題とする。また、本発明は、手動操作に切り替えた際に、ハーフロックを防ぐことができるパワーシートスライド装置及び該パワーシートスライド装置を備えた乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のパワーシートスライド装置は、
乗物用シートにおけるシートクッションの前後方向の位置を調整するため、所定間隔をおいて一対配設されるスライダをモータの駆動力によって調整するパワーシートスライド装置であって、
前記一対のスライダは、それぞれ、
前記乗物用シートのフロアに前記シートクッションの前後方向に長手方向が沿うように固定されるロアレールと、
前記ロアレールの長手方向に沿って移動可能に配設され、前記シートクッションのクッションフレームを支持するアッパーレールと、
前記各アッパーレールを前記各ロアレールに対して適宜のスライド位置でロックするロック機構と
を有してなり、さらに、
前記ロアレールの長手方向に沿って設けられるラックと、
前記アッパーレール又は前記クッションフレームに支持され、前記ラックに噛合し、前記モータの駆動力が伝達されることによって回転するピニオンと
を有し、
前記モータの通電時には前記ロック機構の解除操作に連動して前記モータが作動して前記ピニオンが回転し、前記アッパーレールが前記ロアレールに沿って前後動し、
前記モータの非通電時には、前記アッパーレールを前記ロアレールに沿って手動調整で前後動可能であることを特徴とする。
【0007】
前記モータが、前記ピニオンとの間に介在されるギアボックスを有してなり、前記ピニオンの回転速度を調整可能であることが好ましい。
前記モータと、前記モータに電流を供給する電源との間に、整流素子及び抵抗の並列回路からなる制御回路が介在されており、
前記モータを一方向に回転させるようにスイッチングされた場合には、前記電源から、前記モータ及び前記並列回路の整流素子の順に電流が流れ、前記モータを他方向に回転させるようにスイッチングされた場合には、前記電源から、前記並列回路の抵抗及び前記モータの順に電流が流れるように設定されている構成とすることが好ましい。
【0008】
前記ロック機構が、前記各アッパーレールの両側に設けられ、そのそれぞれが前記各ロアレールに係合してロック可能な構成であり、かつ、前記ロック機構の解除操作に連動して前記モータが作動して前記ピニオンが回転し、前記アッパーレールが前記ロアレールに沿って前後動する構成であることが好ましい。
前記各ロック機構は、前記各アッパーレールに支持され、前記各ロアレールに形成された被係合部に係合するロック爪を有する弾性部材から形成された弾性ロック部材を備えてなり、前記弾性ロック部材が弾性支点となって前記各ロアレール及び前記各アッパーレールに前記弾性ロック部材の弾性が作用する構成であることが好ましい。
前記アッパーレール又は前記クッションフレームに、前記ラックの歯が形成されていない面に当接可能に支持され、
前記ラックの歯に噛み合う前記ピニオンとにより、前記ラックを挟んだ位置関係で、前記ピニオンの回転に伴って前記ラックに沿って前後動し、前記ピニオン及び前記ラック間のガタつきを抑制するガイド部材を有していることが好ましい。
前記ピニオンが、前記ラックに加え、前記ラックに押し付ける力を付与するアイドルギアにも噛合されていることが好ましい。
前記ラックは、前記ロアレールに一端が固定されて固定端となっており、他端が固定されずに自由端となるように取り付けられていることが好ましい。
前記ラックは、一対のスライダのいずれか一方の前記ロアレールの側面に沿って、かつ、該ロアレールの上面よりも低い高さに歯が位置するように配設されることが好ましい。
【0009】
前記モータの非通電時に前記アッパーレールを前記ロアレールに沿って前後動させると、前記モータの駆動軸の回転により前記モータに電磁力が発生し、前記モータが前記アッパーレールの前後方向の移動を抑制するダンパとして機能する構成であることが好ましい。
【0010】
前記モータと前記ピニオンとの間にクラッチが介在されており、前記モータの通電時には、前記クラッチが前記モータの回転力を前記ピニオンに伝達し、電動で調整できる一方、前記モータの非通電時には、前記クラッチが、前記ピニオンの回転力を前記モータに伝達せず、前記アッパーレールの前後方向の移動を手動調整可能であることが好ましい。
前記クラッチは、
周面に入力側歯部を備え、前記モータの回転力によって径方向に変位可能に設けられた入力側回転力伝達部材と、
前記入力側歯部の径方向の変位によって噛合可能な出力側歯部を備え、前記ピニオンを回転させる出力側回転力伝達部材と、
前記入力側歯部を前記出力側歯部から離間する方向の径方向に付勢する付勢部材と
を有してなり、
通電時における前記モータ側からの正逆両方向の回転力は、前記付勢部材の弾性力に抗して前記入力側回転力伝達部材を径方向に変位させて前記入力側歯部を前記出力側歯部に噛合させ、前記出力側回転力伝達部材を回転させて前記ピニオンに伝達され、
非通電時における前記ピニオン側からの逆入力トルクは、前記付勢部材の弾性力により前記入力側歯部が前記出力側歯部から離間し、前記出力側回転力伝達部材から前記入力側回転力伝達部材に伝達されずに遮断される構成であることが好ましい。
【0011】
前記入力側回転力伝達部材が、複数個のプレートを備えてなり、各プレートの周面に前記入力側歯部が形成されていると共に、前記モータの駆動軸に連結され、前記駆動軸と共に回転すると、前記各プレートを径方向に変位させ、前記入力側歯部を前記出力側歯部に噛合させるカムを備えてなることが好ましい。
【0012】
前記カムは、周面にカム側テーパ面を有し、前記各プレートは前記カム側テーパ面に対面するプレート側テーパ面を有し、
前記カム側テーパ面及び前記プレート側テーパ面は、一方が山型で他方が谷型に形成され、頂部と底部とが対向する位置関係では、前記入力側歯部が前記出力側歯部から離間した非噛合位置となり、前記駆動軸の回転により、前記頂部と前記底部とが前記カム側テーパ面又は前記プレート側テーパ面に沿って対向位置から離間すると、前記入力側歯部と前記出力側歯部とが噛合位置となることが好ましい。
前記付勢部材は、前記入力側回転力伝達部材の前記各プレートに連結され、前記プレート側テーパ面の頂部又は底部を、前記カム側テーパ面の底部又は頂部に対向する位置となるように径方向に付勢する部材であることが好ましい。
前記カムは、外周面に前記カム側テーパ面が形成されており、
前記各プレートは、内周面に前記プレート側テーパ面が形成され、外周面に前記入力側歯部が形成されており、
前記出力側回転力伝達部材が、内周面に前記入力側歯部と噛合する前記出力側歯部を有するインターナルギアから構成されていることが好ましい。
【0013】
さらに、前記ピニオンの回転力を伝達する上下動中継ギアと、
前記上下動中継ギアに噛合し、上下方向に変位するリフトギアと、
前記リフトギアの上下方向の変位によって回動すると共に、いずれかが前記サイドフレームに連結される複数のリンクを備えてなるリンク機構と、
を有し、
前記スライダの動作により前記シートクッションが前方に移動すると、前記スライダに連動して前記シートクッションが上昇し、前記スライダの動作により前記シートクッションが後方に移動すると、前記スライダに連動して前記シートクッションが下降する構成であることが好ましい。
前記上下動中継ギアが、前記スライダの長手方向に略直交する方向に沿って配設されたウォームからなり、
前記リフトギアが、前記ウォームに噛合するウォームホイールからなり、
前記シートクッションから前記スライダへの力の伝達を阻止するセルフロック機能を有する構成であることが好ましい。
前記上下動中継ギアが、前記ピニオンと同軸上に配置され、前記ピニオンより小径の歯車からなることが好ましい。
【0014】
前記リンク機構を構成する複数のリンクは、前記各アッパーレール及び前記各サイドフレームの前後方向にそれぞれ離間して配置される前部リンクと後部リンクとを有し、前記前部リンク及び後部リンクのそれぞれの上部が前記一対のスライダの各アッパーレールに軸支され、下部が前記シートクッションの左右の各サイドフレームに軸支され、前記各サイドフレームを前記各アッパーレールに対して吊り下げ支持する構成であると共に、
前記シートクッションの前後移動に伴う前記前部リンクの下限位置と上限位置との変位量が、前記後部リンクの下限位置と上限位置との変位量よりも小さく、それにより、前記シートクッションの前端かつ上限における座面角度が、後端かつ下限における座面角度よりも小さくなる構成であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の乗物用シートは、シートクッション及びシートバックを備えた乗物用シートであって、前記いずれかのパワーシートスライド装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前後動は、ロアレールに付設したラックとそれに噛合するピニオンを用い、このピニオンにモータの駆動力を伝達する構成としているため、電動モードでの使用が可能となる。その一方、スライドスクリューを用いていないため、モータの非通電時には、ピニオンを回転させればモータの駆動軸が回転する。それにより、手動調整が可能となる。これにより、本発明のパワーシートスライド装置が搭載された乗物のエンジンオフのとき、あるいは、事故により非通電状態となった際の乗員救出の場合等において、手動で乗物用シートを前後動させることができる。このとき、本発明によれば、モータの駆動軸が回転すると、モータに電磁力が発生するため、この電磁力により駆動軸の回転力が減衰され、アッパーレールのロアレールに沿った前後方向の移動速度が抑制される。すなわち、非通電時には、該モータを、電磁力を利用したダンパとして機能させることができる。従って、非通電時に、ロック機構のロックがかかるまで移動させた場合でも、アッパーレールは、抑制された動きで滑らかにロックがかかるようになる。
ロック機構は、各アッパーレールの両側に設けられ、そのそれぞれが各ロアレールに係合してロック可能な構成とすることが好ましい。ロック機構が各アッパーレールの両側に設けられると、これが強度部材となり、従来のパワーシートスライド装置で必要であった強度部材としてのスライドスクリューを不要とするのに適している。
【0017】
一方、クラッチを設け、非通電時にピニオン側からモータに力が伝達されないようにすることも可能である。この場合には上記のようにアッパーレールの動きを減衰させることはできないが、この方法でも、上記したロック機構を用いることで電動と手動との併有が可能となる。なお、この場合もオイルダンパなどを組み込むことでアッパーレールの動きを減衰することもできる。しかし、上記した非通電時においてもモータとの連結を維持する構成とすれば、モータ自体をダンパとして利用できるため、別途のオイルダンパ等が不要であり、構成の簡素化、低コスト化に貢献できる。また、本発明では、上記したアッパーレールとロアレールとの間でロックを行うロック機構、すなわち、手動調整式のスライダで用いられるロック機構を用いているため、ロック位置は、数mmから十数mm間隔である。この点は、モータの通電時においても同様である。しかし、電動で前後動するため、ロック位置まで確実に動作し、電動モードではいわゆるハーフロックになることがない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に示した実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
図1〜
図6は、本発明の第1の実施形態に係るパワーシートスライド装置1を示した図であり、このパワーシートスライド装置1は、左右一対のスライダ10,10、スライド制御機構20、電動機構50等を有して構成され、シートクッションのクッションフレーム100を支持し、シートクッションの位置を調整可能となっている。
【0020】
各スライダ10,10は、所定の長さを有し、シートクッション(クッションフレーム100)の前後方向に長手方向が沿うように固定されるロアレール11,11と、このロアレール11,11の長手方向に沿って移動可能に配設されるアッパーレール12,12とを有して構成される。
【0021】
各スライダ10,10のロアレール11,11、アッパーレール12,12は、軽量化のために、板厚1.8mm以下のものを使用することが好ましく、さらには0.6〜1.6mmの範囲のものを使用することが好ましい。また、これらを構成する素材としては、引張強度400〜590MPaの範囲のものを用いることが好ましい。これは加工に必要とするエネルギー量が少なくて済み、比較的小型のプレス機械で成形できるため、省エネルギーの要請に貢献でき、製造コストの低減に資するからである。
【0022】
ロアレール11,11及びアッパーレール12,12を薄肉のもので構成する場合、衝撃力による変形は左右略均等の変形により近くなるようにし、かつ、アッパーレール12,12がロアレール11,11から所定の範囲の衝撃力では離脱しないような工夫が必要となる。そこで、本実施形態では、ロアレール11,11に対するアッパーレール12,12の相対的な位置を固定するロック機構13,13を、
図1に示したように、各アッパーレール12,12の両側に設けている。ロック機構13,13は、先端にロック爪を有し、このロック爪がロアレール11,11に形成した被係合部に係合するが、各アッパーレール12,12の両側に設けることにより、係合状態の姿勢及び係合力の作用方向が左右略対称となるため、ロック時において偏荷重が生じにくくなっている。
【0023】
所定間隔をおいて左右一対配設される各スライダ10,10における左右のロック機構13,13には、ロック爪の係合状態を解除するための軸部13a,13aを中心に回動する解除部材13b,13bがそれぞれ設けられており、左右の軸部13a,13aには下方に垂下する所定長さの板状部材13c,13cが設けられ、この板状部材13c,13c間に連結ロッド13dが掛け渡されている。すなわち、この連結ロッド13dを操作することにより、解除部材13b,13bが回動して4つのロック機構13,13が同期して解除される構成となっている。本実施形態においては、連結ロッド13dを、軸部13a,13aから下方に垂下させた板状部材13c,13cを介して配設しているが、これは、シートクッションのヒップポイントを低く設定するため、クッションフレーム100のサイドフレーム110が後述のリンク機構25を介してアッパーレール12に吊り下げ支持されているからである。
【0024】
ここで、
図7及び
図8に基づきロック機構13の構成をより詳細に説明する。すなわち、ロック機構13は、弾性ロック部材130と解除部材13bを有して構成される。弾性ロック部材130は、弾性部材、典型的にはバネ鋼(板バネ)から形成され、アッパーレール12,12に固定される取付板部131と、取付板部131に支持され、アッパーレール12,12の各縦壁部12a,12aから離間する方向に常時付勢される弾性力を有すると共に、各縦壁部12a,12aから離間する方向に突出し、各ロアレール11,11における対向部位に長手方向に沿って複数形成された被係合部に係合するロック爪133を備えた作用板部132を有して構成される。解除部材13bは、作用板部132の弾性力に抗して、この作用板部132をアッパーレール12,12の縦板部12a,12a方向に変位させ、ロック爪133と各ロアレール11,11の被係合部との係合状態を解除する。
【0025】
弾性ロック部材130の取付板部131は、アッパーレール12,12の縦壁部12a,12aに沿う形状を有しており、リベットなどにより固定される。作用板部132は、
図8に示したように、取付板部131と一体であり、取付板部131の上縁から、各アッパーレール12,12の縦壁部12a,12aとは反対方向側にかつ下方に曲げられてなる。また、中途部に各アッパーレール12,12の縦壁部12a,12aから離間する方向に膨出する膨出部132aを有している。ロック爪133は、膨出部132aより下方の作用板部132の下縁付近を、縦壁部12a,12aから離間する方向に突出するように折り曲げられることにより櫛歯状に形成されている。なお、弾性ロック部材130を構成する取付板部131は、アッパーレール12,12の長手方向略中央部に設けることが好ましい。弾性ロック部材130の弾性がアッパーレール12,12及びロアレール11,11に作用し、ロアレール11,11及びアッパーレール12,12を実質的に弾性変形可能として、振動や衝撃力によるエネルギーの吸収機能等を付与するが、その機能をより効率よく発揮させるためである。
【0026】
解除部材13bは、一端部を中心として他端側が上下に回動するように設けられ、作用板部132の外面に沿って回動しようとして膨出部132aに接すると、該膨出部132aを縦板部12a,12a方向に変位させることになる。これにより、ロック爪133は、縦板部12a,12a方向に変位するため、係合状態が解除される。各解除部材13b、すなわち、合計4つの解除部材13bの各一端部は、左右のアッパーレール12,12間に上記のように掛け渡される連結ロッド13dによって連結されている。従って、連結ロッド13dのいずれかに連結した操作部(図示せず)を操作することにより、4つのロック解除部材が同期して動作し、ロックが解除される。
【0027】
ここで、各ロアレール11,11の各上壁部は、各対向縁から、斜め下方に曲げられた下向き傾斜壁部114,114が延在する形状であり、上記した各ロアレール11,11の被係合部114a,114aは、この各下向き傾斜壁部114,114に、長手方向に沿って、櫛歯状のロック爪133の隣接する爪同士の間隔に合わせて複数形成された孔又は溝から構成される(
図7参照)。
【0028】
また、各アッパーレール
12,
12は、
図7に示したように、略T字状の横壁部122,122の各外側縁部から縦壁部12aに向かってそれぞれ斜めに立ち上がる上向き傾斜壁部123,123を有し、この上向き傾斜壁部123,123が、各ロアレール11,11の下向き傾斜壁部114,114の外側に位置するように設けられる。また、ロック爪133の形成位置に対応する各アッパーレール12,12の各上向き傾斜壁部123,123に、孔又は溝からなる補助被係合部123a,123aが形成されている(
図7参照)。この補助被係合部123a,123aは、ロック時において、ロック爪133が各ロアレール11,11の被係合部114a,114aを貫通した後に係合することで、ロック爪133を安定して係合状態で保持する。従って、この構成によっても、ロック時における左右略対称の安定した形態を維持する機能が果たされる。
【0029】
スライド制御機構20は、ラック21、ピニオン22、上下動中継ギア23、リフトギア24、リンク機構25、及び弾性部材26を有して構成される。なお、本実施形態のスライド制御機構20は、ラック21及びピニオン22により前後のスライド動作を可能にすると共に、上下動中継ギア23、リフトギア24、リンク機構25及び弾性部材26により上下動を可能にするものであり、前後のスライド動作を制御するだけでなく、スライド動作に伴って上下動も可能にするスライダとリフタの連動機構として機能する構成となっている。
ラック21は、本実施形態では、
図1に示したように、左右いずれか一方、本実施形態では右側のスライダ10を構成するロアフレーム11の外側面に固着される。また、本実施形態では、後述のリンク機構25のうち前部リンク251,251を回動させてクッションフレーム100のサイドフレーム110の前縁側を上下動させ、後部リンク252,252はそれに追従させる機構であるため、ラック21はロアフレーム11の長手方向中央付近から前端側に設けられる。また、ラック21の歯21aは、該ラック21の上面に上向き形成されるが、この歯21aが、ロアレール11の上面よりも低い高さに位置するように該ラック21の高さが設定されている。
【0030】
ピニオン22は、アッパーレール12においてロアレール11と同側面に設けられ、アッパーレール12の縦壁部の厚み方向に貫通支持される軸部22aに装着されて周面の歯22bがラック21の歯21aに噛み合うように形成されている。ラック21の歯21aの高さがロアレール11の上面よりも低いため、その高低差の範囲にピニオン22の直径方向の一部が位置することになる。従って、アッパーレール12の上面よりも上方にはみ出ているピニオン22は、ピニオン22の直径未満となり、クッションフレーム100をより低い位置で支持するのに適している。
【0031】
上下動を可能にするための上下動中継ギア23は、本実施形態ではピニオン22より小径の歯車(平歯)からなり、ピニオン22と同軸上にすなわち軸部22aに支持される。従って、ラック21にピニオン22が噛み合って回転すると、上下動中継ギア23である平歯もピニオン22と共に回転する。
【0032】
リフトギア24は、扇状板部材からなり、周面寄りに円弧状孔部24aが形成され、その内周面に円弧状歯24bが形成されている。この円弧状歯24bが上下動中継ギア23である平歯に噛合する。リフトギア24は、円弧状歯24bの円弧の中心寄り(すなわち扇状板部材の中心付近)に、動力伝達軸24cの一端部が連結されている。
【0033】
ここで、シートクッションの骨格であるクッションフレーム100は、
図1に示したように、所定間隔をおいて設けられた左右一対のサイドフレーム110,110と、左右一対のサイドフレーム110,110間において、前縁側、後縁側、及びその中途にそれぞれ配設された複数本のパイプ部材121〜123を有して構成される。また、クッションフレーム100の幅、すなわち左右一対のサイドフレーム110,110間の間隔は、左右一対のスライダ10,10のロアフレーム11,11間の間隔よりも狭くなるように設定されている。これにより、クッションフレーム100をアッパーレール12,12に吊り下げ支持することが可能となる。なお、サイドフレーム110,110は、中央板部110a,110aと、中央板部110a,110aに対して前方斜め上方に延びる前方板部110b,110bと、中央板部110a,110aに対して後方斜め上方に延びる後方板部110c,110cを有する形状をなしている(
図3参照)。これは、クッションフレーム100に支持されるクッション材を所定の形状となるように設けるためである。
【0034】
リンク機構25は、左右一対の前部リンク251,251と、この前部リンク251,251に対してアッパーレール12,12及びサイドフレーム110,110の長手方向に沿って後方に離間して配設される左右一対の後部リンク252,252を備えてなる。このうち右側の前部リンク251は、その上部が動力伝達軸24cの他端部に連結される。動力伝達軸24cは、アッパーレール12の前端寄りに、該アッパーレール12の厚み方向に設けた軸受け用の筒部12aに挿通されるように配置され、その外端側である一端部にリフトギア24の中心付近が連結され、内端側である他端部に右側の前部リンク251の上部が連結される。右側の前部リンク251の下部は右側のサイドフレーム110の前方板部110bと中央板部110aとの境界付近にブラケット251aを介して軸支される。左側の前部リンク251は、上部が左側のアッパーレール12に、下部が左側のサイドフレーム110の前方板部110bと中央板部110aとの境界付近にそれぞれブラケット251b,251cを介して軸支される。
【0035】
後部リンク252,252は、いずれも、上部が左右のアッパーレール12の後部に、それぞれブラケット252a,252aを介して軸支され、下部がサイドフレーム110の後方板部110c,110cと中央板部110a,110aとの各境界付近に、それぞれブラケット252b,252bを介して軸支される。
【0036】
このように、前部リンク251,251及び後部リンク252,252は、いずれも上部がアッパーレール12,12側に軸支され、下部がクッションフレーム100の各サイドフレーム110,110側に軸支されることから、クッションフレーム100は、アッパーレール12,12に、リンク機構25を介して吊り下げ支持されることになる。このため、
図2に示したように、側面から見た場合、クッションフレーム100は、サイドフレーム110,110の中央板部110a,110aのほとんどの部分と、前方板部110b,110b及び後方板部110c,110cの一部がロアレール11,11の上面の高さ以下となり、クッションフレーム100の設計上のヒップポイントの位置を低く設定することができる。
【0037】
前部リンク251,251及び後部リンク252,252は、
図6(a)に示したように、いずれも下限位置(アッパーレール12,12の後端位置)における姿勢がより垂直に近い姿勢であるのに対し、
図6(b)に示したように、上限位置(アッパーレール12,12の前端位置)における姿勢はより水平に近い姿勢となっている。このときの前部リンク251,251の下限位置と上限位置との高さ方向の変位量が、後部リンク252,252の高さ方向と変位量と比較して小さくなるように設定されている。本実施形態では、前部リンク251,251として、後部リンク252,252よりも長さの短いものを用い、また、下限位置(アッパーレール12,12の後端位置)において、前部リンク251,251は、垂直よりも若干前方に傾いた姿勢となるように配置し、後部リンク252,252は、垂直よりも後方に傾いた姿勢となるように配置することで(
図6(a)参照)、変位量に上記の差が生じるようにしている。
【0038】
前部リンク251,251及び後部リンク252,252をこのように設定することにより、クッションフレーム100にクッション材を配置した状態でのシートクッションの下限位置(アッパーレール12,12の後端位置)の座面角度(
図2の符号「Q」で示したライン)よりも上限位置(アッパーレール12,12の前端位置)の座面角度(
図2の符号「P」で示したライン)の方が、小さくなる。従って、スライダ10,10を前方に操作して使用することの多い体格のより小さな人の場合、前方に移動するほど座面角度が小さくなるため、ペダル操作時にシートクッションの前縁部が大腿部に及ぼす圧迫力を小さくすることができる。これに対し、スライダ10,10を後方に操作して使用することの多い体格のより大きな人の場合、座面角度が浅いと脚が長いことによってペダル操作を行いにくくなる場合があるが、本実施形態では座面角度が大きくなるため、そのような不都合がない。なお、クッションフレーム100にクッション材を配置した状態でのシートクッションの下限位置(アッパーレール12,12の後端位置)の座面角度(
図2の符号「Q」で示したライン)と上限位置(アッパーレール12,12の前端位置)の座面角度(
図2の符号「P」で示したライン)との差は、約3〜8度の範囲とすることが好ましい。
【0039】
弾性部材26は、シートクッションを構成するクッションフレーム100を上昇方向に付勢し、クッションフレーム100を上昇させる力を付与する。弾性部材26はかかる機能を果たすものであればよい。本実施形態では、
図3に示したように、弾性部材26として渦巻きばねを使用し、その内側端部26aを動力伝達軸24cの内端側の他端部に刻設されたスリット24dに係合させている。また、アッパーレール12の前端付近には、支持軸12cが突設されており、支持軸12cに渦巻きばねの外側端部26bが係合される。動力伝達軸24cは、一方の前部リンク251を介してクッションフレーム100の一方のサイドフレーム110に連結されているため、弾性部材26は、サイドフレーム110とアッパーレール12との間に配設されることになる。渦巻きばねは常に拡開方向に弾性が作用しているため、アッパーレール12に対してサイドフレーム110は上昇方向に付勢されることになる。
【0040】
ここで、電動機構50は、モータ51を備えて構成される。
図3では、電動機構50がモータ51のみから構成され、モータ51の駆動軸51aがピニオン22を回転させることができるように連結される。なお、本明細書において「駆動軸51a」は、モータ51の回転力を伝達する軸であり、
図3のようにモータ51の本体に直結の軸に限らず、後述する
図5等に示したようにギアボックス51bを介して他の部材(例えばクラッチ53)に回転力を伝達する軸も含む意味である。電動モードでは、モータ51が回転すると、その回転力が駆動軸51aを介して、必要に応じて適宜のギア機構を介してピニオン22を回転させる。その結果、ピニオン22がラック21に対して例えば前転する方向に移動するが、ピニオン22は、軸部22aを介してアッパーレール12に取り付けられているため、ピニオン22が前転すると、該ピニオン22と共にアッパーレール12,12がロアレール11,11に対して前進する。
【0041】
本実施形態によれば、モータ51の回転力をピニオン22に伝達する構成であるため、モータ51が通電状態のときは、モータ51の回転力がピニオン22に正逆いずれの方向でも伝達されるが、モータ51の電源が非通電状態でロック機構13がロック解除モードのときは、ピニオン22側から入力される力は駆動軸51aを回転させる。つまり、非通電状態でロック機構13がロック解除モードのときは、着座者が、臀部を前後いずれかにずらす力を付与する、あるいは外部から乗物用シートを前後にずらす力を付与すると、クッションフレーム100及びその上部に配置されたクッション材等を含むシートクッションが前後いずれかに移動しようとする。すると、シートクッションを構成するクッションフレーム100の各サイドフレーム110,110にはスライダ10,10のアッパーレール12,12が連結されているため、アッパーレール12,12が、ロアレール11,11に対して前後いずれかの方向に移動する。これにより、エンジンオフ時や事故等によって非通電状態の場合でもアッパーレール12,12をロアレール11,11に対して手動で前後にスライドさせることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、このように手動で前後動させた場合、ピニオン22も前後いずれかに回転し、その回転力によってモータ51の駆動軸51aが回転する。駆動軸51aが回転すると、モータ51内では、回転子が固定子に対して回転して電磁力が発生する。この電磁力により駆動軸51aの回転力が減衰され、それに連結されたピニオン22の回転力も減衰されるため、アッパーレール12,12の前後方向の移動は抑制されることになる。つまり、モータ51は電磁力を利用したダンパとして機能する。この結果、本実施形態では手動調整時において、別途のオイルダンパ等のダンパ機構を設けることなく、アッパーレール12の前後移動を抑制できる。
【0043】
なお、電動モードにする場合のスイッチは、ロック機構13の連結ロッド13dに設けることができる。例えば、操作レバーにより連結ロッド13dを回転させ、解除部材13bによりロックを解除する。このとき、連結ロッド13dを回転させて所定の位置に至った際に、モータ51のスイッチがONされるような構成とすることができる。
【0044】
上記のように、ロック機構13が、各アッパーレール12,12の両側に設けられ、そのそれぞれが各ロアレール11,11に係合してロック可能な構成であり、かつ、ロック機構13の解除操作に連動してモータが作動してロアレール11,11に沿って設けたピニオン22が回転し、アッパーレール12,12がロアレール11,11に沿って前後動する。本実施形態では、ロック機構13が各アッパーレール12,12の両側に設けられており、しかも、上記のように左右のバランスがとれた構成であるため、これが強度部材となり、従来のパワーシートスライド装置で必要であった強度部材としてのスライドスクリューを不要とすることができる。また、スライドスクリューを用いていないため、非通電時に上記のような手動操作での前後動が可能となる。また、ロック機構13のロック位置は、上記のようにロック爪133が所定間隔で設けられた各ロアレール11,11の被係合部114a,114aに係合してロックされる。このとき、本実施形態では電動で前後動するため、ロック位置まで確実に動作し、電動モードではいわゆるハーフロックになることがない。
【0045】
また、電動機構50は、
図3に示した減速機を備えてないシンプルな構造のモータ51から構成されるものであってもよいし、
図4に示したように減速機(ギアボックス51b)を一体に備えたギヤードモータの構成としてもよい。ギヤードモータの構成とした場合、電動モードにおいては、ギアボックス51bを一体に備えていることにより、ギアの選択によってスライダ10による前後位置調整等の速度を適宜に調整することができる。一方、手動モードにおいてモータ51をダンパとして機能させる場合、ギアボックス51bを一体に備えることにより、トルクが大きくなるため、ダンパとして機能させた際に大きな減衰力を得ることができる。
【0046】
但し、あまりトルクが大きくなると、手動での前後動が重くなる。そのため、ギアボックス51bの各ギアのギア比の設定に留意する必要があるが、トルクを抑えた場合、スライダ10,10のロアレール11,11が、フロアに所定の傾斜角を有して前端が後端よりも高く設置されているのが通常であるため、電動モードにおいては、前進時に対して後退時の作動速度が速くなる。この点の対策については後述の第3の実施形態においてさらに詳細に説明する。
【0047】
図5は、電動機構50として、ギアボックス51b付きのモータ51に加えて、さらにクラッチ53を有して構成した例を示したものである。ギアボックス51bは、ギアの選択によってスライダ10による前後位置調整、リフタ20による上下位置調整の速度を適宜に調整する。モータ51の駆動力はギアボックス51bによって適宜に減速されて駆動軸51aを回転させる。モータ51の駆動軸51aはクラッチ53の入力側に連結されており、モータ51の回転力が駆動軸51aを介してクラッチ53に伝達される。クラッチ53の出力側には、ピニオン用入力軸53bが設けられており、ピニオン用入力軸53bをピニオン22の回転中心に連結することで、ピニオン22が回転する。
【0048】
従って、電動モードでは、モータ51が回転すると、その回転力がギアボックス51bにおいて選択されたギア及び駆動軸51aを介してクラッチ53の入力側に伝達される。クラッチ53の入力側に伝達された上記回転力は出力側に伝達され、ピニオン用入力軸53bを介してピニオン22を回転させる。その後の動きは
図3に示した態様と同様である。
【0049】
図5は、クラッチ53を介してモータ51の回転力をピニオン22に伝達する構成である。従って、モータ51が通電状態のときは、クラッチ53を介してモータ51の回転力がピニオン22に正逆いずれの方向でも伝達されるが、モータ51が非通電状態のときは、クラッチ53が遮断モードになるため、ピニオン22側からは、モータ51に回転力が伝達されない。モータ51が非通電状態のときに、上記のように手動機構として使用することができることはもちろんであるが、この場合、モータ51の減衰力は機能しない。そのため、アッパーレール12,12の動きは緩衝されることなく上記した手動調整がなされる。なお、この態様においてアッパーレール12,12の動きを抑制する場合、別途オイルダンパ等のダンパを配設することになる。その点で、上記のモータ51の減衰力を利用する態様の方が、構成の簡素化と低コスト化に貢献でき好ましい。
【0050】
次に、スライド制御機構20の動作によってアッパーレール12の前後動に連動してクッションフレーム100が上下動する際の作用を説明する。
図6(a)に示すように、スライダ10,10において、アッパーレール12がロアレール11の後端に位置しているとする。この状態では、前部リンク251,251は、垂直状態に対して若干前方に傾斜した姿勢になっている。後部リンク252,252は、は、垂直状態に対して若干後方に傾斜した姿勢になっている。
【0051】
まず、電動、手動を問わず、クッションフレーム100及びその上部に配置されたクッション材等を含むシートクッションが前方に移動しようとすると仮定する。すると、シートクッションを構成するクッションフレーム100の各サイドフレーム110,110にはスライダ10,10のアッパーレール12,12が連結されているため、アッパーレール12,12が、ロアレール11,11に対して前方(
図2の矢印(1)の方向)に移動していく。
【0052】
アッパーレール12,12が前方に移動していくと、本実施形態においては右側のアッパーレール12に軸支されたピニオン22は、その歯22bがラック21の歯21aに噛合しているため、該ラック21の長手方向に沿って前転(
図2の矢印(2)の方向に転動)していく。それにより、ピニオン22の軸部22aに支持された上下動中継ギア23も前転する。上下動中継ギア23が前転すると、上下動中継ギア23に噛み合っているリフトギア24が回転する。リフトギア24は、
図6(a)に示したように、アッパーレール12が後端位置に存在しているときに、上下動中継ギア23が円弧状歯24bの最も上側に位置して噛み合っているように設定される。従って、アッパーレール12が前進し、上記のように上下動中継ギア23が前転すると、リフトギア24は、動力伝達軸24cを回転中心として
図2及び
図6の反時計回り(
図2の矢印(3)の方向)に回動していく。
【0053】
リフトギア24が
図2及び
図6の反時計回りに回動すると、右側の前部リンク251は、右側のサイドフレーム110に軸支された下部を支点として、その上部が前方に(
図2及び
図6の反時計回り(
図2の矢印(4)の方向)に)回動する。左側の前部リンク251は、左側のアッパーレール12及びサイドフレーム110間に軸支されているだけであるため、この右側の前部リンク251の動きに同期して、下部を支点としてその上部が前方に回動する。後部リンク252,252は、いずれも各アッパーレール12,12及び各サイドフレーム110,110間に軸支されているだけであるため、前部リンク251,251の動きに追従する。すなわち、アッパーレール12,12がロアレール11,11の後端位置に存在するときは、各後部リンク252,252は、下部が垂直よりも後方に若干の角度で傾斜した姿勢であるが(
図6(a)参照)、アッパーレール12,12が前進すると、下部はさらに反時計回り(
図2の矢印(5)の方向)に回動して水平により近くなる(
図6(b)参照)。
【0054】
図6(b)は、アッパーレール12,12がロアレール11,11の前端に位置している状態を示すが、この図に示したように、前部リンク251,251及び後部リンク252,252は、いずれも、
図6(a)のアッパーレール12,12の後端位置と比較して、図において反時計回りに、すなわち、水平姿勢により近い方向に変位する。このときの前部リンク251,251の各下部の高さの差は、前部リンク251,251が軸支されているサイドフレーム110,110の中央板部110a,110aと前方板部110b,110bとの境界付近の上下方向の変位量となり、後部リンク252,252の各下部の高さの差は、後部リンク252,252が軸支されているサイドフレーム110,110の中央板部110a,110aと後方板部110c,110cとの境界付近の上下方向の変位量となる。本実施形態では、上記のように前部リンク251,251の各下部の上下方向の変位量が、後部リンク252,252の各下部の上下方向の変位量よりも小さいため、
図6(a)の後端かつ下限位置に対し、
図6(b)の前端かつ上限位置の座面角度は小さくなる(
図2参照)。
【0055】
ここで、上記したように、渦巻きばねからなる弾性部材26が、右側のアッパーレール12とサイドフレーム110との間に配設されているため、リフトギア24が
図2及び
図6の反時計回りに回動する際には、その回転力をアシストし、クッションフレーム100を容易に上昇させることができる。
【0056】
なお、アッパーレール12,12がロアレール11,11に対して後退(
図2の矢印(1)の方向と反対方向に移動)すると、ピニオン22、上下動中継ギア23及びリフトギア24が上記と逆方向に回転し、クッションフレーム100は、前端かつ上限位置から後端かつ下限位置の方向に変位していく。
【0057】
なお、電動モードにおいては、本実施形態では、前後のスライド動作と上下動が連動する構成であるため、ピニオン22が前転するとウォームからなる上下動中継ギア23も同方向に回転し、リフトギア24を動力伝達軸24cを中心として回動させ、リンク機構25の一対の前部リンク251,251及び一対の後部リンク252,252を、各下部の位置が上昇する方向に変位させてクッションフレーム100を上昇させる。モータ51が上記と逆方向に回転すると、駆動軸51a、ピニオン22、上下動中継ギア
23及びリフトギア24がいずれも上記と逆方向に回転し、クッションフレーム100を下降させる。
【0058】
図9〜
図13は、本発明の第2の実施形態に係るパワーシートスライド装置1を示した図であり、このパワーシートスライド装置1は、スライド制御機構200の構成が上記第1の実施形態と異なるが、その他の構成は全く同様である。また、スライド制御機構200は、ラック201、ピニオン202、上下動中継ギア203、リフトギア204、リンク機構205、及び弾性部材206を有して構成される点で上記第1の実施形態のスライド制御機構20と同様であるが、ラック201、ピニオン202、上下動中継ギア203及びリフトギア204の構成が異なる。従って、以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0059】
ラック201は、一方(本実施形態では右側)のロアレール11の外側面に沿って配設される点は上記第1の実施形態と同様であるが、本実施形態では、歯201aがロアレール11の底面から外方に突出する向きで、すなわち、平面視で歯201aが横向きとなるように取り付けられている(
図11参照)。
【0060】
ピニオン202は、横向きに設けられたラック201の歯201aに噛合するように、略水平方向に回転するように設けられる。上下動中継ギア203は、スライダ10の長手方向に略直交する方向に沿って配設されたウォームから形成される。一方のアッパーレール12の長手方向中央部よりも前端寄りにおいて取り付け用のブラケット203aが設けられており、このブラケット203aの両端部に前方に向かって突設したアーム203b,203cに、ウォームからなる上下動中継ギア203の上端部及び下端部が軸支される。これにより、ウォームからなる上下動中継ギアは、アッパーレール12の長手方向に略直交する上下方向に沿って配設され、円周方向に回転可能となっている。ウォームからなる上下動中継ギア203の下端部203dに、上記のピニオン202が取り付けられる。
【0061】
リフトギア204は、ウォームからなる上下動中継ギア203に噛み合う略扇形のウォームホイールからなり、その回転中心に上記第1の実施形態と同様に動力伝達軸204cの一端が連結されている。動力伝達軸204cの他端は上記実施形態と同様に、リンク機構205の前部リンク2051の一方が連結される。なお、リンク機構205が一対の前部リンク2051,2051及び一対の後部リンク2052,2052を有してなることは上記第1の実施形態と同様であり、また、渦巻きばねからなる弾性部材206の構成も上記第1の実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態においては、アッパーレール12,12の後端位置において、クッションフレーム100が下限位置となるように、リフトギア204の円弧状歯204bのうち上端付近の歯がウォームからなる上下動中継ギア203の上端付近に噛み合うように設定する。この状態で、アッパーレール12,12がロアレール11,11に対して前進(
図10の矢印(1)の方向に移動)すると、ラックギア201の歯201aに噛合するピニオン202が、平面視で反時計回り(
図10の矢印(2)の方向)に回転する。ピニオン202の回転に伴ってウォームからなる上下動中継ギア203も平面視で反時計回り(
図10の矢印(2)の方向)に回転する。上下動中継ギア203がこのように回転すると、円弧状歯204bが噛み合っているリフトギア204は、動力伝達軸204cを中心として
図8において反時計回り(
図10の矢印(3)の方向)に回動する。このとき、弾性部材206による上方への付勢力が作用するため、リフトギア204の回動に伴って、リンク機構205の一対の前部リンク2051,2051及び一対の後部リンク2052,2052は上記第1の実施形態と同様に各下部の位置が上昇する方向(
図10の矢印(4),(5)の方向)に変位し、クッションフレーム100が上昇する。このときの座面角度の変化がクッションフレーム100の下限位置よりも上限位置の方が小さくなるように設定されていることも上記第1の実施形態と同様である。
【0063】
なお、アッパーレール12,12がロアレール11,11に対して後退(
図10の矢印(1)の方向と反対方向に移動)すると、ピニオン202、上下動中継ギア203及びリフトギア204が上記と逆方向に回転し、クッションフレーム100は、前端かつ上限位置から後端かつ下限位置の方向に変位していく。
【0064】
本実施形態の場合、上下動中継ギア203としてウォームを採用し、リフトギア204としてウォームホイールを採用している。従って、ウォームギア機構のセルフロック機能が作用するため、クッションフレーム100を含むシートクッション側からの入力が、ウォームホイールからなるリフトギア204を介してウォームからなる上下動中継ギア203を回転させることなく、スライダ10,10への力の伝達が阻止される。このため、スライダ10,10のロック機構13,13のロック解除時において、弾性部材26の弾性による意図しない作動を防ぐことができる。
【0065】
なお、本実施形態における電動機構50の構成も上記第1の実施形態と同様である。すなわち、
図11では、電動機構50として、モータ51を用い、その駆動軸51aがピニオン202の回転軸に連結された構成である。従って、モータ51が通電状態では、電動モードで使用できる一方、非通電状態では、アッパーレール12,12を手動で前後動させることができる。なお、非通電常態で手動で前後動させる際、モータ51の駆動軸51a側が回転して、それによって発生する電磁力によりピニオン202の回転、アッパーレール12,12の移動を抑制することができる。この点は上記実施形態においてクラッチ53を採用していない
図1〜
図4に示した態様と同様である。
【0066】
図12は、電動機構50として、ギアボックス51bが一体となったギヤードモータの構成からなるモータ51を用いる場合の構成を示し、
図13は、電動機構50として、モータ51及びギアボックス51bに加え、さらにクラッチ53を有して構成したものであり、その作用、効果は、上記第1の実施形態における
図4及び
図5に示した態様と同様である。
【0067】
なお、上記第1及び第2の実施形態の場合、クッションフレーム100を含むシートクッションの前後位置調整、高さ調整、及び座面角度調整を、スライダ10,10のロック機構13,13のロック解除操作という単一の操作で連動して行うことができるものであるが、電動モード及び手動モードを併有できる構成を有するパワーシートスライド装置は、リフタとの連動機構を有しない前後位置調整機構のみ、すなわち、アッパーレール12,12がロアレール11,11に対して前後動させる場合のみに適用できることはもちろんである。
【0068】
図14〜
図16は、本発明の第3の実施形態を示した図であり、この実施形態では、ロアレール11,11が乗物のフロアに、前端が高く後端が低くなるような傾斜角をもって配設されている例を示したものである。なお、上記各実施形態のスライド制御機構20,200では前後位置調整機構と上下位置調整機構とが連動しているが、これらが連動しているか否かは任意であり、本実施形態のスライド制御機構2000は前後位置調整機構としてのみ機能し、上下位置調整機構とは独立して構成されている。そのため、前後位置調整機構用のモータ51とは別に、上下位置調整機構用のモータ510、チルト角調整機構用のモータ520を有している。
【0069】
本実施形態のスライド制御機構2000において、ラック2100が一方のロアレール11に設けられていることは上記各実施形態と同様であるが、本実施形態では、ラック2100に、
図15(a)に示したように、その長手方向に延びる長孔2110が形成されている。そして、その長孔2110の上縁に歯2111が刻設されている。すなわち、ラック2100の歯2111は上記実施形態と異なり、下向きに形成されている。
【0070】
ラック2100は、断面略L字状に形成され、ロアレール11の側面に取り付けられている。より具体的には、略L字状に形成されているため、長孔2110が形成されている面とロアレール11の側面には隙間2112があり、ピニオン2200は長孔2110に挿入されて歯2111に噛み合うように配設される。
【0071】
モータ51にはギアボックス51bが付設されており、その出力軸にピニオン2200が取り付けられており、モータ51の回転に伴ってピニオン2200が回転する。
【0072】
本実施形態では、
図15(b)に示したように、操作レバー1300が、ロック機構13の解除部材13bの軸部13aに連結されており、操作レバー1300を操作すると、解除部材13bが回動してロックの解除がなされるようになっている。このとき、操作レバー1300には、同じく軸部13aを中心として回動して、操作レバー1300と同期して動くスイッチレバー1310が配設されている。ロアレール11の側面におけるスイッチレバー1310に対応する位置には、モータ51をON・OFF制御するスライドスイッチ1320が設けられており、スイッチレバー1310が上下に回動するとスライドスイッチ1320がON・OFFされる。
【0073】
本実施形態では、操作レバー1300がロック機構13のロック状態の位置である場合に、スイッチレバー1310がスライドスイッチ1320をOFF状態で保つ位置にあるように設定され、操作レバー1300を上下に動作させると、いずれの方向でもロック機構13のロックが解除され、かつ、スイッチレバー1310がそれに伴って上下に動作すると、いずれの方向でもスライドスイッチ1320がONになって、モータ51が駆動するようになっている。本実施形態では、操作レバー1300及びスイッチレバー1310を上方へ動作させるとアッパーレール12をロアレール11に対して後退させる方向にモータ51が回転駆動し、操作レバー1300及びスイッチレバー1310を下方へ動作させるとアッパーレール12をロアレール11に対して前進させる方向にモータ51が回転駆動するように設定している。もちろん、これはあくまで一例であり、逆の設定であってもよい。
【0074】
ここで、エンジンオフ時のような非通電状態では、非ロック時おいてもモータ51はOFFのままなので、手動で操作できることは上記実施形態と同様である。但し、非通電時おける手動調整が可能になるように、ギアボックス51bの各ギアのギア比の設定を調整して手動時のトルクを抑えるようにすると、スライダ10,10のロアレール11,11が、フロアに所定の傾斜角を有して前端が後端よりも高く設置されている場合には、上記したように、電動モードでは、シート重量と人の荷重がかかるため、前進時に対して後退時の作動速度が速くなってしまうという問題がある。そこで、本実施形態においては、ギア比を抑えた場合でも、電動モードにおける前進時及び後退時の作動速度をほぼ同じにできる制御回路1330によってモータ51を制御するようにしている。
【0075】
この制御回路1330は、
図16(a)に示したように、乗物の電源1340とモータ51との間に設けられる整流素子であるダイオード1331と抵抗1332との並列回路から構成され、かつ、モータ51を経由した電流がダイオード1331に流れる場合に順方向バイアスとなるように設定され、この制御回路1330への電流の流れる方向が上記スライドスイッチ1320により切り替えられる。
【0076】
本実施形態では、操作レバー1300を下方向に動作させると、スライドスイッチ1320がモータ51を一方向に回転させるようにスイッチングする。このとき、
図16(b)の矢印に示したように、制御回路1330よりもモータ51側に先に電流が流れるように切り替わる。モータ51に先に電流が流れると、順方向バイアスとなるためダイオード1331を経由して電流が流れ、所定の電流値で前進動作する。
【0077】
一方、操作レバー1300を上方向に動作させると、スライドスイッチ1320がモータ51を他方向に回転させるようにスイッチングする。このとき、
図16(c)の矢印に示したように、先に制御回路1330側に電流が流れる。そのため、ダイオード1331は逆方向バイアスとなり、電流は抵抗1332を流れ、その後、モータ51に供給される。従って、後退時には電流値が下がり作動速度が遅くなる。これにより、後端よりも前端が高い位置となるような傾斜角がついている場合、後退時にはシート重量と人の重量がかかって作動速度が速くなろうとするが、上記した制御回路1330により、後退方向への電流供給が制御されるため、結果的に、前進、後退の作動速度をほぼ同一に安定化させることができる。
【0078】
図17〜
図21は、本発明の第4の実施形態の要部を示した図である。本実施形態では、新規構造のクラッチ530を採用したことに特徴を有する。クラッチ530は、上記第1の実施形態の
図5に示したクラッチ53と同様に、モータ51側からは、正逆いずれの方向でもその回転力をピニオン22側に伝達するが、非通電状態である手動モードにおいては、ピニオン22側からの回転力(逆入力トルク)をモータ51側に伝達させない構造を有している。
【0079】
クラッチ530は、
図17に示したように、入力側にモータ51の駆動軸51aが連結され連結され、出力側にピニオン22が連結される。具体的には、クラッチ530は、
図18に示したように、入力側回転力伝達部材531と出力側回転力伝達部材532を備えている。
【0080】
入力側回転伝達部材531は、カム5311と、複数個、本実施形態では2個のプレート5312,5312とを備えてなる。カム5311は、板状に形成されており、平面視の外形では略楕円状に形成されている。そして、その中心を貫通し、内周面に回り止め用の2つの平坦面を有する嵌合孔5311aが形成され、この嵌合孔5311aが、モータ51の駆動軸51aの先端側に形成された平坦面511bの部分に嵌合されている。従って、モータ51の駆動軸51aが正逆いずれかの方向に回転すると、カム5311も回転する。
【0081】
カム5311は、長軸方向に対向する外周面にカム側テーパ面5311b,5311bが形成されている。カム側テーパ面5311bは、略楕円状のカム5311の長軸方向に対向した周面に、平面視で谷型の溝状に形成されている。
【0082】
2個のプレート5312,5312は、カム5311と同様に板状部材から構成され、本実施形態では、カム5311の長軸を挟んで配置される。プレート5312,5312の外周面は、略円弧状に形成され、かつ、入力側歯部5312a,5312aが刻設されている。一方、各プレート5312,5312の内周面には、本実施形態では平面視で山型のプレート側テーパ面5312b,5312bが形成されている。山型のプレート側テーパ面5312b,5312bは、カム5311の谷型のカム側テーパ面5311b,5311bに、斜面同士が対面可能に形成されている。
【0083】
このように形成されているため、カム5311のカム側テーパ面5311b,5311bの溝の底部5311cと、各プレート5312,5312のプレート側テーパ面5312b,5312bの頂部5312cとが真っ直ぐ対向している位置関係において、両者は最も深く嵌合している状態となり、一方のプレート5312の外周面に形成された入力側歯部5312aと、他方のプレート5312の外周面に形成された入力側歯部5312aとの距離が、最短になっている状態である。従って、この状態からカム5311が左右いずれかに僅かでも回転すると、対向する入力側歯部5312a,5312a間の距離が長くなる。すなわち、カム5311の左右いずれの方向でも、その回転によって、プレート5312,5312が径方向に変位する。
【0084】
また、カム5311及びプレート5312,5312における、軸方向の前後、すなわち、カム5311及びプレート5312,5312を挟んだ両方向に、リテーナ部材5313,5313が配設されており、この一組のリテーナ部材5313,5313間において各プレート5312,5312が径方向に変位可能に保持される。なお、符号5314は、一方のリテーナ部材5313と、カム5311及びプレート5312,5312との間に配設されるスペーサーであり、符号5315は、後述の出力側回転伝達部材532の内面との間に配設されるプッシュナットである。
【0085】
モータ51の駆動軸51aは、中途に大径部511aを有し、それよりも軸方向先端側(ピニオン22側)の周面に上記したように回り止め用の平坦面511bが形成されている。そして、この回り止め用の平坦面511bが形成された部分の周囲に、一方のリテーナ部材5313、カム5311の嵌合孔5311a、スペーサー5314及び他方のリテーナ部材5313が装着され、プッシュナット5315により、大径部511aと出力側回転伝達部材532との間で保持されている。
【0086】
また、入力側回転伝達部材531は、プレート5312,5312の径方向の変位をガイドする一対のガイド片5316a,5316aが一方の面に立設されたプレートガイド部材5316を有している。一対のガイド片5316a,5316aは、
図20に示したように、カム5311の外径以上の位置で略半円状に形成されており、両者の隙間に各プレート5312,5312が位置するように配設される。これにより、各プレート5312,5312の側面が一対のガイド片5316a,5316aの端縁に規制されて径方向にガイドされる。
【0087】
符号533は、取り付け用ブラケットであり、その略中央部には貫通孔533aが形成されている。この取り付け用ブラケット533のモータ51側に位置する面には、上記したプレートガイド部材5316が配置され、そのガイド片5316a,5316aが貫通孔533aを通じて反対面側に突出するように設けられ、この取り付け用ブラケット533の反対面側に上記のカム5311、プレート5312,5312等が配置される。
【0088】
プレートガイド部材5316は、取り付け用ブラケット533のモータ51側に位置する面に固定される固定板536との間に、ワッシャー534、ウェーブワッシャー535を介して固定配置される。プレートガイド部材5316の略中央部には軸挿通孔5316bが形成されており、駆動軸51aの大径部511aが該軸挿通孔5316bに位置するように挿通配置される。駆動軸51aの大径部511aよりも軸方向後端側(モータ51側)は、固定板536の軸挿通孔536aを通過して、ワッシャー537、プッシュナット538により位置決めされ、回転可能に取り付けられる。
【0089】
入力側回転伝達部材531はさらに、2個一対のプレート5312,5312同士を径方向に近接する方向に付勢する付勢部材5317を有している。すなわち、付勢部材5317は、略半環状に曲成された線材からなるバネであり、その両端部に、内周面側から外周面側に膨出する形状の係合部5317a,5317aが形成されている。この係合部5317a,5317aは、各プレート5312,5312の一面に突出させたピン5312d,5312dに係合する。付勢部材5317は、拡径させてから係合部5317a,5317aをピン5312d,5312dに係合され、それにより、付勢部材5317は、その反力によって2個一対のプレート5312,5312同士を常時径方向に近接する方向に付勢する。
【0090】
出力側回転伝達部材532は、内周面に、上記入力側歯部5312a,5312aに噛合可能な出力側歯部5321aを備えた環状部5321と、該環状部5321の一方側に一体に形成された断面略凹状の収容部5322とを有する。収容部5322の端壁には軸受け孔5322aが貫通形成されている。本実施形態では、出力側回転伝達部材532としてインターナルギアを用いており、その内歯を出力側歯部5321aとして用いている。
【0091】
入力側回転伝達部材531は、カム5311及びプレート5312,5312とが環状部5321に対応する位置となるように配置され、それにより、入力側歯部5312a,5312aが出力側歯部5321aに噛合可能となる一方、常時は、付勢部材5317の弾性力により、入力側歯部5312a,5312aは出力側歯部から離間している。また、入力側回転伝達部材531のリテーナ部材5313、プッシュナット5315等は収容部5322内に収容され、駆動軸51aの先端部511cが軸受け孔5322aを貫通して、抜け止め用のワッシャー539により支持される。
【0092】
出力側回転伝達部材532は、ロアレール11に取り付けられるラック21に噛合するピニオン22にその回転力が伝達されるように設けられるが、本実施形態では、出力側回転伝達部材532の環状部5321の外周面に外歯を設け、この外歯自体をラック21に噛合するピニオン22としている。もちろん、外歯自体をピニオン22とすることはあくまで一例であり、外歯に他の歯車等を組み合わせて適宜のギア比に調整して、出力側回転伝達部材532とは独立した部材からなるピニオン22に回転力が伝達するように設けることももちろん可能である。
【0093】
ここで、アッパーレール12に取り付ける際には、
図17に示したように、アッパーレール取り付けブラケット15の貫通孔15aから先端部511cを挿通し、その反対面側でワッシャー539を連結して配置される。それにより、出力側回転伝達部材532の環状部5321(
図18参照)の外歯であるピニオン22はラック21に噛み合う。
【0094】
また、アッパーレール取り付けブラケット15の下部であって、ラック21の歯21aが形成されていない面(本実施形態では、下面21d)に当接可能な位置にローラや摺動部材等からなるガイド部材15bが設けられている。従って、ラック21はピニオン22とガイド部材15bに挟まれる。そのため、アッパーレール12がロアレール11に対して前後にスライドする際、ガイド部材15bがラック21の下面21dに当接しながら移動するため、ピニオン22とラック21との間のガタつきが抑制され、ピニオン22の動きが滑らかになり異音の発生も抑制される。
【0095】
また、ラック21は、一端21bがロアレール11に固定された固定端となっており、他端21cはロアレール11に固定されていない自由端となっている。これにより、ラック21,ピニオン22等の製品間の寸法バラツキを吸収して、安定した動作を可能とし、動作時の異音発生の抑制にも寄与する。なお、この点は、後述するリフタの連動機構を設けた構成でも同様である(
図22参照)。
【0096】
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、非通電時においては、モータ51の駆動軸51aの回転力が作用しないため、
図21(a)に示したように、付勢部材5317により、2個一対のプレート5312,5312同士が常時径方向に近接する方向に付勢され、カム5311の谷型のカム側テーパ面5311b,5311bに接しているプレート側テーパ面5312b,5312bは、プレート側テーパ面5312a,5312aの頂部5312c,5312cがカム側テーパ面5311b,5311bの溝の底部5311c,6311cに対向する位置関係になっている。従って、一方のプレート5312の外周面に形成された入力側歯部5312aと、他方のプレート5312の外周面に形成された入力側歯部5312aとの径方向に沿った距離が最短になり、各入力側歯部5312a,5312aが出力側回転伝達部材532の出力側歯部5321aに噛み合っていない状態である。
【0097】
一方、通電時においてロックが解除され、モータ51側からの回転力が正逆いずれの方向でも作用すると、駆動軸51aが回転する。駆動軸51aが回転すると、カム5311が回転する。カム5311が左右いずれかに僅かでも回転すると、カム側テーパ面5311b,5311bに接しているプレート側テーパ面5312b,5312bが、カム側テーパ面5311b,5311bに沿って外周側に押され、各プレート5312,5312がプレートガイド部材5316のガイド片5316a,5316aに案内されて外周側に向かって移動し、各入力側歯部5312a,5312a間の距離が長くなる。その結果、
図21(b)に示したように、各入力側歯部5312a,5312aは出力側回転伝達部材532の出力側歯部5321aに噛合する。
【0098】
入力側歯部5312a,5312aが出力側回転伝達部材532の出力側歯部5321aに噛合すると、出力側回転伝達部材532が回転する。出力側回転伝達部材532は、上記のようにピニオン22にその回転力が伝達されるように接続されているため、本実施形態では、出力側回転伝達部材532に形成した外歯をピニオン22としているため、出力側回転伝達部材532の回転に伴ってピニオン22が回転する。ピニオン22はラック21と噛合しているため、上記各実施形態と同様に、その回転方向に従って電動モードでアッパーレール12がロアレール11に対して前後動する。
【0099】
非通電時になると、モータ51の回転力が作用しないが、付勢部材5317は上記のように常時プレート5312,5312同士が径方向に近接する方向に付勢しているため、モータの51の回転力が作用しない状態では、各プレート5312,5312は、
図21(a)の位置関係に戻り、入力側歯部5312a,5312aが出力側歯部5321aに噛合しない状態となる。
【0100】
この状態でロックを解除してアッパーレール12側を前後動させると、そのトルク(逆入力トルク)は、ピニオン22(本実施形態では出力側回転伝達部材532の外歯)を回転させ、それに伴って出力側回転伝達部材532を回転させる。しかし、
図21(a)に示したように、出力側回転伝達部材532の内周面に形成された出力側歯部5321aがプレート5312,5312の入力側歯部5312a,5312aに噛み合っていないため、出力側回転伝達部材532は空転し、入力側回転伝達部材531を介して連結されたモータ51の駆動軸51aには逆入力トルクは伝達されずに遮断される。従って、非通電時においてモータ51に負荷をかけることなく手動操作でアッパーレール12をロアレール11に対して前後動させることができる。
【0101】
本実施形態のクラッチ530は、このように入力側からのトルクは伝達するが、出力側からの逆入力トルクは伝達せずに遮断するものである。このような逆入力トルクの遮断クラッチとしては、例えば、特開2003−120715号公報に示されているように、入力外輪と出力内輪との間に配設されるローラと、このローラを保持する保持器と、保持器の位置決めを行うセンタリングばね等を有した構造のものが一般的である。すなわち、入力外輪の内周面には、ローラの可動範囲における中央位置から正逆両回転方向に対称に縮小するくさび隙間を形成するカム面が設けられ、ローラがこのくさび隙間の中央に位置している際には、ローラと出力内輪との間に隙間があるため、出力内輪は自由に回転でき、出力側からの逆入力トルクは入力外輪に伝達されないモードとなる。一方、入力外輪を回転させると、保持器が回転しセンタリングばねが押し縮められると共に、このセンタリングばねの弾性力に抗して、ローラがくさび隙間の狭い方向に移動してくい込み、入力外輪に入力された回転トルクはローラを介して出力内輪に伝達されるモードとなる。そして、入力外輪の回転動作が停止すると、センタリングばねの復元力によりローラはくさび隙間の中央位置に復元する。
【0102】
しかし、特開2003−120715号公報に示されているようなローラの円周方向のくい込みによる摩擦抵抗を利用する構造の場合、くさび隙間へのローラのくい込み量が変わると、摩擦抵抗が変化する。ローラのくい込み量は入力側の軸回転速度に依存するため、入力側の軸回転速度が速い場合には遅い場合よりもくい込み量は大きくなる。上記のように、ローラは、センタリングばねの弾性力に抗してくさび隙間を移動してくい込むため、入力側の速い軸回転速度に合わせたセンタリングばねを用いて位置決めすることが一般であるが、そのように位置決めした状態で、入力側の軸回転速度が遅い場合には、センタリングばねのばね力が強く、ローラのくい込み量が小さくなり、入力側のトルクが出力側に円滑に伝達されない場合がある。その結果、入力側の回転トルクを伝達するモードと、出力側の回転トルクを遮断するモードとの間で切り替えた際に動きが安定しない場合がある。
【0103】
これに対し、本実施形態のクラッチ530は、ローラの回転方向のくい込みを利用するものではなく、プレート5312,5312の径方向の動きによって、入力側歯部5312a,5312aと出力側歯部5321aとの噛合状態又は非噛合状態を制御する。従って、入力側の軸回転速度に依存することがなく、入力側の回転トルクを伝達するモードと、出力側からの逆入力トルクを遮断するモードで切り替えた場合の応答が迅速で安定した動作が可能である。
【0104】
本実施形態では、クラッチ530をパワーシートスライド装置1に適用しているが、入力側からの回転トルクを伝達でき、出力側からの逆入力トルクを遮断する必要のある種々の構造に適用できる。例えば、上記の特開2003−120715号公報に示された電動アシスト型の台車に適用すれば、前進後退時には入力側であるモータ駆動によって動作させ、モータの停止時には、モータに出力側からのトルクが伝達されず、手動で台車を動かすことができる。
【0105】
また、本実施形態では、プレート5312,5312の外周面に入力側歯部5312a,5312aを設け、出力側回転伝達部材532の内周面に出力側歯部5321aを設け、プレート5312,5312を拡径方向にスライドさせると両者が噛み合う構成であるが、入力側回転伝達部材531及び出力側回転伝達部材532の形状や構造によっては、例えば、逆方向(縮径方向)にスライドさせると入力側歯部と出力側歯部が噛合状態となり、拡径方向にスライドさせると非噛合状態となるような構成とすることも可能である。
【0106】
図22は、第4の実施形態のスライド制御機構に、上記各実施形態と同様にリフタの連動機構を設けた構成例を示している。すなわち、上下動中継ギア2030として、ピニオン22に噛み合う平歯車2031と、平歯車2031の回転に伴って回転するウォーム2032を配置し、リフトギア2040としてウォーム2031に噛み合うウォームホイールを設けた構成である。ウォームホイールからなるリフトギア2040には上記実施形態と同様にクッションフレームを上下動させるリンク機構が連結されている。従って、上記各実施形態と同様に、前後のスライド調整の際にピニオン22が回転すると、その回転力は、上下動中継ギア2030を介してリフトギア2040を回転させ、前後のスライド調整に連動してクッションフレームが上下動することになる。
【0107】
図17及び
図21に示した例では、クラッチ530を構成する出力側回転伝達部材532の環状部5321(
図18参照)の外周面に外歯を設け、この外歯自体をラック21に噛合するピニオン22として用いている。つまり、ピニオン22に出力側回転伝達部材532の回転力が直接伝達される構成としている。モータ51の回転が遅い場合にはこのような構成でもよいが、モータ51として、所定以上の高速回転するものを用いた場合には、減速機構を介してピニオン22と連結することが好ましい。例えば、
図23に示したように、アッパーレール取り付けブラケット15に連結する際に、出力側回転伝達部材532を構成するインターナルギアに固定される動力ギア5325を介在させ、この動力ギア5325に噛み合う大径の平歯車からなるアイドルギア5326を配置し、このアイドルギア5326にピニオン22を噛み合わせてモータ51の回転力を減速して伝達する構成とすることができる。
【0108】
図23の態様では、ピニオン22が、アイドルギア5326及びラック21の両方に噛合している。そのため、ピニオン22にはアイドルギア5326によってラック21の歯21aに押し付けられる方向の力が付与される。しかも、ラック21の下面21dにはガイド部材15bが当接している。そのため、ピニオン22とラック21と間のガタつきが
図17及び
図21に示した態様よりもさらに抑制されることになり、ピニオン22の回転動作がより円滑になって異音のさらなる軽減に寄与できる。
【0109】
(実験例)
第4の実施形態のうち
図23に示した態様のパワーシートスライド装置1について駆動時の異音に関する実験を行った。この実験は、本出願人が特願2012−274105として提案している検査方法によるもので、パワーシートスライド装置1に振動センサを取り付け、該振動センサの検出信号を解析して異音の有無を判定する。特願2012−274105及びその後のさらなる研究により、官能評価で「異音有り」と認められたパワーシートスライド装置は、振動センサの検出信号を周波数解析したところ、官能評価で「異音無し」と認められたものと比較して、200〜500Hz前後の所定の周波数帯域の振動スペクトルが特に高く現れることがわかっている。
【0110】
そこで、クラッチ530が取り付けられるアッパーレール取り付けブラケット15(
図17参照)に振動センサを取り付け、アッパーレール12をロアレール11に対して電動モードで前後に駆動して異音の有無を判定した。結果を
図24及び
図25に示す。
【0111】
図24及び
図25において、「本品」は、
図23に示した態様のアッパーレール12に支持されるクッションフレームに784Nの錘を載せて測定したデータであり、「比較品」は、従来のパワーシートスライド装置に同じ錘を載せて測定したデータである。
図23に示した態様のクッションフレーム(「本品」)が、ラック21及びピニオン22を採用してスライドスクリューを用いず、また、ラック21をピニオン22とガイド部材15bとによって挟み、さらに、ピニオン22をアイドルギア5326とラック21との両者に噛み合わせて配置し、しかも、モータ51の駆動軸51bにクラッチ530を介して接続してピニオン22を回転させる構造である。これに対し、「比較品」は、スライドスクリューを用いると共に、ピニオンに減速ギアを噛み合わせ、この減速ギアにケーブルを介してモータの回転力を伝達する構造である。
【0112】
ここで、「比較品閾値」のデータは、
図25に示したように、「比較品」の中で、官能評価において「異音無し」と判定されたパワーシートスライド装置(「比較品OK」)と、「異音有り」と判定されたパワーシートスライド装置(「比較品NG」)との間に設定した閾値であり、全体として、特に200〜500Hz前後の振動スペクトルにおいて「比較品閾値」を下回っていれば、「異音無し」の良品と判定できる。
【0113】
そこで、
図23に示した態様のクッションフレーム(「本品」)を「比較品閾値」と比較すると、
図24に示したように、特に200〜500Hzの周波数帯域において、前進及び後進共に「比較品閾値」を明らかに下回っている。このことから、
図23に示した態様によれば、ピニオン22がラック21に対して上下に不規則に動くことが極めて少なくなり、その結果、上下の不規則な動きにより発生するいわゆるたたき音などが抑制され、上記した構造が異音対策に効果的であることがわかる。なお、
図24の「本品」のデータ中、前進時は750Hz近傍、後進時は800Hz近傍に高いピークの振動スペクトルが出現しているが、これはモータ内部の軸の回転(この実験で用いたものは93.26回転/秒)でローターが8溝であるため、その8倍の約746Hz(後進時は動きが速くなるため高めになる)の振動を検出したものである。つまり、前後動作時のおけるラック21及びピニオン22間の隙間を要因として発生する音等を捉えたものではなく、異音評価の対象外の振動成分である。
【0114】
なお、従来、リフタとして、いわゆるブレーキドラム式のロック機構を採用したものが知られている。これは、ドラムにコイルスプリングを拡縮してその摩擦を利用するものである。そのため、走行中の振動等によってクッションフレーム側から荷重が入ると、ロック解除方向にドラムが回転してクッションフレームの位置が徐々に低下していくという問題がある。しかし、第4の実施形態に係るクラッチ530は、上記したように、プレート5312,5312の径方向の動きによって、該プレート5312,5312の外周面に形成した入力側歯部5312a,5312aと、出力側回転伝達部材532の内周面に形成した出力側歯部5321aとの噛合状態又は非噛合状態を制御する。従って、上記のクラッチ530をリフタに組み込んでロック機構として応用すれば、走行中の振動等によってリフタの駆動部がロック解除方向に回転することがなくなり、クッションフレームの位置が徐々に低下するという問題を解消できる。