【実施例】
【0066】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:植物におけるイソプレン生産能の検討
1−1)葉乾燥物の単位重量あたりのイソプレン発生量の測定
先ず、植物におけるイソプレン生産能を検討するため、植物における葉乾燥重量1gあたりのイソプレン発生量を測定した。植物としては、ムクナ、ヤナギ(シダレヤナギ)、モミジバフウ、ギンコウバイ、葛を用いた。
イソプレン発生量測定には、ガス交換式デシケーター(商品名:真空デシケーター、アズワン社製)を、インキュベーター(商品名:グロースチェンバーMLR−351HSANYO社製製)内に収容し、ガス交換式デシケーター内に設置した気体攪拌用ファンを作動させガス交換式デシケーターの空間内の雰囲気を攪拌させつつ、インキュベーターを高温誘導条件(照度100μmolE/m
2/sで40℃)に設定した。ガス交換式デシケーター内の雰囲気の温度が40℃になった後、プランターに植えられたムクナ植物体を収容し、ガス交換式デシケーターを密閉した状態で3時間保持した。次いで、吸引ポンプにより、シリコンチューブ、吸着管および気体採取管を介して、ガス交換式デシケーター内の空間から、ムクナが放出したガス成分を吸引した。これにより、吸着管において、ムクナが放出したガス成分に含まれる水蒸気(水分)を吸着、分離するとともに、水蒸気が分離されたガス成分を気体採取管に導き、気体採取管において、そのガス成分を採取した。次いで、ガスクロマトグラフ(商品名:GC−FID6890、Agilent社製)を用いて、気体採取管に採取されたガス成分に含まれるイソプレンを定量分析した。
植物の葉乾燥重量は、新鮮個葉の葉面積と、80℃の乾熱器によって新鮮個葉を8時間乾燥させたときの乾燥重には非常に良い正の相関関係が成り立つので、葉面積からの乾燥重換算式を導いておき、イソプレン発生量測定に用いたムクナ植物体の全葉面積から乾燥重を推定した。
植物における葉乾燥重量1gあたりのイソプレン発生量はムクナ植物体全体からのイソプレン発生量を植物体全体の葉の乾燥重量推定値で割ることにより求めた。
その結果、ムクナが葉乾燥物の単位重量あたりのイソプレン発生量に優れることが明らかとなった(
図1)。
【0068】
1−2)総タンパク質量あたりのイソプレン発生量の測定
次いで、種々の植物の葉から抽出された総タンパク質量あたりのイソプレン発生量を測定した。植物としては、ムクナ(サンプル1、2)、ヤナギ(シダレヤナギ)、モミジバフウ、ギンコウバイ、クズを用いた。
タンパク質抽出には、バッファー液(50mM Tris−HCl, 20mM MgCl, 5% Glycerol, 0.02% Triton−X100, pH8.0)を作成し、使用直前にPolyclar AT 10%、DTT 20mM、Protease Complete tablet (1tablet/50ml)Benzamidine−HCl 1mM(それぞれ終濃度)となるように加え蛋白抽出バッファーとして用いた。5gサンプルに対してタンパク抽出バッファー50ml加えて、氷上で冷やしておいた乳鉢でよく摩砕した後、2重に重ねたMiraclothで摩砕液を濾過し、濾液を12000Gで20分、40000Gで40分遠心分離した上清を取得し粗抽出液とした。
次いで、この粗抽出液について硫安分画を行った。硫安の終濃度40%から55%の範囲で析出する蛋白を40000Gで40分遠心分離し、得られた沈殿を蛋白抽出バッファーに再溶解させて硫安画分を得た。
総(硫安画分)タンパク質量は、ブラッドフォード法で硫安画分を測定することで求めた。標準蛋白Bovine serum albuminについて、ブラッドフォード試薬を反応させ分光光度計で測定した波長595nmの吸光度に対する蛋白量の検量線を作成した。50倍希釈した硫安画分液について同様に波長595nmの吸光度を測定し、標準蛋白の検量線から総(硫安画分)蛋白量を推定した。
イソプレン発生量は、4mlガラスバイアルに粗抽出液ないしは100℃で煮沸処理した粗酵素液を100μl入れ、次いで0.5M MgCl
2溶液を2μl、0.2M DMAPP溶液を5μl加え、セプタム付きスクリューキャップをしっかり締めたあと、ゆるやかに振とう撹拌し40℃恒温漕にセットした。0.5時間、1時間、2時間後に、ガスタイトシリンジでHeadspace気層を0.5〜2mlサンプリングしガスクロマトグラフ(商品名:GC−FID6890、Agilent社製)を用いてイソプレン発生量を測定した。粗酵素での0.5時間、1時間、2時間後の発生量は、それぞれの測定値から100℃で煮沸処理した粗酵素液の測定値を引いて求めた。1時間あたりのイソプレン発生量からTotal蛋白1mgあたりの酵素活性(比活性)を求めた。なお、イソプレン発生量の測定は、イソプレンシンターゼの基質であるDMAPPの量を一定にして行った。
その結果、ムクナが総タンパク質量あたりのイソプレン発生量に優れることが明らかとなった(
図2、表1)。以上より、ムクナがイソプレン生産能に優れることが示された。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例2:ムクナ由来イソプレンシンターゼ遺伝子のクローニング
2−1)サンプリング時間の検討
40℃の温度下で1,2,3,5時間光照射したムクナの葉が放出するイソプレンガスをサンプリングし、後述するガスクロマトグラフィーにてイソプレン生産量を定量したところ、それぞれ4,8,12,10μg isoprene/g DW leafのイソプレンの生産が確認され、最適な光照射時間は、3時間であることが確認された。
【0071】
2−2)Total RNA溶解液の抽出
以下の手順でムクナの葉からTotal RNA溶解液を抽出した。
(1)40℃の温度下で3時間光照射したムクナの葉をサンプリングした。
(2)葉組織100mgを液体窒素ですばやく凍結しながら乳鉢で粉砕した後、RNaseフリーの2mlエッペンドルフチューブに液体窒素ごと分注し、液体窒素を気化させた。
(3)このエッペンドルフチューブに、RNeasy Plant Kit(キアゲン社製)に備え付けの溶解バッファーRLT(2−メルカプトエタノール含有)を450μl添加し、ボルッテックスで激しく混和し、葉組織溶解物を得た。
(4)この葉組織溶解物をRNeasy Plant Kitに備え付けのQIAshredderスピンカラムにかけ、15000rpm、2分間、遠心分離を行った。
(5)カラム濾液の上清のみを、RNaseフリーの新たな2mlエッペンドルフチューブに分注した後、このカラム濾液上清の1/2容量の特級エタノールを添加し、ピペッティングにより混和し、約650μlの溶液を得た。
(6)この溶液をRNeasy Plant Kitに備え付けのRNeasyスピンカラムにかけ、10000rpm、15秒間、遠心分離を行い、濾液を捨てた。
(7)このRNeasyスピンカラムに、RNeasy Plant Kitに備え付けのRW1バッファー700μlを添加し、10000rpm、15秒間、遠心分離を行い、濾液を捨てた。
(8)このRNeasyスピンカラムに、RNeasy Plant Kitに備え付けのBPEバッファー500μlを添加し、10000rpm、15秒間、遠心分離を行い、濾液を捨てた。
(9)このRNeasyスピンカラムに、再度、BPEバッファー500μlを添加し、10000rpm、2分間、遠心分離を行い、濾液を捨てた。
(10)このRNeasyスピンカラムを、RNeasy Plant Kitに備え付けの2ml回収用チューブにセットし、15000rpm、1分間、遠心分離を行い、濾液を捨てた。
(11)このRNeasyスピンカラムを、RNeasy Plant Kitに備え付けの1.5ml回収用チューブにセットした。
(12)ピペットマンを用いて、このRNeasyスピンカラムに、RNeasy Plant Kitに備え付けのRNaseフリーの蒸留水を、RNeasyスピンカラムの膜に直接添加し、10000rpm、1分間、遠心分離を行い、Total RNAを回収した。このステップを2回繰り返し、約100μlのTotal RNAを得た。
【0072】
2−3)ムクナ由来イソプレンシンターゼ遺伝子の塩基配列の解析
抽出したTotal RNA溶解液について、バイオアナライザ(アジレント・テクノロジー社)のRNA用nanoチップを用いて、RNAの品質チェックを行い、溶解液中にゲノムDNAの混入がなく、溶解液中のRNAが分解していないことを確認した。
このTotal RNAを、逆転写酵素を用いて二本鎖化した後、ネブライザーを用いて断片化した。3’末端にpolyA配列を有する198179個の断片の塩基配列を、454 Titanium FLX高速シークエンサー(ロッシュアプライドサイエンス社製)を用いて解析した。得られた断片配列において、重複する配列を連結し、13485個のコンティグ配列を得た。これらコンティグ配列に対して、BLAST検索を行ったところ、登録されている既知の葛及びポプラのイソプレンシンターゼ遺伝子配列と相同性(塩基配列の同一性)を有する6個のコンティグ配列が抽出された。更に配列を詳細に解析したところ、この6個のコンティグ配列のうち3個は、同一の遺伝子由来のものであることが分かり、ムクナ由来イソプレンシンターゼ遺伝子の部分配列が得られた。この部分配列に基づき、5’RACEを行い、配列番号1で表されるムクナ由来イソプレンシンターゼ遺伝子の完全長の塩基配列を得た。
【0073】
実施例3:各植物種由来イソプレンシンターゼの発現プラスミドの調製
3−1)Pueraria montana var.lobata(葛)由来イソプレンシンターゼの化学合成
P.montana var.lobata由来、イソプレンシンターゼの塩基配列、及びアミノ酸配列は既に知られている(ACCESSION: AAQ84170:P.montana var.lobata(葛) isoprene synthase(IspS))。P.montana由来IspSタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子の塩基配列を配列番号3、及び配列番号4にそれぞれ示す。IspS遺伝子を、E.coliで効率的に発現させる為にE.coliのコドン使用頻度に最適化し、更に葉緑体移行シグナルが切断されたIspS遺伝子を設計し、これをIspSKと名付けた。IspSKの塩基配列を配列番号5に示す。IspSK遺伝子は化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−IspSKと名付けた。
【0074】
3−2)Populus alba x Populus tremula(ポプラ)由来イソプレンシンターゼの化学合成
P.alba x P.tremula由来、イソプレンシンターゼの塩基配列、及びアミノ酸配列は既に知られている(ACCESSION: CAC35696:P.alba x P. tremula (ポプラ)isoprene synthase)。P.alba x P.tremula由来IspSタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子の塩基配列を配列番号6、及び配列番号7にそれぞれ示す。この塩基配列を基に、前記と同様に、E.coliのコドン使用頻度に最適化し、更に葉緑体移行シグナルが切断されたIspS遺伝子を設計し、これをIspSPと名付けた。IspSPの塩基配列を配列番号8に示す。IspSP遺伝子は化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−IspSPと名付けた。
【0075】
3−3)Mucuna pururiens(ムクナ)由来イソプレンシンターゼの化学合成
M.pururiens由来イソプレンシンターゼの塩基配列を基に、前記と同様に、E. coliのコドン使用頻度に最適化されたIspS遺伝子を設計し、葉緑体移行シグナルが付与されたものをIspSM(L)と名付け、葉緑体移行シグナルを切断したものをIspSMと名付けた。IspSM(L)の塩基配列を配列番号9に、IspSMの塩基配列を配列番号10に示す。IspSM遺伝子とIspSM(L)遺伝子は、それぞれ化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−IspSMとpUC57−IspSM(L)と名付けた。
【0076】
3−4)発現用プラスミドpSTV28−Ptac−Ttrpの構築
E.coliで各植物種由来IspSを発現させる為の発現用プラスミドpSTV28−Ptac−Ttrpを構築した。始めに、tacプロモーター(同意語:Ptac)領域(deBoer,et al.,(1983) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80,21−25)及びE.coli由来トリプトファンオペロンのターミネーター(同意語Ttrp)領域(Wu et al.,(1978) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75,5442−5446)を含み、5’末端にKpnIサイト、3’末端にBamHIサイトを有するDNA断片(Ptac−Ttrp)を化学合成した(Ptac−Ttrpの塩基配列を配列番号11に示す)。得られたPtac−TtrpのDNA断片をKpnI、及びBamHIにて消化処理し、同様にKpnI、及びBamHIで消化処理したpSTV28(タカラバイオ社製)とをDNA Ligaseによるライゲーション反応によって連結した。得られたプラスミドをpSTV28−Ptac−Ttrpと名付けた(塩基配列を配列番号12に示す)。本プラスミドは、Ptac下流にIspS遺伝子をクローニングすることで、IspS遺伝子の発現増幅が可能となる。
【0077】
3−5)各植物種由来IspS遺伝子発現用プラスミドの構築
E.coliでIspSK遺伝子、IspSP遺伝子、IspSM遺伝子、及びIspSM(L)遺伝子を発現させる為のプラスミドは次の手順で構築した。pUC57−IspSKを鋳型として、配列番号13と配列番号14の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチド、pUC57−IspSPを鋳型として、配列番号15と配列番号16の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチド、pUC57−IspSMを鋳型として、配列番号17と配列番号18の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチド、更にはpUC57−IspSM(L)を鋳型として、配列番号19と配列番号20の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、Prime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行った。反応溶液はキットに添付された組成に従って調整し、98℃にて10秒、54℃にて20秒、68℃にて120秒の反応を40サイクル行った。その結果、IspSK遺伝子、IspSP遺伝子、IspSM遺伝子、及びIspSM(L)遺伝子を含む、PCR産物を取得した。同様に、pSTV28−Ptac−Ttrpを、配列番号21と配列番号22の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、Prime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行った。反応溶液はキットに添付された組成に従って調整し、98℃にて10秒、54℃にて20秒、68℃にて210秒の反応を40サイクル行った。その結果、pSTV28−Ptac−Ttrpを含む、PCR産物を取得した。その後、精製されたIspSK遺伝子、IspSP遺伝子、IspSM遺伝子、及びIspSM(L)遺伝子遺伝子断片と、pSTV28−Ptac−TtrpのPCR産物を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたIspSK遺伝子発現用プラスミドをpSTV28−Ptac−IspSK、IspSP遺伝子発現用プラスミドをpSTV28−Ptac−IspSP、IspSM遺伝子発現用プラスミドをpSTV28−Ptac−IspSM、IspSM(L)遺伝子発現用プラスミドをpSTV28−Ptac−IspSM(L)と命名した。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例4:E.coli由来粗酵素抽出液を用いた各植物種由来イソプレンシンターゼの酵素活性測定
4−1)イソプレン生産能を有するE.coli MG1655株の構築
E.coli MG1655株(ATCC700926)のコンピテントセルを調整後、エレクトロポレーション法によりpSTV28−Ptac−Ttrp、pSTV28−Ptac−IspSK、pSTV28−Ptac−IspSP、pSTV28−Ptac−IspSM、更にpSTV28−Ptac−IspSM(L)を導入し、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。その後、得られたプレートから、クロラムフェニコール耐性を示す形質転換体を取得した。E.coli MG1655株にpSTV28−Ptac−Ttrpが導入された株をMG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株、pSTV28−Ptac−IspSKが導入された株をMG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株、pSTV28−Ptac−IspSPが導入された株をMG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株、pSTV28−Ptac−IspSMが導入された株をMG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株、更にpSTV28−Ptac−IspSM(L)が導入された株をMG1655/pSTV28−Ptac−IspSM(L)株と命名した。
【0080】
4−2)粗酵素抽出液の調製方法
MG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株、及びMG1655/pSTV28−Ptac−IspSM(L)株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。得られたプレートから、1/6プレート分の菌体を60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLB20mlを張り込んだ坂口フラスコに接種し、37℃にて6時間培養した。培養液より菌体を5000rpm、4℃、5分の条件で遠心分離し、氷冷したイソプレンシンターゼバッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)・20mM MgCl
2・5%グリセロール)にて2回洗浄した。洗浄菌体を同バッファー1.8mlに懸濁した。2ml容のマルチビーズショッカー専用チューブに約0.9mlの破砕用ビーズ(YBG01,直径0.1mm)と菌体懸濁液0.9mlを入れ、安井器械製マルチビーズショッカー(MB701(S)型)にて2500rpm、4℃、30秒ON・30秒OFFを3サイクルの条件で菌体を破砕した。破砕後チューブを20000g、4℃、20分の条件で遠心し、上清を粗酵素抽出液とした。
【0081】
4−3)イソプレンシンターゼ活性の測定
MG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM(L)株の粗酵素抽出液(総タンパク量として2mgを含む量)とイソプレンバッファーを合わせて0.5mlをヘッドスペースバイアル(Perkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236)に入れ、0.5M MgCl
2溶液0.025mlと0.2M DMAPP(cayman製,Catlog No.63180)溶液0.01mlを加えて軽く攪拌した後、すぐにヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)にて密栓、37℃にて2時間保温した。
反応終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。以下にガスクロマトグラフィーの分析条件を記載する。
【0082】
Headspace Sampler (Perkin Elmer社製 Turbo Matrix 40)
バイアル保温温度 40℃
バイアル保温時間 30min
加圧時間 3.0min
注入時間 0.02min
ニードル温度 70℃
トランスファー温度 80℃
キャリアガス圧力(高純度ヘリウム) 124kPa
【0083】
ガスクロマトグラフィー(島津社製 GC−2010 Plus AF)
カラム(Rxi(登録商標)−1ms: 長さ30m、内径0.53mm、液相膜厚1.5μm cat♯13370)
カラム温度 37℃
圧力 24.8kPa
カラム流量 5mL/min
流入方法 スプリット 1:0(実測1:18)
トランスファー流量 90mL
GC注入量 1.8mL(トランスファー流量×注入時間)
カラムへの試料注入量 0.1mL
注入口温度 250℃
検出機 FID(水素 40mL/min、空気 400mL/min、メイクアップガス ヘリウム 30mL/min)
検出器温度 250℃
【0084】
イソプレン標準試料の調整
試薬イソプレン(比重0.681)を冷却したメタノールで10、100、1000、10000、100000倍希釈し、添加用標準溶液を調整した。その後、水1mLを入れたヘッドスペースバイアルに各添加用標準溶液を、それぞれ1μL添加し、標準試料とした。
【0085】
表3に各菌株の反応2時間後のイソプレン生成量を記載した。
【0086】
【表3】
【0087】
表3の結果から、イソプレン生成量は高い順に、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM(L)株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株となり、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株とMG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株はほぼ同等の値となった。上記の結果から、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株の粗酵素抽出液が最も高いイソプレン生成活性を示した。
【0088】
実施例5:E.coli MG1655株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
実施例4の粗酵素活性の結果から、葉緑体移行シグナルを欠失したムクナ由来のイソプレンシンターゼで最も高い活性が確認された。その為、葉緑体移行シグナルを欠失した全てのイソプレンシンターゼ導入株について、グルコースからのイソプレン生産能を比較した。MG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株、及びMG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。得られたプレートから、1白金耳分の菌体を、ヘッドスペースバイアル中のM9グルコース培地1mLに接種し、ヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)で密栓後、往復振とう培養装置(120rpm)で、30℃にて24時間培養を行った。M9グルコース培地の組成は表4に記載のとおりである。
【0089】
【表4】
【0090】
培養終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。また、OD値は分光光度計(HITACHI U−2900)によって600nmで測定した。表5に各菌株の培養終了時のイソプレン濃度とOD値を記載した。
【0091】
【表5】
【0092】
表5の結果から、イソプレン生産量は高い順に、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株、そしてMG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株となった。上記の結果から、野生株では、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株が最も高いイソプレン生産能を示した。
【0093】
実施例6:MEP(メチルエリスリトール)経路を強化したE.coli MG1655株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
6−1)dxs遺伝子発現用プラスミド(pMW219−dxs)の構築
イソプレンシンターゼを導入したE.coliでMEP経路を構成するdxs遺伝子(1−deoxy−D−xylulose−5−phosphate synthase)の発現強化を行うと、イソプレン生成量が向上する事が既に報告されている(Appl.Microbiol.Biotechnol.,(2011)90,1915−1922)。そこで、dxs遺伝子の発現を強化した株においても、イソプレンシンターゼの由来の違いで、イソプレン生産能に相違が生じるかを確認した。E.coli K−12株のゲノムの全塩基配列(Genbank Accession No.U00096)は既に明らかにされている(Science,(1997)277,1453−1474)。遺伝子増幅を行うためにpMW219(ニッポンジーン社製)を用いた。本プラスミドは、マルチクローニングサイトに目的遺伝子を導入する事で、イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加時に目的遺伝子の発現量を増加させる事が出来る。E.coliのゲノム配列のdxs遺伝子の塩基配列(Gene ID:945060 Locus tag b0420)に基づいて、配列番号23と配列番号24の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチドを合成した。その後、E.coli MG1655株のゲノムを鋳型として、配列番号23と配列番号24の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、Prime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行った。反応溶液はキットに添付された組成に従って調整し、98℃にて10秒、54℃にて20秒、68℃にて120秒の反応を40サイクル行った。その結果、dxs遺伝子を含む、PCR産物を取得した。同様に、pMW219を鋳型として、配列番号25と配列番号26の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、Prime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行った。反応溶液はキットに添付された組成に従って調整し、98℃にて10秒、54℃にて20秒、68℃にて240秒の反応を40サイクル行った。その結果、pMW219を含む、PCR産物を取得した。その後、精製されたdxs遺伝子断片と、pMW219のPCR産物を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたdxs遺伝子発現用プラスミドをpMW219−dxsと命名した。
【0094】
【表6】
【0095】
6−2)イソプレン生産能を有するE.coli MG1655株へのpMW219−dxsの導入
MG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株、更にMG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株のコンピテントセルを調整後、エレクトロポレーション法によりpMW219−dxsを導入し、60(mg/L)のクロラムフェニコールと50(mg/L)のカナマイシン塩酸塩を含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。得られたプレートから、クロラムフェニコールとカナマイシンに耐性を示す形質転換体を取得した。MG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM株、更にMG1655/pSTV28−Ptac−IspSP株にpMW219−dxsがそれぞれ導入された株をMG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp/pMW219−dxs株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK/pMW219−dxs株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM/pMW219−dxs、更にMG1655/pSTV28−Ptac−IspSP/pMW219−dxsと命名した。
【0096】
6−3)DXSの発現を強化したE.coli MG1655株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
MG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp/pMW219−dxs株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK/pMW219−dxs株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM/pMW219−dxs株、更にMG1655/pSTV28−Ptac−IspSP/pMW219−dxs株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールと50(mg/L)のカナマイシン塩酸塩を含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。その後、実施例5に記載したヘッドスペースバイアルでの培養評価を実施した。培養終了時のイソプレン生産量(μg/L)とOD値を表7に記載した。
【0097】
【表7】
【0098】
表7の結果から、イソプレン生産量は高い順に、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSM/pMW219−dxs株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSK/pMW219−dxs株、MG1655/pSTV28−Ptac−IspSP/pMW219−dxs株、そしてMG1655/pSTV28−Ptac−Ttrp/pMW219−dxs株となった。上記の結果から、MEP経路強化株においても、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株が最も高いイソプレン生産能を示した。
【0099】
実施例7:MVA(メバロン酸)経路を導入したE.coli MG1655株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
7−1)酵母由来のメバロン酸経路下流遺伝子のクローニング
メバロン酸経路の下流領域はSaccharomyces cerevisiaeより取得した(WO2009076676,Saccharomyces Genome database http://www.yeastgenome.org/# Nucleic Acids Res.,Jan 2012;40:D700−D705)S.cerevisiaeのゲノムDNAを鋳型とし、メバロン酸キナーゼをコードするERG12遺伝子、ホスホメバロン酸キナーゼをコードするERG8遺伝子、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードするERG19遺伝子、イソペンテニルニリン酸デルタイソメラーゼをコードするIDI1遺伝子を次に示すプライマーを用いたPCR反応により増幅した(表8)。PCR酵素にはタカラバイオ社より販売されているPrimeSTAR MAX Premixを利用し、98℃、2分、(98℃、10秒、55℃、5秒、72℃、5秒/kb)×30サイクルの条件で反応を行った。PCR断片は制限酵素SmaIで処理したpSTV28−Ptac−Ttrpベクター(配列番号12)にin−fusionクローニング法にて挿入し、クローニングと発現ベクター構築を行った。E.coli DH5αに形質転換を行い、各遺伝子の想定配列長を有するクローンを選抜した後、定法に従いプラスミド抽出を行い、シーケンスを確認した。これら増幅した遺伝子の塩基配列、およびその遺伝子がコードする酵素のアミノ酸配列はSaccharomyces Genome database http://www.yeastgenome.org/#にて取得可能である。
【0100】
【表8】
【0101】
7−2)メバロン酸経路下流の人工オペロンの構築
メバロン酸キナーゼとホスホメバロン酸キナーゼを直鎖状に並べた配列の構築を、In−fusionクローニング法にて行った。Saccharomyces cerevisiaeのゲノムDNAを鋳型とし、メバロン酸キナーゼをコードするERG12遺伝子、ホスホメバロン酸キナーゼをコードするERG8遺伝子を表9に示すプライマーを用いたPCR法により増幅した。PCR酵素には東洋紡より販売されているKOD plusを利用し、94℃、2分、(94℃、15秒、45℃、30秒、68℃、1分/kb)×30サイクル、68℃、10分の条件で反応を行った。PCR断片は制限酵素SmaIで処理したpUC118ベクターにin−fusionクローニング法にて挿入し、クローニングと発現ベクター構築を行った。E.coli JM109に形質転換を行い、各遺伝子の想定配列長を有するクローンを選抜した後、定法に従いプラスミド抽出を行い、シーケンスを確認した。作成したプラスミドをpUC−mvk−pmkと名付けた。pUC−mvk−pmkの塩基配列を配列番号35に示す。
【0102】
【表9】
【0103】
ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼとイソペンテニルニリン酸デルタイソメラーゼを直鎖状に並べた配列の構築を、In−fusionクローニング法にて行った。Saccharomyces cerevisiaeのゲノムDNAを鋳型とし、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードするERG19遺伝子、イソペンテニルニリン酸デルタイソメラーゼをコードするIDI1遺伝子を表10に示すプライマーを用いたPCR法により増幅した。PCR酵素には東洋紡より販売されているKOD plusを利用し、94℃、2分、(94℃、15秒、45℃、30秒、68℃、1分/kb)×30サイクル、68℃、10分の条件で反応を行った。PCR断片は制限酵素SmaIで処理したpTWV228ベクターにin−fusionクローニング法にて挿入し、クローニングと発現ベクター構築を行った。E.coli DH5αに形質転換を行い、各遺伝子の想定配列長を有するクローンを選抜した後、定法に従いプラスミド抽出を行い、シーケンスを確認した。作成したプラスミドをpTWV−dmd−yidiと名付けた。pTWV−dmd−yidiの塩基配列を配列番号40に示す。
【0104】
【表10】
【0105】
メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼとイソペンテニルニリン酸デルタイソメラーゼを直鎖状に並べた配列の構築を、In−fusionクローニング法にて行った。pUC−mvk−pmkを鋳型とし表11に示すプライマーを用いてメバロン酸キナーゼとホスホメバロン酸キナーゼ配列をPCR法により増幅し、pTWV−dmd−yidiを鋳型とし表11に示すプライマーを用いてジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼとイソペンテニルニリン酸デルタイソメラーゼをPCR法により増幅した後、pTrcHis2BベクターにIn−fusionクローニング法にてクローニングを行うことで4種の酵素遺伝子を直鎖状に並べた発現プラスミドの構築を行った。PCR酵素にはタカラバイオ社より販売されているPrimeSTAR HS DNAポリメラーゼを利用し、98℃、2分、(98℃、10秒、52℃、5秒、72℃、1分/kb)×30サイクル、72℃、10分の条件で反応を行った。PCR断片は、制限酵素NcoIとPstIで処理したpTrcHis2Bベクターにin−fusionクローニング法にて挿入し、発現ベクター構築を行った。E.coli JM109に形質転換を行い、目的配列長を有するクローンを選抜した後、定法に従いプラスミド抽出を行い、シーケンスを確認した。構築した発現ベクターをpTrc−KKDyI(β)と名付けた。pTrc−KKDyI(β)の塩基配列を配列番号45に示す。
【0106】
【表11】
【0107】
7−3)メバロン酸経路下流の染色体固定
メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼとイソペンテニルニリン酸デルタイソメラーゼを直鎖状に並べた配列を染色体上で発現させる事とした。遺伝子の発現にはグルコースイソメラーゼプロモーターを利用し、転写終結にはE.coliのaspA遺伝子の転写終結領域を利用した(WO2010031062)。染色体固定部位としてTn7の転移部位を用いた(Mol Gen Genet.1981;183(2):380−7)。染色体固定後の薬剤マーカーとしてはcat遺伝子を利用した。表12に示すプライマーを利用して、E.coliのゲノムを鋳型としたPCRにより染色体固定領域の内、Tn7下流領域の増幅を行った。PCR酵素にはタカラバイオ社より販売されているPrimeSTAR HS DNAポリメラーゼを利用し、98℃、2分、(98℃、10秒、52℃、5秒、72℃、1分/kb)×30サイクル、72℃、10分の条件で反応を行った。表12に示すプライマーを利用して、pMW118−attL−Cm−attRプラスミドを鋳型としたPCRによりλファージアッタチメント部位を含むcat遺伝子領域の増幅を行った(WO2010−027022)。PCR酵素にはタカラバイオ社より販売されているPrimeSTAR HS DNAポリメラーゼを利用し、95℃、3分、(95℃、1分、34℃、30秒、72℃、40秒)×2サイクル、(95℃、30秒、50℃、30秒、72℃、40秒)×25サイクル、72℃、5分の条件で反応を行った。表12に示すプライマーを利用して、pTrc−KKDyI(β)を鋳型としたPCRによりプロモータと転写終結領域を付与したメバロン酸経路下流配列(以下KKDyIと略す)の増幅を行った。PCR酵素にはタカラバイオ社より販売されているPrimeSTAR HS DNAポリメラーゼを利用し、98℃、2分、(98℃、10秒、52℃、5秒、72℃、1分/kb)×30サイクル、72℃、10分の条件で反応を行った。これらのPCR産物と、制限酵素SmaIで処理したpMW219を用い、In−Fusionクローニング法によりベクター構築を行った。E.coli JM109に形質転換を行い、目的配列長を有するクローンを選抜した後、定法に従いプラスミド抽出を行い、シーケンスを確認した。得られたプラスミドをpMW219−KKDyI−TaspAと名づけた。pMW219−KKDyI−TaspAの塩基配列を配列番号50に示す。
【0108】
次に、表13に示すプライマーを利用して、E.coliのゲノムを鋳型としたPCRにより染色体固定領域の内、Tn7上流領域の増幅を行った。PCR酵素にはタカラバイオ社より販売されているPrimeSTAR HS DNAポリメラーゼを利用し、98℃、2分、(98℃、10秒、52℃、5秒、72℃、1分/kb)×30サイクル、72℃、10分の条件で反応を行った。PCR産物と、制限酵素SalIで処理したpMW219−KKDyI−TaspAを用い、In−Fusionクローニング法によりベクター構築を行った。E.coli JM109に形質転換を行い、目的配列長を有するクローンを選抜した後、定法に従いプラスミド抽出を行い、シーケンスを確認した。得られたプラスミドをpMW−Tn7−Pgi−KKDyI−TaspA−Tn7と名づけた。構築したプラスミドの配列を配列番号51に示す。
【0109】
続いて、λ−Red法を用いてクロラムフェニコール耐性遺伝子、グルコースイソメラーゼプロモーター、メバロン酸経路下流オペロン、aspA遺伝子転写終結領域を含む領域の染色体固定を行った。染色体固定用の断片は、プラスミドpMW−Tn7−Pgi−KKDyI−TaspA−Tn7を抽出後、制限酵素PvuIとSalIで処理した後、精製することで調整した。E.coli MG1655に温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むE.coli MG1655(以下MG1655/pKD46と表記する)をエレクトロポレーションするために用いた。プラスミドpKD46[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,vol.97,No.12,p6640−6645]は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRedシステムの遺伝子(λ、β、exo遺伝子)を含むλファージの合計2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL アクセッション番号 J02459,第31088番目〜33241番目)を含む。エレクトロポレーションの後、クロラムフェニコール耐性を獲得したコロニーを取得した。続いてゲノムDNAを抽出し、表14に示すプライマーを用いたPCRにより目的領域が染色体に固定されていることを確認した。更に、PCR断片の配列を確認することで目的領域の配列を確認した。染色体固定したメバロン酸経路下流とその周辺領域の塩基配列を配列番号52に、構築概要を
図3に示す。得られた変異体をMG1655 cat−Pgi−KKDyIと名づけた。
【0110】
MG1655 cat−Pgi−KKDyIの薬剤マーカーを以下の手順で除去した。MG1655 cat−Pgi−KKDyIのコンピテントセルを作成後pMW−int−xisを導入した。pMW−int−xisは、λファージのインテグラーゼ(Int)をコードする遺伝子、エクシジョナーゼ(Xis)をコードする遺伝子を搭載し、温度感受性の複製能を有するプラスミドである(WO2007/037460、特開2005−058827)。
【0111】
pMW−int−xisの導入により、λファージのアタッチメントサイトであるattL及びattRで挟まれた領域にあるクロラムフェニコール耐性遺伝子が染色体から脱落する。その結果として、宿主はクロラムフェニコール耐性を失うことが知られている。そこで、得られたコロニーからクロラムフェニコール感受性株を取得した。この後、42度、LB培地で6時間培養の後、LBプレート培地に塗布し、コロニーを出現させた。この中からアンピシリン耐性を失ったクローンを選抜することで、薬剤耐性を除去した。このようにして取得した変異体をMG1655 Pgi−KKDyIと名づけた。
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】
【表14】
【0115】
7−4)染色体上メバロン酸経路下流のプロモーター置換
染色体上のメバロン酸経路下流オペロンのプロモーターをλ−red法により置換した。PCRの鋳型として、attL−Tet−attR−Ptacを有するゲノム断片を使用した。これは、tacプロモーターとテトラサイクリン耐性薬剤マーカー及びλファージのアタッチメントサイトであるattL及びattRが並ぶものである。これらの配列を配列番号63に示す。表15に示すプロモーターを用いてPCR断片を調整した。PCR酵素にはタカラバイオ社より販売されているLA−Taqポリメラーゼを利用し、92℃、1分、(92℃、10秒、50℃、20秒、72℃、1分/kb)×40サイクル、72℃、7分の条件で反応を行った。PCR産物を精製し、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むMG1655 Pgi−KKDyI(以下MG1655 Pgi−KKDyI/pKD46と表記する)をエレクトロポレーションするために用いた。プラスミドpKD46[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,vol.97,No.12,p6640−6645]は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRedシステムの遺伝子(λ、β、exo遺伝子)を含むλファージの合計2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL アクセッション番号 J02459,第31088番目〜33241番目)を含む。プラスミドpKD46はPCR産物をMG1655 Pgi−KKDyIに組み込むために必要である。
【0116】
エレクトロポレーション用のコンピテントセルは次のようにして調製した。100mg/Lのアンピシリンを含んだLB培地中で30℃、一晩培養したMG1655 Pgi−KKDyI/pKD46を、アンピシリンとL−アラビノース(1mM)を含んだ5mLのLB培地で100倍希釈した。得られた希釈物を30℃で通気しながらOD600が約0.6になるまで生育させた後、氷冷した10% グリセロール溶液で3回洗浄することによってエレクトロポレーションに使用できるようにした。エレクトロポレーションは50μLのコンピテントセルと約100ngのPCR産物を用いて行った。エレクトロポレーション後のセルは1mLのSOC培地[モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook,J.ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)]を加えて37℃で1時間培養した後、LB寒天培地上、37℃で平板培養し、クロラムフェニコール耐性組換え体を選択した。次に、pKD46プラスミドを除去するために、テトラサイクリン入りのLB寒天培地上、37℃で継代し、得られたコロニーのアンピシリン耐性を試験し、pKD46が脱落しているアンピシリン感受性株を取得した。テトラサイクリン耐性遺伝子によって識別できるtacプロモーター置換を含む変異体を取得した。得られた変異体をMG1655 tet−Ptac−KKDyIと名づけた。
【0117】
薬剤マーカーを以下の手順で除去した。MG1655 tet−Ptac−KKDyIのコンピテントセルを作成後pMW−int−xisを導入した。pMW−int−xisは、λファージのインテグラーゼ(Int)をコードする遺伝子、エクシジョナーゼ(Xis)をコードする遺伝子を搭載し、温度感受性の複製能を有するプラスミドである(WO2007/037460、特開2005−058827)。pMW−int−xisの導入により、λファージのアタッチメントサイトであるattL及びattRで挟まれた領域にあるテトラサイクリン耐性遺伝子が染色体から脱落する。その結果として、宿主はテトラサイクリン耐性を失うことが知られている。そこで、得られたコロニーからテトラサイクリン感受性株を取得した。この後、42℃、LB培地で6時間培養の後、LBプレート培地に塗布し、コロニーを出現させた。この中からアンピシリン耐性を失ったクローンを選抜することで、薬剤耐性を除去した。得られた変異体をMG1655 Ptac−KKDyIと名づけた。染色体上にてtacプロモーターで支配されたメバロン酸経路下流およびその周辺領域の塩基配列を配列番号64に、概要を
図4に示す。
【0118】
【表15】
【0119】
7−5)MG1655 Ptac−KKDyI株への各植物種由来イソプレンシンターゼの導入
MG1655 Ptac−KKDyI株のコンピテントセルを調整後、エレクトロポレーション法によりpSTV28−Ptac−Ttrp、pSTV28−Ptac−IspSK、pSTV28−Ptac−IspSM、更にpSTV28−Ptac−IspSPを導入し、60 (mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。得られたプレートから、クロラムフェニコール耐性を示す形質転換体を取得した。MG1655 Ptac−KKDyI株にpSTV28−Ptac−Ttrpが導入された株をMG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−Ttrp株、pSTV28−Ptac−IspSKが導入された株をMG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSK株、pSTV28−Ptac−IspSMが導入された株をMG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSM株、pSTV28−Ptac−IspSPが導入された株をMG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSP株と命名した。
【0120】
7−6)MVA経路を強化したMG1655株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
MG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−Ttrp株、MG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSM株、更にMG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSP株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。得られたプレートから、1白金耳分の菌体を、ヘッドスペースバイアル中(Perkin Elmer社製 22 mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236)のM9グルコース(メバロン酸含有)培地1mLに接種し、その後、実施例2に記載した方法に従って、培養評価を実施した。M9グルコース(メバロン酸含有)培地の組成を表16に記載した。培養終了時のイソプレン生産量とOD値を表17に記載した。
【0121】
【表16】
【0122】
【表17】
【0123】
表17の結果から、イソプレン生産量は高い順に、MG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSM株、MG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSK株、MG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−IspSP株、そしてMG1655 Ptac−KKDyI/pSTV28−Ptac−Ttrp株となった。上記の結果から、MVA経路導入株においても、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株が最も高いイソプレン生産能を示した。
【0124】
実施例8:Corynebacterium glutamicum由来粗酵素抽出液を用いた各植物種由来イソプレンシンターゼの酵素活性測定
1)各植物種由来IspS遺伝子発現用プラスミドの構築
コリネ型細菌としてC.glutamicum 2256株(ATCC13869)を利用した(Okumura et al.,1962,Santamaria et al.,1984,Tsuchida et al.,1986)。C.glutamicumでIspSK遺伝子、IspSP遺伝子、及びIspSM遺伝子を発現させる為のプラスミドは次の手順で構築した。pUC57−IspSKを鋳型として、配列番号67と配列番号68に示す合成オリゴヌクレオチド、pUC57−IspSPを鋳型として、配列番号69と配列番号70に示す合成オリゴヌクレオチド、更にはpUC57−IspSMを鋳型として、配列番号71と配列番号72に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、Prime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行った。反応溶液はキットに添付された組成に従って調製し、98℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて120秒の反応を30サイクル行った。その結果、IspSK遺伝子、IspSP遺伝子、及びIspSM遺伝子を含む、PCR産物を取得した。次にElongation Factor Tuのプロモーター配列(以下、P
0480)を取得する目的でC.glutamicum 2256株の染色体DNAを鋳型としたPCRを行った。IspSK遺伝子とP
0480を組み合わせる目的で、PCRのプライマーとして配列番号73と配列番号74に示す合成ヌクレオチドを利用した。また、IspSP遺伝子とP
0480を組み合わせる目的で、PCRのプライマーとして配列番号73と配列番号75に示す合成ヌクレオチドを利用した。また、IspSM遺伝子とP
0480を組み合わせる目的で、PCRのプライマーとして配列番号73と配列番号76に示す合成オリゴヌクレオチドを利用した。PCRにはPrime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いた。反応溶液はキットに添付された組成に従って調製し、98℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて30秒の反応を30サイクル行った。その結果、P
0480を含むPCR産物を取得した。P
0480の配列情報を配列番号77に示す。続いてC.glutamicumとE.coliのシャトルベクター・pVK9を制限酵素XbaI(タカラバイオ社製)にて消化した(Miwa et al.,1985)。pVK9の配列情報を配列番号78に示す。精製したIspSK遺伝子、IspSP遺伝子、及びIspSM遺伝子遺伝子断片と、P
0480のPCR産物、XbaIにて消化後精製したpVK9を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたIspSK遺伝子発現用プラスミドをpVK9−P
0480−IspSK、IspSP遺伝子発現用プラスミドをpVK9−P
0480−IspSP、IspSM遺伝子発現用プラスミドをpVK9−P
0480−IspSMと命名し、これらの配列情報をそれぞれ配列番号79、80、81に示した。
【0125】
2)イソプレン生産能を有するC.glutamicum 2256株の構築
C.glutamicum 2256株をCM−Dex培地4mlを容れた試験管に植菌し、30℃、120rpmにて対数増殖期まで培養した。この菌体を集菌し、氷冷した10%グリセロールにて2〜3回洗浄後、100〜200倍程度に濃縮したものをコンピテントセルとした。コンピテントセルとpVK9、pVK9−P
0480−IspSK、pVK9−P
0480−IspSP、pVK9−P
0480−IspSMの各プラスミドDNAとを良く混合し、パルス印加を行った。バルス印加は、BIORAD社・GenePulserXCellを使用し、1.8kV、25μF、200Ωの条件で実施した。バルス印加後、CM−Dex培地にて約1〜2時間回復培養を行い、その後、Km50μg/mlを含むCM−Dexプレート培地に塗布し、30℃にて18〜24時間培養した。培養後のプレートから、カナマイシン耐性を示す形質転換体を取得した。CM−Dex培地の組成を表18に示す。C.glutamicum 2256株にpVK9が導入された株を2256/pVK9株、pVK9−P
0480−IspSKが導入された株を2256/pVK9−P
0480−IspSK株、pVK9−P
0480−IspSPが導入された株を2256/pVK9−P
0480−IspSP株、pVK9−P
0480−IspSMが導入された株を2256/pVK9−P
0480−IspSM株と命名した。
【0126】
【表18】
必要に応じてカナマイシンが終濃度50 (mg/L)になるように添加した。
プレートの場合、寒天20g/Lを添加した。
【0127】
3)粗酵素抽出液の調製方法
2256/pVK9株、2256/pVK9−P
0480−IspSK株、2256/pVK9−P
0480−IspSP株、及び2256/pVK9−P
0480−IspSM株を、50(mg/L)のカナマイシンを含むCM−Dexプレートに均一に塗布し、30℃にて18時間培養した。培養後のプレートから、1/6プレート分の菌体を50(mg/L)のカナマイシンを含むCM−Dex培地20mlを張り込んだ坂口フラスコに接種し、30℃にて6時間培養した。培養液より菌体を5000rpm、5分の条件で遠心操作により分離し、イソプレンシンターゼバッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)・20mM MgCl
2・5%グリセロール)にて2回洗浄した。洗浄後の菌体を同バッファー1.8mlに懸濁した。2ml容積のマルチビーズショッカー専用チューブに約0.9mlの破砕用ビーズ(YBG01,直径0.1mm)と菌体懸濁液0.9mlを入れ、安井器械製マルチビーズショッカー(MB701(S)型)にて2500rpm、60秒ON・60秒OFFを6サイクルの条件で菌体を破砕した。菌体破砕操作後、チューブを20000g、20分の条件の遠心操作により上清画分を得て、これを粗酵素抽出液とした。
【0128】
4)イソプレンシンターゼ活性の測定
2256/pVK9株、2256/pVK9−P
0480−IspSK株、2256/pVK9−P
0480−IspSP株、及び2256/pVK9−P
0480−IspSM株の粗酵素抽出液のタンパク質濃度をビシンコニン酸法(BCA法)により測定した。測定試薬として、BCA Protein Assay Reagent Kit(サーモサイエンティフィック社、Cat.#23227)を用いた。総タンパク量として2mgの粗酵素抽出液とイソプレンバッファーを合わせて0.5mlとなるよう調製し、これをヘッドスペースバイアルに入れ、その後、0.5M MgCl
2溶液0.025mlと0.2M DMAPP(cayman製,Catlog No.63180)溶液0.01mlを加えて軽く攪拌した後、すぐに密栓し37℃、2時間の条件で反応を行った。反応後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。ヘッドスペースバイアルとして、Perkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236を、密栓用のキャップとして、Perkin Elmer社製ヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付cat♯B0104240を利用した。
表19に各菌株の反応2時間後のイソプレン生成量を記載した。
【0129】
【表19】
【0130】
表19の結果から、イソプレン生成量は高い順に、2256/pVK9−P
0480−IspSM株、2256/pVK9−P
0480−IspSK株となり、2256/pVK9−P
0480−IspSP株と2256/pVK9株は同等となった。上記の結果から、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株の粗酵素抽出液が最も高いイソプレン生成活性を示した。
【0131】
実施例9:Corynebacterium glutamicum 2256株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
1)C.glutamicum 2256株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
2256/pVK9株、2256/pVK9−P
0480−IspSK株、2256/pVK9−P
0480−IspSP株、及び2256/pVK9−P
0480−IspSM株を、50(mg/L)のカナマイシンを含むCM−Dexプレートに均一に塗布し、30℃にて18〜24時間培養した。得られたプレートから、1白金耳分の菌体を、ヘッドスペースバイアル内のMM−グルコース培地1mLに接種し、密栓後、往復振とう培養装置で、30℃にて120rpm、24時間の培養を行った。ヘッドスペースバイアルとしてPerkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236を、密栓用のキャップとしてPerkin Elmer社製ヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付cat♯B0104240を利用した。
MM−グルコース培地の組成は表20に記載のとおりである。
【0132】
【表20】
必要に応じてカナマイシンが終濃度50 (mg/L)になるように添加した。
1Lに調製後、濾過滅菌を行った。
【0133】
培養終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。また、OD値は分光光度計(HITACHI U−2900)によって660nmで測定した。
表21に各菌株の培養終了時のイソプレン濃度を記載した。
【0134】
【表21】
【0135】
表21の結果から、イソプレン生産量は高い順に、2256/pVK9−P
0480−IspSM株、2256/pVK9−P
0480−IspSK株となった。2256/pVK9株、2256/pVK9−P
0480−IspSP株からイソプレンは未検出となった。上記の結果から、C.glutamicum 2256の野生株において、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株が最も高いイソプレン生産能を示した。
【0136】
実施例10:P.ananatis由来粗酵素抽出液を用いた各植物種由来イソプレンシンターゼの酵素活性測定
1)イソプレン生産能を有するP.ananatis AJ13355株の構築
P.ananatis AJ13355株のコンピテントセルを調製後、エレクトロポレーション法によりpSTV28−Ptac−Ttrp、pSTV28−Ptac−IspSK、pSTV28−Ptac−IspSP、更にpSTV28−Ptac−IspSMを導入し、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、30℃にて18時間培養した。その後、得られたプレートから、クロラムフェニコール耐性を示す形質転換体を取得した。P.ananatis AJ13355株にpSTV28−Ptac−Ttrpが導入された株をAJ13355/pSTV28−Ptac−Ttrp株、pSTV28−Ptac−IspSKが導入された株をAJ13355/pSTV28−Ptac−IspSK株、pSTV28−Ptac−IspSPが導入された株をAJ13355/pSTV28−Ptac−IspSP株、pSTV28−Ptac−IspSMが導入された株をAJ13355/pSTV28−Ptac−IspSM株と命名した。
【0137】
2)粗酵素抽出液の調製方法
実施例4に記載してある方法に順じて、粗酵素活性を測定した。AJ13355/pSTV28−Ptac−Ttrp株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSP株、及びAJ13355/pSTV28−Ptac−IspSM株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、30℃にて18時間培養した。得られたプレートから、1/6プレート分の菌体を60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLB20mlを張り込んだ坂口フラスコに接種し、34℃にて6時間培養した。培養液より菌体を6000rpm、4℃、5分の条件で遠心分離し、氷冷したイソプレンシンターゼバッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)・20mM MgCl
2・5%グリセロール)にて2回洗浄した。洗浄菌体を同バッファー1.8mlに懸濁した。2ml容のマルチビーズショッカー専用チューブに約0.9mlの破砕用ビーズ(YBG01,直径0.1mm)と菌体懸濁液0.9mlを入れ、安井器械製マルチビーズショッカー(MB701(S)型)にて2500rpm、4℃、30秒ON・30秒OFFを3サイクルの条件で菌体を破砕した。破砕後チューブを20000g、4℃、20分の条件で遠心し、上清を粗酵素抽出液とした。
【0138】
3)イソプレンシンターゼ活性の測定
AJ13355/pSTV28−Ptac−Ttrp株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSP株、及びAJ13355/pSTV28−Ptac−IspSM株の粗酵素抽出液(ブラッドフォード法にて総タンパク量として2mgになるように定量した)とイソプレンバッファーを合わせて0.5mlをヘッドスペースバイアル(Perkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236)に入れ、0.5M MgCl
2溶液0.025mlと0.2M DMAPP(cayman製,Catlog No.63180)溶液0.01mlを加えて軽く攪拌した後、すぐにヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)にて密栓、37℃にて2時間保温した。
反応終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0139】
【表22】
【0140】
表22の結果から、イソプレン生成量は高い順に、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSM株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSK株となり、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSP株、AJ13355/pSTV28−Ptac−Ttrp株となった。上記の結果から、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株の粗酵素抽出液が最も高いイソプレン生成活性を示した。
【0141】
実施例11:P.ananatis AJ13355株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
P.ananatis AJ13355株においても、葉緑体移行シグナルを欠失した全てのイソプレンシンターゼ導入株について、グルコースからのイソプレン生産能を比較した。AJ13355/pSTV28−Ptac−Ttrp株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSP株、及びAJ13355/pSTV28−Ptac−IspSM株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、30℃にて18時間培養した。得られたプレートから、1白金耳分の菌体を、ヘッドスペースバイアル中のM9グルコース培地1mLに接種し、ヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)で密栓後、往復振とう培養装置(120rpm)で、30℃にて24時間培養を行った。培養終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定し、OD値は分光光度計(HITACHI U−2900)によって600nmで測定した。表23に各菌株の培養終了時のイソプレン濃度とOD値を記載した。
【0142】
【表23】
【0143】
表23の結果から、イソプレン生産量は高い順に、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSM株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ13355/pSTV28−Ptac−IspSP株、そしてAJ13355/pSTV28−Ptac−Ttrp株となった。上記の結果から、P.ananatis AJ13355株においても、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株が最も高いイソプレン生産能を示した。
【0144】
実施例12:E.aerogenes AJ110637由来粗酵素抽出液を用いた各植物種由来イソプレンシンターゼの酵素活性測定
1)イソプレン生産能を有するE.aerogenes AJ110637株の構築
E.aerogenes AJ110637株のコンピテントセルを調製後、エレクトロポレーション法によりpSTV28−Ptac−Ttrp、pSTV28−Ptac−IspSK、pSTV28−Ptac−IspSP、更にpSTV28−Ptac−IspSMを導入し、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。その後、得られたプレートから、クロラムフェニコール耐性を示す形質転換体を取得した。E.aerogenes AJ110637株にpSTV28−Ptac−Ttrpが導入された株をAJ110637/pSTV28−Ptac−Ttrp株、pSTV28−Ptac−IspSKが導入された株をAJ110637/pSTV28−Ptac−IspSK株、pSTV28−Ptac−IspSPが導入された株をAJ110637/pSTV28−Ptac−IspSP株、pSTV28−Ptac−IspSMが導入された株をAJ110637/pSTV28−Ptac−IspSM株と命名した。
【0145】
2)粗酵素抽出液の調製方法
実施例4に記載してある方法に順じて、粗酵素活性を測定した。AJ110637/pSTV28−Ptac−Ttrp株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSP株、及びAJ110637/pSTV28−Ptac−IspSM株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。得られたプレートから、1/6プレート分の菌体を60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLB20mlを張り込んだ坂口フラスコに接種し、37℃にて4時間培養した。培養液より菌体を8000rpm、4℃、10分の条件で遠心分離し、氷冷したイソプレンシンターゼバッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)・20mM MgCl
2・5%グリセロール)にて2回洗浄した。洗浄菌体を同バッファー1.8mlに懸濁した。2ml容のマルチビーズショッカー専用チューブに約0.9mlの破砕用ビーズ(YBG01,直径0.1mm)と菌体懸濁液0.9mlを入れ、安井器械製マルチビーズショッカー(MB701(S)型)にて2500rpm、4℃、30秒ON・30秒OFFを3サイクルの条件で菌体を破砕した。破砕後チューブを20000g、4℃、20分の条件で遠心し、上清を粗酵素抽出液とした。
【0146】
3)イソプレンシンターゼ活性の測定
AJ110637/pSTV28−Ptac−Ttrp株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSP株、及びAJ110637/pSTV28−Ptac−IspSM株の粗酵素抽出液(ブラッドフォード法にて総タンパク量として2mgになるように定量した)とイソプレンバッファーを合わせて0.5mlをヘッドスペースバイアル(Perkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP IAL cat♯B0104236)に入れ、0.5M MgCl
2溶液0.025mlと0.2M DMAPP(cayman製,Catlog No.63180)溶液0.01mlを加えて軽く攪拌した後、すぐにヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)にて密栓、37℃にて2時間保温した。
反応終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィー
により測定した。
表24に各菌株の反応2時間後のイソプレン生成量を記載した。
【0147】
【表24】
【0148】
表24の結果から、イソプレン生成量は高い順に、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSM株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSP株、そしてAJ110637/pSTV28−Ptac−Ttrp株となった。上記の結果から、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株の粗酵素抽出液が最も高いイソプレン生成活性を示した。
【0149】
実施例13:E.aerogenes AJ110637株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
E.aerogenes AJ110637株においても、葉緑体移行シグナルを欠失した全てのイソプレンシンターゼ導入株について、グルコースからのイソプレン生産能を比較した。AJ110637/pSTV28−Ptac−Ttrp株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSP株、及びAJ110637/pSTV28−Ptac−IspSM株を、60(mg/L)のクロラムフェニコールを含むLBプレートに均一に塗布し、30℃にて18時間培養した。得られたプレートから、1白金耳分の菌体を、ヘッドスペースバイアル中のM9グルコース培地1mLに接種し、ヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)で密栓後、往復振とう培養装置(120rpm)で、30℃にて24時間培養を行った。培養終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定し、OD値は分光光度計(HITACHI U−2900)によって600nmで測定した。表25に各菌株の培養終了時のイソプレン濃度とOD値を記載した。
【0150】
【表25】
【0151】
表25の結果から、イソプレン生産量は高い順に、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSM株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSK株、AJ110637/pSTV28−Ptac−IspSP株、そしてAJ110637/pSTV28−Ptac−Ttrp株となった。上記の結果から、E.aerogenes AJ110637株においても、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株が最も高いイソプレン生産能を示した。
【0152】
実施例14:Saccharomyces cerevisiae由来粗酵素抽出液を用いた各植物種由来イソプレンシンターゼの酵素活性測定
1)各植物種由来IspS遺伝子発現用プラスミドの構築
S.cerevisiaeでIspSK遺伝子、IspSP遺伝子、及びIspSM遺伝子を発現させる為のプラスミドは次の手順で構築した。pUC57−IspSKを鋳型として、配列番号82と配列番号83に示す合成オリゴヌクレオチド、pUC57−IspSPを鋳型として、配列番号84と配列番号85に示す合成オリゴヌクレオチド、更にはpUC57−IspSMを鋳型として、配列番号86と配列番号87に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、Prime Starポリメラーゼ(Takara社製)を用いてPCRを行った。反応溶液はキットに添付された組成に従って調製し、98℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて120秒の反応を30サイクル行った。その結果、IspSK遺伝子、IspSP遺伝子、及びIspSM遺伝子を含む、PCR産物を取得した。一方、S.cerevisiaeとE.coliのシャトルベクター・pYES2(インビトロジェン社Cat.no.V825−20)を制限酵素KpnI(タカラバイオ社製)にて消化した。その後、精製されたIspSK遺伝子を含むPCR断片とKpnIにて消化後精製したpYES2を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたIspSK遺伝子発現用プラスミドをpYES2−IspSKと命名した。同様に、精製されたIspSP遺伝子を含むPCR断片とKpnIにて消化後精製したpYES2を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたIspSP遺伝子発現用プラスミドをpYES2−IspSPと命名した。同様に、精製されたIspSM遺伝子を含むPCR断片とKpnIにて消化後精製したpYES2を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたIspSM遺伝子発現用プラスミドをpYES2−IspSMと命名した。
【0153】
2)イソプレン生産能を有するS.cerevisiae S288C株の構築
S.cerevisiae S288C株のコンピテントセルをFrozen−EZ Yeast Transformation KitII(ZYMO RESEARCH社,Cat.no.T2001)を用いて調製した。同キットのプロトコールに従って、pYES2、pYES2−IspSK、pYES2−IspSP、更にpYES2−IspSMをS.cerevisiae S288C株のコンピテントセルに導入し、SD−Uraプレートに均一に塗布し、30℃にて2日間培養した。その後、得られたプレートから、Ura要求性が消失した形質転換体を取得した。SD−Ura培地の組成は表26に記載のとおりである。S.cerevisiae S288C株にpYES2が導入された株をS288C/pYES2株、pYES2−IspSKが導入された株をS288C/pYES2−IspSK株、pYES2−IspSPが導入された株をS288C/pYES2−IspSP株、pYES2−IspSMが導入された株をS288C/pYES2−IspSM株と命名した。
【0154】
【表26】
【0155】
3)粗酵素抽出液の調製方法
S288C/pYES2株、S288C/pYES2−IspSK株、S288C/pYES2−IspSP株、及びS288C/pYES2−IspSM株を、SD−Uraプレートに均一に塗布し、30℃にて24時間培養した。得られたプレートから、1/4プレート分の菌体をSD−Ura Galactose(SD−Ura培地のGlucoseをGalactoseに換えた培地)培地50mlを張り込んだ坂口フラスコに接種し、30℃にて16時間培養した。SD−Ura Galactose培地の組成を表27に示す。培養液より菌体を3000rpm、5分の条件で遠心分離し、イソプレンシンターゼバッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)・20mM MgCl
2・5%グリセロール)にて2回洗浄した。洗浄菌体を同バッファー1.8mlに懸濁した。2ml容のマルチビーズショッカー専用チューブに約0.9mlの破砕用ビーズ(YBG05,直径0.5mm)と菌体懸濁液0.9mlを入れ、安井器械製マルチビーズショッカー(MB701(S)型)にて2500rpm、60秒ON・60秒OFFを12サイクルの条件で菌体を破砕した。破砕後チューブを20000g、20分の条件で遠心し、上清を粗酵素抽出液とした。
【0156】
【表27】
【0157】
4)イソプレンシンターゼ活性の測定
S288C/pYES2株、S288C/pYES2−IspSK株、S288C/pYES2−IspSP株、及びS288C/pYES2−IspSM株の粗酵素抽出液の粗酵素抽出液のタンパク質濃度をビシンコニン酸法(BCA法)により測定した。測定試薬として、BCA Protein Assay Reagent Kit(サーモサイエンティフィック社、Cat.#23227)を用いた。総タンパク量として0.4mgの粗酵素抽出液とイソプレンバッファーを合わせて0.25mlとなるよう調製し、これをヘッドスペースバイアルに入れ、0.5M MgCl
2溶液0.0125mlと0.2M DMAPP(cayman製,Catlog No.63180)溶液0.005mlを加えて軽く攪拌した後、すぐにヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)にて密栓、37℃にて2時間の条件で反応を行った。反応後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。ヘッドスペースバイアルとして、Perkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236を、密栓用のキャップとして、Perkin Elmer社製ヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付cat♯B0104240を利用した。
表28に各菌株の反応2時間後のイソプレン生成量を記載した。
【0158】
【表28】
【0159】
表28の結果から、イソプレン生成量は高い順に、S288C/pYES2 −IspSM株、S288C /pYES2 −IspSK株となり、S288C/pYES2−IspSP株とS288C/pYES2株は同等となった。上記の結果から、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株の粗酵素抽出液が最も高いイソプレン生成活性を示した。
【0160】
実施例15:Saccharomyces cerevisiae S288C株における、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
1)S.cerevisiae S288Cにおける、各植物種由来イソプレンシンターゼの導入効果
S288C/pYES2株、S288C/pYES2−IspSK株、S288C/pYES2−IspSP株、及びS288C/pYES2−IspSM株を、YPDプレートに均一に塗布し、30℃にて18〜24時間培養した。得られたプレートから、1白金耳分の菌体を、ヘッドスペースバイアル中(Perkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236)のSD−Ura2培地(グルコース,ガラクトース各1g/Lを含む)1 mLに接種し、ヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)で密栓後、往復振とう培養装置にて、30℃120rpmの条件で24時間培養を行った。YPD培地の組成を表29に、SD−Ura2培地の組成は表30に記す。
【0161】
【表29】
【0162】
【表30】
【0163】
培養終了後、バイアルのヘッドスペース中のイソプレン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。
また、OD値は分光光度計(HITACHI U−2900)によって600nmで測定した。表31に各菌株の培養終了時のイソプレン濃度を記載した。
【0164】
【表31】
【0165】
表31の結果から、イソプレン生産量は高い順に、S288C/pYES2−IspSM株、S288C/pYES2−IspSK株となった。S288C/pYES2株、S288C/pYES2−IspSP株からイソプレンは未検出となった。上記の結果から、野生株では、ムクナ由来イソプレンシンターゼを導入した株が最も高いイソプレン生産能を示した。
【0166】
実施例16:イソプレンシンターゼの安定性比較
1)発現用プラスミドの構築
ムクナ由来イソプレンシンターゼの大量発現用プラスミドの構築を次の手順で行った。ベクター部分について、pCold−TF(TaKaRa社製、#3365、配列情報はGenBank/EMBL/DDBJ accession ID AB213654)を鋳型とし、配列番号88と配列番号89に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRを行った。インサートについてはpUC57−ispSMを鋳型とし、配列番号90と配列番号91に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRを行った。PCR法のポリメラーゼはPrimeSTAR HS(TaKaRa社製)を利用し、反応溶液はキットに添付された組成に従って調製し、反応条件は95℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて6分間を一連のサイクルとし、30回繰り返した。得られたこれらのDNA断片をIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。構築したプラスミドをpCold−TF−IspSMと名付けた。pCold−TF−IspSMの塩基配列を配列番号92に示す。
ポプラ由来イソプレンシンターゼの大量発現用プラスミドの構築を次の手順で行った。ベクター部分について、pCold−TFを鋳型とし、配列番号88と配列番号89に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRを行った。インサートについてはpUC57−ispSPを鋳型とし、配列番号93と配列番号94に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRを行った。PCR法のポリメラーゼはPrimeSTAR HS(TaKaRa社製)を利用し、反応溶液はキットに添付された組成に従って調製し、反応条件は95℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて6分間を一連のサイクルとし、30回繰り返した。得られたこれらのDNA断片をIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。構築したプラスミドをpCold−TF−IspSPと名付けた。pCold−TF−IspSPの塩基配列を配列番号95に示す。
クズ由来イソプレンシンターゼの大量発現用プラスミドの構築を次の手順で行った。ベクター部分について、pCold−TFを鋳型とし、配列番号88と配列番号89に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRを行った。インサートについてはpUC57−ispSKを鋳型とし、配列番号96と配列番号97に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRを行った。PCR法のポリメラーゼはPrimeSTAR HS(TaKaRa社製)を利用し、反応溶液はキットに添付された組成に従って調製し、反応条件は95℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて6分間を一連のサイクルとし、30回繰り返した。得られたこれらのDNA断片をIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。構築したプラスミドをpCold−TF−IspSKと名付けた。pCold−TF−IspSKの塩基配列を配列番号98に示す。
これらの発現ベクターの構築においてイソプレンシンターゼはtrigger factor(TF)をN末端に融合した蛋白質として発現するよう設計した。TFとイソプレンシンターゼの融合タンパク質をTF−IspSと命名した。ムクナ由来イソプレンシンターゼの融合タンパク質をTF−IspSM、ポプラ由来イソプレンシンターゼの融合タンパク質をTF−IspSP、葛由来イソプレンシンターゼの融合タンパク質をTF−IspSKと名付けた。
pCold−TF−IspSM,pCold−TF−IspSP,pCold−TF−IspSKそれぞれをE.coli BL21 (DE3)のコンピテントセル(one shot BL 21(DE3)、LifeTechnologies社製)にヒートショック法により形質転換を行った。42℃、30秒のヒートショックの後、SOC培地を用いた回復培養を37℃、1時間、120rpmの条件で実施した。その後、アンピシリン100mg/Lを含むLBプレートに全量播種し、37℃、14時間静置培養した。
【0167】
2)イソプレンシンターゼの大量調製のための培養
形成されたコロニーをピックし、アンピシリン100mg/Lを含む5mL LB培地に植菌した後、OD600=1.0になるまで37℃、200rpmで培養した。当該OD値に到達したことを確認した後、アンピシリン100mg/Lを含むLB培地100mlを張り込んだ500mL容量の坂口フラスコに全量を植菌し、OD600=1.0に到達するまで37℃、120rpmで培養した。その後、1Mイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度1mMになるよう添加し、15℃、100rpmで終夜培養した。培養終了後、8000×g、10分で遠心分離して菌体を回収し、精製操作を行うまで−20℃にて保存した。
【0168】
3)イソプレンシンターゼの精製
イソプレンシンターゼの精製はHis−tagカラムを利用して行った。培養終了後のブロス100mLより得られた菌体を50mM リン酸バッファー(pH8)、500mM NaClからなる破砕バッファー240mLに懸濁し、超音波破砕機(Sonifier 250、Baransan社製)を用いて、duty cycle 50%、output control 6の条件にて、8分間、氷上にて超音波破砕を実施した。超音波破砕後、14000×g、20分の遠心分離操作により破砕上清を得た。以下の精製操作は全て4℃にて実施した。polyprep column(BioRad社製)にHis−select Nickel affinity gel(Sigma社製)を、ベッドボリューム2mL相当をアプライし、重力法により充填した。次に破砕バッファー10mLをアプライし、重力法で平衡化を実施した。このカラムに対し超音波破砕後の破砕上清を全量アプライし、TF−IspSをカラムに吸着させた。
アプライした破砕上清の全量がカラムを通過したことを確認した後、破砕バッファー10mLでカラムを洗浄した。更に、50mM tris−HCl(pH8.0)、15mM MgCl
2からなる活性測定用バッファー10mLでカラムを追加洗浄した。その後、50mM tris−HCl(pH8.0)、15mM MgCl
2、10mM imidazoleからなる洗浄液をカラムに4mLアプライし、通過液を廃棄した。最後に、50mM tris−HCl(pH8.0)、15mM MgCl
2、200mM imidazoleからなる溶出液を4mLカラムにアプライし、TF−IspSの溶出を行った。溶出後のTF−IspSをゲル濾過カラム(amicon ultra MWCO100k(Millipore社))で濃縮した。
続いて、TF−IspS融合タンパク質の融合部分を切断した。切断には、Factor Xa(Novagen社製)を利用した。反応バッファーは、50mM tris−HCl(pH8.0)、100mM NaCl、5mM CaCl
2からなり、26U Factor Xaを添加し、4℃にて、14時間反応を行った。反応終了後の反応液を、His−Select Nickel Affinity gelに通過させることにより、TFのみがHis−Select Nickel Affinity gelに吸着する事を利用して、反応液中からTFを除去した。続いてゲル濾過カラム(amicon ultra MWCO50k、Millipore社)を用いてIspSを濃縮した。得られた濃縮液をNuPAGE 4−12%(Life Technlogies社製)で展開し、純度検定を実施した。展開したゲルをCBB染色した結果、IspS以外の不純物由来のバンドが観測されなかったことから、純度は99%程度と推定した。
このようにして得られたIspSM溶液とIspSK溶液は、活性測定用バッファーに対して終濃度5% glycerolを添加して活性測定に供するまで−80℃冷凍庫で保存した。また、IspSP溶液は終濃度5% PEG600を添加して、活性測定に供するまで−80℃冷凍庫で保存した。
【0169】
4)イソプレンシンターゼの活性測定
IspSM、IspSK、IspSPを氷上で解凍し、バッファー交換によりglycerolやPEG600を除去した。また、SDS−PAGE上の比色定量によりタンパク質濃度を統一した。イソプレン反応液50μLは、50mM tris−HCl,pH8.0,15mM MgCl
2,4mM DMAPP,1μg IspSから構成される。このイソプレン反応液50μlを0.2ml容積のPCR tube(日本ジェネティクス社製)に入れ、蓋に穴を穿った。次に、このチューブを450μLの純水を張り込んだ22mL バイアル(PerkinElmer社製)に入れ、直ちにヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(PerkinElmer社製)で密栓した。イソプレン生成反応は40℃にて238時間行った。発生したイソプレンの定量は、4−2)および4−3)に記載の方法に従った。結果を表32に示す。結果に示す通り、ムクナ由来イソプレンシンターゼはクズ由来イソプレンシンターゼと比較し10倍程度高いイソプレン生産能を有することが明らかとなった。
【0170】
【表32】
【0171】
5)イソプレンシンターゼの安定性の比較
上記の方法で精製した各IspSを、50mM tris−HCl,pH8.0,15mM MgCl
2溶液中にて、4℃、48時間保存した。上で述べた方法に従って、保存前後の各種イソプレンシンターゼが酵素反応により産出するイソプレン生産量をガスクロマトグラフィーにて解析した。保存前のイソプレン生産量で、保存後の生産量を割り返して比較した。その結果、ムクナ由来イソプレンシンターゼは、葛由来イソプレンシンターゼ、ポプラ由来イソプレンシンターゼと比べ、優れた安定性を持つことが明らかになった。
【0172】
【表33】