(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、気相加工によりレンズ及びレンズ前駆体の一方又は両方を処理する装置及び方法を提供する。以下の項において、本発明の実施形態がより詳細に説明される。好ましい実施形態及び代替の実施形態の両方の説明は、完全ではあるが、例示的実施形態に過ぎず、変形、修正、及び代替が当業者にとって明白であり得ることが理解される。
【0013】
用語
本発明を目的とする本説明及び特許請求の範囲において、以下の定義が適用される、様々な用語が使用され得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「化学線」は、反応性混合物の重合等の化学反応を開始させることができる放射線を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「弓状の」は、弓のような曲線又は屈曲を指す。
【0016】
本明細書に言及される「ベールの法則」(「ランベルト・ベールの法則」と称される場合もある)は、I(x)/I0=exp(−αcx)であり、式中、I(x)は、照射される表面からの距離xの関数としての強度であり、I0は、表面での入射強度であり、αは、吸収成分の吸収係数であり、cは、吸収成分の濃度である。
【0017】
本明細書で使用される場合、「コリメートする」は、入力として放射線を受信する装置からの出力として進行する、光等の放射線の円錐角を限定することを意味し、いくつかの実施形態では、円錐角は、進行する光線が平行となるように限定され得る。したがって、「コリメータ」は、この機能を実施する装置を含み、「平行化された」は、放射線に対する効果を説明する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「DMD」は、デジタルマイクロミラーデバイスは、CMOS SRAMの全体に機能的に実装された、移動可能なマイクロミラーのアレイからなる双安定空間光変調器である。それぞれのミラーは、反射光を誘導するために、ミラーの下のメモリセルにデータを読み込むことによって独立して調整され、ビデオデータのピクセルをディスプレイ上のピクセルに空間的にマッピングする。データは、ミラーの状態が+X度(オン)又は−X度(オフ)のいずれかである2進数方式で、ミラーの傾斜角を静電気的に調整する。現在のデバイスは、Xを、10度又は12度(公称)のいずれかにすることができる。搭載されたミラーによって反射される光は、次いで投影レンズを通過してスクリーン上へ進む。光は、反射されて暗視野を生成し、画像の黒レベルフロアを画定する。画像は、観測者によって統合されるのに十分な速い速度でのオンレベルとオフレベルとの間のグレースケール変調によって生成される。DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)は、DLP投影システムである場合がある。
【0019】
本明細書で使用される場合、「DMDスクリプト」は、空間光変調器のための調整プロトコル、及びまた、例えば、いずれかがその時点の一連のコマンドシーケンスを含み得る、光源又はフィルターホイール等の、いずれかのシステム構成要素の調整信号を指すものとする。頭文字DMDの使用は、この用語の使用を空間光変調器のいずれか1つの特定種類又は寸法に限定することを意味しない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「固定化放射線」は、レンズ前駆体又はレンズを含む、本質的に全ての反応性混合物の重合及び架橋の1つ以上に十分な化学線を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「流動性レンズ反応性媒体」は、天然の形態、反応した形態、又は部分的に反応した形態のいずれかで流動性であり、その一部分又は全部が更なる加工を受けて眼科レンズの一部に形成される、反応性混合物を意味する。
【0022】
「自由形成」が本明細書で使用される場合、「自由形成された」又は「自由形成」は、反応性混合物の架橋によって形成され、注型成型、旋盤、又はレーザーアブレーションに従って形状化されない表面を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ゲル化点」は、ゲル又は不溶分画が最初に観測される点を指す。ゲル化点は、液体重合混合物が固体となる、変換の程度である。
【0024】
「レンズ」が本明細書で使用される場合、「レンズ」は、眼内又は眼上にある、いずれかの眼科デバイスを指す。これらのデバイスは視覚補正をもたらすことができるか、又は美容用であってもよい。例えば、レンズという用語は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼用挿入物、光学挿入物、又は他の同様の、視力が補正若しくは変更されるデバイスか、又は視力を妨げることなく目の生理機能が美容的に拡張される(例えば、虹彩色)デバイスを指すことができる。いくつかの実施形態では、本発明の好ましいレンズは、シリコーンヒドロゲル類、及びフルオロヒドロゲル類を含むが、これらに限定されない、シリコーンエラストマー類又はヒドロゲル類から製造される、ソフトコンタクトレンズである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「レンズ前駆体」は、レンズ前駆体形態及びレンズ前駆体形態と接触する流動性レンズ反応性混合物からなる複合物体を意味する。例えば、いくつかの実施形態では、流動性レンズ反応性媒体は、反応性混合物体積内でレンズ前駆体形態を生成する過程で形成される。レンズ前駆体形態及び接着する流動性レンズ反応性媒体を、レンズ前駆体形態を生成するために使用される反応性混合物の体積から分離することによって、レンズ前駆体を作り出すことができる。更に、レンズ前駆体は、相当量の流動性レンズ反応性混合物を除去するか、又は相当量の流動性レンズ反応性媒体を非流動性の組み込み材料に変換するかのいずれかによって、異なる実体に変換することができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「レンズ前駆体形態」は、眼科レンズへの更なる加工を受けて組み込まれるものと一致する、少なくとも1つの光学品質表面を有する、非流動性物体を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「レンズ形成混合物」、「反応性混合物」又は、「RMM」(反応性単量体混合物)という用語は、架橋して眼科レンズを形成することができる、単量体又はプレポリマー材料を指す。様々な実施形態は、UV遮断剤、染料、光開始剤、又は触媒、及びコンタクト若しくは眼内レンズ等の眼科レンズに望まれ得る他の添加剤等の1つ以上の添加剤を有するレンズ形成混合物を含むことができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「鋳型」は、未硬化配合物からレンズを形成するために使用され得る、剛性又は半剛性の物体を指す。いくつかの好ましい鋳型は、前側湾曲部鋳型部分及び後側湾曲部鋳型部分を形成する、2つの鋳型部分を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「放射線吸収成分」という用語は、反応性単量体混合配合物に組み込むことができ、特定の波長帯の放射線を吸収することができる、放射線吸収成分を指す。
【0030】
反応性混合物(また、本明細書において、レンズ形成混合物又は反応性単量体混合物と称される場合もあり、「レンズ形成混合物」と同一の意味を有する)。
【0031】
「鋳型から取り外す」が本明細書で使用される場合、「鋳型から取り外す」は、レンズが、鋳型から完全に分離した状態、又は穏やかな振動によって取り外すか、若しくは綿棒を用いて押し外すことができるように、ほんの軽く付着した状態のいずれかとなることを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「ステレオリソグラフィレンズ前駆体」は、レンズ前駆体形態が、ステレオリソグラフィ技術を使用することによって形成された、レンズ前駆体を意味する。
【0033】
「基材」上に他の実体が定置又は形成される物理的実体。
【0034】
本明細書で使用される場合、「過渡レンズ反応性媒体」は、レンズ前駆体形態上に残留し、完全に重合せずに流動性又は非流動性形態に留まり得る反応性混合物を意味する。過渡レンズ反応性媒体は、眼科レンズに組み込まれる前に、洗浄、溶媒和、及び水和工程のうちの1つ以上によって大幅に除去される。したがって、明確化のため、レンズ前駆体形態及び過渡レンズ反応性混合物の組み合わせは、レンズ前駆体を構成しない。
【0035】
「ボクセル」が本明細書で使用される場合、「ボクセル」又は「化学線ボクセル」は、3次元空間の規則的な格子上の値を示す、体積要素である。ボクセルは、3次元ピクセルと考えることができるが、しかしながら、ピクセルが2D画像データを示す一方、ボクセルは、第3の次元を含む。更に、ボクセルは、医療及び科学的データの視覚化及び分析にしばしば使用される一方、本発明では、ボクセルは、特定の反応性混合物体積に到達する、ある量の化学線の境界を画定し、それによって具体的な反応性混合物体積の架橋又は重合の速度を調整するために使用される。例として、ボクセルは、本発明では、化学線が、それぞれのボクセルの共通軸次元内の2D表面に対して垂直に向けられ得る、2D鋳型表面に対して等角である単一層内に存在すると見なされる。一実施例として、具体的な反応性混合物体積は、768×768ボクセルに従って、架橋又は重合されてもよい。
【0036】
「ボクセルに基づいたレンズ前駆体」が本明細書で使用される場合、「ボクセルに基づいたレンズ前駆体」は、レンズ前駆体形態がボクセルに基づいたリソグラフィ技術を使用することによって形成された、レンズ前駆体を意味する。
【0037】
「Xゲル」が本明細書で使用される場合、Xゲルは、ゲル分画がゼロを超えるようになる、架橋可能な反応性混合物の化学変換の程度である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「マンドレル」は、眼科レンズを固定するための形状化表面を有する物品を含む。
【0039】
方法
本明細書に記載する本発明の技術は、気相加工により眼科レンズ及び眼科レンズ前駆体の一方又は両方を処理することに関する。一般に、眼科レンズ前駆体及び眼科レンズの一方又は両方は、ボクセルリソグラフィベースの技術を介して形成される。
【0040】
図1を参照すると、レンズ前駆体100の一般的形態が示されている。レンズ前駆体形態140は、第1の略弓状表面及び第2の略弓状表面を有し、第1の略弓状表面150はマンドレル145の表面により画定され、マンドレル145上で基部が形成される。第2の略弓状表面130は、ボクセルリソグラフィ技術を介して形成される。レンズ前駆体形態140は、そのゲル化点を通過したポリマー類として形成されたポリマー類を含んでもよく、レンズ形態は、未だ固定化放射線に暴露されていない。
【0041】
いくつかの実施形態において、ゲル化点は、ソックスレー器具を使用して決定することができる。ポリマー反応を異なる時点で停止してもよく、得られたポリマーを分析して、残留不溶性ポリマーの重量分率を決定する。得られたデータを、ゲルが存在しない点のデータに外挿することができる。ゲルが存在しないこの点が、ゲル化点である。
【0042】
別の実施形態では、ゲル化点は、反応中に反応混合物の粘度を分析することによっても決定され得る。粘度は、例えば、反応混合物がプレート間にある状態で、平行プレートレオメーターを使用して測定することができる。少なくとも1つのプレートは、重合に使用される波長の放射線に対して透明であるべきである。粘度が無限大に接近する点が、ゲル化点である。ゲル化点は、所与のポリマー系及び具体的な反応条件と同一の変換度で生じ得る。
【0043】
図1を続けて参照すると、このタイプのレンズ前駆体100は、ゲル化点に到達している形態140と、ゲル化点に到達していない流動性媒体110との間の内部境界面130を含む。
【0044】
レンズ前駆体形態140及び流動性媒体110を加工することにより、光学品質の表面120が生成され得る。加工は、例えば、レンズ前駆体形態140を化学線に暴露することを含むことができる。ボクセルリソグラフィ法によって、多数のポリマー系を使用して実体100を形成することができ、また更に他の技術により、上部に流動性媒体110が配置されたレンズ前駆体形態140を含むレンズ前駆体100を画定できることが明かであり得る。
【0045】
例示的なボクセルリソグラフィレンズ前駆体100は、上述したように、異なる領域110、120、130、140の組み合わせである。これらの領域110、120、130、140のそれぞれは、異なる化学的部分の組み合わせを含んでもよい。例えば、各領域は、いくつか例を挙げれば、高分子実体、多量体実体、単量体、溶媒及び溶解した(desolved)化学物質のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0046】
レンズ前駆体100は固定化放射線に供されていず、したがっていくつかの実施形態では、様々な材料の有意なレベルの相互拡散が起こるであろう。様々な材料のうちのいくつかは表面120にアクセスし、いくつかの実施形態では境界面である表面120を越えて気相170と物理的に接触していてもよい。
【0047】
本発明は、気相170とレンズ前駆体120の表面との相互作用を調整する方法及び装置に取り組む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、前駆体表面120に近接する気相170は、レンズ前駆体100の周りの囲い160を介して調整される。いくつかの実施形態は、レンズ前駆体を支持する基材145も囲い込み得る。
【0049】
以下
図2を参照すると、ボクセルリソグラフィ加工技術により形成されるレンズ前駆体201が示されている。レンズ前駆体201は、弓状光学形成表面212上に配置されている。その内部でレンズ前駆体が形成された反応性単量体混合物の容積が、囲いから排出されている。
【0050】
排出後、レンズ前駆体に近接した環境は、気相203を含む。いくつかの実施形態では、気相203は、加工装置200内に含まれる壁201〜208により封じ込められている。気相203を介した液体又は気体の流れ204〜206を用いて、気相中に所望の特性を導入することができる。装置は、入口209及び出口210を含む連結固定物を有してもよく、この連結固定物は、外部調整環境が気流を確立することを可能にし、若しくはいくつかの実施形態では静的気相状態を確立することを可能にし、又は代替的に気相203を部分的に若しくは本質的に完全に排気することを可能にする。
【0051】
いくつかの実施形態では、機械的固定物が、気相を排気することを可能にする。いくつかの特定の実施形態では、チャンバの内部203とチャンバの外部206との間に流体連通を提供する管211又は任意の他のデバイスが、排気用の退出ポートを画定してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、排気管211の使用によって異なる流れパターン204〜206を確立してもよく、管211は装置内で異なる様式で及び異なる位置に配置され、レンズ前駆体201に近接した領域からの気相203の幾分か又は全部の除去、特に気相203に暴露されている表面202に近接した大気からの、気相203の幾分か又は全部の除去を本質的に可能にしてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、管211の位置又は流体連通を提供する他の一デバイスの位置は、気相203の流れがレンズ表面202に近接して指向されることを可能にする。別の実施形態は、重力方向と略直交する頂点を有するレンズ前駆体201と、気体及び液体の一方又は両方がレンズ前駆体を下方に通過するように、気体及び液体の一方又は両方を退去させるための開口部を頂点の面の下方に有する管と、を含む。
【0053】
多数の調整機構が、環境内でレンズ又はレンズ前駆体201と気相との相互作用の調整を可能にし得る。機構には、非限定的な例として、成形管211、気体注入器、気体分配器、弁、質量流量コントローラ、圧力調整器、真空システム、気体混合システム、及び示されない他のそのような装置のうちの1つ以上を挙げることができる。
【0054】
例えば、いくつかの実施形態では、レンズ前駆体201の処理は、封じ込めバリア207、208により画定される領域の内外に、入口209及び出口210を介して気体を流すことを含み得る。いくつかの特定の実施形態は、アルゴン及び窒素の一方又は両方を含む不活性ガスの流れを含んでもよい。気体の流れは、例えば質量流量コントローラにより調整されて、気相203中に含まれる特定の量の気体がレンズ前駆体201上を通過するように調節されてもよい。いくつかの実施形態では、そのような不活性ガスの流れ204〜206を用いて、一般的な環境中に存在する特定の気体に対するレンズ前駆体201の暴露を制限することを容易にしてもよい。別の実施形態では、不活性ガスの流れ204〜206は、相当な蒸気圧を有する構成成分をレンズ前駆体201から乾燥させ、そのような環境内のレンズ前駆体201から脱ガスすることを可能にする。非限定的な例として、レンズ前駆体201の形成に使用された反応性単量体混合物中に存在する溶媒を、レンズ前駆体201から気相203中へと除去し、出口210を通して退出させてもよい。
【0055】
不活性環境を流す尚更なる実施形態は、1つ以上のレンズ形態及び流動性レンズ反応性媒体自体ではなく、レンズ前駆体201の環境から、存在する材料を脱ガスすることにより乾燥又は除去することに関し得る。レンズ前駆体環境を隔離することが可能な装置を通して不活性ガスを流すことから派生する多様な加工選択肢が存在し得ることが当業者には明かであり得る。
【0056】
別の実施形態は、入口204を通して液体を導入することを含んでもよく、液体は気相203と相互作用することによってレンズ前駆体201の表面202の処理に有用な特性を気相203中に付与する。
【0057】
更なる及び関連した実施形態は、既に固定化照射に暴露されており、したがってレンズ前駆体201ではなくレンズを構成している実体を支持するマンドレル212を含む。尚更なる実施形態では、前記ボクセルリソグラフィレンズ前駆体201を固定化放射線に暴露することにより形成されたレンズを、続いて流動性レンズ反応性媒体を前記レンズの表面に添加することによりレンズ前駆体201に変換してもよい。重ねて、そのようなレンズ前駆体201の環境は、レンズ前駆体201が不活性気相203を用いて加工される加工実施形態を含んでもよい。レンズ形態が非限定的にステレオリソグラフィ技術、旋削技術又は注型成型技術により作製されるレンズ前駆体201を含む、多数のタイプのレンズ前駆体201の加工から、類似する広範囲の実施形態が派生し得ることが当業者には明かであり得る。
【0058】
以下
図3を参照すると、いくつかの代替的実施形態において、レンズ前駆体、レンズ前駆体形態及びレンズのうちの1つ以上を加工する装置300は、入口ポート310及び出口ポート320に接続された弁311、312を備える。いくつかの例示的実施形態では、入口ポート弁310及び出口ポート弁320は、閉鎖されてチャンバ314内の大気を効果的に隔離することができ、チャンバ314は、ボクセル重合によりボクセルを介して、又はマンドレル313若しくは他の基材を介して形成されたレンズ前駆体315を収容する。
【0059】
いくつかの実施形態では、装置は、レンズ前駆体315の上方の静的雰囲気又は気相314を維持する。調整され、変更された他の大気中では、このような隔離は、蒸気環境中に存在する特定の種が装置が隔離状態に設定された際のみに存在するように、その特定の種の量を制限し得ることが当業者には明かであり得る。
【0060】
更なる実施形態は、環境が装置により隔離されてレンズ前駆体315上の静的気相を維持する、レンズ前駆体315の加工から同様に派生してもよい。この実施形態タイプでは、レンズ前駆体315自体が、揮発性であり、かつレンズ前駆体315から静的気相中へ脱ガスされる種を含み得る。いくつかの実施形態では、この材料は流動性レンズ反応性媒体自体中に存在し得、上面120を通して気相中に拡散し得る。揮発性の種は、最初はレンズ形態中に見出され、流動性レンズ反応性媒体中へと拡散し得る。場合により、脱ガスプロセスは、構成成分の蒸気圧に達する環境気相314中に構成成分を加える場合があり、その後、レンズ前駆体315表面の上方で平衡濃度を維持する。異なる実施形態では、脱ガスは、そのような平衡状態に達しない場合があり、気相中での構成成分の分圧を時間とともに増大させ得る。
【0061】
レンズ前駆体315上の静的気相は、レンズ前駆体315自体の一部中で起こる化学反応の結果として生じる副生物である化学的部分が気相311中で豊富になる実施形態ももたらし得る。このタイプの代替的実施形態では、副生物を生成する反応は、レンズ前駆体315が気相加工装置300の環境内に存在する間のレンズ前駆体315上への作用によってそれ自体で活性化され得る。いくつかの実施形態では、非限定的に、この外部から活性化されるタイプのプロセスは、例えば、レンズ前駆体315の熱的加工と、光以外の放射線による光活性化加工との一方又は両方により活性化され得る。
【0062】
実施形態は、調整可能な弁311、312を介してチャンバ314内に導入される液体又は気体も含む。様々な実施形態は、不活性ガスの導入を含んでもよく、別の実施形態は、レンズ前駆体315上又はレンズ前駆体315中での反応のための触媒を含む気体の導入を含む。いくつかの特定の実施形態では、弁を介して単量体が導入されてもよく、この単量体は、レンズ前駆体315の形成に使用される単量体と等価であってもよく、又は例えばボクセル重合によりボクセルを介して調整可能に重合されて、レンズ前駆体315を強化し得る、異なる単量体であってもよい。
【0063】
以下
図4を参照すると、静的相蒸気加工の尚更なる実施形態は、隔離環境が化学的構成成分の液層を含み得る場合に派生し得る。液相構成成分409は、例えば反応性単量体混合物由来の単量体形態、又は代替的に、反応性単量体混合物中に存在する溶媒由来の単量体形態を含み得る。液相構成成分409を環境内に含めることにより、気相413が隔離され、かつ液相409に含まれる分子の気体形態で占められた状態となり得る、様々な実施形態が派生し得る。
【0064】
実施形態は、出口411を介して気体412を液相構成成分409中に導入する入口弁410を有する反応装置400も含み得る。いくつかの実施形態では(図示するように)、出口411は、チャンバ415の外部領域と、チャンバ413の内部領域との間に流体連通を提供する。加えて、出口の位置を、レンズ前駆体401、レンズ前駆体形態及びレンズのうちの1つ以上に関連して配置することが有利であり得る。例えば、いくつかの実施形態では(図示するように)、出口411は、レンズ前駆体401の頂点の下方の地点に配置されてもよい。別の実施形態は、レンズ前駆体401の頂点の上方にある入口411Aを含んでもよい。
【0065】
気体412が液相構成成分409上を通過し、又は液相構成成分409中を気泡で通過し、又は別様に液相構成成分409と相互作用するにつれて、気体は液相構成成分409に含まれる分子の気体形態を抽出し、分子をレンズ前駆体401に近接する気相環境413中にもってくる場合がある。このような実施形態に影響を与え得る変数としては、気体流速の変更、気体タイプの変更、気体の温度、気体の組み合わせ、気体の導入順のうちの1つ以上を挙げることができる。
【0066】
様々な実施形態において、気相化学物質は、レンズ前駆体及びレンズ前駆体形態の一方又は両方と相互作用し得る。そのような相互作用の詳細は、それ自体で異なる実施形態を形成し得る。
【0067】
第1の実施例では、気相中の構成成分は、レンズ前駆体401の表面上への物理吸着又は化学吸着の一方又は両方が可能である。構成成分は、レンズ前駆体表面に吸着され又は表面と別様に相互作用し;表面と反応し、化学的に修飾された表面領域をもたらし得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、吸着材料は最初は反応しない可能性があり、流動性レンズ反応性媒体中に拡散し、またおそらくレンズ形態中にも拡散する可能性がある。この気相構成成分がこのようにバルク中に吸着され及び拡散された際、続く加工は、内部に気相構成成分が吸着したレンズ前駆体又はレンズ形態の特徴を変化させるように定められ得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、気相構成成分409は、レンズ前駆体401又はレンズの表面と相互作用する反応性単量体を含む。続く固定化放射線による加工は、レンズ形態、レンズ前駆体401又はレンズの表面上に存在する反応性単量体を重合させ、レンズ、レンズ前駆体401又はレンズ形態の物理的又は化学的特性の変化をもたらす。豊富な種類の化学的化合物及び混合物を使用することができ、それにより本発明の範囲内で非常に多様な実施形態が可能となり得る。
【0070】
吸着又は化学吸着してレンズ前駆体401を変更する材料にレンズ前駆体401を暴露するこの技術の別の方法は、気相中でレンズ前駆体401に暴露される化学的化合物又は化学的混合物が、既にレンズ前駆体401の構成成分であるか否かに基づく。いくつかの実施形態では、気相構成成分は、Etafilcon A反応性単量体混合物のような反応性混合物中に既に存在する単量体を含んでもよい。Etafilcon Aは、ボクセルベースのリソグラフィプロセスを用いて、レンズ前駆体401を形成するのに使用され得る。Etafilcon Aの単量体をレンズ前駆体401に組み込むことにより、レンズ前駆体401内の異なる位置に、異なるレベルのこの単量体をもたらすことができる。
【0071】
代替的に、別の実施形態タイプは、レンズ前駆体401にとって新しい化学種である気相化学的がレンズ前駆体401に暴露された際にもたらされる。新しい化学種は、レンズ前駆体401内の様々な位置で、特性を直接変化させ、又は触媒として作用し、又は別様に特性の変化を促進し得る。
【0072】
尚更なる実施形態は、レンズ前駆体401の構成成分でもある気相構成成分に暴露されたレンズ前駆体401を含む。気相が、レンズ前駆体401の環境内で調整可能に静的に形成されている場合、レンズ前駆体401中に見出される揮発性種は、レンズ前駆体から気相中に脱着し得る。脱着が起こるにつれて、蒸気とレンズ前駆体401の表面との間に平衡が生じる迄、又は生じない限り、脱着種の分圧が上昇するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、平衡に達した静的環境は、レンズ前駆体中での揮発性種の濃度を平衡にさせ得る。物理的及び化学的特性、例えば水和される能力は、レンズ及びレンズ前駆体401の両方の組成的構成の関数であるため、この静的気相処理プロトコルは、この方法で作製されるレンズに明確な特性をもたらし得る。
【0073】
いくつかの代替的実施形態では、気相構成成分は、レンズ前駆体401又はレンズの特定の部分と相互作用すると同時に反応し得る。いくつかの実施形態では、気相構成成分は、レンズ前駆体401の上面上、即ち流動性反応性媒体上で反応し得る。別の実施形態では、構成成分は、最初に、反応前に流動性レンズ反応性媒体中に拡散し、又は代替的に、流動性媒体を通してレンズ形態中に拡散する。これらの実施形態タイプのそれぞれは、これらの気相加工の革新を用いて作製されたレンズに、異なる物理的及び又は化学的特性をもたらし得ることが当業者には明かであり得る。
【0074】
本発明の別の態様において、いくつかの実施形態では、例えばチャンバ413内の状態に基づいてアナログ又はデジタル信号を生成するセンサ等のセンサを、チャンバ413内に又はチャンバ412に近接して配置し、チャンバ413内の状態に基づいた信号を生成してもよい。論理命令を実行できる、例えばコンピュータサーバ等の論理コントローラ、ワークステーション、マイクロプロセッサ、マイクロ−コントローラ又は他のデバイスが、センサ416、弁410、414又は他の調整可能な機構のうちの1つ以上と論理通信(logical communication)してもよい。論理コントローラは、装置の操作に有用なデータを受信し、コマンドを出し、データを格納し得る。
【0075】
以下
図5を参照すると、気相加工環境と、気相加工に関して記載された多様な実施形態とに加えて、装置は、レンズ前駆体環境を加熱する能力を加えることによって補足され得る。気相処理装置500に近接して配置した、熱エネルギー調整デバイス502、例えば熱源又は冷却デバイスは、レンズ前駆体501中及び気相環境中の一方又は両方の熱エネルギーを増大させるのに使用し得る。環境を加熱する代替的方法は、処理装置に供給されている気相自体を加熱する工程を含み得る。事実、外部熱的加工によりレンズ又はレンズ前駆体501環境を処理する多数の方法が存在し得る。
【0076】
加熱装置を含む熱調整デバイス502には、抵抗コイル、熱交換ユニット及び熱電ペルティエ素子のうちの1つ以上を挙げることができる。熱的加工は、レンズ前駆体又はレンズの性質の多数の変化に有用であり得る。非限定的な例として、レンズ、レンズ形態又は流動性レンズ反応性媒体中の1つ以上の揮発性成分は、内部にレンズ形態、レンズ前駆体501及びレンズの1つ以上が存在する環境を加熱することによって、その揮発性がより高まり得る。したがって、いくつかの実施形態では、熱の適用を介して、揮発性成分を様々なレンズ、レンズ前駆体及びレンズ前駆体形態から効果的に除去することが可能である。
【0077】
また、熱的加工を用いて、反応プロセスをより高速で起こすことができる。別の非限定的な例では、架橋は、熱的加熱の存在により加速され得る。レンズ、レンズ前駆体501又はレンズ形態中に単量体化合物を輸送するのに気相を使用してもよく、熱処理によって単量体化合物をレンズ、レンズ前駆体501又はレンズ形態と反応させてもよい。
【0078】
尚更なる実施形態は、気相環境内で利用可能な熱エネルギーの量を低下させることにより、レンズ前駆体形態、レンズ前駆体501及び眼科レンズのうちの1つ以上が利用可能な熱エネルギーの量を低下させることが可能な、例えば冷却装置、熱電冷却装置、冷水供給物、又は他の装置等の冷却デバイスを含む熱エネルギー調整デバイス502を含む。低下された熱エネルギーは、レンズ前駆体形態、レンズ前駆体501及び眼科レンズのうちの1つ以上に生じるいくつかの化学反応を遅延させるのに使用し得る。
【0079】
以下
図6を参照すると、本発明の別の態様では、気相加工を提供する装置600は、レンズ前駆体601、レンズ前駆体形態及びレンズのうちの1つ以上の光加工のための光放射線を放射することができる放射線源も含み得る。いくつかの実施形態では、光加工は、レンズ前駆体601、レンズ前駆体形態、レンズ、又は他のレンズ物体の形成に使用されたものと同一のボクセルリソグラフィ加工の光システムを介して調整される。
【0080】
いくつかの実施形態では、光源602は、レンズ前駆体601、レンズ前駆体形態、レンズ、又は他のレンズ物体のうちの1つ以上の表面603上の光反応性化学物質の暴露を調整し得る。暴露された光反応性化学物質は、表面603上に物理吸着し得、そこで光子暴露と相互作用し得、そのように相互作用することによって、化学的に修飾されて、表面上に組み込まれる。本発明の範囲内で一般性を失うことなく実施形態に含めることができる多数のタイプの又は光ベースの反応には、ボクセルリソグラフィ処理、マスク化リソグラフィ(masked lithography)処理によるレンズ前駆体601若しくはレンズ物体の局部的処理、又はより一般的には、レンズ前駆体601若しくはレンズ物体全体に対する非マスク化光子暴露を挙げることができる。
【0081】
包囲する気相が装置内で調整される環境内で、レンズ物体又はレンズ前駆体601を処理する方法の多数の例が、比較的単純な加工工程、又は工程の組み合わせで記載されていることが明かであり得る。しかしながら、これらの様々な加工工程はまた、より精巧な処理プロセスに組み合わせられることも明かな筈である。非限定的な意味において、これらの組み合わせは、連続的に行われる加工技術の組み合わせであってもよい。代替的に、多数の加工技術を並行モードにて作動させてもよい。
【0082】
本発明による技術に関連して記載された加工実施形態の結果、製造されるレンズ前駆体601及びレンズ物体の両方に発生され得る多数の変化が存在する。これらの得られた製品は、それ自体がボクセルリソグラフィ技術の新しいデバイス実施形態を規定する。非限定的に、レンズ物体及びレンズ前駆体601における変化の性質は、レンズ前駆体又はレンズ物体の表面及びバルク材料特性における化学的変化を含み得る。別のデバイス実施形態では、気相処理は、材料応力の局面における変化、レンズ物体及びレンズ前駆体601の一部分の密度における変化を生じ得、より全体的な視点では、これらのデバイスが最終形態でとる形状における変化を生じ得る。尚別のデバイスは、表面の湿潤性における変化を生じ得る、レンズ物体及びレンズ前駆体の表面組成における変化から派生し得る。デバイスの更なる多様性は、レンズ前駆体601又はレンズ物体の領域の色における変化、染料の組み込み、又は吸光度の変化から生じ得る。レンズ物体及びレンズ前駆体601中に加工処理することによる他の変化には、デバイスを形成するバルク材料の透過性における変化も挙げることができる。変更デバイスの別の実施形態では、気相加工による変化として、デバイスの熱安定性の変更が挙げられる。本加工技術はまた、気相加工により組み込まれる化学物質又は薬学的化合物を含むレンズ物体を可能にし得る。当業者には、これらのデバイス実施形態が、可能であり得る実施例として述べられ、レンズ前駆体601及びレンズ物体の気相加工から派生し得る多様な変更デバイスの限定を意図するものではないことが明かであり得る。
【0083】
〔実施の態様〕
(1) レンズ前駆体を加工する装置であって、
該レンズ前駆体を支持する表面を有するマンドレルと、
該マンドレルの前記表面に近接した気相環境を封じ込めるチャンバと、
を備える、装置。
(2) 気体及び液体の一方又は両方を、前記チャンバの内部領域から前記チャンバの外部領域へと排出する出口を更に備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記気体及び液体の一方又は両方を前記チャンバ内に入れる入口を更に備える、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記気体が不活性ガスを含む、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記液体が、前記マンドレル上に支持される前記レンズ前駆体の形成に使用された単量体とは異なる単量体を含む、実施態様3に記載の装置。
(6) 前記出口を通した前記気体及び液体の一方又は両方の通過を調整する弁を更に備える、実施態様2に記載の装置。
(7) 前記入口を通した前記気体及び液体の一方又は両方の通過を調整する弁を更に備える、実施態様3に記載の装置。
(8) 前記チャンバの内部領域の、前記レンズ前駆体の頂点の下方と、前記チャンバの外部領域との間に流体連通を提供するデバイスを更に備える、実施態様6に記載の装置。
(9) 前記チャンバの内部の点と、前記チャンバの外部領域との間に流体連通を提供する前記デバイスが、気体及び液体の一方又は両方を、前記チャンバの前記内部領域から前記チャンバの前記外部領域へと輸送する、実施態様7に記載の装置。
(10) 前記チャンバの内部の点と、前記チャンバの外部領域との間に流体連通を提供する前記デバイスが、気体及び液体の一方又は両方を、前記チャンバの前記外部領域から前記チャンバの前記内部領域へと輸送する、実施態様7に記載の装置。
【0084】
(11) 更に、
前記チャンバ内の状態を測定するセンサと、
前記チャンバ内の前記状態の測定値に基づいて、前記出口を通した前記気体及び液体の一方又は両方の通過を調整する前記弁と機能的に通信するコントローラと、
を備える、実施態様6に記載の装置。
(12) 前記チャンバが、単量体を収容するように更に機能し、前記装置が、前記レンズ前駆体の形成中、単量体の一部分の重合に続いて前記チャンバから前記単量体を除去するように機能する排出オリフィスを更に備える、実施態様6に記載の装置。
(13) 前記マンドレルが、単回使用プラスチックを含む、実施態様1に記載の装置。
(14) 前記レンズ前駆体を支持する前記表面が、光学品質の前記表面の少なくとも一部分を含み、前記光学品質部分が、上部に形成されるコンタクトレンズの光学ゾーンと相互に関連する、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記装置を外部デバイスと整合する位置合わせ機構を更に備える、実施態様1に記載の装置。
(16) 前記外部デバイスが、ボクセル単位の放射線源(source of voxel by voxel radiation)を含む、実施態様15に記載の装置。
(17) 前記ボクセル単位の放射線源が、デジタルミラーデバイスを含む、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記チャンバの少なくとも一部分内の熱エネルギーの量を調整する熱エネルギー調整デバイスを更に備える、実施態様1に記載の装置。
(19) 前記熱エネルギー調整デバイスが熱源を含む、実施態様18に記載の装置。
(20) 前記熱エネルギー調整デバイスが冷却デバイスを含む、実施態様18に記載の装置。
【0085】
(21) 前記熱エネルギー調整デバイスが熱交換器を含む、実施態様18に記載の装置。
(22) 前記熱エネルギー調整デバイスが熱電ウェハを含む、実施態様18に記載の装置。