特許第6169275号(P6169275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6169275血管処置システム、血管処置方法及び血管処置キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169275
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】血管処置システム、血管処置方法及び血管処置キット
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20170713BHJP
   A61F 2/06 20130101ALI20170713BHJP
   A61B 18/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   A01N1/02
   A61F2/06
   A61B18/00
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-527118(P2016-527118)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公表番号】特表2016-531106(P2016-531106A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2014047146
(87)【国際公開番号】WO2015009992
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/847,794
(32)【優先日】2013年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オースティン ウィリアム ジー. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】マコーマック マイケル
(72)【発明者】
【氏名】レドモンド ロバート ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】コヘヴァー イレネ イー.
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−510431(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0017532(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0077697(US,A1)
【文献】 特開昭56−151038(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/044407(WO,A1)
【文献】 米国特許第04908013(US,A)
【文献】 特表平11−514869(JP,A)
【文献】 特表2004−537365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
A61L27/36
A61F 2/00− 2/80
A61B13/00−18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管処置システムであって、
解剖学的血管を収容するために採用される、少なくとも1つの開口部を画定する筐体と、
前記筐体と連通しており、湿気を前記筐体内に導入することで前記解剖学的血管の乾燥を防ぐために採用される加湿器と、を備え
前記開口部は、人間の前腕部の、手のひら側の表面に実質的に一致するように、凹型の断面、及び、人間の皮膚に対して実質的に気密な密封状態を作り出すためのガスケット、のうち少なくとも一つを有する、ことを特徴とする血管処置システム。
【請求項2】
請求項1に記載された血管処置システムは更に、
不動態化剤を前記解剖学的血管に塗布するために採用された塗布部を備えることを特徴とする血管処置システム。
【請求項3】
請求項2に記載された血管処置システムにおいて、前記塗布部は、ノズル、噴霧器、ブラシ及び液滴開口部からなる群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする血管処置システム。
【請求項4】
請求項2に記載された血管処置システムは更に、
前記塗布部と流体により連通している不動態化剤貯蔵部を備えることを特徴とする血管処置システム。
【請求項5】
請求項1に記載された血管処置システムは更に、
不動態化剤に化学発光反応を誘発するのに十分な波長を有する光を放射するために採用される発光部を備えることを特徴とする血管処置システム。
【請求項6】
請求項5に記載された血管処置システムにおいて、前記十分な波長とは400nm〜700nmの間である、又は532nmである、ことを特徴とする血管処置システム。
【請求項7】
請求項5に記載された血管処置システムは更に、
前記発光部により放射された前記光を、前記筐体内で反射するために採用される、少なくとも1つの反射器、及び/又は、前記発光部により放射された前記光を、前記筐体内に実質的に閉じ込めるために採用される、少なくとも1台の遮蔽体、を備えることを特徴とする血管処置システム。
【請求項8】
請求項1に記載された血管処置システムにおいて、前記加湿器は、加湿された空気の管を含むか、又は、前記筐体内で継続使用される量の水、ノズル、噴霧器、気化器、超音波加湿器、及び液滴開口部からなる群から選択される少なくとも1つを含む、ことを特徴とする血管処置システム。
【請求項9】
請求項1に記載された血管処置システムは更に、
前記血管処置システムの少なくとも1つの構成要素の動作を制御するためにプログラムされた制御部を備えることを特徴とする血管処置システム。
【請求項10】
キットであって、
請求項1〜の何れか1項に記載の血管処置システムと、
不動態化剤と、
取扱説明書と、を備えることを特徴とするキット。
【請求項11】
請求項10に記載されたキットにおいて、前記不動態化剤は、ローズベンガル、トルイジンブルー、リボフラビン、ゲニピン、及び、EDCのうち少なくとも何れか一つを含む架
橋剤を含むことを特徴とするキット。
【請求項12】
静脈グラフトを作成する方法であって、
光活性架橋剤又は化学架橋剤である組織不動態化剤を、切除された解剖学的血管に塗布する塗布工程と、
前記組織不動態化剤が硬化している間に、前記切除された解剖学的血管を加湿された容器内に配置する配置工程と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載された方法において、前記組織不動態化剤は光活性架橋剤を有し、前記方法は更に
光を好適な波長で放射することにより、前記光活性架橋剤を硬化させる放射工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載された血管処置システムは更に、
前記凹型の断面を有する開口部又は前記ガスケットを有する開口部に対向する位置にある1つ又は複数のクランプと、
前記解剖学的血管の内腔に不動態化剤又は他の異物の侵入を防ぐため、前記解剖学的血管の開口端を被覆又は保護するように構成された1つ又は複数のクランプと、を有することを特徴とする血管処置システム。
【発明の詳細な説明】
【関連する出願の参照】
【0001】
本出願は、2013年7月18日に出願された米国特許仮出願第61/847,794号に基づく優先権を主張するものである。更に本出願は、2012年7月20日に出願された米国特許仮出願第61/674,235号と、2013年3月14日に出願された米国特許仮出願第61/784,708号と、2013年7月19日に出願された国際出願PCT/US2013/051333号と、に関連する発明主題を含んでいる。本出願は前述した各出願に開示された内容の全てを援用する。
【背景技術】
【0002】
静脈の切断面を利用し血管を移植する方法は、あらゆる種類の体の異常を元に戻し、治療し得る。例えば脚の大伏在静脈のような、さほど重要でない体の一部から摘出した静脈部分を使用することで、ある種の冠状動脈バイパス処置で行われるように、損傷を受けた若しくは機能不全となった、体の他の一部の血管(動脈若しくは静脈)と交換する、又は末梢神経疾患を治療することが可能である。更に腕の静脈は、吻合により近傍の動脈に直接接合されることにより動静脈瘻を形成し、血液透析治療が必要な患者の血管アクセスを容易にし得る。
【0003】
静脈移植及び動静脈瘻による血管の長期の開存率は低く、これは血管内膜の過形成、血管内部の肥大化、並びにそれに続くアテローム性動脈硬化の併発及び促進を原因とする血管狭窄のような要因が起因している。血管内膜の過形成は血管内膜の損傷が原因となり得る。この損傷は、移植された静脈が動脈圧を直接受けて過度に伸縮した後に、確実に起こる。
【発明の概要】
【0004】
本開示で例示されている実施形態は、光線療法を活用し静脈部分や他の血管を処置することにより、血管の外面を強化及び/又は補強し、並びに該血管の開存性を向上させる方法及び装置を提供する。前記装置は、少なくとも前記血管の一部を適切な環境下で固定する設置部と、(ローズベンガルの様な)不動態化剤を、前記血管の組織の表面部分に噴霧又は注入するために採用される塗布部と、均一に且つ可変に前記組織の表面を照射することにより、光活性剤を活性化させ前記血管組織の特性を向上させ得る、任意の発光部と、を備える。
【0005】
前記装置は、移植に先立って体から切除されたある静脈部分移植材料を、体の他の一部に移植する処置を行うために、生体外で使用され得る。ある実施形態において本方法及び装置は、患者の体内の処置の間に動静脈瘻等における静脈部分の処置を行うために使用され得る。
【0006】
本開示におけるこれら及び他の目的、特徴、並びに利点は、以下本開示に例示される実施形態の詳細な説明を、添付の例示される図面と共に読むことによって明らかとなる。
【0007】
本発明の一態様は血管処置システムを提供する。血管処置システムは、解剖学的血管を収容するために採用される、少なくとも1つの開口部を画定する筐体と、前記筐体と連通しており、湿気を前記筐体内に導入することで前記解剖学的血管の乾燥を防ぐために採用される加湿器と、を備える。
【0008】
また、例えば、血管処置システムは更に、不動態化剤を前記解剖学的血管に塗布するために採用された塗布部を備える。更に、前記塗布部は、ノズル、噴霧器、ブラシ及び液滴開口部からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが可能である。また、前記塗布部と流体により連通している不動態化剤貯蔵部を備えることが可能である。
【0009】
また更に、不動態化剤に化学発光反応を誘発するのに十分な波長を有する光を放射するために採用される発光部を備えることが可能である。また、前記十分な波長とは約400nm〜700nmの間である。また、前記十分な波長とは約532nmである。また、前記十分な波長とは約700nm〜約1,000nmの間である。
【0010】
また、血管処置システムは更に、前記発光部により放射された前記光を、前記筐体内で反射するために採用される、少なくとも1つの反射器を備える。血管処置システムは更に、前記発光部により放射された前記光を、前記筐体内に実質的に閉じ込めるために採用される、少なくとも1台の遮蔽体を備えることが可能である。
【0011】
また、血管処置システムにおいて、前記加湿器は、前記筐体内で継続使用される量の水、ノズル、噴霧器、気化器、超音波加湿器、及び液滴開口部からなる群から選択される少なくとも1つを含む。前記加湿器は加湿された空気の管を含むことが可能である。
【0012】
また、血管処置システムは更に、前記筐体内で、前記解剖学的血管を回転させるために採用されるロータを備える。前記ロータは、前記血管を毎分約30回転〜約120回転の速度で回転させるために採用される。また、前記ロータは、電気モータ、空気圧式ロータ及び液圧式ロータからなる群から選択される。
【0013】
血管処置システムは更に、前記解剖学的血管を解放可能に保持するように採用されるクランプを備える。
【0014】
血管処置システムは更に、前記血管処置システムの少なくとも1つの構成要素の動作を制御するためにプログラムされた制御部を備える。
【0015】
血管処置システムにおいて、前記少なくとも1つの開口部のうち少なくとも1つは、人間の前腕部の、手のひら側の表面に実質的に一致するように、凹型の断面を有する。前記少なくとも1つの開口部のうち少なくとも1つは、人間の皮膚に対して実質的に気密な密封状態を作り出すためのガスケットを含む。
【0016】
本発明の別の態様は、血管処置システムであって、少なくとも、解剖学的血管を収容するために採用される開口部を画定する筐体と、前記解剖学的血管の乾燥を防ぐために採用される加湿器と、前記解剖学的血管の外表面に塗布された不動態化剤において化学発光反応を誘発するのに十分な波長を有する光を放射するために採用される発光部と、前記筐体内で、前記解剖学的血管を回転させるために採用されるロータと、特定量のフルエンスを前記光活性不動態化剤に塗布するための前記血管処置システムの、少なくとも1つの構成要素の動作を制御するためにプログラムされた制御部と、を備える。
【0017】
本発明の別の態様は、キットであって、請求項1〜20の何れか1項に記載の血管処置システムと、不動態化剤と、を備える。
【0018】
キットにおいて、前記不動態化剤はローズベンガル、トルイジンブルー、リボフラビン、ゲニピン、または、EDCを含む。キットは更に、取扱説明書を備える。
【0019】
本発明の別の態様は、静脈グラフトを作成する方法であって、組織不動態化剤を、切除された解剖学的血管に塗布する塗布工程と、前記組織不動態化剤が硬化している間に、前記切除された解剖学的血管を加湿された容器内に配置する配置工程と、を備える。
【0020】
前記方法において、前記組織不動態化剤は光活性架橋剤であり、前記方法は更に光を好適な波長で放射することにより、前記光活性架橋剤を硬化させる放射工程を備える。前記方法において、前記組織不動態化剤は化学架橋剤である。前記方法において、前記切除された血管の一端は患者の体に取り付けられたままであり、前記加湿された容器は、前記患者の皮膚に対して密封された状態を作り出す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る血管処置装置を示す図である。
図2】動静脈瘻を形成するために使用された静脈部分を処置する、本発明の一実施形態に係る装置を示す図である。
図3】解剖学的血管の内部表面を処置するためのつば部を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る血管処置装置を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る血管処置方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の本質及び好ましい目的をより深く理解するために、以下の詳細な説明を添付の図面と共に参照されたい。複数の図面に亘り、同一の参照符号はそれぞれ対応する構成要素を表す。
【0023】
本発明は、以下の定義を参照することにより、最も明確に理解される。
【0024】
文脈により別段明らかに指図されない限り、ここで”a””an””the”と共に使用される単数形の名詞は、複数形への言及も含む。
【0025】
特に具体的に表現されない又は文脈から明らかでない限り、ここで使用される表現の「約」は当該技術分野において例えば、平均値から2標準偏差分未満であれば、通常の許容範囲であると理解される。又「約」は、当該値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%未満あると理解され得る。文脈により別段明らかでない限り、ここで使用される数値の全ては、表現「約」によって修飾される。
【0026】
本明細書及び請求項で使用される表現「構成する」、「備える」、「包含する」、及び「有する」等の表現は、米国特許法において与えられた意味を有し、「含む」等の意味を有し得る。
【0027】
特に具体的に表現されない又は文脈から明らかではない限り、ここで使用される表現「又は」は包含的なものと理解される。
【0028】
ここで示される範囲は、その範囲内の全ての数詞を省略して表現していると理解される。例えば、1から50の範囲とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50、からなる一群の任意の数値、数値の組み合わせ、又はこの範囲の一部分の範囲(及び、文脈により別段明らかに指図されない限り、これら数値の分数及び小数)を含むと理解される。
血管処置装置
図1は生体外での静脈グラフトの処置に使用され得る、本開示に例示される実施形態に係る血管処置装置100を示す。装置100は、例えば静脈グラフト102の光線療法を容易にし得ることにより、組織がグラフトとしての使用に適さなくなる損傷を受けることを避けつつ、ある種の特性を向上させる。
【0029】
装置100は、側面図で示された、密封された筐体110を含む。筐体110の形状は、長方形、円筒形等であり得る。好ましくは、筐体110の高さは、その内部で処置される静脈組織102の最も長い部分よりも高い。例えば筐体110は、約1インチ〜約2インチ、約2インチ〜約3インチ、約3インチ〜約4インチ、約4インチ〜約5インチ、約5インチ〜約6インチ、約6インチ〜約7インチ、約7インチ〜約8インチ、約8インチ〜約9インチ、約9インチ〜約10インチ、約10インチ〜約11インチ、約11インチ〜約12インチ、約12インチ〜約13インチ、約13インチ〜約14インチ、約14インチ〜約15インチ、約15インチ〜約16インチ、約16インチ〜約17インチ及び約17インチ〜約18インチ等の高さを有する。
【0030】
更に装置100は、一対のクランプ115(例えば、従来の静脈クランプ等)を含み得る。クランプ115は筐体110に接続され、静脈グラフト102を引き延ばしたり、静脈グラフト102に好ましくない如何なる機械的な力や応力がかからないように、静脈グラフト102の両端を保持するために採用される。クランプ115はまた、静脈グラフト102の両端の開口部を覆い又は保護し得るので、不動態化剤123又は他の異物が、静脈グラフト102の内腔に入らない。一般的に、静脈グラフト102の内表面を構成する血管内皮への修正又は損傷は避けることが好ましいので、グラフト102の外表面のみが、装置100によって処置又は修正される。
【0031】
装置100は更に、少なくとも1台の塗布部120を含む。塗布部120は、液状の不動態化剤123の中に静脈グラフト102の外面を浸漬させる又は液状の不動態化剤123を静脈グラフト102の外面に噴霧若しくは塗布するために採用され得る。例えば塗布部120は、噴霧された不動態化剤123を静脈グラフト102の表面に導くために採用される、複数の穴又はノズル122を有する管を含み得る。塗布部120は、多量の不動態化剤123を保持可能な貯蔵部125と、不動態化剤123が塗布される量及び/又は期間を制御するために採用される制御バルブ部127と、を含み得る。例えば密封され加圧された筐体のように、貯蔵部125は加圧され続けるので、バルブ部127を開くことにより、液剤123がノズル122から放射される。液剤123はまた、加圧された空気管若しくはガス管を使用して静脈グラフト102に導かれる。あるいは、液剤123は、従来の継ぎ手等を使用して塗布部120に接続され得る従来のポンプ部を使用して、静脈グラフト102に導かれる。
【0032】
装置100は更に、少なくとも1台の発光部130を含み得る。不動態化剤123が光活性である場合、発光部130は均一に且つ可変に、静脈グラフト102の表面を、特定のフルエンスと少なくとも1つ以上の波長とを有する光で照射することが可能である。発光部130は、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード等の光源132を、少なくとも1台備え得る。このような光源132の台数及び/又は形状は、その使用中に静脈グラフト102の長さに沿って実質的に均一なフルエンスの光を照射するように、選択され得る。ある実施形態における光源132は、放射光が空間でより均一に広がるために、反射器及び/又は拡散器を含み得る。筐体110の内部表面の一部はまた、静脈グラフト102の均一な照射を容易にするために、反射性材料で生成又は塗布され得る。発光部130は、光を外部の光源から静脈グラフト102へと導くことが可能な、少なくとも1つの任意の光ファイバー又は導波路を、任意で含み得る。
【0033】
発光部130は制御部135を備え得る。制御部135は、例えば光源132に供給される電力及び/又は光源132の照射期間を制御することにより、光源132の動作を制御することに使用され得る。発光部130の電源は、筐体110の内部で又は外部から供給され得る。ある実施形態においては外部電源が使用可能であり、装置100は、電気を外部電源から発光部130へと導くための、ソケットやレセプタクルを備え得る。
【0034】
筐体110の内部は、処置中における静脈グラフト102の過度な乾燥状態を防ぐために、好ましくは湿った状態に維持される。この湿った状態は、霧状の水又は生理食塩水を筐体110の内部に流すか注入することで実現し得る。例えば、塗布部120に類似してはいるが、不動態化剤123の代わりに生理食塩水を噴霧するために採用される加湿部が備えられ得る。生理食塩水はまた、筐体110の内部に備えられた超音波気化器等によって、外部の供給源から、筐体110に配設された少なくとも1つのポートを通じて、筐体110内へと導入され得る。
【0035】
図1は装置100の例示的な構成を示している。類似の構成要素における多様な組み合わせ及び/又は多様な構成を有する、その他の実施形態も活用され得る。例えば、不動態化剤123がグラフト表面に対してより均一に塗布されるため、筐体110内には、2台又は3台以上の塗布部120が多様な角度で備えられ得る。同様に、グラフト表面全体が均一な照射を受け易くするため、発光部130が複数台備えられ得る。ある実施形態において、静脈クランプ115は、例えばモーター駆動部を使用することにより可変で回転可能である。それにより、静脈グラフト102の処置においてその表面をより均一にするために、液剤123の塗布及び/又は光の照射中に、静脈クランプ115は静脈グラフト102を回転させ得る。
【0036】
更に他の実施形態において、静脈グラフト102は、図1に示される例示的な垂直方向ではなく、水平方向に載置され得る。又は、静脈グラフト102は如何なる角度でも載置され得る。一台の筐体110内で、複数の静脈部分102の同時処置を容易にするために、一台の筐体110内には複数対のクランプ115も備えられ得る。
【0037】
更に他の実施形態において、塗布部120は、例えば筐体110の外表面に接続されるように、筐体110に外付けされ得る。これにより、不動態化剤123は、筐体110の壁を貫通した少なくとも1つのノズル又は穴122を通じて、隔離された筐体110内の静脈グラフト102へと導かれる。同様に発光部130は、例えば筐体110に外付けされ得る。これにより光が、筐体110の光学的に透過性を有する部分を通じて、静脈グラフト102へと導かれ得る。機能部の一部を筐体110に対してこのように外付けにすることで、筐体110自身の構成の簡素化が可能であり、これにより筐体110の再利用に際しての殺菌が容易に可能となり、又は装置100の一部分(例えば筐体110及びクランプ115)が使い捨て可能となる。
【0038】
図1に示されるように、手術において患者から切除された静脈グラフト102は、クランプ115に取り付けられ、筐体110内に保持され得る。筐体110の内部は、ここで説明されるように加湿された状態に維持され得る。塗布部120を使用して、静脈グラフト102は不動態化剤123により均一に覆われ得る。不動態化剤123は、十分な時間をかけて静脈グラフト102に作用することによって、静脈グラフト102の移植及び/又は(光活性不動態化剤が使用される場合は)光による静脈グラフト102の効果的な処置に先立って、十分な時間をかけて静脈グラフト102に吸収され得る。例えば後続の処置である光照射の以前に、ローズベンガルの溶液が約30秒かそれ以上の時間、静脈グラフト102上に留まれば十分である。
【0039】
光活性不動態化剤が使用される場合、静脈グラフト102を照射するために、発光部130は特定の時間に特定の電力又は光の強度で動作し得る。制御部135は、発光部130により放射される光の放射時間、タイミング、強度及び/又は他の放射パラメータを制御するように構成され得る。例えば、発光部130は単一の強度で光を放射するように構成され得る。グラフト102を照射する際のフルエンスの総計の変更は、発光部130が動作している時間を変更することで制御され得る。一部の実施形態において、静脈グラフト102の過度な加熱を避けるために、使用される光源132の種類や筐体110の大きさを基に、発光部130は間歇的に(例えば短い又は長いパルスが連続するように)動作し得る。静脈グラフト102が照射される時間は、典型的には数分程度であるが、光源132の種類や台数、静脈グラフト102の大きさ、光源132と静脈グラフト102との距離、放射光の性質及び特定の不動態化剤132が使われた場合等の要因を基に、短く又は長く設定されることが好ましい。
【0040】
処置後、静脈グラフト102は装置100から取り除かれ、患者に移植され得る。クランプ115内に保持された静脈グラフト102の両端が不動態化剤123及び光に露出されていない場合は、該両端が処置ないまま静脈グラフト102に残る状態を避けるために、該両端は切除され得る。光処理された静脈グラフト102は元の静脈よりもより強固な材料特性を有し得るので、移植された時に露出されることになる高い動脈圧に、より良く耐え得る。
【0041】
更に他の実施形態において、図2は動静脈瘻等を形成するために使用される静脈部分を処置する装置及び方法を示す。図1に示された、装置100に処置される静脈グラフト102とは異なり、瘻孔を形成するために使用される静脈部分202は、体から完全に切除されるわけではない。代わりに、(大抵は患者の前腕部204に位置している)静脈部分202は、瘻孔を形成するために、一方の端部が切断され近くの動脈に接続された状態で、体に付着している。
【0042】
装置200の筐体210の下部は、切断された静脈部分202の端部が、筐体210の内部に導かれ、静脈クランプ115に取り付け可能なように、少なくとも部分的に開口し得る。装置200に収容される静脈部分202の下端部を安定させるために、下部クランプ及びスペーサ等が儲けられ得る。筐体210の底は、患者の腕204に接触するように形成され得る。筐体210の腕204に対する接触状態を高めるため、例えば処置中に筐体210の内部を隔離しやすくするために、筐体210の下縁部にシール部215(例えば可撓性材料)が備えられる。
【0043】
装置200は少なくとも1台の塗布部120と、発光部130と、を含む。装置200の構成要素及び構成は、上記装置100に関する構成要素及び構成に類似であり得る。説明を明確化するために、これらの機能部の詳細は、図2には例示されない。処置の間静脈部分202が水分を保持する環境を維持するために、加湿部も備えられ得る。動静脈瘻を形成するために使用される静脈部分202の強度及び開存性を高めるため、装置200は使用され得る。
【0044】
瘻孔を形成する静脈部分202は、図2に示されるように、腕204から分離され、筐体110内のクランプ115に取り付けられ得る。上述されたように、装置200は不動態化剤を静脈部分202に塗布するために使用され得る。光活性剤使用の場合、静脈部分202は、発光部130により照射されうる。筐体210の下部は、余分な液剤123を受け止めるための、及び/又は静脈部分202を摘出するために腕204が切開された部分に、余分な液剤123が入り込むのを防ぐための、任意の構成を有し得る。原位置での処置プロセスにかかる時間の合計は、数分又はそれ以上の程度であり得る。これは瘻孔処置が著しく中断されない程度に、十分に短時間である。処置後、装置200は取り外され、強化された静脈部分202は瘻孔の形成に使用され得る。クランプ115内に保持される静脈部分202の端部は、任意で切除されうる。これにより、切除された後の、(動脈に取り付けられる)静脈部分202の新たな端部は十分に処置及び強化されているので、静脈部分202の縫合部を保持する特性が向上し得る。
【0045】
更に他の実施形態では、静脈グラフト102の端部の内部表面は、ここで説明されるように、(縫合されるであろう)その端部領域の強度又は他の特性をより向上させるために処置され得る。静脈内腔の内部表面を、その長さ方向に沿って治療又は処置することは好ましくないが、該端部は、図3に例示されるつば部300を使用することにより処置され得る。つば部300は、静脈グラフト102の端部領域上に配置され得る。図3に示されるように、静脈グラフト102の端部は、その内部表面を短く露出させるように、つば部300を覆うように裏返され得る。
【0046】
上述されたように、図1及び図2の光線処置装置100及び200は不動態化剤123を静脈グラフト102の端部に塗布し、必要な場合はその端部を照射するように使用され得る。クランプ115は、例えば、光線処置の間につば部300内で静脈グラフト102を保持するために、静脈グラフト102の内腔に挿入される突起形状を有することにより、静脈グラフト102の端部領域を固定するために採用され得る。クランプが開口部を有する構成とすることにより、クランプが直接つば部300に接続する一方で、露出している移植用端部の内表面は損傷を受けずに済む。更に他の実施形態において、静脈グラフト102の、露出された端部の内側に、不動態化剤123及び任意の光が手動で塗布及び照射され得る。
【0047】
図4は他の実施形態に係る血管処置システム400を示す。システム400は、血管402を収納するために採用される血管筐体410を含み得る。筐体410は、システム400の一部の又は全ての構成要素から、血管402及び該血管に塗布される如何なる液体をも隔離するために採用され得る。こうしてシステム400の一部の又は全ての構成要素が、殺菌の必要が無く再利用が可能となり、筐体410及びこれに関連する構成要素を、システム400の他の構成要素に損傷を与えること無く殺菌することが可能となる。
【0048】
筐体410は対象となる波長に対して(例えば、約400nm〜約700nm、約532nm、約700nm〜約1,000nm等)、実質的に光学的に透明となるような材料によって製造される。好適な材料には、ガラス又はアクリルガラス(ポリメチル・メタクリレートス即ちPMMA)が含まれる。アクリルガラスは、テネシー州コルドバのLucite International, Inc.製の登録商標LUCITE及びPERSPEXとして入手可能である。
【0049】
筐体410は、典型的な処置の間(例えば約10分、約15分、約20分、約25分及び約30分)に、実質的に気密及び液密な状態となるように、蓋436a及び436bにより密封され得る。圧縮密封を実現するために、蓋は弾性材料により形成される又は弾性材料を含む。更に又あるいは、蓋436は、ハウジング410の補完的なねじ穴にねじ止めされ得る。
【0050】
少なくとも1台のクランプ415a及び415bが、筐体410内で血管402を保持し得る。ある実施形態では、上端クランプ415aは上端蓋436aに接続される。下端クランプ415bは、下端蓋436bに接続可能又は接続されなくともよい。あるいは下端クランプ415bは、血管402の回転と共に自由に回転する間に、血管402にただわずかな張力を与え得る。
【0051】
ロータ438は、血管402に均等に不動態化剤を塗布及び/又は光を照射するために、クランプ415a(及びその結果、血管402)を回転させ得る。回転は、クランプ415aから上端蓋436aを貫通して延在しているスタッドのような種々の方法により、又は上端蓋436a外からの磁力による接続により、上端蓋436aの外部に伝えられ得る。
【0052】
筐体410から少なくとも1種類の液体の流入及び流出が可能なように、蓋436は少なくとも1つ以上の開口部を有し得る。例えば、開口部440aは、加湿器442から加湿された空気又は水を受け取り得る。開口部440bは、貯蔵部425から不動態化剤444を受け取り得る。不動態化剤444は、ノズル、噴霧器、ブラシ、液滴開口部等のような種々の手段によって塗布され得る。例えば図4に示されるように、不動態化剤444は、血管402又はクランプ415の回転時、液滴開口部446から血管402又はクランプ415上に滴り落ち得る。あるいは不動態化剤444は、引力により血管402に流れ落ち得る。
【0053】
幾つかの実施形態において、十分な量の不動態化剤444が血管402に塗布され得る。こうして不動態化剤444及び/又はそれに対応する貯蔵部425及び/又はポンプ448は加湿器として機能し、血管402の乾燥を防ぐ。これは不動態化剤444が水溶液である場合に、特に顕著である。
【0054】
余分な不動態化剤444及び/又は水は、開口部440cを通じて筐体410の底から集められ、貯蔵部425及び/又はポンプ448を介して再循環され得る。
【0055】
制御部435はロータ438、ポンプ448、貯蔵部448,発光部430,及び加湿器の動作を制御することで血管の乾燥を防ぎ、適量の不動態化剤444を血管402に塗布し、不動態化剤444が塗布された血管402に適量の光を放射し得る。更に制御部435は別途に、ここに記載の一部の又は全ての方法を実行し得る。
【0056】
制御部435は、所望の結果を得るために、システム400の動作を制御するためにプログラムされた電子装置であり得る。制御部435は(フィードバック装置又は医療従事者による)入力の必要無しに、静脈グラフトを作成及び/又は保存する方法を自動的に実行するように、プログラムされ得る。あるいは、制御部435はこのような入力を組込み可能である。
【0057】
制御部435は汎用のコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ即ちPC)、ワークステーション、メインフレームコンピュータシステム等の演算装置であり得る。制御部435は処理装置(即ち中央処理装置CPU)、メモリ装置、記憶装置、ユーザインターフェース、システムバス及び/又は通信インターフェースを含み得る。
【0058】
処理装置は、命令の実行やデータの処理等のための、あらゆる種類の処理装置であり得る。
【0059】
メモリ装置は、少なくとも1つのランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能ROM(EEPROM)等の何れかを含むあらゆる種類のメモリ装置であり得る。
【0060】
記憶装置は、あらゆる種類の着脱式及び/又は内蔵式の光記憶媒体、磁気記憶媒体及び/又は光磁気記憶媒体等(例えば、ハードディスク、CD-ROM、書き換え可能CD(CD-RW)、読み出し専用DVD(DVD-ROM)、書き換え可能DVD(DVD-RW)等)に対して読取り/書込むための、あらゆる種類のデータ記憶装置であり得る。記憶装置は、システムバスに接続するための制御部/インターフェースをも含み得る。このようにメモリ装置と記憶装置とは、処理装置が実行する、プログラムされたプロセス用の命令の記憶と同様に、データの記憶にも好適であり得る。
【0061】
ユーザインターフェースは、タッチスクリーン、制御パネル、キーボード、キーパッド、ディスプレー又はそれ以外のあらゆる種類のインターフェースを含む。これによりユーザインターフェースは、対応する入力/出力装置のインターフェース/アダプタを介してシステムバスに接続され得る。
【0062】
通信インターフェースは、あらゆる種類の外部装置と通信するために採用され得る。更に通信インターフェースは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット等に接続されている少なくとも1台の演算装置のような、あらゆる種類のシステム又はネットワークと通信するためにも採用され得る。通信インターフェースは、システムバスに直接又は好適なインターフェースを介して接続され得る。
【0063】
そして制御部435は、単独で及び/又は少なくとも1台の追加の装置と連携して、実行するプロセスを提供する。このプロセスは、本発明におけるシステム100、200、400の種々の構成要素を制御するためのアルゴリズムを含み得る。制御部435は、あらゆる種類のプラットフォーム上で、あらゆる種類の通信プロトコル及び/又はプログラム言語における、これらのプロセスを実行するように、プログラムされ又は命令され得る。そしてプロセスは、メモリ装置及び/又は記憶装置に記憶される命令と同様にデータとして具体化され得る。あるいはプロセスは、処理装置により実行されるために、ユーザインターフェース及び/又は通信インターフェースで受信され得る。
【0064】
制御部435は、あらゆる種類の方法により、システムの構成要素の動作を制御し得る。例えば制御部435は、構成要素の電気レベルを変調し得る。あるいは制御部435は、システムの構成要素に命令及び/又はパラメータを送信し、送信した命令及び/又はパラメータを、システムの構成要素に実行させ得る。
【0065】
システム100、200、400の動作を監視するために、制御部435は少なくとも1台以上のフィードバック装置とインターフェースにより接続し得る。例えば、少なくとも1台のフィードバック装置は、筐体内の温度及び/又は湿度、血管402がシステム400内に収容されてからの経過時間、及び/又は発光部130若しくは430による照射光の量に関する情報を提供し得る。
【0066】
システム400は全体的に又は部分的に、外郭450によって囲まれ得る。外郭450は、反射光をシステム400内に閉じ込める及び/又は潜在的に有害なエネルギーのシステム400からの漏れを防ぐために採用され得る。これによりシステム400が使用される際に、保護眼鏡のようなある種の事前の注意が必要となる。ある実施形態において、外郭450は、対象となる波長を透過させず及び/又は反射コーティングが施されている。
血管の処置方法
図5は、血管を処置する方法500を示す。ステップS502において血管が、例えば通常の外科手術法によって、患者の体から切除される。ステップS504において、血管の外表面を洗浄し血液が除去される。血液が血管上に凝固することを防ぐため、ステップS502とステップS504とは、血管が切除される際に平行して実行され得る。ステップS506において、血管の内表面を洗浄し血液が除去される。血液の洗い落としには、水、生理食塩溶液、ヘパリン化された生理食塩溶液、他の生体適合性液体等が使用され得る。
【0067】
ステップS508において、切除され洗浄された血管は(例えばクランプにより)筐体内に設置される。ステップS510において、血管は例えばその内部に、生理食塩溶液、ヘパリン化された生理食塩溶液、他の生体適合性液体等を充填されることにより、加圧され得る。このような膨張用の液は、血管カテーテルやカニューレ等を使用して導入され、ここに記載されるように、クランプにより保持され得る。血管は、通常の解剖学的状態の範囲における圧力で膨張され得る。例えば、血管は約150mm Hg.まで加圧され得る。
【0068】
他の実施形態では、血管は筐体内において、加圧された液体を流すことによって膨張され得る。このような実施形態において、血管を管又接続具に接続するために、ホースクランプ若しくはバンドが使用され、又は縫合が活用され得る。光を均一に照射するために、複数の発光部で筐体を取り囲み得る。あるいは該発光部は、固定された筐体の周囲を回転し得る。
【0069】
ステップS512において、血管に湿気が供給される。ステップS514において、不動態化剤が血管に塗布される。ステップS516において、不動態化剤を活性化させるために光が放射される。光の強度及び/又は照射時間は、所望量のフルエンスを達成するために制御され得る。例えば、光は約5J/cm〜約10J/cm、約10J/cm〜約15J/cm、約15J/cm〜約20J/cm、約20J/cm〜約25J/cm、約25J/cm〜約30J/cm、約30J/cm〜約35J/cm、約35J/cm〜約40J/cm、約40J/cm〜約45J/cm、約45J/cm〜約50J/cm、約50J/cm〜約55J/cm、約55J/cm〜約60J/cm、約60J/cm〜約65J/cm、約65J/cm〜約70J/cm、約70J/cm〜約75J/cm、約75J/cm〜約80J/cm、約80J/cm〜約85J/cm、約85J/cm〜約90J/cm、約90J/cm〜約95J/cm及び約95J/cm2〜約100J/cm等のフルエンスを達成するために制御され得る。
不動態化剤
ここで議論される不動態化剤は少なくとも1種の生体適合性架橋剤、タンパク質架橋剤、コラーゲン架橋剤等を含み得る。
【0070】
好適な架橋剤は、約525nmの波長で活性化するローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-3’,6’-ジヒドロキシ-2’,4’,5’,7’-テトラヨード-3H-スピロ[イソベンゾフラン1,9’-キサンテン]-3-1)、赤外光で活性化されるトルイジンブルー(塩化トロニウム)、及び青色光で活性化するリボフラビン(7,8-ジメチル-10[(2S,3S,4R)-2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル]ベンゾ[g]プテリジン-2,4-ジオン)のような光活性架橋剤を含む。
【0071】
好適な化学架橋剤は、ゲニピン(メチル(1R,2R,6S)-2-ヒドロキシ-9-(ヒドロキシメチル)-3-オキサビシクロ[4.3.0])ノナ-4,8-ジエン-5-カルボン酸塩)及びEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を含む。化学架橋剤は、硬化の際に光活性化させる必要が無い。血管に塗布後数分以内(例えば10分後)に硬化する。
均等論
上述の記載は単に本開示の原則を示すものである。ここでの教示の観点から、記載された実施形態に対する種々の修正及び変更は、当業者にとって自明である。よって当業者は、ここに明示されていない、本開示の原則及び精神若しくは範囲を具象化する、多くの技術や変更を考案可能であることが認められている。
【0072】
例えば、本願の考察は血管に関連して記載されたが、皮膚、瘢痕組織、軟骨、腱、靱帯等における他の解剖学的な体内の管にも適用し得る。
【0073】
同様に、本発明の考察は、1本の血管を処置するためのシステム及び方法を示しているが、これらは複数の血管(例えば、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本等)を平行して処置するように、容易に修正され得る。
援用記載
ここに引用された全ての特許、公表された特許出願及び他の引用文献は、その全体を、本明細書の一部を構成するものとして明示的に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5