(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169092
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】流動体に作用するずり速度の到達距離を評価する方法、そのプログラム及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 11/16 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
G01N11/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-541241(P2014-541241)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2013073153
(87)【国際公開番号】WO2015029183
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】出雲 直人
(72)【発明者】
【氏名】深見 雄二
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−287485(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0047328(US,A1)
【文献】
出雲直人,新方式レオメータにより得られる各種液体の粘性〈振動式レオメータRV‐10000〉,計測技術,日本,2013年 2月 5日,Vol.41, No.3,Page.33-37
【文献】
SOONG David et al.,Shear-Rate-Dependent Viscosity of Non-Newtonian Suspensions and Entangled Polymer Systems,POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1980年,Vol.20,No.17,pp.1177-1180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定する流動体に振動子を挿入し、振動子を振動させて、流動体の粘性抵抗を受けて変化する振動子の振幅変化から流動体の粘度を測定する粘度測定装置における、流動体の物性を評価する方法であって、
流動体の密度ρを測定する密度測定工程と、
流動体の粘度ηを測定する粘度測定工程と、
振動子の角振動数ωを算出する角振動数算出工程と、
下記式(1)よりずり速度伝播定数Zを算出する伝播定数算出工程と、
を有し、
ずり速度伝播定数Zが大きいほど、振動子から流動体に加わるずり速度の到達距離が大きいと評価することを特徴とする流動体の物性を評価する方法。
【数1】
【請求項2】
測定する流動体に振動子を挿入し、振動子を振動させて、流動体の粘性抵抗を受けて変化する振動子の振幅変化から流動体の粘度を測定する粘度測定装置における、流動体の物性を評価する方法であって、
流動体の密度ρを測定する密度測定工程と、
流動体の粘度ηを測定する粘度測定工程と、
振動子の角振動数ωを算出する角振動数算出工程と、
下記式(1)よりずり速度伝播定数Zを算出する伝播定数算出工程と、
を有し、
ずり速度の伝播定数Zにより、ずり速度の到達距離を数値化することを特徴とする流動体の物性を評価する方法。
【数1】
【請求項3】
測定する流動体中に挿入した一対の振動子を、コイルを備えた電磁駆動部によって振動させ、流動体の粘性抵抗を受けて変化する振動子の振幅が設定された振幅値となるように前記コイルに駆動電流を流し、前記駆動電流を測定して流動体の粘度ηを測定する音叉振動式粘度計であって、
演算処理部にて、
振動子の角振動数ωを算出し、角振動数ω、粘度η及び流動体の密度ρから、
下記式(1)よりずり速度伝播定数Zを算出する伝播定数算出手段を備えることを特徴とする音叉振動式粘度計。
【数1】
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載の流動体の物性を評価する方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にしたことを特徴とする、ずり速度伝播定数計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動体の物性を評価する方法に関し、特に、流動体に加わるずり速度の到達距離を評価する方法、そのプログラム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動体の物性を評価するには、ずり速度の変更が避けられない。流動体の物性を評価する装置として知られる、回転式粘度計では、回転子が、サンプル液中で一定の回転数を維持するのに必要となるトルクを測定して粘度を求めており、回転子の回転数がずり速度に比例するとの考え方からずり速度を決定している。
【0003】
一例として、コーン・プレート式回転粘度計では、
図6に示すように、平板31を静止させた状態で、サンプル液9中に浸漬した円錐ロータ32(回転子)を回転数N[rpm]で回転させたとき、ロータ32の半径をRとすれば、サンプル液9に発生するずり速度Dは任意の半径rにおいて式(2)となり、ずり速度Dは、rに無関係で、円錐面のどの位置でも回転数Nと円錐角φで求まるとしている(特許文献1)。
【0004】
【数2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−61333号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本来、理想的には、流動体にかかるずり速度が一定で、そのずり速度の変化に対して、流動体が比例関係に均一構造を維持すれば、ずり速度に比例したずり応力が得られ、粘度値が一定になると理解される。しかし、非ニュートン流体では、ずり速度の変化とずり応力の変化に比例関係が無く、その結果、比例定数として定義される粘度が一定値にならない。非ニュートン流体の非線形性は、液体内で発生するずり速度が、実際には、回転式粘度計の回転数に比例していない事が一因であると考えられる。
【0007】
にも関わらず、上述のように、ずり速度が求められるとされている回転式粘度計であっても、ずり速度は、粘度計装置の幾何学的形状と回転子の回転数から仮定的に求めているにすぎず、特に、ずり速度の伝播、すなわち、ずり速度の到達範囲に関しては、従来考慮されているものはなかった。
【0008】
即ち、流動体の物性を評価するのに重要な要素である、ずり速度の実態が評価できれば、非ニュートン流体を含む液体の挙動についての疑問を解明する糸口になると考えられる。
【0009】
本発明は、従来技術の問題を解決するために、流動体の物性を評価するにあたって、新規な方法、即ち、ずり速度の伝播定数、という概念を用いて、流動体のずり速度の到達距離を評価する手法を提案し、併せてそのプログラム及び装置を提供することにある。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る流動体の物性を評価する方法では、測定する流動体に振動子を挿入し、振動子を振動させて、流動体の粘性抵抗を受けて変化する振動子の振幅変化から流動体の粘度を測定する粘度測定装置における、流動体の物性を評価する方法であって、流動体の密度ρを測定する密度測定工程と、流動体の粘度ηを測定する粘度測定工程と、振動子の角振動数ωを算出する角振動数算出工程と、下記式(1)よりずり速度伝播定数Zを算出する伝播定数算出工程と、を有し、ずり速度伝播定数Zが大きいほど、振動子から流動体に加わるずり速度の到達距離が大きいと評価することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る流動体の物性を評価する方法では、測定する流動体に振動子を挿入し、振動子を振動させて、流動体の粘性抵抗を受けて変化する振動子の振幅変化から流動体の粘度を測定する粘度測定装置における、流動体の物性を評価する方法であって、流動体の密度ρを測定する密度測定工程と、流動体の粘度ηを測定する粘度測定工程と、振動子の角振動数ωを算出する角振動数算出工程と、下記式(1)よりずり速度伝播定数Zを算出する伝播定数算出工程と、を有し、ずり速度の伝播定数Zにより、ずり速度の到達距離を数値化する。
【0014】
本発明に係る音叉振動式粘度計は、測定する流動体中に挿入した一対の振動子を、コイルを備えた電磁駆動部によって振動させ、流動体の粘性抵抗を受けて変化する振動子の振幅が設定された振幅値となるように前記コイルに駆動電流を流し、前記駆動電流を測定して流動体の粘度ηを測定する音叉振動式粘度計であって、演算処理部にて、振動子の角振動数ωを算出し、角振動数ω、粘度η及び流動体の密度ρから、下記式(1)よりずり速度伝播定数Zを算出する伝播定数算出手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項1又は2に記載の流動体の物性を評価する方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、いわゆる粘度計と呼ばれ、粘度測定等から流動体の物性を評価する粘度測定装置において、今まで考慮されることのなかった、ずり速度の伝播について、定量的な評価をすることができるようになる。
【0018】
測定する流動体に振動子を挿入し、振動子を振動させて、流動体の粘性抵抗を受けて変化する振動子の振幅変化から流動体の粘度を測定する粘度測定装置において、流動体の密度ρと、流動体の粘度ηと、振動子の角振動数ωとが得られれば求められる、ずり速度伝播定数Zという新規な概念を利用することで、振動子から流動体に加わるずり速度の到達距離を数値化することができ、定量的な評価が可能となる。ずり速度伝播定数Zは、振動の減衰率δ(%)が、63.2%となる振動子の振動面からの直角方向の距離yを意味しており、ずり速度伝播定数Zが大きいほど、より遠くにずり速度の影響が及ぶことを意味し、ずり速度の到達距離が大きいと評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る音叉振動式粘度計の全体構成の斜視図
【
図2】同音叉振動式粘度計の駆動機構部の構成概略図
【
図3】同音叉振動式粘度計の制御駆動系のブロック図
【
図6】コーン・プレート型回転式粘度計の測定部の概略図
【
図7】振動子とそれに接する流体の振動を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0021】
図1は本発明に係る音叉振動式粘度計の全体構成の斜視図、
図2は同音叉振動式粘度計の駆動機構部の構成概略図である。粘度計本体100及び駆動機構部10の詳細な構成は、日本国公開特許広報2005−345211号及び国際特許出願2012/074654号に記載されている。
【0022】
本発明に係る音叉振動式粘度計は、粘度計本体100と、温度コントローラ200と、恒温槽300と、試料容器7と、表示器22とを有している。粘度計本体100は、支柱110の上下方向にスライドするようになっている。ベース台130の上面中央部分には、XYZステージ150が固設されており、容器7は水平方向(XY方向)及び上下方向(Z方向)に移動調整できるようになっている。
【0023】
駆動機構部10中、符号1,1は、測定対象となる流動体のサンプル液9中に浸漬される一対の振動子であり、セラミック部材や金属部材等の薄肉平板状の板材から形成され、先端に円形状の拡大部が設けられている。この拡大部が、振動面1aとなる。一対の振動子1,1は、厚み方向の中心軸がサンプル液9中で同一平面上に位置するように配置される。
【0024】
符号3は温度センサ、符号4,4は先端に振動子1,1が固設された板バネ、符号8は板バネ4,4が固定される中央支持部材であり、振動子1,1が容器7内のサンプル液9中に一定の深さでもって浸かるように構成されている。
【0025】
符号2bは電磁コイル,符号2aはネオジウム磁石であり、電磁コイル2bとネオジウム磁石2aとからなるムービングマグネット方式の電磁駆動部2により、板バネ4,4の先端に設けられた振動子1,1が、設定された振幅値で振動するように構成されている。符号5は渦電流損検出非接触型の変位センサであり、振動子1,1の振幅値を測定する。
【0026】
次に、
図3は本発明に係る音叉振動式粘度計の制御駆動系のブロック図である。
【0027】
符号12はPWM変調回路、符号13は正弦波発生回路、符号14は比較器、符号15は制御器、符号16はI/V変換器、符号17,19はA/D変換器、符号18は演算処理部である。
【0028】
サンプル液9中に浸漬された振動子1,1は、設定された振幅値で振動するように演算処理部18から駆動信号が出され、正弦波生成回路13を介して生成された駆動電流が電磁駆動部2の電磁コイル2bに通電されて板バネ4,4に印加される。これにより、振動子1,1が逆位相で振動し、共振状態を形成する。この振動子1,1の振幅値が変位センサ5により検出され、検出された振幅値の信号が入力された比較器14で設定振幅値と比較され、振動子1,1が設定振幅値で振動するように制御器15から信号が出力され、フィードバック制御が行われる。振動子1,1が設定振幅値で振動するようになると、その時に電磁コイル2bに通電された駆動電流Iが検出される。そして、この駆動電流Iが、I/V変換器16及びA/D変換器17を介して演算処理部18に入力され、サンプル液9の粘度が算出される。粘度の算出過程については、日本国公開特許広報平5−149861号に記載されている。また、温度センサ3の入力信号は、温度用A/D変換器19を介して、演算処理部18に入力される。
【0029】
演算処理部18と比較器14との間には、PWM変調回路12が接続されており、比較器14に入力される振幅値を演算処理部18からの指令によりパルス幅変調することで、設定振幅値が任意に変更され、測定中に振動子1,1の振幅が変化し、サンプル液9に発生するずり速度が変更される。
【0030】
演算処理部18には、メモリ21,表示器22,キースイッチ部23等が接続されており、ユーザは、キースイッチ部23から、測定条件の設定が行える。測定条件とは、一例として、測定時間、振幅変化の設定(振幅の下限値及び上限値の入力や振幅の時間割の変化量の決定、振幅を上昇させるか、下降させるか又は往復させるか)などである。この詳細は、国際特許出願2012/074654号に記載されている。
【0031】
次に、上記構成の音叉振動式粘度計を用いて、振動子1,1からサンプル液9に加わるずり速度の到達距離を求める方法を詳細に説明する。
【0032】
図7に示すように、ニュートン流体中で、薄い平らな振動片がその面に平行にυ
m×е
jωtの速度で制限的に振動する場合、振動片からその面に対して直角方向にyだけ離れた面における振動速度υは、式(3)として示される(川田裕郎著,「改訂粘度」,初版,計量管理協会編,1958年11月,p.139−143)。
【0034】
υ
mは、装置構成から既知となる定数、е
jωtは振動項である。よって、振動片からyだけ離れた面における振動速度の減衰率は、振動片の速度に対して、式(4)で減衰することがわかる。
【0036】
減衰がない場合(距離yがゼロの振動片の速度)を0%、液体の振動がなくなるポイントを100%とすれば、減衰率δ(%)は式(5)となる。
【0038】
このように、振動の減衰率δは指数関数的に変化しており、振動面から直角方向yに、振動面から近いほどずり速度の減衰は小さく、離れるほどずり速度の減衰は大きくなることがわかる。この現象から、ずり速度の減衰には一次遅れ要素があると捉えることができ、「時定数」の考え方を用いることができる。すなわち、減衰率δの漸近カーブと直線y=0.632との交点を求め、減衰率δ(%)が、63.2%となる距離y[mm]をずり速度の伝播定数Zとして定義すれば、これを用いてずり速度の伝達距離について評価することができる。
【0039】
式(5)において、粘度ηを1mPa・s,10mPa・s,50mPa・s,200mPa・s,1000mPa・s,5000mPa・sとし、各粘度について角速度ωを118.4[rad/sec] (振動周波数 30Hz時) ,密度を各粘度液による変数とし、描いたグラフが
図4である。
【0040】
図4はずり速度伝播定数を説明する図であり、縦軸はずり速度の減衰率[%]、横軸は振動子からの鉛直方向(y方向)の距離[mm]である。
【0041】
減衰率δの漸近カーブと直線y=0.632との交点を読めば、粘度1mPa・sの場合は、ずり速度伝播定数Z=0.07mm、粘度10mPa・sの場合は、ずり速度伝播定数Z=0.26mm、粘度50mPa・sの場合は、ずり速度伝播定数Z=0.57mm、粘度200mPa・sの場合は、ずり速度伝播定数Z=1.15mm、粘度1000mPa・sの場合は、ずり速度伝播定数Z=2.58mm、粘度5000mPa・sの場合は、ずり速度伝播定数Z=5.76mmであり、これがずり速度の到達距離となる。すなわち、粘度が高いほど、ずり速度伝播定数Zは大きく、粘度は減衰し難く、長距離まで及ぶことがわかる。このことは、容器7の壁が振動子1に近いほど、高粘度では影響の出ることを意味しており、このことは、ニュートン/非ニュートン両方の液体について、測定容器の寸法の妥当性や、実際に液体を攪拌する装置の大きさに無駄がないか、などの検討を可能とする。
【0042】
上記のずり速度伝播定数Zは、式(5)から、数式で導くことができる。
【0043】
漸近式 1−exp
−χ(χは変数)において、最終値の63.2%となる条件は、χ=1の時である(1−exp
−1=0.632)。よって、減衰率δ(%)が、63.2%となる条件は、式(6)となる。
【0045】
従って、式(6)において、減衰率δ(%)が、63.2%となる距離yを伝播定数Zとすれば、ずり速度伝播定数Zは式(1)で得られる。
【0047】
すなわち、ずり速度伝播定数Zは、ω:振動片の振動数、ρ:流動体の密度、η:流動体の粘度、から求めることができる。
【0048】
図5は、ずり速度の伝播定数を求めるフローチャートである。
【0049】
測定を開始すると、ステップS1に進み、サンプル液9の密度ρの値を測定する(密度測定工程)。この密度測定は、既知の密度測定装置等を利用して測定する。ただし、標準液として既に密度が知られているものであれば、キースイッチ部23より直接入力或いは予めテーブルとして保存しておきメモリ21から読みだしてもよい。
【0050】
次に、ステップS2に進み、サンプル液9の粘度ηの値を測定する(粘度測定工程)。測定の際には、測定開始から値が安定となったと判断したときの粘度ηを取得するのが好ましい。測定によらず、標準液として既に密度が知られているものであれば、キースイッチ部23より直接入力或いは予めテーブルとして保存しておきメモリ21から読みだしてもよい。
【0051】
次に、ステップS3に進み、振動子1,1の振動数fから角振動数ω[rad/s]を算出する(角振動数算出工程)。
【0052】
次に、ステップS4に進み、演算処理部18にて、式(1)からずり速度伝播定数Zを算出し(伝播定数算出工程)、測定を終了する。これらの処理は、演算処理部18にて行われる(伝播定数算出手段)。
【0053】
ステップS4で得られたずり速度伝播定数Zは、ユーザの要求に応じ、表示部22に表示される。また、各値をメモリ21に記録しておき、他のサンプル液の測定結果と比較表示も可能とする。また、必要に応じ、複数のサンプル液のずり速度伝播定数を
図4の形式で表示することも可能とする。なお、ステップS1〜S3は順不同でよい。
【0054】
(実施例1)
ω:振動片の振動数,振動子1が30Hzで振動している場合、ω=2πfであるから、ω=2×3.14×30=188.4 [rad/s]。
ρ:流動体の密度,測定により、ρ=0.8 [g/cm
3]。
η:流動体の粘度,測定により、η=1000[mPa・s]。
このときの伝播定数Zは、下記となる。
【0056】
(実施例2)
ω:振動片の振動数,振動子1が30Hzで振動している場合、ω=2πfであるから、ω=2×3.14×30=188.4 [rad/s]。
ρ:流動体の密度,測定により、ρ=1.2 [g/cm
3]。
η:流動体の粘度,測定により、η=10[mPa・s]。
このときの伝播定数Zは、下記となる。
【0058】
以上、本発明によるずり速度の伝達距離を求める方法では、流動体(サンプル液9)の密度ρと、流動体(サンプル液9)の粘度ηと、振動子1,1の角振動数ωとで求められる、ずり速度伝播定数Zという新規な概念を利用することで、振動子1,1から流動体(サンプル液9)に加わるずり速度の到達距離を数値化して評価することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 振動子
1a 振動面
2 電磁駆動部
2a ネオジウム磁石
2b 電磁コイル
7 容器
9 流動体(サンプル液)
10 駆動機構部
18 演算処理部
100 粘度計本体