(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筐体と、前記筐体の外表面に開口された線香挿入口と、前記筐体内にあって、前記線香挿入口から挿入される線香の先端に着火するための電気ヒータと、前記筐体の外表面に露出する押ボタンを有するモメンタリタイプの押ボタンスイッチと、前記押ボタンのオンオフ操作に連動して、前記電気ヒータへの通電を断続する電気回路と、電源となる電池とを備え、かつ
前記電気回路には、前記押ボタンの押下継続時間が所定時間を超えるまでは、押ボタンの押下中に限り前記電気ヒータへの通電を継続する一方、前記押ボタンの押下継続時間が前記所定時間を超えたときには、前記電気ヒータへの通電を強制的に遮断する回路動作が組み込まれており、さらに、
前記押ボタンの復帰バネ強度は、老人等の非力な者にも容易に押し込み操作が可能な程度に微弱に設定されている、線香着火装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気ヒータを用いて1本づつ線香に着火する線香着火装置は、従来より知られている(特許文献1参照)。同文献1によれば、その底部に電気ヒータが配置された細長状の包囲体と称する有底筒状容器(包囲体)内に線香を1本づつ挿入した状態において、電気ヒータへ通電を行うことにより、風の強い戸外にあっても、線香への着火をなし得ると共に、有底円筒状容器内への線香挿入をセンサにより検知して、電気ヒータへの通電タイミングを制御することにより、線香を挿入する操作を行うだけで、線香の挿入端部への着火を自動的になし得る旨が記載されている。
【0007】
電気ヒータを用いて1本づつ線香に着火する別の線香着火装置としては、電気ヒータとして、電熱線を螺旋状に巻回してなる棒状ヒータを採用すると共に、横架された棒状ヒータの周側面に垂直に突き立てるようにして、線香の先端面を棒状ヒータに接触させる一方、線香が棒状ヒータに突き立てられた力を利用して電気接点を開閉することにより、電気ヒータへの通電を自動的に行うようにしたものが知られている(特許文献2参照)。
【0008】
電気ヒータを用いて1本づつ線香に着火するさらなる別の線香着火装置としては、上面が開放された容器内に、電熱線を渦巻状に巻回してなる面上ヒータを敷設すると共に、容器内に線香を立て掛けることで、線香の先端面を電気ヒータに接触させて着火を行うものも知られている(特許文献3参照)。
【0009】
この発明は、上述の技術的背景の下になされたものであり、その目的とするところは、老人等の非力なものでも線香着火のための操作を容易に行なうことができる一方、転倒や他の物体との接触などにより、押ボタンが独りでに押下される事態が生じた場合、あるいは、子供の悪戯等により押ボタンが長時間に亘り押下され続けた場合にも、電気ヒータの過熱による火災等の危険を未然に防止することができる線香着火装置を提供することにある。
【0010】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参酌することにより、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する線香着火装置により解決することができると考えられる。
【0012】
すなわち、本発明の線香着火装置は、筐体と、前記筐体の外表面に開口された線香挿入口と、前記筐体内にあって、前記線香挿入口から挿入される線香の先端に着火するための電気ヒータと、前記筐体の外表面に露出する押ボタンを有するモメンタリタイプの押ボタンスイッチと、前記押ボタンのオンオフ操作に連動して、前記電気ヒータへの通電を断続する電気回路と、
電源となる電池とを備え、かつ前記電気回路には、
前記押ボタンの押下継続時間が所定時間を超えるまでは、押ボタンの押下中に限り前記電気ヒータへの通電を継続する一方、
前記押ボタンの押下継続時間が前記所定時間を超えたときには、前記電気ヒータへの通電を強制的に遮断する回路動作が組み込まれている。
【0013】
加えて、前記押ボタンの復帰バネ強度は、老人等の非力な者にも容易に押し込み操作が可能な程度に微弱に設定されている。
【0014】
このような構成によれば、老人等の非力なものでも線香着火のための押ボタン操作を容易に行なうことができる一方、転倒や他の物体との接触などにより、押ボタンが独りでに押下される事態が生じた場合、あるいは、子供の悪戯等により押ボタンが長時間に亘り押下され続けた場合にも、電気ヒータの過熱による火災等の危険を未然に防止することができる。
【0015】
このような構成によれば、電気ヒータの過熱による事故発生を未然に防止しつつも、仏壇に線香を上げる機会の多い老人等の利用者の利便を一層向上することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施の態様によれば、前記押ボタンの先端は前記筐体の外表面よりも突き出ているものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、電気ヒータの過熱による事故発生を未然に防止しつつも、押ボタンの確かな押し込み感覚を付与することで、操作性を一層向上させることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の態様によれば、前記筐体は直立据置型であって、前記押ボタンは、その周側面のいずれかの位置に取り付けられている、ものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、電気ヒータの過熱による事故発生を未然に防止しつつも、使い勝手の良い、線香着火装置の製作が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、老人等の非力なものでも線香着火のための押ボタン操作を容易に行なうことができる一方、転倒や他の物体との接触などにより、押ボタンが独りでに押下される事態が生じた場合、あるいは、子供の悪戯等により押ボタンが長時間に亘り押下され続けた場合にも、電気ヒータの過熱による火災等の危険を未然に防止することができ、
加えて、押ボタンの押下継続時間が所定時間に達するまでは、モメンタリ押ボタンスイッチの瞬時動作瞬時復帰の機能を生かすことで、電池の無駄な消耗も回避することができる線香着火装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る線香着火装置の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
本発明装置の外観斜視図が
図1に示されている。同図に示されるように、この線香着火装置1は、円筒状上部と円錐台状乃至スカート状下部とが連続する如き外観を呈するプラスチック製の据置型筐体2を有する。この筐体2は、分割線4を境として、
図2に示されるように、正面側筐体部分2aと背面側筐体部分2bとに2分割構成され、それらの筐体部分2a,2bは、両者を向かい合わせた状態において、背面側筐体部分2bに設けられた3個のネジ挿入孔4a,4b,4cのそれぞれに、図示しないネジを孔の奥まで挿入後、それらのネジを正面側筐体部分2aにねじ込むことにより、一体に結合される。なお、この例にあっては、筐体2は、高さが約100mm、上端部の直径が約50mm、下端部の直径が約65mmとされ、
図9に示されるように、両手の手の平に収まる程度のサイズに設定されている。
【0024】
組み上げられた状態の筐体2の全体は、
図5に示されるように、周側板部21と天板部22と底部開口23とを有する筐体本体と、この筐体本体の底部開口23に嵌め込まれる蓋板7とから構成され、蓋板7はその摘み7aを把持してスナップ操作することで、電池交換等のために、開閉可能とされている。筐体2の内部には、筐体2の下から略半分強を占める下部室25と上から1/5強を占める上部室26とが設けられている。
【0025】
下部室25は密閉状であって、その内部には、直立状態にある4本の単三乾電池10が並列に収容可能とされており、それにより、装置全体の重心を下げることにより、重量バランスの適正化が図られている。それらの乾電池10は電気的には直列接続されて、6ボルトの直流電源を構成するものである。下部室26内には、さらに、スイッチ機構3aが配置されている。このスイッチ機構3aは、モメンタリタイプ(瞬時動作瞬時復帰タイプ)の押ボタンスイッチを構成するものであり、筐体2の正面下部適所に配置された押ボタン3(
図1参照)によって、オンオフ操作が可能とされている。後述するように、このスイッチ機構3aに内蔵される図示しないSPDT接点又はこれに連動する通電スイッチは、4本の乾電池を直列接続してなる6ボルトの直流電源及び電気ヒータ9(
図5参照)を経由する閉回路に介在されており、そのため、押ボタン3が押されている期間に限り、電気ヒータ9に対する直流電源からの通電が行われる。
【0026】
上部室26は、換気用の通風口を有する。
図1〜
図4に示されるように、この例にあっては、通気口は、8本のスリット51〜58からなる正面側スリット群5と8本のスリット61〜68からなる背面側スリット群6とから構成されている。正面側のスリット51〜58は、この例ではいずれも3
mm程度の細幅を有するもので、正面側の周側板部21に沿って上下方向へ延びる延在部分51a〜58aと天板部22に沿って前後方向へ延びる延在部分51b〜58bとから構成されている。同様にして、背面側のスリット61〜68は、この例ではいずれも3mm程度の細幅を有するもので、背面側の周側板部21に沿って上下方向へ延びる延在部分61a〜68aと天板部22に沿って前後方向へ延びる延在部分61b〜68bとから構成されている。
図1及び
図2から明らかなように、正面側の8本のスリット51〜58と背面側の8本のスリット61〜68のそれぞれは、対応するもの同士(例えば、51と61、52と62、53と63、54と64、・・・)で、前後方向へ一直線に整列するように指向されている。
【0027】
後述するように、これらのスリット51〜58、61〜68によって、電気ヒータ9の周辺には、線香12の着火に必要な十分な空気が供給されると共に、正面側スリット群5に向けて強く息を吹き込むことにより、正面側スリット群5から背面側スリット群6へと向かう空気の流れを生じさせて、電気ヒータ9に溜まった残灰を筐体外に吹き飛ばして除去することができる。さらに、正面側のスリット群5を構成する中心2本のスリット54,55からは、筐体内部の電気ヒータ9が臨むこととなるため、押ボタン3を押下して電気ヒータ9への通電を行いつつ、電気ヒータ9の周辺から白煙が上がることを監視することで、線香12への着火を早期に確認して、押ボタン3への押圧を直ちに解除することで、無駄な電力消費を無くして、電池寿命を延ばすことができる。
【0028】
上部室26の底部中心には、電気ヒータ9が配置される。図示の例では、電気ヒータ9は、
図6に示されるように、電熱線(例えば、太さ0.3mm程度のニクロム線)を所定ピッチ(例えば、0.5〜0.7mmのピッチ)で5回だけ螺旋状に巻回してなる円筒コイル状電気ヒータとされる。すなわち、図示の円筒コイル状電気ヒータ9は、最上段(1段目)の周回電熱線91、2段目の周回電熱線92、3段目の周回電線93、4段目の周回電熱線94、及び最下段(5段目)の周回電熱線95からなる5個の周回電熱線により構成されている。
【0029】
円筒コイル状電気ヒータ9のなす円筒の内径は、標準的な線香の外径(例えば、2〜3mm)よりも大径とされており、この例では3.5〜4.5mm程度に設定されている。なお、図示の例にあっては、上段から下段に向かうにしたがい、周回電熱線のなす輪の径は僅かではあるものの徐々に小さくなるように設定されており、コイル上端開口9a(
図7参照)よりコイル内空洞9b(
図7参照)への線香12の受入は容易とする一方、線香12が傾動した際には、少ない傾動角度によっても、最下段の周回電熱線95又はそれよりも上段の周回電熱線94〜91とは確実に接触するように工夫されている。
【0030】
円筒コイル状電気ヒータ9は、その円筒の中心軸を垂直にした姿勢で、耐熱プラスチック製の支持台24上に載置され、その周囲3箇所を同様な耐熱プラスチック製の突部24a,24b,24cにて包囲され、線香下端部との接触によっても円筒コイル状電気ヒータ9が変形したり移動することがないように固定されている。換言すれば、円筒コイル状電気ヒータ9は、挿入口80(
図7参照)から挿入される1本の線香をその円筒端面開口9a(
図7参照)から円筒内部空洞9b(
図7参照)へと受け入れ可能な姿勢で配置されている。
【0031】
この円筒コイル状電気ヒータ9内に挿入される線香12は、支持台24の上面に突き当たってそれ以上の挿入を阻止される。すなわち、支持台24の上面が、この例にあっては、線香の挿入深さ制限部材として機能することとなる。なお、線香12の挿入深さを制限するための方法は、これに限るものではない。例えば、最下段の周回電熱線95をコイル端面を横断するように「の字状」に変形することによっても、挿入される線香12はコイル端面を横断する電熱線に突き当たって、それ以上の挿入を阻止される。しかも、この場合には、線香12の下端面それ自体がヒータと接することとなるため、後述するように、線香12の先端部は、その外周面のみならず、下端面からも加熱されることとなり、着火信頼性を一層高めることができる。
【0032】
円筒コイル状電気ヒータ9の一方の端子は端子金具11aへと導通するように配線され、他方の端子は端子金具11bへと導通するように配線されている。これらの端子金具11a,11bは、図示しない導通部材を経て、直流電源(乾電池10)及びスイッチ機構3aへと電気的に接されており、先に説明したように、押ボタン3が押されている期間に限り電気ヒータ9に通電がなされるように構成されている。
【0033】
図5に示されるように、円筒コイル状電気ヒータ9の真上に位置する天板部22には、これを貫通するようにして、漏斗状案内面82a(
図7参照)とトンネル状通路81a(
図7参照)とを有する略筒状の金属製部品(例えば、銅製、鉄製、アルミ製部品等)8が配置されている。金属製部品8は、上部室26内の前後壁から対向突出する2本の片持ち梁状支持部材27,27の先端面間に挟まれるようにして、筐体と一体に固定されている。
【0034】
金属部品8は、
図7に示されるように、線香挿入口80を境として、不燃性内側部材として機能する内側部分81と不燃性外側部材として機能する外側部分82とを有する。線香挿入口80の内径a1は、標準的な外径(例えば、2〜3mm)を有する線香12がある程度の余裕を持って1本だけ通過可能な程度の内径に設定されている。図示の例では、線香挿入口80の内径a1は、3.5〜4.5mm程度に設定されている。
【0035】
内側部分81の外周面の中央には、これを取り巻くようにして、1本の突条81bが形成されている。この突条81bは、前述の片持ち梁状支持部材27,27の各先端面に形成された凹部と嵌合して、位置決め作用に寄与するものである。内側部分81の内部には、線香挿入口80から金属製部品8の下端開口8b(
図8参照)に至るトンネル状通路81aが形成されている。トンネル状通路81aの出口側内径a2(
図7参照)は、線香挿入口80の内径とほぼ同一又は僅かに小さく設定されている。トンネル状通路81aの長さb1(
図7参照)は、引き抜き忘れた着火済の線香が徐々に上方へと延焼する際に、トンネル状通路81a内で酸欠により自然消火するに足る長さを考慮して決定され、図示の例では、約8mm程度に設定されている。
【0036】
外側部分82の内部には、
図7に示されるように、漏斗状案内面82aが形成されている。この漏斗状案内面82aの入口側内径a3(
図7参照)は、標準的な外径(例えば、2〜3mm)を有する線香12を線香挿入口80に差し込む際の容易性を考慮して決定され、この例では、6mm程度に設定されている。また、漏斗状案内面82aの深さb2(
図7参照)は、この例では、5mm程度に設定されている。そのため、視力が弱かったり、或いは手先が不自由であったりしたとしても、金属部品8の先端開口8aの内径a3は、線香挿入口80の内径a1の2乃至3倍近くもあるため、漏斗状案内面82aの傾斜角度に案内させることで、線香挿入口80へと脆く折れやすい1本の線香12を比較的容易に挿入することができる。
【0037】
金属製部品8内にあって、線香挿入口80と支持台上面24dとの距離を線香の最大挿入深さと定義するならば、図示の例にあっては、線香の最大挿入深さは、15mm程度に設定されている。ここで、標準的な線香の長さは大凡150mm程度であるから、線香の最大挿入深さは、標準的な線香全長の大凡1/10であることがわかる。そうすると、線香挿入口80からは線香全長の9割が外部へと突き出ているのであるから、その重量バランスからすると、線香は独りでに線香挿入口80の内周縁部を支点として傾動することが理解されるであろう。
【0038】
なお、宗派や地域によって線香を2つに又は3つに折ってから着火する場合もあるが、そのような場合を想定すると、上述の最大挿入深さとしては、線香完成品全長の1/6よりも充分に浅くかつ1/15よりも深いことが好ましい。地域や宗派により、仮に、線香を1/3に折って挿入する場合にも、線香挿入口80からは、その全長の半分よりも十分な長さが突き出る結果、突き出た部分の重量によって線香は独りでに傾動する一方、線香完成品をそのまま折らずに挿入したとしても、突き出た部分が長すぎて挿入中に線香が折れやすいと言った不都合もない。
【0039】
次に、本発明装置の作用について説明する。今仮に、外径2mm、全長150mmを有する標準的な線香12の先端に着火するものとする。その場合、操作者は、本発明装置1を仏壇又はその周囲の適当な台や机の上に置いた状態で、天板22の上面中央に位置する上端開口8aへの線香の挿入を試みる。このとき、上端開口8aの内径は約6mmであって、線香12の外径2mmの3倍もあるため、視力の弱い或いは手先が不自由な老人等であっても、線香12の先端を上端開口8aへと比較的容易に差し込むことができる。
【0040】
すると、漏斗状案内面82aの案内作用によって、線香12の先端は、線香挿入口80へと導かれる。その状態で、手を軽く線香12に添えていれば、線香12の先端はトンネル状通路81a内へと導かれ、続いて、トンネル状通路81aを通過して、さらに下方へと導かれ、続いて、円筒コイル状電気ヒータ9を構成する円筒コイルの円筒端部開口9aから円筒内部空洞9bへと受け入れられ、線香12の先端が支持台24の上面24dに突き当たって、線香の挿入動作は完了する。
【0041】
先に説明しように、挿入が完了した状態においては、線香挿入口80からは線香全長の約9割が外部へと突出することとなるため、
図8に示されるように、線香12は、図中仮想線に示す状態から図中実線で示す状態へと、矢印Bで示される方向へと、線香挿入口80の内周縁部を支点として傾動する。すると、線香12の下端部外周面と円筒コイル状電気ヒータ9の内周面を形成する最下段の周回電熱線95又はそれより上段に位置する周回電熱線94〜91の1又は2以上が接触する。
【0042】
このとき、電気ヒータ9と接触するのは、主として、線香下端部の外周面であって、線香下端部の端面ではないから、電気ヒータ9との接触に関して、線香下端部の端面角度のバラツキが問題となることはない。また、線香下端部が不規則な曲率で幾分曲がっていたりしたとしても、線香の周囲は円筒コイル状電気ヒータ9を構成する周回電熱線91〜95が取り囲んでいるから、そのように先端部が曲がった線香12であっても、線香12が傾動する際には、周回電熱線91〜95のいずれかの箇所とは必ず接触するから、電気ヒータ9との接触に関して、線香先端部の曲がり程度のバラツキが問題となることはない。さらに、円筒コイル状電気ヒータ9は、コイル軸方向へと連続する複数の周回電熱線91〜95により構成されているため、線香12の挿入深さにバラツキがあったとしても、線香下端部の外周面は、それら複数の周回電熱線91〜95のいずれかとは必ず接触するから、電気ヒータ9との接触に関して、線香の挿入深さのバラツキが問題となることはない。その結果、本発明によれば、任意の1本の線香12の先端部を電気ヒータ9と確実に接触させることにより、着火信頼性を向上させることができる。
【0043】
しかるのち、
図9に示されるように、右手13aと左手13bとで筐体2を挟むようにして支えた状態で、両方の親指で押ボタン3を押圧すると、スイッチ機構3aが作動して、押圧期間に限り、電気ヒータ9への通電が行われ、電気ヒータ9を構成する各周回電熱線91〜95は赤熱状態となる。このとき、
図8に示されるように、金属製部品8の下端部と電気ヒータ9との間には、空気の流通に足る十分な隙間が存在することに加えて、
図6に示されるように、電気ヒータ9の周囲にも空気の流通に足る十分な隙間が存在し、さらに電気ヒータ9に対しては、周囲のスリット群5,6からも新鮮な空気が十分に供給されるため、十分な酸素の存在下に、線香12の下端部は電気ヒータ9からの熱を受けて、短時間に着火することとなる。実際、本発明者等の試作によれば、任意の1本の線香(外径2mm、全長150mm)に対して、押ボタン3の3〜4秒程度の押圧時間により確実に着火できることが確認された。
【0044】
押ボタン3の押圧を開始したのち、着火するまでの間にあっては、
図2(a)、
図5、及び
図6に示されるように、正面側スリット群5を構成する中央の2本のスリット54,55からは、筐体内部に位置する電気ヒータ9が見えるため、線香12の下端部に着火したことを、電気ヒータ9の近傍から白煙が上がることにより、直ちに確認して、押ボタン3の押圧を解除して、無駄な長押しによる電池の消耗を避けることもできる。実際、本発明者等の試作によれば、通常の仏壇使用状態において、単三乾電池4本の電源構成によって、3ヶ月の使用継続が確認された。
【0045】
電気ヒータ式線香着火装置の宿命として、電気ヒータ9の周辺に残灰が溜まって、着火を阻害することが考えられるが、その場合には、筐体2を正面に向けた状態で、正面側のスリット群5に強く息を吹き込めば、正面側スリット群5を構成するスリット51〜58と背面側スリット群6を構成するスリット61〜68とは、
図2に示されるように、筐体2の平断面は円形であるものの、対応するもの同士で前後方向へ一直線に整列されているため、正面側スリット群5から背面側スリット群6に至る空気の流れを形成することにより、上述の残灰を吹き飛ばして簡単に除去することができ、狭い隙間から刷毛を挿入する如き面倒なメンテナンス作業は不要となる。
【0046】
線香を挿入放置した状態で、押ボタン3を操作することで、線香12への着火を行う電気ヒータ式の線香着火装置では、着火が完了したのち、線香12を線香挿入口80から引き抜く前に、例えば、突然に電話がかかってきてその場を離れ、その後、線香着火中であったことを忘れて、着火済の線香を線香挿入口80に挿入したまま着火装置を放置すると言ったことが想定される。記憶の薄れがちな高齢者には、特に、起こりうることである。そのような場合にも、この着火装置1には、耐熱性のトンネル状通路81a(
図7参照)が存在するので、着火した線香12が挿入状態のままで放置されたとしても、線香に沿って延焼が進んで、延焼箇所がトンネル状通路81a内にまで及ぶと、トンネル状通路81a内は通気性が悪いことから、延焼箇所への空気の供給が乏しくなり、酸欠状態が生じて、線香12の火はひとりでに消えることとなる。そのため、そのような着火済線香の置き忘れ事故が発生したとしても、火災に至る危険を未然に防止することができる。
【0047】
次に、本発明装置の好適な電気回路図の一例を
図10を参照しながら詳細に説明する。単に、押ボタン3が押下されている期間に限り、電気ヒータ9に通電が行われるようにするだけであれば、押ボタン3に内蔵される常開(NO)接点を、電源及び電気ヒータを経由する閉回路に介挿すればよいことは当業者であれば容易に理解されるであろう。しかし、手先が不自由なお年寄り等を考慮して、押ボタン3の押圧操作を軽い力でも容易とするためには、復帰バネとして比較的に復帰力が小さいものを採用せざるを得ない。そうすると、何らかの原因で筐体が倒れたり、あるいは壁や物に押し付けられたりして、ひとりでに、押ボタン3が押下される事態が発生すると、電気ヒータ9に対する長時間通電により、周囲の部材が溶融したり焦げたりして、最悪の場合には、火災の原因ともなりかねない。
【0048】
そこで、
図10に示される電気回路図にあっては、もしも、そのように押ボタン3が独りでに押下される事態が生じた場合には、本来の線香着火に要する一定の時間(例えば、3〜5秒)に加えて所定の余裕時間(例えば、3〜6秒)が経過すると、電気ヒータ9への通電が独りでに遮断されるように仕組まれている。
【0049】
すなわち、押ボタン3が押下されていない状態では、内蔵のSPDT接点(KEY)は常閉(NC)側にあり、100μFの電界コンデンサC1は、100Ωの抵抗R6を経由して電源電圧+6Vに充電されている。この状態において、操作者が押ボタン3を押圧すると、内蔵のSPDT接点(KEY)は常閉(NC)側から常開(NO)側へと切り替わり、コンデンサC1の充電電圧が2個の電界効果トランジスタQ1,Q2のゲートに並列に印加される。すると、それらのトランジスタQ1,Q2がONすることにより、電気ヒータ9に対する通電が開始される。以後、コンデンサC1の充電電圧は、100KΩの抵抗R4を経由して放電されて、所定の時定数曲線を描いて低下していく。押ボタン3が押下されてから、線香着火に要する一定の時間(例えば、3〜5秒)に加えて所定の余裕時間(例えば、3〜6秒)が経過すると、トランジスタQ1,Q2のゲート電圧がそのしきい値電圧近辺に低下することで、それらトランジスタQ1,Q2が飽和状態から能動状態へと移行されて、ON抵抗が増加(発熱)する。すると、1MΩの抵抗R5を流れる電流値が増加して、バイポーラトランジスタQ3に対するベース電流が供給され、トランジスタQ3がON状態となる。すると、コンデンサC1の充電電圧はトランジスタQ3を経由して急速に放電され、これに応答して、トランジスタQ1,Q2は一気にOFF状態となって、電気ヒータ9への給電は遮断され、同時に、トランジスタQ1,Q2の過熱が防止される。このように、転倒や他の物体との接触などにより、押ボタン3が独りでに押下される事態が生じた場合には、本来の線香着火に要する一定の時間(3〜5秒)に加えて所定の余裕時間(例えば、3〜6秒)が経過すると、電気ヒータ9への通電が独りでに遮断される結果、電気ヒータ3の過熱による火災等の危険を未然に防止することができるのである。
【0050】
なお、以上の例にあっては、筐体2として据置型構造を採用し、線香12がその自重により独りでに傾動するように構成したが、筐体2を手持ち型乃至携帯型とすると共に、線香に対して何らかの力を物理的に作用させて、これを積極的に傾動させるように構成しても良い。
【0051】
また、以上の例にあっては、据置型筐体を前提として、線香を垂直に挿入するように構成したが、線香の挿入方向は斜め下方向や水平方向であってもよい。例えば、天板部を傾斜面として、その傾斜面に線香挿入口を設けて、線香を斜め下方へと挿入するように構成してもよいであろう。
【0052】
さらに、以上の例にあっては、「線香」の語を使用して着火対象を特定したが、ここで言う「線香」とは、線状被着火体の意味であって、燃焼により特定の香りを発生する、仏事やアロマテラピーに使用される所謂「線香」に限るものではないことを念のため付言する。