(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1及び
図2は、本発明による第1の実施例としての固体光源装置を示す構成図であり、
図1は斜視図、
図2は平面図である。以下、同様に機能する部品には同一の符号を付している。
固体光源装置1は、緑色に対応した複数の固体光源セルを配列した固体光源集合体11と、青色と赤色に対応した複数の固体光源セルを配列した固体光源集合体12と、複数のマルチレンズセルをマトリクス状に配列した2つのマルチレンズブロック21、22とを有する。マルチレンズブロック21、22は直角二等辺三角形の断面を有し、その斜辺同士をダイクロイックフィルタ25を介して接合している。固体光源集合体11と固体光源集合体12は、マルチレンズブロック21、22の2つの側面に対向して配置する。
【0020】
固体光源集合体11は、複数(ここでは4個)の固体光源セル111、112、113、114をマトリクス状(2×2)に配置し、各固体光源セルは緑発光のLEDで構成する(固体光源セル114は図示せず)。エタンデューを小さくするために、各固体光源セルの発光部面積は0.5mm
2以下とする。好ましくは、0.1mm
2以下とすれば照明効率をさらに高めることができる。また、発光部からの発散光束を所望の方向に集光するため、固体光源の近傍には集光のための光学素子(
図2には凸レンズとして表示)を設けている。
【0021】
一方、固体光源集合体12は、複数(4個)の固体光源セル121、122、123、124をマトリクス状(2×2)に配置し、固体光源セル121、124は青色発光のLEDで、固体光源セル122、123は赤色発光のLEDで構成する。これについても、エタンデューを小さくするために、各固体光源セルの発光部面積は0.5mm
2以下(好ましくは、0.1mm
2以下)とする。
【0022】
マルチレンズブロック21は固体光源集合体11に対向し、各固体光源セル111〜114に対向する位置に、マルチレンズセル211〜214をマトリクス状に配置する(213,214は図示せず)。マルチレンズブロック22は固体光源集合体12に対向し、各固体光源セル121〜124に対向する位置に、マルチレンズセル221〜224をマトリクス状に配置する(223,224は図示せず)。マルチレンズブロック22の出射面には、さらにマルチレンズセル225〜228をマトリクス状に配置する。
【0023】
ダイクロイックフィルタ25は、入射する光の波長により選択的に反射又は透過するもので、ここでは緑色波長領域の光が透過し赤色と青色波長領域の光を反射する。このダイクロイックフィルタ25は、それぞれのマルチレンズブロック21,22に設けても良く、片側のマルチレンズブロックに単独で設けてもよい。いずれの場合でも、2つのマルチレンズブロックに挟まれて、その入射面(側面)に斜交して配置される。2つのマルチレンズブロック21,22は、組立精度が向上することや反射面が減るなどのメリットが大きい接合構造としたが、それぞれ分離されていても良い。
【0024】
固体光源集合体11の各固体光源セル111〜114から出射した緑色光束は、マルチレンズブロック21のマルチレンズセル212〜214から入射し、ダイクロイックフィルタ25を透過し、マルチレンズブロック22のマルチレンズセル225〜228から出射する。
固体光源集合体12の各固体光源セル121〜124から出射した赤色/青色光束は、マルチレンズブロック22のマルチレンズセル222〜224から入射し、ダイクロイックフィルタ25を反射し、マルチレンズセル225〜228から出射する。
【0025】
マルチレンズブロック22のマルチレンズセル225〜228から出射された光束は、受光部90に拡大照射される。マルチレンズセル225〜228は、受光部90で所望の矩形形状となるようなアスペクト比で形成される。固体光源集合体11と固体光源集合体12から出射された光束は、ダイクロイックフィルタ25により合成される。例えば、固体光源セル111からの光束は、固体光源セル121からの光束と合成され、合成光束Aとなって受光部90の領域90aに照射される。固体光源セル112からの光束は、固体光源セル122からの光束と合成され、合成光束Bとなって受光部90の領域90bに照射される。同様に、合成光束C,D(図示せず)は受光部90の領域90c、90dに照射される。
【0026】
受光部90では、それぞれの合成光束に対応して領域90a〜90dに個別に拡大像が得られるので、同一受光部90内で明るさや色度を個別に変化させることが可能となる。例えば、固体光源集合体11の発する緑色光と、固体光源集合体12の発する青色/赤色光を、所定の混色比で受光部90で重畳することで、各領域で白色光を得ることができる。またこの混色比を変化させることで、色度図上で3色単独で示した座標範囲の内側に示されたさまざまな色(色温度)を表現することが可能となる。
【0027】
本実施例によれば、固体光源の発光面を0.5mm
2以下とすることでエタンデューを小さく発光効率を向上することが可能となる。さらに複数の発光色を有するLED(固体)光源を組み合わせ光の混合比を変えることで、照射光束の色温度を自在に制御できる。
【0028】
なお、本実施例では、固体光源集合体12は、青色発光の固体光源セルと、赤色発光の固体光源セルを組み合わせて構成したが、全てをマゼンダを発光色とする固体光源セルとしても良い。
【実施例2】
【0029】
図3及び
図4は、本発明による第2の実施例としての固体光源装置を示す構成図であり、
図3は斜視図、
図4は平面図である。前記実施例1との違いは、マルチレンズブロック22と受光部90の間に偏光変換素子30を設け、マルチレンズブロック22からの出射光の偏光方向を揃えた後に受光部90に光束を重畳する構成とした点である。
【0030】
例えば、固体光源集合体11の固体光源セル111から出射した緑色光束は、対向配置されたマルチレンズブロック21のマルチレンズセル211により集光され、対応するマルチレンズブロック22に設けられたマルチレンズセル225から拡大されて出射する。マルチレンズ225から拡大出射した光束は、偏光変換素子30に入射し、偏光方向の揃った光として受光部90に拡大投写される。
【0031】
図16は、偏光変換素子30の構成を示す図である。偏光変換素子30は各マルチレンズセル225〜228から出射した光束A〜Dの偏光状態を揃えるもので、各マルチレンズセル225〜228と1対1で対応させ、複数の偏光変換セル300を並列に並べて構成している。マルチレンズセル225〜228を出射した光束(固体光源の二次光源像)は、対応する偏光変換セル300の入射領域301に入射する。
【0032】
各偏光変換セル300には、偏光分離膜として偏光ビームスプリッタ膜302(以下、PBS膜)及び位相差板303を有する。入射領域301に入射した無偏光状態の光束(P波とS波が混在)に対し、PBS膜302は、P波を透過しS波を反射させることで分離する。P波はPBS膜302を透過し、位相差板303で偏光方向をS波に変換されて出射する。一方、S波はPBS膜302で反射し、略平行に配置された隣のPBS膜302で再び反射してS波のまま出射する。結果として、偏光方向がS波に揃った光束を得ることができる。
【0033】
図17は、一般的な偏光変換素子のPBS面でのP波とS波の透過率を示す図である。P波とS波の透過率(または反射率)は、入射角度と波長に依存する。緑色波長領域のP波の透過率は、入射角度45度に対して±2度ずれるだけで透過率が大きく低下する。一方、青色波長領域のS波の透過率は、入射角度45度に対して±2度変化するだけで同様に大きく変化する。このため本実施例では、PBS膜302を設けた反射面への光線入射角度が所望の範囲となるよう、テレセントリックな光学系を使用している。
【0034】
実施例2では、1つのマルチレンズセルを出射した光束は、偏光変換素子30によりP波とS波とで光路が分離する。よって受光部90においては、マルチレンズセルで拡大した光束の全てが重畳され(合成光束Eで表示)、受光部90の全面に対し均一な明るさの照明光を得ることができる。
その際、固体光源セルに対応して複数のレンズ作用を有するマルチレンズセルをマトリクス状に配置したマルチレンズブロックを複数組み合わせることで、偏光変換素子30の光線通過率を低下させることなく、偏光方向を一定方向に揃えることが可能となる。
【0035】
なお、実施例2においても、緑色を発光する固体光源集合体11と青及び赤色を発光する固体光源集合体12の光を所定の混色比で受光部で重畳することで、白色光を得ることができる。また、この混色比を変化させることで、色度図上で3色単独で示した座標範囲の内側に示されたさまざまな色(色温度)を表現することが可能となることは、言うまでもない。
【実施例3】
【0036】
図5は、本発明による第3の実施例としての固体光源装置を示す平面図である。本実施例は前記実施例2(
図4)の構成において、固体光源セルの出射側に遮光板41,42を追加している。遮光板41,42を設けることで、固体光源セルへの戻り光(迷光)を低減し、固体光源の寿命の確保と迷光による光源光に対する悪影響を軽減するという効果を得ることができる。
【実施例4】
【0037】
図6は、本発明による第4の実施例としての固体光源装置を示す平面図である。本実施例は前記実施例2(
図4)の構成において、各固体光源セル111,112、・・・に対し、集光用の光学素子として凸レンズではなく回折レンズを設けている。回折レンズは、光源の波長領域が狭帯域の場合にはそれぞれ最適設計が可能で、回折ロスを抑えて比較的自由に屈折力を制御できるため、固体光源の指向性を制御するのに適している。
【実施例5】
【0038】
図7は、本発明による第5の実施例としての固体光源装置を示す平面図である。本実施例は前記実施例1(
図2)の構成において、各固体光源セル111,112、・・・を複数の固体光源から構成している。
図7に示した固体光源セルは、それぞれ3×3=9個の固体光源を含む構成としている。これに応じてマルチレンズブロック21,22でも、各個体光源に対向するようにマルチレンズセルを配置している。その結果受光部90では、固体光源数に応じた複数の合成光束が照射される。
【実施例6】
【0039】
図8は、本発明による第6の実施例としての固体光源装置を示す平面図である。本実施例は前記実施例1(
図2)の構成において、3つの固体光源集合体11,12,13を備える。固体光源集合体11は緑色発光の固体光源セル111,112、・・・、固体光源集合体12は赤色発光の固体光源セル121,122、・・・、固体光源集合体13は青色発光の固体光源セル131,132、・・・から構成される。これらの固体光源集合体に対向するよう3つのマルチレンズブロック21,22,23と、出射側のマルチレンズブロック24を設けている。そして4つのマルチレンズブロックの接合面には、2つのダイクロイックフィルタ25,26を設けている。各固体光源集合体11,12,13から出射された3色光は、マルチレンズブロック21,22,23,24で合成されて受光部90に照射される。
【0040】
この時、緑色固体光源集合体11、赤色固体光源集合体12、及び青色固体光源集合体13の発光量を制御し、所定の混色比で受光部90で重畳することで、各領域ごとに所望の白色光を得ることができる。また、混色比を変化させることで、色度図上で3色単独で示した座標範囲の内側に示されたさまざまな色(色温度)を表現することが可能となる。また受光部90では、実施例1と同様に、それぞれの合成光束に対応して各領域に個別に拡大像が得られるので、同一受光部90内で明るさや色度を個別に変化させることができる。
【実施例7】
【0041】
図9は、本発明による第7の実施例としての固体光源装置を示す平面図である。本実施例は前記実施例6(
図8)の構成において、マルチレンズブロック24と受光部90の間に重畳レンズ50を設けている。重畳レンズ50は、マルチレンズブロック24からの出射光を、偏光変換素子30と受光部90に効率良く重ねることができる。よって、映像表示装置などの光源装置として好適である。
【実施例8】
【0042】
図10は、本発明による第8の実施例としての固体光源装置を示す平面図である。本実施例は前記実施例7(
図9)の構成において、マルチレンズブロック24と偏光変換素子30の間に光束変換ミラー55を設け、偏光変換素子30から受光部90までの光路を直交方向に変換している。
【0043】
光束変換ミラー55は、マルチレンズブロック24から出射する光束を集光する作用を有する。そのため光束変換ミラー55の表面形状は、偏光変換素子30の長軸方向(図面の奥行方向)に円筒軸を有する断面が凹面(円筒面)形状としている。この結果、偏光変換素子30の光線通過率が向上するため、光利用効率の高い光源装置とすることができる。
【0044】
さらに、偏光変換素子30と受光部90の間に配置した重畳レンズ50により、受光部90への光線入射角度を制御する。特に受光部90として透過型映像表示素子(液晶素子)を用いる場合には、表示画面周辺においても光線入射角度を小さくすることができ、コントラスト性能が優れた明るい映像を得ることができる。
【0045】
前記実施例1〜8の固体光源装置は、以下に述べる車両用灯具(ヘッドライト)や映像表示装置の光源に適用できる。
【実施例9】
【0046】
図11は、本発明による第9の実施例として固体光源装置を用いた車両用灯具を示す構成図である。車両用灯具2は、固体光源装置1からの光束をリフレクタ70により反射し、所望の配光特性が得られるように構成する。
【0047】
固体光源装置1からの光源光束はリフレクタ70に対し斜め前方から入射し(光軸L1)、リフレクタ70で反射して照射光束として前方へ出射する(光軸L2)。よってリフレクタ70の反射面の形状は、光軸L1,L2に対して対称な球面や非球面形状よりも設計自由度が大きい自由曲面形状を選ぶのが良い。
【0048】
リフレクタ70は、固体光源装置1が発光し車両が走行していない場合、炎天下で温度が100°C近くになる。よって、リフレクタ70の材料は、耐熱性が高い熱硬化性の樹脂を用いるのが良い。あるいは、リフレクタ70の反射面形状の金型からの転写性に優れた熱可塑性の樹脂を用いても良い。
【0049】
従来の車両用灯具では、使用される光源の発光点が単一であるため、配光特性はリフレクタの形状だけに依存し、また反射光(照射光)の色度は単一光源の発光色で決まっていた。これに対して本実施例の車両用灯具では、発光点である固体光源セルが複数存在し、それぞれの固体光源セルとリフレクタ70との相対位置(入射位置)が異なるため、配光特性を制御する自由度が飛躍的に増大する。また、光源色は、緑、赤、青の光の三原色を含む固体光源セルを組み合わせて作るため、所望の配光色分布が得られ、従来技術にない効果を得ることができる。
【0050】
一方、固体光源装置1の出射側に偏光変換素子30を設けることで、出射光の偏光方向を揃え、リフレクタ70の反射面での反射率を高める結果、照射光の強度を向上することができる。
【0051】
図18は、各材料の入射角に対する反射率を示す特性図である。金属反射面の反射率は、偏光方向(S波、P波)によりそれぞれ入射角度依存性がある。
図18で示されるように、材料で言えばアルミニウム(Al)が反射率が高く、偏光方向はP偏光よりもS偏光が反射率が高い。よって、リフレクタ70の反射膜としてAl膜を使用し、また偏光方向をS偏光に揃えることで、車両用灯具2からの反射光束が増大し、電力消費効率の良い車両用灯具が実現できる。
【0052】
また
図18から分かるように、銅(Cu)などの金属やガラス(BSC−7)においても、S偏光に対する反射率が高い。これは、対向車の車体(金属面やフロントガラス)からの反射光が強いことを意味し、法令に準じた光束量においても視認性に優れた照明光を得ることができる。
さらに、車両を運転するドライバーが前述の偏光が通過する偏光サングラスを装着することで、路面のぎらつきや対向車のヘッドライトによる視覚障害を軽減しつつ、自前の灯具(ヘッドライト)により良好な視界が得られるという付帯的な効果も得ることができる。
【実施例10】
【0053】
図12は、本発明による第10の実施例として固体光源装置を用いた車両用灯具を示す構成図である。本実施例の車両用灯具2は、固体光源装置1からの光束を2つのリフレクタ71,72により反射して照射するように構成している。
【0054】
固体光源装置1からの光源光束を、第1リフレクタ71の反射面形状により所望の光束分布を持つ1次反射光束とした後、第2リフレクタ72にて反射させ2次反射光束(照射光束)とする。この構成では反射面を2面使用できるので、実施例9(
図11)に比べて設計自由度が増え、配光特性を細かく制御できさらに良好な特性が得られる。
【0055】
この場合も、第1リフレクタ71からの1次反射光束は第2リフレクタ72に対し斜め前方から入射し(光軸L2)、第2リフレクタ72で反射して照射光束として前方へ出射する(光軸L3)。よって第2リフレクタ72の反射面の形状は、設計自由度が大きい自由曲面形状を選ぶのが良い。また本実施例においては、固体光源装置1を第2リフレクタ72の紙面奥行方向に配置することが可能となるため、車両用灯具2の全体形状設計の自由度が増す。
【実施例11】
【0056】
図13は、本発明による第11の実施例として固体光源装置を用いた車両用灯具を示す構成図である。本実施例の車両用灯具2は、実施例9(
図11)の車両用灯具2において、リフレクタ70の反射面を複数の反射面を含む複合体で形成している。複数の反射面は、固体光源装置1から出射する複数の光束に対応させている。
【0057】
固体光源装置1から出射された複数の光束(図中矢印で示す)は、リフレクタ70の対応する反射面70a〜70dにそれぞれ入射する。または、1つの固体光源セルからの光束を複数の反射面に入射させても良い。反射面70a〜70dで反射した複数の照射光束(光軸La〜Ldで示す)は前方に照射される。これにより、所望の配光特性を持つ照射光を得ることができる。
【0058】
それぞれの反射面70a〜70dからの照射方向(光軸La〜Ld)は一定の方向を向いても良いが、特定の配光特性(光分布)を得るために異なる方向を向かせる場合もある。特に、固体光源装置1に近い位置に設けられた反射面70c,70dでは、固体光源装置1から出射する光束の広がる範囲が狭く単位面積当たりの光量が大きいため、配光特性の大まかな制御がやり易く照射光束の幅を広げるのに適している。さらに、これらの反射光の光軸Lc及びLdを異なる方向に向けることで、所望の配光特性を得ることができる。例えば、車両の外側に位置する反射面70dにより、光軸Ldを車両の外側に向けるような光分布とすれば、車両斜め前方を効率良く照明することができる。
【0059】
一方、固体光源装置1から遠い位置に設けられた反射面70a,70bでは、固体光源装置1から出射する光束の広がる範囲が広く単位面積当たりの光量が小さいため、配光特性の細かな制御がやり易く、光束の幅を狭めてスポット的に配光するのに適している。さらに、これらの反射光の光軸La及びLbを異なる方向に向けることで、所望の配光特性を得る。
【0060】
さらに本実施例では、固体光源装置1とリフレクタ70を外部雰囲気から保護するため、灯具カバー80を設けて反射面を覆うようにしている。灯具カバー80の形状は均一肉厚なプラスチック形状としても良いが、レンズ作用を持たせてリフレクタ70で形成した配光特性をさらに制御しても良い。
【実施例12】
【0061】
図14は、本発明による第12の実施例として固体光源装置を用いた車両用灯具を示す構成図である。本実施例の車両用灯具2は、実施例10(
図12)の車両用灯具2において、第2リフレクタ72の反射面を複数の反射面を含む複合体で形成している。複数の反射面は、第1リフレクタ71から反射する複数の光束に対応させている。
【0062】
固体光源装置1からの光束を、第1リフレクタ71の反射面形状により所望の光束分布を持つ1次反射光束とした後、第2リフレクタ72にて反射させ2次反射光束(照射光束)とする。この構成では設計自由度が1面増えるので、実施例11(
図13)に比べて配光特性を細かく制御できさらに良好な特性が得られる。
【0063】
第2リフレクタ72の反射面形状は、実施例11(
図13)と同様に複数の反射面72a〜72dを有している。その場合、複数に分割された光が入射する独立した反射面72a〜72dを連続的に繋いだ自由曲面形状とし、それぞれの反射面の反射方向を示す光軸La〜Ldが複数の反射面で異なる方向を向くように配置する。これより、複数の照射光束の照射方向が変わり、所望の配光特性を実現することができる。
本実施例は、実施例10(
図12)と実施例11(
図13)を組み合わせた構成であるから、前述した両者の利点を有していることは言うまでもない。
【実施例13】
【0064】
図15は、本発明による第13の実施例として固体光源装置を適用した映像表示装置を示す平面図である。ここではその一例として、液晶型投写装置の構成を示す平面図である。ここに示す液晶型投写装置3では、固体光源装置1で発生した照明光を、偏光変換素子61、重量レンズ62を介して、ダイクロイックミラー63,64に導く。ダイクロイックミラー63,64は、照明光を青色、緑色、及び赤色に分離し、映像表示素子である3枚の液晶パネル65,66,67に照射する。青色、緑色、及び赤色の映像光は、クロスプリズム68で合成され、投写レンズ69から拡大投写される。映像表示素子には、反射型液晶パネルを用いることもできる。本実施例では光源の発光効率が良いため、高性能の映像表示装置を実現する。
【0065】
さらに、高効率な偏光変換素子を光学系内に備えた固体光源の他の利用形態として、車両用の映像表示装置として近年注目されているヘッドアップディスプレイ(HUD)用の光源として用いることができる。その場合には、映像光は偏波の方向により、コンバイナやフロントガラスなどの映像表示部分で反射率が大きく異なることから、コントラスト比が大きく鮮明な映像表示が可能となり、視認性に優れたディスプレイを実現できる。
【実施例14】
【0066】
実施例14では、固体光源装置の好適な駆動方法について述べる。ここでは、光源に対する人間の眼の視覚特性として、(1)点灯時間と明るさ感の関係、(2)点灯周波数とちらつき感の関係、について検討し、駆動電流を低減しつつ、ちらつき感のないパルス駆動法を提案するものである。人間の眼の視覚特性として、明るい光源からの光は、点灯時間の長さによって相対的に明るいと感じる感じ方が異なることが知られている。また、点灯周波数(点滅周期)によって人間が感じるちらつき感が変化することも知られている。
【0067】
図19は、点灯時間と人間が感じる明るさ感の関係を示す図である。パラメータとして網膜上の照度値を変えている。同じ照度であっても、点灯時間が変わると人間が感じる明るさ感が異なる。例えば、照度170ルクスの照明光が相対的に最も明るく見える点灯時間は0.05秒である。また、照度が増加するほど、点灯時間が短い方が明るく感じる。映像表示装置や車両用灯具の照明光としては、点灯時間が0.05秒以下の場合が明るく見えることになる。
【0068】
図20は、点灯周波数と人間が感じるちらつき感の関係を示す図である。パラメータとして網膜上の明るさ(trolands)を変えている。点灯周波数fが5〜20Hzのときちらつき感が大きく、周波数は60Hz以上ではちらつき感がほとんどなくなる。この傾向は、照るさに依存しない。
【0069】
以上の知見から、ちらつき(フリッカ)を感じず明るく感じられるのは、光源の点滅周波数が60Hz以上である。このような条件で固体光源装置を駆動すれば、平均電流を抑えながら視覚的に明るく感じる駆動が可能となる。すなわち、LEDの駆動電流を直流駆動からパルス駆動(HiとLowの切り替え駆動)とすることで、平均電流を抑えて視覚的に明るく感じる駆動方法が存在すると考え、その検証を行った。
【0070】
図21は、パルス駆動による視覚評価の結果を示す図である。ここには、固体光源に流すドライブ電流をパルス駆動した場合、直流駆動する場合と視覚上差異のない条件、すなわち視覚的にフリッカを感じることなく同等の明るさに感じることができる事例をいくつか示している。パラメータとして、比視感度が低い発光色が青色の場合(a1〜a3)と、比視感度が高い発光色が緑色及び赤色の場合(b1〜b3)に分け、それぞれ、点灯周波数f、Hi/Lowの電流比率、Hi/Lowの時間比率(デューティ)を変化させている。なお、直流駆動時の電流値を100%としている。
【0071】
(a1)発光色が青色で、駆動周波数f=50Hz、Hi:Lowの電流比率=120%:60%、Hi:Lowの時間比率=50:50の場合、フリッカ感がなく直流駆動時と同等の明るさ感であった。
(a2)駆動周波数f=65Hz、Hi:Lowの電流比率=130%:50%、時間比率=50:30の場合、上記と同様の評価結果であった。
(a3)駆動周波数f=72Hz、Hi:Lowの電流比率=150%:40%、時間比率=50:20の場合、同様であった。
【0072】
(b1)発光色が緑色で、駆動周波数f=60Hz、Hi:Lowの電流比率=120%:70%、Hi:Lowの時間比率=50:50の場合、フリッカ感がなく直流駆動時と同等の明るさ感であった。
(b2)駆動周波数f=75Hz、Hi:Lowの電流比率=130%:70%、時間比率=50:30の場合、同様であった。
(b3)駆動周波数f=85Hz、Hi:Lowの電流比率=150%:70%、時間比率=50:20の場合、同様であった。
(b1)〜(b3)については、発光色が赤色の場合も、ほぼ同様の結果であった。
【0073】
以上の結果は、パルス駆動時にHiの電流により発光しさせると、眼の残光特性により視感的にはほぼ一定の明るさが継続するように感じるからと推測される(言い換えればフリッカを感じることがない)。よって、固体光源を直流電流で駆動する場合に比べ、電流効率を向上させることができる。上記の例では、電流効率の改善度は、(a1)で約10%、(a2)で27%、(a3)で21%、(b1)で約5%、(b2)で24%、(b3)で18%、であった。
【0074】
パルス駆動の好適な条件は、駆動周波数が60Hz以上で、Hi:Lowの電流比率が60:40以上であれば、HiとLowの時間比率が50:50であっても視覚的にフリッカを感じることなく明るく感じることができる。