(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168983
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】LED・UV乾燥機の温度を監視する装置
(51)【国際特許分類】
B41F 23/04 20060101AFI20170713BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B41F23/04 B
B41J2/01 129
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-263713(P2013-263713)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-121876(P2014-121876A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年8月16日
(31)【優先権主張番号】10 2012 025 006.1
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ミュラー
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−104115(JP,A)
【文献】
特開2005−235959(JP,A)
【文献】
特開2000−081816(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3151132(JP,U)
【文献】
国際公開第2011/031529(WO,A2)
【文献】
特開2009−208463(JP,A)
【文献】
米国特許第4563589(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 23/04
B41J 2/01−215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDのアセンブリを備え、
前記複数のLEDは、UV光を放射するものであり、かつハウジング内に配置されており、
前記ハウジングの出射窓は、UV光線透過性のカバーを有する、
UVインキ又は塗料を硬化する装置であって、
前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられていることを特徴とする、UVインキ又は塗料を硬化する装置。
【請求項2】
前記透過性のカバー(24)の温度差を把握するための、相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つの温度センサ(26,27;31,32,33)が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記温度センサ(26,27;31,32,33)は、目標値・実際値比較を実行するための評価ユニット(28)に接続されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記温度センサ(26,27)は、前記透過性のカバー(24)に接触して配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記温度センサ(31,32,33)は、非接触式に測定するように、前記透過性のカバー(24)から間隔を置いて配置されている、請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記複数のLED(21)と前記透過性のカバー(24)との間の光線路に、UV光線を集束するための第1の光学系(22)及び第2の光学系(23)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載のLED・UV乾燥機(14)を備える枚葉輪転印刷機。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載のLED・UV乾燥機(14)を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項9】
LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって、
相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサ(21)が、前記カバー(24)の温度を、前記カバー(24)に接触することにより又は非接触式に測定し、
温度測定値を評価ユニット(28)に供給し、
そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し、
所定の値からのずれが生じると、汚れを表示する信号を出力する、
ことを特徴とする、LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法。
【請求項10】
LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって、
相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサ(21)が、前記カバー(24)の温度を、前記カバー(24)に接触することにより又は非接触式に測定し、
温度測定値を評価ユニット(28)に供給し、
そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し、
より大きなずれが生じると、LED・UV乾燥機のオフを行う、
ことを特徴とする、LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED・UV乾燥機の温度を監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED・UV乾燥機は、例えば、UVインキ又は塗料を硬化するために、シート、又は金属製もしくはプラスチック製の三次元的な構成要素に単色又は多色の印刷又は文字入れを行うためのインクジェットプリンタや輪転印刷機にも使用される。
【0003】
独国特許出願公開第102009007873号明細書において、例えば印刷機においてUV光硬化可能なインキを硬化するためのLED乾燥機が公知である。このLED乾燥機では、被印刷物の搬送方向に対して横向きに複数の列を成して幾つかのLEDが支持体に配置されている。
【0004】
国際公開第2011/031529号において、汚れ及び破損に対して防護するために複数のLEDをハウジング、つまりLED・UVモジュール内に配置して、ハウジングに、出射するUV光線の領域に透過性のカバーを設けることが公知である。
【0005】
実地において、透過性のカバーが、例えば塵埃、蒸気又はインキミストにより汚される問題が生じる。このような汚れは、UV光の吸収を招き、ひいては透過性のカバーの加熱のばらつきを招く。これにより、一方では光線強度の弱化が生じ、他方では加熱のばらつきによるストレスクラックに基づく透過性のカバーの破損が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009007873号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/031529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、所定の汚れ度合いに達した汚れが認識可能である方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、複数のLEDのアセンブリを備え、複数のLEDは、UV光を放射するものであり、かつハウジング内に配置されており、ハウジングの出射窓は、UV光線透過性のカバーを有する、UVインキ又は塗料を硬化する装置であって、透過性のカバーの温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられている。
【0009】
好適には、透過性のカバーの温度差を把握するための、相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つの温度センサが設けられている。
【0010】
好適には、温度センサは、目標値・実際値比較を実行するための評価ユニットに接続されている。
【0011】
好適には、温度センサは、透過性のカバーに接触して配置されている。
【0012】
好適には、温度センサは、非接触式に測定するように、透過性のカバーから間隔を置いて配置されている。
【0013】
好適には、複数のLEDと透過性のカバーとの間の光線路に、UV光線を集束するための第1の光学系及び第2の光学系が配置されている。
【0014】
LED・UV乾燥機を備える枚葉輪転印刷機が好適である。
【0015】
LED・UV乾燥機を備えるインクジェットプリンタが好適である。
【0016】
この課題を解決するための本発明の方法によれば、LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって、相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが、カバーの温度を、カバーに接触することにより又は非接触式に測定し、温度測定値を評価ユニットに供給し、そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し、所定の値からのずれが生じると、汚れを表示する信号を出力する。
【0017】
この課題を解決するための本発明の方法によれば、LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって、相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが、カバーの温度を、カバーに接触することにより又は非接触式に測定し、温度測定値を評価ユニットに供給し、そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し、より大きなずれが生じると、LED・UV乾燥機のオフを行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明の格別な利点は、LEDの照射範囲における透過性のカバーの加熱が検知可能であることにある。なぜならば、UV光が「低温」であるにもかかわらず、透過性のカバー上の汚れが、UV光の吸収を招き、ひいては温度上昇、特にカバーの様々な位置の間で温度差を招くからである。温度の検知又は把握により、一方では汚れの度合いを特定することができ、他方では温度差に基づくカバー、例えばガラス板の破損を回避することができる。
【0019】
温度差を特定するために、相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つの温度センサが、カバーの温度を把握し、その情報を評価ユニットに伝送する。評価ユニットは、目標値−実際値比較に基づいて、カバーをクリーニングするための相応の信号を出力し、第2のステップで、LEDをオフするための信号を出力する。
【0020】
温度センサは、カバーに直に配置するか、又は非接触式に測定するためにLEDとカバーとの間の空間内でカバーから間隔を置いて配置してよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】別のLED・UV乾燥機の概略断面図である。
【
図4】
図3のLED・UV乾燥機のLED列の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明の実施の形態を、図示の2つの態様につき詳説する。
【0023】
シート7を処理する機械、例えば印刷機1は、フィーダ2と少なくとも1つの印刷ユニット3,4とデリバリ6とを備える。シート7は、パイル8から取り出されて、個別化されるか又はさしみ状にずれ重なった状態でフィーダボード9を介して印刷ユニット3,4に供給される。印刷ユニット3,4は、公知の形で、それぞれ1本の版胴11,12を備える。版胴11,12は、それぞれ柔軟な刷版を固定する装置を備える。更に各版胴11,12に対応して、半自動又は全自動式の刷版交換のための装置が配置されている。
【0024】
パイル8は、制御して昇降可能な主紙積み台10を備える。シート7の取出しは、パイル8の上側からいわゆるサクションヘッド13を用いて行われ、サクションヘッド13は、とりわけ、シート7を個別化するための幾つかの持上げサッカと運び出しサッカとを備える。更に上側のシート層をさばくための吹出し装置及びパイルを後方で案内するための接触要素が設けられている。パイル8、特にパイル8の上側のシート7を揃えるために、幾つかの側方及び後方のストッパが設けられている。
【0025】
UV硬化性のインキで印刷を行う際に、被印刷物、例えばシート、金属製もしくはプラスチック製のフォイル等へのインキの転写箇所の下流側にLED・UV乾燥機14が設けられている。この場合、被印刷物は、シート状に構成されていても、三次元的に構成されていてもよい。LED・UV乾燥機14は、印刷されたばかりの印刷像への照射により、インキの硬化を促進する。もちろん印刷像は、インクジェットプリンタにより形成してもよい。
【0026】
図1による態様では、枚葉輪転印刷機1は、幾つかのLED・UV乾燥機14を備える。LED・UV乾燥機14は、設けられた所定の圧胴16,17に対して小さな間隔を置いて配置されていて、かつ/又はデリバリ6の領域において、搬出されるべきシート用の搬送路の上側に配置されている。
【0027】
LED・UV乾燥機14は、ハウジング18を備える。ハウジング18は、シート搬送方向に対して横向きに配置されている。ハウジング18は、冷却ユニット19を備え、冷却ユニット19に、複数の列を成して配置された、UV光を放出する複数のLED21が設けられている。LED21の光線路に、第1の光学系22が設けられていて、第1の光学系21から間隔を置いて第2の光学系23が設けられている。ハウジング18からの光線出射面で、ハウジング18は、透過性のカバー24により閉じられている。
【0028】
相互に間隔を置いた2箇所で、温度センサ26,27が、カバー24に接触して配置されている。温度センサ26,27は、評価ユニット28に接続されている。
【0029】
評価ユニット28は、検知された温度値又は検知された温度差を用いて、目標値・実際値比較を実行し、所定の許容値の超過が生じると、第1のステップで、カバー24をクリーニングするための信号を出力し、所定のより大きなずれが生じると、第2のステップで、例えば電流/電圧供給のオフによる、LED21をオフするための信号を出力する。
【0030】
図3による第2の態様では、複数の温度センサ31〜33が設けられている。温度センサ31〜33は、複数のLED列21の間に配置されていて、非接触式にハウジング18内の温度を測定する。非接触式に測定されたそれぞれ異なる温度に基づいて、透過性のカバー24の汚れを推測することができる。評価は、同様に評価ユニット28を用いて行われる。
【符号の説明】
【0031】
1 印刷機
2 フィーダ
3 印刷ユニット
4 印刷ユニット
6 デリバリ
7 シート
8 パイル
9 フィーダボード
10 主紙積み台
11 版胴
12 版胴
13 サクションヘッド
14 LED・UV乾燥機
16 圧胴
17 圧胴
18 ハウジング
19 冷却ユニット
21 LED
22 第1の光学系
23 第2の光学系
24 透過性のカバー
26 温度センサ
27 温度センサ
28 評価ユニット
31 温度センサ
32 温度センサ
33 温度センサ