(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6169240
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】リノール酸含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20170713BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20170713BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20170713BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20170713BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20170713BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20170713BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/14
A61Q19/02
A61K8/37
A61K8/64
A61K8/81
A61K8/73
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-211570(P2016-211570)
(22)【出願日】2016年10月28日
【審査請求日】2016年12月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保地 秀一
(72)【発明者】
【氏名】岸田 聡美
(72)【発明者】
【氏名】堂本 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】三井 司
【審査官】
松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第98/056338(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/102364(WO,A1)
【文献】
特開2005−350445(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/101153(WO,A1)
【文献】
特表2007−522205(JP,A)
【文献】
特表平07−509001(JP,A)
【文献】
特表2002−500630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 − 8/99
A61Q 1/00 − 90/00
A61K 9/127− 9/133
B01J 13/00 − 13/22
A61K 31/19
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相、及び当該連続相中に分散した多層リポソームを含有する組成物であって、
前記連続相が、カルボキシビニルポリマー及びセルロース系高分子からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有し、
前記多層リポソームが、その層中にカチオン化された植物タンパク質を含み、かつリノール酸及び/又はその誘導体を内包しており、
リノール酸の誘導体は、リノール酸塩、リノール酸エステル、(リノール酸/オレイン酸)トコフェロール、(クエン酸/乳酸/リノール酸/オレイン酸)グリセリル、(オレイン酸/リノール酸/リノレン酸)ポリグリセリズ、(ヒドロキシステアリン酸/リノレン酸/リノール酸)ポリグリセリズ、トリ(カプリル酸/カプリン酸/リノール酸)グリセリル、プロリンリノール酸PEG−4、ジリノール酸、ジリノール酸ナトリウム、ジリノール酸ジイソステアリル、ジリノール酸ジイソプロピル、ジリノール酸ジメチコンフルオロアルコール、水添ダイマージリノール酸PEG−20、水添ダイマージリノール酸PEG−30、水添ダイマージリノール酸PEG−40、水添ダイマージリノール酸PEG−60、水添ダイマージリノール酸PEG−80、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、ダイマージリノール酸ジオクチルドデシル、ダイマージリノール酸ジセテアリル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル、ダイマージリノール酸トリイソステアリン酸ポリグリセリル−3、ダイマージリノール酸リノールアミドプロピルジメチルアミン、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ジ(C20−40)アルキル、ダイマージリノール酸オクチルドデシル/PPG−3ミリスチルエーテル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ポリリノール酸スクロース、トリリノール酸トリイソステアリル、(PPG−26/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソステアリン酸ポリグリセリル−2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル−2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(エチレンジアミン/ダイマージリノール酸ステアリル)コポリマー、(ジエチレングリコール/ダイマージリノール酸)コポリマー、(ジエチレングリコール/水添ダイマージリノール酸)コポリマー、(ジグリセリン/ジリノール酸/ヒドロキシステアリン酸)コポリマー、(ジリノール酸/エチレンジアミン)コポリマー、(ジリノール酸/ブタンジオール)コポリマー、(ジリノール酸/プロパンジオール)コポリマー、(ダイマージリノール酸/ステアリン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル−10、ダイマージリノール酸(IPDI/PEG−15コカミン)コポリマー、ビスジアルキル(C14−18)アミド(エチレンジアミン/水添ダイマージリノール酸)コポリマー、ビスジオクタデシルアミド(ダイマージリノール酸/エチレンジアミン)コポリマー、異性化リノール酸、異性化リノール酸カルニチン、及び異性化リノール酸グルタチオンカリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、
組成物。
【請求項2】
前記セルロース系高分子が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースガム、及びメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン化された植物タンパク質が、
式:Rp−N+R1R2R3
[式中、Rpは植物タンパク質を表し、
R1及びR2は同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を表し、及び
R3は炭素数10〜18のアルキル基を表す。]
型にカチオン化された植物タンパク質である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記植物タンパク質が、加水分解若しくはヒドロキシプロピル化、又は加水分解及びヒドロキシプロピル化された植物タンパク質である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記植物タンパク質が、小麦タンパク質、米タンパク質、及び大豆タンパク質からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン化された植物タンパク質が、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質、又はココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質である、請求項3〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
液状組成物である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
外用組成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リノール酸含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リノール酸に代表される多価不飽和脂肪酸は美白作用を有しており、これらを外用組成物に配合することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、多価不飽和脂肪酸は経時安定性が悪いことが知られており、組成物に含有される多価不飽和脂肪酸は経時でその含有量が低下する。さらに、多価不飽和脂肪酸を配合した組成物が変色したり、異臭を発したりする場合がある。
【0004】
特に、日本国においては、法令等により、多価不飽和脂肪酸を有効成分として外用組成物に配合する場合、規定量に対して製造後3年間は90%以上が安定に残存するようにすることが求められているため、多価不飽和脂肪酸の安定化技術の開発が望まれている。
【0005】
これまでに検討された多価不飽和脂肪酸の経時安定性を向上させる技術としては、例えば、オイゲノール、イソオイゲノール、ビタミンK等を配合する技術(特許文献1)、多価不飽和脂肪酸類をエステル化して配合する技術(特許文献2〜4)、高度不飽和脂肪酸含有脂質を含む内容物を窒素ガスが封入されたエアゾールとする技術(特許文献5)、ビタミンEなどの分散剤を多価不飽和脂肪酸類に対して特定量配合したエマルションとする技術(特許文献6)、多価不飽和脂肪酸を含むリポソームが分散する連続相にトコフェロール及び/又はフィチン酸を配合する技術(特許文献7)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−72654号公報
【特許文献2】特開2007−126438号公報
【特許文献3】特開2007−269683号公報
【特許文献4】特開2007−269684号公報
【特許文献5】特開平8−81326号公報
【特許文献6】特表2010−502733号公報
【特許文献7】国際公開第2012/102364号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Monthly Book Derma,98,67−74,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、リノール酸及び/又はその誘導体の経時安定性をより高めた組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、リノール酸及び/又はその誘導体を特定のリポソームに内包させ、当該リポソームを、特定の高分子化合物を含有する連続相(分散媒)に分散させることにより、リノール酸及び/又はその誘導体の経時安定性が格段に向上することを見出した。本発明者は、かかる知見に基づき、さらなる研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、代表的には、以下の項に記載の組成物を提供するものである。
【0011】
項1.
連続相、及び当該連続相中に分散した多層リポソームを含有する組成物であって、
前記連続相が、カルボキシビニルポリマー及びセルロース系高分子からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有し、
前記多層リポソームが、その層中にカチオン化された植物タンパク質を含み、かつリノール酸及び/又はその誘導体を内包している、
組成物。
項2.
前記セルロース系高分子が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースガム、及びメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の組成物。
項3.
前記カチオン化された植物タンパク質が、
式:R
p−N
+R
1R
2R
3
[式中、R
pは植物タンパク質を表し、
R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を表し、及び
R
3は炭素数10〜18のアルキル基を表す。]
型にカチオン化された植物タンパク質である、上記項1又は2に記載の組成物。
項4.
前記植物タンパク質が、加水分解若しくはヒドロキシプロピル化、又は加水分解及びヒドロキシプロピル化された植物タンパク質である、上記項3に記載の組成物。
項5.
前記植物タンパク質が、小麦タンパク質、米タンパク質、及び大豆タンパク質からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項4に記載の組成物。
項6.
前記カチオン化された植物タンパク質が、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質、又はココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質である、上記項3〜5のいずれかに記載の組成物。
項7.
液状組成物である、上記項1〜6のいずれかに記載の組成物。
項8.
外用組成物である、上記項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リポソーム内に内包されるリノール酸及び/又はその誘導体の経時安定性を格段に向上させることができる。これにより、リノール酸及び/又はその誘導体が有する美白作用などを有効に活用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の組成物は、多層リポソームが連続層に分散している分散系である。即ち、連続層が分散媒であり、多層リポソームが分散質である。
【0015】
本発明の組成物における連続層は、カルボキシビニルポリマー及びセルロース系高分子からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性高分子を含有する。連続層にこれらの水溶性高分子を配合することにより、リノール酸及び/又はその誘導体の経時安定性を格段に向上させることができる。
【0016】
カルボキシビニルポリマーはアクリル酸系の水溶性高分子であり、本発明の属する技術分野ではカルボマーと称されることもある。本発明で用いるカルボキシビニルポリマーには、カルボキシビニルポリマーの他、カルボキシビニルポリマーの塩類も包含される。カルボキシビニルポリマーの塩類としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、(モノ、ジ又はトリ)エタノールアミン塩、アミノ酸塩などが挙げられる。より具体的には、カルボマー(Ca/K)、カルボマーAMP、カルボマーAMPD、カルボマーK、カルボマーNa、カルボマーTEA、カルボマーアルギニン等を例示することができる。また、本発明で用いるカルボキシビニルポリマーとしては、例えば、化粧品分野において増粘剤などとして使用可能なものであれば、その粘度や分子量などは特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、0.2%水溶液における粘度(25℃)が、13,000〜35,000mPa・s程度のものなどが挙げられる。また、このような粘度を有するカルボキシビニルポリマーは市販されており、例えば、Carbopol 940(Lubrizol社)などとして商業的に入手することができる。
【0017】
本発明で用いるセルロース系高分子は、セルロースの水酸基をエーテル化又はエステル化した高分子若しくはその塩類である。本発明で用いるセルロース系高分子としては、例えば、化粧品分野において増粘剤などとして使用可能なものであれば、その粘度や分子量などは特に制限されず、公知のものを使用することができる。
【0018】
具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、セルロースガムなどを例示することができる。これらの中でも、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びセルロースガムは、リノール酸及び/又はその誘導体の経時安定性を高める効果が高い点で好ましい。
【0019】
セルロース系高分子の重量平均分子量は、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、例えば、50000〜2000000g/mol程度のものを使用することができる。なお、当該重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーなどにより測定することができる。
【0020】
また、セルロース系高分子のエーテル化又はエステル化の程度は、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されない。
【0021】
なお、上記したカルボキシビニルポリマー及びセルロース系高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、2種以上を組み合わせて用いる場合には、各成分の配合割合は特に制限されない。
【0022】
本発明の組成物におけるカルボキシビニルポリマー及びセルロース系高分子の含有量は特に制限されないが、本発明の組成物全量を基準として、0.01〜5質量%程度とすることが好ましく、0.1〜2質量%程度とすることがより好ましく、0.5〜1.5質量%程度とすることが特に好ましい。
【0023】
本発明の組成物における多層リポソームには、リノール酸及び/又はその誘導体が内包されている。なお、「リノール酸及び/又はその誘導体が内包されている」とは、リノール酸及び/又はその誘導体がリポソームの内部に封入されている状態を意味する。
【0024】
本発明で用いるリノール酸は、脂肪酸形態のリノール酸であってもよいし、リノール酸塩であってもよい。リノール酸塩としては、例えば、リノール酸ナトリウム塩、リノール酸カリウム塩などのリノール酸金属塩;リノール酸アルギニン塩、リノール酸リジン塩などのリノール酸アミノ酸塩;リノール酸モノエタノールアミン塩、リノール酸トリエタノールアミン塩などのリノール酸アミン塩;等が挙げられる。
【0025】
また、本発明では、リノール酸に代えて又は加えて、リノール酸の誘導体を用いることもできる。リノール酸の誘導体としては、例えば、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、リノール酸イソステアリル、リノール酸オレイル、リノール酸グリセリル、リノール酸トコフェロール、リノール酸レチノール、リノール酸ラノリル、リノール酸ポリグリセリル−10、リノール酸メントールエステルなどのリノール酸エステルを例示することができる。
【0026】
さらに、本発明で用いるリノール酸の誘導体には、日本化粧品工業連合会の定める表示名称として「リノール酸」を使用できるものも含まれる。このようなリノール酸誘導体としては、例えば、(リノール酸/オレイン酸)トコフェロール、(クエン酸/乳酸/リノール酸/オレイン酸)グリセリル、(オレイン酸/リノール酸/リノレン酸)ポリグリセリズ、(ヒドロキシステアリン酸/リノレン酸/リノール酸)ポリグリセリズ、トリ(カプリル酸/カプリン酸/リノール酸)グリセリル、プロリンリノール酸PEG−4、ジリノール酸、ジリノール酸ナトリウム、ジリノール酸ジイソステアリル、ジリノール酸ジイソプロピル、ジリノール酸ジメチコンフルオロアルコール、水添ダイマージリノール酸PEG−20、水添ダイマージリノール酸PEG−30、水添ダイマージリノール酸PEG−40、水添ダイマージリノール酸PEG−60、水添ダイマージリノール酸PEG−80、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、ダイマージリノール酸ジオクチルドデシル、ダイマージリノール酸ジセテアリル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル、ダイマージリノール酸トリイソステアリン酸ポリグリセリル−3、ダイマージリノール酸リノールアミドプロピルジメチルアミン、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ジ(C20−40)アルキル、ダイマージリノール酸オクチルドデシル/PPG−3ミリスチルエーテル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ポリリノール酸スクロース、トリリノール酸トリイソステアリル、(PPG−26/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソステアリン酸ポリグリセリル−2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル−2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(エチレンジアミン/ダイマージリノール酸ステアリル)コポリマー、(ジエチレングリコール/ダイマージリノール酸)コポリマー、(ジエチレングリコール/水添ダイマージリノール酸)コポリマー、(ジグリセリン/ジリノール酸/ヒドロキシステアリン酸)コポリマー、(ジリノール酸/エチレンジアミン)コポリマー、(ジリノール酸/ブタンジオール)コポリマー、(ジリノール酸/プロパンジオール)コポリマー、(ダイマージリノール酸/ステアリン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル−10、ダイマージリノール酸(IPDI/PEG−15コカミン)コポリマー、ビスジアルキル(C14−18)アミド(エチレンジアミン/水添ダイマージリノール酸)コポリマー、ビスジオクタデシルアミド(ダイマージリノール酸/エチレンジアミン)コポリマー、異性化リノール酸、異性化リノール酸カルニチン、異性化リノール酸グルタチオンカリウムなどが挙げられる。
【0027】
本発明の組成物におけるリノール酸及び/又はその誘導体の含有量は特に制限されないが、組成物全量を基準として、0.01〜2質量%程度が好ましく、0.1〜1.5質量%程度がより好ましく、0.5〜1.2質量%程度がさらに好ましく、0.9〜1.1質量%程度が特に好ましい。リノール酸及び/又はその誘導体の含有量が0.01質量%以上であれば、本発明の組成物を用いることにより、美白効果がより一層効率よく得られ、一方2質量%以下であると、組成物において経時で異臭や変色が発生したりするおそれがより小さくなるため好ましい。
【0028】
本発明で用いる多層リポソームは、リン脂質が自己組織化によって形成した複数層からなる脂質複合体であり、レシチンを構成成分(特に膜構成成分)として含むものが好ましい。レシチンとしては特に制限されず、例えば、大豆レシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、卵黄レシチン、卵白レシチンなどが挙げられる。また、レシチンに代えて又は加えて、レシチン誘導体を用いてもよい。レシチン誘導体としては、水素添加レシチン、上記で例示したレシチン中のリン脂質にポリエチレングリコール、アミノグリカン類を導入したものなどを例示することができる。これらの中でも、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加卵黄レシチンが好ましく、大豆レシチン、卵黄レシチンがより好ましい。また、レシチン中に存在するリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンなど)の純度を高めた精製レシチンを用いることもできる。これらのレシチン及びレシチン誘導体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、本発明で用いる多層リポソームは、その層中にカチオン化された植物タンパク質を含む。
【0030】
本発明で用いるカチオン化された植物タンパク質は、式:R
p−N
+R
1R
2R
3[式中、R
pは植物タンパク質を表し、R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を表し、及びR
3は炭素数10〜18のアルキル基を表す。]型にカチオン化された植物タンパク質である。
【0031】
上記式中、R
pで表わされる植物タンパク質は、加水分解若しくはヒドロキシプロピル化、又は加水分解及びヒドロキシプロピル化された植物タンパク質であることが好ましい。また、当該植物タンパク質としては、小麦タンパク質、米タンパク質、大豆タンパク質であることが好ましい。
【0032】
上記式中、R
1及びR
2で表わされる炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの直鎖又は分岐状のアルキル基が挙げられる。中でも、メチル基、又はエチル基が好ましい。
【0033】
上記式中、R
3で表わされる炭素数10〜18のアルキル基としては、デシル基、ラウリル基、ドデシル基などの直鎖又は分岐状のアルキル基が挙げられる。中でも、ラウリル基が好ましい。
【0034】
上記式で表わされるカチオン化された植物タンパク質としては、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解小麦タンパク質、ステアリン酸ジモニウムヒドロキシプロピル加水分解小麦タンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解小麦タンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解米タンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質などを例示することができ、これらの中でもラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質、又はココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質が好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、例えば、リノール酸及び/又はその誘導体を内包した多層リポソームが液体の分散媒(連続層)に分散しているリポソーム分散液を調製した後、当該リポソーム分散液の分散媒(連続層)にカルボキシビニルポリマー及び/又はセルロース系高分子を添加することにより製造することができる。リポソーム分散液の分散媒は通常、水を用いることができる。
【0036】
リポソーム分散液の調製方法は特に制限されず、公知の方法により調製することができる。例えば、下記の(1)〜(4)の方法などが挙げられる。
(1)リン脂質(レシチン)、リノール酸及び/又はその誘導体、及びその他の成分を混合した後、pH調製剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを形成させる方法、
(2)リン脂質(レシチン)、リノール酸及び/又はその誘導体、及びその他の成分をアルコール又は多価アルコールなどに溶解し、pH調製剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを形成させる方法、
(3)超音波、フレンチプレスやホモジナイザーなどを用いて、リン脂質(レシチン)、リノール酸及び/又はその誘導体、その他の成分を水中で複合体化させ、リポソームを形成させる方法、
(4)エタノールにリン脂質(レシチン)、リノール酸及び/又はその誘導体、その他の成分を混合溶解し、当該エタノール溶液を塩化カリウム水溶液に添加した後にエタノールを除去し、リポソームを形成させる方法。
【0037】
また、本発明の組成物は、上記したリポソーム分散液の調製時にカルボキシビニルポリマー及び/又はセルロース系高分子を添加することによっても製造することができる。
【0038】
また、上記したリポソーム分散液には、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを配合することができる。つまり、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを材料として用いてリポソーム分散液を製造してもよい。リポソーム分散液に配合する高分子としては、例えばアルギン酸ナトリウムなどが例示できるが、これらに限定されるものでもない。また、高分子の配合量は特に限定されず、例えば、リポソーム分散液全体に対して、0.001〜20質量%程度、好ましくは 0.01〜10質量%程度、特に好ましくは 0.05〜5質量%程度である。蛋白質及びその加水分解物としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン等の蛋白質、これら蛋白質の加水分解物、当該加水分解物の塩、当該加水分解物のエステル、あるいは当該加水分解物が酵素処理されたものが挙げられる。蛋白質及びその加水分解物の配合量は特に限定されず、例えば、リポソーム分散液全体に対して、0.001〜5質量%程度、好ましくは0.01〜1質量%程度である。ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ムコイチン硫酸、ヘパリンとその誘導体、及びそれらの塩類などが挙げられるが、特にコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びこれらのナトリウム塩が好ましい。ムコ多糖の配合量は特に限定されず、例えば、リポソーム分散液全体に対して、0.0005〜5質量%程度、好ましくは0.001〜1質量%程度である。
【0039】
また、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、カルボキシビニルポリマー及び/又はセルロース系高分子以外の成分も連続相へ含ませてもよい。例えば、リポソーム分散液の分散媒が水であり、その他の成分として難水溶性の物質(例えば、トコフェロールなど)を用いるときは、界面活性剤をさらに加えてもよい。
【0040】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル活性剤などが挙げられ、中でもヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノリノール酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステルなどのヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。これら界面活性剤は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
本発明の組成物は、外用組成物(皮膚に適用する組成物)として用いることが好ましい。外用組成物としては、例えば、医薬組成物、医薬部外品組成物、及び化粧品組成物が挙げられる。特に、肌の美白効果を有する外用組成物(即ち、美白用外用組成物)として、医薬品や医薬部外品、化粧品として使用することが好ましい。剤形としては、特に限定するものではないが、フェイスパック、ペースト、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、乳液、美容液、化粧水、スプレー剤などが挙げられる。
【0042】
本発明の組成物を外用組成物として用いる場合、適用対象は特に限定されないが、好ましくは肌の美白を望むヒトである。
【0043】
本発明を外用組成物として用いる場合、さらに、通常、外用組成物の製造に用い得る成分を用いることもできる。このような成分としては、保湿剤、油成分、着色剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、香料、紫外線吸収・散乱剤、抗酸化剤、薬効成分などが例示できる。
【0044】
保湿剤としては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどに代表される多価アルコール類、高分子多糖類、植物抽出エキス、微生物代謝物などが挙げられる。これら保湿剤は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
油成分としては、動物油、植物油、鉱物油、炭化水素油、エステルオイル、ワックス類、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油及びその誘導体、ワセリン、精油などが挙げられる。これら油成分は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、本発明を外用組成物として用いる場合、リポソームの調製において、本発明の効果を損なわない範囲で、通常リポソームに含ませ得る成分を用いることもできる。例えば、アスコルビン酸などの抗酸化剤、乳酸、クエン酸などの有機酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸などの天然高分子、ポリエチレングリコール、などの合成高分子、トレハロース、ラクチュロース、マルチトールなどの糖質、グリセリンなどのポリオール等が例示される。
【0047】
また、本発明は、上記本発明の組成物を対象の皮膚に適用する工程を含む、肌を美白にする方法(肌美白方法)も含む。当該方法は、例えば治療目的及び美容目的で用いられ得る。すなわち、当該肌美白方法は、肌美白治療方法及び肌美白美容方法を包含する。ここでの美白方法は、具体的には、例えばシミやくすみ、肝斑、炎症後色素沈着などの治療又は美容のために用いることができる。なお、適用対象や適用量は上述した通りである。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0049】
製造例:組成物の調製
下記表1に示す各種成分を下記表1に示す割合で配合した後、ホモジナイザーで処理して多層リポソームを形成させることにより実施例1〜5及び比較例1〜6の組成物を調製した。なお、実施例1〜5及び比較例4〜6の組成物に含まれる多層リポソームは、その層中にココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質を含んでおり、比較例1〜3の組成物に含まれる多層リポソームには、その層中にココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質は含まれていない。
【0050】
試験例1:酸化促進試験
上記製造例で調製した実施例1〜5及び比較例1〜6の組成物を蒸留水で10%水溶液に調整し、60mMのAAPH(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)と1:1の割合で均一混合し、37℃で4時間反応させた後、0℃で冷却を行った。なお、AAPHは酸化促進剤として知られている物質であり、加熱による熱分解によってラジカルを発生させる。そして、当該ラジカルがリポソーム分散液中に含まれるリノール酸と反応することにより、酸化が促進される。
【0051】
その後、高速液体クロマトグラフィーによりリノール酸の定量を行い、加熱前のリノール酸の定量値を基準として、4時間加熱後のリノール酸の定量値からリノール酸の酸化率(%)を算出した。リノール酸の酸化率が、2.5%未満のものを「◎」、2.5%以上5.0%未満のものを「○」、5.0%以上10.0%未満のものを「△」、10.0%以上のものを「×」と評価した。当該試験によるリノール酸の酸化率及び評価結果を下記表1の「リノール酸の酸化促進試験」欄に示す。
【0052】
下記表1から明らかなように、実施例1〜5の組成物ではいずれもリノール酸の酸化率が比較例1〜6の組成物よりも低いことが確認された。比較例1〜3との比較により、リノール酸を層中にカチオン化植物タンパク質を含む多層リポソームに内包させることにより、リノール酸の酸化を抑制できることが分かった。また、比較例4〜6との比較により、連続相にセルロース系高分子又はカルボキシビニルポリマーを配合することにより、リノール酸の酸化を抑制できることも分かった。
【0053】
試験例2:外観性状の観察
上記製造例で調製した実施例1〜5及び比較例4〜6の組成物を調製後、5℃で8ヶ月間放置した後、放置前と比較して、各組成物の色味の変化の有無、凝集の有無(凝集が認められる場合には、凝集物の粒子の大きさ)、及び分離の有無を目視で確認することにより、組成物の外観性状を観察した。外観性状の評価は、以下の評価基準により行った。
【0054】
<色味の変化>
○:僅かに色味の変化が確認された。
△:やや色味の変化が確認された。
×:色味の変化が確認された。
【0055】
<凝集の有無>
○:凝集物は確認されなかった、又はごく小さな粒子径の凝集物が確認された。
×:大きな粒子径の凝集物が確認された。
【0056】
<分離の有無>
○:分離は確認されなかった。
×:分離が観察された。
【0057】
下記表1から明らかなように、連続相にセルロース系高分子又はカルボキシビニルポリマーを配合することにより、長期間保存した場合であっても外観性状がほとんど変化しないことが確認された。
【0058】
下記表1中で示される数値は、特に断りのない限り、「質量%」を示している。
【0059】
【表1】
【要約】
【課題】リノール酸及び/又はその誘導体の経時安定性をより高めた組成物を提供する。
【解決手段】連続相、及び当該連続相中に分散した多層リポソームを含有する組成物であって、前記連続相が、カルボキシビニルポリマー及びセルロース系高分子からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有し、前記多層リポソームが、その層中にカチオン化された植物タンパク質を含み、かつリノール酸及び/又はその誘導体を内包している、組成物。
【選択図】なし