【実施例】
【0034】
1.発芽
湿らせた木材セルロース5kgを一連の適したスチールタンク中に分布させる;この上に、次いで、予め水で刺激された小麦種子2.4kgを分布させる;高さが5〜15cmの実生が得られるまで、暗闇にて数日間(4〜10日)空調管理されたチャンバー内において、その種子を発芽させる。生長の間、その支持体は、十分な量の水を加えることにより毎日湿らされる。
【0035】
チャンバーの温度を5〜20℃の範囲内に維持する;そして、相対湿度は≧60%である。
【0036】
2.加熱
タンクの内容物を、密閉された適切な容器に置いて、次に1気圧にて1時間オートクレーブ処理する(約121℃)。
【0037】
3.解離及び抽出
次いで、その材料を適切な容量のあるスチール容器中に移し、10%v/v硫酸120ml及び10%v/v塩酸60mlを含有する精製水100lを加える。解離は1〜72時間進めることができる。次いで、その水相を300気圧の圧力下で抽出し、使い尽くされた固相を除去する。
【0038】
このようにして得られる液体(「第1プレス」と定義される)に、10%v/v硫酸120ml及び10%v/v塩酸60mlを補充し、更に同等数の別のタンクの内容物と混合する。次いで、「第1プレス」と記載される手順を繰り返し、それ故に「第2プレス」を得る。
【0039】
同じ操作を再度繰り返し、それ故に「第3プレス」及び「第4プレス」を得る。
【0040】
抽出を得るために植物材料と接触させて置いておくと、その液相が精力的に混ざり、次いで冷所(5〜9℃)にて約24〜72時間置かれる。
【0041】
最終液体もまた冷所(5〜9℃)にて約24〜72時間置かれてもよい。
【0042】
4.ろ過及び滅菌
第4プレスからの液体を通常の方法によりろ過する;次に、1気圧1時間と等しいサイクルを適用して、それを適切な容器中でオートクレーブ処理する。
【0043】
5.限外ろ過
カットオフが3kダルトンであるカートリッジを備える適切な限外ろ過器具を用いて、先に得た液体を、該器具が認める最大まで限外ろ過する;保持された液体に水を加え、限外ろ過を2〜3回繰り返し、溶出した相中に含まれる低分子量を処分する。
【0044】
次いで、同じ方法を用いるが上記カートリッジをカットオフが30kダルトンのものに置き換えて、3,000ダルトンを超える分子量を含有する残留物を更に限外ろ過する:しかしながら、この場合、保持された残留物は、30,000ダルトンより大きな分子量を示しており、処分される一方、溶出した相には、分子量が3,000〜30,000ダルトンの範囲内にある活性画分が含まれる。
【0045】
次いで、活性画分を含有する溶液をそのまま又は適切な支持体上で凍結乾燥させる(又は干上がらせる);又はそれを滅菌する(実際は、保存剤、例えば2%w/wフェノキシエタノールを加える)。
【0046】
A.活性画分に関する化学データ
1.画分のクロマトグラフ分析
HPAE(高圧陰イオン交換)クロマトグラフシステムを選択し、特には炭水化物分析に使用されるPAD検出器(パルスアンペロメトリック検出器)と連結させた。
【0047】
上記クロマトグラフシステムは、以下の特徴を有する:
・バイナリ勾配を有する線形溶出のポンプシステム
溶離液1:0.5MのNaOH
溶離液2:0.5MのNaOH中における1Mの酢酸ナトリウム
【0048】
その勾配は、以下に示す線形プログラムによって課せられる(1.0ml/minに等しい一定流量)。ここで、%2は、ポンプ2に関連する溶離液の割合を全混合物に対して示す:
【0049】
【表1】
【0050】
・クロマトグラフィーカラム
Carbopac PA1 Guard プレカラム(10〜32)又は同等物付きCarbopac PA1(4×250mm)であり、35℃にて維持される。
・金電極を取り付けられたPAD検出器であり、以下に示す操作条件下にある:
【0051】
【表2】
【0052】
*標準溶液の調製
脱イオン水100ml中における濃度が4〜12mgの範囲内にある一連の活性画分溶液を、参照基準として理解される、純粋な活性画分の濃縮溶液に基づいて調製する;又は参照基準に対して較正させた作業標準を用いる。
【0053】
*手順
ブランクとして100μlを注入して、溶離液システムの勾配におけるジャンプによる数ピークを除き、関連クロマトグラムが平面的であることを確認する。
【0054】
次いで、テスト溶液のそれぞれを100μl注入する。
【0055】
精製した活性画分のサンプルのクロマトグラムは、Rtが約44分の単一ピークを有しており、正確に活性画分に対応する(
図1参照。「CP画分」と標識されたサンプル)。
【0056】
精製した又は部分的に精製した抽出物のサンプルのクロマトグラムは、一連のピークを持つ特徴的なコースを示しており、その中でも、Rtが約44分のピークは活性画分に関するものである。
【0057】
2.加水分解を受けた画分のクロマトグラフ分析
このコントロール検査は、試験画分の多糖構造を構成する個々の単糖の性質を確認するために行われる。
【0058】
加水分解したサンプルに対して、HPA(高性能イオン交換)クロマトグラフィーを用いる。
【0059】
器具の種類は、無処置の、即ち加水分解していない、画分を調べるために上述したものと同等である。
【0060】
手順
上記画分に0.35%(v/v)HClを加え、100°にて20時間加水分解させることにより、活性画分濃度が5〜75mg/100mlの範囲内にあるサンプルに対して、加水分解を行う。
【0061】
HPA分析条件は次の通りである:
Carbopack PA1,4×250mmカラム
定組成溶離液 0.017N NaOH
一定流量 1ml/min
PED検出
注入量:水で1〜100に希釈された、加水分解サンプルの溶液75μl
【0062】
より一般的な単糖を標準として用いて同等の分析を行う。
【0063】
調査中のサンプルには、多量のグルコースが支配的に存在していることが証明されたが、ここで、他のピーク(他の単糖又は類似物:マンノース、ガラクトース、グルコサミン、ペントース等に関するもの)は、見られないか又は微量にだけしか存在していない。
【0064】
加水分解の前に行われる同一の分析は、どんな単糖も存在していないことが類似して得られ、画分が多糖構造からなることを明らかにする。
【0065】
B.画分の生物学的活性
本発明に従う画分は、あらゆるタイプの創傷及び/又は潰瘍について、動物由来の成長因子と同様な、インビボでの顕著な再上皮形成及び治療的活性を持つことが分かった。それ故に、それは、創傷及び潰瘍を治療するための医薬品製造に使用できる。
【0066】
また、それは、インビトロで、線維芽細胞における細胞増殖とODC活性のかなりの活性化を示す。
【0067】
また、成長因子に特有であるイノシトールリン脂質加水分解機構の活性化も実証された。
【0068】
治療活性は、以下において、様々な薬理学的研究によって説明される。
【0069】
1.線維芽細胞の細胞増殖の刺激テスト
線維芽細胞は、組織修復機構において基本的な役割を果たす細胞である。それ故に、上記テストは、本産物の治療的効果がこれら生物の細胞増殖刺激機構の結果として観察されるかどうかを確認するために行われる。
【0070】
手順
3T3マウス線維芽細胞の培養物を、10%v/v仔ウシ血清(CS)、ペニシリン(10U/ml)が補充されたDMV培地に置く。これら培養物を、25mlFalconボトル中、5%CO2を含有する湿潤雰囲気において37℃にて培養し、4〜6日毎に継代する。それ故に、集密的培養物をPBS3mlで洗浄し、0.25%のトリプシンを用いて37℃にてトリプシン処理する。そのトリプシンを不活性化させるため、DME2mlを加え、遠心分離後に得られる細胞ペレットを、播種に適している密度に達するまで、新鮮な培地で希釈する。
【0071】
低濃度のCSを含有する培地に静止状態で置いておかれた線維芽細胞に対して口蓋の刺激効果をテストする。5%CSが補充されたDME中のプレートにつき約2000〜4000細胞の密度にて、細胞を播種する。その培地を18時間後に新しくし、0.6%CSを含有する新鮮な培地と交換し、細胞を放置して、次の各活性テストの前に更に48時間成長させる。問題になっているテストについては、本産物(水中で濃度20mg/100mlに希釈したもの)を毎日加え、成長期間を通して2〜20%v/vの間で濃度を増大させる。
【0072】
5日目が終わり、培養物をトリプシン処理により細胞数を刺激し、その細胞をコールターカウンタで数える。
【0073】
結果
示された希釈度での本産物の添加は、細胞増殖の顕著で用量依存的な刺激を生じさせる。その効果は、本産物(先に示されたように希釈したもの)の5%の割合で有意なものになり始め、10〜20%で最大であり、濃度等価性のためのCSで示されたものよりわずかに低い量であるが、最高点ではコントロールと比べて少なくとも4倍大きい。
【0074】
2.ODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)活性化テスト
オルニチンデカルボキシラーゼは、スペルミデン−ポリアミンの合成における重要な酵素であり、オリニチンアミノ酸のプトレシンへの転換を触媒する。これらポリアミンは、細胞増殖の過程を制御する上で補助的にかかわる。上記テストは、作られた線維芽細胞の成長を刺激する作用がODC活性の増加と相関するかどうかを確認することによって行われる。
【0075】
手順
ODCの活性は、0.6%CS(仔ウシ血清)を含有する培地で成長した3T3細胞においてテストされ、線維芽細胞成長刺激テストにおいて上述したように用意される。
【0076】
ODC活性は、1%から10%v/vに量を増加させる際に本産物(水中で希釈され、濃度20mg/100ml)を添加して、6時間後にRussell[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 60 1420(1968)]に記載される方法によって測定される。
【0077】
結果
上記濃度で且つ上記テストされた条件下で、本産物は−添加の6時間後に及び用量依存的に−ODCの顕著な刺激を示し、コントロールより約4倍大きく、濃度等価性のためのCSと同程度である。
【0078】
3.イノシトール−リン脂質加水分解の刺激テスト
ある物質が活性化及び細胞増殖に関与する過程を活性化させることが可能である主要な生化学的機構の一つは膜イソシトールリン脂質の加水分解の特異的刺激にあり、それは、順に、第2メッセンジャー、イノシトール三リン酸(InsP3)及びジアシルグリセロールの増加を生じることが文書で広く証明されている。この機構は、とりわけ、シグナル伝達の他のシステムと、例えば、インスリン及びインスリン様の因子の、EGF(上皮増殖因子)の作用に関与するチロシンキナーゼの活性化と密接に関連がある。
【0079】
それ故に、3T3細胞におけるイノシトールリン酸の蓄積(ホスホイノシチド加水分解の特有の指標である)に関する本産物の効果を、ベースライン条件下及び、線維芽細胞におけるリン脂質の代謝の活性化因子であることが知られている、CS血清による刺激後の両方で、評価することは、かなり有利である。
【0080】
手順
イノシトールリン脂質の加水分解は、0.6%CS(仔ウシ血清)を含有する培地で成長した3T3細胞においてテストされ、線維芽細胞成長刺激テストにおいて上述したように用意される。
【0081】
静止状態に到達した時点で、細胞をHam F−10培地(低濃度イノシトール)で洗浄し、0.6%CSを加えて24時間、2−[3H]ミオイノシトール0.6μmolを加えて24時間37℃にてインキュベートして、膜イノシトールリン脂質を標識する。このインキュベートの終わりに、10mmolのLiCl及び0.1%BSAを含有するKrebs−Henseleit緩衝液で細胞を洗浄する。次いで、10%CSが有りの場合と無しの場合で、本産物(濃度が4mg/100mlの水溶液)の量を0から20%(v/v)に増加させて、細胞を24時間インキュベートする。
【0082】
次いで、イノシトールリン酸を以下の技術を用いて測定する:インキュベーション培地を吸引除去し、細胞を1/1/1(v/v)のクロロホルム/メタノール/水で抽出し、遠心分離を受け、水相を取り、ギ酸塩形態で1mlのDowex−1カラム上に装填し、カラムを水24mlで洗浄して、組み込まれていない標識付きイノシトールを除去する;次いで、0.2mギ酸アンモニウム及び0.1Mギ酸により洗浄してイノシトールリン酸を溶出する。次いで、シンチレーション分光により放射活性を決定する。
【0083】
結果
上記濃度で且つ上記テストされた条件下で、本産物は、イノシトールリン脂質の加水分解の顕著で且つ用量依存的な刺激を示し、コントロールより約4倍大きく、CS濃度等価物と同程度である。注目すべきは、本産物とCSの同時存在が、CS単独(及び本産物単独)よりも大きな活性化に導くことであり、2つの成分の間に有利な相乗効果があることが示唆される。
【0084】
4.実験的創傷に関するインビボでの治療テスト
インビボでの治療テストが、動物に対して局所塗布により行われ、創傷の治療における本産物の有効性を実証する。
【0085】
手順
上記テストは、220〜250gの範囲の重さがあるウィスター系雄ラットに対して行われる。テスト前の1週間、動物は、温度、湿度及び明るさが制御された条件に置かれる。なお、餌及び水には自由にアクセスできる。動物は、それぞれが10匹の動物を含む同種の実験的グループに細分類される;一方のグループは、コントロールとして使用され、プラセボにより処置され、他方のグループは、本産物で処置される。
【0086】
テストの初日の朝に、すべての動物は、外科的処置を受け、以下の方法で得られる標準創傷を作る:軽い麻酔(10%エチルウレタン、投与量10ml/kg)を受け、そのようにした各動物の腰部領域を正確に剪毛し、消毒後、皮膚を直径2.5cmの金属ディスクの刃で、局所処置の場合には8.5で、カットし、次いで、皮膚及び皮下組織を曲がった鉗子を用いて除去する。実質的に同一の創傷を全ての動物において得る。
【0087】
各処置日の後に、創傷を適切に覆い、個別のケージに動物を入れておく。
【0088】
創傷の程度は、プラニメーター(透明な紙のシート上で創傷をトレースする)を用いて、9日間(局所処置の場合は5日間)毎日測定される。
【0089】
局所塗布を用いる毎日の処置
コントロールグループの動物の創傷は、生理溶液(0.9%NaCl)からなるプラセボが含浸した無菌ガーゼで処置される。
他方のグループの動物の創傷は、水中に溶解した濃度20mg/100mlである本産物が含浸した無菌ガーゼで処置される。
【0090】
結果
本産物で処置された動物は、修復過程の加速が観察され、コントロールグループと比較して、創傷領域において顕著な減少が示され、処置の終わりで平均約20〜30%の減少である。
【0091】
医薬品及び/又は化粧品の調製
本発明の主題である活性画分は、薬学的及び美容的活性のある製品を調製するために使用されてもよい。
【0092】
その用量は、病変及び処置されるべき組織の種類、伸展の程度、患者のパラメータ(歳、性、体重)並びに医薬又は化粧品組成物の種類により変化し得る。活性画分の用量は、使用される画分の精製の程度に応じても変化し得る。
【0093】
本発明の主題である画分は、当業者に知られる賦形剤及び通常のキャリア物質と混合した前述の画分を有効量含有する組成物の形態で投与されてもよい。
【0094】
本発明の組成物は、既知の方法及び通常の技術を用いて調製されてもよい。
【0095】
最終調製物には他の活性成分が存在してもよい。
【0096】
医薬又及び化粧品組成物の例としては、バイアル、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、溶液、薬剤、坐薬、胚珠、せっけん、フォーム、錠剤、粉末、ミルクがある。