特許第6169388号(P6169388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169388
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】落雪防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/10 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   E04D13/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-66772(P2013-66772)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190050(P2014-190050A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505222901
【氏名又は名称】有限会社田中鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏知
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀治
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−270222(JP,A)
【文献】 特開2010−281052(JP,A)
【文献】 特開平05−202590(JP,A)
【文献】 米国特許第06996938(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/10
E04D 13/00
E04H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が傾斜屋根の傾斜に沿って配置される複数の縦梁と、
長手方向が前記傾斜屋根の軒に平行に配置され、前記複数の縦梁を所定の間隔で固定する横梁と、
前記傾斜屋根の傾斜の上側に向かって弓形に湾曲するとともに、上端部が前記湾曲方向と反対方向に湾曲した、前記傾斜屋根の面に垂直かつ前記横梁に垂直に、前記縦梁に固定された雪受け部と、
前記雪受け部の弓形に湾曲した部分に、前記横梁の長手方向の幅に張り渡された、網状のネット部と、
を備えたことを特徴とする落雪防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の落雪防止装置において、
一端が前記縦梁の下端部に固定され、他端が前記雪受け部の湾曲部分の凹部側に固定されている支柱を備えたことを特徴とする落雪防止装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の落雪防止装置において、
前記縦梁前記横梁及び前記雪受け部は、金属製であり、
前記ネット部は、樹脂製であることを特徴とする落雪防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜屋根に積もった雪、特に傾斜屋根に設置した太陽光発電用パネルに積もった雪の落下を防止するための落雪防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜屋根に積もった氷雪塊の急激な落下を防止するとともに、氷雪塊を徐々にとかし軒先の天樋に、その傾斜を利用した自然排水を可能にし、軽量で家屋やその屋根に負担をかけないようにした落雪防止装置があった。
【0003】
この落雪防止装置では、剛性を有する熱可塑性合成樹脂からなる矩形状ネットの一辺端部の平面部に、合成樹脂製ネットを対向辺に平行させて中空に膨出させ、その中空膨出部側が屋根面の低位側となるように設置してある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−208552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年、傾斜屋根に太陽光発電用パネルが設置されることが多くなり、太陽光発電用パネルの表面にも雪が積もるという状態が発生するようになってきている。この場合、屋根の傾斜面の高さよりも太陽光発電用パネルの表面の高さが高くなるため、従来のように、傾斜屋根に設置して、屋根の傾斜面から滑り落ちる雪を止める落雪防止装置では、太陽光発電用パネルの表面に積もって、そこから滑り落ちる雪を止めることができないという問題がある。
【0006】
また、従来の落雪防止装置の高さを高くして太陽光発電用パネルの表面から滑り落ちる雪を止めようとすると、強度が不足し、また、そのために落雪防止装置の強度を高くすると重量が増加するという問題もあった。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、太陽光発電用パネルが設置してある傾斜屋根からの落雪を防止することができる軽量な落雪防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0009】
上記「発明が解決しようとする課題」において述べた問題を解決するためになされた発明は、縦梁(10)、横梁(20)、雪受け部(30)及びネット部(40)を備えた落雪防止装置(1)である。
【0010】
縦梁(10)は、長手方向が傾斜屋根(60)の傾斜に沿って複数配置された梁であり、横梁(20)は、長手方向が傾斜屋根(60)の軒に平行に配置され、複数の縦梁(10)を所定の間隔で固定する梁である。
【0011】
雪受け部(30)は、傾斜屋根(60)の傾斜の上側に向かって弓形に湾曲するとともに、上端部が前記湾曲方向と反対方向に湾曲し、縦梁(10)に、傾斜屋根(60)の面に垂直かつ横梁(20)に垂直に固定されている。また、ネット部(40)は、雪受け部(30)の弓形に湾曲した部分に横梁(20)の長手方向の幅に張り渡された、網状のネットである。
【0012】
このような、落雪防止装置(1)によれば、長手方向が傾斜屋根(60)の軒に平行に配置された横梁(20)によって、長手方向が傾斜屋根(60)の傾斜に沿って配置された複数の縦梁(10)が所定の間隔で固定されている。
【0013】
そして、傾斜屋根(60)の傾斜の上側に向かって弓形に湾曲するとともに、上端部が湾曲方向と反対方向に湾曲した雪受け部(30)が、傾斜屋根(60)の面に垂直かつ横梁(20)に垂直となるように縦梁(10)に固定されており、雪受け部(30)の弓形に湾曲した部分に網状のネット部(40)が横梁(20)の長手方向の幅に張り渡されている。
【0014】
すると、太陽光発電用パネルの表面のように屋根(60)の傾斜面から高い位置に積もった雪が落下した場合であっても、落下した雪がネット部(40)で受けられるため、雪が屋根(60)からは落下しない。また、雪受け部30全体がS字状になっているため、ネット部40を超えて落下しようとする雪をネット部40に方により多く折り返すようにすることができる。
【0015】
ここで、ネット部(40)を支える雪受け部(30)は、横梁(20)と縦梁(10)とによって固定され、さらに、傾斜屋根(60)の上側に向かって弓状に湾曲しているため、太陽光発電用パネル表面からの落雪を防止するために、雪受け部(30)の高さを高くしても、雪の重量に対抗し得る強度を持たせることができる。
【0016】
また、雪受け部(30)に支えられたネット部(40)に落雪が滞留した場合、湾曲面の反対の面は、太陽光を遮るものがほとんどないので、滞留している雪に太陽光が当たるようになっている。したがって、ネット部(40)に滞留している雪を早く溶かすこともできる。
【0017】
また、請求項2に記載のように、一端が縦梁(10)の下端部に固定され、他端が雪受け部(30)の湾曲部分の凹部側に固定されている支柱(50)を備えるようにすると、雪受け部(30)の強度をさらに高めることができ、大量の雪の落雪を防止することができる。
【0018】
ところで、横梁(20)、縦梁(10)、雪受け部(30)、ネット部(40)の材質には種々のものが考えられるが、請求項3に記載のように、横梁(20)、縦梁(10)及び雪受け部(30)を金属製とし、ネット部(40)を樹脂製とすると、縦梁(10)、横梁(20)及び雪受け部(30)が金属製であるため、落雪防止装置(1)の強度を高めることができ、設置する面積がおおきいネット部(40)を軽量化することができる。つまり、落雪防止装置(1)の強度を保ちつつ、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】落雪防止装置の概略の構成を示す外観図である。
図2】フレーム部の外観図及び断面図である。
図3】落雪防止装置のそうめん図及び背面図である。
図4】落雪防止装置の左右側面図である。
図5】落雪防止装置の平面図及び底面図である。
図6】落雪防止装置を、太陽光発電用パネルが設置された傾斜屋根に設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
(落雪防止装置1の構成)
図1は、本発明が適用された落雪防止装置1の概略の構成を示す外観図であり、図2は、フレーム部5の外観図(図2a)及び断面図(図2b)である。また、図3は、落雪防止装置1の正面図(図3(a))及び背面図(図3(b))であり、図4は、右側面図(図4(a))及び左側面図(図(b))であり、図5は、平面図(図5(a))及び平面図(図5(b))である。また、図6は、落雪防止装置1を傾斜屋根60に取り付けた状態を示す図である。
【0021】
落雪防止装置1は、図1に示すように、フレーム部5及びネット部40と、を備えている。
フレーム部5は、図2に示すように、縦梁10、横梁20、雪受け部30及び支柱50を備えている。
【0022】
縦梁10は、長手方向が傾斜屋根60(図6参照)の傾斜に沿って配置されるスチールなどの金属製の梁であり、複数配置されている。縦梁10の、雪受け部30の湾曲部分側の先端は、外側(雪受け部30の湾曲部分の凸部側)に、断面がクランク状になるように形成されている。なお、以下このクランク状の部分をクランク部32と呼ぶ。
【0023】
後述するように、このクランク部32で、太陽光発電用パネル70と連結して傾斜屋根60に取り付けられるようになっている。
横梁20は、長手方向が傾斜屋根60の軒に平行に配置され、複数の縦梁10を所定の間隔で固定するためのスチールなどの金属製の梁であり、図2に示すように、複数の縦梁10を連結する以外にも、縦梁10に設置された複数の雪受け部30を連結して、フレーム5の強度を高めるために、複数個設けてもよい。
【0024】
雪受け部30は、スチールなどの金属製の部材を、傾斜屋根60の傾斜の上側に向かって弓形に湾曲するように形成してあり、傾斜屋根60の面に垂直かつ横梁20に垂直に、縦梁10に固定してある。
【0025】
雪受け部30の湾曲部分には、ネット部40を固定するためのネジ穴が設けてあり、このネジ穴にボルトを挿入し、ナットで固定することによりネット部40を雪受け部30に固定する。
【0026】
また、雪受け部30の上端部分(図2中「A」で示す部分)は、弓状の湾曲方向と反対方向に湾曲させてあり、ネット部40を超えて落下しようとする雪をネット部40に方に折り返すようになっている。
【0027】
支柱50は、一端が縦梁10の下端部に固定され、他端が雪受け部30の湾曲部分の凹部側に固定されている部材である。本実施形態では、図2に示すように、縦梁10と一体成型してあり、スチール製部材の縦梁10の下端部を上方に折り曲げ、折り曲げた部分の先端が雪受け部30の湾曲部分の凹部側の先端近傍に固定してある。
【0028】
ネット部40は、ポリエチレンなどの樹脂製の網状の部材であり、雪受け部30の弓形に湾曲した部分に、横梁20の長手方向の幅に張り渡されている。
ネット部40の網目の大きさは、例えば、その地方で屋根に積もる雪の雪質などによって決定すればよい。
(落雪防止装置1の設置)
次に図6に基づいて、落雪防止装置1を、太陽光発電用パネル70が設置された傾斜屋根60に設置する方法について説明する。
【0029】
図6に示すように、落雪防止装置1は、太陽光発電用パネル70が設置されている傾斜屋根60の軒に、横梁20が軒と平行、かつ、雪受け部30の湾曲部分の凸部側が太陽光発電用パネル70の向きになるように設置する。
【0030】
設置の際には、太陽光発電用パネル70を傾斜屋根60に設置するための取付金具62の下端面と傾斜屋根60との間に、取付金具64を挟み込む。そして、挟み込んだ取付金具64の先端(挟み込んだ部分と反対端)をクランク部32に取り付けることによって、太陽光発電用パネル70と落雪防止装置1とを連結する。
【0031】
これにより、太陽光発電用パネル70に積もった雪が落下して、落雪防止装置1に堆積しても、落雪防止装置1自体が傾斜屋根60から落下しないような取付強度を得ることができる。
(落雪防止装置1の特徴)
以上のような、落雪防止装置1では、傾斜屋根60の傾斜の上側に向かって弓形に湾曲した雪受け部30が、傾斜屋根60の面に垂直かつ横梁20に垂直となるように縦梁10に固定されており、雪受け部30の弓形に湾曲した部分に網状のネット部40が横梁20の長手方向の幅に張り渡されている。
【0032】
したがって、太陽光発電用パネル70の表面のように傾斜屋根60の傾斜面から高い位置に積もった雪が落下した場合であっても、落下した雪がネット部40で受けられるため、雪が傾斜屋根60からは落下しない。
【0033】
ここで、ネット部40を支える雪受け部30は、横梁20と縦梁10とによって固定され、さらに、傾斜屋根60の上側に向かって弓状に湾曲しているため、太陽光発電用パネル表面からの落雪を防止するために、雪受け部30の高さを高くしても、雪の重量に対抗し得る強度を持たせることができる。
【0034】
また、雪受け部30に支えられたネット部40に落雪が滞留した場合、湾曲面の反対の面は、太陽光を遮るものがほとんどないので、滞留している雪に太陽光が当たるようになっている。したがって、ネット部40に滞留している雪を早く溶かすこともできる。
【0035】
また、支柱50によって、雪受け部30が湾曲部分の凹部側から支柱50で支えられているため、雪受け部30の強度をさらに高めることができ、大量の雪の落雪を防止することができる。
【0036】
また、横梁20、縦梁10及び雪受け部30をスチールのような金属製とし、ネット部40が樹脂製であるので、落雪防止装置1の強度を高めることができ、設置する面積が大きいネット部40を軽量化することができる。つまり、落雪防止装置1の強度を保ちつつ、軽量化を図ることができるようになっている。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
(1)上記実施形態では、横梁20、縦梁10及び雪受け部30をスチールのような金属製としたが、耐荷重が確保できるものであれば、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plasticの略)のような非金属製のものであってもよい。
(2)上記実施形態では、ネット部40を樹脂製としたが、重量は増加するものの、金属製のネットを用いてもよい。
(3)支柱50は、1本だけでなく、必要な強度を確保するために複数個設けてもよい。
(4)上記実施形態では、雪受け部30の上端部分(図2中「A」で示す部分)を、弓状の湾曲方向と反対方向に湾曲させてあるが、積雪が多い地域に設置するような場合には、この部分を大型化し、雪受け部30全体がS字状になるようにしてもよい。このようにすることで、ネット部40を超えて落下しようとする雪をネット部40に方により多く折り返すようにすることができる
(5)上記実施形態では、落雪防止装置1を傾斜屋根60の軒の部分に設置してあるが、太陽光発電用パネル70からの落雪を防止する場合、太陽光発電用パネル70の設置位置に合わせて、例えば、傾斜屋ね60の中間に設置してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1… 落雪防止装置 5… フレーム部 10… 縦梁 20… 横梁 30… 雪受け部 32… クランク部 40… ネット部 50… 支柱 60… 傾斜屋根 62,64… 取付金具 70… 太陽光発電用パネル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6