(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169084
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】エアロゾルに含まれるナノ物体をその分析のためにサンプリング及び輸送する装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
G01N1/02 D
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-533927(P2014-533927)
(86)(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公表番号】特表2014-531601(P2014-531601A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012069774
(87)【国際公開番号】WO2013050561
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】1158997
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】514085230
【氏名又は名称】ナノインスペクト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】シモン・クラヴァゲラ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・デコラン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・エベール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ループ・レシャタン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・タルディフ
【審査官】
赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−180553(JP,A)
【文献】
特開2011−080982(JP,A)
【文献】
米国特許第04961916(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02−1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾルに浮遊する可能性があるナノ物体を捕獲することができる多孔性のサンプリングフィルター(30)と、
相互組立手段(11、110;21、210)及びフィルター保持手段(14、24)が備えられる第1部品及び第2部品で構成されるカセットであって、前記第1部品及び第2部品がそれらの組立位置において前記フィルターが保持されることによって収容されるキャビティを画定するカセットと、
前記キャビティと外部との間を密封することができる少なくとも1つのシールと、
を備える、エアロゾルに存在する可能性があるナノ物体を、その解析のためにサンプリングし、輸送するための装置であって、
前記相互組立手段が、
−前記第1部品と一体である第1のクリッピング手段(21、210)と、
−前記第2部品と一体であり、両方の部品をクリッピングするために前記第1の手段と協働することができる第2のクリッピング手段(11、110)であって、前記第1及び第2のクリッピング手段が、前記部品の組立位置において外側からアクセス可能ではないように構成される第2のクリッピング手段(11、110)と、を備え、
前記部品の少なくとも1つがホール(13)を備え、前記ホール(13)がそれぞれ、前記部品の外側に及び前記クリッピング手段の協働領域の一方に同時に開放し、前記ホールがそれぞれ、前記第1又は前記第2のクリッピング手段に対するピン(50)に推進力を加えることによって両方の部品を取り外すためのピンを収容することができ、前記第1のクリッピング手段がタブを備え、前記タブの外表面が前記装置の外表面の一部を形成する、装置。
【請求項2】
前記第1のクリッピング手段が、nに等しい数の弾性的に変形可能なタブからなり、前記タブの先端が、フックのような形状をし、2πを数nで割ったもの、すなわち2π/nに等しい角度位置において互いに相対的に離隔されて前記第1部品に配置され、
前記第2のクリッピング手段が、同一の数nの凹部又は突起からなり、前記凹部又は突起が、前記フックと相補的であるような形状をし、前記タブと同一の2π/nの角度位置において互いに相対的に離隔されて前記第2部品に配置される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルター保持手段が、2つのショルダー(14、24)を備え、一方が、前記第1部品の内周上に形成され、他方が、前記第2部品の内周上に形成され、
前記装置が、両方のショルダーの間に挟まれて保持されるフィルターホルダー(3)を備える請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルターホルダーが、前記組立位置において前記第1及び第2部品によって押し込まれるように圧力を掛けながら変形可能であり、それによって単一のシールを形成する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ショルダーの少なくとも1つに対して加圧する少なくとも1つの弾性シールを備える請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1及び第2部品並びに前記フィルターホルダーが、熱可塑性プラスチック材料、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)又はポリオキシメチレン共重合体(POM−C)に基づく請求項3から5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記相互組立手段が、前記第1部品及び第2部品の各々において環状端部(15、25)をさらに備え、クリッピングに加えて、それらの組立位置において前記部品の間の相互表面加圧を行う請求項1から6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記部品の少なくとも1つが、前記環状端部の両側に刻み目(12、22)をさらに備え、前記フィルターホルダー(3)が、フィルター識別要素(4)が取り付けられる、前記刻み目と相補的な突部(31)を備え、前記部品の組立位置において、前記識別要素が外部雰囲気に接触するようになる請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記識別要素が、電子チップ又は無線自動識別(RFID)タグ又は二次元バーコードである請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記識別要素が、エッチング、射出成形又はタンポグラフィーを用いてボンディング技術によって取り付けられる請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記ホール(13)と同一の位置に互いに相対的に離隔されて配置されるピン(50)を備えることを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の装置の両方の部品の取り外しを行うための道具(5)。
【請求項12】
前記第1又は第2のクリッピング手段に対する前記ピン(50)の同時の押し込みを容易にするために、前記ホールを備える前記部品に対して相対的に前記道具を案内することができる機械的なガイド手段(51)をさらに備える請求項11に記載の道具。
【請求項13】
ナノ物体を製造し又はナノ材料を開発する場所にいる使用者が晒されることを追跡するための装置としての、請求項1から10の何れか一項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルに含まれるナノ物体をその分析のためにサンプリング及び輸送する装置に関連する。
【0002】
より具体的には、本発明は、エアロゾルに含まれるナノ粒子又はナノ物体のサンプリング及び輸送に適用できる。
【0003】
ナノ物体という用語は、約100nm未満である少なくとも1つのユニットサイズにおける物体を意味する。
【0004】
ナノ粒子という用語は、ユニットの平均直径がISO−TS/27687標準に従って約100nm未満である、通常球形の粒子(しかしそれに限られない)を意味する。
【0005】
本発明はまた、エアロゾルに含まれるマイクロメートルサイズの粒子のサンプリング及び輸送に適用できる。
【背景技術】
【0006】
ナノ技術の急速な成長は、最適な安全条件を保証するために、特にナノ物体を製造し又はナノ材料を開発する場所における作業者(労働者)に対するこれらの新しい材料の健康影響及び環境影響における研究の実施を必須にしてきた。
【0007】
数年にわたり、ナノメートルサイズの粒子が集中的に研究され、それらの使用は、健康、マイクロエレクトロニクス、エネルギー技術又は絵具や化粧品などの消費者製品などの様々な分野で広まり始めている。
【0008】
従って、労働者、消費者及び環境がナノ粒子に晒されることを評価し追跡する方法を開発することが必要である。従って、信頼性のあるエアロゾルのサンプリング及び分析方法を開発することが、公衆衛生及び作業場における危険防止の観点で重要な問題である。特に、持ち運び可能であると共にナノ物体を製造し又はナノ粒子を開発する作業場における作業者の作業着に単独で取り付けられるサンプリング装置を開発することが必須であることが分かる。
【0009】
現在好まれるサンプリング又はサンプリング工程方法の選択は、その後に様々な技術(重量測定、電子顕微鏡、XRFなど)を用いて分析されるフィルターを介して粒子が含まれている可能性がある空気の流れを吸引することからなる。
【0010】
従来技術によると、カセットサンプラーとも呼ばれるサンプリング装置が既に知られており、それは、持ち運び可能であり、呼吸した際に個人の口又は鼻によって吸い込まれる可能性があるエアロゾル不純物をサンプリングしなければならないものである。
【0011】
そのため、米国特許第4,961,916号は、気体及び微粒子の汚染物質をサンプリングする装置に関連しており、その装置は、その中に3つのフィルターが互いに積層されたカセットを備えると共に、これらのフィルターの両側に2つのポートを備え、一方は汚染される可能性がある外部環境に開放しており、他方は吸引ポンプに接続されるパイプ上にある。そのため、上流から下流までのポンプによる吸引により、第1のフィルターは、エアロゾルの微粒子破片のみを取集することができ、予め反応剤が浸透された第2のフィルターは、1つ又はそれ以上のガス状の化合物と選択的に反応することができ、第3のフィルターは、フィルタリング組立体を強固にする機能のみを有する。この特許において目的とされるサンプリングは、汚染された空気に含まれるガス状の微粒子のイソシアネートを収集することである。
【0012】
同様に、米国特許第5,205,155号は、空気中に浮遊している可能性があるアスベスト繊維をサンプリングする装置を開示しており、サンプリングカセットに収容されるフィルターにおける不均一な堆積に関心がある。この特許は、これを解決するために、対象となる雰囲気の吸入ポートの付近にあるカセット吸入口の形状を裾が広がっている形状にし、フィルターへの均一な粒子の堆積を促進するためにそれを滑らかにすることを提案している。
【0013】
米国特許出願第2008/0196514号は、浮遊微小粒子の吸入可能な破片を収集するために使用される粉塵を個々にサンプリングする装置に関連している。
【0014】
この特許は、カセットの種々のアスペクト比(開口部の注入直径Dに対する長さLの比)を開示しており、この特許によると、それは、吸入サンプリングが改善されることを可能にする。さらに、この特許は、鼻を介した最良の代表的な呼気を有するように、底部から上部へ吸引された空気の流れの垂直な配向を提供することが有利であると言及している。
【0015】
従来技術のエアロゾルサンプリング方法及び装置は、以下に纏められる1つ又はそれ以上の大きな欠点を有する:
−ほとんどのエアロゾルサンプリング方法は、インサイチュでそのカセットからフィルターを抜き出すことを必要とする。そのため、実装装置は、誰かによって容易にカセットを開けられるように提供される:そのため、意図的ではない抜き取りでの解放は、フィルターの外部汚染、フィルターに吸収された材料の消失又はフィルターの乏しいトレーサビリティを引き起こす。特に、ナノ物体を製造し又はナノ粒子を開発する場所における作業者は、カセットを気付かずに開け、フィルターを汚し、既に使用されたものを置く等の可能性がある。
−サンプリング後、個人の口又は鼻によって吸引された微粒子破片の最良の状態を有する必要がある。しかしながら、文献に記載された幾つかの方法は、最適ではないサンプリング装置の方向性を持っており、それは、結果の解釈を不確かにする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,961,916号明細書
【特許文献2】米国特許第5,205,155号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0196514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そのため、本発明の一般的な目的は、上述の欠点を有することなく、そのためサンプリングの完全性を保証し、実際の分析までそのトレーサビリティを正確に提供する、エアロゾルに存在し得るナノ物体をその元素分析のためにサンプリング及び輸送する装置を提供することである。
【0018】
元素分析が、原子百分率と共に如何なる元素(チタン、炭素、ニッケル等)が試料中に存在するかを決定することを可能にする分析であることを明確にしておく。一方で、元素分析は、これらの元素の構造又は集合を共に決定することができるものではない。
【0019】
本発明の特有の目的は、簡単に実施できて安価であるこのタイプの装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このように、本発明の対象は、エアロゾルに存在する可能性があるナノ物体を捕獲することができる多孔性のサンプリングフィルターと、相互組立手段及びフィルター保持手段が備えられる第1部品及び第2部品で構成されるカセットであって、前記第1部品及び第2部品がそれらの組立位置において前記フィルターが保持されることによって収容されるキャビティを画定するカセットと、前記キャビティと外部との間を密封する少なくとも1つのシールと、を備える、エアロゾルに存在する可能性があるナノ物体をその解析のためにサンプリングし、輸送するための装置である。
【0021】
本発明によれば、前記相互組立手段は、
−前記第1部品と一体である第1のクリッピング手段と
−前記第2部品と一体であり、両方の部品をクリッピングするために前記第1の手段と協働することができる第2のクリッピング手段であって、前記第1及び第2のクリッピング手段が、前記部品の組立位置において外側からアクセル可能ではないように構成される第2のクリッピング手段と、を備える。
【0022】
さらに、前記部品の少なくとも1つがホールを備え、前記ホールがそれぞれ、前記部品の外側に及び前記クリッピング手段の協働領域の一方に同時に開放し、前記ホールがそれぞれ、前記第1又は前記第2のクリッピング手段に対するピンに推進力を加えることによって両方の部品を取り外すためのピンを収容することができる。
【0023】
“外側からアクセス可能ではない”という表現は、前記クリッピング手段が、その組立位置において前記装置に対する外側の空間から道具を用いて又は手ではなく、前記ホール内に個々に収容されるピンを介してのみ物理的に到達され得ることを意味する。
【0024】
そのため、クリッピング手段のおかげで、前記カセットは、意図的ではなく開けられないように保護され、試料の実際の分析において、その開口部は、カセットの両方の部分を分離するために相応しい道具を必要とする。
【0025】
このカセットは、2つの部品から構成され、張力が与えられて平坦な状態にフィルターを維持し、前記カセットの上部及び下部部分の間のシーリングに関与することによって前記フィルターを支持するように作用するフィルターホルダーがそれらの間に位置する。最後に、前記カセットは、前記フィルターホルダーの識別子が読み取られることを可能にする開口部をその中間位置に有する。
【0026】
本発明によれば、前記カセットの3つの部材は、それらがプラスチック材料で作られることを特徴とする。
【0027】
さらに、以下に説明されるように、本発明によれば、前記カセットを開けることなく前記カセットの外側からアクセス可能である単純で思慮深いフィルター識別システムが提供される。この識別システムは、元素分析報告がされるまでサンプリングの完全なトレーサビリティを可能にする。
【0028】
有利な実施形態によれば、前記第1のクリッピング手段は、nに等しい数の弾性的に変形可能なタブからなり、前記タブの先端は、フックのような形状をし、2πを数nで割ったもの、すなわち2π/nに等しい角度位置において互いに相対的に離隔されて前記第1部品に配置され、前記第2のクリッピング手段は、同一の数nの凹部又は突起からなり、前記凹部又は突起は、前記フックと相補的であるような形状をし、前記タブと同一の2π/nの角度位置において互いに相対的に離隔されて前記第2部品に配置される。好ましくは、数nは、2から20であり、さらに好ましくは2から4である。
【0029】
前記フィルター保持手段は、有利には2つのショルダーを備え、一方は、前記第1部品の内周上に形成され、他方は、前記第2部品の内周上に形成され、前記装置は、両方のショルダーの間に挟まれて保持されるフィルターホルダーを備える。
【0030】
前記フィルターホルダーは、好ましくは前記組立位置において前記第1及び第2部品によって押し込まれるように圧力を掛けながら変形可能であり、それによって単一のシールを形成する。
【0031】
前記装置は、好ましくは、前記ショルダーの少なくとも1つに対して加圧する少なくとも1つの弾性シールを備える。
【0032】
使用される材料に関して、前記第1及び第2部品並びに前記フィルターホルダーは、熱可塑性プラスチック材料、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)又はポリオキシメチレン共重合体(POM−C)に基づく。前記部品及び/又は前記フィルターホルダーを形成する材料は、静電気防止機能を有するカーボンブラック充填剤を含み得る。
【0033】
前記相互組立手段は、前記第1部品及び第2部品の各々において環状端部をさらに備えることができ、クリッピングに加えて、それらの組立位置において前記部品の間の相互表面加圧を行う。
【0034】
前記フィルターホルダーの取り付けモードに関して、有利には、前記部品の少なくとも1つは、前記環状端部の両側に刻み目をさらに備え、前記フィルターホルダーは、フィルター識別要素が取り付けられる、前記刻み目と相補的な突部を備え、前記部品の組立位置において、前記フィルター識別要素は、外部雰囲気に接触するようになることが提供される。
【0035】
“外部環境と接触する”という用語は、前記識別要素が、その組立位置において前記装置に対する外側の空間まで来ることを意味する。
【0036】
前記識別要素は、好ましくは電子チップ又は無線自動識別(RFID)タグ又はDatamatrix(登録商標)タイプの二次元バーコードである。それは、エッチング、射出成形又は
タンポグラフィーを用いてボンディング技術によって取り付けられ得る。
【0037】
本発明はまた、前記ホールと同一の位置に互いに相対的に離隔されて配置されるピンを備える、既に定義された前記装置の両方の部品の取り外しを行うための道具に関連する。
【0038】
前記道具は、前記第1又は第2のクリッピング手段に対する前記ピンの同時の押し込みを容易にするために、前記ホールを備える前記部品に対して相対的に前記道具を案内することができる機械的なガイド手段をさらに備える。
【0039】
最後に、本発明は、ナノ物体を製造し又はナノ材料を開発する場所にいる使用者が晒されることを追跡するための装置としての、既に定義された装置の使用に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明による装置をサンプリングする、密閉された構造体にあるカセットの輪郭図である。
【
図2】
図2は、非組立位置におけるカセットの両方の部品及びフィルターホルダーを有するフィルターを示す、
図1による装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、カセットの固定された開口部を許容する本発明による道具をさらに示す、
図2に等しい図面である。
【
図4】
図4は、本発明による装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明による装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して限定的ではなく例示として記載された本発明の詳細な説明を読むことによってより明確になるだろう。
【0042】
エアロゾルに含まれる可能性があるナノ物体のサンプリングを実施することができるように、本発明の装置は、空気中に浮遊している可能性があるナノ物体を捕捉するために相応しいフィルター30を備え、それは、密閉構造のカセットCによって形成されるキャビティに収容され保持される。
【0043】
そのため、本発明によるサンプリング方法は、分析される空気が、図示されないポンプによってポート20から吸い込まれ、ポート10を通ってポンプまで来るように、密閉カセットを正しく配置することからなる。
【0044】
この吸引は、当然ながら逆の通路、すなわちポート10からポート20への通路に従って提供され得る。このように吸い込まれたナノ物体又はマイクロサイズの粒子は、カセット内に保持されたフィルター30に集められる。口を通した呼吸又は鼻を通した呼吸の何れかが最も代表的なサンプリングであるようにカセットを正しく配置することが、本発明によるサンプリング方法において提供される。そのため、好ましくは、鼻からの呼吸を想定して、カセットは、吸引ポート20が下を向き、底部から上部への吸引が存在するように垂直に正しく配置される。同様に、好ましくは、口からの吸引を想定して、カセットは、水平に吸引部20を有するように正しく配置される。
【0045】
表されるように、本発明による装置は、保証された方法において完全なトレーサビリティを有して、捕捉されたナノ物体の試料サンプリング及び輸送を可能にする。
【0046】
このために、カセットは、通常円筒形状である2つの部品1、2で構成される。
【0047】
上部部品2は、フレキシブルな、言い換えると弾性的に変形可能なタブ21が備えられ、それは、フック210のように成形される。
【0048】
下部部品1は、凹まされた端部を有して又は個々にフック210と相補的であるバンプとして、個々にタブ21と相補的である凹部11が備えられる。当然ながら、フック又は相補的な逆のバンプの配置を有するもの、すなわち部品1の凹部内に個々にフックを有し、部品2にバンプを有するタブがあるものが、本発明の範囲内において提供され得る。
【0049】
上部部品2のフレキシブルなタブ21間の相対的な角度配置は、下部部品1の凹部11の角度配置と同一である。
【0050】
そのため、この相互組立位置において、部品1、2からのタブ21の突出はなく、言い換えると、クリッピング手段11、110、21、210は外側からアクセス可能なものではなく、以下に記載されるように適当な道具5の使用のみによって両方の部品を分離することが可能である。本発明のおかげで、フィルター3によって捕捉される粒子を正確に分析するための分析実験室の外側においてカセットの意図的ではない如何なる解放も避けられる。そのため、そこの不純物の危険性が制限される。実際には、それは、フィルターによって捕捉された粒子の量の増加若しくはフィルターに捕捉された粒子の量の減少の何れかによって、又は、サンプリングされた粒子と異なる性質を有する粒子の付加によって起こり得るサンプリングを代表するものではないものである。
【0051】
下部部品21は、外側と、バンプ又は凹部110が配置される領域、すなわち、それらのフック210を有するタブ21が対応するバンプ又は凹部210のクリッピングによって協働する領域との両方に通じるホール13が備えられる。従って、相補的なクリッピング手段と同一の数のホール13がある。
【0052】
両方の部品1、2を取り外すために、クリッピング位置においてバンプ110又はフック210に達する十分な長さを有するピン50が各ホールに挿入される。そのため、ホール13に収容されるピン50への推進力は、フック210をそれらの対応するバンプから外すことになり、両方の部品1、2を分離するものである。
【0053】
有利には、全てのピン50は、
図3に表される道具5に取り付けられる。道具5は、互いに離隔する固いタブ51を備え、下部部品1の円筒状の本体部を収容することができる。言い換えると、これらの固いタブ51は、フック210に対するピン50の同時の突き刺しを容易にするためのガイドとして作用する。
【0054】
有利には、タブは、本発明の範囲を逸脱することなく、下部部品に位置し得、ホールは上部部品に位置し得る。
【0055】
同様に、フィルター30は、フィルターホルダー3によって支持される。両方の部品の組立位置において、フィルターホルダー3は、両方のショルダー14、24間に挟まれて保持され、ショルダーの各々は、両方の部品1、2の一方の内周に形成される。
【0056】
有利には、フィルターホルダー3は、弾性変形材料から選択され、従ってカセットCの下部部品1及び上部部品2の間のシールの機能をさらに有する。言い換えると、フィルターブロック3は、クリッピングの際の加圧によって対向するショルダー14、24に対して押し潰されるように、有利にはカセットの部品1、2の材料よりも低い硬度を有して提供される。
【0057】
フィルターホルダー3がフィルター30に対する機械的な支持体としての機能を有するので、それは、通常環状形状を有し、又は、多数のスルーホールが部品の厚さ全体にわたって直立した通路を通過する固体部品で作られ得る。それによって、この多数のホールがそれ自体フィルターを形成する。何れの場合においても、それが吸引における最小の圧力損失を生じるように注意深く制御される。
【0058】
フィルターは、アルミナ薄膜;シリカ、水晶又はホウケイ酸塩繊維;メチルセルロース(MCE)などのセルロース又はその誘導体;ポリフッ化ビニリデン(PDVF);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリスチレン(PS);ポリテトレフルオロエチレン(PTFE)で構成され得る。通常、それは、数マイクロメートルから数十マイクロメートルの厚さであり、例えば10から200マイクロメートルである。一般的には、フィルターの穴は、5から30μmのユニットサイズを有する。
【0059】
それは、有利には、本発明によれば、各々が両方の部品の一方で作られる刻み目12、22に相補的な突部31を有するフィルターホルダーを提供するように提供され得、それらの組立位置において突部31の端部が外部環境と接触する(
図1)ようになる。そのため、突部31上に識別要素4を形成することによって、単純で効率的なトレーサビリティが、カセットCを開ける必要なく提供され得る。フィルター30の寿命にわたって可能なこのトレーサビリティは、サンプリング及び実際の分析の間に数日間の時の経過があった場合でさえも、特にフィルターの分析報告を有する特定の作業場の近くで起こる所定のエアロゾルのサンプリングの会合を可能にする。ナノ物体を製造し又はナノ材料を開発するための場所において作業者によって取り扱うことによって起こり得、作業者によってサンプリングされた乏しいフィルター特性を結果的にもたらす、都合の悪い如何なるフィルター交換もさらに避けることができる。言い換えると、作業場に所定の作業者を晒すことの乏しいトラッキングが避けられる。トレーサビリティにおけるこの中断は、ナノ材料に作業者を晒すことを追跡(トラッキング)する危険にさらす。
【0060】
そのため、
図1に示されるように、カセットが両方の刻み目12、22によって密閉される場合でさえも、識別要素4は、可視可能又は接近可能なままである。フィルターホルダー3に関連する識別要素4は、種々の方法で形成され得る:それは、英数字コードを用いてタグであり得る。それはまた、DataMatrix(登録商標)タイプの二次元コードであり得る。それはまた、フィルターホルダー3に埋め込まれたチップを有するワイヤ接続であり得る。そのため、フィルター30及びその支持体に関連する情報を含む識別要素4は、所謂射出成形(オーバーインジェクション)技術によって、又は、
タンポグラフィー、ボンディング若しくはエッチング技術によってフィルターホルダー内に集積される。
【0061】
射出成形という用語は、識別要素4が、製造される際にフィルターホルダー3の突部31内に集積されること可能にする技術を意図する。識別タグ4は、型の固定部と可動部との間の成形型内に配置される。型を閉じた後、タグ4は、吸引を介して、ボンディング又はコーティング生成物なしにフィルターホルダー3に対して加圧するようになる。このように、タグ4の裂け目は、型に提供される位置に適合し、それは、フィルターホルダー3から剥ぎ取られない。
【0062】
ボンディングという用語は、識別要素4及びフィルターホルダー3の材料を接着剤または粘着剤が組み立てることを可能にするあらゆる物理的又は化学的な組立工程を意味する。
【0063】
タンポグラフィーという用語は、識別要素4がフィルターホルダー3に直接転写されることを可能にするあらゆる間接印刷工程(インク転写)を意味する。
【0064】
エッチングという用語は、フィルターブロック3が掘り起こされ(レーザーマーキング、マイクロパーカッション)、それによって識別要素4が生成されることを可能にするあらゆる工程を意味する。
【0065】
本発明によれば、既に言及された技術の組み合わせからもたらされる識別要素3の配置が提供され得る。
【0066】
軽くて実装が簡単な装置を有するように、カセットの両方の部品1、2及びフィルターホルダー3は、熱可塑性プラスチック材料に基づく射出によって形成され得る。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)又はポリオキシメチレン共重合体(POM−C)に基づく射出によって形成され得る。これらの材料は、場合によっては満たされ(例えば、ガラスファイバー又はカーボンファイバーで)、添加剤は、場合によっては選択される材料の本来の特性を改善するために使用され得る。これらの添加剤のうち、帯電防止特性を与える化合物が期待され得る。熱可塑性プラスチック材料のブロックを機械加工することによって部品1、2、3を製造することも期待され得る。
【0067】
熱可塑性プラスチック材料に関して、本発明による装置は、それを使い捨てすることができるようなこのような高価ではない方法で形成され得る。サンプリング分析が行われた後、カセットを再び使用し、それによって部品1、2のリサイクルを実施するためにカセットの適切な洗浄を実施することも期待され得る。
【0068】
両方の部品1、2の相互の組立をさらに改善するために、環状端部15、25は、クリッピングに加えて、それらの組立位置における部品間の相互表面加圧を行うために、それらの各々の上に提供されることができる(
図1)。
【0069】
あらゆるサンプリングの前に、カセットは、そこに適切に位置合わせされるフィルターを有しなければならない。そのため、後者は、フィルター30を含み、相補的な部品1、2の間に保持される支持体3上に横たわる。カセットは、それが閉じると、フィルター30を通過することによって排気ポート10に接続されるポンプまで吸気ポート20から気体の流れの通路を可能にする。フィルターホルダー3の両側に位置するOリングは、その流れがフィルターを通って起こり、漏れがないことを保証する。一方で、臨時で吸気ポート20及び排気ポート10においてそれぞれ流量計測が行われている:得られる値は、動作ポンプがカセットに接続された場合と同一である。
【0070】
カセットがポンプに接続されない場合、予想外の汚染を避けるために適当なプラグでポート10、20を充填することが必要である。一方で、後者がポート10を介してポンプに接続される場合、ポート20を開放状態に維持することが必要である。本発明者は、このサンプリングカセットの最適な動作が0.1から5L・min
−1の範囲の空気の流速で達成されることを確認した。有利には、使用される流速は、1から2L・min
−1である。
【0071】
本発明の範囲を逸脱することなく他の改良又は代替がなされ得ることは明らかである。
【0072】
そのため、例えば、
図1から
図3に示される代替案において、凹部110と協働するフック210を有するフレキシブルなタブ21の数は3つであり、それらの相対的な角度位置は、互いに120°である。
図4は、互いに180°における2つのフレキシブルなタブ21を有する他の代替案を示し、
図5は、互いに90°における更なる代替案を示す。より一般的には、カセットの開口部の機械的な固定は、部品1、2の一方と一体であり、互いに2π/nの角度位置において配置される雄型のn個の数のクリッピング手段と、他方の部品における雌型の同一のn個のクリッピング手段によって達成され得る。従って、クリッピング道具5は、カセットの両方の部品1、2を分離させることができる、対応する数nのピン50を有して定義される。
【0073】
同様に、示された実施形態における場合、クリッピング手段は、カセットの部品1、2と一体的に形成され、取り付けは、ボンディング、ネジ止め等を用いて提供され得る。
【0074】
一方、さらなるシール、好ましくは部品1、2に対してそれらの界面に移動され結合される2つの弾性シールが提供され得る。
【符号の説明】
【0075】
1 第1部品
2 第2部品
3 フィルターホルダー
4 フィルター識別要素
5 道具
10 ポート
11 相互組立手段
12 刻み目
13 ホール
14 フィルター保持手段
15 環状端部
20 ポート
21 第2クリッピング手段
22 刻み目
24 ショルダー
25 環状端部
30 多孔性サンプリングフィルター
31 突部
50 ピン
51 機械的なガイド手段
110 第1クリッピング手段
210 第2クリッピング手段