特許第6168984号(P6168984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168984
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】シリコンウェーハ用研磨液組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170713BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20170713BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20170713BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550Z
   C09G1/02
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-265491(P2013-265491)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-122411(P2015-122411A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三浦 穣史
(72)【発明者】
【氏名】松井 芳明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑樹
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−222863(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/157554(WO,A1)
【文献】 特開2010−010167(JP,A)
【文献】 特開2009−035701(JP,A)
【文献】 特開平10−022241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09G 1/02
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子と、含窒素塩基性化合物と、下記式(1)で表される構成単位Iと下記式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体とを含むシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化1】
但し、前記式(2)中、nはエチレンオキシ基の平均付加モル数であり、2〜100の数である。
【請求項2】
前記共重合体における前記式(1)で表される構成単位Iと前記式(2)で表される構成単位IIとの質量比(構成単位Iの質量/構成単位IIの質量)が、50/50以上99/1以下である、請求項1に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項3】
前記共重合体の重量平均分子量が、50,000以上1,000,000以下である請求項1又は2に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項4】
前記共重合体の含有量が、0.001質量%以上0.1質量%以下である請求項1〜3のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項5】
前記シリカ粒子の含有量と前記共重合体の含有量の比(前記シリカ粒子の含有量/前記共重合体の含有量)が、2.5以上250以下である、請求項1〜4のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む、シリコンウェーハの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンウェーハ用研磨液組成物及びこれを用いた半導体基板の製造方法並びにシリコンウェーハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体メモリの高記録容量化に対する要求の高まりから半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このため半導体装置の製造過程で行われるフォトリソグラフィーにおいて焦点深度は浅くなり、シリコンウェーハ(ベアウェーハ)の欠陥低減や平滑性に対する要求はますます厳しくなっている。
【0003】
シリコンウェーハの品質を向上する目的で、シリコンウェーハの研磨は多段階で行われている。特に研磨の最終段階で行われる仕上げ研磨は、表面粗さ(ヘイズ)の抑制と研磨後のシリコンウェーハ表面のぬれ性向上(親水化)によるパーティクルやスクラッチ、ピット等の表面欠陥(LPD:Light point defects)の抑制とを目的として行われている。
【0004】
仕上げ研磨に用いられる研磨液組成物としては、コロイダルシリカ、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びポリエチレンオキサイド(PEO)を用いた化学的機械研磨用の研磨液組成物(特許文献1)、コロイダルシリカ、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びノニオン活性剤を含む研磨液組成物(特許文献2)、コロイダルシリカ、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びポリエチレングリコール含む研磨液組成物(特許文献3)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を含む研磨液組成物(特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004―128089号公報
【特許文献2】特開2011―181765号公報
【特許文献3】特開2012―79964号公報
【特許文献4】特開2013−222863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、HECを用いる研磨液組成物は、HECが天然物であるセルロースを原料としているため、セルロース由来の水不溶物が含まれ、当該水不溶物が核となってシリカ粒子が凝集しやすい。そして、シリカ粒子の凝集体や当該水不溶物自体の存在によって、表面欠陥(LPD)の増大を生じさせる場合がある。
【0007】
また、特許文献1の研磨液組成物では、表面粗さ(ヘイズ)の低減を目的としてポリエチレンオキサイド(PEO)が、特許文献2の研磨液組成物では、表面粗さ(ヘイズ)及びLPD低減を目的としてオキシアルキレン重合体等のノニオン活性剤が、特許文献3の研磨液組成物では、LPD低減を目的として数平均分子量が200〜15000のポリエチレングリコールが含まれているが、いずれの研磨液組成物によっても、LPDと表面粗さ(ヘイズ)の双方を十分に低い値にすることができない。
【0008】
そこで、本発明では、従来のシリコンウェーハ用研磨液組成物よりも、研磨されたシリコンウェーハについて、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立を可能とする、シリコンウェーハ用研磨液組成物、及び当該シリコンウェーハ用研磨液組成物を用いた半導体基板の製造方法、並びにシリコンウェーハの研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシリコンウェーハ用研磨液組成物は、下記成分A〜Cを含む。
成分A:シリカ粒子
成分B:含窒素塩基性化合物
成分C:下記式(1)で表される構成単位Iと、下記式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体
【化1】
但し、前記式(2)中、nは、エチレンオキシ基の平均付加モル数であり、2〜100の数である。
【0010】
本発明の半導体基板の製造方法は、本発明のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む。
【0011】
本発明シリコンウェーハの研磨方法は、本発明のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、研磨されたシリコンウェーハについて、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立を可能とする、シリコンウェーハ用研磨液組成物、及び当該シリコンウェーハ用研磨液組成物を用いた半導体基板の製造方法、並びにシリコンウェーハの研磨方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、上記式(1)で表される構成単位Iと上記式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体がシリコンウェーハ用研磨液組成物(以下、「研磨液組成物」と略称する場合もある。)に含まれることにより、研磨液組成物で研磨されたシリコンウェーハの表面(研磨面)における表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減とを両立できる、という知見に基づく。
【0014】
研磨液組成物で研磨されたシリコンウェーハの表面(研磨面)における表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減とを両立できるという、本発明の効果の発現機構の詳細は明らかではないが、出願人は、以下のように推定している。
【0015】
本発明では、上記式(1)で表される構成単位Iと上記式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体(以下「共重合体(成分C)」と略称する場合もある。)を含み、構成単位I中に、シリカ粒子と相互作用する部位であるアミド基と、シリコンウェーハと相互作用する部位である水酸基の両方を含み、構成単位IIに、シリカ粒子とシリコンウェーハの両方と相互作用するエチレンオキシ基を含む。そのため、前記共重合体がシリコンウェーハ表面に適度に吸着して含窒素塩基性化合物によるウェーハ表面の腐食、即ち、表面粗さ(ヘイズ)の上昇を抑制するとともに、良好なぬれ性を発現し、ウェーハ表面の乾燥により生じると考えられるウェーハ表面へのパーティクルの付着を抑制する。また、本発明の研磨液組成物は、原料由来の水不溶物を含まないので、当該水不溶物が核となって生じるシリカ粒子の凝集体や当該水不溶物自体の存在に起因する、表面欠陥(LPD)の増大は生じない。更に、前記共重合体は、前記構成単位IIがエチレンオキシ基を含むので、前記共重合体のシリカ粒子に対する吸着性は高い。そのため、本発明の研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨した後に行われるシリコンウェーハの洗浄の際に、シリカ粒子に由来するパーティクルとシリコンウェーハとの間の斥力によって、シリコンウェーハに付着したパーティクルの除去が促進され、故に、表面欠陥(LPD)が低減される。
【0016】
このように、本発明では、上記式(1)で表される構成単位Iと上記式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体を含むことにより、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立が実現されているものと推定している。但し、本発明はこれらの推定に限定されるものではない。
【0017】
[シリカ粒子(成分A)]
本発明の研磨液組成物には、研磨材としてシリカ粒子が含まれる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられるが、シリコンウェーハの表面平滑性を向上させる観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
【0018】
シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状が好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれる研磨材がコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコンウェーハの汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
【0019】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上であり、更により好ましくは30nm以上である。また、表面粗さ及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、更に好ましくは40nm以下である。
【0020】
特に、シリカ粒子としてコロイダルシリカを用いた場合には、研磨速度の確保、及び表面粗さ及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、平均一次粒子径は、好ましくは5〜50nm、より好ましくは10〜45nm、更に好ましくは15〜40nm、更により好ましくは30〜40nmである。
【0021】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて算出される。比表面積は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0022】
シリカ粒子の会合度は、研磨速度の確保、及び表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、3.0以下が好ましく、1.1〜3.0がより好ましく、1.8〜2.5が更に好ましく、2.0〜2.3が更により好ましい。シリカ粒子の形状はいわゆる球型といわゆるマユ型であることが好ましい。シリカ粒子がコロイダルシリカである場合、その会合度は、研磨速度の確保、及び表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、3.0以下が好ましく、1.1〜3.0がより好ましく、1.8〜2.5が更に好ましく、2.0〜2.3が更により好ましい。
【0023】
シリカ粒子の会合度とは、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出される。平均二次粒子径は、動的光散乱法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
【0024】
シリカ粒子の会合度の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平6−254383号公報、特開平11−214338号公報、特開平11−060232号公報、特開2005−060217号公報、特開2005−060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
【0025】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、研磨速度の確保の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。また、経済性及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から10質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下が更により好ましい。
【0026】
[含窒素塩基性化合物(成分B)]
本発明の研磨液組成物は、研磨液組成物の保存安定性の向上、研磨速度の確保、及び表面粗さ及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、水溶性の塩基性化合物を含有する。水溶性の塩基性化合物としては、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物である。ここで、「水溶性」とは、水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいい、「水溶性の塩基性化合物」とは、水に溶解したとき、塩基性を示す化合物をいう。
【0027】
アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N一ジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。これらの含窒素塩基性化合物は2種以上を混合して用いてもよい。本発明の研磨液組成物に含まれ得る含窒素塩基性化合物としては、表面粗さ及び表面欠陥(LPD)の低減、研磨液組成物の保存安定性の向上、及び、研磨速度の確保の観点からアンモニアがより好ましい。
【0028】
本発明の研磨液組成物に含まれる含窒素塩基性化合物の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減、研磨液組成物の保存安定性の向上、及び研磨速度の確保の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.007質量%以上が更に好ましく、0.010質量%以上が更により好ましい。また、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が更により好ましく、0.025質量%以下が更により好ましく、0.018質量%以下が更により好ましい。
【0029】
[共重合体(成分C)]
本発明の研磨液組成物は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、下記式(1)で表される構成単位Iと、下記式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体(成分C)を含む。
【0030】
【化2】
但し、前記式(2)中、nはエチレンオキシ基(EO)の平均付加モル数であり、2〜100の数である。
【0031】
EOの平均付加モル数nは、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、2以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、同様の観点から、100以下であり、70以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0032】
共重合体(成分C)における前記式(1)で表される構成単位Iと前記式(2)で表される構成単位IIとの質量比(構成単位Iの質量/構成単位IIの質量)は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、99/1以下が好ましく、93/7以下がより好ましく、85/15以下が更に好ましく、同様の観点から、50/50以上が好ましく、55/45以上がより好ましく、65/35以上が更に好ましく、75/25以上がより更に好ましい。
【0033】
共重合体(成分C)の全構成単位中における構成単位Iの割合は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、99質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましく、研磨速度の確保の観点から、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
【0034】
共重合体(成分C)の全構成単位中における構成単位IIの割合は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、1質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0035】
共重合体(成分C)は、本発明の効果が損なわれない範囲で、構成単位I及び構成単位II以外の構成単位IIIを含んでいてもよいが、共重合体(成分C)は、実質的に構成単位Iと構成単位IIとからなると好ましく、構成単位Iと構成単位IIとからなるとより好ましい。構成単位IIIを形成する単量体成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、ビニルピロリドン、オキサゾリンなどが挙げられる。
【0036】
尚、共重合体(成分C)における、構成単位Iと構成単位IIの配列は、ブロックでもランダムでもよい。共重合体(成分C)が、構成単位IIIを含む共重合体である場合、構成単位IIIの共重合体における配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0037】
共重合体(成分C)の重量平均分子量は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、50,000以上が好ましく、150,000以上がより好ましく、200,000以上が更に好ましく、同様の観点から、1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましく、700,000以下が更に好ましい。共重合体(成分C)の重量平均分子量は後の実施例に記載の方法により測定される。
【0038】
本発明の研磨液組成物に含まれる共重合体(成分C)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上が更によりに好ましく、0.010質量%以上が更によりに好ましく、0.014質量%以上が更によりに好ましい。共重合体(成分C)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましい。
【0039】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子(成分A)と共重合体(成分C)の含有量の比(前記シリカ粒子の含有量/前記共重合体の含有量)は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、2.5以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が更に好ましく、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、250以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、20以下が更により好ましい。
【0040】
[水系媒体(成分D)]
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体(成分D)としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒との混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本発明の成分Dが、水と溶媒との混合媒体である場合、成分Dである混合媒体全体に対する水の割合は、特に限定されるわけではないが、経済性の観点から、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。
【0041】
本発明の研磨液組成物における水系媒体の含有量は、特に限定されるわけではなく、成分A〜成分C、及び、後述する任意成分の残余であってよい。
【0042】
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、研磨速度の確保の観点から、8.0〜12.0が好ましく、9.0〜11.5がより好ましく、9.5〜11.0が更に好ましい。pHの調整は、含窒素塩基性化合物(成分B)及び/又は後述するpH調整剤を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0043】
[任意成分]
本発明の研磨液組成物には、本発明の効果が妨げられない範囲で、更に水溶性高分子化合物、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び酸化剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
【0044】
〈水溶性高分子化合物〉
本発明の研磨液組成物には、表面粗さの低減の観点から、更に共重合体(成分C)以外の水溶性高分子化合物(成分E)を含有してもよい。この水溶性高分子化合物(成分E)は、親水基を有する高分子化合物であり、水溶性高分子化合物(成分E)の重量平均分子量は、研磨速度の確保、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、10,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましい。上記成分Eを構成する供給源である単量体としては、例えば、アミド基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基等の水溶性基を有する単量体が挙げられる。このような水溶性高分子化合物(成分E)としては、ポリアミド、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。ポリアミドとしては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン等が挙げられる。ポリ(N−アシルアルキレンイミン)としては、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)、ポリ(N−カプロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−ノナデゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)、ポリ(N−ブチオニルエチレンイミン)等があげられる。セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、及びカルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は任意の割合で2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
研磨液組成物中の水溶性高分子化合物の含有量は、好ましくは0.0001質量%以上、0.05質量%以下、より好ましくは、0.001質量%以上、0.02質量%以下である。
【0046】
〈pH調整剤〉
pH調整剤としては、酸性化合物等が挙げられる。酸性化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸又は安息香酸等の有機酸等が挙げられる。
【0047】
〈防腐剤〉
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、(5−クロロ−)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
【0048】
〈アルコール類〉
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2−メチル−2−プロパノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるアルコール類の含有量は、0.1〜5質量%が好ましい。
【0049】
〈キレート剤〉
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるキレート剤の含有量は、0.01〜1質量%が好ましい。
【0050】
〈カチオン性界面活性剤〉
カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。
【0051】
〈アニオン性界面活性剤〉
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0052】
〈非イオン性界面活性剤〉
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0053】
〈酸化剤〉
酸化剤としては、過マンガン酸、ペルオキソ酸等の過酸化物、クロム酸、又は硝酸、並びにこれらの塩等が挙げられる。
【0054】
尚、上記において説明した本発明の研磨液組成物中の各成分の含有量は、使用時における含有量であるが、本発明の研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストを更に低くできる点で好ましい。濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用すればよい。濃縮倍率としては、希釈した後の研磨時の濃度を確保できれば、特に限定するものではないが、製造及び輸送コストを更に低くできる観点から、2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、20倍以上が更に好ましく、30倍以上が更により好ましく、また、保存安定の観点から100倍以下が好ましく、80倍以下がより好ましく、60倍以下が更に好ましく、50倍以下が更により好ましい。
【0055】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液におけるシリカ粒子(成分A)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。また、濃縮液中におけるシリカ粒子の含有量は、保存安定性を向上させる観点から、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が更により好ましく、10質量%以下が更により好ましい。
【0056】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における共重合体(成分C)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が更により好ましく、0.1質量%以上が更により好ましい。また、濃縮液中における共重合体(成分C)の含有量は、保存安定性の向上の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更により好ましい。
【0057】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における含窒素塩基性化合物(成分B)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また、濃縮液中における含窒素塩基性化合物(成分B)の含有量は、保存安定性の向上の観点から5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0058】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、上記濃縮液の25℃におけるpHは、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好しく、また、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。
【0059】
次に、本発明の研磨液組成物の製造方法の一例について説明する。
【0060】
本発明の研磨液組成物の製造方法の一例は、何ら制限されず、例えば、シリカ粒子(成分A)と、含窒素塩基性化合物(成分B)と、共重合体(成分C)と、水系媒体(成分D)と、必要に応じて任意成分とを混合することによって調製できる。
【0061】
シリカ粒子の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。シリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去するのが好ましい。シリカ粒子の水系媒体への分散は、共重合体(成分C)の存在下で行うのが好ましい。
【0062】
本発明の研磨液組成物は、例えば、半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハを研磨する研磨工程や、シリコンウェーハを研磨する研磨工程を含むシリコンウェーハの研磨方法に用いられる。
【0063】
前記シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本発明の研磨液組成物は、上記仕上げ研磨工程で用いられるとより好ましい。
【0064】
前記半導体基板の製造方法や前記シリコンウェーハの研磨方法では、シリコンウェーハを研磨する研磨工程の前に、本発明の研磨液組成物(濃縮液)を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、水系媒体(成分D)を用いればよい。
【0065】
前記希釈工程で希釈される濃縮液は、製造及び輸送コスト低減、保存安定性の向上の観点から、例えば、成分Aを2〜40質量%、成分Bを0.02〜5質量%、成分Cを0.005〜5質量%含んでいると好ましい。
【0066】
本発明は、更に以下<1>〜<12>を開示する。
【0067】
<1> シリカ粒子と、含窒素塩基性化合物と、下記式(1)で表される構成単位Iと下記式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体とを含むシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化3】
但し、前記式(2)中、nはエチレンオキシ基の平均付加モル数であり、2〜100の数である。
<2> EOの平均付加モル数nは、2以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、100以下であり、70以下が好ましく、30以下がより好ましい、前記<1>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<3> 前記共重合体における前記式(1)で表される構成単位Iと前記式(2)で表される構成単位IIとの質量比(構成単位Iの質量/構成単位IIの質量)は、99/1以下が好ましく、93/7以下がより好ましく、85/15以下が更に好ましく、50/50以上が好ましく、55/45以上がより好ましく、65/35以上が更に好ましく、75/25以上がより更に好ましい、前記<1>又は<2>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<4> 前記共重合体の全構成単位中における前記構成単位Iの割合は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、75質量%以上が更に好ましく、99質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<5> 前記共重合体の全構成単位中における前記構成単位IIの割合は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<6> 前記共重合体の重量平均分子量が、50,000以上が好ましく、150,000以上がより好ましく、200,000以上が更に好ましく、1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましく、700,000以下が更に好ましい、前記<1>〜<5>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<7> 前記共重合体の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上が更によりに好ましく、0.010質量%以上が更によりに好ましく、0.014質量%以上が更により好ましく、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましい、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<8>前記シリカ粒子の含有量は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましく、10質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下が更により好ましい、前記<1>〜<7>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<9> 前記シリカ粒子の含有量と前記共重合体の含有量の比(前記シリカ粒子の含有量/前記共重合体の含有量)は、2.5以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が更に好ましく、250以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、20以下が更により好ましい、前記<1>〜<8>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<10> 前記シリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、更により好ましくは30nm以上であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、更に好ましくは40nm以下である、前記<1>〜<9>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<11> 前記<1>〜<10>のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
<12> 前記<1>〜<10>のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む、シリコンウェーハの研磨方法。
【実施例】
【0068】
1.重合体の合成
下記の実施例1〜12、比較例1〜5、参考例1〜4で用いた重合体は下記のようにして合成した。
【0069】
(重合体No.1)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 142.5 g(1.24 mol 興人(株)製)を95.0 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数23)「PEG(23)AE」 7.5 g(6.48 mmol)と純水267 gを投入した。撹拌を行い、PEG(23)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=95/5、重量平均分子量:780000、EOの平均付加モル数:n=23)を得た。
【0070】
(重合体No.2)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 135 g(1.17 mol 興人(株)製)を90.0 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数23)「PEG(23)AE」 15.0 g(13.0 mmol)と純水272 gを投入した。撹拌を行い、PEG(23)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=90/10、重量平均分子量:550000、EOの平均付加モル数:n=23)を得た。
【0071】
(重合体No.3)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 120 g(1.04 mol 興人(株)製)を80.0 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数23)「PEG(23)AE」 30.0 g(25.9 mmol)と純水282 gを投入した。撹拌を行い、PEG(23)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=80/20、重量平均分子量:460000、EOの平均付加モル数:n=23)を得た。
【0072】
(重合体No.4)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 105 g(0.91 mol 興人(株)製)を70.0 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数23)「PEG(23)AE」 45.0 g(38.9 mmol)と純水292 gを投入した。撹拌を行い、PEG(23)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=70/30、重量平均分子量:310000、EOの平均付加モル数:n=23)を得た。
【0073】
(重合体No.5)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 90 g(0.78 mol 興人(株)製)を60 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数23)「PEG(23)AE」 60.0 g(51.8 mmol)と純水302 gを投入した。撹拌を行い、PEG(23)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=60/40、重量平均分子量:180000、EOの平均付加モル数:n=23)を得た。
【0074】
(重合体No.6)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 120 g(1.04 mol 興人(株)製)を80.0 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数3)「PEG(3)AE」 30.0 g(107.5 mmol)と純水282 gを投入した。撹拌を行い、PEG(3)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=80/20、重量平均分子量:130000、EOの平均付加モル数:n=3)を得た。
【0075】
(重合体No.7)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 90 g(0.78 mol 興人(株)製)を60 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数40)「PEG(40)AE」 60.0 g(31.4 mmol)と純水302 gを投入した。撹拌を行い、PEG(40)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=65/35、重量平均分子量:220000、EOの平均付加モル数:n=40)を得た。
【0076】
(重合体No.8)
ヒドロキシエチルアクリルアミド「HEAA」 90 g(0.78 mol 興人(株)製)を60 gの純水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド「V−50」 0.290 g(1.07 mmol 和光純薬(株)製)を57.6 gの純水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計およびフッ素樹脂製撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数90)「PEG(90)AE」 60.0 g(14.6 mmol)と純水302 gを投入した。撹拌を行い、PEG(90)AEを純水に溶解させ、室温で窒素ガスを100ml/min. でセパラブルフラスコ内に30分吹き込み窒素置換を行った。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液を、68℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応溶液を4Lのアセトン(和光純薬(株)製 1級)に滴下し、析出した固体を回収した。得られた固体を真空下60℃で12時間乾燥させることで、HEAAとPEGAGの共重合体(質量比:構成単位I/構成単位II=67/33、重量平均分子量:310000、EOの平均付加モル数:n=90)を得た。
【0077】
(重合体No.9)
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形フッ素樹脂製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液の温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。HEAAの単独重合体(重量平均分子量:720000)を得た。
【0078】
(重合体No.10)
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形フッ素樹脂製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入た後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を75℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液の温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。HEAAの単独重合体(重量平均分子量:520000)を得た。
【0079】
(重合体No.11)
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形フッ素樹脂製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を82℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液の温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。HEAAの単独重合体(重量平均分子量:230000)を得た。
【0080】
(重合体No.12)
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.175g(重合開始剤、V-50 6.50 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形フッ素樹脂製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を75℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し、重合を行った。滴下終了後、反応溶液の温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。HEAAの単独重合体(重量平均分子量:150000)を得た。
【0081】
また、比較例1で使用したHEC及びPEGの詳細は下記のとおりである。
HEC(商品名CF-V、重量平均分子量:800000 住友精化社製)
PEG(商品名ポリエチレングリコール1000 、重量平均分子量:1000、和光純薬工業 社製)
【0082】
〈重合平均分子量の測定〉
(1)重合体No.1〜12及び比較例1で使用したHEC及びPEGの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づいて算出した。
装置:HLC-8320 GPC(東ソー株式会社、検出器一体型)
カラム:GMPWXL+GMPWXL(アニオン)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:0.5ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:ポリエチレングリコール
【0083】
<研磨材(シリカ粒子)の平均一次粒子径>
研磨材の平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
【0084】
研磨材の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0085】
[前処理]
(a)スラリー状の研磨材を硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の研磨材をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィ
ルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(砥粒)をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
【0086】
<研磨材(シリカ粒子)の平均二次粒子径>
研磨材の平均二次粒子径(nm)は、研磨材の濃度が0.25質量%となるように研磨材をイオン交換水に添加した後、得られた水溶液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて測定した。
【0087】
2.研磨液組成物の調製
(1)実施例1〜5、参考例1〜4、比較例1
(実施例1〜5、参考例1〜4)
表1に示すように、シリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径38nm、平均二次粒子径78nm、会合度2.1)、重合体、28%アンモニア水(キシダ化学(株)試薬特級)、イオン交換水を攪拌混合して、実施例1〜5、参考例1〜4の研磨液組成物(いずれも濃縮液、pH10.6±0.1(25℃))を得た。各研磨液組成物(濃縮液)中のシリカ粒子の含有量は10質量%、重合体の含有量は0.8質量%、アンモニアの含有量は0.4質量%とした。残余はイオン交換水である。
【0088】
(比較例1)
表1に示すように、シリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径38nm、平均二次粒子径78nm、会合度2.1)、HEC、PEG、28%アンモニア水(キシダ化学(株)試薬特級)、イオン交換水を攪拌混合して、比較例1の研磨液組成物(濃縮液、pH10.6±0.1(25℃))を得た。研磨液組成物(濃縮液)中のシリカ粒子の含有量は10質量%、HECの含有量は0.8質量%、PEGの含有量は0.02質量%、アンモニアの含有量は0.4質量%とした。残余はイオン交換水である。
【0089】
(2)実施例6〜8
表2に示されるように、重合体のエチレンオキシ基の平均付加モル数を変化させて、実施例6〜8の研磨液組成物を得た。実施例6〜8の研磨液組成物の調製に用いた研磨液組成物(濃縮液、pH10.6±0.1(25℃))中のシリカ粒子の含有量は10質量%、重合体の含有量は0.8質量%、アンモニアの含有量は0.4質量%とした。残余はイオン交換水である。
【0090】
(3)実施例9〜12
表3に示されるように、重合体の含有量を変化させて、実施例9〜12の研磨液組成物を得た。実施例9〜12の研磨液組成物の調製に用いた研磨液組成物(濃縮液、pH10.6±0.1(25℃))中のシリカ粒子の含有量は10質量%、アンモニアの含有量は0.4質量%とした。残余はイオン交換水である。尚、表3に記載の重合体の含有量は、イオン交換水による希釈後の値である(希釈倍率:40倍)。
【0091】
上記実施例1〜8、参考例1〜4、比較例1の研磨液組成物(濃縮液)をイオン交換水で40倍に希釈してpH10.6±0.1(25℃)の研磨液組成物を得た。希釈された実施例1〜8、参考例1〜4、比較例1の研磨液組成物中、シリカ粒子の含有量は0.25質量%、重合体の含有量は0.02質量%、アンモニアの含有量は0.01質量%である。希釈された実施例9〜12の研磨液組成物(pH10.6±0.1(25℃))中、シリカ粒子の含有量は0.25質量%、重合体の含有量は0.005、0.01、0.015、0.02、0.025質量%、アンモニアの含有量は0.01質量%である。
【0092】
3.研磨方法
研磨液組成物(濃縮液)をイオン交換水で40倍に希釈して得た研磨液組成物を研磨直前にフィルター(コンパクトカートリッジフィルター MCP−LX−C10S アドバンテック株式会社)にてろ過を行い、下記の研磨条件で下記のシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ(伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)に対して仕上げ研磨を行った。当該仕上げ研磨に先立ってシリコンウェーハに対して市販の研磨剤組成物を用いてあらかじめ粗研磨を実施した。粗研磨を終了し仕上げ研磨に供したシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)は、2.680(ppm)であった。
【0093】
<仕上げ研磨条件>
研磨機:片面8インチ研磨機GRIND-X SPP600s(岡本工作製)
研磨パッド:スエードパッド(東レ コーテックス社製 アスカー硬度64 厚さ 1.37mm ナップ長450um 開口径60um)
ウェーハ研磨圧力:100g/cm2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:10分
研磨剤組成物の供給速度:200g/cm2
研磨剤組成物の温度:20℃
キャリア回転速度:100rpm
【0094】
仕上げ研磨後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ純水をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ純水をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
【0095】
<研磨速度の測定方法>
研磨前後のシリコンウェーハの重量変化を重量計「BP-210S」(Sartorius社製)を用いて測定し、当該重量変化、シリコンウェーハ密度(2.33g/cm3)及びシリコンウェーハの研磨面積(314cm2)の値を用いて、研磨速度(nm/min)を算出した。
【0096】
<シリコンウェーハ表面の表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)の評価>
シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)(ppm)は、下記の評価条件によって求めることができる。
【0097】
洗浄後のシリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ)は、表面粗さ測定装置「Surfscan SP1」(KLA Tencor社製)を用いて測定される、暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値と、暗視野ナローノーマル入射チェンネル(DNN)での値を用いた。表面粗さに関する評価として、Haze(DWO)とHaze(DNN)の両方の測定を行ったが、Haze(DWO)は比較的短波長の表面粗さの測定に有効であり、Haze(DNN)は比較的長波長の表面粗さを測定することに向いている。そのため二種類のモードで測定することによって、幅広くシリコンウェーハの表面粗さを評価することができる。また、表面欠陥(LPD)はHaze測定時に同時に測定され、シリコンウェーハ表面上の粒径が50nm以上のパーティクル数を測定することによって評価した。表面欠陥(LPD)の評価結果は、数値が小さいほど表面欠陥が少ないことを示す。また、Haze(DWO)及びHaze(DNN)の数値は小さいほど表面の平滑性が高いことを示す。LPD及びHazeの結果を表1〜表3に示した。なお、データは参考例1のLPD及びHazeを1.00とした相対評価である。
【0098】
<濡れ性の評価>
仕上げ研磨直後のシリコンウェーハ(直径200mm)鏡面の親水化部(研磨剤で濡れている部分)の面積を目視により観察した。測定は異なるシリコンウェーハに対して行い、その平均値を下記の評価基準に従って評価して、その結果を表1〜表3に示した。
(評価基準)
A:濡れ部分面積の割合が90%以上
B:濡れ部分面積の割合が70%以上90%未満
C:濡れ部分面積の割合が50%以上70%未満
D:濡れ部分面積の割合が50%未満
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
表1〜表3に示されるように、HEAAとPEGAEの共重合体を含む実施例1〜12の研磨液組成物を用いた場合、HECとPEGとを含む比較例1の研磨液組成物を用いる場合よりも、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立が良好である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の研磨液組成物を用いれば、面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立が良好に行える。よって、本発明の研磨液組成物は、様々な半導体基板の製造過程で用いられる研磨液組成物として有用であり、なかでも、シリコンウェーハの仕上げ研磨用の研磨液組成物として有用である。