【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態によるMOS型電界効果トランジスタ(以下単にMOSFETと呼ぶ)の製造工程を図面を参照して説明する。
図1〜
図7は、本実施の形態である半導体装置、例えばSOI基板上にnチャネル型MOSFETを有する半導体装置の製造工程中の断面図である。
【0018】
まず、
図1に示すように、上方にBOX膜2およびシリコン層(SOI層)3が積層された半導体基板1を用意する。半導体基板1はSi(シリコン)からなる支持基板であり、半導体基板1上のBOX膜2は酸化シリコン膜であり、BOX膜2上のシリコン層3は1〜10Ωcm程度の抵抗を有する単結晶シリコンからなる層である。
【0019】
半導体基板1、BOX膜2およびシリコン層3からなるSOI基板はSi(シリコン)からなる半導体基板1の主面に高いエネルギーでO
2(酸素)をイオン注入し、その後の熱処理でSi(シリコン)と酸素とを結合させ、半導体基板の表面よりも少し深い位置に埋込み酸化膜(BOX膜)を形成するSIMOX(Silicon Implanted Oxide)法で形成することができる。また、SOI基板は、表面に酸化膜を形成した半導体基板1と、もう1枚のSi(シリコン)からなる半導体基板とを高熱および圧力を加えることで接着して貼り合わせた後、片側のシリコン層を研磨して薄膜化することで形成することもできる。
【0020】
次に、
図2に示すように、シリコン層3にp型の不純物(例えばB(ホウ素))をイオン注入法により比較的低い濃度で打ち込み、続いて、シリコン層3上に熱酸化法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて酸化シリコン膜(ゲート絶縁膜4用の絶縁膜)を形成する。その後、前記酸化シリコン膜上に、CVD法などを用いてポリシリコン膜(ゲート電極5用の導体膜)および窒化シリコン(Si
3N
4)膜6を順次形成し、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて窒化シリコン膜6をパターニングする。続いて、窒化シリコン膜6をハードマスクとして用い、ドライエッチング法により前記ポリシリコン膜および前記酸化シリコン膜をパターニングする。これにより、シリコン層3上に、前記酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜4を形成し、ゲート絶縁膜4上に前記ポリシリコン膜からなるゲート電極5を形成する。
【0021】
なお、ゲート電極5を構成するポリシリコン膜は、P(リン)またはAs(ヒ素)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のn型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、前記ポリシリコン膜は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。
【0022】
続いて、シリコン層3の上面およびゲート電極5を覆うように、例えばCVD法を用いて酸化シリコン膜7および窒化シリコン(Si
3N
4)膜8aを形成し、その後、RIE(Reactive Ion Etching)法などにより異方性エッチングを行うことで酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aを一部除去し、シリコン層3の上面を露出させる。これにより、ゲート電極5の側壁には、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aからなる積層膜が自己整合的に形成される。
【0023】
ここで、酸化シリコン膜7はサイドウォール形成用の絶縁膜であり、窒化シリコン膜8aは、後の工程でゲート電極から離間した位置にエピタキシャル層(せり上げ層、選択成長層)を形成するためのダミーサイドウォール形成用の絶縁膜である。つまり、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aからなる積層膜はダミーサイドウォールであり、完成した半導体装置には、酸化シリコン膜7は残るが窒化シリコン膜8aは残らない。
【0024】
次に、
図2に示すように、ゲート電極5、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aから露出しているシリコン層3の上面に、エピタキシャル成長法を用いて、主にSi(シリコン)からなるエピタキシャル層9を形成する。これにより、ゲート電極5、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aの外側の領域には、シリコン層3よりも上面の高さが高いシリコン層が形成される。
【0025】
このとき、エピタキシャル層9の上面は、ゲート電極5の側壁に沿わず、シリコン層3の上面に沿って形成された酸化シリコン膜7の膜厚の上面よりも高い位置にある。すなわち、酸化シリコン膜7の膜厚は5nm程度であるのに対し、エピタキシャル層9は、酸化シリコン膜7の膜厚より厚い膜厚である20〜50nmの膜厚を有している。
【0026】
なお、ゲート電極5の横にエピタキシャル層9を形成するのは、シリコン層3の膜厚が極端に薄いことに起因している。そして、後の工程においてMOSFETを構成するソース・ドレイン領域の表面にシリサイド層を形成する際に、エピタキシャル層9が形成されておらず、ソース・ドレイン領域がシリコン層3に形成されている場合、シリサイド層を形成するためのシリコンが、シリコン層3の膜厚だけでは足らなくなるためである。つまり、エピタキシャル層9を形成する理由の一つは、シリサイド層およびソース・ドレイン領域を形成する際に、ソース・ドレイン領域を構成するシリコン層の膜厚を補う必要があるためである。また、エピタキシャル層9を形成する他の理由としては、MOSFETのソース・ドレイン領域に付随する寄生抵抗の増大を防ぐことが挙げられる。
【0027】
次に、
図3に示すように、ウェットエッチング法を用いて、ゲート電極5の上部の窒化シリコン膜6およびダミーサイドウォール形成用の絶縁膜である窒化シリコン膜8aを除去する。
【0028】
次に、
図4に示すように、ゲート電極5をマスクとして、イオン注入法を用いてn型の不純物(例えばAs(ヒ素))を比較的低い濃度でシリコン層3の上面に打ち込むことにより、ゲート電極5およびゲート絶縁膜4の横に露出しているシリコン層3の上面およびエピタキシャル層9の上面にエクステンション領域10を形成する。エクステンション領域10はゲート電極5の直下のシリコン層3の上面の少なくとも一部には形成されない。また、このイオン注入工程で打ち込まれる不純物イオンは膜厚5nm程度の酸化シリコン膜7を透過するため、酸化シリコン膜7の直下のシリコン層3にもエクステンション領域10は形成される。
【0029】
なお、
図4ではシリコン層3の上面の近傍にエクステンション領域10を示しているが、エクステンション領域10はシリコン層3の上面から下面にかけて形成されていても構わない。
【0030】
次に、
図5に示すように、ゲート電極5およびエピタキシャル層9をマスクとして、イオン注入法を用いてp型の不純物(例えばB(ホウ素))を比較的高い濃度で半導体基板1の上方から半導体基板1の上面に打ち込むことにより、ゲート電極5およびエピタキシャル層9間の直下の半導体基板1の上面にハロー領域(p型半導体領域)11を形成する。ハロー領域11は、後の工程で形成するMOSFETの短チャネル特性を抑制するために形成する半導体領域(拡散層)である。
【0031】
ここでは、ゲート電極5の直下およびエピタキシャル層9の直下の半導体基板1には、ゲート電極5およびエピタキシャル層9がマスクとなることで、p型の不純物(例えばB(ホウ素))は殆ど導入されない。したがって、半導体基板1の上面のp型の不純物(例えばB(ホウ素))の濃度は、ゲート電極5の直下よりも、ゲート電極5の外側であって、ゲート電極5およびエピタキシャル層9間の直下の領域の方が高くなる。同様に、半導体基板1の上面のp型の不純物(例えばB(ホウ素))の濃度は、エピタキシャル層9の直下よりも、ゲート電極5およびエピタキシャル層9間の直下の領域の方が高くなる。
【0032】
このようにハロー領域11がゲート電極5の直下に形成されず、ゲート電極5の両端の直下の近傍にのみ形成されるのは、ゲート電極5、ゲート絶縁膜4、シリコン層3およびBOX膜2を含めた膜厚が、酸化シリコン膜7、シリコン層3およびBOX膜2を含めた膜厚よりも厚いためである。同様に、ハロー領域11がエピタキシャル層9の直下に形成されず、ゲート電極5の両端の直下の近傍にのみ形成されるのは、エピタキシャル層9、シリコン層3およびBOX膜2を含めた膜厚が、酸化シリコン膜7、シリコン層3およびBOX膜2を含めた膜厚よりも厚いためである。なお、BOX膜2の膜厚は10〜50nm程度であり、ここでは10nmとしている。また、シリコン層3の膜厚は5〜15nm程度であり、ここでは10nmとしている。
【0033】
なお、本実施の形態ではエクステンション領域10を形成するイオン注入工程を行った後にハロー領域11を形成するイオン注入工程を行う方法について説明したが、エクステンション領域10を形成する前にハロー領域11を形成しても構わない。ただし、エクステンション領域10およびハロー領域11は必ずエピタキシャル層9を形成した後に形成するものとする。
【0034】
次に、
図6に示すように、例えばCVD法を用いて、ゲート電極5、酸化シリコン膜7、シリコン層3およびエピタキシャル層9のそれぞれの露出した表面を覆うように窒化シリコン膜8bを形成する。その後、RIE法などにより異方性エッチングを行うことで窒化シリコン膜8bを一部除去し、ゲート電極5、シリコン層3およびエピタキシャル層9のそれぞれの上面を露出させる。これにより、ゲート電極5の側壁には、酸化シリコン膜7を介して窒化シリコン膜8bが自己整合的に形成される。これにより、ゲート電極5の側壁には酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8bからなるサイドウォールが形成される。
【0035】
次に、
図7に示すように、ゲート電極5、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8bをマスクとして、半導体基板1の上方からn型の不純物(例えばAs(ヒ素))を比較的高い濃度でイオン注入することにより、ゲート電極5、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8bから露出しているエピタキシャル層9内に拡散層12を形成する。拡散層12およびエピタキシャル層9はソース・ドレイン領域を構成する半導体領域である。前記ソース・ドレイン領域は、不純物が高濃度で導入された拡散層12とゲート電極5の直下のチャネル領域となるシリコン層3との間に、低濃度の不純物を含むエクステンション領域10を有するLDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。したがって、拡散層12の不純物濃度は、エクステンション領域10の不純物濃度よりも高い。
【0036】
以上により、ゲート電極5、エクステンション領域10および拡散層12を含むnチャネル型のMOSFETQaを形成する。この後の工程の詳しい説明および図示は省略するが、ゲート電極5および拡散層12上にシリサイド層を形成した後、MOSFETQaを層間絶縁膜により覆い、層間絶縁膜を貫通するコンタクトプラグを前記シリサイド層に接続し、当該コンタクトプラグおよびゲート電極5の上面に接続された配線を形成することで、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0037】
図7に示す半導体基板1の上面において、ゲート電極の直下の領域を第1領域とし、エクステンション領域10の直下の領域を第2領域とし、拡散層12の直下の領域を第3領域とすると、第1領域、第2領域および第3領域は半導体基板1の上面の一方向に並んで配置され、第1領域は第2領域に挟まれるように配置され、第1領域および第2領域は第3領域に挟まれるように配置される。不純物拡散層であるハロー領域11は第2領域に形成されるため、ハロー領域11に導入された不純物の濃度は、第1領域よりも第2領域の方が高くなり、第3領域よりも第2領域の方が高くなる。
【0038】
次に、本実施の形態の半導体装置およびその製造方法の効果について、
図18〜
図20の比較例を用いて説明する。
図18および
図19は、比較例であるMOSFETを含む半導体装置の製造工程中の断面図であり、
図20は、比較例であるMOSFETQdを含む半導体装置の断面図である。
【0039】
半導体基板1、BOX膜2およびシリコン層3を含むSOI基板上にMOSFETを形成する工程の一つとしては、以下の工程が考えられる(
図18参照)。つまり、まずシリコン層3上にゲート電極5を形成した後に、イオン注入を行うことでシリコン層3の上面にエクステンション領域10aを形成し、続いて、ゲート電極5の側壁に酸化シリコン膜7および窒化シリコン(Si
3N
4)膜8からなるサイドウォールを自己整合的に形成する。
【0040】
その次の工程では、上述した理由により、シリコン層の膜厚を補うため、エピタキシャル成長法によりゲート電極5および前記サイドウォールの外側にエピタキシャル層を形成する。
【0041】
しかし、エピタキシャル層を形成する前にエクステンション領域10aを形成した場合、
図19に示すように、エピタキシャル層9a、9bおよび9cが所望の膜厚および形状で形成されない虞がある。すなわち、
図19に示すように、エピタキシャル層9a、9bのように、シリコン層3上に均一に成長せず、また、結晶性にばらつきが生じることが考えられる。また、エピタキシャル層9cのように、エピタキシャル層が殆ど成長せず、シリコン層3およびエピタキシャル層9cを含む層が所望の膜厚を得られないことが考えられる。エピタキシャル層9が過度に薄い場合、エピタキシャル層9上にシリサイド層を形成する際にエピタキシャル層9を含むシリコン層の膜厚が足りなくなり、ソース・ドレイン領域がすべてシリサイド化されてしまう虞がある。
【0042】
上記のようにエピタキシャル層が所望の形状で形成されないのは、エクステンション領域10aを形成するためのイオン注入工程によりダメージを受けたシリコン層3上にエピタキシャル層を形成する場合、前記ダメージに起因してエピタキシャル層が良好に成長しないためである。エピタキシャル層が正常に形成されない場合、シリサイド層がうまく形成されず、また、短チャネル特性が悪化する問題が生じる。
【0043】
これに対し、
図1〜
図7を用いて説明したように、エピタキシャル層9を形成する前に、ゲート電極5の側壁に酸化シリコン膜7と窒化シリコン膜8aとを形成し、その状態でエピタキシャル層を形成することで、エクステンション領域を形成するためのイオン注入によりダメージを受けていないシリコン層3上に、エピタキシャル層9を所望の形状および膜厚で形成することができる。エクステンション領域10はエピタキシャル層9の形成後の工程であっても、窒化シリコン膜8aを除去した後にイオン注入を行うことでシリコン層3の上面に形成することが可能である。
【0044】
ここで、本実施の形態では、
図5を用いて説明したように、半導体基板1の上面に、ハロー領域11を形成している。半導体基板の上面にハロー領域を形成する方法としては、
図20に比較例として示す半導体装置のように、ゲート電極5などを形成する前に、SOI基板の上方から半導体基板1の上面の全面にハロー領域(p型半導体領域)11aを形成し、その後にゲート電極5、エクステンション領域10a、サイドウォール、エピタキシャル層および拡散層12aなどを形成することが考えられる。
【0045】
半導体基板1の主面にハロー領域を形成すると、短チャネル特性を抑制することが可能である。ここでいう短チャネル特性とは、Lg−Vth特性の悪化、DIBL(Drain Induced Barrier Lowering)の悪化、およびS値(サブシュレッショルド係数:sub-threshold slope)の悪化を含むものである。
【0046】
Lg−Vth特性とは、ゲート電極のゲート長Lgとしきい値電圧Vthとの関係により決まる特性であり、MOSFETが微細化すると、使用するゲート長によってVthの変化量が大きくなる傾向があるため、ゲート長の微細なばらつきに起因して、各MOSFET間のしきい値電圧Vthがばらつきやすくなる問題が生じ、半導体装置の信頼性が悪化する。
【0047】
また、DIBLとは、微細化したMOSFETのドレイン電圧が増加した際に、しきい値電圧Vthの変化が大きくなる特性のことであり、ドレイン電圧の影響が増加することによる障壁低下効果をいうものである。この特性が短チャネル化により悪化すると、ドレイン電圧を高くするにつれてしきい値電圧Vthが低くなり、ドレイン領域の空乏層が伸びてソース・ドレイン領域間のリーク電流が増加する。
【0048】
また、S値とは、ゲート電圧Vgとドレイン電流Idとの関係をグラフにした際の、グラフの傾きの逆数を示すものであり、S値が短チャネル化により大きくなると、電流の立ち上がりが鈍くなり、MOSFETの電流駆動力が低下する問題が生じる。また、S値が大きいと、しきい値電圧Vthが同じであっても、MOSFETがオフの状態でのリーク電流が大きくなる。
【0049】
上記したこれらの短チャネル特性の問題は、半導体基板1の主面にハロー領域を形成することにより改善することが可能である。ハロー領域は、SOI基板の支持基板である半導体基板の上面に形成した場合、特に上記した短チャネル特性の抑制効果を発揮することが可能であり、逆に、半導体基板の上面から離れた深い領域にハロー領域を形成すると、短チャネル特性の抑制効果は小さくなる。
【0050】
また、
図20の比較例に示すように、ゲート電極5の直下の半導体基板1の上面にハロー領域11aを形成した場合と、ゲート電極5の直下以外の半導体基板の上面にハロー領域を形成した場合とでは、ゲート電極5の直下以外の半導体基板の上面にハロー領域を形成した場合の方が、より効果的に短チャネル特性を抑制することができる。
【0051】
本実施の形態の半導体装置では、
図5を用いて説明したように、ゲート電極5およびエピタキシャル層9をマスクとしてイオン注入を行うことでハロー領域11を形成しており、ゲート電極5の直下にはハロー領域は形成されないため、より効果的に短チャネル特性を抑制することができる。つまり、半導体基板1の上面において、ゲート電極5の直下よりも、ゲート電極およびエピタキシャル層9の間の直下の領域の方がハロー領域を構成する不純物濃度が高くなるため、より効果的に短チャネル特性を抑制することができる。
【0052】
また、
図20の比較例に示すように、半導体基板1の上面の全面にハロー領域11aを形成すると、不純物が高濃度で導入された拡散層12aの直下に、不純物が高濃度で導入されたハロー領域11aがBOX膜2を介して形成されることになる。この場合、拡散層12aとハロー領域11aとの間に拡散容量(寄生容量、接合容量)が生じるため、特に動作周波数の高いMOSFETでは、信号のノイズまたは遅延などが顕著に発生する。
【0053】
容量の発生を防ぐための構造の一つとして、ソース・ドレイン領域を構成する拡散層12の直下にハロー領域を形成しない構造が考えられる。本実施の形態では、
図5を用いて説明したように、ゲート電極5およびエピタキシャル層9をマスクとしてイオン注入を行うことでハロー領域11を形成しており、エピタキシャル層9の直下にはハロー領域は形成されないため、拡散層12と半導体基板1との間で拡散容量が発生することを防ぐことができる。
【0054】
なお、ゲート電極およびサイドウォールなどを形成する前のSOI基板の上面から半導体基板の上面の全面にハロー領域を形成するイオン注入を行うと、上述したように短チャネル特性および拡散容量が発生する問題が生じる。これに対し、半導体基板の上面の全面にハロー領域を形成せず、フォトレジスト膜などをマスクとしてイオン注入を行い、半導体基板内の所定の領域のみにハロー領域を形成すれば、前述した問題の発生を回避することが可能である。しかし、この方法を用いた場合、ハロー領域を形成するイオン注入工程において用いるマスクを用意し、また、フォトレジスト膜の形成工程を増やす必要があるため、半導体装置の製造コストが増大することになる。
【0055】
本実施の形態では、
図5に示すゲート電極5と、自己整合的に形成されたエピタキシャル層9とをマスクとしてハロー領域を形成するイオン注入を行っているため、新たにマスクを用意する必要がなく、半導体装置の製造工程を簡易化し、また、半導体装置の製造コストの増大を防ぐことができる。
【0056】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、ゲート電極を形成した後にソース・ドレイン領域を形成するゲートファーストプロセスによりMOSFETを形成する方法について説明したが、本実施の形態では、ソース・ドレイン領域を形成した後にゲート電極を形成するゲートラストプロセスにより形成されたMOSFETについて説明する。
【0057】
以下、
図8〜
図12に、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図を示す。
【0058】
まず、前記実施の形態1と同様に、半導体基板1と、半導体基板1上に形成されたBOX膜2と、BOX膜2上に形成されたシリコン層3とを有するSOI基板を準備する。その後は、
図1および
図2を用いて説明した工程とほぼ同様の工程を行う。
【0059】
ただし、
図1および
図2を用いて説明した工程では、ポリシリコン膜からなるゲート電極5を形成したが、ここではゲート電極5の代わりに、例えばポリシリコン膜からなるダミーゲート電極(犠牲パターン)D5を形成する。ダミーゲート電極D5の材料およびパターン形状は前記実施の形態のゲート電極5と同じとする。また、ゲート絶縁膜4(
図1参照)は形成しない。また、エクステンション領域10を形成するための不純物の打ち込みを、ダミーゲート電極D5の形成後であって、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aからなるサイドウォールの形成前に行う。これにより、ダミーゲート電極D5の両側のシリコン層3の上面に、n型の不純物(例えばAs(ヒ素))が比較的低濃度で打ち込まれたエクステンション領域10を形成する。
【0060】
つまり、ここでは、SOI基板上にダミーゲート電極D5をおよび窒化シリコン膜6の積層膜からなるパターンを形成した後、エクステンション領域10を形成し、続いてダミーゲート電極D5の側壁に酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aからなるサイドウォールを形成する。続いて、当該サイドウォールおよびダミーゲート電極D5から露出しているシリコン層3上にエピタキシャル層9を形成する。
【0061】
その後、エピタキシャル層9にn型の不純物(例えばAs(ヒ素))を比較的高い濃度でイオン注入することにより、ダミーゲート電極D5、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aから露出しているエピタキシャル層9内に拡散層12を形成する。これにより、
図8に示す構造を得る。エクステンション領域10および拡散層12は、後に形成するMOSFETQb(
図12参照)のソース・ドレイン領域を構成している。
【0062】
次に、
図9に示すように、周知のサリサイド技術を用いて、拡散層12の表面にシリサイド層13を形成する。シリサイド層13は、コバルトシリサイド(CoSi)からなる導電膜である。このとき、ダミーゲート電極D5の上面は窒化シリコン膜6により覆われているため、ダミーゲート電極D5の上面にシリサイド層は形成されない。
【0063】
その後、例えばCVD法を用いて、シリコン層3、シリサイド層13、前記サイドウォール、窒化シリコン膜6および上記ソース・ドレイン領域を覆うように、エッチングストッパ膜(ライナー絶縁膜)14および層間絶縁膜15を順次形成する。エッチングストッパ膜14は、後の工程で拡散層12に電気的に接続されるコンタクトプラグを埋め込むためのコンタクトホールを形成するエッチング工程において、エッチングストッパ膜として機能する膜であり、例えば窒化シリコン(Si
3N
4)膜からなる。また、層間絶縁膜15は例えば酸化シリコン膜により形成され、その上面は、少なくともダミーゲート電極D5の上面よりも高い領域に形成する。
【0064】
続いて、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて、層間絶縁膜15、エッチングストッパ膜14および窒化シリコン膜6を研磨することで、ダミーゲート電極D5の上面を露出させ、ダミーゲート電極D5、エッチングストッパ膜14および層間絶縁膜15の上面高さを揃える。
【0065】
次に、
図10に示すように、例えばウェットエッチング法を用いて、選択的にダミーゲート電極D5を除去する。これにより、ダミーゲート電極D5を除去された領域に絶縁膜の開口部OP1が形成され、開口部OP1の底面にシリコン層3の上面が露出する。ここでいう開口部OP1とは、エッチングストッパ膜14、層間絶縁膜15、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aからなる絶縁膜の開口部であって、開口部OP1の側壁には、酸化シリコン膜7の側壁が露出している。
【0066】
次に、
図11に示すように、不純物(例えばB(ホウ素)またはP(リン)など)を半導体基板1の主面に向かってイオン注入することにより、半導体基板1の上面に前記不純物が打ち込まれたハロー領域16を形成する。ここでは、上記イオン注入を半導体基板1の主面に対して垂直な方向から行い、開口部OP1の底面のシリコン層3およびその下のBOX膜2を通過して、上記不純物が半導体基板1の主面に打ち込まれる。
【0067】
このとき、ダミーゲート電極D5が除去された開口部OP1以外の領域の半導体基板1およびシリコン層3は、層間絶縁膜15、エッチングストッパ膜14、シリサイド層13、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aにより覆われているため、この領域の半導体基板1およびシリコン層3には前記不純物は打ち込まれない。また、拡散層12は、層間絶縁膜15、エッチングストッパ膜14およびシリサイド層13により覆われているため、前記不純物は打ち込まれない。
【0068】
次に、
図12に示すように、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18を開口部OP1内に埋め込んで形成する。この場合は、まず、例えばALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法またはCVD法を用いて、開口部OP1の底面および内壁を覆うように、半導体基板1の上面の全面上に高誘電率絶縁膜を形成し、続いて、開口部OP1内を完全に埋め込むように、スパッタリング法などを用いて金属膜を形成する。上記金属膜は、例えばTiN膜からなる。
【0069】
高誘電率絶縁膜は、Hfを含有する絶縁膜であり、Hf(ハフニウム)を含有する絶縁材料からなり、例えばHfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)またはHfO膜(酸化ハフニウム膜またはハフニウムオキサイド膜、代表的なのはHfO
2膜)とすることができる。高誘電率絶縁膜がHfSiON膜の場合には、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法またはCVD法を用いてまずHfSiO膜を堆積する。それから、このHfSiO膜を窒化処理によって窒化することによって、HfSiON膜を形成することができる。
【0070】
次に、層間絶縁膜上の不要な上記金属膜と、不要な上記高誘電率絶縁膜とを、CMP法を用いて研磨して一部除去することにより、層間絶縁膜15の上面を露出する。これにより、上記金属膜および上記高誘電率絶縁膜は開口部OP1内のみに残されるように埋め込まれ、前記高誘電率絶縁膜からなるゲート絶縁膜17と、前記金属膜からなるゲート電極18とが形成される。つまり、上記研磨工程により、ゲート電極18と層間絶縁膜15との上面高さを揃える。このとき、開口部OP1を挟むように対向する層間絶縁膜15の側壁間には、層間絶縁膜15の両方の側壁のそれぞれから順に、エッチングストッパ膜14、窒化シリコン膜8a、酸化シリコン膜7、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18が形成されている。
【0071】
ゲート絶縁膜17は、開口部OP1内において、シリコン層3の上面および酸化シリコン膜7の側壁に沿うように連続的に形成されている。したがって、シリコン層3とゲート電極18との間にはゲート絶縁膜17が形成され、酸化シリコン膜7とゲート電極18との間には、ゲート電極18の側壁を覆うゲート絶縁膜17が形成されている。このため、ゲート電極18とシリコン層3および酸化シリコン膜7とは接しておらず、電気的に絶縁されている。これにより、ゲート電極18、エクステンション領域10および拡散層12を含むnチャネル型のMOSFETQbを形成する。
【0072】
この後の工程の詳しい説明および図示は省略するが、層間絶縁膜15上およびゲート電極18上にさらに層間絶縁膜を形成した後、当該層間絶縁膜と層間絶縁膜15とを貫通するコンタクトプラグを形成し、コンタクトプラグをシリサイド層13およびゲート電極18に接続させる。続いて、上記コンタクトプラグの上面に接続された配線を形成することで、本実施の形態の半導体装置が完成する。なお、ゲート電極18の上面にシリサイド層を形成する工程は必要ない。
【0073】
上記の製造工程により形成されたMOSFETQbは、
図11を用いて説明したイオン注入工程により、開口部OP1の直下、すなわち、
図12に示すゲート電極18の直下の半導体基板1の上面にハロー領域16を有している。ハロー領域16は、エッチングストッパ膜14、層間絶縁膜15、酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8aに覆われた領域の半導体基板1の主面には形成されていない。
【0074】
これは、
図11を用いて説明したイオン注入工程において、エッチングストッパ膜14および層間絶縁膜15により覆われていた領域の半導体基板1には、ハロー領域16を構成する不純物が打ち込まれていないためである。したがって、
図12に示すゲート電極18の横に形成された拡散層12の直下の半導体基板1の主面にはハロー領域16は形成されていない。
【0075】
つまり、ゲート電極18の直下の半導体基板1の上面の第1領域は、半導体基板1の上面において当該第1領域に隣接する第2領域よりも、
図11を用いて説明したイオン注入工程で注入したn型またはp型の不純物の濃度が高い。なお、ここでいう第1領域および第2領域は、エクステンション領域10、拡散層12、およびゲート電極18と同様に、ゲート電極18のゲート長方向(第1方向)に並んで配置されている。ここでは、第2領域の直上にはゲート電極18は形成されておらず、第2領域の直上に、ソース・ドレイン領域が形成されている。
【0076】
ハロー領域16は、上述したように、MOSFETQbのLg−Vth特性を調整し、向上させるために形成する半導体領域である。つまり、ハロー領域16を形成することで、短チャネル化に起因して生じる現象であって、ドレイン電圧を高くした際にしきい値電圧Vthが低くなり、ドレイン領域の空乏層が伸びてソース・ドレイン領域間のリーク電流が増加する現象が起こることを防ぐことができる。
【0077】
半導体基板の上面にハロー領域を形成する方法としては、以下の方法が、考えられる。つまり、
図20に比較例として示す半導体装置のように、ゲート電極5および拡散層12aなどを形成する前に、SOI基板の上方から半導体基板1の上面の全面にイオン注入をしてハロー領域11aを形成し、その後にゲート電極5、エクステンション領域10a、サイドウォール、エピタキシャル層および拡散層12aなどを形成することが考えられる。
【0078】
また、本実施の形態のようにゲートラストプロセスを用いる場合には、SOI基板を準備した後であって、ダミーゲート電極D5、エピタキシャル層9および拡散層12(
図8参照)の形成前に、半導体基板1に対してイオン注入を行うことで、半導体基板1の主面の全面にハロー領域を形成することが考えられる(図示しない)。この場合は、拡散層12(
図8参照)のように、n型の不純物(例えばAs(ヒ素))が高濃度で導入された領域の直下に、BOX膜2を介してハロー領域が形成されることとなる。
【0079】
上記のように、半導体基板1の主面の全面にハロー領域を形成した場合、間にBOX膜2を介して形成された拡散層12とハロー領域との間に拡散容量(寄生容量、接合容量)が生じるため、MOSFETを動作させた際、信号のノイズまたは遅延が発生する。
【0080】
これに対し、本実施の形態の半導体装置では、ゲートラストプロセスを用いてMOSFETQbを形成する工程において、ダミーゲート電極D5を除去した開口部OP1(
図11参照)に対してイオン注入を行うことで、開口部OP1の直下の半導体基板1の上面のみにハロー領域16を形成している。したがって、拡散層12の直下の半導体基板1の上面にはハロー領域16が形成されない。これにより、ハロー領域16を設けることで、短チャネル効果を抑制し、しきい値電圧Vthを調整可能とする効果を得るとともに、拡散層12と半導体基板1との間で拡散容量が発生することを防ぐことができる。
【0081】
また、本実施の形態では、ゲート電極18の両側の側壁(両端部)の下方の半導体基板1の主面のみにハロー領域を形成せず、ゲート電極18の直下の半導体基板1の主面の全面にハロー領域16を形成している。このように、ゲート電極18の直下の半導体基板1の主面の全面にハロー領域16を形成した場合は、ハロー領域16を構成する不純物がゲート電極18の下に均一に分布するため、ゲート電極18の両側の側壁(両端部)の下方の半導体基板1の主面のみにハロー領域を形成した場合に比べて、しきい値電圧のばらつきを抑え、DIBLの悪化を防ぐことが可能である。
【0082】
(実施の形態3)
本実施の形態では、前記実施の形態2と同様に、ゲートラストプロセスによりMOSFETを形成する場合について説明する。以下では、
図13〜
図17を用いて、オフセットスペーサを除去した領域に対してイオン注入を行い、ゲート電極の両端の直下のみにハロー領域を形成する、本実施の形態の半導体装置の製造工程について説明する。
図13〜
図17は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0083】
まず、
図13に示すように、前記実施の形態1および2と同様に、半導体基板1、BOX膜2およびシリコン層3を有するSOI基板を準備する。続いて、シリコン層3上に、CVD法などによりポリシリコン膜および窒化シリコン膜6(図示しない)を形成した後、窒化シリコン膜6(図示しない)をパターニングし、パターニングされた窒化シリコン膜6(図示しない)をハードマスクとしてポリシリコン膜を加工することで、ポリシリコン膜からなるダミーゲート電極(犠牲パターン)D5を形成する。
【0084】
続いて、ダミーゲート電極D5の上面および側面を覆うように、CVD法などを用いてシリコン層3上に絶縁膜を形成する。その後、異方性のあるエッチングを行うことで、ダミーゲート電極D5の上面およびシリコン層3の上面を露出し、ダミーゲート電極D5の側壁に、絶縁膜からなるオフセットスペーサOSSを自己整合的に形成する。オフセットスペーサの材料としては、例えばシリコンゲルマニウム(SiGe)、または窒化チタン(TiN)などを用いることができる。
【0085】
続いて、オフセットスペーサOSSの側壁に、例えば酸化シリコン膜を含むサイドウォールSWを形成する。サイドウォールSWは、例えば酸化シリコン膜および窒化シリコン膜からなる積層膜を、CVD法などにより半導体基板1の上面の全面上に形成した後、当該積層膜を異方性エッチングにより一部除去することにより形成することができる。続いて、ダミーゲート電極D5、オフセットスペーサOSSおよびサイドウォールSWから露出するシリコン層3の上面上に、エピタキシャル成長法によりエピタキシャル層9を形成する。このとき、ダミーゲート電極D5の上面は窒化シリコン膜6(図示しない)により覆われているため、ダミーゲート電極D5の上面にエピタキシャル層は形成されない。続いて、n型の不純物(例えばAs(ヒ素))を、エピタキシャル層9に対して比較的高い濃度でイオン注入することにより、エピタキシャル層9内にn型の半導体層である拡散層12を形成する。
【0086】
続いて、前記実施の形態2で
図9を用いて説明した工程と同様にして、シリサイド層13、エッチングストッパ膜14、層間絶縁膜15を形成し、CMP法を用いた研磨工程により、エッチングストッパ膜14、層間絶縁膜15の一部および窒化シリコン膜6(図示しない)を除去することで、ダミーゲート電極D5の上面およびオフセットスペーサOSSの上面を露出する。
【0087】
つまり、周知のサリサイド技術を用いて拡散層12の表面にシリサイド層13を形成した後、CVD法などを用いてエッチングストッパ膜14および層間絶縁膜15を、拡散層12、シリサイド層13、サイドウォールSW、オフセットスペーサOSSおよび窒化シリコン膜6(図示しない)を覆うように順次形成する。その後、例えばCMP法を用いてエッチングストッパ膜14、層間絶縁膜15の一部および窒化シリコン膜6(図示しない)を研磨することで、層間絶縁膜15、ダミーゲート電極D5およびオフセットスペーサOSSのそれぞれの上面の高さを揃える。
【0088】
次に、
図14に示すように、ウェットエッチング法などにより、選択的にオフセットスペーサOSSを除去することで、ダミーゲート電極D5の横のシリコン層3の上面を露出させる。オフセットスペーサOSSが窒化チタン(TiN)膜により形成されている場合は、例えば濃硫酸と過酸化水素水との混合液であるSPM(sulfuric acid hydrogen peroxide mixture)溶液を用いてオフセットスペーサOSSを除去する。これにより、オフセットスペーサOSSを除去した領域に、開口部OP2を開口する。開口部OP2内では、ダミーゲート電極D5の両側の側壁と、サイドウォールSWの側壁とが露出している。つまり、開口部OP2は、サイドウォールSW、エッチングストッパ膜14および層間絶縁膜15と、ダミーゲート電極D5との間に形成される。
【0089】
次に、
図15に示すように、不純物(例えばB(ホウ素)またはP(リン)など)を半導体基板1の主面に向かってイオン注入することにより、半導体基板1の上面に前記不純物が打ち込まれたハロー領域19を形成する。ここでは、上記イオン注入を半導体基板1の主面に対して垂直な方向から行い、上記不純物は、開口部OP2の底面のシリコン層3およびその下のBOX膜2を通過して、半導体基板1の主面に打ち込まれる。これにより、開口部OP2の直下の領域の半導体基板1の主面のみに、ハロー領域19を形成する。
【0090】
つまり、上記イオン注入は、ダミーゲート電極D5、エッチングストッパ膜14および層間絶縁膜15をマスクとして行われるため、ハロー領域19は半導体基板1の上面の全面に形成されるわけではなく、ダミーゲート電極D5の横の直下の半導体基板1の主面のみに形成される。したがって、ダミーゲート電極D5の直下および拡散層12の直下の半導体基板1の主面には、ハロー領域19を構成する不純物が導入されていない領域がある。
【0091】
次に、
図16に示すように、n型の不純物(例えばAs(ヒ素))をシリコン層3の上面に向かってイオン注入することにより、シリコン層3に前記不純物が打ち込まれたエクステンション領域10aを形成する。エクステンション領域10aは開口部OP2の直下に形成され、ダミーゲート電極D5の直下にはエクステンション領域10aが形成されない領域がある。つまり、エクステンション領域10aは、ダミーゲート電極D5の横のシリコン層3にのみ形成される。これにより、ダミーゲート電極D5の横には、比較的不純物濃度が低いエクステンション領域10aと、比較的不純物濃度が高い拡散層12とを含むLDD構造のソース・ドレイン領域が形成される。
【0092】
なお、
図15を用いて説明したハロー領域19の形成工程と、
図16を用いて説明したエクステンション領域10aの形成工程とは、どちらを先に行ってもよい。また、ここでは開口部OP2からイオン注入を行うことでエクステンション領域10aを形成する工程について説明したが、エクステンション領域10aは、前記実施の形態2と同様に、ダミーゲート電極の形成後であって、サイドウォールの形成前の段階にイオン注入を行うことでシリコン層内に形成してもよい。この場合は、
図16を用いて説明したイオン注入は行わない。
【0093】
次に、
図10および
図12を用いて説明した工程を行うことにより、
図17に示すMOSFETQcを形成する。つまり、ダミーゲート電極D5を除去した後、
図11を用いて説明したようなイオン注入工程は行わず、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18を形成する。
【0094】
具体的には、ダミーゲート電極D5を除去することで開口部OP1を形成した後、半導体基板1の主面の全面上に高誘電率絶縁膜および金属膜を順次形成し、続いて高誘電率絶縁膜および金属膜をCMP法などにより研磨して層間絶縁膜15の上面を露出させる。つまり、開口部OP1内の側壁および底面を覆う高誘電率絶縁膜からなるゲート絶縁膜17を形成し、また、開口部OP1内をゲート絶縁膜17とともに完全に埋め込む金属膜からなるゲート電極18を形成する。これにより、ゲート電極18、エクステンション領域10aおよび拡散層12を含むnチャネル型のMOSFETQcを形成する。
【0095】
この後の工程の詳細な説明および図示は省略するが、層間絶縁膜15上およびゲート電極18上にさらに層間絶縁膜を形成した後、当該層間絶縁膜と、層間絶縁膜15とを貫通するコンタクトプラグを形成し、コンタクトプラグをシリサイド層13およびゲート電極18に接続させる。続いて、コンタクトプラグの上面に接続された配線を形成することで、本実施の形態の半導体装置が完成する。なお、ゲート電極18の上面にシリサイド層を形成する工程は必要ない。
【0096】
本実施の形態の半導体装置は、前記実施の形態2において説明した半導体装置とほぼ同様の構造を有しているが、ゲート電極18の直下の半導体基板1の主面に、ハロー領域19が形成されていない領域がある点で前記実施の形態2と異なる。つまり、本実施の形態の半導体装置におけるMOSFETQcは、前記実施の形態2と異なり、ゲート電極18の両側の側壁(両端部)の下方の半導体基板1の主面のみにハロー領域19が形成されている。
【0097】
言い換えれば、ゲート電極18の直下の半導体基板1の上面を第1領域とし、ゲート電極18のゲート長方向(第1方向)において第1領域に隣接する第2領域が半導体基板1の上面に存在し、同方向において第1領域および第2領域を挟むように第3領域が半導体基板1の上面に存在する場合、本実施の形態では第2領域のみにハロー領域19が形成される。つまり、オフセットスペーサOSS(
図13参照)の直下の半導体基板1の上面が第2領域であり、ソース・ドレイン領域の直下の半導体基板1の上面が第3領域である。この場合、
図15を用いて説明したイオン注入工程で注入したn型またはp型の不純物の濃度は、第1領域および第3領域のいずれの領域よりも第2領域の方が高い。
【0098】
上述したように、ハロー領域19が拡散層12の直下の半導体基板1の主面に形成されている場合、拡散層12とハロー領域19との間の拡散容量(寄生容量、接合容量)が大きくなる問題が生じる。これに対し、本実施の形態では、ハロー領域19を拡散層12の直下に形成していないため、拡散容量の増大に起因するMOSFETの信号のノイズの発生または遅延の発生を防ぐことができる。また、半導体基板1の主面にハロー領域19を形成することで、短チャネル特性を抑制することができる。
【0099】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0100】
例えば、前記実施の形態1〜3では、半導体基板上にnチャネル型のMOSFETを形成する場合について説明したが、半導体素子はpチャネル型のMOSFETでもよく、また、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型のFETであってもよい。
【0101】
また、前記実施の形態1のハロー領域はp型半導体領域であるものとして説明したが、前記実施の形態1〜3のハロー領域の導電型は、その上部のMOSFETのチャネルの導電型と同じ導電型であってもよく、また、異なる導電型であってもよい。
【0102】
その他、実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
(1)(a)第1方向において互いに隣接する第1領域および第2領域を上面に有する支持基板と、前記支持基板上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された半導体層とにより構成される半導体基板を準備する工程と、
(b)前記半導体層上に第1膜を形成する工程と、
(c)前記第1膜を加工して、前記第1領域の直上に前記第1膜からなる犠牲パターンを形成する工程と、
(d)前記犠牲パターンから露出する前記半導体層上にエピタキシャル層を形成する工程と、
(e)前記エピタキシャル層に第1導電型の不純物を導入することで、前記第1方向において前記犠牲パターンを挟む一対のソース・ドレイン領域を形成する工程と、
(f)前記ソース・ドレイン領域および前記半導体層を覆うように、前記半導体層上に第2絶縁膜を形成する工程と、
(g)前記第2絶縁膜の上面を一部除去し、露出させた前記犠牲パターンを除去することで、前記半導体層の上面を露出する開口部を前記第2絶縁膜に形成する工程と、
(h)前記(g)工程の後、前記支持基板の上方から前記開口部の直下の前記第1領域に前記第1導電型または第2導電型の不純物を導入することにより、第1拡散層を形成する工程と、
(i)前記(h)工程の後、前記開口部の底部の前記半導体層上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
を有する、半導体装置の製造方法。
(2)前記ソース・ドレイン領域は前記第2領域の直上に形成されており、
前記支持基板の上面に導入された前記第1導電型または前記第2導電型の不純物の濃度は、前記第2領域よりも前記第1領域の方が高い、(1)記載の半導体装置の製造方法。
(3)(a)第1方向において互いに隣接する第1領域および第2領域を上面に有する支持基板と、前記支持基板上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された半導体層とにより構成される半導体基板を準備する工程と、
(b)前記第1領域の直上であって、前記半導体層上に第1膜を形成する工程と、
(c)前記第1膜を加工して、前記第1領域の直上に前記第1膜からなる犠牲パターンを形成する工程と、
(d)前記犠牲パターンの側壁を覆い、前記半導体層の上面に接する第3絶縁膜を形成する工程と、
(e)前記犠牲パターンおよび前記第3絶縁膜から露出する前記半導体層上にエピタキシャル層を形成する工程と、
(f)前記エピタキシャル層に第1導電型の不純物を導入することで、前記第1方向において前記犠牲パターンを挟む一対のソース・ドレイン領域を形成する工程と、
(g)前記ソース・ドレイン領域および前記半導体層を覆うように、前記半導体層上に第2絶縁膜を形成する工程と、
(h)前記第2絶縁膜の上面を一部除去し、露出させた前記第3絶縁膜を除去することで、前記半導体層の上面を露出する第1開口部を前記第2絶縁膜と前記犠牲パターンとの間に形成する工程と、
(i)前記(h)工程の後、前記支持基板の上方から前記第1開口部の直下の前記第2領域に前記第1導電型または第2導電型の不純物を導入することにより、第1拡散層を形成する工程と、
(j)前記(i)工程の後、前記犠牲パターンを除去することで、前記半導体層の上面を露出する第2開口部を前記第2絶縁膜に形成する工程と、
(k)前記第2開口部の底部の前記半導体層上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
を有する、半導体装置の製造方法。
(4)前記支持基板の上面に導入された前記第1導電型または前記第2導電型の不純物の濃度は、前記第1領域よりも前記第2領域の方が高い、(3)記載の半導体装置の製造方法。
(5)前記ソース・ドレイン領域は、前記第1方向において前記第1領域および前記第2領域を挟むように前記支持基板の上面に形成された、第3領域の直上に形成されており、
前記支持基板の上面に導入された前記第1導電型または前記第2導電型の不純物の濃度は、前記第3領域よりも前記第2領域の方が高い、(3)記載の半導体装置の製造方法。
(6)前記(h)工程の後であって、前記(j)工程の前に、前記支持基板の上方から前記第1開口部の直下の前記半導体層に前記第1導電型の不純物を、前記エピタキシャル層よりも低い濃度で導入することにより、エクステンション領域を形成する工程を有する、(3)記載の半導体装置の製造方法。