特許第6168974号(P6168974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168974
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】巻網漁船に使用する網捌き機
(51)【国際特許分類】
   A01K 75/00 20060101AFI20170713BHJP
   A01K 73/06 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   A01K75/00 M
   A01K73/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-243981(P2013-243981)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-100321(P2015-100321A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391009604
【氏名又は名称】マリンハイドロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】西島 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢一郎
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−061562(JP,A)
【文献】 実開昭49−105693(JP,U)
【文献】 特開平05−328881(JP,A)
【文献】 特開2013−034397(JP,A)
【文献】 特開昭53−007494(JP,A)
【文献】 特開昭53−069193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 69/00−81/06
A01K 91/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り金具と、軸心を合わせて対向配置され前記吊り金具に吊り下げられる第1、第2の外側部材と、該第1、第2の外側部材のそれぞれ内側に回転可能に設けられ、それぞれ円形の第1、第2の内側部材と、前記第1、第2の内側部材を連結する連結部材と、前記第1、第2の内側部材を回転駆動する回転駆動手段とを有し、前記第1、第2の内側部材の内側壁はその間隔が半径方向外側に向けて徐々に拡幅する巻網漁船で使用される網捌き機において、
1)前記連結部材は、前記第1、第2の内側部材の軸心に配置され、回転力伝達領域が断面非円形となった主軸と、該主軸の軸心を中心とする円周上に隙間を有して平行配置された複数のガイド軸とを有し、
2)前記主軸及び前記複数のガイド軸の一側は前記第2の内側部材に固定され、前記主軸及び前記複数のガイド軸の他側は平行状態を維持しながら前記第1の内側部材を挿通し、
3)前記回転駆動手段は、前記第1の外側部材に配置されて、前記第1の内側部材に歯車機構を介して回転動力を伝え、更に、前記第1の内側部材から前記主軸を介して前記第2の内側部材に回転動力を伝え、
4)前記第1、第2の外側部材は、該第1の外側部材に固定されている水平拡縮手段によって、前記第1、第2の内側部材と共に、拡縮可能となって
しかも、前記水平拡縮手段は、シリンダ本体側が前記第1の外側部材に、ロッドA側が第3の軸受ユニットを介して前記主軸に連結される対となって平行配置された油圧シリンダを有していることを特徴とする網捌き機。
【請求項2】
請求項記載の網捌き機において、前記主軸の他側は、前記第3の軸受ユニットによって回転自由に支持され、該第3の軸受ユニットは、前記第1の外側部材に一端が固定される対となって平行配置されたロッドに沿って移動可能となっていることを特徴とする網捌き機。
【請求項3】
吊り金具と、軸心を合わせて対向配置され前記吊り金具に吊り下げられる第1、第2の外側部材と、該第1、第2の外側部材のそれぞれ内側に回転可能に設けられ、それぞれ円形の第1、第2の内側部材と、前記第1、第2の内側部材を連結する連結部材と、前記第1、第2の内側部材を回転駆動する回転駆動手段とを有し、前記第1、第2の内側部材の内側壁はその間隔が半径方向外側に向けて徐々に拡幅する巻網漁船で使用される網捌き機において、
1)前記連結部材は、前記第1、第2の内側部材の軸心に配置され、回転力伝達領域が断面非円形となった主軸と、該主軸の軸心を中心とする円周上に隙間を有して平行配置された複数のガイド軸とを有し、
2)前記主軸及び前記複数のガイド軸の一側は前記第2の内側部材に固定され、前記主軸及び前記複数のガイド軸の他側は平行状態を維持しながら前記第1の内側部材を挿通し、
3)前記回転駆動手段は、前記第1の外側部材に配置されて、前記第1の内側部材に歯車機構を介して回転動力を伝え、更に、前記第1の内側部材から前記主軸を介して前記第2の内側部材に回転動力を伝え、
4)前記第1、第2の外側部材は、該第1の外側部材に固定されている水平拡縮手段によって、前記第1、第2の内側部材と共に、拡縮可能となって
しかも、前記ガイド軸は隙間を有して4〜12本配置され、その幅が前記水平拡縮手段によって、拡縮できるドラム底部を形成することを特徴とする網捌き機。
【請求項4】
吊り金具と、軸心を合わせて対向配置され前記吊り金具に吊り下げられる第1、第2の外側部材と、該第1、第2の外側部材のそれぞれ内側に回転可能に設けられ、それぞれ円形の第1、第2の内側部材と、前記第1、第2の内側部材を連結する連結部材と、前記第1、第2の内側部材を回転駆動する回転駆動手段とを有し、前記第1、第2の内側部材の内側壁はその間隔が半径方向外側に向けて徐々に拡幅する巻網漁船で使用される網捌き機において、
1)前記連結部材は、前記第1、第2の内側部材の軸心に配置され、回転力伝達領域が断面非円形となった主軸と、該主軸の軸心を中心とする円周上に隙間を有して平行配置された複数のガイド軸とを有し、
2)前記主軸及び前記複数のガイド軸の一側は前記第2の内側部材に固定され、前記主軸及び前記複数のガイド軸の他側は平行状態を維持しながら前記第1の内側部材を挿通し、
3)前記回転駆動手段は、前記第1の外側部材に配置されて、前記第1の内側部材に歯車機構を介して回転動力を伝え、更に、前記第1の内側部材から前記主軸を介して前記第2の内側部材に回転動力を伝え、
4)前記第1、第2の外側部材は、該第1の外側部材に固定されている水平拡縮手段によって、前記第1、第2の内側部材と共に、拡縮可能となって
しかも、前記主軸の一側は、前記第2の外側部材に第2の軸受ユニットを介して回転自由に設けられて、前記主軸の他側は、該主軸の非円形部に係合して水平方向に移動可能な円筒状の第1のボスに、前記第1の外側部材に設けられている第1の軸受ユニットを介して回転可能に支持されていることを特徴とする網捌き機。
【請求項5】
請求項記載の網捌き機において、前記主軸の一側の非円形部には前記第2の内側部材の第2のボスが固定され、前記主軸の他側の非円形部には前記第1の内側部材の前記第1のボスが水平移動可能に設けられていることを特徴とする網捌き機。
【請求項6】
請求項記載の網捌き機において、前記第1のボスと前記第2のボスを伸縮可能に連結するカバー筒が設けられ、内部の油のリークを防止していることを特徴とする網捌き機。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1記載の網捌き機において、前記吊り金具の一側には前記第2の外側部材の上吊り部が固定され、前記吊り金具の他側には、前記第1の外側部材の上吊り部が左右方向に移動可能に取付けられていることを特徴とする網捌き機。
【請求項8】
請求項記載の網捌き機において、前記第2の外側部材の上吊り部は、前記吊り金具に対して分離可能に取付けられていることを特徴とする網捌き機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻網漁船のマスト等に取付けて使用され、例えば、揚網機によって引き上げた漁網を整理して網台等に収める網捌き機に関する。
【背景技術】
【0002】
巻網漁船においては、揚網効率を上げるために、特許文献1に記載のように、円筒ローラを使用した揚網機が使用されている。この円筒ローラを使用した揚網機では、網はローラに平らに巻き付けられるので、捩じれることもなく揚網効率は向上した。
そこで、従来の揚網機で巻き上げられた網は、網捌き機を通過し、下方の網台に積み重ねられるが、その際、揚網機から出てくる網を、網捌き機の巻き上げ力によって適度に引く必要性から、例えば特許文献2、3に記載のように、網捌き機にV型ドラムを使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−90605号公報
【特許文献2】特開2007−29007号公報
【特許文献3】特開2008−67683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2、3記載の網捌き機においては、V形状のドラムの幅は狭く一定であるので、網がV型ドラム内に束状に締め込まれることになり、この束状となった網を多数(8〜9名)の船員の手で広げて、整列(網捌き)積みをする重労働は今だに解消されていない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、網捌き機のV型ドラムのドラム側壁間を拡縮することで、網に掛かる荷重を適度に調整することができる網捌き機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る網捌き機は、吊り金具と、軸心を合わせて対向配置され前記吊り金具に吊り下げられる第1、第2の外側部材と、該第1、第2の外側部材のそれぞれ内側に回転可能に設けられ、それぞれ円形の第1、第2の内側部材と、前記第1、第2の内側部材を連結する連結部材と、前記第1、第2の内側部材を回転駆動する回転駆動手段とを有し、前記第1、第2の内側部材の内側壁(ドラム側壁)はその間隔が半径方向外側に向けて徐々に拡幅する巻網漁船で使用される網捌き機において、
1)前記連結部材は、前記第1、第2の内側部材の軸心に配置され、回転力伝達領域が断面非円形となった主軸と、該主軸の軸心を中心とする円周上に隙間を有して平行配置された複数のガイド軸とを有し、
2)前記主軸及び前記複数のガイド軸の一側は前記第2の内側部材に固定され、前記主軸及び前記複数のガイド軸の他側は平行状態を維持しながら前記第1の内側部材を挿通し、
3)前記回転駆動手段は、前記第1の外側部材に配置されて、前記第1の内側部材に歯車機構を介して回転動力を伝え、更に、前記第1の内側部材から前記主軸を介して前記第2の内側部材に回転動力を伝え、
4)前記第1、第2の外側部材は、該第1の外側部材に固定されている水平拡縮手段によって、前記第1、第2の内側部材と共に、拡縮可能となって
しかも、前記水平拡縮手段は、シリンダ本体側が前記第1の外側部材に、ロッドA側が第3の軸受ユニットを介して前記主軸に連結される対となって平行配置された油圧シリンダを有している。
【0007】
【0008】
の発明に係る網捌き機は、第の発明に係る網捌き機において、前記主軸の他側は、前記第3の軸受ユニットによって回転自由に支持され、該第3の軸受ユニットは、前記第1の外側部材に一端が固定される対となって平行配置されたロッドに沿って移動可能となっている。
【0009】
の発明に係る網捌き機は、吊り金具と、軸心を合わせて対向配置され前記吊り金具に吊り下げられる第1、第2の外側部材と、該第1、第2の外側部材のそれぞれ内側に回転可能に設けられ、それぞれ円形の第1、第2の内側部材と、前記第1、第2の内側部材を連結する連結部材と、前記第1、第2の内側部材を回転駆動する回転駆動手段とを有し、前記第1、第2の内側部材の内側壁はその間隔が半径方向外側に向けて徐々に拡幅する巻網漁船で使用される網捌き機において、
1)前記連結部材は、前記第1、第2の内側部材の軸心に配置され、回転力伝達領域が断面非円形となった主軸と、該主軸の軸心を中心とする円周上に隙間を有して平行配置された複数のガイド軸とを有し、
2)前記主軸及び前記複数のガイド軸の一側は前記第2の内側部材に固定され、前記主軸及び前記複数のガイド軸の他側は平行状態を維持しながら前記第1の内側部材を挿通し、
3)前記回転駆動手段は、前記第1の外側部材に配置されて、前記第1の内側部材に歯車機構を介して回転動力を伝え、更に、前記第1の内側部材から前記主軸を介して前記第2の内側部材に回転動力を伝え、
4)前記第1、第2の外側部材は、該第1の外側部材に固定されている水平拡縮手段によって、前記第1、第2の内側部材と共に、拡縮可能となって、
しかも、前記ガイド軸は隙間を有して4〜12本配置され、その幅が前記水平拡縮手段によって、拡縮できるドラム底部を形成する。
【0010】
の発明に係る網捌き機は、吊り金具と、軸心を合わせて対向配置され前記吊り金具に吊り下げられる第1、第2の外側部材と、該第1、第2の外側部材のそれぞれ内側に回転可能に設けられ、それぞれ円形の第1、第2の内側部材と、前記第1、第2の内側部材を連結する連結部材と、前記第1、第2の内側部材を回転駆動する回転駆動手段とを有し、前記第1、第2の内側部材の内側壁はその間隔が半径方向外側に向けて徐々に拡幅する巻網漁船で使用される網捌き機において、
1)前記連結部材は、前記第1、第2の内側部材の軸心に配置され、回転力伝達領域が断面非円形となった主軸と、該主軸の軸心を中心とする円周上に隙間を有して平行配置された複数のガイド軸とを有し、
2)前記主軸及び前記複数のガイド軸の一側は前記第2の内側部材に固定され、前記主軸及び前記複数のガイド軸の他側は平行状態を維持しながら前記第1の内側部材を挿通し、
3)前記回転駆動手段は、前記第1の外側部材に配置されて、前記第1の内側部材に歯車機構を介して回転動力を伝え、更に、前記第1の内側部材から前記主軸を介して前記第2の内側部材に回転動力を伝え、
4)前記第1、第2の外側部材は、該第1の外側部材に固定されている水平拡縮手段によって、前記第1、第2の内側部材と共に、拡縮可能となって、
しかも、前記主軸の一側は、前記第2の外側部材に第2の軸受ユニットを介して回転自由に設けられて、前記主軸の他側は、該主軸の非円形部に係合して水平方向に移動可能な円筒状の第1のボスに、前記第1の外側部材に設けられている第1の軸受ユニットを介して回転可能に支持されている。
【0011】
の発明に係る網捌き機は、第の発明に係る網捌き機において、前記主軸の一側の非円形部には前記第2の内側部材の第2のボスが固定され、前記主軸の他側の非円形部には前記第1の内側部材の前記第1のボスが水平移動可能に設けられている。
【0012】
の発明に係る網捌き機は、第の発明に係る網捌き機において、前記第1のボスと前記第2のボスを伸縮可能に連結するカバー筒が設けられ、内部の油のリークを防止している。
【0013】
の発明に係る網捌き機は、第1〜第の発明に係る網捌き機において、前記吊り金具の一側には前記第2の外側部材の上吊り部が固定され、前記吊り金具の他側には、前記第1の外側部材の上吊り部が左右方向に移動可能に取付けられている。
【0014】
そして、第の発明に係る網捌き機は、第の発明に係る網捌き機において、前記第2の外側部材の上吊り部は、前記吊り金具に対して分離可能に取付けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、第1の外側部材の内側に配置された第1の内側部材と、第2の外側部材の内側に配置された第2の内側部材とによって構成されるドラム側壁の内幅が拡大、縮小可能であるので、漁網の締め付け力を変えることができる。
従って、ドラム側壁の幅を広げる場合は、漁網はドラム側壁内で束状に締め込まれることが緩和され、網捌き機の下方に向かって漁網を拡げ易くなる。
これによって、船員の作業が減少し、より省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る網捌き機を示し、(A)はドラム側壁を閉じた状態、(B)はドラム側壁を開いた状態を示す。
図2】ドラム側壁を閉じた状態の同網捌き機の内部構造を示す一部省略正面図である。
図3】ドラム側壁を開いた状態の同網捌き機の内部構造を示す一部省略正面図である。
図4】同網捌き機の側面図である。
図5】同網捌き機の内部構造を示す一部省略平面図である。
図6】(A)、(B)はそれぞれ使用状態の網捌き機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る網捌き機10は、主要部材がステンレス等の海水によって腐食しない金属及び非金属材料からなって、巻網漁船のマスト等に吊り下げて使用される吊り金具11と、軸心を合わせて対向配置され吊り金具11に吊り下げられる第1、第2の外側部材13、14と、第1、第2の外側部材13、14のそれぞれ内側に回転可能に設けられ、それぞれ円形の第1、第2の内側部材15、16とを有している。第1、第2の内側部材15、16は、連結部材18を介して対向配置して連結されている。
【0018】
対向配置された第1、第2の内側部材15、16は、その水平間隔が半径方向外側に拡幅するドラム側壁(内側壁、側フランジ)20、21を形成している。この第1、第2の内側部材15、16を有して形成される網捌き機本体10a(通常、「V型ドラム」と称される)はボビン状となって、ドラム側壁20、21の内側断面は逆台形状となった円周溝22を形成している。
第1、第2の内側部材15、16は側面視して円形となって、その軸心位置には主軸23が配置され、その周囲には隙間を有して、均等配置された複数(この実施の形態では6本、4〜12本程度が好ましい)のガイド軸24によって連結されている。なお、この平行配置された複数本のガイド軸24及び主軸23を有して第1、第2の内側部材15、16を連結する連結部材18が形成されている。
【0019】
図1(A)、(B)に示すように、第1、第2の内側部材15、16は、小径環状部25、26と大径環状部27、28と、これらを連結する円錐台部材29、30を有し、円錐台部材29、30の内側には放射状にゴム材31、32が設けられて、これらがドラム側壁20、21を構成している。
【0020】
図1図4に示すように、第1の外側部材13及び第2の外側部材14の上部には支持部(上吊り部の一例)34、35を有している。支持部34の上部は吊り金具11に設けられた水平方向に長い長孔36にローラピン37を介して取付けられ、支持部34全体が水平移動可能となっている。また、支持部35の上部は吊り金具11に設けられた固定孔38にピン39を介して取付けられている。これによって、第1の外側部材13と第2の外側部材14の間隔が拡大又は縮小すると、ローラピン37が長孔36内を移動し、第1の外側部材13と第2の外側部材14の平行状態を維持したまま、幅変更ができる。
【0021】
図4に示すように、ローラピン37はボルトナットを介して支持部34に取付けられている。なお、第1、第2の内側部材15、16は、第1、第2の外側部材13、14に連結されているので、第1、第2の外側部材13、14の動きに応じて第1、第2の内側部材15、16も平行移動する。
図1(A)、(B)に示すように、吊り金具11は、補助金具41、42を介して例えば、巻網漁船のマストの先部又は中間部に水平方向に自在に傾動可能に取付けられる。
【0022】
次に、図2図3を参照しながら、第1、第2の外側部材13、14及び第1、第2の内側部材15、16の拡縮機構について詳細に説明する。
第1、第2の内側部材15、16を貫通する主軸23の一側端部(円柱部44)は、第2の軸受ユニット43を介して第2の外側部材14に取付けられている。軸受ユニット43は内部に2つのベアリングを有し主軸23を水平移動をさせない状態で回転自由に支持している。
【0023】
主軸23の円柱部44の内側の回転力伝達領域には断面非円形となった角柱部(非円形部)46が設けられ、第2の内側部材16の小径環状部26が止め板部材47を介して固定されている。止め板部材47は中央に角孔ボス(第2のボスの一例)48を有し、主軸23に対して水平移動及び回転しないようにして固定されている。これによって、第2の内側部材16は主軸23と一体となって回転する。
【0024】
止め板部材47の円板部49には、主軸23を中心にして円周上の等角度で6本のガイド軸24の一端が固定されている(図6(A)、(B)参照)。
このガイド軸24の他端側は第1の内側部材15の小径環状部25に対してブッシュを介して摺動移動可能に設けられて、他端側が小径環状部25に保持され、平行状態を保って、前記した円周溝22を形成している。
【0025】
主軸23の回転力伝達領域にある断面非円形の角柱部(非円形部)50に水平移動可能な角孔ボス(第1のボスの一例)51が装着されて、角孔ボス51の外側は断面円形となって、第1の外側部材13に固定されるハウジング53に装着された対となるベアリング52によって、主軸23が回転自由に支持されている。なお、ハウジング53及びベアリング52を有して第1の軸受ユニット54が形成されている。また、角孔ボス51の片側は、第1の内側部材15の小径環状部25に固定されて、第1の内側部材15の回転力が主軸23に伝達される構造となっている。
【0026】
そして、主軸23の他側は、第1の外側部材13の外側から他方に突出し、かつ断面円形の軸となって、第3の軸受ユニット55によって回転自由に支持されている。第3の軸受ユニット55にはガイド板56が設けられ、第1の外側部材13に一側が固定されている水平状態に平行配置されたロッド58、59に摺動移動可能に支持されている。図5に示すように、主軸23の他側が第3の軸受ユニット55に回転可能に支持され、かつロッド58、59に摺動可能に支持されている。
【0027】
ここで、図3図5に示すように、角柱部46、50は円柱の0度、90度、180度、270度位置を部分的に平面としたもので、軸対称な4平面と4円弧面とを有している。なお、角柱部46、50の断面形状は同一となっている。
【0028】
図4図5に示すように、主軸23の前後方向両側には同期して動く油圧シリンダ60、61(水平拡縮手段の一例を構成)が隙間を有して平行配置されて主軸23に連結されている。この油圧シリンダ60、61はシリンダ本体62、63側が第1の外側部材13に固定され、ロッド64、65側が中間部材66を介して第3の軸受ユニット55に接続されている。これによって、油圧シリンダ60、61を伸ばすと、第1の外側部材13が動き、第2の外側部材14に近づくように移動する。また、油圧シリンダ60、61を縮めると、第1の外側部材13が第2の外側部材14から遠ざかる方向に移動する。なお、図1図2において、68はカバーを示し、基部が第1の外側部材13に固定されている。
【0029】
第1の外側部材13に対して、第1の軸受ユニット54が設けられ、第1の軸受ユニット54は角孔ボス51を介して主軸23に水平移動可能に設けられている。角孔ボス51は、断面内側が主軸23の角柱部50の外側形状より僅少の範囲で大きく、断面外側はベアリング52の内側孔と一致する大きさとなっている。
角孔ボス51にはフランジ板67が設けられ、第1の内側部材15の小径環状部25にねじ固定されている。これによって、第1の内側部材15と第1の外側部材13の水平方向の位置が決まり、かつ固定状態の第1の外側部材13に対して第1の内側部材15が回転可能に設けられている。
【0030】
第1の外側部材13の上側には出力軸に小歯車70を備えた油圧モータ71(回転駆動手段の一例)が固定配置され、第1の内側部材15の外周部内側に設けられた内歯車72に小歯車70が噛み合い、第1の内側部材15が回転駆動される構造となっている。第1の内側部材15が回転すると、小径環状部25、角孔ボス51、主軸23を回転し、更に第2の内側部材16を回転駆動している。なお、内歯車72と小歯車70で歯車機構を構成している。
【0031】
前記した複数本のガイド軸24によって、この網捌き機本体10aの拡縮できる溝底(ドラム底部)が形成されるが、中間部に配置される主軸23が露出しているので、潤滑油やグリス等の漏洩が生じ海洋汚染の問題が発生する。
そこで、この実施の形態においては、図3に示すように、カバー筒77〜79を設けて、第1の内側部材15の小径環状部25に固定された角孔ボス51と第2の内側部材16の小径環状部26に固定された角孔ボス48とを伸縮可能に連結している。
【0032】
カバー筒77の一端は小径環状部26にシール状態で摺動移動可能に設けられ、カバー筒79の他端は小径環状部25にシール状態で摺動移動可能に設けられ、カバー筒78の両端はそれぞれカバー筒77、79にシール状態で嵌入して、カバー筒77〜79の全体がシール状態で内部の主軸23を覆う構造となって、内部の油のリークを防止している。なお、カバー筒78の長さ方向中央位置には、円形フランジ板80が設けられ、複数のガイド軸24の中間部を支持している。
【0033】
第1、第2の外側部材13、14は側面視して下側の円弧状部82と上側の台形状部83が一体的に組み合わさり、周囲に補強体84、85が設けられ、更に底部に脚部86がそれぞれ設けられている。
【0034】
第2の外側部材14の上端は吊り金具11にピン39を介して取付けられているがピン39を外すと、第2の外側部材14を吊り金具11から外すことができ、網捌き機本体10aの上側に空間ができるので、漁網90の出し入れができる。
なお、このピン39が不用意に外れると危険であるので、ピン39の抜け止め機構87が設けられている。この抜け止め機構87は、ピン39の一部に嵌入するハンドル付き固定板88と、このハンドル付き固定板88の動きを止めるストッパーピン89とを有している。
【0035】
続いて、この網捌き機10の動作及び作用について説明する。なお、油圧モータ71及び油圧シリンダ60、61には、図示しないバルブを介して圧油が供給可能となっている。また、網捌き機10は巻網漁船のマストに補助金具41、42を介して吊り下げられている。
第1、第2の内側部材15、16を図1(A)に示すように近づける場合は油圧シリンダ60、61を伸ばす。この場合、油圧シリンダ60、61の駆動力は、ピストンの面積×油圧となるので、油圧シリンダ60、61が縮む場合より大きな力を得ることができる。これによって、第1の内側部材15及び第1の外側部材13が主軸23に沿って移動し、網捌き機本体10aの第1、第2の内側部材15、16の幅が最小となる。
【0036】
次にこの網捌き機本体10aの第1、第2の内側部材15、16の幅を拡げる場合は、油圧シリンダ60、61を縮める。この時、第1の外側部材13の上端に設けられているローラピン37は長孔36内を移動するので、第1の外側部材13及び第1の内側部材15は、主軸23に対して直角状態を保ちながら平行移動する。
【0037】
油圧モータ71に油を一定方向から供給すると、油圧モータ71の出力軸に設けられている小歯車70は回転し、内歯車72を回転させ、第1の内側部材15を回転駆動する。
第1の内側部材15は第2の内側部材16と主軸23(特に角柱部46、50)を介して連結されているので、第2の内側部材16も回転し、複数本のガイド軸24も回転する。なお、第1、第2の外側部材13、14は回転しない。
【0038】
以上の状態で網捌き機本体10aの動作を、図6(A)、(B)に示すが、(A)は図1(A)に示すように、第1、第2の内側部材15、16の幅を狭くした状態で、漁網90の厚みが厚くなっており、(B)では、第1、第2の内側部材15、16の幅を広くした状態で、漁網90が溝底上に広がって薄くなっている。以上の動作は操業中でも可能である。
【0039】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、この実施の形態においては、水平拡縮手段として油圧シリンダ60、61を用いていたが、ボールねじとナット等のねじ駆動手段を用いることもできる。
【符号の説明】
【0040】
10:網捌き機、10a:網捌き機本体、11:吊り金具、13:第1の外側部材、14:第2の外側部材、15:第1の内側部材、16:第2の内側部材、18:連結部材、20、21:ドラム側壁、22:円周溝、23:主軸、24:ガイド軸、25、26:小径環状部、27、28:大径環状部、29、30:円錐台部、31、32:ゴム材、34、35:支持部、36:長孔、37:ローラピン、38:固定孔、39:ピン、41、42:補助金具、43:第2の軸受ユニット、44:円柱部、46:角柱部、47:止め板部材、48:角孔ボス、49:円板部、50:角柱部、51:角孔ボス、52:ベアリング、53:ハウジング、54:第1の軸受ユニット、55:第3の軸受ユニット、56:ガイド板、58、59:ロッド、60、61:油圧シリンダ、62、63:シリンダ本体、64、65:ロッド、66:中間部材、67:フランジ板、68:カバー、70:小歯車、71:油圧モータ、72:内歯車、77〜79:カバー筒、80:円形フランジ板、82:円弧状部、83:台形状部、84、85:補強体、86:脚部、87:抜け止め機構、88:ハンドル付きの固定板、89:ストッパーピン、90:漁網
図1
図2
図3
図4
図5
図6