特許第6169098号(P6169098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6169098生産性および均一性が向上したイオン注入システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169098
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】生産性および均一性が向上したイオン注入システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20170713BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   H01J37/317 C
   H01L21/265 T
   H01L21/265 603B
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-547180(P2014-547180)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-506076(P2015-506076A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】US2012000575
(87)【国際公開番号】WO2013089807
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】13/324,050
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アイスナー,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダーバーグ,ボー
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0155623(US,A1)
【文献】 特表2012−513089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/30 −37/36
H01L 21/26 −21/268
H01L 21/322−21/326
H01L 21/42 −21/425
H01L 21/428
H01L 21/477−21/479
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム経路に沿うイオンビームを生成するよう構成されたイオン源と、
上記イオン源の下流にあり、上記イオンビームの質量分析を行うよう構成された質量分析素要素と、
イオン源の下流にあり、上記イオンビームに働きかける時間変化する場を形成することで、走査経路を横断する走査されたビームを生成するよう構成された走査素子と、
上記走査されたビームが上記走査経路を横断すると、上記走査されたビームのビーム電流を計測するよう構成されたビームプロファイリングシステムと、
上記計測されたビーム電流を分析して、走査によって発生するゼロフィールド効果(ZFE)状態を検知する分析システムと、
上記ビームプロファイリングシステムの上流、かつ上記走査素子の下流にあって、1つ以上の電極を含み、フィードバック経路を介して上記分析システムに連結し、ZFE状態が検知されたか否かに基づいて、上記イオンビームに選択的に電界を印加することで、上記ZFE状態が検知された場合に該ZFE状態を制限するよう構成されたZFE制限素子とを備えることを特徴とするイオン注入システム。
【請求項2】
上記ZFE制限素子は、ZFE状態が検知された時のみ上記電界を印加することを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
上記走査素子によって供給される上記時間変化する領域は、時間変化する磁場であることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
上記走査素子によって供給される上記時間変化する領域は、時間変化する電場であることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
上記ビームプロファイリングシステムが、上記イオン注入システムのエンドステーションに近接し、上記イオンビームの上記ビーム電流またはビーム密度を計測するよう構成されたファラデーカップを備えることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
上記ZFE制限素子が、ZFE状態が検知されたか否かに基づいて電圧波形を増加的に変化させるよう構成され
ていることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
上記分析システムが、上記走査経路上のある地点においてビーム電流が上記走査経路に沿って基準ビーム電流を超えたか否かを判断することによって上記ZFE状態を検知することを特徴とする請求項6に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
上記ZFE制限素子が、上記イオンビームの断面の外周を少なくとも実質的に取り囲む内周を有するリング状電極を備えることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
上記ZFE制限素子が上記イオンビーム付近に少なくとも1つの板電極を備えることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
イオン注入システムのための走査システムであって、
イオンビーム走査経路に亘ってイオンビームを走査する磁界を生成するよう構成された第1磁極と第2磁極とを備える磁気スキャナと、
上記イオンビーム走査経路に亘って上記イオンビームが磁気的に走査されると、上記イオンビームのビーム電流を計測するビームプロファイラーと、
上記計測されたビーム電流を分析して、上記イオンビーム走査経路上の少なくとも1つの走査地点に発生するゼロフィールド効果(ZFE)状態を検知する分析システムと、
上記ビームプロファイラーの上流、かつ上記磁気スキャナの下流にあって、1つ以上の電極を含み、フィードバック経路を介して上記分析システムに連結し、上記ZFE状態が検知されたか否かに基づいて、上記イオンビームに選択的に電界を印加し、上記選択的に印加された電界が上記イオンビームの変化を誘発して上記ZFE状態を制限するよう構成されたZFE制限素子とを備えることを特徴とする走査システム。
【請求項11】
上記ZFE状態は、少なくとも1つの走査地点の上記計測されたビーム電流が予め決められた閾値によるビーム電流の基準値を超えたか否かを判断することで検知されることを特徴とする請求項10に記載の走査システム。
【請求項12】
上記イオンビームはイオンペンシルビームを含み、該イオンペンシルビームはビーム経路に沿って進み、上記磁界を通過するとリボンビームに変化する軌跡を有することを特徴とする請求項10に記載の走査システム。
【請求項13】
上記ZFE制限素子が、上記イオンビームの断面の外周を少なくとも実質的に取り囲む内周を有するリング状電極を備えることを特徴とする請求項10に記載の走査システム。
【請求項14】
上記ZFE制限素子が、上記イオンビーム付近に少なくとも1つの板電極を備えることを特徴とする請求項10に記載の走査システム。
【請求項15】
イオン注入システムにおいて磁気的に走査されたイオンビームの均一性を向上する方法であって、
あるビーム電流またはビーム密度を有するイオンビームをある走査速度で走査経路に亘って走査するスキャナを提供するステップと、
上記走査されたイオンビームを分析して、ゼロフィールド効果(ZFE)状態が存在するか否かを判断するステップと、
上記スキャナの下流にあって、1つ以上の電極を含み、選択的に電界を上記イオンビームに印加して上記ZFE状態を緩和するよう動作可能な、ZFE制限素子を提供するステップ、とを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
上記走査されたイオンビームの分析が、上記走査経路に亘って上記イオンビームが走査された時にビーム電流信号を計測することを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記ビーム電流信号がファラデーカップによって計測されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記選択的に印加される電界が、ZFE状態が検知された時のみ印加されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
上記イオンビームの走査が、時間変化する磁場を上記イオンビームに印加することを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
上記イオンビームの走査が、時間変化する電場を上記イオンビームに印加することを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明の開示は概してイオン注入システムに関しており、特に走査されたイオンビームの生産性および均一性を向上する方法および装置に関している。
【0002】
〔背景技術〕
イオン注入システムでは、ワークピースの結晶格子にイオンを注入するために、イオンビームはワークピース(例えば、半導体ウエハ、またはディスプレイパネル)に対して向けられる。ワークピースの結晶格子に注入されたイオンが組み込まれると、注入されたイオンによって、ワークピースにおけるイオンが注入された領域の物理的および/または化学的な特性が、注入されていない領域に対して異なるものになる。この物質の特性を変える働きのため、イオン注入は、半導体デバイス製造、金属加工、および物質科学の研究における様々な応用品に対して使用することができる。
【0003】
典型的な注入プロセスにおいて、イオンビームは、イオン注入されるべきワークピースの表面積より非常に小さい断面積を有している。このため、イオンビームは、ワークピースにおけるドーピング分布(profile)が、所望の容積濃度における所望の深さ分布を有する指定の均一性を得るように、ワークピースの表面に亘って走査される。例えば、図1は、従来のイオン注入システム100の側面図である。図1では、ワークピース104の結晶格子にイオンを注入するために、イオンビーム102が走査経路103上に軌跡を描いている。この軌跡が描かれている間、多くの場合、ワークピース104が第2軸106上を機械的に移動する間、イオンビーム102が第1軸105に亘って走査される。しかし、他の実施形態では、ビームが第1軸105および第2軸106の両方に亘って走査されてもよく、軸105および軸106に亘って磁気的および電気的にそれぞれ走査される、などとしてもよい。
【0004】
実際は、イオンビーム102が走査経路103上に軌跡を描く時、図1B〜1F等に示すように、該ビームの形および/または断面積が変わり得る。図1B〜1Fは、ワークピース104に亘って走査するイオンビーム102を示しており、該ビームの幅が、上記ワークピースの中心付近(図1D中の中心幅W)でより大きく(例えばより拡散)なり、端部付近(図1Bに示す左幅WL1、および図1Fに示す右幅端R1等)でより小さく(例えばより絞られる)成り得る。ビーム幅におけるこれらの変化および/またはそれに伴う電流密度が、正確に計測され把握されていない場合、ワークピース104に実際に形成されたドーピング分布の均一性が指定の均一性と異なることがある。このような不均一性によって、イオン注入処理されたワークピースあたりの有効な電子デバイスの歩留まりが所望されているよりも少ないものになってしまうことがある。
【0005】
そのようなビームの変化の根本的な原因の1つは、ゼロフィールド異常(zero field anomaly(ZFA))とも言われる、いわゆるゼロ−フィールド効果(zero−field effect(ZFE))であることがある。ZFEは、多くの場合、電界または磁界のいずれかである走査フィールドの振幅がゼロに近づいた時に発生し、その結果、上記ゼロ振幅の走査フィールドが印加されている間、ビーム電流を突然「急上昇」または「急降下」させる。図2Aはビーム走査波形204の例を示しており、(例えば図1に示すように)該波形は走査経路に亘ってイオンビームを前後に走査するために用いることが可能である。図2Aおよび図2Bを同時に参照した時に分かるように、ビーム走査波形204がゼロに近づいた時(図2A中の206)、ビーム電流202の急上昇が生じ得る(図2B)。対策を講じなかった場合、このビーム電流202の「急上昇」によって、ZFEが生じたワークピースの一部について指定のものと異なるイオン注入が行われてしまい、その結果好ましくない不均一性がワークピースに生じてしまう。
【0006】
ZFEの明確な原因は不明だが、ビームの中性化、つまり輸送の促進(Transport Enhancement)と関係があると考えられる。該輸送の促進は、イオンビームの空間電荷が、ビームライン中の該空間電荷と反対の電荷を有する媒体によって相殺された時に発生し、該媒体はビームイオンと中性バックグラウンドガスとの衝突を介して発生した中性化ビームプラズマ等である。ZFEは、(時変磁界による等の)磁界または誘導電界によって起こることもあり、ビームライン面積から中性化電子を押し出し(磁界または誘導電界が電子に働きかけ、該電子をビームラインから押し出すよう働く等)、その結果、電荷の中性度が低下し、輸送の促進または減退につながる(電荷の中性化がどの程度ビーム輸送に影響するかによって、より多くまたはより少ないビーム電流を供給する)。しかし、ZFEの原因に関係なく、ゼロフィールド効果によって、むらのあるビーム電流分布が発生し、それによってワークピース上の注入が不均一になってしまうことがある。
【0007】
したがって、本開示の態様はZFEを緩和する改善されたイオン注入システムに関するものである。
【0008】
〔概要〕
本発明は、全体的な生産性を向上させながらZFEを低下させるよう構成されたイオン注入システムに関するものである。本発明の一態様は、ビームを走査するために、走査素子を用いるイオン注入システムを提供するが、該走査によってZFEが発生し得る。ZFEを緩和するために、上記ビームが走査されている間(初期化、または実際の注入の間)、ビームプロファイラーがビーム電流を計測し、分析回路が計測したビーム電流を分析して、イオンビームの走査経路上の少なくとも1つの走査地点で発生しているZFE状態を検知する。上記走査素子に近接し、フィードバック経路を介して上記分析回路に連結してもよいZFE制限素子は、ZFE状態が検知されたか否かに基づいて、選択的に時変電界を走査されたイオンビームに印加するよう構成されている。上記選択的に印加された電界は、走査されたビームの少なくとも1つの走査地点における変化を誘発し、ZFE状態を制限する。
【0009】
したがって、本明細書には、ゼロフィールド効果を低下させ、走査されたビームの生産性および均一性を向上させる技術が記載されている。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
以下の説明および添付の図面は、ある実例となる本発明の態様および実施例を詳細に説明している。しかしこれらは、本発明の原理が採用される様々な方法の一部を示しているにすぎない。
【0011】
図1Aは走査されたイオンビームが走査経路を辿ってワークピースにイオンを注入することを示す側面図である。
【0012】
図1B〜1Fはイオンビームがワークピースの表面を走査した時に生じるビームの大きさの変化を示している。
【0013】
図2A、および図2BはZFEの一例を示しており、図2Aは走査波形を示し、図2Bは該走査波形に対応するビーム電流密度プロットを示している。
【0014】
図3はいくつかの実施形態に係るイオン注入装置を示している概略ブロック図である。
【0015】
図4A〜4GはZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
【0016】
図5はイオン注入装置のスキャナ領域に印加された電界を反復的に変化させて、走査されたビームの生産性および均一性を向上させる方法のフローチャートを示している。
【0017】
図6はスキャナの電界を最適化する方法の別の例を示している。
【0018】
〔詳細な説明〕
本稿では、本発明は、図面を参照して説明される。全体を通して、同様の部材番号が同様の部材を参照するために使用されている。
【0019】
図3はいくつかの実施形態に係るイオン注入システム110の一例を示している。本明細書においてさらに理解されるであろうが、イオン注入システム110はスキャナ135を利用してビームを走査するが、該走査によってビームプロファイリングシステム152によって検知可能なZFE状態に成り得る。ZFE状態が検知された場合、ビームプロファイリングシステム152はZFE制限素子180にフィードバックを行い、磁気的に走査されたビームに時変電界を印加してZFEを補正する。多くの場合、上記ZFE制限素子は、ZFE状態が検知された時にのみ電界を印加する。ZFE状態が検知されない場合、上記ZFE制限素子は電界をオフ状態のまま(または他の静的状態)にする構成であってもよい。このシステム110は例を挙げるために示したにすぎず、本開示はこの記載されたイオン注入システムに限らず、他の適したイオン注入システムを用いることも可能であることが理解されるであろう。
【0020】
システム110は、ターミナル112と、ビームラインアセンブリ(beamline assembly)114と、エンドステーション(end station)116とを有している。ターミナル112は、高圧電源122によって電力が供給されるイオン源120を備え、該イオン源120は、イオンビーム124を生成し、ビームラインアセンブリ114に該イオンビーム124を送る。イオン源120は、抽出されたイオンを生成し、イオンビーム124とし、該イオンビーム124は、ビームラインアセンブリ114のビーム経路に沿ってエンドステーション116まで送られる。
【0021】
イオンを生成するために、イオン化されるドーパント素材(不図示)のガスがイオン源120の生成チャンバ121(generation chamber)内に入れられる。ドーパントガスを、例えば、ガス源(不図示)からチャンバ121に供給する構成としてもよい。電源122に加えて、イオン生成チャンバ121内の自由電子を励起するために、適当な装置をいくつでも用いることができることが理解されるだろう(いずれの装置も図示されていない)。適当な装置としては、上記チャンバ内にアーク放電を発生させる、RFまたはマイクロ波励起源、電子ビーム注入源、電磁源、および/またはカソード等が挙げられる。励起された電子はドーパントガス分子と衝突してイオンを生成する。概して、正イオンが生成されるが、本稿の開示は負イオンが生成されるシステムにも適用される。
【0022】
本例では、イオンが、イオン抽出アセンブリ(ion extraction assembly)123からチャンバ121内のスリット118を介して制御可能に抽出される。イオン抽出アセンブリ123は複数の抽出および/または抑制電極125を備えている。抽出アセンブリ123は、例えば、抽出および/または抑制電極125にバイアスをかけて、生成チャンバ121からのイオンを加速させるための抽出電源(不図示)を別に含んでもよい。イオンビーム124は同様に帯電した粒子から成るため、該ビームは上記同様に帯電した粒子が互いに反発し、放射状に外側に飛散または拡散する傾向を有することがあることが理解されるだろう。多くの同様に帯電した粒子(高電流等)が比較的ゆっくりと同じ方向に移動し(低エネルギー等)、粒子間の反発力が強くなるような低エネルギーで高電流(高パービアンス)のビームにおいて、ビームの飛散が悪化し得ることも理解されるだろう。よって、抽出アセンブリ123は、概して、ビームが飛散しないよう高エネルギーでビームを抽出するよう構成されている。さらに、本例において、ビーム124は、概して、システム全体において比較的高エネルギーで輸送され、ワークピース130の直前では、ビームの拡散防止を促すため、低エネルギー化される。
【0023】
ビームラインアセンブリ114は、ビームガイド132と、質量分析器126と、走査システム135と、電気素子180と、パラライザー139とを有している。本例では、質量分析器126は、約90度の角度を成すように形成され、内部に(双極子)磁界を形成するよう機能する1つ以上の磁石(不図示)を備えている。ビーム124が質量分析器126内に入ると、それに応じて該ビームは上記磁界によって屈曲され、不適当な電荷質量比のイオンは排除される。特に、大きすぎるまたは小さすぎる電荷質量比を有するイオンは、ビームガイド132の側壁127に偏向される。このようにして、質量分析器126は、所望の電荷質量比を有するビーム124のイオンのみを通過させて、分析スリット134から排出させる。システム110内でイオンビームが他の粒子と衝突することで、ビームの完全性が損なわれることが理解されるだろう。したがって、少なくともビームガイド132および抽出アセンブリ123に真空をかけるための1つ以上のポンプ(不図示)を含んでもよい。
【0024】
例示された走査システム135は、磁気または電気走査素子136、および磁気または静電気により集束および/または導光を行う集束導光素子138sを含んでいる。各電源149および150はそれぞれ、走査素子136および集束導光素子138、特に該導光素子内に位置する磁極片および電極138a、138bに駆動可能に連結される。集束導光素子138は比較的狭い分布(例示されたシステム110の「ペンシル」ビーム等)を有する質量分析されたイオンビーム124を受ける。電源150によってプレート(電極)138aと138bに印加された電圧によって、走査素子136の走査頂点151にビームが集束導光される。本例では、電源149によって上記磁極片を取巻くコイルに印加された電流波形が時変界を形成し、その後該時変界が、ビーム124を前後に走査して、非走査ビーム124のビーム経路に対して計測された時変走査角度を有する走査されたイオンビーム131を形成する。走査頂点151は、光路の点として画定され、該点から各ビームレットまたは走査されたリボンビームの一部が、走査素子136によって走査された後に発生するかのように見えることが理解されるだろう。
【0025】
上述したように、図3の走査素子136等のイオンビームスキャナは、ゼロフィールド効果(ZFE)の影響を受けることがある。ZFEは走査素子の電界または磁界が、ゼロまたはゼロに近い振幅を有する時に発生する異常な移動相である。ZFEは走査されたリボンビーム131の不規則な束の分布を発生させ、スキャナの電界または磁界がゼロまたはゼロに近い振幅を有する時に、電流密度を一時的に増加または減少させる。
【0026】
したがって、本明細書によって開示された本技術は、ビームプロファイリングシステム152を用いて、スキャナ135の下流に位置する走査経路に亘って走査されたイオンビーム131のビーム電流を計測することによってZFEを制限する。その後、分析回路(ビーム診断システム155等)が計測されたビーム電流を分析し、ZFE状態を検知する。例えば、ビーム診断システム155は、基準ビーム電流に対するビーム電流中の突然の急上昇または急降下を検知し、ZFEを検知するものであってもよい。その後、有線または無線のフィードバック経路を介して分析回路に連結されたZFE制限素子180が、選択的にビーム経路のZFEの影響を受けた領域に磁界を印加し、ZFE状態を制限する。上記選択的な磁界の印加は、ZFE状態が検知されたか否かに左右される。例えば、ZFE状態が検知された場合、電界が変化、またはオン状態になるが、ZFE状態が検知されなかった場合、電界は変化しない、またはオフ状態になる。したがって、多くの場合、ZFE制限素子180によって印加される電界はZFEが発生した時のみ印加される。ZFEが検知されないその他の場合は、ZFE制限素子180はビームラインに電界を印加しない。
【0027】
一実施形態は、ZFE制限素子180が、スキャナ136の下流に第1および第2電極板182a、182bを含んでいる構成であるが、この電極板がより少ない(1つの電極板等)またはより多い構成であってもよい。好ましい一実施形態においては、ビームに近接した1つの電極板を用いており、ビームのプラズマからの電子を引き付けたり、反発させることができる。上記1つ以上の電極板(182a、182b等)に電圧が選択的に印加され、ZFE状態が検知されたか否かによって、選択的にZFE制限電界が誘発される。その他の一実施形態では、スキャナ136付近のリング状電極に電圧が印加され、選択的にZFE制限電界が誘発されるが、他の電極の配置も利用可能である。概して、電界はZFE効果を制限できるようにスキャナ136付近の任意の位置に形成される構成であってもよい。
【0028】
走査されたビーム131は、その後、図示されている例では2つの双極子磁石139a、139bを備える構成であるパラライザー/コレクター139を通過する。上記双極子の磁力線によって描かれる形は略台形であり、走査されたビーム131が略S字型に曲がるよう互いに回転対称に配置されている構成であってもよい。別の表現で述べると、上記双極子は、イオン経路内でそれぞれ反対方向に同角度、同半径の屈折を誘発する。
【0029】
パラライザー139は、走査されたビーム131の進路を変えて、ビーム131が走査角度に関わらずビーム軸に対して平行に移動するようにする。その結果、イオン注入角度の分布はワークピース130に亘って比較的均一になる。
【0030】
本例では、平行化要素139の下流に1つ以上の減速ステージ(deceleration stage)157が配置されている。システム110において、この地点までは、ビーム131は概して、飛散する傾向を緩和するために比較的高エネルギー値で輸送され、例えば分析スリット134等のビーム密度が増加する場所では、特にエネルギーが高くなる構成であってもよい。減速ステージ157は走査されたビーム131を減速させるように機能可能な1つ以上の電極157a、157bを備えている。一般的には、電極157は、ビームがその中を通過するスリットとして構成され、例えば、図1で直線として描かれているようなものであってもよい。
【0031】
2つの電極125aと125b、138aと138b、および157aと157bが、それぞれ、図示されているイオン抽出アセンブリ123、集束導光素子138、および減速ステージ157内に示されているが、これらの素子123、138、157は、イオンを加速および/または減速させるとともに、イオンビーム124を集束、屈折、偏向、集中、分散、走査、平行化、および/または除去するために配置およびバイアスをかけられた適切な任意の数の電極を備えてもよいことが理解されるだろう。さらに、集束導光素子138は、イオンビームを集束するために、静電気偏向板(1組以上の静電気偏向板等)、ならびにアインツェル(Einzel)レンズ、4極子および/またはその他の集束素子を備えてもよい。
【0032】
その後、エンドステーション116がワークピース130に向けられたイオンビーム131を受ける。異なるタイプのエンドステーション116をイオン注入システム110に用いてもよいことが理解されるであろう。例えば、「バッチ」タイプのエンドステーションは、複数のワークピース130を、回転する支持構造上に同時に支持することができ、ワークピース130を、全てのワークピース130へのイオン注入が終了されるまで、上記イオンビームの経路を通過するように回転させるように構成されている。一方、「シリアル」タイプのエンドステーションは、ひとつのワークピース130を、注入のためのビーム経路に沿って支持する。シリアル方式では、複数のワークピース130に対するイオン注入はワークピース130ひとつずつに対して行われ、ワークピース130に対するイオン注入が終わってから次のワークピースへのイオン注入が始まる。ハイブリッドシステムでは、ワークピース130が、機械的に第1(Yまたは遅い走査)方向に移動される一方で、ビームが第2(Xまたは早い走査)方向に走査されることにより、ワークピース130全体に亘ってビーム131を照射する。
【0033】
図示されているエンドステーション116は「シリアル」タイプのエンドステーションであり、ひとつのワークピース130を、注入のためのビーム経路に沿って支持する。ビームプロファイリングシステム152は、注入処理前のキャリブレーション計測のために、ワークピース付近の位置にあるエンドステーション116内に含まれている。キャリブレーションの間、ビーム131がビームプロファイリングシステム152を通過する。ビームプロファイリングシステム152は、イオンビームのビーム電流またはビーム密度を計測するよう構成された計測素子を備えてもよい。一実施形態では、上記計測素子がファラデーカップを含んでも良い。その他の一実施形態として、上記計測素子がプロファイラー経路158を連続的に横断してもよい1つ以上のプロファイラー156を備えてもよく、それによって走査されたビーム分布が計測される。
【0034】
本例では、プロファイラー156は、走査されたビームの電流密度を計測するファラデーカップ等の電流密度センサを備えてもよい。該電流密度は、注入角度に依存するものの1つである(上記ビームと上記ワークピースの機械表面との間の相対的な向きおよび/または上記ビームと上記ワークピースの結晶格子構造との間の相対的な向き等)。上記電流密度センサは、概して上記走査されたビームに対して直交して移動し、そのため、概して、リボンビームの幅を横断するように移動する。
【0035】
イオン源120と、質量分析器127と、走査素子136と、パラライザー139と、ZFE制限素子180と、ビームプロファイリングシステム152とを制御し、これらと通信し、および/またはこれらを調整可能な制御システム154が備えられている。制御システム154は、コンピュータ、マイクロプロセッサ等を含んでもよく、ビーム特性(ビーム電流またはビーム密度等)の値を計測し、それに応じてパラメータ(磁気的に走査されたビームに印加された電界等)を調整するよう動作可能であってもよい。制御システム154は、イオンビームが生成されるターミナル112、ならびにビームラインアセンブリ114の質量分析器126、走査素子136(電源149を介す等)、集束導光素子138(電源150を介す等)、パラライザー139、および減速ステージ157と連結することができる。したがって、所望のイオンビーム特性を促進するために、これらのいずれの素子も制御システム154によって調整可能である。例えば、イオン抽出アセンブリ123および減速ステージ157内の電極に印加されたバイアスを調整することによって、ビームのエネルギー値を調整して、接合深さを調節することができる。質量分析器126内に形成された磁界の強度および向きは、例えば、該質量分析器内の界磁巻線を通る電流量を調節して、所望のイオンビームの経路の屈折を変更することによって調整可能である。イオン注入角度は、例えば、導光素子138に印加される電圧を調整することでもさらに制御可能である。
【0036】
一実施形態では、制御システムに接続されたビーム診断システム155は、上記計測されたビーム電流またはビーム密度に応じてZFE制限素子180の電極に印加される電圧の振幅を変更するよう構成されている。例えば、計測されたビーム電流またはビーム密度がZFEの存在を示す場合、制御システム154はZFE制限素子180と通信し、ZFE制限素子の電極に、より高い電圧を印加する。より高い電圧を加えることで、電界内に対応する変化を誘発し、ビームの中性化を変化させることによって非ゼロの走査フィールドがイオンビームに働きかける領域内のビーム電流またはビーム密度を変化(高める等)させることができる。ビーム電流またはビーム密度が変化することによって、ウエハに亘る全体的なビーム電流またはビーム密度をより大きくし、ZFEを緩和することができる。
【0037】
したがって、ビーム診断システム155および制御システム154は、ビーム電流またはビーム密度が調整されるイオンビームの反復調整法を可能とし、ZFE制限素子に印加される波形の振幅の反復的な増加的変化によって、ZFE効果が除去される。
【0038】
走査システム135と、ZFE制限素子180と、ビームプロファイリングシステム152との相互作用のより詳細な実施形態が図4A〜4Gに示されている。
【0039】
図4Aに示す通り、走査システム135は、ビーム経路124の両側面に第1素子136aと、第2素子136bをそれぞれ有する走査領域を備えている。第1および第2素子はビーム経路124が通る真空が形成されている間隙によって分離されている。磁気走査例を示す一実施形態では、磁極136aおよび136bが、電磁コイルを備えてもよい。電気走査の場合も同様であることが理解されるであろう。
【0040】
図4Aのブロック図とともに図4Bの波形202を参照すれば、上記磁極を電流源149と連結させ、磁極136aおよび136bに交流電流を供給するように構成してもよい。上記磁極間の時変電流が、図4Cの波形図に示す通り、時変磁界204を形成している。この磁界は、上記コイルから上記ビーム経路に亘って外側に伸びており、ビーム124を、走査方向(図4Aおよび4GのX方向等)に沿って、屈折または偏向(走査等)させる。走査磁界が極136aから極136bに向かう方向にある時、ビーム124のイオンは、プラスX方向の横力を受ける(例えば、ローレンツ力式、F=q(v×B)に基づく)。極136aおよび136bがゼロ電流を受ける時、スキャナ136内にゼロ磁界が存在し(図4Gの時間「d」等)、ビーム124は変化せずにスキャナ136を通過する。磁界が極136bから136aに向かう方向にある時(図4Gの時間「a」および「c」)、ビーム124のイオンはマイナスX方向の横力を受ける。
【0041】
図4Dは、イオンビームが前後左右同時に走査される時に、ビームプロファイラー152によって検知されるビーム電流206を示している。図に示されるように、図4Cの磁界が、ほぼゼロ振幅(時間「d」等)の時、図4Dのビーム電流は、基準ビーム電流214に対して、「急上昇」(212等)または「急降下」等の望ましくないZFE状態を示すことがある。
【0042】
分析回路184はこのビーム電流206を分析し、存在し得るあらゆるZFE状態を検知する。分析回路184がZFE状態を検知した場合、(有線または無線のフィードバック経路186を介してZFE制限素子180に連結されている)上記分析回路が、ZFE制限素子180の電極に印加された電圧の変化を誘発するフィードバック信号を供給する。この選択的に印加された電圧は、ビーム経路のZFEに影響された領域内に、図4Eに示すような対応する電界208を誘発することが可能であり、それによってZFE状態が制限される。上記電界への選択的印加は、ZFE状態が検知されたか否かに左右される。例えば、ZFE状態が検知された場合、電界が変化、またはオン状態になるが、ZFE状態が検知されない場合、電界は変化しない、またはオフ状態になる。ZFEが検知された場合、異なるイオンエネルギー、質量、種類等を有する異なるビームを走査することによって取得した動作データから、電界に印加される値を予め決定することが可能である。あるいは、電界を印加し、電流密度分布が計測された時に、該密度が十分均一に分布していない場合、所望の均一性が得られるまで該電界を調整する反復プロセスを用いることもできる。
【0043】
一実施形態では、磁気スキャナ136の下流の電極板182a、および182bに電圧が選択的に印加され、選択的にZFE制限電界を誘発する。その他の実施形態としては、上記電圧が、磁気スキャナ136の下流のリング状電極に印加され、選択的にZFE制限電界を誘発する構成としてもよいが、他の電極の配置も利用可能である。概して、上記電界を上記磁気スキャナ付近の任意の位置に導入し、ビーム電流密度を変更し(磁化されたビームの中性化を高める等)、それによってZFE効果を制限するようにしてもよい。
【0044】
図4Fに示すように、上記ZFE制限素子によって補正を行った結果、イオンビームは制限されたZFE状態を示すようになる。図に見られるように、上記ZFE制限素子を通過した後のイオンビーム210は、これまでにZFE状態が発生した領域(212等)においても、相対的に一定の基準電流密度を有する。
【0045】
図5は磁気スキャナを用いたイオン注入システムにおけるZFE状態を制限する方法の一例である方法500を示している。上記方法は、最適な電界波形が得られるまで、磁気的に走査されたビームにZFE制限素子を介して印加された電界波形を繰り返し調整して、ウエハの表面に亘ってZFE効果を除去するために十分高値であるビーム電流を提供する。特に、ZFEを検知し、磁気イオンビームのビームの中性化を最適にするために電界が増加的に導入される方法を反復的に調整して、該イオンビームのZFE効果を減少させるためにビーム電流が計測される。
【0046】
502において、まず、走査システムがオフの間に上記イオンビームが調整され、所望の動作環境が作られる。このプロセスの間、上記イオン注入システムのビームライン内に真空をかける。高速真空ポンプは、上記ビームラインおよびプロセスチャンバに真空をかけ、微量のガスのみが残存する状態になるまで極度の低圧(<10−6 Torr等)にする。しかし、このビーム/注入されたガスの相互作用によるイオンビームの中性化の程度は、磁界の存在下でビームの中性化を支持するのに不十分でありうる。
【0047】
504において、上記イオンビームが走査経路に亘って走査される。上記走査経路は、2つの磁極(電磁コイル等)を備える磁気走査システムによって形成される変動磁場の力によって移動される時に、上記イオンビーム(ペンシルビーム等)が横断する経路であって、該イオンビームがリボンビームとなる。一実施形態では、上記走査経路が、目標とするワークピースの幅に亘って伸びてもよい。上記イオンビームは、上記磁界の時間依存性に左右される走査速度で上記走査経路に亘って走査されてもよい(例えば、上記磁界が変化すると、上記走査経路上のイオンビームの位置が変化する)。
【0048】
506において、ビーム電流および/または密度が計測される。その後、上記リボンビームのビーム電流が走査経路に亘って計測される。一実施形態では、ファラデーカップを用いて上記ビーム電流を計測してもよい。ファラデーカップは、例えば上記イオンビームからの荷電粒子を捕獲するためにワークピースに近接して設置される伝導性のカップである。上記イオンビームからの粒子が上記伝導性のカップに衝突した時、上記カップはわずかな正味電荷を捕捉する。その後、上記カップは周期的に放電して、衝突イオンの数と同じ数のわずかな電荷を、各周期ごとに連結した回路に与える。上記電荷を計測することで、上記イオンビームのビーム電流が確認される。したがって、ファラデーカップは、時間関数として上記ビーム電流を提供する。
【0049】
その他の一実施形態として、上記ビーム電流を、上記リボンビームの幅に亘って上記ビーム電流を計測するよう構成された1つ以上のプロファイラーを用いて計測するように構成することができる。上記プロファイラーは、プロファイラー経路(ワークピースの幅に亘る等)を連続的に横断してもよく、それによって走査されたイオンビームの分布が計測される。一実施形態として、プロファイラーが移動式ファラデーカップを備えてもよい。
【0050】
508において、ゼロフィールド(ゼロ磁場)異常(つまりゼロフィールド効果(ZFE))が特定される。ZFEは、磁界がゼロである地点における計測されたビーム電流の局所的な増加または減少として検知されてもよい。上記増加または減少は、上記計測されたビーム電流が、ある閾値よりも大きいまたは小さくなる変化を含むものであってもよい。つまり、ZFEは、上記磁界がゼロである地点における上記計測されたビーム電流の変化(上記計測されたビーム電流における上昇または下降等)を示す性質をもつ。
【0051】
510において、ZFEが検知された場合、該検知に応じて電界の振幅が調整される。この調整は、複数の走査位置における上記ビーム電流と密度を比較すること、複数の走査位置で計測されたこれらのビーム間の差を最小化するために電界を調整することを含んでもよい。処理502〜510は、電界における増加的な変化によって上記ビーム電流を調整するよう反復的に実施されてもよい。それぞれの反復における電界振幅の変化は小さいため、上記ビーム電流の増減が段階的なものであることが理解されるであろう。電界の各調整後、上記ビーム電流を再計測し、ZFEが依然として計測された場合は、満足のいく値が得られるまで上記電界を反復的に再調整してもよい。
【0052】
ZFEが検知されない場合、ZFEの緩和を行う必要がないので、512において、上記システムの上記電界が維持される。したがって、ZFE効果を効率的に最小化するために、電界の状態を維持することが可能である。計測を再度実施して、ZFEが検知された場合は、計測されたZFEに応じて方法500の最初の状態に戻ってもよいということが理解されるであろう。
【0053】
図6は、磁気スキャナにおける電界を最適化するための方法の別の一例である方法600を示している。方法600において、ビーム電流および/または密度が、走査経路に沿った単一地点で計測される。計測されたビーム電流および/または密度に応じで電界を導入し、この単一地点におけるビーム電流および/または密度のある所望の変化を得ることができる。そのような実施形態は、生産段階前に実施されるテストまたはキャリブレーション法として利用してもよいということが理解されるであろう。そのような実施形態では、計測時間を早め、調整の成果を向上させることができる。
【0054】
600において、走査システムがオフの間にイオンビームが調整され、所望の動作環境が形成される。このプロセスの間、イオン注入システムのビームラインに真空状態が形成される。
【0055】
604において、上記イオンビームに磁界が印加され、単一地点で上記イオンビームが保持される。上記磁界の力によって、上記イオンビームを中心から外れた位置に移動させてもよい。
【0056】
606において、ビーム電流および/または密度が計測される。上記イオンビームのビーム電流は走査経路に沿った単一地点で計測される。一実施形態において、ファラデーカップ、または上記ビーム電流を計測するよう構成された1つ以上のプロファイラーを用いて上記ビーム電流が計測されてもよい。上記ビーム電流が予め決定された所望の値に到達しない場合、610において電界を調整してもよい。上記ビーム電流が予め決定された所望の値に到達する場合、上記電界の状態をそのまま維持してもよい。
【0057】
処理604〜610は、電界における増加的な変化によって上記ビーム電流を調整するように反復的に実施されてもよい。電界の各調整後、上記ビーム電流を再計測し、ZFEが依然として計測された場合は、満足のいく値が得られるまで上記電界を反復的に再調整してもよい。
【0058】
本発明は、特定の態様および実施について図示および説明されているが、当業者であれば、この明細書および添付の図面を読んで理解すれば、同等の変更または修正に想到できることを理解されたい。特に、上述の部材(アセンブリ、装置、回路、またはシステム等)により実行される様々な機能に関して、それらの部材を説明するために用いられる文言(「手段」を指す文言を含む)は、別段の記載がない限り本発明の模範的な実施で示されている機能を実行する構造と構造的に同等ではなくても、上述した部材の特定の機能を実行する任意の部材(すなわち、機能的に同等な部材)に相当することを意図している。この点に関して、本発明の様々な方法の工程を実行するためのコンピューターが実行可能な命令を記憶したコンピューター読取可能な記録媒体も本発明の範疇に含まれることを理解されたい。加えて、複数の実施のうちの1つのみに関して、本発明の特有の特徴点が開示されているが、そのような特徴点は、いかなる所定または特定の用途に関して所望および優位な他の実施の1つ以上の他の特徴点と組み合わせられてもよい。さらに、発明の詳細な説明および特許請求の範囲のいずれかにおいて、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、またはこれらの変形された文言が用いられている限り、これらの文言は「備えている(comprising)」という文言と同様に、包含的なものとして意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1A】走査されたイオンビームが走査経路を辿ってワークピースにイオンを注入することを示す側面図である。
図1B】イオンビームがワークピースの表面を走査した時に生じるビームの大きさの変化を示す。
図1C】イオンビームがワークピースの表面を走査した時に生じるビームの大きさの変化を示す。
図1D】イオンビームがワークピースの表面を走査した時に生じるビームの大きさの変化を示す。
図1E】イオンビームがワークピースの表面を走査した時に生じるビームの大きさの変化を示す。
図1F】イオンビームがワークピースの表面を走査した時に生じるビームの大きさの変化を示す。
図2A】ZFEの一例であって、走査波形を示す。
図2B】ZFEの一例であって、図2Aの走査波形に対応するビーム電流密度プロットを示す。
図3】いくつかの実施形態に係るイオン注入装置を示している概略ブロック図である。
図4A】ZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
図4B】ZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
図4C】ZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
図4D】ZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
図4E】ZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
図4F】ZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
図4G】ZFE状態を誘発し得る磁気ビーム走査システムを示しており、該システムでは、ビームプロファイラーおよび電気走査素子を用いてZFE状態が制限される。
図5】イオン注入装置のスキャナ領域に印加された電界を反復的に変化させて、走査されたビームの生産性および均一性を向上させる方法のフローチャートを示している。
図6】スキャナの電界を最適化する方法の別の例を示している。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6