特許第6169022号(P6169022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6169022携帯端末を所持したユーザの滞在地を推定する装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169022
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】携帯端末を所持したユーザの滞在地を推定する装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20170713BHJP
   G06Q 50/32 20120101ALI20170713BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20170713BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20170713BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20170713BHJP
【FI】
   G06Q50/10
   G06Q50/32
   H04W64/00 150
   H04W64/00 160
   H04M11/00 302
   G06Q30/02 380
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-44667(P2014-44667)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-170144(P2015-170144A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】黒川 茂莉
(72)【発明者】
【氏名】村松 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 孝文
(72)【発明者】
【氏名】石塚 宏紀
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−085095(JP,A)
【文献】 特開2004−287804(JP,A)
【文献】 特開2011−170810(JP,A)
【文献】 特開2014−191531(JP,A)
【文献】 特開2014−119798(JP,A)
【文献】 特開2014−116808(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0232324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
H04M 11/00
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末を所持したユーザの滞在位置を推定する装置であって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を、逐次に蓄積していく通信履歴蓄積手段と、
当該携帯端末の「滞在」/「移動」を判定する滞在移動判定手段と
を有し、
前記滞在移動判定手段は、
代表点計算処理として、現に蓄積された通信履歴の複数の入力点の中で、1つの入力点を最初の中心点とし、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、重心と中心点との差が第5の閾値以下である場合、その重心を現代表点として、滞在メモリに入力し、
前記現代表点と、過去に前記滞在メモリに蓄積された前代表点との間の変化距離が、第1の閾値以下であり、且つ前記滞在メモリに含まれる代表点の数が第2の閾値以上である、及び/又は、それら代表点の時間幅が第3の閾値以上である場合に、「滞在」と判定し、
そうでない場合、「移動」と判定すると共に、前記滞在メモリ内の最後の代表点以外の代表点を削除する
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記滞在移動判定手段は、
前記代表点計算処理として、重心と中心点との差が第5の閾値以下でない場合、その重心を次の中心点として、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
滞在移動判定手段は、「滞在」と判定された複数の滞在地情報の中で、
滞在開始時刻が同一となる複数の滞在地情報を、1つの「滞在」として集約し、
その集約された滞在終了時刻の中で、最も新しい日時刻を集約された滞在終了時刻とし、
滞在開始時刻と滞在終了時刻との間の時間幅が、第6の閾値以上となるもののみを最終的な「滞在」とする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記滞在移動判定手段によって連続して「滞在」と判定された複数の位置情報の重心を、1つの「滞在地」とする位置クラスタリング手段を更に有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記位置クラスタリング手段は、連続して「滞在」と判定された複数の位置情報毎に、
(S1)任意の点(位置情報)を、最初の中心点とし、
(S2)中心点から、第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、
(S3)重心と中心点との差が、第5の閾値以下であるか否かを判定し、
(S4)S3によって偽と判定された場合、その重心を次の中心点として、再びS2へ戻
(S5)S3によって真と判定された場合、その重心を代表位置とする
ことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記滞在移動判定手段は、前記滞在メモリの最大点数を設けており、当該滞在メモリの点数が最大点数を超えた場合、最も出現頻度の低い点を削除する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の装置を、広域無線通信網に接続した通信設備装置であって、前記通信履歴蓄積手段に通信履歴を蓄積するために、
基地局識別子及び基地局位置情報を対応付けて記憶する基地局位置情報管理手段と、
携帯端末を配下に接続させる基地局から、携帯端末毎における通信された日時刻及びその基地局識別子の通信履歴を収集する通信履歴収集手段と、
前記基地局位置情報管理手段を用いて、前記通信履歴毎に、前記基地局識別子に対応する基地局位置情報を更に対応付ける位置情報履歴生成手段と
を更に有することを特徴とする通信設備装置。
【請求項8】
装置に搭載されたコンピュータを、携帯端末を所持したユーザの滞在位置を推定するように機能させるプログラムであって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を、逐次に蓄積していく通信履歴蓄積手段と、
当該携帯端末の「滞在」/「移動」を判定する滞在移動判定手段と
を有し、
前記滞在移動判定手段は、
代表点計算処理として、現に蓄積された通信履歴の複数の入力点の中で、1つの入力点を最初の中心点とし、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、重心と中心点との差が第5の閾値以下である場合、その重心を現代表点として、滞在メモリに入力し、
前記現代表点と、過去に前記滞在メモリに蓄積された前代表点との間の変化距離が、第1の閾値以下であり、且つ前記滞在メモリに含まれる代表点の数が第2の閾値以上である、及び/又は、それら代表点の時間幅が第3の閾値以上である場合に、「滞在」と判定し、
そうでない場合、「移動」と判定すると共に、前記滞在メモリ内の最後の代表点以外の代表点を削除する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
装置を用いて、携帯端末を所持したユーザの滞在地を推定する方法であって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を、逐次に蓄積する第1のステップと、
代表点計算処理として、現に蓄積された通信履歴の複数の入力点の中で、1つの入力点を最初の中心点とし、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、重心と中心点との差が第5の閾値以下である場合、その重心を現代表点として、滞在メモリに入力する第2のステップと、
前記現代表点と、過去に前記滞在メモリに蓄積された前代表点との間の変化距離が、第1の閾値以下であり、且つ前記滞在メモリに含まれる代表点の数が第2の閾値以上である、及び/又は、それら代表点の時間幅が第3の閾値以上である場合に、「滞在」と判定し、
そうでない場合、「移動」と判定すると共に、前記滞在メモリ内の最後の代表点以外の代表点を削除する第3のステップと
を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末を所持したユーザの移動に伴う位置を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機に代表される携帯端末には、GPS(Global Positioning System)のような測位機能が、一般的に搭載されてきている。そのため、ユーザは、携帯端末を用いて、現在位置を測位できると共に、その位置をネットワークを介してサーバへ送信することによって、位置に応じた様々なサービス情報を受信することができる。
【0003】
従来、携帯端末のGPS機能によって取得された位置情報をサーバへ送信し、当該サーバが、そのユーザの行動履歴から行動範囲を算出し、その行動範囲を反映した情報を提供する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、携帯端末によって計測された多数の位置情報同士の距離に基づいてクラスタリングし、ユーザ毎の行動範囲を算出する。
【0004】
また、携帯端末のGPS機能によって取得された位置情報に基づく行動履歴から、二次元平面上における無限混合ガウスモデルを用いたクラスタリングを用いてユーザの位置情報をクラスタリングする技術もある(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
前述したいずれの技術も、携帯端末のGPS機能によって、その位置情報を取得する必要がある。しかしながら、携帯端末について、GPS機能及びそのアプリケーションを常に又は定期的に起動させることは、携帯端末の電池の消耗を早めるだけでなく、携帯端末からのパケットの送出量を増加させてしまうという問題がある。
【0006】
これに対し、通信事業者側としては、携帯端末によって取得された位置情報ではなく、その携帯端末が配下となる基地局の位置情報の履歴を用いて、携帯端末を所持したユーザ行動としての滞在地及び時間区間を推定できることが好ましい。この場合、携帯端末が常に又は定期的にGPS機能を起動させる必要もない。しかしながら、このような基地局位置情報は、空間的粒度が粗くかつ時間間隔が一定でないという問題がある。定常的な測位位置が得られない場合、前述した従来技術を適用することも難しい。また、ユーザの携帯端末が、「滞在」しているのか「移動」しているのかを明確に区分することもできない。
【0007】
また、通信事業者側として、携帯端末が配下となる基地局の位置情報の履歴に対して、Leader Algorithmと称される凝集型クラスタリング方法を用いて、有意位置を抽出する技術がある(例えば非特許文献2参照)。
【0008】
更に、逐次入力される位置情報に対して、直近の位置情報との距離を評価して、逐次的に有意位置を検出する技術もある(例えば非特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−49295号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Petteri Nurmi、Sourav Bhattacharya、「Identifying Meaningful Places: The Non-parametric Way」、Pervasive 2008、pp.111-127、2008
【非特許文献2】S. Isaacman、R. Becker、R. Caceres、S.G. Kobourov、M. Martonosi、J. Rowland、and A. Varshavsky、「Identifying Important Places in People's Lives from Cellular Network Data」、 Proc. of the 9th International Conference on Pervasive Computing、pp.133-151、2011
【非特許文献3】J. Liu, O. Wolfson, H. Yin, “Extracting Semantic Location from Outdoor Positioning Systems,” Proc. of the 7th International Conference on Mobile Data Management (MDM 2006), pp.73, 2006.
【非特許文献4】J.H. Kang, W. Welbourne, B. Stewart, G. Borriello, “Extracting places from traces of locations,” Mobile Computing and Communications Review 9(3), pp.58-68, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1の技術によれば、空間的に疎な位置情報の履歴(位置情報同士の地理的距離が比較的長い)を用いた場合、混合ガウス分布のパラメータ推定の性質によっては、離れた位置情報同士を、同一のクラスタに含めてしまうという傾向がある。これによっても、滞在位置の判定精度が低下する。また、非特許文献2の技術によれば、2つの滞在地の間における移動中に発生する通信の影響を受けて、滞在地の位置や時間がずれてしまうという精度の問題もある。更に、これら両方の技術は、一定期間の位置情報を収集し蓄積しない限り適用できず、逐次に判定することができない。
【0012】
また、非特許文献3及び4の技術によれば、単純な距離の評価であるため、通信事業者側で得られる携帯端末が配下となる基地局の位置情報のように、空間的粒度が粗くノイズが大きい位置情報が発生しやすい場合に精度が低下するという問題もある。
【0013】
そこで、本発明では、携帯端末の測位機能を起動させることなく、通信事業者設備によって取得可能な、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局位置情報が記録される毎に逐次、ユーザにとって有意な滞在地を高い精度で推定することができる装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、携帯端末を所持したユーザの滞在位置を推定する装置であって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を、逐次に蓄積していく通信履歴蓄積手段と、
当該携帯端末の「滞在」/「移動」を判定する滞在移動判定手段と
を有し、
滞在移動判定手段は、
代表点計算処理として、現に蓄積された通信履歴の複数の入力点の中で、1つの入力点を最初の中心点とし、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、重心と中心点との差が第5の閾値以下である場合、その重心を現代表点として、滞在メモリに入力し、
代表点と、過去に滞在メモリに蓄積された前代表点との間の変化距離が、第1の閾値以下であり、且つ滞在メモリに含まれる代表点の数が第2の閾値以上である、及び/又は、それら代表点の時間幅が第3の閾値以上である場合に、「滞在」と判定し、
そうでない場合、「移動」と判定すると共に、滞在メモリ内の最後の代表点以外の代表点を削除する
ことを特徴とする。
【0015】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
滞在移動判定手段は、
代表点計算処理として、重心と中心点との差が第5の閾値以下でない場合、その重心を次の中心点として、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出する
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
滞在移動判定手段は、「滞在」と判定された複数の滞在地情報の中で、
滞在開始時刻が同一となる複数の滞在地情報を、1つの「滞在」として集約し、
その集約された滞在終了時刻の中で、最も新しい日時刻を集約された滞在終了時刻とし、
滞在開始時刻と滞在終了時刻との間の時間幅が、第6の閾値以上となるもののみを最終的な「滞在」とすることも好ましい。
【0019】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
滞在移動判定手段によって連続して「滞在」と判定された複数の位置情報の重心を、1つの「滞在地」とする位置クラスタリング手段を更に有することも好ましい。
【0020】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
位置クラスタリング手段は、連続して「滞在」と判定された複数の位置情報毎に、
(S1)任意の点(位置情報)を、最初の中心点とし、
(S2)中心点から、第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、
(S3)重心と中心点との差が、第5の閾値以下であるか否かを判定し、
(S4)S3によって偽と判定された場合、その重心を次の中心点として、再びS2へ戻
(S5)S3によって真と判定された場合、その重心を代表位置とする
ことも好ましい。
【0021】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
滞在移動判定手段は、滞在メモリの最大点数を設けており、当該滞在メモリの点数が最大点数を超えた場合、最も出現頻度の低い点を削除する
ことも好ましい。
【0022】
本発明によれば、前述した装置を、広域無線通信網に接続した通信設備装置であって、通信履歴蓄積手段に通信履歴を蓄積するために、
基地局識別子及び基地局位置情報を対応付けて記憶する基地局位置情報管理手段と、
携帯端末を配下に接続させる基地局から、携帯端末毎における通信された日時刻及びその基地局識別子の通信履歴を収集する通信履歴収集手段と、
基地局位置情報管理手段を用いて、通信履歴毎に、基地局識別子に対応する基地局位置情報を更に対応付ける位置情報履歴生成手段と
を更に有することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、装置に搭載されたコンピュータを、携帯端末を所持したユーザの滞在位置を推定するように機能させるプログラムであって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を、逐次に蓄積していく通信履歴蓄積手段と、
当該携帯端末の「滞在」/「移動」を判定する滞在移動判定手段と
を有し、
滞在移動判定手段は、
代表点計算処理として、現に蓄積された通信履歴の複数の入力点の中で、1つの入力点を最初の中心点とし、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、重心と中心点との差が第5の閾値以下である場合、その重心を現代表点として、滞在メモリに入力し、
代表点と、過去に滞在メモリに蓄積された前代表点との間の変化距離が、第1の閾値以下であり、且つ滞在メモリに含まれる代表点の数が第2の閾値以上である、及び/又は、それら代表点の時間幅が第3の閾値以上である場合に、「滞在」と判定し、
そうでない場合、「移動」と判定すると共に、滞在メモリ内の最後の代表点以外の代表点を削除する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、装置を用いて、携帯端末を所持したユーザの滞在地を推定する方法であって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を、逐次に蓄積する第1のステップと、
代表点計算処理として、現に蓄積された通信履歴の複数の入力点の中で、1つの入力点を最初の中心点とし、中心点から第4の閾値の半径の円に含まれる入力点を用いて重心を算出し、重心と中心点との差が第5の閾値以下である場合、その重心を現代表点として、滞在メモリに入力する第2のステップと、
代表点と、過去に滞在メモリに蓄積された前代表点との間の変化距離が、第1の閾値以下であり、且つ滞在メモリに含まれる代表点の数が第2の閾値以上である、及び/又は、それら代表点の時間幅が第3の閾値以上である場合に、「滞在」と判定し、
そうでない場合、「移動」と判定すると共に、滞在メモリ内の最後の代表点以外の代表点を削除する第3のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の装置、プログラム及び方法によれば、携帯端末の測位機能を起動させることなく、通信事業者設備によって取得可能な、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局位置情報が記録される毎に逐次、ユーザにとって有意な滞在地を高い精度で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】携帯端末の移動を表す空間的な外観図である。
図2】本発明におけるユーザの滞在地を推定する装置の機能構成図である。
図3】基地局位置情報の表である。
図4】通信履歴の表である。
図5】通信履歴に基地局位置情報を対応付けた表である。
図6】本発明の滞在移動判定部の第1のフローチャートである。
図7図5の入力点に対して逐次に滞在/移動を判定した説明図である。
図8】本発明の滞在移動判定部の第2のフローチャートである。
図9】位置クラスタリング部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
図1は、携帯端末の移動を表す空間的な外観図である。
【0029】
ユーザに所持された携帯端末(例えば携帯電話機やスマートフォン)は、いずれの位置にあっても、常に、基地局の配下にあってその基地局と通信し続けている。図1によれば、ユーザは、自宅の住所及び職場の居所と、訪問先となるD駅周辺とが、「滞在地」となる。また、そのユーザは、自宅、職場及びD駅周辺以外の場所では、「移動」中となる。
【0030】
多数の基地局を統合する通信事業者設備では、携帯端末毎に、空間的粒度が粗く、且つ、時間間隔が一定でない基地局位置情報を常に収集することができる。「空間的粒度が粗く」とは、位置情報同士の地理的な距離が比較的長いことを意味する。また、「時間間隔が一定でない」とは、位置情報の取得時間間隔が比較的ばらついていることを意味する。
【0031】
広域無線通信網(携帯電話網)に接続された基地局3は、その配下に位置する携帯端末2と通信することによって、その日時刻を通信履歴として取得する。通信履歴は、携帯端末に対するユーザ操作を要する通話やメールの送受信やWebページの閲覧の時に限られない。携帯端末にインストールされたアプリケーションが自動的に実行するデータの送受信の時にも、基地局3によって携帯端末2からの通信履歴として取得される。
【0032】
図2は、本発明におけるユーザの滞在地を推定する装置の機能構成図である。
【0033】
本発明における装置1は、携帯端末を所持したユーザの滞在地を推定するものであって、通信履歴を予め蓄積したものである。また、装置1は、通信履歴を予め蓄積することなく、広域無線通信網(携帯電話網)に設置することによって基地局3から通信履歴を収集する通信設備装置であってもよい。
【0034】
図2によれば、滞在地推定用の装置1は、通信履歴蓄積部121と、滞在移動判定部122と、位置クラスタリング部123と、アプリケーション処理部13とを有する。アプリケーション処理部13は、本発明によって推定されたユーザ毎の滞在地に基づいて、様々なサービスを実行する。通信インタフェース部を除くこれら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、図2によれは、各機能構成部を用いた処理の流れは、滞在地を推定する方法としても理解できる。
【0035】
また、装置1は、広域無線通信網(携帯電話網)に設置された通信設備装置である場合、通信履歴蓄積部121へ通信履歴を蓄積するために、オプション機能として、広域通信網に接続する通信インタフェース部10と、基地局位置情報管理部111と、通信履歴収集部112と、位置情報履歴生成部113とを更に有する。以下では、装置1は、通信設備装置であるものとして説明する。
【0036】
[基地局位置情報管理部111]
基地局位置情報管理部111は、基地局識別子と基地局位置情報とを対応付けて記憶する。
【0037】
図3は、基地局位置情報の表である。基地局識別子毎に、緯度・経度の基地局位置情報が対応付けられている。図3によれば、基地局1は、緯度35.825及び経度139.510の位置に設置されていることが理解できる。また、基地局3は、緯度35.825及び経度139.520の位置に設置されていることが理解できる。尚、このような基地局位置情報は、基地局位置情報管理部111内に予め蓄積したものであってもよいし、通信インタフェース部10を介して各基地局3から取得するものであってもよい。
【0038】
[通信履歴収集部112]
通信履歴収集部112は、携帯端末2を配下に接続させる基地局3から、携帯端末2毎における日時刻及び基地局識別子の通信履歴を収集する。
【0039】
図4は、通信履歴の表である。通信履歴は、基地局3が携帯端末2からの通信を受け付けた記録である。通信履歴は、携帯端末2の「端末識別子」(アドレス、電話番号、識別番号等)毎に、「日時刻」及び「基地局識別子」が対応付けられている。
通信履歴(端末識別子、日時刻、基地局識別子)
図4における最初のログによれば、携帯端末0001は、2010年6月15日17:54:50に、基地局3と通信したことが記録されている。また、携帯端末0001は、2010年6月15日17:57:00には、基地局1と通信したことが記録されている。
【0040】
[位置情報履歴生成部113]
位置情報履歴生成部113は、基地局位置情報管理部111を用いて、通信履歴毎に、基地局識別子に対応する基地局位置情報を更に対応付ける。その通信履歴は、通信履歴蓄積部121へ出力される。
【0041】
図5は、通信履歴に基地局位置情報を対応付けた表である。図5の表は、図4の表の基地局識別子の部分に、図3の基地局の緯度・経度が対応付けられたものである。図5における最初のログによれば、携帯端末0001は、2010年6月15日17:54:50に、緯度35.825及び経度139.52の基地局と通信したことが理解できる。また、携帯端末0001は、2010年6月15日17:57:00に、緯度35.825及び経度139.51の基地局と通信したことが理解できる。
【0042】
[通信履歴蓄積部121]
通信履歴蓄積部121は、位置情報履歴生成部113から出力された通信履歴を、逐次に蓄積していく。
【0043】
[滞在移動判定部122]
滞在移動判定部122は、当該携帯端末の「滞在」/「移動」を判定する。新しい通信履歴の位置情報(現入力点)が記録される毎に、過去の通信履歴の位置情報(前入力点)との変化距離に基づいて、「滞在」/「移動」を判定する。
【0044】
図6は、本発明の滞在移動判定部の第1のフローチャートである。
【0045】
(S611)現に蓄積された通信履歴を表す現入力点を、滞在メモリに入力する。滞在メモリには、初期設定の後には、常に1つ以上の前入力点を含むこととなる。
【0046】
(S612)最初に、過去に蓄積された通信履歴を表す前入力点が、滞在メモリに存在するか否かを判定する。前入力点が存在しない場合(偽と判定)、S616へ移行し、現入力点を前入力点へ代入して終了する。
(S613)前入力点が滞在メモリに存在する場合(真と判定)、現入力点と前入力点との間の変化距離が第1の閾値(例えば2km)以下であるか否かを判定する。即ち、変化距離の大きさによって、「滞在」か否かを判定しようとしている。
(S614)S613によって変化距離が第1の閾値以下である場合(真と判定)、滞在候補とする。その上で、以下のいずれかの判定をする。
判定1:滞在メモリに含まれる入力点の数が第2の閾値以上である否か
判定2:滞在メモリに含まれる入力点の時間幅が第3の閾値以上であるか否か
判定3:滞在メモリに含まれる入力点の数が第2の閾値以上であって、且つ、滞在メモリに含まれる入力点の時間幅が第3の閾値以上であるか否か
滞在メモリに含まれた入力点を確認することによって、「滞在」状態が、一定時間程度継続していることを判定する。
(S615)S614によって真と判定された場合、「滞在」中と判定する。ここで、滞在メモリに含まれる入力点について、最も古い入力点の日時刻を滞在開始時刻とし、最も新しい日時刻を滞在終了時刻として、滞在期間を出力する。
(S616)現入力点を前入力点へ代入して終了する。
(S617)S613によって変化距離が第1の閾値よりも大きい場合(偽と判定)、「移動」中と判定する。
(S618)「移動」中と判定された場合、滞在メモリ内の最後の入力点以外の入力点を削除する。これによって、滞在メモリの滞在継続状態をリセットする。
【0047】
図7は、図5の入力点に対して逐次に滞在/移動を判定した説明図である。
【0048】
(★1の判定処理)現入力点(35.820、139.510)と、滞在メモリの前入力点(35.825、139.510)との間の距離は2km(第1の閾値)以下である(S613参照)。また、滞在メモリ内の点数が4個であって、5個(第2の閾値)以上でない。更に、滞在メモリに含まれる入力点の滞在時間幅が10分(第3の閾値)以上でない(S614参照)。従って、前入力点に現入力点を代入するだけで、処理を終了する(S616参照)。
【0049】
(★2の判定処理)現入力点(35.825、139.520)と、滞在メモリの前入力点(35.820、139.510)との間の距離は2km(第1の閾値)以下である(S613参照)。また、滞在メモリ内の点数が5個(第2の閾値)以上であって、且つ、滞在メモリに含まれる入力点の滞在時間幅が10分(第3の閾値)以上である(S614参照)。従って、「滞在」と判定する(S615参照)。
【0050】
(★3の判定処理)現入力点(35.850、139.530)と、滞在メモリの前入力点(35.820、139.510)との間の距離は2km(第1の閾値)よりも長い(S613参照)。従って、「移動」中と判定する(S617参照)。また、滞在メモリ内で、最後の入力点(35.850、139.530)以外の入力点を消去する。
【0051】
前述した図6及び図7によれば、滞在メモリに入力される入力点は、1つの位置情報としての「入力点」であるとして説明した。一方で、「入力点」の他の実施形態として、通信履歴の複数の入力点における「代表点」であってもよい。最も簡単には、「代表点」は、通信履歴の複数の入力点の中で、最も出現頻度の多い入力点であってもよい。
【0052】
図8は、本発明の滞在移動判定部の第2のフローチャートである。
【0053】
図8によれば、滞在移動判定部122の前段における代表点計算処理として、通信履歴の複数の入力点の中で、以下のステップによって代表点を算出する。
(S801)1つの入力点(位置情報)を、最初の中心点とする。
(S802)中心点から、第4の閾値(例えば2km)の半径の円に含まれる点(位置情報)を用いて、重心を算出する。
(S803)次に、重心と現在の中心点との差(変化距離)が、第5の閾値(例えば100m)以下であるか否かを判定する。
(S804)S803によって偽と判定された場合、その重心を次の中心点とする。そして、再びS802へ戻り、変化距離が第5の閾値以下に収まるまで繰り返す。
S803によって真と判定された場合、その重心(収束した点)を「代表点」とする。
この繰り返し処理は、時間局所的な位置情報の空間的な分布のモード(分布の頂点)を探索することに相当する。
【0054】
他の実施形態として、滞在移動判定部122は、代表点計算処理の前段に、現入力点をバッファする入力メモリを更に有することも好ましい(S800参照)。ここで、入力メモリは、所定閾値以上の入力点をバッファする。これによって、代表点計算処理における代表点の精度を向上させることができる。
【0055】
その後、S811〜S818は、図6で前述したS611〜S618と比較して、入力点に代えて代表点を用いている以外は、全く同様の処理である。
【0056】
ここで、図7の★1についてのみ、図8の判定処理について説明する。
【0057】
(★1の判定処理)
現入力点(35.820、139.510)に関する1回目の重心を計算する。現入力点(35.820、139.510)と滞在メモリに含まれるその他の点の距離はすべて2km(第4の閾値)以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
現入力点(35.820、139.510)に関する2回目の重心を計算する。2回目の重心計算では、中心点を(35.824、139.514)とする。中心点と滞在メモリに含まれるその他の点の距離はすべて2km以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
1回目と2回目の重心計算の結果は同じであり、変化距離は100m(第5の閾値)以下であるので、現入力点(35.820、139.510)の代表点は(35.824、139.514)となる。
【0058】
現代表点(35.824、139.514)と、滞在メモリの前代表点(35.825、139.512)との間の距離は2km(第1の閾値)以下である(S613参照)。また、滞在メモリ内の点数が4個であって、5個(第2の閾値)以上でない。更に、滞在メモリに含まれる入力点の滞在時間幅が10分(第3の閾値)以上でない(S614参照)。従って、前入力点に現入力点を代入するだけで、処理を終了する(S616参照)。
【0059】
最終的な処理として、滞在移動判定部122は、「滞在」と判定された複数の滞在地情報を集約することも好ましい。
(1)滞在開始時刻が同一となる複数の滞在地情報を、1つの「滞在」として集約する。
(2)その集約された滞在終了時刻の中で、最も新しい日時刻を集約された滞在終了時刻とする。
(3)滞在開始時刻と滞在終了時刻との間の時間幅が、第6の閾値以上となるもののみを最終的な「滞在」とする。
これによって、最終的な滞在地情報の数を更に絞り込むことができる。
【0060】
また、他の実施形態として、滞在移動判定部122は、滞在メモリの最大点数を設けており、当該滞在メモリの点数が最大点数を超えた場合、最も出現頻度の低い点を削除するものであってもよい。メモリ量を削減するためである。
【0061】
[位置クラスタリング部123]
位置クラスタリング部123は、「滞在」と判定された複数の位置情報の重心を「滞在地」とする。
【0062】
図9は、位置クラスタリング部のフローチャートである。位置クラスタリング部123も、前述した図8の代表点計算処理と同様の処理を実行する。距離が近い代表点の集合を同じ滞在地とするため、代表点位置情報について、所与の中心点から第4の閾値の範囲で重心を算出し、中心点と重心との差(変化距離)が第5の閾値に収まるまで繰り返し、最終的に得られた各位置の収束値を、「滞在地」とする。
【0063】
以上、詳細に説明したように、本発明の装置、プログラム及び方法によれば、携帯端末の測位機能を起動させることなく、通信事業者設備によって取得可能な、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局位置情報が記録される毎に逐次、ユーザにとって有意な滞在地を高い精度で推定することができる。
【0064】
特に、本発明によれば、携帯端末にとって測位のための処理負荷が全く無く、ユーザの滞在地を推定するための全ての情報は、通信事業者側のみで取得できる。尚、ユーザの滞在地を推定することによって提供できるサービスとしては、例えば、ユーザ毎に生活場所に応じたクーポン情報等を配信するパーソナライズド情報提供サービスなどがある。また、複数以上のユーザについて推定した滞在地の情報を集約し、地域毎に地域内で滞在しているユーザグループに対して一括してクーポン情報等を配信するサービスや、地域毎の滞在ユーザ数を周辺情報として各地域の住民や店舗に通知する周辺情報提供サービスなどもある。
【0065】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0066】
1 通信設備装置
10 通信インタフェース部
111 基地局位置情報管理部
112 通信履歴収集部
113 位置情報履歴生成部
121 通信履歴蓄積部
122 滞在移動判定部
123 位置クラスタリング部
13 アプリケーション処理部
2 携帯端末、携帯電話機
3 基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9