(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗ERBB3抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の方法。
前記抗ERBB3抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項2に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、AV−203、04D01、09D03、11G01、12A07、18H02および22A02(これらは
図2においてボックスで囲まれた領域に対応する)として示される上記抗ERBB3抗体に関する免疫グロブリン重鎖可変領域配列のCDR
H1、CDR
H2、およびCDR
H3の配列(Kabat定義)を示す模式図である。
【0012】
【
図2】
図2は、AV−203、04D01、09D03、11G01、12A07、18H02および22A02として示される抗ERBB3抗体に関する完全な免疫グロブリン重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す模式図である。各抗体に関するアミノ酸配列は、互いに対して整列され、相補性決定配列(CDR)(Kabat定義)、CDR
H1、CDR
H2、およびCDR
H3は、ボックスで囲まれて同定される。ボックスで囲まれていない配列は、フレームワーク(FR)配列を表す。
【0013】
【
図3】
図3は、AV−203、04D01、09D03、11G01、12A07、18H02および22A02(これらは
図4においてボックスで囲まれた領域に対応する)として示される上記抗ERBB3抗体に関する免疫グロブリン軽鎖可変領域配列のCDR
L1、CDR
L2、およびCDR
L3の配列(Kabat定義)を示す模式図である。
【0014】
【
図4】
図4は、AV−203、04D01、09D03、11G01、12A07、18H02および22A02として示される上記抗ERBB3抗体に関する完全な免疫グロブリン軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す模式図である。各抗体に関するアミノ酸配列は、互いに対して整列され、相補性決定配列(CDR)(Kabat定義)、CDR
L1、CDR
L2、およびCDR
L3は、ボックスで囲まれて同定される。ボックスで囲まれていない配列は、フレームワーク(FR)配列を表す。
【0015】
【
図5】
図5は、(A)全長AV−203免疫グロブリン重鎖および(B)全長AV−203免疫グロブリン軽鎖を規定するアミノ酸配列を提供する。
【0016】
【
図6】
図6は、(A)全長04D01免疫グロブリン重鎖および(B)全長04D01免疫グロブリン軽鎖を規定するアミノ酸配列を提供する。
【0017】
【
図7】
図7は、(A)全長09D03免疫グロブリン重鎖および(B)全長09D03免疫グロブリン軽鎖を規定するアミノ酸配列を提供する。
【0018】
【
図8】
図8は、(A)全長11G01免疫グロブリン重鎖および(B)全長11G01免疫グロブリン軽鎖を規定するアミノ酸配列を提供する。
【0019】
【
図9】
図9は、(A)全長12A07免疫グロブリン重鎖および(B)全長12A07免疫グロブリン軽鎖を規定するアミノ酸配列を提供する。
【0020】
【
図10】
図10は、(A)全長18H02免疫グロブリン重鎖および(B)全長18H02免疫グロブリン軽鎖を規定するアミノ酸配列を提供する。
【0021】
【
図11】
図11は、(A)全長22A02免疫グロブリン重鎖および(B)全長22A02免疫グロブリン軽鎖を規定するアミノ酸配列を提供する。
【0022】
【
図12】
図12は、25の異種移植片モデルにおけるAV−203のインビボ効力(腫瘍増殖阻害(TGI)パーセンテージとして表される)と、定量的RT−PCRによって測定されたとおりの、Ct値によって表されるNRG1 RNA発現との間の関係を示す線形回帰トレンド線(linear regression trend line)を伴う散布図である。上記25のデータ点は、黒四角によって表される。線形回帰は、実線によって示され、95%信頼区間は、破線によって示される。試験した25の腫瘍では、Rho値は、−0.601であり、p=0.0015(スピアマン相関)であった。
【0023】
【
図13】
図13は、25の異種移植片モデルにおけるAV−203のインビボ効力(TGIパーセンテージとして表される)と、Ct値によって表される定量的RT−PCRによって測定されたとおりの、ERBB3 RNA発現との間の関係を示す線形回帰トレンド線を伴う散布図である。25のデータ点は、黒四角によって表される。上記線形回帰は、実線によって示され、95%信頼区間は、破線によって示される。
【0024】
【
図14】
図14は、至適閾値PGSスコアを決定するための、
図13のデータに基づく受信者動作特性(ROC)曲線である。このROC曲線は、偽陽性率0.13および偽陰性率0.2を生じる、上記至適閾値がCt=22.9であることを示す。
【0025】
【
図15】
図15は、高NRG1発現腫瘍(Ct=<22.9)および低NRG1発現腫瘍(Ct>22.9)によって分けられる異種移植片モデルでのAV−203のインビボでの効力をまとめる箱ひげ図である。
【0026】
【
図16】
図16は、NCRヌードマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)および上記抗ERBB3抗体AV−203(黒丸)の、LU−10ヒト原発性肺腫瘍異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0027】
【
図17】
図17は、NCRヌードマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)、ヒトIgGコントロール(黒四角)および上記抗ERBB3抗体AV−203(黒丸)の、LU−58ヒト原発性肺腫瘍異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0028】
【
図18】
図18は、NCRヌードマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)、ヒトIgGコントロール(黒四角)および上記抗ERBB3抗体AV−203(黒丸)の、LU−08ヒト原発性肺腫瘍異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0029】
【
図19】
図19は、NCRヌードマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)、ヒトIgGコントロール(黒四角)および上記抗ERBB3抗体AV−203(黒丸)の、LU−44ヒト原発性肺腫瘍異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0030】
【
図20】
図20は、CB17−SCIDマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)および上記抗ERBB3抗体AV−203(黒丸)の、CAL−27ヒト頭頸部癌異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0031】
【
図21】
図21は、NCRヌードマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)、ヒトIgGコントロール(黒四角)および上記抗ERBB3抗体AV−203(黒丸)の、KYSE−150ヒト食道癌異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0032】
【
図22】
図22は、NCRヌードマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)、ヒトIgGコントロール(黒四角)および上記抗ERBB3抗体AV−203(黒丸)の、H520ヒト非小細胞肺癌異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0033】
【
図23】
図23は、CB.17 SCIDマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)、ヒトIgGコントロール(黒四角)および上記抗ERBB3抗体11G01(白四角)の、BxPC3膵臓腫瘍異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0034】
【
図24】
図24は、CB.17 SCIDマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒菱形)および上記抗ERBB3抗体11G01(黒丸)の、DU145前立腺腫瘍異種移植片に対する効力のデータをまとめるグラフである。
【0035】
【
図25】
図25は、NCRヌードマウスにおいて20mg/kgで投与された、PBSビヒクルコントロール(黒四角)、ヒトIgGコントロール(−−−)および上記抗ERBB3抗体11G01(黒丸)の、H322肺腫瘍異種移植片に対する効力データをまとめるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書で使用される場合、「AV−203」とは、全長重鎖アミノ酸配列が配列番号9であり、かつ全長軽鎖アミノ酸配列が配列番号10であるヒト化抗ヒトERBB3モノクローナル抗体を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ERBB3」(HER3としても公知)は、Entrez Gene ID No. 2065によって同定される遺伝子、およびその対立遺伝子改変体によってコードされるヒトタンパク質を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ERBB3インヒビター」とは、ERBB3に結合し、かつ腫瘍細胞におけるERBB3の生物学的活性を阻害、中和、妨害もしくは除去する分子(低分子もしくは高分子、例えば、抗体もしくはその抗原結合フラグメント)を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「NRG1」(ニューレグリン−1、ヒレグリン、HRGおよびHRG1としても公知)は、Entrez Gene ID No. 3084によって同定される遺伝子、およびその対立遺伝子改変体によってコードされるヒトタンパク質を意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「至適閾値スコア」は、分類子(classifier)が偽陰性コール(calls)のコストと偽陽性コールのコストとの間の最も望ましいバランスを与える閾値スコアを意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「受信者動作特性」(ROC)曲線とは、2成分分類子システム(binary classifier system)の偽陽性率(感受性) 対 真陽性率(特異性)のプロットを意味する。ROC曲線の構築において、以下の定義が適用される:
偽陰性率: FNR=1−TPR
真陽性率: TPR=真陽性/(真陽性+偽陰性)
偽陽性率: FPR=偽陽性/(偽陽性+真陰性)
【0042】
本明細書で使用される場合、処置に対して「応答する」もしくは「応答」とは、処置された腫瘍に関して、上記腫瘍が:(a)増殖を遅らせる、(b)増殖を停止させる、または(c)退縮することを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「NRG1スコア」は、腫瘍におけるNRG1発現のレベルを表す数値である。上記NRG1スコアは、RNAレベルもしくはタンパク質レベルにおけるNRG1遺伝子発現に基づき得る。例えば、NRG1スコアは、(1)qRT−PCRアッセイのCt値、または(2)IHCアッセイにおける染色強度として表され得る。Ct値およびNRG1発現は、逆に関連する。従って、より低いCt値は、より高いNRG1スコアに解釈される。上記NRG1スコアは、閾値決定分析において、例えば、ROC曲線分析を使用して、経験的に決定され得る閾値スコアに関して解釈され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「閾値決定分析」は、所定の腫瘍タイプ、例えば、ヒト腎細胞癌についての閾値スコアを決定するために、その所定の腫瘍タイプを表すデータセットの分析を意味する。所定の腫瘍タイプを表すデータセットは、このような腫瘍の集団からの各腫瘍に関して:(a)実際の腫瘍応答データ(抗ERBB3抗体のようなERBB3インヒビターに対する応答および非応答)、および(b)NRG1発現レベルを含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「閾値スコア」とは、スコアであって、これを上回ると、ERBB3インヒビターでの処置に感受性であると腫瘍が分類されるものを意味する。
【0046】
(ERBB3抗体)
本明細書で開示される方法は、ERBB3インヒビター(例えば、抗ERBB3抗体、または抗ERBB3抗体の抗原結合フラグメント)での処置に対する腫瘍応答を推定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、腫瘍は、NRG1(例えば、NRG1−β1)のERBB3への結合を阻害するかもしくはNRG1がERBB3に結合しないようにし、それによって、ERBB3のリガンド誘導性ダイマー化を間接的に阻害するかもしくは妨げるERBB3抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)(例えば、抗ERBB3抗体AV−203、04D01、12A07、18H02および22A02)に対して感受性もしくは耐性であると分類される。他の実施形態において、腫瘍は、ERBB3へのNRG1の結合を妨げることなしに、ERBB3ダイマー化を阻害するかもしくは妨げる抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)(例えば、抗ERBB3抗体09D03および11G01)に対して感受性もしくは耐性であると分類される。
【0047】
例示的実施形態において、上記ERBB3インヒビターは、以下の抗体のうちの1つである:AV−203、04D01、12A07、18H02、22A02、11G01、および09D03。
【0048】
抗ERBB3抗体AV−203(もとは、抗体24C05と称されていた)は、
図1に示されるとおりの、配列番号1からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR
H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR
H2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR
H3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
図3に示されるとおりの、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR
L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR
L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR
L3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。例示的実施形態において、抗体AV−203は、
図2に示されるとおりの配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
図4に示されるとおりの配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。別の例示的実施形態において、抗体AV−203は、
図5に示されるとおりの、配列番号9の免疫グロブリン重鎖アミノ酸配列および配列番号10の免疫グロブリン軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0049】
抗ERBB3抗体04D01は、
図1に示されるとおりの配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR
H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR
H2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR
H3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
図3に示されるとおりの配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR
L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR
L2、および配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR
L3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。例示的実施形態において、抗体04D01は、
図2に示されるとおりの配列番号17のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
図4に示されるとおりの配列番号18のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。別の例示的実施形態において、抗体04D01は、
図6に示されるとおりの、配列番号19の免疫グロブリン重鎖アミノ酸配列および配列番号20の免疫グロブリン軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0050】
抗ERBB3抗体09D03は、
図1に示されるとおりの配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR
H1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR
H2、および配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR
H3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
図3に示されるとおりの配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR
L1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR
L2、および配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR
L3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。例示的実施形態において、抗体09D03は、
図2に示されるとおりの配列番号27のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
図4に示されるとおりの配列番号28のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。別の例示的実施形態において、抗体09D03は、
図7に示されるとおりの、配列番号29の免疫グロブリン重鎖アミノ酸配列および配列番号30の免疫グロブリン軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0051】
抗ERBB3抗体11G01は、
図1に示されるとおりの配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR
H1、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR
H2、および配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR
H3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
図3に示されるとおりの配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR
L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR
L2、および配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR
L3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。例示的実施形態において、抗体11G01は、
図2に示されるとおりの配列番号36のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
図4に示されるとおりの配列番号37のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。別の例示的実施形態において、抗体11G01は、
図8に示されるように、配列番号38の免疫グロブリン重鎖アミノ酸配列および配列番号39の免疫グロブリン軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0052】
抗ERBB3抗体12A07は、
図1に示されるとおりの配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR
H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR
H2、および配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR
H3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
図3に示されるとおりの配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR
L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR
L2、および配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR
L3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。例示的実施形態において、抗体12A07は、
図2に示されるとおりの配列番号43のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
図4に示されるとおりの配列番号44のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。別の例示的実施形態において、抗体12A07は、
図9に示されるとおりの、配列番号45の免疫グロブリン重鎖アミノ酸配列および配列番号46の免疫グロブリン軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0053】
抗ERBB3抗体18H02は、
図1に示されるとおりの配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR
H1、配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR
H2、および配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR
H3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
図3に示されるとおりの配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR
L1、配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR
L2、および配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR
L3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。例示的実施形態において、抗体18H02は、
図2に示されるとおりの配列番号53のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
図4に示されるとおりの配列番号54のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。別の例示的実施形態において、抗体18H02は、
図10に示されるとおりの、配列番号55の免疫グロブリン重鎖アミノ酸配列および配列番号56の免疫グロブリン軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0054】
抗ERBB3抗体22A02は、
図1に示されるとおりの配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR
H1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR
H2、および配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR
H3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
図3に示されるとおりの配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR
L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR
L2、ならびに配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR
L3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。例示的実施形態において、抗体22A02は、
図2に示されるとおりの配列番号59のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および
図4に示されるとおりの配列番号60のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。別の例示的実施形態において、抗体22A02は、
図11に示されるように、配列番号61の免疫グロブリン重鎖アミノ酸配列および配列番号62の免疫グロブリン軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0055】
当業者は、完全な重鎖もしくはカッパ鎖の抗体配列が、上記に記載されるとおりの可変領域をそれぞれの定常領域配列に連結して、活性な全長免疫グロブリン重鎖および軽鎖を生成することによって作られ得ることを理解している、ということが企図される。例えば、完全な重鎖は、重鎖可変配列、続いて、マウスもしくはヒトのIgG1もしくはIgG2bの重鎖定常配列(これらは、当該分野で公知である)を含み、完全なκ鎖は、κ可変配列、続いて、マウスもしくはヒトのκ軽鎖定常配列(これらは、当該分野で公知である)を含む。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3の配列が、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域もしくはヒト化免疫グロブリンフレームワーク領域間に挿入され得ることは、さらに企図される。
【0056】
(組織サンプル)
ヒト患者における腫瘍からの組織サンプル(例えば、ヒト患者(例えば、ERBB3インヒビターでの処置が考慮されているヒト患者)から得られた腫瘍からの組織サンプル)は、上記サンプル中のNRG1のレベルが、開示される方法を実施するにあたって決定され得るように、RNA供給源、タンパク質供給源、もしくは免疫組織化学(IHC)のための薄切片の供給源として使用され得る。上記組織サンプルは、従来の腫瘍生検機器および手順を使用することによって得られ得る。内視鏡下生検、切除による生検(excisional biopsy)、切開による生検(incisional biopsy)、細針生検、パンチ生検、薄片生検および皮膚生検は、腫瘍サンプルを得るために当業者によって使用され得る認識された医学的手順の例である。上記腫瘍組織サンプルは、NRG1およびERBB3遺伝子発現を測定するために十分なRNA、タンパク質、もしくは薄片を提供するために十分大きいべきである。
【0057】
上記腫瘍組織サンプルは、NRG1およびERBB3の発現もしくは含量の測定を可能にする任意の形態にあり得る。言い換えると、上記組織サンプルは、RNA抽出、タンパク質抽出、もしくは薄片の調製のために十分でなければならない。よって、上記組織サンプルは、新鮮であり得るか、適切な低温技術を介して保存され得るか、または非低温技術を介して保存され得る。臨床生検標本を取り扱うための標準的プロセスは、上記組織サンプルをホルマリン中で固定し、次いで、これをパラフィン中に包埋することである。この形態にあるサンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織として一般に公知である。その後の分析のための組織調製に適した技術は、当業者に周知である。
【0058】
(NRG1遺伝子発現)
本明細書中で記載される場合、腫瘍からの組織サンプル中のNRG1遺伝子発現のレベルを決定もしくは測定することは、任意の適切な方法によって行われ得る。いくつかのこのような方法は、当該分野で公知である。例えば、NRG1遺伝子発現を決定することは、サンプル中で、NRG1タンパク質のレベルもしくは量を測定するか、またはNRG1 RNAのレベルもしくは量を測定することによって、行われ得る。
【0059】
ニューレグリン1は、NRG1遺伝子の発現に際して多くのアイソフォームにおいて生成される。上記種々のアイソフォームの相対量は、組織タイプおよび/もしくは発生段階のような要因に依存して変動するようである。ニューレグリン1のEGF様ドメインは、ERBB3に結合するのに必須である。それは、β改変体(NRG1β)もしくはα改変体(NRG1α)として、上記種々のNRG1アイソフォームのうちの全てにおいて見いだされる。従って、本明細書に記載されるようにNRG1遺伝子発現のレベルを決定する場合、上記NRG1アッセイは、好ましくは、存在するNRG1アイソフォームの大部分(全てではなくても)を検出するために、NRG1の少なくともEGF様ドメインを検出するように設計される。よって、いくつかの実施形態において、PCRプライマーは、上記EGF様ドメインの一部を増幅するように設計される。同様に、いくつかの実施形態において、マイクロアレイプローブは、上記EGF様ドメインにおける配列もしくは複数の改変体にわたって保存された配列とハイブリダイズするように設計される。抗NRG1抗体がNRG1タンパク質を検出するために使用される場合、上記抗体は、好ましくは、上記EGF様ドメインを認識する。
【0060】
いくつかの実施形態において、ERBB3インヒビターでの処置に感受性もしくは耐性としての腫瘍の分類は、上記腫瘍からの組織サンプル中のNRG1の発現にのみ基づく。他の実施形態において、1種もしくはそれより多くの他の遺伝子の発現は、NRG1発現に加えて、ERBB3インヒビターでの処置に感受性もしくは耐性として腫瘍を分類するために測定される。1種もしくはそれより多くの他の遺伝子の発現がNRG1に加えて測定される場合の実施形態において、上記1種もしくはそれより多くの他の遺伝子は、ErbB1、ErbB2、およびErbB3(例えば、ErbB1、ErbB2およびErbB3のうちのいずれかのモノマー、ヘテロダイマーおよび/もしくはホモダイマー、ならびに/またはモノマー形態もしくはダイマー形態のいずれかにあるリン酸化されたErbB1、ErbB2およびErbB3)を含まないことは、本明細書で企図される。他の実施形態において、NRG1の発現は、β−セルリン(BCT)分泌と組み合わせて測定されない。NRG1に加えて測定される1種もしくはそれより多くの他の遺伝子の発現は、例えば、データ正規化のために、コントロールもしくは標準として働く遺伝子を含み得ることは、本明細書でさらに企図される。
【0061】
(RNA分析)
従来のマイクロアレイ分析および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、mRNAレベルにおいてNRG1遺伝子発現のレベルを決定するための方法の例である。いくつかの実施形態において、RNAは、標準的プロトコルを使用して、目的の細胞、腫瘍もしくは組織から抽出される。他の実施形態において、RNA分析は、RNA単離を要しない技術を使用して行われる。
【0062】
組織サンプルからの真核生物mRNA、すなわち、ポリ(a) RNAの迅速かつ効率的な抽出のための方法は、十分に確立されており、当業者に公知である。例えば、Ausubel et al., 1997, Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley & Sonsを参照のこと。上記組織サンプルは、新鮮であり得るか、凍結され得るか、もしくは固定したパラフィン包埋(FFPE)サンプル(例えば、臨床研究腫瘍標本)であり得る。一般に、新鮮なもしくは凍結した組織サンプルから単離されたRNAは、FFPEサンプルからのRNAよりフラグメント化が少ない傾向にある。しかし、腫瘍材料のFFPEサンプルは、より容易に入手可能であり、FFPEサンプルは、本発明の方法における使用のためのRNAの適切な供給源である。RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングのためのRNAの供給源としてのFFPEサンプルの考察に関しては、例えば、Clark−Langone et al., 2007, BMC Genomics 8:279を参照のこと。De Andre’s et al., 1995, Biotechniques 18:42044;およびBaker et al., 米国特許出願公開番号2005/0095634もまた参照のこと。RNAの抽出および調製のための販売者の説明書とともに市販されているキットの使用は、広く行き渡っておりかつ一般的である。種々のRNA単離製品および完全なキットの商業的販売者としては、Qiagen(Valencia, CA)、Invitrogen(Carlsbad, CA)、Ambion(Austin, TX)およびExiqon(Woburn, MA)が挙げられる。
【0063】
一般に、RNA単離は、組織/細胞破壊とともに始まる。組織/細胞破壊の間に、RNaseによるRNA分解を最小限にすることが望ましい。上記RNA単離プロセスの間にRNase活性を制限する1つのアプローチは、細胞を破壊したら可能な限り速やかに変性剤と細胞内容物とを接触した状態にすることを確実にすることである。別の一般的実践は、RNA単離プロセスに1種もしくはそれより多くのプロテアーゼを含めることである。必要に応じて、新鮮な組織サンプルは、上記サンプルが集められたら可能な限り速やかに、室温においてRNA安定化溶液中に浸漬される。上記安定化溶液は、上記細胞に迅速に浸透し、その後の単離のために、4℃の貯蔵の間、RNAを安定化する。1つのこのような安定化溶液は、RNAlater
(登録商標)(Ambion, Austin, TX)として市販されている。
【0064】
いくつかのプロトコルにおいて、全RNAは、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって、破壊された腫瘍材料から単離される。一般に、mRNAは、全細胞RNAのうちの約1%〜5%を構成する。固定化オリゴ(dT)、例えば、オリゴ(dT)セルロースは、リボソームRNAおよびトランスファーRNAからmRNAを分離するために一般に使用される。単離後に貯蔵される場合、RNAは、RNase非含有条件下で貯蔵されなければならない。単離されたRNAの安定な貯蔵のための方法は、当該分野で公知である。RNAの安定な貯蔵のための種々の市販の製品が、利用可能である。
【0065】
(マイクロアレイ)
NRG1のmRNA発現レベルは、従来のDNAマイクロアレイ発現プロファイリング技術を使用して測定され得る。DNAマイクロアレイは、固体表面もしくは基材(例えば、ガラス、プラスチックもしくはシリコン)に付着させられ、各特定のDNAセグメントが上記アレイ中の既知の位置を占めている、特定のDNAセグメントもしくはプローブの集まりである。標識されたRNAのサンプルとの、通常は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションは、上記アレイ中の各プローブに対応するRNA分子の検出および定量を可能にする。非特異的に結合したサンプル材料を除去するためのストリンジェントな洗浄の後に、上記マイクロアレイは、共焦点レーザー顕微鏡法もしくは他の適切な検出法によってスキャンされる。現代の市販のDNAマイクロアレイ(しばしば、DNAチップとして公知)は、代表的には、何万個ものプローブを含み、従って、何万種もの遺伝子の発現を同時に測定し得る。このようなマイクロアレイは、本発明を実施するにあたって使用され得る。あるいは、NRG1を測定するために必要なプローブと同程度に少ないプローブと、必要なコントロールもしくは標準を(例えば、データ正規化のために)含むカスタムチップは、開示される方法を実施するにあたって使用され得る。
【0066】
データ正規化を容易にするために、2色マイクロアレイリーダーが使用され得る。2色(2チャネル)システムにおいて、サンプルは、第1の波長で発光する第1の発蛍光団で標識される一方で、RNAもしくはcDNA標準は、異なる波長で発光する第2の発蛍光団で標識される。例えば、Cy3(570nm)およびCy5(670nm)はしばしば、2色マイクロアレイシステムにおいて一緒に使用される。
【0067】
DNAマイクロアレイ技術は、十分に開発されており、市販されており、広く使用されている。従って、開示される方法を行うにあたって、当業者は、マイクロアレイ技術を使用して、バイオマーカータンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを、過度な実験なくして測定し得る。DNAマイクロアレイチップ、試薬(例えば、RNAもしくはcDNA調製、RNAもしくはcDNA標識、ハイブリダイゼーションおよび洗浄溶液のためのもの)、機器(例えば、マイクロアレイリーダー)およびプロトコルは、当該分野で周知であり、種々の市販の供給源から入手可能である。マイクロアレイシステムの商業的販売者としては、Agilent Technologies(Santa Clara, CA)およびAffymetrix(Santa Clara, CA)が挙げられるが、他のPCRシステムも使用され得る。
【0068】
(定量的PCR)
NRG1をコードするmRNAのレベルは、従来の定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)技術を使用して測定され得る。qRT−PCRの利点としては、感度、融通性、定量的正確性、および密接に関連したmRNA間を識別できることが挙げられる。定量的PCRのための組織サンプルの処理に関するガイダンスは、種々の供給源(qRT−PCRのための市販の機器および試薬の製造業者および販売者(例えば、Qiagen(Valencia, CA)およびAmbion(Austin, TX))が挙げられる)から入手可能である。qRT−PCRの自動化された実施のための機器およびシステムは、市販されており、多くの研究室において慣用的に使用されている。周知の市販のシステムの例は、Applied Biosystems 7900HT Fast Real−Time PCR System(Applied Biosystems, Foster City, CA)である。
【0069】
mRNAが一旦単離されたら、RT−PCRによる遺伝子発現測定の第1工程は、mRNAテンプレートを逆転写してcDNAにすることである。次いで、このcDNAは、PCR反応において指数関数的に増幅される。2種の一般に使用される逆転写酵素が、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。上記逆転写反応は、代表的には、特異的プライマー、ランダムヘキサマー、もしくはオリゴ(dT)プライマーでプライミングされる。適切なプライマーは、市販されている(例えば、GeneAmp
(登録商標) RNA PCRキット(Perkin Elmer, Waltham, MA))。得られたcDNA生成物は、その後のポリメラーゼ連鎖反応においてテンプレートとして使用され得る。
【0070】
上記PCR工程は、熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用して行われる。PCRシステムにおいて最も一般に使用されるポリメラーゼは、Thermus aquaticus(Taq)ポリメラーゼである。PCRの選択性は、増幅の標的とされるDNA領域(すなわち、目的のタンパク質をコードする遺伝子から逆転写されるcDNAの領域)に相補的なプライマーの使用から生じる。従って、qRT−PCRが本発明において使用される場合、各マーカー遺伝子に特異的なプライマーは、上記遺伝子のcDNA配列に基づく。SYBR
(登録商標)グリーンもしくはTaqMan
(登録商標)(Applied Biosystems, Foster City, CA)のような商業的な技術は、上記販売者の指示書に従って使用され得る。メッセンジャーRNAレベルは、ハウスキーピング遺伝子(例えば、β−アクチンもしくはGAPDH)のレベルを比較することによって、サンプル間での負荷量(loading)の差異について正規化され得る。mRNA発現のレベルは、任意の単一のコントロールサンプル(例えば、正常な、非腫瘍組織もしくはサンプルからのmRNA)と比較して表され得る。あるいは、それは、腫瘍サンプルのプール、もしくは腫瘍細胞株、またはコントロールmRNAの市販のセットからのmRNAと比較して表され得る。
【0071】
遺伝子NRG1もしくはERBB3の発現のPCR分析の適切なプライマーセットは、過度の実験なくして、当業者によって設計および合成され得る。あるいは、本発明を実施するためのPCRプライマーセットは、市販の供給源(例えば、Applied Biosystems)から購入され得る。PCRプライマーは、好ましくは、約17〜25ヌクレオチド長である。プライマーは、融解温度(Tm)予測のための従来のアルゴリズムを使用して、特定のTmを有するように設計され得る。プライマー設計およびTm予測のためのソフトウェアは、市販されており(例えば、Primer Express
TM(Applied Biosystems)、インターネット上からも利用可能である(例えば、Primer3(Massachusetts Institute of Technology))。PCRプライマー設計の確立された原則を適用することによって、多数の異なるプライマーが、NRG1およびERBB3を含め、任意の所定の遺伝子の発現レベルを測定するために使用され得る。
【0072】
(qNPA
TM)
いくつかの実施形態において、RNA分析は、RNA抽出も単離も要さない技術を使用して行われる。1つのこのような技術は、定量的ヌクレアーゼ保護アッセイであり、このアッセイは、名称qNPA
TM(High Throughput Genomics, Inc., Tucson, AZ)の下で市販されている。この技術は、上記分析される腫瘍組織サンプルがFFPE材料の形態にある場合に、有利であり得る。例えば、Roberts et al., 2007, Laboratory Investigation 87:979−997を参照のこと。
【0073】
(タンパク質分析)
他の実施形態において、NRG1およびERBB3の遺伝子発現は、タンパク質レベルにおいて検出され得る。NRG1もしくはERBB3の遺伝子発現のレベルをタンパク質レベルにおいて測定するための方法の例としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)およびIHC分析が挙げられる。
【0074】
(ELISA)
NRG1 ELISAの実施は、NRG1に対する少なくとも1種の抗体(すなわち、検出抗体)を必要とする。分析されるサンプルからのNRG1タンパク質は、固体支持体(例えば、ポリスチレンマイクロタイタープレート)上に固定化される。この固定化は、非特異的結合によるもの(すなわち、その表面への吸着を介する)であり得る。あるいは、固定化は、「サンドイッチ」ELISAにおいて、特異的結合によるもの、すなわち、捕捉抗体(上記検出抗体とは異なる抗NRG1抗体)による上記サンプルからのNRG1の結合を介するものであり得る。上記NRG1が固定化された後、上記検出抗体が添加され、上記検出抗体は、上記結合したNRG1と複合体を形成する。上記検出抗体は、酵素に、直接的もしくは間接的のいずれかで、例えば、上記検出抗体を特異的に認識する二次抗体を介して連結される。代表的には、各工程の間に、NRG1が結合している上記プレートは、温和な界面活性剤溶液で洗浄される。代表的なELISAプロトコルはまた、1回もしくはそれより多くのブロッキング工程を含み、これら工程は、上記プレートへのタンパク質試薬の望ましくない非特異的結合をブロックするために非特異的結合タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)の使用を伴う。最終の洗浄工程の後に、上記プレートは、上記サンプル中のNRG1の量を示す目に見えるシグナルを生じるように、適切な酵素基質の添加によって発色させられる。上記基質は、例えば、色素生成基質もしくは蛍光生成基質であり得る。ELISA法、試薬および装置は、当該分野で周知であり、市販されている。
【0075】
(免疫組織化学(IHC))
腫瘍組織サンプルもしくは臨床標本におけるNRG1の存在およびレベルは、免疫組織化学(IHC)もしくは免疫蛍光(IF)によって決定(例えば、可視化)され得る。臨床標本はしばしば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックとして保存されるので、IHCおよびIFは、臨床標本中のNRG1タンパク質を測定するために特に有用である。IHCもしくはIFによるNRG1のアッセイは、NRG1に対する少なくとも1種の抗体を要する。IHCおよびIFに適した抗NRG1抗体は、市販されている。例えば、適切な抗体は、R&D Systems(Minneapolis, MN)、abcam(Cambridge, MA)、Santa Cruz Biotechnology, Inc.(Santa Cruz, CA)、もしくはNovus Biologicals(Littleton, CO)から購入され得る。標準的技術を使用すると、上記抗NRG1抗体は、腫瘍(FFPE切片および凍結腫瘍切片を含む)から得られた薄片(例えば、5ミクロン切片)中のNRG1タンパク質の存在を検出するために使用され得る。代表的には、上記腫瘍切片は、上記腫瘍材料を集めて保存する最初のプロセスにおいて固定されたタンパク質の抗原性構造を回復させるような方法において最初に処理される。次いで、スライドは、上記抗NRG1検出抗体による非特異的結合を妨げるためにブロックされる。次いで、NRG1タンパク質の存在は、上記NRG1タンパク質への上記抗NRG1抗体(一次抗体)の結合によって検出される。上記一次抗体を認識しかつ結合する検出抗体(二次抗体)は、検出可能な酵素もしくは発蛍光団に結合される。代表的には、上記腫瘍切片は、工程の間に洗浄され、非特異的タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)でブロックされる。上記検出抗体が検出可能な酵素に連結される場合、上記スライドは、目に見えるシグナルを生じるように、適切な酵素基質を使用して発色させられる。上記検出抗体が発蛍光団に連結される場合、上記スライドは、蛍光顕微鏡を使用して調べられる。上記サンプルは、ヘマトキシリンで対比染色され得る。
【0076】
(データ解釈)
腫瘍に関するNRG1スコアは、閾値スコアに関連して解釈され得る。上記閾値スコアに等しいかもしくはそれより高いNRG1スコアは、上記腫瘍がERBB3インヒビター(例えば、ERBB3抗体)での処置に対して感受性(応答性)であるという予測と解釈され得る。あるいは、上記閾値スコアに等しいかもしくはそれより低いNRG1スコアは、腫瘍がERBB3インヒビターでの処置に耐性(非応答性)であるという予測と解釈され得る。
【0077】
至適閾値NRG1スコアは、閾値決定分析を行うことによって経験的に決定(もしくは少なくとも概算)され得る。好ましくは、閾値決定分析は、受信者動作特性(ROC)曲線分析を含む。ROC曲線分析は、確立された統計技術であり、その適用は、当該分野の通常の技術範囲内である。ROC曲線分析の考察については、一般に、Zweig et al., 1993, 「Receiver operating characteristic (ROC) plots: a fundamental evaluation tool in clinical medicine」, Clin. Chem. 39:561−577;およびPepe, 2003, The statistical evaluation of medical tests for classification and prediction, Oxford Press, New Yorkを参照のこと。
【0078】
NRG1スコアおよび至適閾値NRG1スコアは、腫瘍タイプ間で変動し得る。従って、閾値決定分析は、好ましくは、本発明を使用して試験される任意の所定の腫瘍タイプを表す1つ以上のデータセットに対して行われる。閾値決定分析のために使用されるデータセットとしては、以下が挙げられる:(a)実際の応答データ(応答もしくは非応答)、および(b)腫瘍の群からの各腫瘍サンプルのNRG1スコア。NRG1スコア閾値が所定の腫瘍タイプに関連して一旦決定されたら、その閾値は、その腫瘍タイプの腫瘍からのNRG1スコアを解釈するために適用され得る。特定の実施形態において、閾値スコアは、抗ERBB3インヒビターで以前に処置されかつ上記抗ERBB3インヒビターに対して感受性であると示されたヒト患者および抗ERBB3インヒビターで以前に処置されかつ抗ERBB3インヒビターに耐性であると示されたヒト患者から得られた腫瘍の組織サンプル中のNRG1発現を測定することによって、決定される。
【0079】
上記ROC曲線分析は、以下のように行われ得る。上記閾値より高いかもしくはそれに等しいNRG1スコアを有する任意のサンプルは、応答者(感受性)と同定される。あるいは、上記閾値未満のNRG1スコアを有する任意のサンプルは、非応答者(耐性)と同定される。サンプルの試験されたセットからのあらゆるNRG1スコアに関して、「応答者」および「非応答者」(仮定コール)が、上記閾値としてそのスコアを使用して分類される。このプロセスは、上記データセットについての実際の応答データに対する仮定コールの比較を介して、各潜在的閾値についてTPR(yベクトル)およびFPR(xベクトル)の計算を可能にする。次いで、ROC曲線は、上記TPRベクトル、およびFPRベクトルを使用して、ドットプロットを作成することによって構築される。上記ROC曲線が、(0,0)点から(1.0, 0.5)点までの対角線より上にある場合、それは、上記NRG1試験結果がランダムよりも良好な試験結果であることを示す。
【0080】
上記ROC曲線は、最良の動作点(operating point)、もしくは至適閾値を同定するために使用され得る。上記最良の動作点は、偽陰性のコストに対して重み付けされた偽陽性のコスト間での最良のバランスを生じるものである。これらコストは、等しい必要はない。ROC空間における点x,yでの分類の平均期待コスト(C)は、以下の式によって決定される。
C=(1−p)α×x + p×β(1−y)
ここで:
α=偽陽性のコスト、
β=陽性をみのがす(偽陰性)コスト、および
p=陽性の症例の割合。
【0081】
偽陽性および偽陰性は、αおよびβに関して異なる値を割り当てることによって、異なって重み付けされ得る。例えば、非応答者であるより多くの患者を処置するというコストにおいて、応答者群により多くの患者を含めることを決定する場合、αに対してより多くの重みを付け得る。この場合、偽陽性および偽陰性のコストは同じ(α=β)であると想定される。従って、上記ROC空間における点x,yでの分類の平均期待コストは、以下である:
C’=(1−p)×x + p×(1−y)。
最小のC’は、偽陽性および偽陰性(x,y)の全ての対を使用した後に計算され得る。至適スコア閾値は、C’における(x,y)のスコアとして計算される。
【0082】
腫瘍がERBB3インヒビターでの処置に感受性であるかまたは耐性であるかを推定すること、すなわち、2項分類に加えて、NRG1スコアは、腫瘍がどの程度の可能性で感受性であるか耐性であるかという、およそではあるが、有用な指標を提供する。一般に、上記NRG1スコアが高いほど、腫瘍がERBB3インヒビターに対して感受性である可能性が高く、上記NRG1スコアが低いほど、腫瘍がERBB3インヒビターに対して耐性である可能性が高い。
【0083】
(試験キット)
本発明の方法を行うための特定の成分を含む診断試験キットもまた、開示される。診断試験キットは、診断アッセイの実施において便宜性、速度および再現性を高める。例えば、例示的qRT−PCRベースの実施形態において、基本的な診断試験キットは、NRG1の発現を分析するためのPCRプライマーを含む。他の実施形態において、より精巧な試験キットは、PCRプライマーのみならず、PCR技術を使用してNRG1発現レベルを測定するための緩衝液、試薬および詳細な指示書をも含む。いくつかの実施形態において、上記キットは、RNAサンプル以外の、上記試験に必要とされる試験プロトコルおよび消費され得る構成要素全てを含む。
【0084】
例示的なDNAマイクロアレイベースの実施形態において、試験キットは、特定の機器での使用のために設計された微小流体カード(アレイ)を含む。必要に応じて、上記微小流体カードは、NRG1の測定のために特に設計されたカスタムメイドのデバイスである。このようなカスタム微小流体カードは、市販されている。例えば、TaqMan Arrayは、Applied Biosystems 7900HT Fast Real Time PCR System(Applied Biosystems, Foster City, CA)での使用のために設計された384ウェル微小流体カード(アレイ)である。1種もしくはそれより多くのさらなる遺伝子の発現を測定するために、さらなるプローブが流体カード上に必要に応じて含められ得ることは、理解される。このようなさらなる遺伝子は、コントロールもしくは標準として、例えば、データ正規化のために働くように含められてもよいし、または他の点で有益であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記試験キットは、IHCによるNRG1含量の決定のための材料を含む。IHCキットは、例えば、NRG1に対する一次抗体、およびレポーター酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)に結合体化された二次抗体を含み得る。いくつかの実施形態において、上記二次抗体は、上記一次抗体を特異的に認識する結合体化ポリマーで置換される。
【実施例】
【0086】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。実施例は、例示目的のみで提供されるのであって、本発明の範囲もしくは内容を限定するとは如何様にも解釈されるべきではない。
【0087】
(実施例1:AV−203に対する異種移植片腫瘍応答)
AV−203に対する腫瘍応答の評価を、以下のように行った。異種移植片腫瘍を確立するために、最初に腫瘍細胞を、37℃において、5% CO2を含む雰囲気中、10% ウシ胎仔血清を含む培地を使用して培養で増殖させた。細胞を、8週齢の雌性NCRヌードマウスもしくはCB.17 SCIDマウス(Taconic Labs)の側腹部へと、50% マトリゲル(BD Biosciences, Cat No. 356237)中2〜10×10
6細胞/マウスで皮下接種した。腫瘍測定を、ノギスを使用して1週間に2回行った。腫瘍体積を、以下の式を使用して計算した:幅×幅×長さ/2。腫瘍が約200mm
3に達したとき、上記マウスを各10匹のマウスの2群(PBSビヒクルコントロールもしくは1週間に2回20mg/kgでAV−203腹腔内(IP)投与)へとランダム化した。いくつかの研究において、第2のコントロール群を使用し、この群には、1週間に2回20mg/kg IPで投与されるヒトIgGを与えた。
【0088】
合計して、25個の異種移植片腫瘍を、AV−203で処置した。AV−203に対する応答は、−10%腫瘍増殖阻害(TGI)から腫瘍退縮までの範囲に及んで、変動した。「腫瘍退縮」は、処置前の評価期間の開始時の腫瘍のサイズと比較して、評価期間の最後に腫瘍がより小さいことを意味する。達成された腫瘍増殖阻害に基づいて、応答者(TGI>60%を有するものと定義される)および非応答者(TGI<60%を有するものと定義される)を同定した。評価した25の腫瘍のうち、10は、応答者であることが分かり(例えば、hNRG1 Ct値は、22.9に等しいかもしくはそれ未満)、15は、非応答者であることが分かった(表1)。これら群は、AV−203応答性についての分子マーカーの同定を可能にした。
【表1-1】
【表1-2】
【0089】
(実施例2:AV−203応答とNRG1レベルとの間の関係性)
評価した上記25の腫瘍に関して、RNAを、未処置の元気な腫瘍(untreated healthy tumor)から調製した。瞬間凍結腫瘍サンプルを、Covaris CryoPrep
TMシステム(Covaris Inc. Model CP−02)を使用して粉砕した。粉砕した腫瘍材料のうちの約30mgを、2mL SafeLock
TMチューブ(Eppendorf,カタログ番号02236652)へと移した。1mLのTRIzol(Invitrogen,カタログ番号15596−026)および1(5mm)ステンレス鋼シェイカービーズ(Qiagen,カタログ番号69989)を、各チューブに添加した。次いで、上記チューブを、細胞溶解のためにTissue Lyser II
TM(Qiagen,カタログ番号85300)中で、ラックに置いた。上記サンプルを、2回の30秒間サイクルにわたって振盪した。次いで、上記ラックを回転し、さらに2回のサイクルにわたって再び振盪した。
【0090】
全RNA(水相)を、上記細胞溶解物から、各サンプルに200μL クロロホルムを添加することによって抽出した。上記サンプルを、15秒間にわたって激しく振盪し、12,000rpmにおいて15分間にわたって4℃で遠心分離にかけた。上側の上清(350μL)を、新しい2mL SafeLock
TMチューブに移し、RNeasy
TM Mini QIAcube Kit(Qiagen,カタログ番号74116)での自動化RNA単離のために、QIAcube
TM Automated Purification Instrument(Qiagen, Cat. No.9001292)に配置した。DNase I処理工程は、上記RNA単離に含めた。単離した全RNA濃度を、NanoDrop
TM(Thermo Scientific, Model 1000)で測定し、RNA完全性を、18Sバンドの位置および任意のRNA分解の検出を確認するために、電気泳動によって決定した。上記RNAを2つの1.7mL マイクロチューブ(Axygenカタログ番号MCT−175−C)の中にアリコートに分け、−80℃で貯蔵した。
【0091】
ヒトNRG1、ERBB3およびβ−アクチンの発現レベルを、定量的リアルタイムRT−PCRを使用して決定した。全腫瘍RNA発現を、QuantiTect
TM SYBR Green RT PCR Kit(Qiagen Cat. No.204245)を使用してアッセイし、Applied Biosystems Thermocycler, Model 7900HT Fast Real−Time PCR System(Applied Biosystems, Cat.No.4329001)で実施した。各RNA腫瘍サンプルを、20μLの反応系において四連でアッセイした。各反応系は、50ngの全腫瘍RNA、10μLの2×QuantiTect
TM SYBR Green RT−PCR Master Mix、0.2μL QuantiTect RT Mixならびに終濃度900nMの正方向および逆方向の遺伝子特異的プライマー(Eurofins MWG Operonによって合成された)を含んだ。反応を、384ウェルプレートにおけるQiagen BioRobot Rapidplate液体取り扱いシステム(Applied Biosystems,カタログ番号4309849)を使用し、MicroAmp Optical Adhesive Film(Applied Biosystems,カタログ番号4311971)でシールして設定した。上記リアルタイムプレートを、以下のプログラムでアッセイした:50℃において30分間、95℃において15分間、続いて、95℃において15秒間、54℃において30秒間、72℃において30秒間を40サイクル。次いで、サイクル閾値(Ct)の値平均を、Microsoft Excelで計算した。Ct値は、logベース蛍光の閾値レベルにおけるサイクル数として規定される。低Ct値は、高い特異的RNAレベルを反映する(すなわち、低Ct値は、NRG1の高発現を反映する)。
【0092】
次いで、これら25の腫瘍におけるAV−203腫瘍増殖阻害を、各腫瘍内のNRG1発現レベル(Ct値として表される)に対してプロットした。
図12に示されるように、腫瘍増殖阻害とNRG1発現との間で陽性相関が認められた。より具体的には、AV−203での処置後の増大した腫瘍増殖阻害は、増大したNRG1発現(より低いCt値)と相関した。この相関は、統計的に非常に有意であることが分かった(表2)。
【表2】
【0093】
(実施例3:AV−203応答とERBB3レベルとの間の関係性)
NRG1に関して記載されるように、ERBB3レベルもまた、これら25の腫瘍モデルからの定量的RT−PCRによって決定した。次いで、これら25の腫瘍におけるAV−203腫瘍増殖阻害を、各腫瘍に関するERBB3発現レベル(Ct値として表される)に対してプロットした。
図13に示されるように、ERBB3がAV−203の標的であるとしても、腫瘍増殖阻害は増大したERBB3発現と相関しなかった。
【0094】
(実施例4:NRG1閾値決定)
上記AV−203応答(感受性)および非応答(耐性)異種移植片腫瘍モデルに由来するNRG1のCt値を使用して、受信者動作特性(ROC)曲線を作成して、AV−203腫瘍応答を推定するために有用なNRG1発現閾値を決定した(
図14)。一般に、ROC曲線は、試験結果(例えば、NRG1バイオマーカー試験結果)がランダム事象とは有意に異なるか否かを決定するために、および至適閾値スコア(例えば、至適閾値NRG1スコア)を決定するために使用される。例えば、上記試験結果がランダムである場合、対角線は、ROC空間を分割する。この実施例において、上記ROC曲線が対角線より上にあることは、応答者と非応答者との間での高い程度の分離を上記試験が達成していることを示す(
図14)。
図14に示されるように、上記至適閾値は、Ct=22.9であり、これは、偽陽性率 0.13、および偽陰性率 0.2を生じる。上記ROC分析の結果は、AV−203腫瘍応答が、Ct値 22.9におけるカットオフを使用して高NRG1発現レベルによって推定され得ることを示す。表1に列挙された異種移植片腫瘍モデルを使用したところ、上記Ct値カットオフ 22.9(例えば、22.9に等しいかもしくはそれ未満)から、統計的有意性のあるAV−203応答が推定された(
図15)。
図15に示されるように、増大したTGIは、低Ct値(これは、高NRG1発現および高NRG1スコアを示す)を有する腫瘍におけるAV−203での処置の後に観察された。
【0095】
(実施例5:原発性ヒト腫瘍モデル応答)
AV−203に対する応答に関するこの推定法を確認するために、原発性ヒト腫瘍モデルを、上記原発性ヒト腫瘍のマイクロアレイ分析に基づいて、高NRG1発現もしくは低NRG1発現を有すると分類した。次いで、これらモデルを、AV−203処置に対する応答に関して試験した。
【0096】
AV−203に対するヒト原発性腫瘍応答の評価を、以下のように行った。原発性ヒト腫瘍を、手術による切除物から集めた。腫瘍サンプルを、10% FBSを含む培地中で、一晩かけて氷(wet ice)上に置いて輸送した。到着したら、腫瘍サンプルを2mm×2mmの断片へと切って、10ゲージトロカールニードルを使用して5匹のNCRヌードマウス(Taconic)へと皮下移植した。効力研究のために使用されるべき異種移植片腫瘍材料を確立するために、腫瘍を500mm
3において集め、20の部位へとさらに増殖させた。これら腫瘍が500mm
3のサイズに一旦達したら、それらをさらなる増殖、効力研究、および分子特徴付けのために集めた。効力研究に関しては、腫瘍断片を8週齢の雌性NCRヌードマウスへと皮下移植した。ノギスを使用して、1週間に2回腫瘍測定を行った。腫瘍体積を、以下の式を使用して計算した:幅×幅×長さ/2。腫瘍が約200mm
3に達したら、上記マウスを、各10匹のマウスの2群(PBSビヒクルコントロールもしくはAV−203を1週間に2回20mg/kgで腹腔内(IP)投与)へとランダム化した。いくつかの研究において、第2のコントロール群を使用し、この群には、1週間に2回20mg/kgで投与されるヒトIgGを与えた。
【0097】
合計で、4種の原発性ヒト肺腫瘍の異種移植片を、AV−203で処置した。上記マイクロアレイデータのNRG1発現ランキングに基づくと、2つは、応答すると推定され、2つは、応答しないと推定された。AV−203処置に応答すると推測された上記2つのNRG1高ヒト原発性腫瘍は応答し、有意な腫瘍増殖阻害を示した。これら感受性腫瘍のデータを、
図16および
図17にまとめる。応答しないと推測された上記2つのNRG1低ヒト原発性腫瘍は、AV−203処置に応答しなかった。上記耐性腫瘍のデータを、
図18および
図19にまとめる。これらデータから、AV−203での処置に対するヒト原発性腫瘍感受性は、上記腫瘍における高NRG1発現に基づいて推定され得ることが実証された。
【0098】
(実施例6:抗ERBB3抗体AV−203に対する異種移植片腫瘍モデル応答)
2つのさらなる異種移植片腫瘍(すなわち、CAL−27頭頸部腫瘍異種移植片およびKYSE 150食道腫瘍異種移植片)を、実施例4に概説されたCt値カットオフ 22.9(例えば、22.9に等しいかもしくはそれ未満)に基づいて高NRG1発現について選択し、従って、AV−203に応答すると推定された。さらに、H520非小細胞肺癌(NSCLC)異種移植片腫瘍を、実施例4に概説された同じCt値カットオフ 22.9に基づいて、低NRG1発現について選択し、従って、AV−203に応答しないと推定された。3つ全ての腫瘍モデルを、20mg/kgの抗体AV−203で処置した。抗体AV−203に対する応答は、上記感受性腫瘍(すなわち、CAL−27およびKYSE 150)に関して75.2〜79.9%腫瘍増殖阻害の範囲であり(TGI,表3および
図20〜21を参照のこと)、上記耐性腫瘍(すなわち、H520)に関して−8.0% TGIであった(表3および
図22を参照のこと)。
【表3】
【0099】
これらデータから、AV−203での処置に対する固形腫瘍の応答は、NRG1発現を測定することによって推定され得ることが実証される。
【0100】
(実施例7:抗ERBB3抗体11G01に対する異種移植片腫瘍モデル応答)
他の抗ERBB3抗体に対する応答に関する推定法を検証するために、高NRG1レベルを発現する腫瘍モデルを、AV−203とは異なる作用機構を有する抗ERBB3抗体で処置した。上記で考察されるように、AV−203は、ERBB3へのNRG1の結合を阻害するので、以下の実験を、ERBB3へのNRG1の結合を阻害することなしにERBB3のダイマー化をブロックする抗体(すなわち、抗体11G01)を使用して行った。抗体11G01に対する腫瘍応答の評価を、実施例1に記載されるように行った。
【0101】
3つの異種移植片腫瘍(すなわち、BxPC3膵臓腫瘍異種移植片、DU145前立腺腫瘍異種移植片およびH322肺腫瘍異種移植片)を、実施例4に概説された上記Ct値カットオフ 22.9(例えば、22.9に等しいかもしくはそれ未満)に基づいて、高NRG1発現について選択し、従って、抗ERBB3抗体に応答すると推定された。3つ全ての腫瘍モデルを、20mg/kgの抗体11G01で処置した。抗体11G01に対する応答は、60〜72% 腫瘍増殖阻害の範囲に及んだ(TGI, 表4および
図23〜25を参照のこと)。
【表4】
【0102】
実施例1および実施例4に記載されるとおりの応答の同じカットオフ(すなわち、hNRG1 Ct値は22.9に等しいかもしくはそれ未満)を使用したところ、3つの腫瘍全てが、抗体11G01に応答すると考えられた。これらデータから、中和抗体(例えば、AV−203)およびダイマー化阻害抗体(例えば、抗体11G01)を含む抗ERBB3抗体での処置に対する固形腫瘍の応答が、高hNRG1発現を測定することによって推定され得ることが実証される。
【0103】
(援用の表示)
本明細書中で引用される特許文書および科学論文の各々の開示全体は、全ての目的で参考として援用される。
【0104】
(等価物)
本発明は、その本質的特徴から離れた他の具体的形態において具現化され得る。従って、前述の実施形態は、本明細書に記載される発明の限定ではなく、例示であるとみなされるべきである。本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価物の意味およびその範囲内に入る全ての変更が、そこに包含されると解釈される。