特許第6169071号(P6169071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6169071少なくとも1種類のオルト−ジフェノールと、マンガン塩または亜鉛塩と、過酸化水素と、(重)炭酸塩と、アルカリ剤と、チタン塩またはスカンジウム塩とを使用する染毛方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169071
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】少なくとも1種類のオルト−ジフェノールと、マンガン塩または亜鉛塩と、過酸化水素と、(重)炭酸塩と、アルカリ剤と、チタン塩またはスカンジウム塩とを使用する染毛方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20170713BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/45 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61Q5/10
   A61K8/27
   A61K8/22
   A61K8/29
   A61K8/34
   A61K8/41
   A61K8/45
   A61K8/25
   A61K8/44
【請求項の数】19
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-516369(P2014-516369)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-520132(P2014-520132A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012062102
(87)【国際公開番号】WO2012175683
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年4月13日
(31)【優先権主張番号】1155523
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1155524
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/539,107
(32)【優先日】2011年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/539,110
(32)【優先日】2011年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ショワジー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ロンド
【審査官】 石川 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−138174(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/000892(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/045404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/19
A61K 8/22
A61K 8/25
A61K 8/27
A61K 8/29
A61K 8/34
A61K 8/41
A61K 8/44
A61K 8/45
A61Q 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維の染色方法であり、前記繊維は、成分:
a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、
b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩と、
c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系と、
d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、
e)前記(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、
f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩と、
を一緒にまたは別々に含有する1つ以上の化粧品組成物で処理され;
前記成分a)、b)、d)、e)、および/またはf)の少なくとも1つを含む少なくとも1つの組成物のpHはアルカリ性であり、すなわち7を超え、f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される塩を含む組成物を、前記染色方法の最終ステップとして、ケラチン繊維に塗布する、方法。
【請求項2】
前記オルト−ジフェノール誘導体が天然オルト−ジフェノール誘導体から選択されることを特徴とする請求項1に記載の染色方法。
【請求項3】
成分a)が、ベンゼン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、インダン、インデン、アントラセン、フェナントレン、イソインドール、インドリン、イソインドリン、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン、クロマン、イソクロマン、クロメン、イソクロメン、キノリン、テトラヒドロキノリン、およびイソキノリンから選択される芳香環を有するオルト−ジフェノールであり、前記芳香環が、前記芳香環の2つの隣接する炭素原子に結合する少なくとも2つのヒドロキシル基を含むことを特徴とする請求項1に記載の染色方法。
【請求項4】
成分a)が、塩化または非塩化形態の以下の式(I)またはそのオリゴマーのオルト−ジフェノール誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の染色方法:
【化1】
(式(I)中、置換基:
・R〜Rは、同一でも異なっていてもよく:
水素原子;
ハロゲン原子、
ヒドロキシル基、
カルボキシル基、
アルキルカルボキシレート基またはアルコキシカルボニル基、
置換されていてもよいアミノ基、
置換されていてもよい直鎖状または分枝状のアルキル基、
置換されていてもよい直鎖状または分枝状のアルケニル基、
置換されていてもよいシクロアルキル基、
アルコキシ基、
アルコキシアルキル基、
アリール基が置換されていてもよいアルコキシアリール基、
アリール基、
置換アリール基、
飽和または不飽和の複素環式基であって、カチオンまたはアニオン電荷を有してもよく、置換されていてもよく、および/または、置換されていてもよい芳香環と縮合していてもよい、複素環式基、
1つ以上のケイ素原子を含有する基、
を表し、
・2つの隣接する炭素原子に結合した2つの置換基R−R、R−R、またはR−Rが、それらが結合する炭素原子とともに、1つ以上のヘテロ原子を場合により有し、1つ以上のヘテロ原子を場合により有する1つ以上の飽和または不飽和の環と場合により縮合した、飽和または不飽和で芳香族または非芳香族の環を形成する)。
【請求項5】
前記オルト−ジフェノール誘導体が:
フラボノール類、
アントシアニジン類、
アントシアニン類またはアントシアン類、
オルト−ヒドロキシベンゾエート類、
フラボン類、
ヒドロキシスチルベン類、
3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンおよびその誘導体、
2,3−ジヒドロキシフェニルアラニンおよびその誘導体、
4,5−ジヒドロキシフェニルアラニンおよびその誘導体、
ジヒドロキシシンナメート類、
オルト−ポリヒドロキシクマリン類、
オルト−ポリヒドロキシイソクマリン類、
オルト−ポリヒドロキシクマロン類、
オルト−ポリヒドロキシイソクマロン類、
オルト−ポリヒドロキシカルコン類、
オルト−ポリヒドロキシクロモン類、
オルト−ポリヒドロキシキノン類、
オルト−ヒドロキシキサントン類、
1,2ジヒドロキシベンゼンおよびその誘導体、
1,2,4−トリヒドロキシベンゼンおよびその誘導体、
1,2,3−トリヒドロキシベンゼンおよびその誘導体、
2,4,5−トリヒドロキシトルエンおよびその誘導体、
プロアントシアニジン類、
プロアントシアニン類、
タンニン酸、
エラグ酸、
ならびに上記化合物の混合物、
から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項6】
前記天然オルト−ジフェノール誘導体が、動物、細菌、菌類、藻類、植物、および果実の抽出物から選択されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項7】
前記マンガン塩が、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、および過塩素酸塩、カルボン酸塩、ならびにそれらの混合物から選択され、
前記亜鉛塩が、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、塩化亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、およびアスパラギン酸亜鉛から選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項8】
成分c)が過酸化水素または尿素過酸化物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項9】
前記(重)炭酸塩が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムの(重)炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項10】
前記(重)炭酸塩以外のアルカリ剤が:
アンモニア水、
アルカノールアミン類
オキシエチレン化エチレンジアミン類、
オキシプロピレン化エチレンジアミン類、
無機または有機の水酸化物類、
アルカリ金属ケイ酸塩類、
アミノ酸類、および
以下の式(II):
【化2】
(式(II)中:
Wは、置換されていてもよい、二価の(C〜C)アルキレン基であり;
、R、R、およびRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子またはC〜Cアルキル基またはC〜Cヒドロキシアルキル基を表す)
の化合物から選択されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項11】
前記チタン塩がチタンIV塩類から選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項12】
前記チタン塩がシュウ酸カリウムチタン二水和物KTiO(C2・2HおよびTi(SOである請求項11に記載の染色方法。
【請求項13】
スカンジウム塩が、水酸化スカンジウム、ハロゲン化スカンジウム、硫酸スカンジウム、硝酸スカンジウム、スカンジウムのカルボン酸塩、ならびにスカンジウムの(ポリ)ハロ(C〜C)アルキルスルホン酸塩から選択される、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に定義された成分a)、b)、c)、d)、e)、およびf)を含む水性組成物をケラチン繊維に塗布することを含む1つのステップで行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1のステップが、請求項1〜8のいずれか一項に定義された成分a)、b)、およびc)を含む組成物を前記繊維に塗布することを含み、次に第2のステップにおいて、請求項9または10に定義された成分d)およびe)を含む組成物、次に第3のステップにおいて、請求項11〜13のいずれか一項に定義された成分f)を含む組成物を、前記繊維に塗布し、前記3つの組成物の少なくとも1つが水性であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1、9、または10のいずれか一項に定義された成分d)および/またはe)を含む組成物の塗布を含むステップを行う前に、前記ケラチン繊維の機械的拭き取りおよび/または乾燥および/またはすすぎが行われる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に定義された化合物a)、b)、c)、d)、e)、およびf)を含有する、ケラチン繊維を染色するための化粧品組成物。
【請求項18】
2〜6つの組成物を含有する2〜6つの区画を含む多区画装置であって、その中に、請求項1〜13のいずれか一項に定義された成分a)、b)、c)、d)、e)、およびf)が分配され、前記組成物は水性または粉末状であり、これらの組成物の少なくとも1つが水性である、多区画装置。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれか一項の定義の1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体で染色されたケラチン繊維の色度および/または色の増強を改善するための、請求項1および11〜13のいずれか一項に定義されたチタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトケラチン繊維の染色方法であって、前記繊維が、a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、b)1種類以上のマンガン塩または亜鉛塩と、c)過酸化水素または1種類以上の過酸化水素生成系と、d)1種類以上の(重)炭酸塩または1種類以上の(重)炭酸塩生成系と、e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩とを含む1つ以上の化粧品組成物使用して処理される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルト−またはパラ−フェニレンジアミン類、オルト−またはパラ−アミノフェノール類、ならびに複素環式化合物などの酸化塩基として一般に知られている酸化染料前駆体を含有する染料組成物を用いて「永続的な」着色が得られることは周知であり実施されている。これらの酸化塩基は、無色または薄い色の化合物であり、酸化性生成物と組み合わせられると、酸化縮合の過程によって着色化合物を得ることができる。これらの酸化塩基を用いて得られる色合いは、カプラーまたは着色調整剤と組み合わせることで変更可能なことも知られており、着色調整剤は、特に芳香族メタ−ジアミン類、メタ−アミノフェノール類、メタ−ジフェノール類、およびインドール化合物などのある種の複素環式化合物から選択される。この酸化染色方法は、ケラチン繊維に、塩基、あるいは塩基およびカプラーの混合物と、酸化剤としての過酸化水素(Hまたは過酸化水素水溶液)とを塗布し、拡散させ、次に繊維をすすぐことを含む。これによって得られる着色は、永続的であり、強く、外部因子に対して、特に光、悪天候、洗浄、および摩擦に対して抵抗性である。
【0003】
しかし、それらを含有する市販の染毛剤は、一般に衣類を汚し、においおよび快適性の問題が生じ、ケラチン繊維を損傷するという欠点を有する。これは酸化染料を用いた場合に特に生じる。
【0004】
染色分野では、オルト−ジフェノール類を、特にマンガン(Mn)および/または亜鉛(Zn)の金属塩の存在下で使用して、毛髪または皮膚などのケラチン材料の染色を実施することも知られている。特に、特許出願の仏国特許第2 814 943号明細書、仏国特許第2 814 945号明細書、仏国特許第2 814 946号明細書、および仏国特許第2 814 947号明細書では、皮膚またはケラチン繊維を染色するための組成物であって、少なくとも1種類のオルト−ジフェノールと、Mnおよび/またはZnの酸化物および塩と、ある特定のMn、Zn/炭酸水素塩の比率での炭酸水素塩型のアルカリ剤と、場合により酵素とを含有する染料前駆体を含む組成物が提案されている。これらの文献によると、大気中の酸素またはあらゆる酸素生成系を用いてケラチン材料を着色することができる。
【0005】
しかし、得られる着色は、特に毛髪繊維の場合、強さが不十分であり、彩度が低い。
【0006】
さらに、媒染プロセスに使用される染料に使用される量と同様の量での、ケラチン繊維の染色における酸pHで金属の使用の実施が周知となっており、これは、堅牢な色調を得るために、染色を行う前の繊維の準備となる(たとえば、Ullmann’s Encyclopedia,“Metal and Dyes”,2005,§5.1,p.8参照)。
【0007】
しかし、この方法は、一般に、毛髪繊維の美容上の外観が必ずしも重視されないという欠点を有する。さらに、使用される鉄などの金属では、中間の弱い彩度の色合いが得られる。一般に、このような金属では有彩色の色合いを得ることができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ウルマンの百科事典(Ullmann’s Encyclopedia),「金属と染料」(“Metal and Dyes”),2005,§5.1,p.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、オルト−ジフェノール類を使用し、特に、オルト−ジフェノール類に富むケラチン繊維に対する影響が少ない天然抽出物を使用する、強く、堅牢で、および/または有彩色の着色が得られる染色方法の開発が実際に必要とされている。特に、外部因子(光、悪天候、洗髪)に対して十分な耐性があり、堅牢で均一である、すなわち根元から先端の間で弱い着色選択性を有しながら、強さおよび/または彩度が維持される、着色を得ることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は本発明によって実現され、本発明の主題の1つは、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトケラチン繊維の染色方法であり、前記繊維は、1つ以上のステップにおいて、成分:
a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、
b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩と、
c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系と、
d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、
e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、
f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩と、
を一緒にまたは別々に含有する1つ以上の化粧品組成物で処理され;
成分a)、b)、d)、e)、および/またはf)の少なくとも1つを含む少なくとも1つの組成物のpHはアルカリ性であり、すなわち7を超え、チタン塩およびスカンジウム塩から選択される塩を含む組成物は、後処理として、すなわち染色方法の最終ステップとして、ケラチン繊維に塗布されるものと理解される。
【0011】
したがって、ケラチン繊維は、染色方法の最後に、チタン塩またはスカンジウム塩を含む組成物で処理される。
【0012】
特に、1種類以上のチタン塩または1種類以上のスカンジウム塩を含む化粧品組成物はケラチン繊維に後処理として塗布される。
【0013】
本発明による染色方法の特定の一実施形態によると、化合物d)およびe)は:
成分a)、b)、およびc)との混合物中に存在する、
あるいは化合物a)、b)、およびc)を含む化粧品組成物の塗布後に別個に塗布される、
あるいは成分a)およびb)を含む化粧品組成物の塗布後に化合物c)とともに塗布される、
のいずれかである。
【0014】
本発明の染色方法の特定の一実施形態によると、チタン塩およびスカンジウム塩から選択される塩は、成分a)〜e)の塗布後に別個に塗布される。
【0015】
本発明の主題の1つは:
a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、
b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩と、
c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系と、
d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、
e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、
f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩と、
を含む、ケラチン繊維を染色するための化粧品組成物でもあり;
組成物のpHはアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間であると理解される。これは特に8〜10.5の間である。
【0016】
この染料組成物は好ましくは水性である。
【0017】
本発明の別の主題は:
a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、
b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩と、
c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系と、
d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、
e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、
f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩と、
を含む多区画装置に関し;
a)、b)、d)、e)、および/またはf)を含む少なくとも1つの組成物のpHはアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間であると理解される。これは特に8〜10.5の間である。
【0018】
多区画装置または「キット」は、本発明による染色方法の実施に好適である。
【0019】
本発明による方法は、ヒトケラチン繊維の染色において、堅牢で驚くべき彩度の染色結果が得られるという利点を有する。特に、本発明による染色方法は、洗浄、汗、皮脂、および光に対して耐性であり、繊維を損傷しない着色が得られる。さらに、行われた染色方法によって、着色の十分な「増強」が得られる。
【0020】
したがって、本発明の別の主題は、1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体で染色された、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトケラチン繊維の色度および/または色の増強を改善するための、1種類以上のチタン塩の使用である。
【0021】
本発明の他の主題、特徴、態様、および利点は、以下の説明および実施例を読めば、さらにより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
a)オルト−ジフェノール誘導体
本発明によると、染色方法では、1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体が使用される。
【0023】
オルト−ジフェノール誘導体は、染色方法の間に使用される1つ以上の化粧品組成物中に存在することができる。
【0024】
本発明の特定の一実施形態は、1つ以上の芳香環、好ましくはベンゼン環を含み、芳香環の2つの隣接する炭素原子に結合した少なくとも2つのヒドロキシル基(OH)を含むオルト−ジフェノール誘導体または化合物の混合物に関する。特に、本発明によるオルト−ジフェノール誘導体は、インドール単位を有する自己酸化性誘導体ではない。特に、それらは5,6−ジヒドロキシインドールではない。
【0025】
芳香環は、特に縮合アリール、または縮合複素環式芳香環、すなわち1つ以上のヘテロ原子を場合により含有する芳香族環であってよく、たとえば、ベンゼン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、インダン、インデン、アントラセン、フェナントレン、イソインドール、インドリン、イソインドリン、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン、クロマン、イソクロマン、クロメン、イソクロメン、キノリン、テトラヒドロキノリン、およびイソキノリンであってよく、前記芳香環は、芳香環の2つの隣接する炭素原子に結合した少なくとも2つのヒドロキシル基を含む。優先的には、本発明によるオルト−ジフェノール誘導体の芳香環はベンゼン環である。
【0026】
用語「縮合環」は、少なくとも2つの飽和または不飽和の複素環式または非複素環式環が、共通の結合を有する、すなわち少なくとも1つの環が別の環と縮合していることを意味する。
【0027】
本発明によるオルト−ジフェノール類は、塩化されていてもいなくてもよい。これらは、アグリコン型(結合する糖を有さない)またはグリコシル化化合物の形態であってもよい。
【0028】
特に、オルト−ジフェノール誘導体a)は、塩化または非塩化形態の式(I)、またはそのオリゴマーであり:
【0029】
【化1】
【0030】
式(I)中、置換基:
・R〜Rは、同一でも異なっていてもよく:
水素原子;
ハロゲン原子、
ヒドロキシル基、
カルボキシル基、
アルキルカルボキシレート基またはアルコキシカルボニル基、
置換されていてもよいアミノ基、
置換されていてもよい直鎖状または分枝状のアルキル基、
置換されていてもよい直鎖状または分枝状のアルケニル基、
置換されていてもよいシクロアルキル基、
アルコキシ基、
アルコキシアルキル基、
アリール基が置換されていてもよいアルコキシアリール基、
アリール基、
置換アリール基、
飽和または不飽和の複素環式基であって、カチオンまたはアニオン電荷を有してもよく、置換されていてもよく、および/または芳香環、好ましくはベンゼン環と縮合していてもよく、前記芳香環は、特に1つ以上のヒドロキシルまたはグリコシルオキシ基で置換されていてもよい、複素環式基、
1つ以上のケイ素原子を含有する基、
を表し、
・2つの隣接する炭素原子に結合した2つの置換基R−R、R−R、またはR−Rが、それらが結合する炭素原子とともに、1つ以上のヘテロ原子を場合により有し、1つ以上のヘテロ原子を場合により有する1つ以上の飽和または不飽和の環と場合により縮合した、飽和または不飽和で芳香族または非芳香族の環を形成する。
【0031】
本発明の特定の一実施形態は、2つの隣接する置換基R−R、R−R、またはR−Rが、それらが結合する炭素原子とともに、ピロリル基を形成することはできない、式(I)のオルト−ジフェノール誘導体に関する。特に、RおよびRは、2つのヒドロキシルを有するベンゼン環に縮合したピロリル基を形成することができない。
【0032】
本発明の目的では、他に記載のない限り:
飽和または不飽和で縮合していてもよい環は、置換されていてもよい。
【0033】
アルキル基は、飽和で、直鎖状または分枝状の飽和炭化水素系基であり、一般にC〜C20、特にC〜C10、好ましくはC〜Cのアルキル基であり、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルである。
【0034】
アルケニル基は、直鎖状または分枝状の不飽和C〜C20炭化水素系基であり;好ましくは少なくとも1つの二重結合を含み、たとえばエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、2−メチルプロピレン、およびデシレンである。
【0035】
アリール基は、優先的には6〜30個の炭素原子を含み、少なくとも1つの環が芳香族である、縮合したまたは縮合していない単環式または多環式の炭素系基であり;アリール基は優先的には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル、およびテトラヒドロナフチルから選択される。
【0036】
アルコキシ基は、前述の定義のアルキル、好ましくはC〜C10のアルキルを有するアルキル−オキシ基であり、たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびブトキシである。
【0037】
アルコキシアルキル基は、好ましくは(C〜C20)アルコキシ(C〜C20)アルキル基であり、たとえばメトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチルなどである。
【0038】
シクロアルキル基は、一般にC〜Cシクロアルキル基であり、好ましくはシクロペンチル基およびシクロヘキシル基である。シクロアルキル基は、置換シクロアルキル基であってよく、特にアルキル、アルコキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、アミン、およびケトン基で置換されていてもよい。
【0039】
置換されていてもよい場合のアルキル基またはアルケニル基は、少なくとも1つの炭素原子に結合した少なくとも1つの置換基であって:
ハロゲン原子;
ヒドロキシル基;
〜Cアルコキシ基;
〜C10アルコキシカルボニル基;
〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基;
アミノ基;
5または6員のヘテロシクロアルキル基;
(C〜C)アルキル基、優先的にはメチルで置換されていてもよい、場合により陽イオンである5または6員のヘテロアリール基、優先的にはイミダゾリウム;
1つまたは2つの同一または異なるC〜Cアルキル基で置換されたアミノ基であって、少なくとも:
1つのヒドロキシル基、
1つまたは2つの置換されていてもよいC〜Cアルキル基で置換されていてもよい1つのアミノ基であって、前記アルキル基は、それらが結合する窒素原子とともに、飽和または不飽和であり、置換されていてもよく、窒素と同一または異なる少なくとも1つの別のヘテロ原子を場合により含む、5〜7員の複素環を場合により形成する、1つのアミノ基、
第4級アンモニウム基−NR’R’’R’’’,M(式中、R’、R’’、およびR’’’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子またはC〜Cアルキル基を表し;Mは、有機酸または無機酸、あるいは対応するハロゲン化物の対イオンを表す)、
あるいは、(C〜C)アルキル基、優先的にはメチルで置換されていてもよい、場合により陽イオンである5または6員のヘテロアリール基、優先的にはイミダゾリウム、
を場合により有する、アミノ基;
アシルアミノ(−NR−COR’)基(式中、R基は、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基であり、R’基は、C〜Cアルキル基である);カルバモイル((R)N−CO−)基(式中、R基は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基を表す);アルキルスルホニルアミノ(R’SO−NR−)基(式中、R基は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基を表し、R’基は、C〜Cアルキル基またはフェニル基を表す);アミノスルホニル((R)N−SO−)基(式中、R基は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基を表す);
酸または塩化された(好ましくはアルカリ金属、あるいは置換または非置換のアンモニウムで塩化された)形態のカルボキシル基;
シアノ基;
ニトロ基;
カルボキシル基またはグリコシルカルボニル基;
1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基;
グリコシルオキシ基;ならびに
1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニル基、
から選択される、少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい。
【0040】
アリールまたは複素環式基、あるいは基のアリール部分または複素環式部分は、置換されていてもよい場合、少なくとも1つの炭素原子に結合した少なくとも1つの置換基であって:
ヒドロキシル基、C〜Cアルコキシ基、C〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基、アシルアミノ基、アミノ基であって、少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有する2つの同一または異なっていてよいC〜Cアルキル基、あるいはそれらが結合する窒素原子とともに、飽和または不飽和で、置換されていてもよい5〜7員、好ましくは5または6員の、窒素と同じまたは異なる別のヘテロ原子を場合により含む複素環を場合により形成するそのような2つの基で置換されたアミノ基から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい、C〜C10、好ましくはC〜Cアルキル基;
ハロゲン原子;
ヒドロキシル基;
〜Cアルコキシ基;
〜C10アルコキシカルボニル基;
〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基;
アミノ基;
5または6員のヘテロシクロアルキル基;
(C〜C)アルキル基、優先的にはメチルで置換されていてもよい、場合により陽イオンである5または6員のヘテロアリール基、優先的にはイミダゾリウム;
1つまたは2つの同一または異なるC〜Cアルキル基で置換されたアミノ基であって、少なくとも:
1つのヒドロキシル基、
1つまたは2つの置換されていてもよいC〜Cアルキル基で置換されていてもよい1つのアミノ基であって、前記アルキル基は、それらが結合する窒素原子とともに、飽和または不飽和であり置換されていてもよく、窒素と同一または異なる少なくとも1つの別のヘテロ原子を場合により含む、5〜7員の複素環を場合により形成する、1つのアミノ基、
第4級アンモニウム基−NR’R’’R’’’,M(式中、R’、R’’、およびR’’’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子またはC〜Cアルキル基を表し;Mは、有機酸または無機酸、あるいは対応するハロゲン化物の対イオンを表す);
あるいは(C〜C)アルキル基、優先的にはメチルで置換されていてもよい、場合により陽イオンである5または6員のヘテロアリール基、優先的にはイミダゾリウム、
を場合により有する、アミノ基;
アシルアミノ(−NR−COR’)基(式中、R基は、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基であり、R’基は、C〜Cアルキル基である);カルバモイル((R)N−CO−)基(式中、R基は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基を表す);アルキルスルホニルアミノ(R’SO−NR−)基(式中、R基は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基を表し、R’基は、C〜Cアルキル基またはフェニル基を表す);アミノスルホニル((R)N−SO−)基(式中、R基は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により有するC〜Cアルキル基を表す);
酸または塩化された(好ましくはアルカリ金属、あるいは置換または非置換のアンモニウムで塩化された)形態のカルボキシル基;
シアノ基;
ニトロ基;
ポリハロアルキル基、優先的にはトリフルオロメチル;
カルボキシル基またはグリコシルカルボニル基;
1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基;
グリコシルオキシ基;ならびに
1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニル基;
から選択される、少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい。
【0041】
本発明の目的のためには、用語「グリコシル基」は、単糖または多糖から誘導される基を意味する。
【0042】
1つ以上のケイ素原子を含有する基は、好ましくはポリジメチルシロキサン基、ポリジフェニルシロキサン基、ポリジメチルフェニルシロキサン基、またはステアロキシジメチコン基である。
【0043】
複素環式基は、一般に、少なくとも1つの環の中に、O、N、およびS、好ましくはOまたはNから選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、特に1つ以上のアルキル、アルコキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、アミン、またはケトン基で置換されていてもよい基である。これらの環は、複素環の炭素原子上に1つ以上のオキソ基を含んでもよい。
【0044】
使用できる複素環式基の中では、フリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、およびチエニル基を挙げることができる。
【0045】
より好ましくは、複素環式基は、縮合基であり、たとえばベンゾフリル、クロメニル、キサンテニル、インドリル、イソインドリル、キノリル、イソキノリル、クロマニル、イソクロマニル、インドリニル、イソインドリニル、クマリニル、またはイソクマリニル基であり、これらの基は、特に1つ以上のOH基で置換されていてもよい。
【0046】
本発明の方法において有用なオルト−ジフェノール類は、天然または合成であってよい。天然オルト−ジフェノール類に含まれるのは、天然に存在しうる化合物および化学(半)合成によって再生される化合物である。
【0047】
本発明のオルト−ジフェノール塩は、酸または塩基の塩であってよい。酸は無機または有機であってよい。好ましくは、酸は、結果として塩化物が得られる塩酸である。
【0048】
塩基は無機または有機であってよい。特に、塩基は、結果としてナトリウム塩が得られる水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物である。
【0049】
本発明の特定の一実施形態によると、本発明の組成物は、成分a)として、天然には存在しない1種類以上の合成オルト−ジフェノール誘導体を含む。
【0050】
本発明の別の好ましい一実施形態によると、ケラチン繊維の染色方法に有用な組成物は、成分a)として、1種類以上の天然オルト−ジフェノール誘導体を含む。
【0051】
特に、a)による本発明の方法において使用できるオルト−ジフェノール類は、特に:
フラバノール類、たとえばカテキンおよびエピカテキンガレート,
フラボノール類、たとえばケルセチン、
アントシアニジン類、たとえばシアニジン、デルフィニジン、またはペツニジン、
アントシアニン類またはアントシアン類、たとえばミルチリン、
オルト−ヒドロキシベンゾエート類、たとえば没食子酸塩、
フラボン類、たとえばルテオリン、
オキシル化(たとえばグルコシル化)されていてもよいヒドロキシスチルベン類、たとえばテトラヒドロキシ−3,3’、4,5’−スチルベン、
3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンおよびその誘導体、
2,3−ジヒドロキシフェニルアラニンおよびその誘導体、
4,5−ジヒドロキシフェニルアラニンおよびその誘導体、
ジヒドロキシシンナメート類、たとえばコーヒー酸およびクロロゲン酸、
オルト−ポリヒドロキシクマリン類、
オルト−ポリヒドロキシイソクマリン類、
オルト−ポリヒドロキシクマロン類、
オルト−ポリヒドロキシイソクマロン類、
オルト−ポリヒドロキシカルコン類、
オルト−ポリヒドロキシクロモン類、
キノン類、
ヒドロキシキサントン類、
1,2ジヒドロキシベンゼンおよびその誘導体、
1,2,4−トリヒドロキシベンゼンおよびその誘導体、
1,2,3−トリヒドロキシベンゼンおよびその誘導体、
2,4,5−トリヒドロキシトルエンおよびその誘導体、
プロアントシアニジン類、特にプロアントシアニジンA1、A2、B1、B2、B3、およびC1、
プロアントシアニン類、
タンニン酸、
エラグ酸、
ならびに上記化合物の混合物
であり、
特に、カテキン、ケルセチン、ブラジリン、ヘマチン、ヘマトキシリン、クロロゲン酸、コーヒー酸、没食子酸、カテコール、没食子酸、L−DOPA、ペラルゴニジン、シアニジン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピガロカテキン3−ガレート(EGCG)、(+)−カテキン、イソケルセチン、ポミフェリン、エスクレチン、6,7−ジヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメトキシフェニル)クマリン、サンタリンAC、マンギフェリン、ブテイン、マリチメチン、スルフレチン、ロブテイン、ベタニジン、ペリカムピリノンA、テアフラビン、プロアントシアニジンA2、プロアントシアニジンB2、プロアントシアニジンC1、プロシアニジン類DP 4−8、タンニン酸、プルプロガリン、5,6−ジヒドロキシ−2−メチル−1,4−ナフトキノン、アリザリン、ウェデロラクトン、バリエガト酸、ゴンフィジン酸、キセルコム酸、カルノソール、およびそれらを含有する天然抽出物である。
【0052】
用語「カルボキシレート」は、カルボン酸塩を意味する。
【0053】
用語「カルボン酸」は、少なくとも1つのカルボン酸−C(O)−OH基、好ましくは1〜4個の間、たとえば1または2個のカルボン酸基を含む化合物を意味する。特に、カルボン酸は:i)(C〜C10)アルキル−[C(O)−OH]およびii)het−[C(O)−OH]から選択され、式中、nは1〜4の間の整数(両端の値を含む)であり、好ましくは1〜2の間の整数であり、hetはピロリドンなどの複素環式基を表し、アルキル基またはhet基は、特にOH、および(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノから選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0054】
染料前駆体がD型およびL型を有する場合、ラセミ混合物などのように、2つの型を本発明による組成物中に使用することができる。
【0055】
優先的には、本発明によるオルト−ジフェノールは、フラバノール類、フラボノール類、オルト−ヒドロキシベンゾエート類、イソフラボン類、およびネオフラボン類から選択される。
【0056】
一実施形態によると、天然オルト−ジフェノールは、全体的または部分的に使用される動物、細菌、菌類、藻類、植物、および果実の抽出物から得られる。特に植物に関して、抽出物は、柑橘類果実などの果実、豆果、高木、および低木から得られる。前述の定義のオルト−ジフェノール類に富むこれらの抽出物の混合物を使用することもできる。
【0057】
好ましくは、本発明の天然オルト−ジフェノールは、植物または植物部位の抽出物から得られる。
【0058】
本発明の目的のためには、これらの抽出物は化合物a)と同じものとなる。
【0059】
抽出物は、種々の植物部位、たとえば根、木質、樹皮、葉、花、果実、種子、小鱗茎、または皮から抽出することによって得られる。
【0060】
植物抽出物の中では、茶葉およびバラの抽出物を挙げることができる。
【0061】
果実抽出物の中では、リンゴ、ブドウ(特にブドウの種子)の抽出物、あるいはカカオの豆および/またはさやの抽出物を挙げることができる。
【0062】
豆果抽出物の中では、ジャガイモまたはタマネギの皮の抽出物を挙げることができる。
【0063】
高木の木質の抽出物の中では、松の樹皮の抽出物またはロッグウッドの抽出物を挙げることができ、
植物抽出物の混合物を使用することもできる。
【0064】
本発明の特定の一実施形態によると、オルト−ジフェノール誘導体は、オルト−ジフェノール類に富む天然抽出物である。好ましい一形態によると、オルト−ジフェノール誘導体は、単に天然抽出物である。
【0065】
優先的には、本発明によるオルト−ジフェノールは、カテキン、ケルセチン、ヘマチン、ヘマトキシリン、ブラジリン、没食子酸、ならびにそれらを含有する天然抽出物であって、ブドウの搾りかす、松の樹皮、緑茶、タマネギ、カカオ豆、ロッグウッド、レッドウッド、および虫こぶから選択される天然抽出物から選択される。
【0066】
さらにより優先的には、本発明による1つ以上の組成物中に使用されるオルト−ジフェノールは、カテキン、ケルセチン、没食子酸、およびヘマトキシリンから選択される。
【0067】
本発明による天然抽出物は、粉末または液体の形態であってよい。好ましくは、本発明の抽出物は粉末の形態である。
【0068】
本発明によると、本発明による方法において有用な1つ以上の化粧品組成物中の成分a)として使用される天然、合成のオルト−ジフェノール誘導体、および/または天然抽出物は、好ましくは、オルト−ジフェノールまたは抽出物を含有する組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%である。
【0069】
純粋なオルト−ジフェノール類に関して、それらを含有する組成物中の含有量は、好ましくは、これらの組成物のそれぞれの0.001重量%〜5重量%の間である。
【0070】
抽出物に関して、抽出物自体を含有する組成物中の含有量は、好ましくは、これらの組成物のそれぞれの0.5重量%〜20重量%の間である。
【0071】
b)マンガン塩または亜鉛塩
本発明による染色方法では、1種類以上のマンガン(Mn)塩または1種類以上の亜鉛(Zn)塩が使用される。マンガン塩または亜鉛塩は、染色方法の間に使用される1つ以上の化粧品組成物中に使用することができる。
【0072】
本発明の目的のためには、用語「塩」は、これらの金属の酸化物、および特に金属に対する酸の作用で得られる塩自体を意味する。
【0073】
好ましくは、塩は酸化物ではない。
【0074】
塩の中では、ハロゲン化物、たとえば、塩化物、フッ化物、およびヨウ化物;硫酸塩、リン酸塩;硝酸塩;過塩素酸塩およびカルボン酸塩、およびポリマー塩を挙げることができ、それらの混合物も挙げることができる。
【0075】
特に、マンガン塩は、炭酸マンガン、炭酸水素マンガン、および炭酸二水素マンガン以外である。
【0076】
本発明において使用できるカルボン酸塩としては、ヒドロキシル化カルボン酸塩、たとえばグルコン酸塩も挙げられる。
【0077】
ポリマー塩の例としては、ピロリドンカルボン酸マンガンを挙げることができる。
【0078】
例としては、塩化マンガン、フッ化マンガン、酢酸マンガン四水和物、乳酸マンガン三水和物、リン酸マンガン、ヨウ化マンガン、硝酸マンガン三水和物、臭化マンガン、過塩素酸マンガン四水和物、硫酸マンガン一水和物、およびグルコン酸マンガンを挙げることができる。好都合に使用される塩は、グルコン酸マンガンおよび塩化マンガンである。
【0079】
亜鉛塩の中では、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、塩化亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、およびアスパラギン酸亜鉛を挙げることができる。
【0080】
マンガン塩および亜鉛塩は、固体の形態で組成物に導入することができるし、あるいは、これらのイオンに富む天然水、鉱水、または温泉、あるいは海水(特に死海)から得ることができる。これらは、無機化合物、たとえば土、黄土、たとえば粘土(たとえば緑粘土)、またはさらにはそれらを含有する植物抽出物に由来するものであってもよい(たとえば、仏国特許第2 814 943号明細書参照)。
【0081】
本発明の好ましい一実施形態によると、使用されるマンガン塩または亜鉛塩は、前記金属塩を含有する組成物の全重量の約0.001重量%〜0.1重量%であり、さらに優先的には約0.05重量%〜10重量%である。
【0082】
特に、本発明の金属塩は、酸化状態が2であり、たとえばMn(II)およびZn(II)である。
【0083】
好ましくは、本発明の染色方法では、1種類以上のマンガン塩、特にMn(II)金属塩を含む化粧品組成物が使用される。
【0084】
さらにより優先的には、マンガン塩は、マンガンのカルボン酸塩、特にグルコン酸マンガン、およびマンガンのハロゲン化物、たとえば塩化マンガンから選択され、特にグルコン酸マンガンから選択される。
【0085】
c)過酸化水素または過酸化水素を生成する系
本発明の状況においては、第3の構成要素は、過酸化水素または過酸化水素生成系であり、たとえば:
a)尿素過酸化物;
b)過酸化水素を放出可能なポリマー錯体、たとえば、特に粉末形態のポリビニルピロリドン/HO、ならびに米国特許第5,008,093号明細書、米国特許第3,376,110号明細書、および米国特許第5,183,901号明細書に記載の他のポリマー錯体;
c)好適な基質(たとえばグルコースオキシダーゼの場合のグルコース、またはウリカーゼの場合の尿酸)の存在下で過酸化水素を生成するオキシダーゼ類;
d)水中で過酸化水素を生成する金属過酸化物、たとえば過酸化カルシウムまたは過酸化マグネシウム;
e)過ホウ酸塩類;あるいは
f)過炭酸塩類
である。
【0086】
本発明の好ましい一実施形態によると、本発明の組成物は、a)尿素過酸化物、b)ポリビニルピロリドン/Hから選択される過酸化水素を放出可能なポリマー錯体;c)オキシダーゼ類;e)過ホウ酸塩類、およびf)過炭酸塩類から選択される過酸化水素を生成する1種類以上の系を含有する。
【0087】
特に、第3の構成要素は過酸化水素である。
【0088】
さらに、過酸化水素または過酸化水素生成体を含む組成物は、染毛組成物中に従来使用され以下に定義されるような種々の補助剤をも含有することもできる。
【0089】
本発明の特定の一形態によると、使用される過酸化水素、または使用される過酸化水素を生成する系は、好ましくは、それらを含有する組成物の残重量に対して0.001重量%〜12重量%の過酸化水素となり、さらにより優先的には0.2重量%〜2.7重量%となる。
【0090】
d)(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する系
本発明によると、染色方法では、1種類以上の(重)炭酸塩、または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系が使用される。
【0091】
本発明の目的のためには、用語「(重)炭酸塩を生成する系」は、その場で(重)炭酸塩を生成する系、たとえば水中の二酸化炭素、あるいは無機酸または有機酸でカーボネートが緩衝されることによって(重)炭酸塩を生成する系を意味する。
【0092】
(重)炭酸塩または(重)炭酸塩生成系は、染色方法の間の1つ以上の化粧品組成物中に使用することができる。
【0093】
(重)炭酸塩は:
a)アルカリ金属の炭酸塩(Met,CO2−)、アルカリ土類金属の炭酸塩(Met’2+,CO2−)、アンモニウムの炭酸塩((R’’,CO2−)、またはホスホニウムの炭酸塩((R’’P+),CO2−(式中、Met’はアルカリ土類金属を表し、Metはアルカリ金属を表し、R’’は、同一または異なるものであって、水素原子、または置換されていてもよい(C〜C)アルキル基、たとえばヒドロキシエチルを表す)、
b)以下の式:
R’,HCO(式中、R’は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基R’’−、またはホスホニウム基R’’−を表し、R’’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、または置換されていてもよい(C〜C)アルキル基、たとえばヒドロキシエチルを表し、R’が水素原子を表す場合、その炭酸水素塩は炭酸二水素塩(CO,HO)と呼ばれる);および
Met’2+(HCO(式中、Met’はアルカリ土類金属を表す)
の炭酸水素塩とも呼ばれる重炭酸塩、
から選択される。
【0094】
特に、(重)炭酸塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムの(重)炭酸塩から選択され、優先的には、アルカリ金属またはアンモニウムの(重)炭酸塩から選択される。
【0095】
特に、Na、K、Mg、およびCaの炭酸塩または炭酸水素塩、ならびにそれらの混合物、特に炭酸水素ナトリウムを挙げることができる。これらの炭酸水素塩は、天然水、たとえばVichy盆地またはLa Roche−Posayのわき水またはBadoitの水に由来するものであってよい(たとえば、仏国特許第2 814 943号明細書参照)。特に、炭酸ナトリウム[497−19−8]=NaCO、炭酸水素ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム[144−55−8]=NaHCO、ならびに炭酸二水素ナトリウム=Na(HCOを挙げることができる。
【0096】
本発明によると、使用される(重)炭酸塩は、好ましくは、(重)炭酸塩物質を含有する組成物の全重量の0.001重量%〜10重量%であり、さらにより優先的には0.005重量%〜5重量%である。
【0097】
好ましくは、染色方法の間の組成物中に使用される(重)炭酸塩は、(重)炭酸アンモニウムまたは重炭酸ナトリウムである。
【0098】
e)(重)炭酸塩以外の塩基性化剤
本発明による染色方法において第5の成分として使用される塩基性化剤は、前述の定義の(重)炭酸塩iv)とは異なるものである。これは、その物質が存在する組成物のpHを増加させる物質である。塩基性化剤は、ブレンステッド、ローリー、またはルイス塩基である。これは無機または有機であってよい。
【0099】
特に、前記物質は、i)アンモニア水、ii)アルカノールアミン類、たとえばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびそれらの誘導体、iii)オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化エチレンジアミン類、iv)無機または有機の水酸化物類、v)アルカリ金属ケイ酸塩類、たとえばメタケイ酸ナトリウム類、vi)アミノ酸類、好ましくは塩基性アミノ酸類、たとえばアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、およびヒスチジン、ならびにvii)以下の式(II):
【0100】
【化2】
【0101】
(式中:
Wは、特にヒドロキシル基またはC〜Cアルキル基で置換されていてもよい、二価の(C〜C)アルキレン基、好ましくはプロピレン基であり;
、R、R、およびRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子またはC〜Cアルキル基またはC〜Cヒドロキシアルキル基を表す)
の化合物から選択される。
【0102】
無機または有機水酸化物類は、好ましくは、i)アルカリ金属の水酸化物、ii)アルカリ土類金属の水酸化物、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、iii)遷移金属水酸化物、たとえばIII族、IV族、V族、およびVI族の金属の水酸化物、ならびにiv)ランタニドまたはアクチニドの水酸化物、水酸化第4級アンモニウム、および水酸化グアニジニウムから選択される。
【0103】
優先的には、本発明による組成物または本発明において使用される方法のいずれの場合も、塩基性化剤は水酸化ナトリウムNaOHではない。より一般的および優先的には、本発明による組成物または本発明において使用される方法のいずれの場合も、塩基性化剤は、アルカリ金属水酸化物XOH(ここでX=アルカリ金属である)ではない。
【0104】
水酸化物は、その場で形成することができ、たとえば、水酸化カルシウムと炭酸グアニジンとを反応させることによって水酸化グアニジンを形成することができる。
【0105】
前述の定義の塩基性化剤d)は、好ましくは、それらを含有する組成物の重量の0.001重量%〜10重量%であり、特に組成物の0.005重量%〜8重量%である。
【0106】
好ましくは、アルカリ剤は、アルカノールアミン類、特にモノエタノールアミンから選択される。
【0107】
f)塩
好ましい一実施形態によると、本発明により使用される成分f)はチタン塩である。
【0108】
チタン塩:
本発明の目的のためには、用語「チタン塩」は、この金属の酸化物、および特に金属に対する酸の作用で得られる塩自体を意味する。
【0109】
本発明の特定の一実施形態によると、チタン誘導体は:
i)酸化状態4のチタン塩類、たとえばシュウ酸カリウムチタン二水和物KTiO(C・2HO、Ti(SO
ii)酸化チタン類およびそれらの塩、それらの水和物、およびそれらの担持形態から特に選択される酸化チタン類、
iii)チタン錯体、たとえば、米国特許第3,931,249号明細書などに記載されるフタロシアニン類、
から選択される。
【0110】
酸化チタンの中では、言及することができる例としては、Ullhamnn encyclopedia “Titanium, Titanium Alloys and Titanium Compounds”,2005 Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,Weinheim,10.1002/14356007.a27 095,pp.1−33に記載されるチタンの酸化物および水酸化物が挙げられる。特に、金属誘導体は、チタン(Ti)であり、チタン(III)の水酸化物および酸化物Ti(OH)およびTiO、三酸化二チタンTi、アルカリ土類金属チタン三酸化物、アルカリ土類金属チタン水酸化物、一般式MIITiO(ここで、MIIは、金属のMg、Zn、Mn、またはCoを表す)で表されるチタン酸塩、ペルオキシチタン酸およびペルオキシチタン酸塩HTiO、二酸化チタン(II)TiO、二硫化チタンTiSから選択される。
【0111】
酸化チタン類は、TiOを含有するアナターゼおよびルチル;カルシウム三酸化物CaTiOを含有するペロブスカイト、CaTi(SiO)Oを含有するスフェンまたはチタン石などの鉱物からも得ることができる。
【0112】
優先的には、チタン塩は、酸化状態4のチタンの塩、たとえばシュウ酸カリウムチタン二水和物KTiO(C・2HOから選択される。
【0113】
別の好ましい一実施形態によると、本発明による成分f)はスカンジウム塩である。
【0114】
スカンジウム塩:
本発明の目的のためには、用語「スカンジウム塩」は、この金属の酸化物、および特に金属に対する酸の作用で得られる塩自体を意味する。
【0115】
好ましくは、スカンジウム塩は酸化物ではない。
【0116】
スカンジウム塩の中では、水酸化物、ハロゲン化物、たとえば塩化物、硫酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、たとえば酢酸塩およびグルコン酸塩、ならびにスルホン酸塩、特に(ポリ)ハロ(C〜C)アルキルスルホン酸塩、たとえばトリフルオロメタンスルホン酸塩を挙げることができる。
【0117】
例としては、水酸化スカンジウム、塩化スカンジウム、硫酸スカンジウム、硝酸スカンジウム、無水または水和した酢酸スカンジウム、ならびにトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムを挙げることができる。
【0118】
好ましくは、染色方法において使用されるスカンジウム塩は、無水または水和した酢酸スカンジウムである。
【0119】
本発明の好ましい一実施形態においては、本発明の方法または組成物に使用されるチタン塩またはスカンジウム塩のモル量は、染料のモル量に等しい。
【0120】
チタン塩またはスカンジウム塩は、本発明による方法において使用される化粧品組成物中に、それらを含有する組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%の範囲の含有量で存在する。
【0121】
優先的には、本発明によるチタン塩またはスカンジウム塩は、少なくとも0.0001g/Lの比率で水に対して可溶性である。
【0122】
チタン塩またはスカンジウム塩は、固体の形態で組成物に導入することができるし、あるいは、これらのイオンに富む天然水、鉱水、または温泉、あるいは海水(特に死海の水)から得ることができる。これらは、無機化合物、たとえば土、黄土、たとえば粘土(たとえば緑粘土)、またはさらにはそれらを含有する植物抽出物に由来するものであってもよい(たとえば、仏国特許第2 814 943号明細書参照)。
【0123】
水:
本発明の一実施形態によると、本発明の方法に、好ましくは水が含まれる。これは、ケラチン繊維の水分、および/または前述の定義の化合物a)〜f)を含む組成物、または1種類以上の他の組成物に由来するものであってよい。
【0124】
好ましくは、水は、前述の定義のa)〜f)から選択される少なくとも1種類の化合物を含む少なくとも組成物に由来する。
【0125】
化粧品組成物:
本発明による化粧品組成物は化粧品的に許容され、すなわちこれらは、水、または水と1種類以上の有機溶媒との混合物、または有機溶媒の混合物を一般に含む染色担体を含む。
【0126】
用語「有機溶媒」は、別の物質を化学的に変化させることなく溶解または分散させることが可能な有機物質を意味する。
【0127】
有機溶媒:
言及できる有機溶媒の例としては、C〜C低級アルコール類、たとえばエタノールおよびイソプロパノール;ポリオール類およびポリオールエーテル類、たとえば2−ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール;ならびに芳香族アルコール類、たとえばベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールが挙げられる。
【0128】
有機溶媒は、染料組成物の全重量に対して、好ましくは約1重量%〜40重量%の間、さらにより好ましくは約5重量%〜30重量%の間の比率で存在する。
【0129】
補助剤:
本発明による染色方法の組成物は、染毛組成物に従来使用される種々の補助剤をも含有することができ、たとえば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、または両性イオン性の界面活性剤、あるいはそれらの混合物、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、または両性イオン性のポリマー、あるいはそれらの混合物、無機または有機の増粘剤、特にアニオン性、カチオン性、非イオン性、および両性のポリマー結合性増粘剤、酸化防止剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、香料、緩衝剤、分散剤、調整剤、たとえば揮発性または不揮発で変性または未変性のシリコーン類、膜形成剤、セラミド類、防腐剤、および乳白剤を含有することができる。
【0130】
前記補助剤は、好ましくは、アニオン性または非イオン性の界面活性剤またはそれらの混合物などの界面活性剤、ならびに無機または有機の増粘剤から選択される。
【0131】
上記補助剤は、それらのそれぞれの量が、一般に組成物の重量に対して0.01重量%〜40重量%の間、好ましくは組成物の重量に対して0.1重量%〜20重量%の間で存在する。
【0132】
言うまでもなく、本発明による染色方法に置いて有用な組成物に本来関連する好都合な性質が、想定される添加による悪影響を受けないまたは実質的に受けないように、当業者はこれらの任意選択のさらなる化合物を注意深く選択するであろう。
【0133】
追加の染料:
前述の定義の成分a)〜f)を使用する染色方法は、1種類以上のさらなる直接染料をも使用することができる。これらの直接染料は、たとえば、直接染色に従来使用されるものから選択され、それらの中では、あらゆる一般に使用される芳香族および/または非芳香族の染料、たとえば中性、酸性、またはカチオン性のニトロベンゼン直接染料、中性、酸性、またはカチオン性のアゾ直接染料、オルト−ジフェノール類以外の天然直接染料、中性、酸性、またはカチオン性のキノン、特にアントラキノン直接染料、アジン、トリアリールメタン、インドアミン(indoamine)、メチン、スチリル、ポルフィリン、金属ポルフィリン、フタロシアニン、およびメチンシアニン直接染料、ならびに蛍光染料を挙げることができる。
【0134】
天然直接染料の中では、ローソン、ユグロン、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジン、およびオルセイン類を挙げることができる。これらの天然染料を含有する抽出物または煎出物、特にヘンナ系パップまたは抽出物を使用することもできる。
【0135】
本発明によると、前述の定義の成分a)〜f)を含む本発明による組成物中、または本発明による染色方法の組成物中に使用される直接染料は、好ましくは組成物の全重量に対して約0.001重量%〜10重量%、さらにより優先的には約0.05重量%〜5重量%である。
【0136】
本発明による組成物、または前述の定義の成分a)〜f)を使用する方法の組成物は、ケラチン繊維の染色に従来使用される1種類以上の酸化塩基および/または1種類以上のカプラーをも含むことができる。
【0137】
酸化塩基の中では、パラ−フェニレンジアミン類、ビス(フェニル)アルケンジアミン類、パラ−アミノフェノール類、ビス−パラ−アミノフェノール類、オルト−アミノフェノール類、および複素環式塩基、ならびにそれらの付加塩を挙げることができる。
【0138】
これらのカプラーの中では、特に、メタ−フェニレンジアミン類、メタ−アミノフェノール類、メタ−ジフェノール類、ナフタレン系カプラー類、および複素環式カプラー類、ならびにそれらの付加塩を挙げることができる。
【0139】
本発明の方法において使用される前記組成物中に存在する酸化塩基は、一般に、それぞれが、それらを含有する組成物の全重量に対して0.001重量%〜10重量%の間の量で存在する。
【0140】
本発明の化粧品組成物は、種々の製剤形態、たとえば粉末、ローション、ムース、クリーム、またはゲル、あるいはケラチン繊維の染色に好適なあらゆる他の形態であってよい。これらは、噴射剤を有さないポンプ作用のスプレー中に包装したり、噴射剤の存在下でエアロゾル容器中に加圧下で包装したりして、フォームを形成することもできる。
【0141】
組成物のpH:
本発明によると、成分a)、b)、d)、e)、および/またはf)の少なくとも1つを含む少なくとも1つの化粧品組成物のpHはアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間、より好ましくは8〜10の間である。
【0142】
言い換えると、本発明の染色方法中に使用される少なくとも1つの化粧品組成物は、アルカリ性pHを有し、すなわち7を超える。
【0143】
一実施形態によると、d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系を含有する化粧品組成物のpHがアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間、特に8〜10の間である。
【0144】
好ましくは、(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する系が、1つの化粧品組成物中で使用され、前記組成物のpHがアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間、特に8〜10の間である。
【0145】
本発明の特定の一実施形態によると、d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤とを含む化粧品組成物のpHがアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間、特に8〜10の間である。
【0146】
言い換えると、好ましくは、(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する系d)と、(重)炭酸塩以外の塩基性化剤e)とが、1つの組成物中で使用され、前記組成物のpHがアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間、特に8〜10の間、特に9〜10の間である。
【0147】
さらにより優先的には、重炭酸アンモニウムから選択される(重)炭酸塩と、アルカノールアミン類から選択される塩基性化剤とが、1つの化粧品組成物中で使用され、前記組成物のpHがアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間、特に8〜10の間、特に9〜10の間である。
【0148】
一実施形態によると、染色方法に置いて使用される1つ以上の化粧品組成物が(重)炭酸塩を含有しない場合、過酸化水素または過酸化水素を生成する系を含有する組成物のpHは好ましくは7未満、特に1〜5の間である。
【0149】
好ましくは、オルト−ジフェノールを含有し、(重)炭酸塩を全く含有しない組成物のpHは7未満であり、好ましくは3〜6.5の間である。
【0150】
本発明の特定の一実施形態によると、マンガン塩または亜鉛塩b)を含有し、(重)炭酸塩を全く含有しない化粧品組成物のpHは7未満であり、好ましくは3〜6.5の間である。
【0151】
本発明の特定の一実施形態によると、チタン塩またはスカンジウム塩f)を含有し、(重)炭酸塩を全く含有しない化粧品組成物のpHは7未満であり、好ましくは3〜6.5の間である。
【0152】
これらの組成物のpHは、d)であらかじめ定義された塩基性化剤によって、またはケラチン繊維の染色に通常使用される酸性化剤を使用して、または標準的な緩衝系を使用することによって、所望の値に調節することができる。
【0153】
本発明において使用される組成物のための酸性化剤の中では、言及できる例として、無機酸または有機酸、たとえば塩酸、オルトリン酸、または硫酸、カルボン酸類、たとえば酢酸、酒石酸、クエン酸、および乳酸、ならびにスルホン酸類が挙げられる。
【0154】
塩基性化剤の中では、「d)塩基性化剤」の表題における前述の定義の物質が挙げられる。
【0155】
1つ以上のステップにおける染色方法
一実施形態によると、ケラチン繊維の染色方法は:
a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、
b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩と、
c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系と、
d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、
e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、
f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩と
を含む水性染色組成物をケラチン繊維に塗布する1つのステップで行われる;
【0156】
塗布後の放置時間は、一般に3〜120分の間、優先的には10〜60分の間、より優先的には15〜45分の間に設定される。
【0157】
この実施形態においては、成分a)、b)、c)、d)、e)、およびf)を含む化粧品染料組成物は、アルカリ性pHを有し、すなわち、したがって7を超え、好ましくは8〜12の間、特に8〜10の間である。
【0158】
別の一実施形態によると、ケラチン繊維の染色方法は2または3つのステップで行われる。
【0159】
本発明の特定の一実施形態によると、ケラチン繊維の染色方法は、前述の定義の成分a)、b)、c)、d)、およびe)を含む染料組成物をケラチン繊維に塗布するステップによる2つのステップで行われ、次に第2のステップにおいて、前述の定義の成分f)を含む組成物を前記ケラチン繊維に塗布し、2つの組成物の少なくとも1つは水性であると理解される。好ましくは、オルト−ジフェノール誘導体を含む組成物が水性である。さらにより優先的には、この実施形態において使用される2つの組成物が水性である。
【0160】
この方法の場合、第1のステップの塗布後の放置時間は、一般に3〜120分の間、優先的には10〜60分の間、さらに優先的には15〜45分の間に設定される。第2のステップにおける成分f)を含む組成物の塗布時間は、一般に3〜120分の間、優先的には3〜60分の間、より優先的には5〜30分の間に設定される。
【0161】
別の一実施形態によると、ケラチン繊維の染色方法は3つのステップで行われる。
【0162】
3ステップ方法の第1の変形においては、第1のステップは、前述の定義の成分a)、b)、c)を含む組成物を前記ケラチン繊維に塗布することを含み、次に第2のステップにおいて、前述の定義の成分d)およびe)を含む組成物を前記繊維に塗布し、次に第3のステップにおいて、成分f)を含む組成物を前記繊維に塗布し、3つの組成物の少なくとも1つは水性であると理解される。好ましくは、オルト−ジフェノール誘導体を含む組成物が水性である。さらにより優先的には、この実施形態において使用される3つの組成物が水性である。
【0163】
3ステップ方法の第2の変形においては、第1のステップは、前述の定義の成分a)およびb)を含む組成物を前記ケラチン繊維に塗布することを含み、次に第2のステップにおいて、前述の定義の成分c)、d)、およびe)を含む組成物を前記繊維ニト節、次に第3のステップにおいて、成分f)を含む組成物を前記繊維に塗布し、3つの組成物の少なくとも1つは水性であると理解される。
【0164】
最後のこれら2つの方法の場合、第1のステップの塗布後の放置時間は、一般に3〜120分の間、優先的には10〜60分の間、より優先的には15〜45分の間に設定される。第2のステップにおいて使用される組成物の塗布時間は、一般に3〜120分の間、優先的には3〜60分の間、より優先的には5〜30分の間に設定される。第3のステップにおいて使用される組成物の塗布時間は、一般に3〜120分の間、優先的には3〜60分の間、より優先的には5〜30分の間に設定される。
【0165】
一実施形態によると、ケラチン繊維の染色方法は:
a)カテキン、ケルセチン、ヘマトキシリン、および没食子酸から特に選択される1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、
b)マンガンのカルボン酸塩、特にグルコン酸マンガンから選択される1種類以上のマンガン塩、
c)過酸化水素、
d)1種類以上の(重)炭酸塩、特に重炭酸アンモニウムと、
e)アルカノールアミン類から選択される1種類以上の塩基性化剤と、
f)1種類以上のチタン塩、特に酸化状態4のチタンの塩、たとえばシュウ酸カリウムチタン二水和物KTiO(C・2HO、または1種類以上のスカンジウム塩、特にスカンジウムのカルボン酸塩、特に無水または水和した酢酸スカンジウムと、
を含む1つ以上の化粧品組成物をケラチン繊維に塗布することによる1つ以上のステップで行われ;
成分d)を含む組成物はアルカリ性pHを有し、すなわち7を超え、特に8〜10の間であり、チタン塩およびスカンジウム塩から選択される塩を含む組成物は、染色方法の最終ステップでケラチン繊維に塗布されることが理解される。
【0166】
好ましくは、ケラチン繊維の染色方法は3つのステップで行われる。
【0167】
特に、染色方法は:
i)a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、b)マンガンのカルボン酸塩から選択される1種類以上のマンガン溶媒と、c)過酸化水素とを含む化粧品組成物、
ii)d)重炭酸アンモニウムから選択される1種類以上の(重)炭酸塩と、e)アルカノールアミン類から選択される1種類以上の塩基性化剤とを含む化粧品組成物、
iii)f)1種類以上のチタン塩、特に酸化状態4のチタンの塩、たとえばシュウ酸カリウムチタン二水和物KTiO(C・2HO、または1種類以上のスカンジウム塩、特にスカンジウムのカルボン酸塩、特に無水または水和した酢酸スカンジウムを含む化粧品組成物、
をケラチン繊維に塗布することによる2つのステップで行われ、
成分d)およびe)を含む組成物はアルカリ性pHを有し、すなわち7を超え、特に8〜10の間であり、チタン塩およびスカンジウム塩から選択される塩を含む組成物は、染色方法の最終ステップでケラチン繊維に塗布されることが理解される。
【0168】
特に、組成物i)に使用されるオルト−ジフェノールは、カテキン、ケルセチン、ヘマチン、ヘマトキシリン、ブラジリン、没食子酸、ならびにそれらを含有する天然抽出物であってブドウの搾りかす、松の樹皮、緑茶、タマネギ、カカオ豆、ロッグウッド、レッドウッド、および虫こぶから選択される天然抽出物から選択することができる。さらに特に、オルト−ジフェノールは、カテキン、ケルセチン、ヘマトキシリン、および没食子酸から選択される。
【0169】
塗布方法とは無関係に、塗布温度は、一般に室温(15〜25℃)〜80℃の間、特に15〜45℃の間である。したがって本発明による組成物の塗布後、頭髪は、好都合には、30〜60℃の間の温度に加熱することによって、熱処理が行われる。実際には、この作業は、スタイリングフード、ヘアドライヤー、赤外線供給装置、またはその他の標準的な加熱器具を用いて行うことができる。
【0170】
毛髪の加熱および平滑化の両方の手段として、60℃〜220℃の間、好ましくは120℃〜200℃の間の温度の加熱アイロンを使用することができる。
【0171】
塗布方法とは無関係に、各ステップの間、特に成分d)および/またはe)を含む組成物の塗布を含むステップを行う前、特にチタン塩またはスカンジウム塩f)を含有する組成物を塗布する最終ステップを行う前に、ケラチン繊維の機械的な拭き取りおよび/または乾燥を場合により行うことができる。
【0172】
中間の機械的拭き取りおよび乾燥のステップは、「標準的な多量の水でのすすぎ」および「無すすぎ」と区別するために、「制御された無すすぎ」とも呼ばれる。「繊維の機械的な拭き取り」という用語は、繊維を吸収性物品でこすって、繊維中に浸透しなかった過剰の成分を吸収性物品によって物理的に除去することを意味する。吸収性物品は、織物、たとえばタオル、特にテリータオル、布または吸収紙、たとえば家庭用ロールタオルであってよい。
【0173】
本発明の特に好都合な方法によると、機械的拭き取りは、繊維を完全に乾燥させずに行われ、繊維が濡れた状態で残る。
【0174】
用語「乾燥」は、前述の定義の1種類以上の成分a)〜f)を含むまたは含まない、本発明の方法に使用される1つ以上の組成物中に存在する有機溶媒および/または水を蒸発させる作用を意味する。乾燥は、たとえば、溶媒を蒸発させるのに必要な空気などの高温ガス流を供給することによって、熱源(対流、伝導、または輻射)を用いて行うことができる。言及できる熱源としては、ヘアドライヤー、ヘアスタイリングフード、ストレートヘアアイロン、赤外線供給装置、またはその他の加熱器具が挙げられる。
【0175】
本発明の特定の一形態は、室温(25℃)で行われる染色方法に関する。
【0176】
以上に記載の方法のすべての特定の形態および変形形態において、言及される組成物は、2つ以上の組成物を即時に混合して得ることができる使える状態の組成物であり、特に染色キット中に存在する組成物である。
【0177】
染色装置または「キット」
本発明の別の主題は、多区画染色装置またはキットである。好都合には、このキットは、成分のa)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩と、c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系と、d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩とが分配された2〜7つの組成物を含有する2〜7つの区画を含み、前記組成物は場合により水性または粉末状であり、特に、少なくとも1つの前記組成物は水性である。
【0178】
第1の変形によると、本発明のキットは7つの区画を含み、最初の6つの区画は、前述の定義の粉末成分a)、b)、c)、d)、e)、およびf)をそれぞれ含み、第6の区画は水などの水性組成物を含む。この場合、化合物c)は過酸化水素前駆体である。
【0179】
別の一変形は6区画キットに関し、その少なくとも1つが水性組成物を含有し、他の区画は前述の定義の成分a)〜f)を含む。
【0180】
別の一変形においては、本発明の装置は6つの区画を含み:第1の区画はa)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体を含有する組成物を含み、第2の区画はb)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩を含み、第3の区画はc)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系を含み、第4の区画はd)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系を含有し、第5の区画はe)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤を含有し、第6の区画はf)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩を含有する。好ましくは、これらの組成物の少なくとも1つは水性である。
【0181】
別の好ましい一実施形態は、4つの区画を含む装置に関し:
(i)第1の区画は:
a)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体を含有する組成物を含有し;
(ii)第2の区画は:
b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩、
c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系、
を含有する組成物を含有し、
iv)第3の区画は:
d)1種類以上の(重)炭酸塩または(重)炭酸塩を生成する1種類以上の系と、
e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤と、
を含有する組成物を含有し、
(iii)第4の区画は:
f)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩を含む組成物を含有する。
【0182】
この別の実施形態においては、4つの組成物の少なくとも1つが水性であり、オルト−ジフェノール誘導体は粉末形態であってよい。
【0183】
第1の区画i)がa)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体と、b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩とを含む組成物を含有し、第2の区画ii)がc)過酸化水素または過酸化水素を生成する系を含む組成物を含有し、第3の区画iii)がd)(重)炭酸塩と、e)(重)炭酸塩以外の塩基性化剤とを含む組成物を含有し、第4の区画iv)がf)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩を含む組成物を含有する、4区画キットを有することも可能である。この別のキットにおいては、少なくとも1つの組成物が優先的には水性である。特に、この組成物は過酸化水素を含有する。
【0184】
本発明の特定の一実施形態によると、キットは3つの区画を含み:第1の区画はa)1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体、b)1種類以上のマンガン塩または1種類以上の亜鉛塩、c)過酸化水素または過酸化水素を生成する1種類以上の系を含有する組成物を含み、第2の区画は、d)1種類以上の(重)炭酸塩と、e)(重)炭酸塩以外の1種類以上の塩基性化剤とを含有し、第3の区画はf)チタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩を含有する。
【0185】
3区画キットの中では、第1の区画中に、前述の定義の化合物a)、b)、d)、およびe)を含む組成物を含み、第2の区画中に、前述の定義のc)を含む組成物を含有し、第3の区画中に、前述の定義のf)を含む組成物を含むキットを有することも可能である。
【0186】
3区画キットのこれら2つの変形において、a)、b)、およびc)、あるいはa)、b)、d)、およびe)のいずれかを含む第1の区画中に含まれる第1の組成物は粉末の形態であり、好ましくは、第2の組成物は水性である。
【0187】
一変形によると、本発明による装置は、1種類以上の処理剤を含むさらなる組成物をも含む。
【0188】
本発明による装置の組成物は、場合により、同一でも異なっていてもよい、目の細かいブラシ、目の粗いブラシ、またはスポンジなどの好適な塗布手段とともに、別々の区画中に包装される。
【0189】
上述の装置には、毛髪上に所望の混合物を供給するための手段、たとえば仏国特許第2 586 913号明細書に記載の装置を取り付けることもできる。
【0190】
前述したように、本発明の主題の1つは、成分a)、b)、c)、d)、e)、およびf)を含むケラチン繊維を染色するための化粧品組成物でもあり、組成物のpHはアルカリ性であり、すなわち7を超え、好ましくは8〜12の間であると理解される。これは特に8〜10.5の間である。
【0191】
本発明の主題の1つは、ケラチン繊維を染色するための前記化粧品組成物の使用でもある。
【0192】
本発明は、前述の定義の1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体を用いて染色されたケラチン繊維、特に毛髪などのヒトケラチン繊維の色の色度を改善するための、前述の定義のチタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩の使用にも関する。
【0193】
実際、本発明は、前述の定義の1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体を用いて染色されたケラチン繊維、特に毛髪などのヒトケラチン繊維の色の色度を改善するための、前述の定義のチタン塩の使用を扱う。
【0194】
本発明は、前述の定義の1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体を用いて染色されたケラチン繊維、特に毛髪などのヒトケラチン繊維の色の色度を改善するための、前述の定義の1種類以上のスカンジウム塩の使用も扱う。
【0195】
特に、本発明は、ケラチン繊維の色の色度を改善するための、1種類以上のオルト−ジフェノール誘導体を含む染料組成物中でのチタン塩およびスカンジウム塩から選択される1種類以上の塩の使用に関する。
【0196】
本発明の目的のためには、ケラチン繊維の色の「増強」という用語は、未染色の灰色の毛髪の房と染色された毛髪の房との間の着色の変化量を意味する。
【0197】
以下の実施例は、本発明を説明する役割を果たすが、限定するものではない。
【実施例】
【0198】
染色実施例I
以下の実施例において、本発明による染色方法と、チタン塩を含む組成物の使用を含まないことを除けば同一の染色方法(比較例)との間で色の増強ΔEおよび色度Cを比較した。
【0199】
【表1】
【0200】
【表2】
【0201】
【表3】
【0202】
2.手順:
各組成物A1、A2、A3、およびA4を、パーマがかかった90%の白髪灰色の毛髪に、毛髪1g当たり12gの組成物の比率で塗布する。次に、組成物を房上で50℃の温度で30分間放置する。
【0203】
この後、浸透させた毛髪を吸収性ペーパータオルで拭き取って、過剰の組成物を除去する。
【0204】
次に、組成物Bをそれぞれの房に、房1g当たり4gの組成物の比率で塗布する。組成物BのpHは9.5である。放置時間は室温で10分間である。次に毛髪を水ですすぎ、標準的なシャンプーで洗浄し、フード下で乾燥させる。
【0205】
次に、組成物Cをそれぞれの房に、房1g当たり4gの組成物の比率で塗布し、放置時間は室温で10分である。次に毛髪を水ですすぎ、標準的なシャンプーで洗浄し、フード下で乾燥させる。
【0206】
3.比色結果:
本発明による染色方法と、チタン塩を主成分とする組成物Cの代わりに水を用いたことを除けば同一である方法との間で、色の増強ΔEおよび色度Cを比較する。
【0207】
房の色は、Minolta CM2600D分光比色計を使用して、CIE L系で評価した。このL系において、3つのパラメーターは、それぞれ、強度(L)、aは緑/赤色軸、およびbは青/黄色軸を表す。
【0208】
パーマがかかった90%の白髪を含む灰色の毛髪(90PWG)の未処理(対照)の房と処理後の房との間の色の変化は、次式に従う(ΔE)で定義される:
【0209】
【数1】
【0210】
この式中、L、a、およびbは、染色後の毛髪の房に対して測定される値を表し、L、a、およびbは、未処理で未染色の毛髪の房に対して測定される値を表す。ΔEの値が大きいほど、色の増強がより良好となる。
【0211】
色度も値aおよびbによって測定され、式:
=[a*2+b*21/2
から求められる。
【0212】
の値が大きいほど、より彩度の高い色が得られる。
【0213】
色の増強ΔEおよび色度Cの値を以下の表に示す。
【0214】
【表4】
【0215】
【表5】
【0216】
【表6】
【0217】
本発明による染色方法は、使用されるオルト−ジフェノール誘導体とは無関係に、チタン塩を用いた後処理が行われない場合にのみ、より彩度の高い着色が得られることが分かる。
【0218】
さらに、本発明による染色方法は、ケルセチンおよび没食子酸の場合に十分な色の増強が得られる。
【0219】
染色実施例II
以下の実施例において、本発明による染色方法と、スカンジウム塩を含む組成物の使用を含まないことを除けば同一の染色方法(比較例)との間で色の増強ΔEおよび色度Cを比較した。
【0220】
【表7】
【0221】
【表8】
【0222】
【表9】
【0223】
2.手順:
各組成物A’1、A’2、およびA’3を、パーマがかかった90%の白髪灰色の毛髪に、毛髪1g当たり12gの組成物の比率で塗布する。次に、組成物を房上で50℃の温度で30分間放置する。
【0224】
この後、浸透させた毛髪を吸収性ペーパータオルで拭き取って、過剰の組成物を除去する。
【0225】
次に、組成物Bをそれぞれの房に、房1g当たり4gの組成物の比率で塗布する。組成物BのpHは9.5である。放置時間は室温で10分間である。次に毛髪を水ですすぎ、標準的なシャンプーで洗浄し、フード下で乾燥させる。
【0226】
次に、組成物Cをそれぞれの房に、房1g当たり4gの組成物の比率で塗布し、放置時間は室温で10分である。次に毛髪を水ですすぎ、標準的なシャンプーで洗浄し、フード下で乾燥させる。
【0227】
3.比色結果:
本発明による染色方法と、スカンジウム塩を主成分とする組成物Cの代わりに水を用いたことを除けば同一である方法との間で、色の増強ΔEおよび色度Cを比較する。
【0228】
房の色は、Minolta CM2600D分光比色計を使用して、CIE L系で評価した。このL系において、3つのパラメーターは、それぞれ、強度(L)、aは緑/赤色軸、およびbは青/黄色軸を表す。
【0229】
パーマがかかった90%の白髪を含む灰色の毛髪(90PWG)の未処理(対照)の房と処理後の房との間の色の変化は、次式に従う(ΔE)で定義される:
【数2】
【0230】
この式中、L、a、およびbは、染色後の毛髪の房に対して測定される値を表し、L、a、およびbは、未処理で未染色の毛髪の房に対して測定される値を表す。ΔEの値が大きいほど、色の増強がより良好となる。
【0231】
色度も値aおよびbによって測定され、式:
【数3】
から求められる。
【0232】
の値が大きいほど、より彩度の高い色が得られる。
【0233】
色の増強ΔEおよび色度Cの値を以下の表に示す。
【0234】
【表10】
【0235】
本発明による染色方法は、使用されるオルト−ジフェノール誘導体とは無関係に、より彩度の高い着色が得られることが分かる。
【0236】
さらに、本発明による染色方法で、十分な色の増強が得られる。
【0237】
本発明の方法は、比較例の方法で得られるよりも、良好な色の増強および良好な着色の色度が得られることが視覚的にも分かる。このことは、スカンジウム塩を用いた後処理を使用しない方法と比較して、本発明による染色方法が、使用されるオルト−ジフェノール誘導体とは無関係に、より彩度の高い着色Cおよびより十分な色の増強が得られることを示す比色測定によって確認される。