特許第6169099号(P6169099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6169099自動車の可動部材用のスピンドルドライブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169099
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】自動車の可動部材用のスピンドルドライブ
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20170713BHJP
   E05F 15/611 20150101ALI20170713BHJP
【FI】
   F16C11/06 R
   E05F15/611
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-547747(P2014-547747)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-507107(P2015-507107A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2012005106
(87)【国際公開番号】WO2013091792
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】202011109569.3
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】Brose Fahrzeugteile GmbH & Co. KG, Bamberg
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ シュトローベル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ コスマラ
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−189323(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008062391(DE,A1)
【文献】 特開昭56−086223(JP,A)
【文献】 実開昭56−066527(JP,U)
【文献】 実開平02−102016(JP,U)
【文献】 国際公開第2005/066510(WO,A1)
【文献】 米国特許第07172237(US,B2)
【文献】 独国特許出願公開第102009004517(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/06
E05F 15/611
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の可動部材(1)用のスピンドルドライブであって、
幾何学的なスピンドル軸線(4)に沿って駆動力を発生させるために、駆動モータ(2)であって、下流に接続されるスピンドル−スピンドルナット伝動機構(3)を有する駆動モータ(2)を備え、
前記駆動力を導出する2つの連結部(5,6)が設けられており、
前記連結部(5,6)の少なくとも一方は、ボールソケット(8)と、該ボールソケット(8)に対応するボール(9)とを有するボールジョイント(7)を有し、前記ボールソケット(8)は、連結片(11)を有するボールソケットハウジング(10)を有する、
自動車の可動部材(1)用のスピンドルドライブにおいて、
前記ボールソケット(8)は、前記ボール(9)との形状結合式の係合のために、前記ボールソケットハウジング(10)内に緩衝シェル(12)を有し、該緩衝シェル(12)内に支承シェル(13)を有し、前記緩衝シェル(12)及び前記支承シェル(13)は、前記ボール(9)を支承しつつ包囲しており、前記駆動力のための力伝達経路は、常に前記緩衝シェル(12)と前記支承シェル(13)とを介して延びる、
ことを特徴とする、自動車の可動部材用のスピンドルドライブ。
【請求項2】
前記支承シェル(13)の材料は、前記緩衝シェル(12)の材料より高い硬さ及び/又は低い摩擦係数を有することを特徴とする、請求項1記載のスピンドルドライブ。
【請求項3】
前記支承シェル(13)は、硬弾性の材料からなり、かつ/又は前記緩衝シェル(12)は、軟弾性の材料からなることを特徴とする、請求項1又は2記載のスピンドルドライブ。
【請求項4】
前記支承シェル(13)には、該支承シェル(13)内に前記ボール(9)を保持するための少なくとも1つの保持部材(14)が配設されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のスピンドルドライブ。
【請求項5】
前記支承シェル(13)には、該支承シェル(13)内に前記ボール(9)を保持するための複数の保持部材(14)が配設されていることを特徴とする、請求項4記載のスピンドルドライブ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの保持部材(14)は、前記ボール(9)が前記少なくとも1つの保持部材(14)を変位させることで前記支承シェル(13)内に挿入可能であるように、保持位置から変位可能であることを特徴とする、請求項4又は5記載のスピンドルドライブ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの保持部材(14)は、該保持部材(14)の変位が前記緩衝シェル(12)の変形を伴うように形成され、かつ配置されていることを特徴とする、請求項4から6までのいずれか1項記載のスピンドルドライブ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの保持部材(14)を保持位置にロックするためのロック装置(18)が設けられていることを特徴とする、請求項4から7までのいずれか1項記載のスピンドルドライブ。
【請求項9】
前記ロック装置(18)は、前記ボールソケット(8)内に挿入可能な、前記保持部材(14)が保持位置から変位するのを阻止するクリップ装置(19)を有することを特徴とする、請求項8記載のスピンドルドライブ。
【請求項10】
前記クリップ装置(19)は、前記緩衝シェル(12)と係合し、前記緩衝シェル(12)を介して前記少なくとも1つの保持部材(14)の変位を阻止することを特徴とする、請求項9記載のスピンドルドライブ。
【請求項11】
前記ボールソケットハウジング(10)は、前記クリップ装置(19)の挿入用の収容部を有し、これにより前記クリップ装置(19)のための受けを提供することを特徴とする、請求項9又は10記載のスピンドルドライブ。
【請求項12】
前記クリップ装置(19)は、ワイヤクリップとして形成されていることを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項記載のスピンドルドライブ。
【請求項13】
前記可動部材(1)は、自動車のリアゲート、リアリッド、エンジンフード、サイドドア、トランクリッド、ポップアップルーフであることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のスピンドルドライブ。
【請求項14】
連結片(11)を有するボールソケットハウジング(10)を備える、駆動力を導出するボールジョイント(7)用のボールソケットであって、
対応するボール(9)との形状結合式の係合のために、前記ボールソケットハウジング(10)内に緩衝シェル(12)が設けられ、該緩衝シェル(12)内に支承シェル(13)が設けられており、前記緩衝シェル(12)及び前記支承シェル(13)は、前記ボール(9)を支承しつつ包囲しており、前記駆動力のための力伝達経路が、常に前記緩衝シェル(12)と前記支承シェル(13)とを介して延びる、
ことを特徴とする、ボールジョイント用のボールソケット。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか1項に記載のスピンドルドライブに用いられる、請求項14記載のボールソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、ボールジョイントを有する自動車の可動部材用のスピンドルドライブに関する。さらに本発明は、請求項14の前提部に記載の、このようなボールジョイントのボールソケットに関する。
【0002】
「可動部材」なる概念は、ここでは広く解釈すべきであり、例えば自動車のリアゲート、リアリッド、エンジンフード、サイドドア、トランクリッド、ポップアップルーフ等を包含するものである。以下では、自動車のリアゲートをモータにより作動させる使用分野についての話が、中心となるが、これに使用分野を限定したものと解釈すべきではない。
【0003】
リアゲート等をモータ駆動して操作するという傾向がある中で、スピンドルドライブを使用する意義は、ますます大きなものとなっている。本発明が出発点としている公知のスピンドルドライブ(独国特許出願公開第102008062391号明細書)は、幾何学的なスピンドル軸線に沿って駆動力を発生させるために、駆動モータであって、下流に接続されるスピンドル−スピンドルナット伝動機構を有する駆動モータを装備している。駆動力を導出するために2つの端部側の連結部が設けられており、連結部は、それぞれ、ボールソケットと、ボールソケットに対応するボールとを有するボールジョイントを形成している。
【0004】
公知のスピンドルドライブの両連結部のボールソケットは、通常、ボールを収容するボールソケットハウジングを装備しており、ボールソケットハウジングは、スピンドルハウジングに取り付けるための連結片と一体的に形成されている。
【0005】
駆動モータであって、下流に接続されるパワートレーンを有する駆動モータが、モータによる作動中、振動を起こすという事実に基づいて、スピンドルドライブが振動技術的にできる限り自動車のリアゲートあるいはボデーから切り離されていることが所望される。この点に、公知のスピンドルドライブにおける最適化の必要性がある。
【0006】
振動技術的な切り離しの公知の端緒は、機械的な連結部のボールジョイントを、ボールソケットハウジングとボールとの間に、弾性的な、ひいては振動を弱めるカップリングが生じるように、緩衝材料を備えて構成することにある(独国特許出願公開第2235874号明細書)。しかし、この公知の装置における欠点は、ボールジョイントの緩衝特性の改善が、常に滑り特性の悪化、ひいては摩耗の増大を伴うという事実である。
【0007】
本発明の課題は、公知のスピンドルドライブを、自動車の可動部材あるいはボデーに対する振動技術的な切り離しが、摩耗挙動を悪化させることなく改善されるように、構成し、かつ改良することである。
【0008】
上述の課題は、請求項1の前提部に記載のスピンドルドライブにおいて、請求項1の特徴部に記載の構成により解決される。
【0009】
重要であるのは、「ボールの支承」という機能と、「振動の切り離し」という機能とを、互いに別個の部品において実現するという基本思想である。詳細に云えば、ボールソケットは、ボールとの形状結合式の係合のために、ボールソケットハウジング内に緩衝シェルを有し、緩衝シェル内に支承シェルを有するようにすることを提案する。その際、駆動力のための力伝達経路は、緩衝シェルと支承シェルとを介して延びるように配置されている。その際、緩衝シェルは、振動技術的な切り離しを提供し、支承シェルは、対応するボールの良好な支承を提供する。
【0010】
提案する解決手段により、それぞれ他方の機能を損ねることなく、所望の振動技術的な切り離しと、ボールの支承とに関するボールソケットの最適化された設計が可能である。
【0011】
請求項2に記載の好ましい態様において、支承シェルの材料は、緩衝シェルの材料より高い硬さ及び/又は低い摩擦係数を有する。これは、とりわけ良好な滑り特性の課題を考慮したものである。
【0012】
請求項3に記載の別の好ましい態様において、支承シェルは、硬弾性のプラスチックからなり、択一的又は付加的に、緩衝シェルは、軟弾性のプラスチックからなる。
【0013】
請求項5乃至12に記載のやはり好ましい態様において、支承シェルには、支承シェル内にボールを保持するための少なくとも1つの保持部材が配設されている。
【0014】
請求項8によれば、保持部材を保持位置にロックするためのロック装置が設けられている。この場合、択一的には、ロック装置に付加的に、ボールソケットハウジング内に緩衝シェル及び支承シェルを固定する機能が付与されている。これは、特にコンパクトな装置を実現する。
【0015】
独立した意義のある請求項14に記載の別の思想に基づき、提案するスピンドルドライブのボールジョイント用のボールソケット自体について特許を請求する。
【0016】
重要であるのは、この別の思想によれば、ボールとの形状結合式の係合のために、ボールソケットハウジング内に緩衝シェルが設けられ、緩衝シェル内に支承シェルが設けられており、駆動力のための力伝達経路が、緩衝シェルと支承シェルとを介して延びることである。その点において、全面的に、提案するスピンドルドライブについての説明を参照されたい。
【0017】
以下、唯一の実施の形態を示す図面を参照しながら、本発明について詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】提案するスピンドルドライブを有する自動車後部の概略側面図である。
図2】a図及びb図は、それぞれ、図1に示したスピンドルドライブの一方の連結部を示す斜視図であって、a図は上から、b図は下から見た図である。
図3】a図は、図2に示した連結部の支承シェルを保持部材とともに示す斜視図であり、b図は、図2に示した連結部の保持部材の斜視図である。
図4図2に示した連結部をIV面で切断した断面図である。
図5図2に示した連結部をV面で切断した断面図である。
【0019】
図示のスピンドルドライブは、自動車のリアゲートとして形成される可動部材1をモータにより作動させるために用いられる。提案するスピンドルドライブのその他の分野での使用も可能であり、その詳細については後述する。
【0020】
スピンドルドライブは、通常のように、幾何学的なスピンドル軸線4に沿って駆動力を発生させるために、駆動モータ2であって、下流に接続されるスピンドル−スピンドルナット伝動機構3を有する駆動モータ2を装備している。
【0021】
スピンドルドライブは、駆動力を導出する2つの連結部5,6を有している。その際、連結部5,6の少なくとも一方は、ボールソケット8と、ボールソケット8に対応するボール9とを有するボールジョイント7を有している。本実施の形態ではかつ好ましくは、連結部5,6の両方が、このような、図2乃至図5に示すボールジョイント7を有している。
【0022】
図2乃至図5を合わせて参酌すると、ボールジョイント7の構造が判る。詳細に云えば、図2は、ボールソケット8が、連結片11を有するボールソケットハウジング10を有することを示している。ボールソケットハウジング10は、主としてボール9を収容するために用いられ、連結片11は、ボールソケットハウジング10とスピンドルドライブの残余の部分との間の結合を提供する。
【0023】
スピンドルドライブの構造は、本件出願人の出願であって、構造に関する内容を全面的に本願の対象として引用する独国特許出願公開第102008062391号明細書に最良に看取可能である。
【0024】
提案する解決手段にとって重要であるのは、ボールソケット8のマルチピース(mehrteilig)に形成される構造、すなわち複数の部分から形成される構造である。このマルチピースに形成される構造は、図4に最良に看取可能である。図4は、ボールソケット8が、ボール9との形状結合(formschluessig:形状による束縛)式の係合のために、ボールソケットハウジング10内に緩衝シェル12を有し、緩衝シェル12内に支承シェル13を有し、駆動力のための力伝達経路が、常に緩衝シェル12と支承シェル13とを介して延びることを示している。図4からは、それぞれ他方の部品の機能を阻害することなく、支承シェル13が何ら問題なく最適な支承を実現するように設計可能である一方、緩衝シェル12が何ら問題なく最適な緩衝を実現するように設計可能であることが看取可能である。
【0025】
「シェル」なる概念は、ここでは広く解釈すべきである。シェルは、ボール9を支承しつつ包囲するのに適したあらゆる形状を含む。相応にシェルは、比較的大きな凹部あるいは空洞等を有するシェル状の形状も含む。
【0026】
ボールソケット8、特に緩衝シェル12及び支承シェル13の目的に合った設計には、提案する解決手段において特に大きな意義がある。
【0027】
ボールソケット8内でのボール9の最適な支承を保証するために、支承シェル13の材料は、好ましくは緩衝シェル12の材料より高い硬さ及び/又は低い摩擦係数を有している。相応に、支承シェル13が、硬弾性(hartelastisch)の材料、特にプラスチックからなると、特に有利であることが判っている。択一的又は付加的には、緩衝シェル12が、軟弾性(weichelastisch)の材料、特にプラスチック又はゴムからなっていてもよい。
【0028】
緩衝シェル12が60〜90、特に70〜80のショアA硬度を有するNBRゴムからなっていると、振動挙動と滑り特性との両面に関する特に有利な構成が生じる。支承シェル13では、ポリアミド、特にウルトラミッドA3WG3のポリアミドの使用が実証されている。
【0029】
しかし、原則的には、支承シェル13が金属材料、特に鋼材料からなり、好ましくは表面処理、特に研磨等されていることも可能である。
【0030】
提案するすべての設計上の変化態様において、ボールソケットハウジング10は、好ましくは剛体として形成されている。ボールソケットハウジング10は、好ましくは金属材料、特に鋼からなっている。
【0031】
ボールソケット8の構造は、その製造面でも重要な役割を果たしている。本実施の形態ではかつ好ましくは、緩衝シェル12は、ボールソケットハウジング10の内部に挿入されており、支承シェル13は、緩衝シェル12の内部に挿入されている。原則的には、挿入の代わりに、プラスチック射出成形法による内張り成形が行われてもよい。一変化態様において、その場合、緩衝シェル12は、ボールソケットハウジング10の内部に射出成形されている。同様に、支承シェル13は、緩衝シェル12の内部に射出成形可能である。プラスチック射出成形法による成形は、特に大量生産時にコストを大きく削減することが可能である。
【0032】
支承シェル13が決まって硬質の材料からなることにより、支承シェル13内へのボール9の組み付けの問題が生じる。特に好ましい態様において、支承シェル13には、支承シェル13内にボール9を保持するための少なくとも1つの保持部材14が配設されている。少なくとも1つの保持部材14の好ましい態様は、図3及び図4を合わせて参酌すると明らかである。本態様において、複数の、本実施の形態ではかつ好ましくは4つの保持部材14が設けられている。これらの保持部材14は、ボール9の周囲にわたって均等に分配配置されている。これにより、ボール9の周囲にわたって均等な保持力が生じる。原則的には、ボール9を取り巻く唯一の、特に環状の保持部材も可能である。
【0033】
以下では、常に4つの保持部材14について説明する。これに関するすべての説明は、4つ未満の保持部材14を有するアッセンブリについても相応に当てはまる。
【0034】
ボール9の簡単な組み付けの観点で、保持部材14は、それぞれ、ボール9が組み付けの際に保持部材14を変位させることで支承シェル13内に挿入可能であるように、保持位置から変位可能である。保持部材14の変位運動は、図3bに符号「15」で略示してある。
【0035】
図3には、保持部材14がそれぞれヒンジ状に形成されていることが看取可能である。保持部材14は、それぞれ1つの、支承シェル13内で軸支されるヒンジ軸16を有している。このために、ヒンジ軸16には、それぞれ対応する支承孔16aが支承シェル13に設けられている。軸支されるヒンジ軸16を備えてヒンジを実現する代わりに、原則的には、好ましくは支承シェル13から一体的に形成されているフィルムヒンジの使用も可能である。
【0036】
図4は、それぞれの保持部材14の変位が緩衝シェル12の特に弾性変形を伴うように、保持部材14がそれぞれ形成され、かつ配置されていることを示している。それどころか、図示の、その点において好ましい実施の形態では、少なくとも1つの保持部材14が、フック状に緩衝シェル12に係合し、これにより支承シェル13がボール9とともに引き抜かれないようになっている。このために保持部材14は、それぞれ相応のフック17を有している。
【0037】
支承シェル13内に挿入されたボール9の引き抜きを防止することができるように、好ましくは保持部材14をそれぞれの保持位置にロックするためのロック装置18が設けられている。図示の、その点において好ましい実施の形態において、ロック装置18は、主に、図5で見て左側、右側及び上側に示した保持部材14に作用し、下側の保持部材14には作用しない。しかし、原則的には、ロック装置18がすべての保持部材14に作用するようになっていてもよい。
【0038】
特にコンパクトな構造の観点で、本実施の形態ではかつ好ましくは、ロック装置18により、緩衝シェル12及び支承シェル13が、ボールソケットハウジング10内に固定可能である。この固定が具体的に如何になされるかは、以下の説明から明らかである。
【0039】
図4及び図5を合わせて参酌すると、ロック装置18が、ボールソケット8内、本実施の形態ではボールソケットハウジング10内に挿入可能な、対応する保持部材14がそれぞれの保持位置から変位するのを阻止するクリップ装置19あるいはクランプ装置を有することが判る。
【0040】
クリップ装置19を用いた保持部材14の変位阻止は、原則的には、クリップ装置19と保持部材14との間の直接的な係合により実施されてもよい。しかし、本実施の形態ではかつ好ましくは、クリップ装置19が、緩衝シェル12に係合し、緩衝シェル12を介して保持部材14の変位を阻止するようになっている。
【0041】
緩衝シェル12を介した保持部材14の間接的な変位阻止は、緩衝シェル12がクリップ装置19によりボールソケットハウジング10内に保持可能であるという付加的な利点を有している。このために、緩衝シェル12は、図示の、その点において好ましい実施の形態において、クリップ装置19が係合する特に環状の溝12aを有している。
【0042】
図4及び図5をまとめて参酌すると、ボールソケットハウジング10が、クリップ装置19の挿入用の収容部、本実施の形態では開口10aを有し、これによりクリップ装置19のための受けが提供されることが判る。
【0043】
クリップ装置19は、好ましくは、相応にボールソケットハウジング10の開口10a内に挿入可能なワイヤクリップ(Drahtklammer)として形成されている。特に好ましい態様において、ワイヤクリップ19は、略U字形に形成されている。U字形のワイヤクリップ19は、相応に両自由端でボールソケットハウジング10の開口10a内に挿入される。
【0044】
提案するスピンドルドライブは、自動車の考え得るすべての可動部材1のために使用可能である。可動部材の例として、自動車の上述のリアゲート、リアリッド、エンジンフード、サイドドア、トランクリッド、ポップアップルーフ等が挙げられる。
【0045】
やはり独立した意義のある別の思想に基づき、駆動力を導出するための、連結片11を有するボールソケットハウジング10を備える上述のボールジョイント7用のボールソケット8に対する特許を請求する。
【0046】
この別の思想において重要であるのは、対応するボールとの形状結合式の係合のために、ボールソケットハウジング10内に緩衝シェル12が設けられ、緩衝シェル12内に支承シェル13が設けられており、駆動力のための力伝達経路が、緩衝シェル12と支承シェル13とを介して延びることである。提案するスピンドルドライブについてのすべての説明を、それがボールソケット8を説明するのに適したものであれば、参照すべきものとする。
【0047】
以下に本願発明の構成を示す。
[1]
自動車の可動部材(1)用のスピンドルドライブであって、
幾何学的なスピンドル軸線(4)に沿って駆動力を発生させるために、駆動モータ(2)であって、下流に接続されるスピンドル−スピンドルナット伝動機構(3)を有する駆動モータ(2)を備え、
前記駆動力を導出する2つの連結部(5,6)が設けられており、
前記連結部(5,6)の少なくとも一方は、ボールソケット(8)と、該ボールソケット(8)に対応するボール(9)とを有するボールジョイント(7)を有し、前記ボールソケット(8)は、連結片(11)を有するボールソケットハウジング(10)を有する、
自動車の可動部材(1)用のスピンドルドライブにおいて、
前記ボールソケット(8)は、前記ボール(9)との形状結合式の係合のために、前記ボールソケットハウジング(10)内に緩衝シェル(12)を有し、該緩衝シェル(12)内に支承シェル(13)を有し、前記駆動力のための力伝達経路は、前記緩衝シェル(12)と前記支承シェル(13)とを介して延びる、
ことを特徴とする、自動車の可動部材用のスピンドルドライブ。
[2]
前記支承シェル(13)の材料は、前記緩衝シェル(12)の材料より高い硬さ及び/又は低い摩擦係数を有することを特徴とする、[1]記載のスピンドルドライブ。
[3]
前記支承シェル(13)は、硬弾性の材料、特にプラスチックからなり、かつ/又は前記緩衝シェル(12)は、軟弾性の材料、特にプラスチック又はゴムからなることを特徴とする、[1]又は[2]記載のスピンドルドライブ。
[4]
前記緩衝シェル(12)は、前記ボールソケットハウジング(10)の内部に挿入されているか、又は前記ボールソケットハウジング(10)の内部にプラスチック射出成形法で成形されており、かつ/又は前記支承シェル(13)は、前記緩衝シェル(12)の内部に挿入されているか、又は前記緩衝シェル(12)の内部にプラスチック射出成形法で成形されていることを特徴とする、[1]から[3]までのいずれか1つに記載のスピンドルドライブ。
[5]
前記支承シェル(13)には、該支承シェル(13)内に前記ボール(9)を保持するための少なくとも1つの保持部材(14)が配設されており、好ましくは、複数の、特に4つの前記保持部材(14)が設けられており、該保持部材(14)は、特に前記ボール(9)の周囲にわたって均等に分配配置されていることを特徴とする、[1]から[4]までのいずれか1つに記載のスピンドルドライブ。
[6]
前記少なくとも1つの保持部材(14)は、前記ボール(9)が前記少なくとも1つの保持部材(14)を変位させることで前記支承シェル(13)内に挿入可能であるように、保持位置から変位可能であり、好ましくは、前記少なくとも1つの保持部材(14)は、ヒンジ状に形成されており、さらに好ましくは、前記少なくとも1つの保持部材(14)は、前記支承シェル(13)内で軸支されるヒンジ軸(16)を有するか、又は前記少なくとも1つの保持部材(14)は、前記支承シェル(13)から一体的に形成されているフィルムヒンジとして形成されていることを特徴とする、[6]記載のスピンドルドライブ。
[7]
前記少なくとも1つの保持部材(14)は、該保持部材(14)の変位が前記緩衝シェル(12)の特に弾性変形を伴うように形成され、かつ配置されており、好ましくは、前記少なくとも1つの保持部材(14)は、フック状に前記緩衝シェル(12)に係合し、これにより前記支承シェル(13)が前記ボール(9)とともに引き抜かれないようになっていることを特徴とする、[5]又は[6]記載のスピンドルドライブ。
[8]
前記少なくとも1つの保持部材(14)を保持位置にロックするためのロック装置(18)が設けられており、好ましくは、該ロック装置(18)により前記緩衝シェル(12)及び/又は前記支承シェル(13)は、前記ボールソケットハウジング(10)内に固定可能であることを特徴とする、[5]から[7]までのいずれか1つに記載のスピンドルドライブ。
[9]
前記ロック装置(18)は、前記ボールソケット(8)内、特に前記ボールソケットハウジング(10)内に挿入可能な、前記保持部材(14)が保持位置から変位するのを阻止するクリップ装置(19)を有することを特徴とする、[8]記載のスピンドルドライブ。
[10]
前記クリップ装置(19)は、前記緩衝シェル(12)と係合し、前記緩衝シェル(12)を介して前記少なくとも1つの保持部材(14)の変位を阻止し、好ましくは、前記クリップ装置(19)は、前記緩衝シェル(12)を前記ボールソケットハウジング(10)内に保持することを特徴とする、[9]記載のスピンドルドライブ。
[11]
前記ボールソケットハウジング(10)は、前記クリップ装置(19)の挿入用の収容部、特に少なくとも1つの開口(10a)を有し、これにより前記クリップ装置(19)のための受けを提供することを特徴とする、[9]又は[10]記載のスピンドルドライブ。
[12]
前記クリップ装置(19)は、ワイヤクリップとして形成されており、好ましくは、前記ワイヤクリップ(19)は、略U字形に形成されており、その両自由端で前記ボールソケットハウジング(10)の対応する開口内に挿入可能であることを特徴とする、[9]から[11]までのいずれか1つに記載のスピンドルドライブ。
[13]
前記可動部材(1)は、自動車のリアゲート、リアリッド、エンジンフード、サイドドア、トランクリッド、ポップアップルーフ等であることを特徴とする、[1]から[12]までのいずれか1つに記載のスピンドルドライブ。
[14]
連結片(11)を有するボールソケットハウジング(10)を備える、駆動力を導出するボールジョイント(7)用のボールソケットであって、
対応するボール(9)との形状結合式の係合のために、前記ボールソケットハウジング(10)内に緩衝シェル(12)が設けられ、該緩衝シェル(12)内に支承シェル(13)が設けられており、前記駆動力のための力伝達経路が、前記緩衝シェル(12)と前記支承シェル(13)とを介して延びる、
ことを特徴とする、ボールジョイント用のボールソケット。
[15]
[1]から[13]までのいずれか1つ又は複数ものの特徴部に記載の構成を有する、[14]記載のボールソケット。
図1
図2a)】
図2b)】
図3a)】
図3b)】
図4
図5