特許第6169007号(P6169007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169007
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】動翼、及び軸流回転機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/38 20060101AFI20170713BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20170713BHJP
   F04D 19/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   F04D29/38 A
   F04D29/54 D
   F04D29/54 E
   F04D19/02
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-10231(P2014-10231)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-137607(P2015-137607A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】坂元 康朗
(72)【発明者】
【氏名】濱名 寛幸
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−195495(JP,A)
【文献】 特開2000−314397(JP,A)
【文献】 特開2011−169172(JP,A)
【文献】 特開2006−322462(JP,A)
【文献】 特開2011−137463(JP,A)
【文献】 特開2013−224627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/38
F04D 29/54
F04D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と、前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持して前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通して前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出して該軸線の方向に複数列に設けられた静翼列と、前記静翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられて前記流体の圧縮又は圧送を行う動翼列と、を備える軸流回転機械に設けられ、
前記動翼列のうちの前記流体の流れの最も下流側に位置する最終動翼列を構成するとともに、互いに前記軸線の周方向に間隔をあけて複数配された動翼であって、
翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側の方が流体を高い圧力へ圧縮できるように、各動翼の翼部出口における流体の流通方向を中央部に対してハブ側及びチップ側で異ならせるために、前記各動翼における転向角が翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側大きくなっている翼部を備え動翼。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼を有する動翼列と、
前記動翼列を固定し、前記軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と、
前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持し、前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、
前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通し、前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、
前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出するとともに、前記動翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられ、列毎に前記軸線の周方向に互いに離間して設けられた静翼を有する静翼列と、
を備える軸流回転機械。
【請求項3】
前記ディフューザ部は、前記最終動翼列の上流側の端部よりも下流側で、かつ、該最終動翼列よりもさらに下流側に設けられた最終静翼列の下流側の端部よりも上流側から前記ディフューザ流路が延びるように、前記ケーシングに設けられている請求項2に記載の軸流回転機械。
【請求項4】
前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路の内面の一部が前記最終静翼列における前記静翼の一部によって形成されている請求項に記載の軸流回転機械。
【請求項5】
前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路が、前記最終静翼列の設けられた前記軸線の方向の領域に対応する第一領域と、該第一領域よりも下流側の第二領域と、該第二領域よりもさらに下流側の第三領域とに分割され、
前記第一領域よりも前記第二領域の方が流路断面積の拡大量が大きくなり、前記第二領域よりも前記第三領域の方が流路断面積の拡大量が小さくなる請求項2から4のいずれか一項に記載の軸流回転機械。
【請求項6】
前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路が、前記最終静翼列の設けられた前記軸線の方向の領域に対応する第一領域と、該第一領域よりも下流側の第二領域とに分割され、
前記第一領域よりも前記第二領域の方が流路断面積の拡大量が小さくなる請求項2からのいずれか一項に記載の軸流回転機械。
【請求項7】
前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路における前記軸線の径方向外側の内面が下流側に向かって前記径方向外側に傾斜するように流路断面積が拡大する請求項2から6のいずれか一項に記載の軸流回転機械。
【請求項8】
前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路における前記軸線の径方向内側の内面が下流側に向かって前記径方向内側に傾斜するように流路断面積が拡大する請求項に記載の軸流回転機械。
【請求項9】
前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路における前記軸線の径方向内側の内面が下流側に向かって前記径方向外側に傾斜するように前記流路断面積が拡大する請求項に記載の軸流回転機械。
【請求項10】
軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と、前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持して前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通して前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出して該軸線の方向に複数列に設けられた静翼列と、前記静翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられて前記流体の圧縮又は圧送を行う動翼列と、を備える軸流回転機械に設けられ、
前記動翼列のうちの前記流体の流れの最も下流側に位置する最終動翼列を構成するとともに、互いに前記軸線の周方向に間隔をあけて複数配され、各々の転向角が翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側の方が大きくなっている翼部を備えた動翼を有する動翼列と、
前記動翼列を固定し、前記軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持し、前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、
前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通し、前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、
前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出するとともに、前記動翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられ、列毎に前記軸線の周方向に互いに離間して設けられた静翼を有する静翼列と、
を備え、
前記ディフューザ部は、前記最終動翼列の上流側の端部よりも下流側で、かつ、該最終動翼列よりもさらに下流側に設けられた最終静翼列の下流側の端部よりも上流側から前記ディフューザ流路が延びるように、前記ケーシングに設けられており、
前記最終静翼列が第一最終静翼列と、第一最終静翼列の上流側に隣接する第二最終静翼列とからなり、前記第二最終静翼列の下流側の端部よりも上流側から前記ディフューザ流路が延びる軸流回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸流回転機械に用いられる動翼、及び、これを備えた軸流回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば軸流回転機械の一種として軸流圧縮機が知られている。この軸流回転機械では、空気等の流体を取り込み、回転軸に複数列に設けられた動翼、及びこの動翼と交互にケーシングに設けられた静翼を通過させることで流体の圧縮を行った後、ディフューザ部を通じて圧縮された流体を吐出する。
【0003】
特許文献1には、このような軸流圧縮機が設けられたガスタービンが開示されている。ガスタービンでは、軸流圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させた燃焼ガスでタービンを駆動し、回転動力を取り出すようになっている。
【0004】
ところで、軸流圧縮機のディフューザ部では、流体の流れの下流側に向かって徐々に流路断面積が拡大するようにディフューザ流路を形成し、圧縮された流体の流速を低減して圧力を回復させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−169172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ディフューザ部へ流入する流体には、ケーシング内面との間のせん断の影響によって回転軸の径方向に流速分布(圧力分布)が生じている。このため、ディフューザ流路を流体が流通する際にディフユーザ流路内面で流体の剥離が生じ易くなり、損失が生じてしまう可能性がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、ディフューザ部での損失を低減し、十分な圧力回復性能を得ることが可能な動翼、及び軸流圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明の一の態様としての動翼は、軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と、前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持して前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通して前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出して該軸線の方向に複数列に設けられた静翼列と、前記静翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられて前記流体の圧縮又は圧送を行う動翼列と、を備える軸流回転機械に設けられ、前記動翼列のうちの前記流体の流れの最も下流側に位置する最終動翼列を構成するとともに、互いに前記軸線の周方向に間隔をあけて複数配された動翼であって、翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側の方が流体を高い圧力へ圧縮できるように、各動翼の翼部出口における流体の流通方向を中央部に対してハブ側及びチップ側で異ならせるために、前記各動翼における転向角が翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側大きくなっている翼部を備える。
【0009】
このような動翼によれば、最終動翼列の動翼における翼部の転向角、即ち、翼部入口に対する流体の流通方向と翼部出口における流体の流通方向との相対角度が、翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側の方が大きくなっている。このため、最終動翼列を通過する流体はハブ側及びチップ側でより大きく流通方向が転向される。従って、動翼は、ハブ側及びチップ側で流体に対してより多くの仕事をすることになり、この位置で流体の圧縮量(又は圧送量)が多くなる。
ここで、仮に動翼における転向角が翼高さ方向に一律である場合には、流体とケーシングの流路の内面との間のせん断力の影響でハブ側及びチップ側で流体の流速が遅くなる。
この点、上述のように動翼の転向角を翼高さ方向に変化させることで、流路の内面近傍での流体の流速を増大させ、最終動翼列を通過した流体の速度(全圧)分布を、ディフューザ部の出口で、翼高さ方向、即ち軸線の径方向により均一とすることができる。この結果、ディフューザ流路内での流体の剥離を抑制することができる。
さらに、このような流体の剥離抑制によって、ディフューザ部の軸線の方向の寸法を短縮したとしても安定して圧力を回復させることができ、ディフューザ流路との間の摩擦によって生じる流体の摩擦損失の低減が可能となる。
また、流体の剥離抑制によって、ディフューザ流路の入口と出口との流路断面積の比を大きくすることも可能となり、圧力回復量を大きくすることができる
また、本発明の他の態様としての軸流回転機械は、上記の動翼を有する動翼列と、前記動翼列を固定し、前記軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と、前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持し、前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通し、前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出するとともに、前記動翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられ、列毎に前記軸線の周方向に互いに離間して設けられた静翼を有する静翼列と、を備える。
このような軸流回転機械によれば、最終動翼列に上記の動翼を有していることで、ケーシングの流路の内面近傍での流体の流速を増大させ、最終動翼列を通過した流体の速度(全圧)分布を、ディフューザ部の出口で、翼高さ方向、即ち軸線の径方向により均一とすることができる
さらに、前記ディフューザ部は、前記最終動翼列の上流側の端部よりも下流側で、かつ、該最終動翼列よりもさらに下流側に設けられた最終静翼列の下流側の端部よりも上流側から前記ディフューザ流路が延びるように、前記ケーシングに設けられていてもよい。
上記のように最終動翼列の動翼の転向角が翼高さ方向に異なっていることで、流路の内面近傍で全圧が高められた流体がディフューザ流路に流れ込むことになり、ディフューザ流路での流体の剥離は生じにくい。よって、最終動翼列が設けられた位置を含んで、この位置よりも下流側で、かつ、最終静翼列よりも上流側からディフューザ流路が始まるようにしても損失は発生しにくい。よってこのようにすることで、最終静翼列による流体の減速効果を得つつ、より早い列階から圧力回復を行うことができる。この結果、ディフューザ部の軸線の方向の寸法をさらに短縮したり、ディフューザ流路の入口と出口との流路断面積比をさらに大きくしたりすることが可能となる。
【0014】
また、前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路の内面の一部が前記最終静翼列における前記静翼の一部によって形成されていてもよい。
【0015】
このように静翼の一部がディフューザ流路の内面を形成することで、最終静翼列の下流側の端部よりも上流側からディフューザ流路を拡大したとしても、下流側に向かって拡大するディフューザ流路の内面から静翼の一部(例えばシュラウド等)がディフューザ流路に突出することがなくなる。よって、ディフューザ流路内でより滑らかに流体を下流側に向かって流通させることができ、流体の剥離をさらに抑制することが可能となる。
【0016】
さらに、前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路が、前記最終静翼列の設けられた前記軸線の方向の領域に対応する第一領域と、該第一領域よりも下流側の第二領域と、該第二領域よりもさらに下流側の第三領域とに分割され、前記第一領域よりも前記第二領域の方が流路断面積の拡大量が大きくなり、前記第二領域よりも前記第三領域の方が流路断面積の拡大量が小さくなってもよい。
【0017】
このように第一領域から第三領域に向かって、即ちディフューザ流路が下流側に向かって、まず小さく拡大した後に大きく拡大し、その後に小さく拡大する。よって、最終静翼列を流体が通過する際に、即ち第一領域を通過する際に、ディフューザ流路による流体の減速量を低減できるため、最終静翼列での流体の剥離を抑制することができる。その後、第二領域を通過する際にはディフューザ流路によって流体の減速量を大きくでき、十分な圧力回復量を得ることができる。さらに、最も下流側の第三領域では流体の境界層が発達してくるが、流体の減速量を低減することができるため第三領域での剥離を抑制できる。
ここで、流路断面積の拡大量とは、各領域のディフューザ流路の軸線を基準とした角度、即ち、開き角を意味する。
【0018】
また、前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路が、前記最終静翼列の設けられた前記軸線の方向の領域に対応する第一領域と、該第一領域よりも下流側の第二領域とに分割され、前記第一領域よりも前記第二領域の方が流路断面積の拡大量が小さくなってもよい。
【0019】
このように第一領域よりも第二領域で、ディフューザ流路が小さく拡大する。この場合、第一領域からディフューザ流路を開くことで、第一領域よりも下流側のディフューザ流路における内面(端壁)での流体の剥離を抑制しつつ第一領域で減速量を大きくとり、その後第二領域で境界層が発達しても、流体が剥離なく減速することができる。
【0020】
また、前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路における前記軸線の径方向外側の内面が下流側に向かって前記径方向外側に傾斜するように流路断面積が拡大してもよい。
【0021】
流体は回転軸の回転方向の成分を有した状態でディフューザ流路に流入するため、ディフューザ流路における径方向外側の内面側に流体が寄った状態でディフューザ流路内を流通することになる。よって、径方向外側に傾斜するようにディフューザ流路の流路断面積が拡大することで流体の流通方向に沿ってディフューザ流路が形成されていることになる。このため、より円滑にディフューザ流路内で流体を流通させることができ、圧力回復の効果を向上することができる。
【0022】
さらに、前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路における前記軸線の径方向内側の内面が下流側に向かって前記径方向内側に傾斜するように流路断面積が拡大してもよい。
【0023】
このようにディフューザ流路では、径方向外側の内面とともに径方向内側の内面が下流側に向かって径方向内側に傾斜することで、より短い距離でディフューザ流路の拡大を図り、圧力回復が可能となる。よって、ディフューザ流路の軸線の方向の長さを短縮でき、流体の摩擦損失を低減することができる。
【0024】
また、前記ディフューザ部では、前記ディフューザ流路における前記軸線の径方向内側の内面が下流側に向かって前記径方向外側に傾斜するように前記流路断面積が拡大してもよい。
【0025】
このようにディフューザ流路では、径方向外側の内面とともに径方向内側の内面が下流側に向かって径方向外側に傾斜することで、例えば径方向外側に配置された機器へ圧縮又は圧送された流体を導くことができる。
また、本発明の他の態様としての軸流回転機械は、軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と、前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持して前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通して前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出して該軸線の方向に複数列に設けられた静翼列と、前記静翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられて前記流体の圧縮又は圧送を行う動翼列と、を備える軸流回転機械に設けられ、前記動翼列のうちの前記流体の流れの最も下流側に位置する最終動翼列を構成するとともに、互いに前記軸線の周方向に間隔をあけて複数配され、各々の転向角が翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側の方が大きくなっている翼部を備えた動翼を有する動翼列と、前記動翼列を固定し、前記軸線の方向に延びて該軸線を中心として回転する回転軸と前記回転軸を相対回転可能に外周側から支持し、前記回転軸との間に流体の流路を画成するケーシングと、前記ケーシングの下流側に設けられて前記流路に連通し、前記軸線を中心とした環状をなすとともに下流側に向かって流路断面積が拡大するディフューザ流路が画成されたディフューザ部と、前記ケーシングから前記軸線の径方向内側に突出するとともに、前記動翼列に前記軸線の方向に隣接して複数列に設けられ、列毎に前記軸線の周方向に互いに離間して設けられた静翼を有する静翼列と、を備え、前記ディフューザ部は、前記最終動翼列の上流側の端部よりも下流側で、かつ、該最終動翼列よりもさらに下流側に設けられた最終静翼列の下流側の端部よりも上流側から前記ディフューザ流路が延びるように、前記ケーシングに設けられており、前記最終静翼列が第一最終静翼列と、第一最終静翼列の上流側に隣接する第二最終静翼列とからなり、前記第二最終静翼列の下流側の端部よりも上流側から前記ディフューザ流路が延びる。
【発明の効果】
【0026】
上記の動翼、及び軸流回転機械によると、動翼の翼部が翼高さ方向に転向角が異なっていることで、ディフューザ部での流体の流動損失を低減可能であり、十分な圧力回復性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第一実施形態に係る軸流圧縮機の軸線を含む縦断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る軸流圧縮機の軸線を含む縦断面図であって、ディフューザ部周辺を拡大して示す図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る軸流圧縮機の最終動翼列を構成する動翼を示す斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る軸流圧縮機の最終動翼列を構成する動翼の翼高さ方向に直交する断面図であって、(a)は図3のA−A断面を示し、(b)は図3のB−B断面を示し、(c)は図3のC−C断面を示す。
図5】本発明の第二実施形態に係る軸流圧縮機の軸線を含む縦断面図であって、ディフューザ部周辺を拡大して示す図である。
図6】本発明の第二実施形態の第一変形例に係る軸流圧縮機の軸線を含む縦断面図であって、ディフューザ部周辺をさらに拡大して示す図である。
図7】本発明の第二実施形態の第二変形例に係る軸流圧縮機の軸線を含む縦断面図であって、ディフューザ部周辺をさらに拡大して示す図である。
図8】本発明の第三実施形態に係る軸流圧縮機の軸線を含む縦断面図であって、ディフューザ部周辺を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係る軸流圧縮機1(軸流回転機械)について、図面を参照して説明する。
【0029】
軸流圧縮機1は空気等のガスG(流体)を取り込んで圧縮して吐出する。この軸流圧縮機1は、図1及び図2に示すように、軸線Oを中心として回転する回転軸2と、回転軸2を支持するケーシング3と、ケーシング3に設けられたディフューザ部4と、ケーシング3から回転軸2に向かって突出する静翼列10と、回転軸2からケーシング3に向かって突出する動翼列20とを備えている。
【0030】
回転軸2は、軸線Oの方向に延びる柱状部材である。
【0031】
ケーシング3は、回転軸2を外周側から覆う筒状をなしている。このケーシング3には不図示の軸受が設けられている。ケーシング3は、この軸受を介して回転軸2を支持することでケーシング3と回転軸2とが相対回転可能となっている。また、ケーシング3と回転軸2との間には空間Sが画成されている。
【0032】
ケーシング3には、軸線O方向の一方側(図1の紙面に向かって左側)でケーシング3の外部に開口するとともに、空間Sに連通するガスGの吸込口3aが形成されている。ガスGは吸込口3aから空間S内に導入され、軸線Oの方向の一方側から他方側に向かって流通する。以下、軸線Oの方向の一方側を上流側とし、他方側を下流側とする。
【0033】
静翼列10は、ケーシング3に固定されてケーシング3から軸線Oの径方向内側に突出して空間S内に配され、軸線Oの方向に互いに間隔をあけて複数列に設けられている。
【0034】
各々の静翼列10は、互いに軸線Oの周方向に間隔をあけて設けられた複数の静翼12を有している。
各々の静翼12は径方向に直交する断面が翼形状をなす翼部13と、翼部13の径方向外側に設けられた外側シュラウド14と、翼部13の径方向内側に設けられた内側シュラウド15とを備えている。外側シュラウド14はケーシング3に嵌め込まれてケーシング3の内面の一部を構成している。周方向に隣接する静翼12の内側シュラウド15同士が連結されることで、軸線Oを中心とした環状をなしている。
【0035】
本実施形態では、ケーシング3内の空間Sの最も下流側にはアウトレットガイドベーン11(又は静翼12)が設けられているが、このようなアウトレットガイドベーン11(又は静翼12)は必ずしも設けられていなくともよい。
【0036】
動翼列20は、回転軸2に固定されて回転軸2から軸線Oの径方向外側に突出して空間S内に配され、軸線Oの方向に互いに間隔をあけて複数列に設けられている。これら動翼列20は、静翼列10に軸線Oの方向に隣接して静翼列10同士の間に設けられている。
【0037】
ここで、ケーシング3の最も下流側では、アウトレットガイドベーン11の上流側には動翼列20が隣接せず、二列分の静翼列10が軸線Oの方向に隣接して設けられている。ここで、これら隣接する二列分の静翼列10のうちアウトレットガイドベーン11を第一最終静翼列10A、アウトレットガイドベーン11の上流側に設けられた静翼列10を第二最終静翼列10Bとする。
【0038】
また、第二最終静翼列10Bの上流側には軸線Oの方向に動翼列20が隣接して設けられている。この動翼列20を最終動翼列20Aとする。
【0039】
最終動翼列20Aは、図3及び図4に示すように、互いに軸線Oの周方向に間隔をあけて設けられた複数の動翼22を有している。
各々の動翼22は、径方向に直交する断面が翼形状をなす翼部25と、翼部25の径方向内側に設けられたプラットフォーム23と、プラットフォーム23から径方向内側に突出する翼根24とを備えている。
【0040】
動翼22は、翼根24が回転軸2に嵌入されることで回転軸2に固定されている。翼部25は、回転軸2の回転方向Rの後方側を向く負圧面22aと、回転方向Rの前方側を向く圧力面22bとを有している。
【0041】
そしてケーシング3の空間S内で、これら静翼12間及び動翼22間に形成された隙間が吸込口3aから導入されたガスGの流通する流路Cとなっている。流路Cに導入されたガスGは、各動翼列20の動翼22の翼部25を通過することで動翼22の圧力面22bに沿って角度が転向されることで圧縮される。
【0042】
動翼22における翼部25は、その転向角が翼高さ方向、即ち軸線Oの径方向の中央部に比べてハブ側(径方向内側)及びチップ側(径方向外側)の方が大きくなっている。具体的には図4(a)及び図4(c)に示すように、ハブ側及びチップ側では、翼部25の入口におけるガスGの流通方向に対する翼部25の出口における流体の流通方向との相対角度θ1がより急な角度になっている。この一方で、図4(b)に示すように、翼高さ方向の中央部では相対角度θ2がより緩やかな角度になっている。
この角度θ1、θ2は、翼高さ方向の中央部からハブ側、チップ側に向かうに従って滑らかに変化していくことが好ましい。
【0043】
ディフューザ部4は、ケーシング3の下流側に設けられて、軸線Oを中心とした筒状をなしている。より具体的には、このディフューザ部4は軸線Oを中心として形成された内筒と、軸線Oを中心として形成されて内筒4aの径よりも大径に形成された外筒4bとを有する二重管状をなしている。
【0044】
内筒4aの内部には回転軸2が配されている。また内筒4aと外筒4bとの間に画成された環状空間はケーシング3の空間S、即ち流路Cに連通するディフューザ流路DCとなっている。ディフューザ流路DCは下流側に向かって流路断面積が拡大するように画成されている。ここで流路断面積とは、軸線Oに直交する断面の面積のことを示す。
【0045】
そして、流路Cを流通して圧縮されたガスGがディフューザ流路DCを介して軸流圧縮機1の外部に吐出される。
このディフューザ部4はケーシング3と一体に設けられていてもよいし、別体で設けられていてもよい。
【0046】
本実施形態では、このディフューザ部4は、第一最終静翼列10Aよりも下流側からディフューザ流路DCが延びるように、ケーシング3に設けられている。
【0047】
このような軸流圧縮機1によると、最終動翼列20Aの動翼22における翼部25の転向角θ1が、翼高さ方向の中央部に比べてハブ側及びチップ側の方が大きくなっている。よって、最終動翼列20Aを通過するガスGはハブ側及びチップ側でより多く流通方向が転向される。従って、動翼22は、ハブ側及びチップ側で流体に対してより多くの仕事をすることで、この位置でガスGの圧縮量が多くなる。
【0048】
ここで、仮に動翼22の転向角が翼高さ方向に一律である場合には、ガスGとディフューザ流路DCの内面との間のせん断力の影響で、ハブ側及びチップ側でガスGの流速が遅くなる。この点、上述のように動翼22の翼部25の転向角θ1、θ2が翼高さ方向に異なることで、ディフューザ流路DCの内面近傍でのガスGの流速を増大させ、最終動翼列20Aを通過したガスGの速度(全圧)分布を、ディフューザ部4の出口で、翼高さ方向、即ち軸線Oの径方向により均一とすることができる。よって、ディフューザ流路DC内でのガスGの剥離を抑制することができる。
【0049】
ここで、一般に、ディフューザ部4での圧力回復の性能を向上させるためにはディフューザ流路DCの入口と出口とで、流路断面積の比を大きくとる必要がある。また、ディフューザ流路DCは、ガスGの剥離が生じないように流路Cの開き角を所定の角度に抑えつつ流路断面積を拡大するように形成される。
なお、ここでいう開き角とは、内筒4aの表面であるディフューザ流路DCの径方向内側の面が軸線Oに対して傾斜する角度と、外筒4bの表面であるディフューザ流路DCの径方向外側の面が軸線Oに対して径方向に傾斜する角度との和を示す。
【0050】
従って、仮に動翼22での転向角θ1、θ2が同じであり、径方向に一律の形状の翼部25である場合には、ディフューザ部4での圧力回復の機能を維持するためにディフューザ部4の軸線O方向の長さ寸法が大きくなってしまう。この結果、ガスGがディフューザ流路DCの内面に接触する距離が長くなり、摩擦による損失が大きくなってしまう。
【0051】
この点、本実施形態では、このようにガスGの速度分布が均一化されることによって、ディフューザ部4の軸線Oの方向の寸法を短縮することができる。よってディフューザ流路DCとの間の摩擦によって生じるガスGの摩擦損失の低減が可能となる。
【0052】
また、ガスGの速度分布が均一化されることによって、ディフューザ流路DCの入口と出口との流路断面積の比を大きくすることも可能となり、ディフューザ部4での圧力回復量を大きくすることができる。即ち、例えばディフューザ流路DCの開き角を10度以上にすることも可能となる。
【0053】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態に係る軸流圧縮機31(軸流回転機械)について説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図5に示すように、軸流圧縮機31では、ディフューザ部34は、最終動翼列20Aよりも下流側で、かつ、第二最終静翼列10Bの下流側の端部よりも上流側からディフューザ流路DC1が延びるように、ケーシング3に設けられている。そして、本実施形態では、最終動翼列20Aと、第二最終静翼列10Bとの間からディフューザ流路DC1が延びている。
【0054】
ここで、第二最終静翼列10Bの下流側の端部とは、第二最終静翼列10Bにおける外側シュラウド14及び内側シュラウド15の下流側の端部を示している。
【0055】
本実施形態の軸流圧縮機31によると、第一最終静翼列10A及び第二最終静翼列10BによるガスGの減速効果を得つつ、さらに早い段階から圧力回復を行うことができる。この結果、ディフューザ部34の軸線Oの方向の寸法をさらに短縮したり、ディフューザ流路DC1の入口と出口との流路断面積比をさらに大きくしたりすることが可能となる。
【0056】
ここで、最終動翼列20Aの動翼22によって径方向の端壁部となる流路Cの内面(径方向内側及び外側の両側の内周面のことを意味する)の近傍で全圧が高められたガスGがディフューザ流路DC1に流れ込むため、ディフューザ流路DCでのガスGの剥離は生じにくくなっている。よって、本実施形態のディフューザ流路DC1であっても、ガスGの損失を低減しながら圧力回復が可能である。
【0057】
ここで、本実施形態では、図6及び図7に示すように、ディフューザ部34は第二最終静翼列10Bの下流側の端部よりも下流側で、かつ、第一最終静翼列40Aの下流側の端部よりも上流側からディフューザ流路DC1が延びるように、ケーシング3に設けられていてもよい。
【0058】
第一最終静翼列40Aの下流側の端部とは、第一最終静翼列40Aにおける外側シュラウド44の下流側の端部を示している。同様に、第二最終静翼列10Bの下流側の端部とは、第二最終静翼列10Bにおける外側シュラウド44の下流側の端部を示している。
【0059】
そして、この場合、ディフューザ流路DC1の内面の一部が第一最終静翼列40Aにおける静翼12の一部、即ち、外側シュラウド44によって形成されている。具体的には、図6では、外側シュラウド44の径方向内側を向く面が、その軸線O方向の中途位置から下流側に向かうに従って、径方向外側に傾斜しており、ディフューザ流路DC1の内面の一部となっている。
【0060】
また、図7では、外側シュラウド44の径方向内側を向く面が、その軸線O方向の全域にわたって下流側に向かうに従って径方向外側に傾斜しており、ディフューザ流路DC1の内面の一部となっている。
【0061】
このように静翼12の一部である外側シュラウド44がディフューザ流路DC1の内面を形成することで、第一最終静翼列40Aの下流側の端部よりも上流側からディフューザ流路DC1を拡大したとしても、下流側に向かって拡大するディフューザ流路DC1の内面から外側シュラウド44がディフューザ流路DC1の内部に突出する(図5参照)ことがなくなる。
【0062】
従って、ディフューザ流路DC1内でより滑らかにガスGを下流側に向かって流通させることができ、ガスGの剥離をさらに抑制することが可能となる。特に外側シュラウド44の径方向内側を向く面をディフューザ流路DC1の径方向内側を向く面と面一とすることで、ガスGの剥離を抑制する効果を向上することができる。
【0063】
ここで本実施形態では、図6及び図7に示したのと同様に、第二最終静翼列10Bにおける外側シュラウド14の径方向内側を向く面が、下流側に向かうに従って径方向外側に傾斜して、ディフューザ流路DC1の内面の一部となっていてもよい。
【0064】
〔第三実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態に係る軸流圧縮機51について説明する。
なお、第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、軸流圧縮機51のディフューザ部54では、ディフューザ流路DC2が第一最終静翼列10A及び第二最終静翼列10Bの設けられた軸線O方向の領域に対応する第一領域A1と、第一領域A1よりも下流側の第二領域A2と、第二領域A2よりもさらに下流側の第三領域A3とに分割されている。
【0066】
そして第一領域A1よりも第二領域A2の方が流路断面積の拡大量が大きくなり、第二領域A2よりも第三領域A3の方が流路断面積の拡大量が小さくなっている。ここで、流路断面積の拡大量とは、各領域でのディフューザ流路DC2の開き角を意味する。
【0067】
このように第一領域A1から第三領域A3に向かって、即ちディフューザ流路DC2が下流側に向かって、まず小さく拡大した後に大きく拡大し、その後に小さく拡大する。よって、第一最終静翼列10A及び第二最終静翼列10BをガスGが通過する際に、即ち第一領域A1を通過する際に、ディフューザ流路DCによるガスGの減速量を低減できる。このため、第一最終静翼列10A及び第二最終静翼列10BでのガスGの剥離を抑制することができる。
【0068】
その後、第二領域A2をガスGが通過する際には、ディフューザ流路DC2によってガスGの減速量を大きくでき、十分な圧力回復量を得ることができる。さらに、最も下流側の第三領域A3ではガスGの境界層が発達しているが、ガスGの減速量を低減することができるためガスGの剥離を抑制できる。よって効果的に圧力回復が可能となる。
【0069】
ここで、本実施形態では、ディフューザ流路DC2が、第一領域A1と、第一領域A1よりも下流側の第二領域A2とに分割されていてもよい。そしてこの場合、第一領域A1よりも第二領域A2の方が流路断面積の拡大量が小さくなっていてもよい。この場合、第一領域A1からディフューザ流路DC2を開くことで、第一領域A1よりも下流側のディフューザ流路DC2における内面(端壁)でのガスGの剥離を抑制しつつ、第一領域A1で減速量を大きくとり、その後第二領域A2で境界層が発達しても、ガスGが剥離なく減速することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、ディフューザ部4(34、54)では、ディフューザ流路DC(DC1、DC2)における軸線Oの径方向外側の内面、即ち、外筒4bの内面が下流側に向かって径方向外側に傾斜するように流路断面積が拡大してもよい。ここで、ガスGは回転軸2の回転方向Rの成分を有した状態でディフューザ流路DCに流入するため、ディフューザ流路DCにおける径方向外側の内面側にガスGが寄った状態でディフューザ流路DC内を流通することになる。
【0071】
よって、径方向外側に傾斜するようにディフューザ流路DCの流路断面積が拡大することでガスGの流通方向に沿ってディフューザ流路DCが形成されていることになる。このため、より円滑にディフューザ流路DC内でガスGを流通させることができ、圧力回復の効果を向上することができる。
【0072】
さらに、ディフューザ部4(34、54)では、ディフューザ流路DC(DC1、DC2)における軸線Oの径方向内側の内面、即ち、内筒4aの内面が下流側に向かって径方向内側に傾斜するように流路断面積が拡大してもよい。このようにディフューザ流路DCでは、径方向外側の内面とともに径方向内側の内面が下流側に向かって径方向内側に傾斜し、流路Cが径方向両側に拡径することで、より短い距離で圧力回復を行うことができる。よって、ディフューザ流路DCの軸線O方向の長さを短縮でき、ディフューザ流路DCでのガスGの摩擦損失を低減することができる。
【0073】
また、ディフューザ部4(34、54)では、ディフューザ流路DC(DC1、DC2)における軸線Oの径方向内側の内面、即ち、内筒4aの外面が下流側に向かって径方向外側に傾斜するように流路断面積が拡大してもよい。このようにディフューザ流路DCでは、径方向外側の内面とともに径方向内側の内面が下流側に向かって径方向外側に傾斜することで、径方向外側に配置された機器へ圧縮されたガスGを導くことができる。
【0074】
例えば、軸流圧縮機1(31、51)がガスタービンに適用された場合には、ディフューザ部4(34、54)の径方向外側に配置された燃焼器へとガスGを円滑に導くことが可能となる。
【0075】
また、ディフューザ流路DCは最終動翼列20Aを含む位置、即ち、最終動翼段20Aよりも上流側の端部から始まるように形成されていてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では、軸流回転機械の一例として、軸流圧縮機1(31、51)について説明を行ったが、ガスGに代えて液体を圧送する軸流ポンプ等の他の軸流回転機械に上述の実施形態の構成を適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上記の動翼、及び軸流回転機械によると、動翼の翼部が翼高さ方向に転向角が異なっていることで、ディフューザ部での流体の流動損失を低減でき、十分な圧力回復性能を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1、31、51…軸流圧縮機(軸流回転機械) 2…回転軸 3…ケーシング 3a…吸込口 4、34、54…ディフューザ部 4a…内筒、4b…外筒 10…静翼列 10A、40A…第一最終静翼列 10B…第二最終静翼列 11…アウトレットガイドベーン 12…静翼 13…翼部 14、44…外側シュラウド 15…内側シュラウド 20…動翼列 20A…最終動翼列 22…動翼 22a…負圧面 22b…圧力面 23…プラットフォーム 24…翼根 25…翼部 S…空間 G…ガス O…軸線 DC、DC1、DC2…ディフューザ流路 C…流路 A1…第一領域 A2…第二領域 A3…第三領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8