(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169173
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】超音波測定
(51)【国際特許分類】
G01L 11/06 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
G01L11/06
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-520425(P2015-520425)
(86)(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公表番号】特表2015-522163(P2015-522163A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013047810
(87)【国際公開番号】WO2014004620
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月1日
(31)【優先権主張番号】61/664,973
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スミス, オリバー
(72)【発明者】
【氏名】サットン, マイケル アール.
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102009026968(DE,A1)
【文献】
特表2008−507707(JP,A)
【文献】
特開2007−093579(JP,A)
【文献】
特開2004−012306(JP,A)
【文献】
特開昭49−130766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 11/04−11/06
G01N 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含まれる流体の圧力を測定する方法であって、前記流体は、第1の側壁と第2の側壁と端壁とによって少なくとも部分的に画定されているチャンバ内に含まれており、前記第1の側壁、前記第2の側壁、前記端壁の各々は、前記チャンバ内の前記流体にさらされている内側表面を有し、前記端壁は、前記端壁の材料によって前記端壁の内側表面から分離されている外側表面を有し、前記端壁の内側表面は、前記端壁の外側表面に隣接しており、前記方法は、
前記端壁が弛緩状態にあるとき、平坦かつ平行である内側表面および外側表面を有するように前記端壁を提供することであって、前記端壁の内側表面は、前記第1の側壁の内側表面と前記第2の側壁の内側表面との間に延びている、ことと、
前記端壁の外側表面において前記端壁の材料中に超音波を導入し、前記端壁の内側表面まで進行させることと、
前記端壁の材料を通って進行した後の前記超音波を前記端壁の内側表面において検出することと、
前記端壁の外側表面から前記端壁の内側表面までの前記検出された超音波の飛行時間を測定することと、
前記測定された飛行時間の関数として、前記端壁の内側表面における流体圧力の測定値を提供することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記流体圧力の測定値は、前記飛行時間の測定値と流体圧力および飛行時間の事前に較正された測定値との比較によって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超音波は、前記端壁の内側表面から反射し、前記端壁の外側表面において検出される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記端壁の材料は、金属である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記端壁および前記チャンバは、機械または機械構成要素の一部を形成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記機械または機械構成要素は、燃焼チャンバ、軸受、ギアボックス、カム配列のうちの1つまたは複数を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記流体は、潤滑剤、圧縮流体、またはアクチュエータ流体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
使用時に流体を含むチャンバを備える装置であって、前記チャンバは、第1の側壁と第2の側壁と端壁とによって少なくとも部分的に画定されているチャンバ内に含まれており、前記第1の側壁、前記第2の側壁、前記端壁の各々は、前記チャンバ内の前記流体にさらされている内側表面を有し、前記端壁は、前記端壁の材料によって前記端壁の内側表面から分離されている外側表面を有し、前記端壁の内側表面は、前記端壁の外側表面に隣接しており、前記装置は、
前記端壁の外側表面において前記端壁の材料中に超音波を導入するように動作可能な超音波変換器配列であって、前記超音波は、前記端壁の内側表面まで進行し、前記超音波変換器配列は、前記端壁の材料を通って進行した後の前記超音波を前記端壁の内側表面において検出するようにさらに動作可能である、超音波変換器配列と、
前記端壁の外側表面から前記端壁の内側表面までの前記検出された超音波の飛行時間を測定するように動作可能な制御配列であって、前記制御配列は、前記測定された飛行時間の関数として、前記端壁の内側表面における流体圧力の測定値を提供するようにさらに動作可能である、制御配列と
をさらに備え、
前記端壁の内側表面および外側表面は、前記端壁が弛緩状態にあるとき、平坦かつ平行であり、前記端壁の内側表面は、前記第1の側壁の内側表面と前記第2の側壁の内側表面との間に延びている、装置。
【請求項9】
前記制御配列は、前記飛行時間の測定値と流体圧力および飛行時間の事前に較正された測定値との比較によって、前記流体圧力の測定値を提供する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記超音波変換器配列は、超音波が前記端壁の内側表面から反射して前記端壁の外側表面において検出されることをもたらすように動作可能である、請求項8または請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記端壁の材料は、金属である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記端壁および前記チャンバは、機械または機械構成要素の一部を形成する、請求項8〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記機械または機械構成要素は、燃焼チャンバ、軸受、ギアボックス、カム配列のうちの1つまたは複数を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記流体は、潤滑剤、圧縮流体、またはアクチュエータ流体である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
使用時に流体を含むチャンバと共に用いられる装置であって、前記チャンバは、第1の側壁と第2の側壁と端壁とによって少なくとも部分的に画定されており、前記第1の側壁、前記第2の側壁、前記端壁の各々は、前記チャンバ内の前記流体にさらされている内側表面を有し、前記端壁は、前記端壁の材料によって前記端壁の内側表面から分離されている外側表面を有し、前記装置は、
前記端壁の外側表面において前記端壁の材料中に超音波を導入するように動作可能な超音波変換器配列であって、前記超音波は、前記端壁の内側表面まで進行し、前記超音波変換器配列は、前記端壁の材料を通って前記端壁の内側表面まで進行した後の前記超音波を検出するようにさらに動作可能である、超音波変換器配列と、
前記端壁の外側表面から前記端壁の内側表面までの前記検出された超音波の飛行時間を測定するように動作可能な制御配列であって、前記制御配列は、前記測定された飛行時間の関数として、前記端壁の内側表面における流体圧力の測定値を提供するようにさらに動作可能である、制御配列と
を備え、
前記端壁の内側表面および外側表面は、前記端壁が弛緩状態にあるとき、平坦かつ平行であり、前記端壁の内側表面は、前記第1の側壁の内側表面と前記第2の側壁の内側表面との間に延びている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波測定に関し、特に、排他的ではないが、超音波を用いて測定を行うための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、ヒトの聴力の典型的な上限(約20kHz)より高い周波数で、材料物体を通って伝播する機械的擾乱波から成る。超音波は、流体(液体または気体)および固体を含む、多くの異なる材料を通って伝播する。特に、超音波は、典型的には、多くの金属体を通って良好に伝播する。超音波は、物体の表面において、および、異なる材料間の境界面において反射する。超音波が材料を通って伝播するスピードは、材料の物理特性に依存し、概して、音響速度、すなわち、音速として知られる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の例は、含まれる流体の圧力を測定する方法を提供し、流体は、壁によって少なくとも部分的に画定されているチャンバ内に含まれ、壁は、チャンバ内の流体にさらされている内側表面と、壁の材料によって内側表面から分離されている外側表面とを有し、方法は、
導入位置において壁の材料中に超音波を導入することと、
壁の材料を通って検出位置まで進行した後の超音波を検出することと、
導入位置から検出位置までの検出された超音波の飛行時間を測定することと、
測定された飛行時間の関数として、内側表面における流体圧力の測定値を提供することと
を含む。
【0004】
流体圧力の測定値は、飛行時間の測定値と流体圧力および飛行時間の事前に較正された測定値との比較によって提供されてもよい。
【0005】
超音波は、一方の表面において導入され、他方の表面まで進行してもよい。超音波は、上記他方の表面から反射し、上記一方の表面において検出されてもよい。超音波は、外側表面において導入されてもよい。
【0006】
壁の材料は、金属であってもよい。壁およびチャンバは、機械または機械構成要素の一部を形成してもよい。機械または機械構成要素は、燃焼チャンバ、軸受、ギアボックス、およびカム配列のうちの1つまたは複数を備えてもよい。流体は、潤滑剤、圧縮流体、またはアクチュエータ流体であってもよい。
【0007】
本発明の他の例は、使用時に流体を含むチャンバを備える装置を提供し、チャンバは、壁によって少なくとも部分的に画定され、壁は、チャンバ内の流体にさらされている内側表面と、壁の材料によって内側表面から分離されている外側表面とを有し、装置は、
導入位置において壁の材料中に超音波を導入し、壁の材料を通って検出位置まで進行した後の超音波を検出するように動作可能な超音波変換器配列と、
導入位置から検出位置までの検出された超音波の飛行時間を測定し、測定された飛行時間の関数として、内側表面における流体圧力の測定値を提供するように動作可能な制御配列と
をさらに備える。
【0008】
流体圧力の測定値は、飛行時間の測定値と流体圧力および飛行時間の事前に較正された測定値との比較によって提供されてもよい。
【0009】
超音波は、一方の表面において導入され、他方の表面まで進行してもよい。超音波は、上記他方の表面から反射し、上記一方の表面において検出されてもよい。超音波は、外側表面において導入されてもよい。
【0010】
壁の材料は、金属であってもよい。壁およびチャンバは、機械または機械構成要素の一部を形成してもよい。機械または機械構成要素は、燃焼チャンバ、軸受、ギアボックス、およびカム配列のうちの1つまたは複数を備えてもよい。流体は、潤滑剤、圧縮流体、またはアクチュエータ流体であってもよい。
【0011】
本発明の例はまた、使用時に流体を含むチャンバと併用するための装置を提供し、チャンバは、壁によって少なくとも部分的に画定され、壁は、チャンバ内の流体にさらされている内側表面と、壁の材料によって内側表面から分離されている外側表面とを有し、装置は、
導入位置において壁の材料中に超音波を導入し、壁の材料を通って検出位置まで進行した後の超音波を検出するように動作可能な超音波変換器配列と、
導入位置から検出位置までの検出された超音波の飛行時間を測定し、測定された飛行時間の関数として、内側表面における流体圧力の測定値を提供するように動作可能な制御配列と
を備える。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
含まれる流体の圧力を測定する方法であって、前記流体は、壁によって少なくとも部分的に画定されているチャンバ内に含まれており、前記壁は、前記チャンバ内の前記流体にさらされている内側表面と、前記壁の材料によって前記内側表面から分離されている外側表面とを有し、前記方法は、
導入位置において前記壁の材料中に超音波を導入することと、
前記壁の材料を通って検出位置まで進行した後の前記超音波を検出することと、
前記導入位置から前記検出位置までの前記検出された超音波の飛行時間を測定することと、
前記測定された飛行時間の関数として、前記内側表面における流体圧力の測定値を提供することと
を含む、方法。
(項目2)
前記流体圧力の測定値は、前記飛行時間の測定値と流体圧力および飛行時間の事前に較正された測定値との比較によって提供される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記超音波は、一方の表面において導入され、他方の表面まで進行する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記超音波は、前記他方の表面から反射し、前記一方の表面において検出される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記超音波は、前記外側表面において導入される、項目3または4に記載の方法。
(項目6)
前記壁の材料は、金属である、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記壁およびチャンバは、機械または機械構成要素の一部を形成する、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記機械または機械構成要素は、燃焼チャンバ、軸受、ギアボックス、およびカム配列のうちの1つまたは複数を備える、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記流体は、潤滑剤、圧縮流体、またはアクチュエータ流体である、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
使用時に流体を含むチャンバを備える装置であって、前記チャンバは、壁によって少なくとも部分的に画定されており、前記壁は、前記チャンバ内の流体にさらされている内側表面と、前記壁の材料によって前記内側表面から分離されている外側表面とを有し、前記装置は、
導入位置において前記壁の材料中に超音波を導入し、前記壁の材料を通って検出位置まで進行した後の前記超音波を検出するように動作可能な超音波変換器配列と、
前記導入位置から前記検出位置までの前記検出された超音波の飛行時間を測定し、前記測定された飛行時間の関数として、前記内側表面における流体圧力の測定値を提供するように動作可能な制御配列と
をさらに備える、装置。
(項目11)
前記制御配列は、前記飛行時間の測定値と流体圧力および飛行時間の事前に較正された測定値との比較によって、前記流体圧力の測定値を提供する、項目10に記載の装置。
(項目12)
前記超音波変換器配列は、一方の表面において導入するように動作可能であり、他方の表面まで進行させる、項目10または11に記載の装置。
(項目13)
前記超音波変換器配列は、超音波が前記他方の表面から反射して前記一方の表面において検出されることをもたらすように動作可能である、項目12に記載の装置。
(項目14)
前記超音波変換器配列は、前記外側表面において超音波を導入するように動作可能である、項目12または13に記載の装置。
(項目15)
前記壁の材料は、金属である、項目10〜14のいずれか一項に記載の装置。
(項目16)
前記壁およびチャンバは、機械または機械構成要素の一部を形成する、項目10〜15のいずれか一項に記載の装置。
(項目17)
前記機械または機械構成要素は、燃焼チャンバ、軸受、ギアボックス、およびカム配列のうちの1つまたは複数を備える、項目16に記載の装置。
(項目18)
前記流体は、潤滑剤、圧縮流体、またはアクチュエータ流体である、項目10〜17のいずれか一項に記載の装置。
(項目19)
使用時に流体を含むチャンバと併用するための装置であって、前記チャンバは、壁によって少なくとも部分的に画定されており、前記壁は、前記チャンバ内の前記流体にさらされている内側表面と、前記壁の材料によって前記内側表面から分離されている外側表面とを有し、前記装置は、
導入位置において前記壁の材料中に超音波を導入し、前記壁の材料を通って検出位置まで進行した後の前記超音波を検出するように動作可能な超音波変換器配列と、
前記導入位置から前記検出位置までの前記検出された超音波の飛行時間を測定し、前記測定された飛行時間の関数として、前記内側表面における流体圧力の測定値を提供するように動作可能な制御配列と
を備える、装置。
(項目20)
実質的に、添付の図面を参照して本明細書に説明されるような方法。
(項目21)
実質的に、添付の図面を参照して本明細書に説明されるような装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここで、本発明の例が、例のみとして、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】
図1は、材料物体内を伝播する超音波の非常に簡略化された概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に対応し、本発明の一例による測定方法を図示する。
【
図3】
図3は、本発明の例を実証するために使用される実験リグを通した単純断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の実験リグから得られた流体圧力の測定値のプロットである。
【
図5】
図5は、機械の流体膜軸受との使用における、本発明の例を図示する。
【
図6】
図6は、機械の燃焼チャンバとの使用における、本発明の例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(概観)
図1は、チャンバ12内に含まる流体10(対角線ハッチング)を図示する単純略図である。チャンバ12の全体は、
図1に示されない。チャンバは、チャンバ12内の流体10にさらされる内側表面16を有する壁14によって、少なくとも部分的に画定される。壁14はまた、壁の材料20によって内側表面16から分離される外側表面18を有する。
【0014】
超音波のパルスは、22で示される。超音波は、外側表面18上の導入位置Aにおいて、変換器(
図1に図示せず)によって生成され、物体20を通って、内側表面16上の検出位置Bに伝播することを示される。以下の説明は、物体20(壁14の材料)を通る超音波22の飛行時間が、物体20の材料の性質および環境条件に依存することを説明する。特に、導入位置から検出位置までの飛行時間は、流体10によって内側表面16に及ぼされる圧力に依存する。故に、例は、物体20を通る超音波22の飛行時間測定値の関数として、内側表面16における流体圧力の測定値を提供することを実証する。
【0015】
特に、流体圧力測定値は、飛行時間測定値と流体圧力および飛行時間の事前に較正された測定値との比較によって提供されることができる。事前に較正された測定値はまた、温度、または、飛行時間に変化を生じさせる任意の他の影響に対して較正されてもよい。これらの問題のさらなる説明は、
図3に関連して以下に記載される。
【0016】
(例1)
図2の例では、超音波22は、個別の変換器24、26によって、生成および検出される。送信器24および受信器26は両方とも、外側表面18に位置決めされる。送信器24は、物体20中に超音波を導入し、超音波は、物体を横断して内側表面16に伝播し、次いで、検出のために受信器26に逆伝播する前に、内側表面16から反射する。これは、送信器24における導入位置から内側表面16まで横断して受信器26における検出位置に戻るまでの総飛行時間の測定が行われることを可能にする。
【0017】
本例では、物体20は、ステンレス鋼等の金属である。変換器は、外側表面18の領域に固定された10MHz超音波変換器であり、外側表面18は、鏡面仕上げを与えられることにより、少ない雑音超音波が、物体20中に導入されて物体20から検出されることを可能にする。例として、圧電変換器が挙げられる。
【0018】
送信器24および受信器26は、制御配列28と接続され、制御配列28は、特注電子回路、または、適切なインターフェース回路を通して送信器24および受信器26と通信する、好適にプログラムされた汎用コンピュータから成り得る。制御配列28の動作は、
図3を論じた後にさらに説明される。
【0019】
図3は、32において圧力Pにさらされる流体を含む理想化チャンバ30を図示する。チャンバ30は、ステンレス鋼であり得る端壁34を有する。端壁34は、
図3において実線によって示された弛緩形態を有し、端壁34は、圧力Pによって機械的に影響を受ける。圧力下にあるときの端壁34の形態の一例は、
図3における破線によって非常に誇張されて示される。
【0020】
圧力Pの印加の前に、端壁34が弛緩状態にあるとき、内側表面36および外側表面38は両方とも、本例では、平坦かつ平行である。さらなる圧力Pが印加されると、圧力差が、壁34を隔てて生じる。これは、壁34の両表面36、38に変形を生じさせるように図示される。これは、端壁34の材料内に機械的応力を生成する。他の例では、一方の表面36、38が、他方が変形されずに変形し得る。壁34の厚さ(表面36、38の隔たり)は、形状の変化の有無にかかわらず、壁34の材料の圧縮の結果、変化し得る。
【0021】
側壁40も、同様に、変形または圧縮によって機械的に影響を受けるが、これは、便宜上、
図3には図示されない。
【0022】
端壁34は、
図2に図示されるものに対応する送信器24および受信器26を提供される。その結果、
図2および前述の説明を検討することによって、
図3における送信器24は、外側表面38において、壁34の材料中に超音波を導入することができ、この超音波は、次いで、端壁34を通って内側表面36に伝播することができ、次いで、反射して端壁34の物体を通って受信器26まで戻ることができることが分かる。これは、内側表面36からの反射によって、送信器24から受信器26までの総飛行時間の測定が行われることを可能にする。
【0023】
発明者らは、このように測定される飛行時間が、圧力Pが変化するにつれて変化することを見出した。
図4は、圧力Pが制御され得る、
図3の幾何学形状を有する実験リグから測定された結果を示す。
図4に図示されるデータを捕捉する間、一定温度を、チャンバ30のために維持した。水平軸は、時間を表す。飛行時間の測定を、繰り返し行い、
図4のプロット上の水平トレースを生成した。周期的に、リグ内の圧力を、変更した。
図4のトレースの段階的変化から分かるように、そのたびごとに、これは、測定された飛行時間の段階的変化をもたらした。リグ内の圧力は、
図4のプロットの各段に隣接するP
1、P
2等として示される。圧力は、繰り返し可能な態様で、飛行時間を増減するように変化し得、現象が、塑性変形ではなく、弾性変化に基づくことを示すことに留意されたい。
【0024】
ここで、
図2に戻ると、データが収集された実験リグが、あらゆる関連する観点(材料、幾何学形状、温度、および他のパラメータ)において、
図2の装置が使用される環境に対応する場合、
図4に示される実験データは、
図2に図示される配列において行われる測定の較正のために使用されることができることを理解されたい。代替として、較正データは、圧力Pが制御されて既知である間、
図2の配列から較正測定を行うことによって取得されてもよい。
図4に対応する較正データは、42に記憶され、制御配列28によってアクセス可能である。制御配列28は、送信器24に、物体20中に超音波を導入するように命令し、受信器26に、内側表面16から受信されるエコーを聴取するように命令することによって、測定を開始することができる。これは、制御配列28が、物体20を横断して受信器26に戻る飛行時間を測定することを可能にする。測定された飛行時間は、次いで、飛行時間測定値の関数として、内側表面16における流体圧力の測定値を提供するために、制御配列28によって、42における較正データと比較される。較正データ42がまた、温度等の他のパラメータに対して較正される場合、制御配列28が、温度センサ44等の適切なセンサからのさらなる情報を提供されることが必要である。
【0025】
(説明的議論)
図3に戻ると、圧力Pが増加するにつれて、端壁34は、外向きに膨張することによって変形し、壁34の材料内に応力を生成することに留意されたい。金属(例えば、ステンレス鋼)等の材料内の応力は、超音波の音速に影響を及ぼすと理解される。したがって、材料内の応力は、内側表面36と外側表面38との間の壁34を横切る超音波の飛行時間の変化を生じさせる要因であると予想される。
図3の状況では、圧力Pによって及ぼされる圧縮力はまた、壁34の材料を圧縮し、したがって、壁34の厚さを低減させるという影響がある。これは、超音波が壁の厚さ(外側表面38と内側表面36との間)を通過する経路長を低減させる。したがって、壁厚の圧縮は、内側表面36と外側表面38との間の壁34を横切る超音波の飛行時間の短縮を生じさせる要因となる。
【0026】
発明者らは、加圧された流体が金属壁によって含まれる多くの実際的な状況では、流体圧力の変化が、これらの材料応力および壁厚という2つの要因に変化をもたらすことを認識する。これらの要因は両方とも、飛行時間に影響を及ぼすと理解される。また、流体圧力が変化すると飛行時間に影響を及ぼす他の要因も存在し得る。特定の状況において生じる変化は、識別、計算、またはモデル化が困難であり得るが、多くの実際的な状況において測定可能である。前述のように行われ、次いで、将来的参照のために記録された較正測定値は、飛行時間の測定可能な変化が、流体圧力を測定するために使用されることを可能にする。故に、
図3に示される幾何学形状は、機械および機械構成要素内で実際に遭遇される多くの幾何学形状よりはるかに単純であり得るが、それでも、発明者らは、特に、較正測定が行われる場合、および、飛行時間に影響を及ぼし得る他の要因(温度等)が一定に保たれまたは較正データ内に組み込まれる場合、前述の原理が、なお適用可能であると考える。
【0027】
(軸受)
残りの図面は、前述の原理が適用され得る実際的な状況の例を図示する。
図5は、第1の軸受構成要素48および第2の軸受構成要素50を有する軸受46の一部を通る断面を図示する。これらはそれぞれ、表面52、54を有し、表面52、54は、使用中に相互に対して移動し、潤滑流体56によって潤滑される。流体56は、使用中に圧力下にある。流体56は、したがって、圧力を第1の軸受構成要素48に印加し、第1の構成要素48が、
図3に関連して前述の態様で影響される結果をもたらす。故に、送信器24および受信器26の使用は、前述の態様で、流体56の圧力を測定するために、超音波22が第1の構成要素48中に導入されることを可能にする。制御配列28および関連付けられた構造は、明確にするために、
図5から省略される。
【0028】
(燃焼チャンバ)
実際的な実装の別の例が、
図6に示される。これは、燃焼チャンバ60内の燃焼ガス58(ハッチングによって示される)を図示する。燃焼ガス58は、矢印62によって示されるように流動してもよい。燃焼ガス58の圧力は、燃焼チャンバ壁64の内側表面16に及ぼされる。したがって、送信器24および受信器26は、再び、チャンバ60内の燃焼ガス58の圧力を測定するために、壁64の外側表面18において使用されることができる。本例では、燃焼チャンバ60内のおそらく高くかつ可変の温度は、較正測定が種々の異なる温度において行われること、および、制御配列28(
図6には図示せず)が適切な温度センサ(図示せず)からのデータを提供されることを望ましいものにする。温度変化のための較正は、チャンバ壁64内の熱伝導速度が圧力変化によって生じる応力伝播速度よりはるかに遅い状況において、より単純に達成されることが予想される。
【0029】
(結論)
発明者らは、典型的には、機械および機械構成要素を製造するために使用される金属内の高周波数および高速の超音波が、機械または機械構成要素が使用されているとき、種々の監視および制御目的のために、圧力測定値がリアルタイムで使用されることを可能にするために十分に正確に、圧力測定が前述の態様で行われることを可能にすることを予想する。
【0030】
多くの変形例および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、前述の装置に行われることができる。金属の物体が、いくつかの異なる例において説明された。金属は、異なる材料の複数の層であってもよい。例えば、軸受は、典型的には、異なる材料の複数の層から構築される。それらは、三金属(例えば、鉄/銅/鉛)であってもよい。本明細書における用語「金属」の使用は、金属合金を包含することが意図される。他の材料も使用されることができる。
【0031】
別個の変換器が、超音波伝送および受信のために説明された。単一の変換器が、代替として、(トランシーバとして)使用され得る。その場合、導入位置および検出位置は、同一となる。
【0032】
前述の本明細書では、特に重要であると考えられる本発明の特徴に注意を引くように試みられたが、本出願人は、特に強調がされているかどうかにかかわらず、前述の本明細書において図面を参照してかつ/または図面に図示される、あらゆる特許可能な特徴または特徴の組み合わせに関して保護を主張することを理解されたい。