(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多層基板の電源層とグラウンド層との間には、絶縁体層(即ち、誘電体層)を設ける必要がある。非特許文献1に示されているように、このように配置された電源層及びグラウンド層の間には平行平板共振が生じ、これにより電子機器の誤動作や不要な放射ノイズが発生する。このような多層基板自体から生じるノイズは、特許文献1に開示された技術によって低減することができない。また、非特許文献1に開示された技術によれば、信号層における電子部品の配置が決まるまで、スナバ回路の抵抗値等を適切な値に設定することができない。更に、複数の周波数のノイズを低減するためには複数のスナバ回路が夫々必要である。しかしながら複数のスナバ回路の夫々の適切な抵抗値等を調整することは困難である。即ち、非特許文献1に開示された技術によって電源層とグラウンド層との間に発生する平行平板共振と、これにより生じる電子機器の誤動作や不要な放射ノイズを低減することは困難である。
【0009】
そこで、本発明は、電源層とグラウンド層との間で生じる平行平板共振を、より効果的且つより容易に抑制可能な共振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、第1の共振器として、
上下方向において互いに離間して設けられた電源層及びグラウンド層のうちの一方の層である第1層に接続された共振器であって、
前記第1層に接続され、前記電源層及び前記グラウンド層のうちの他方の層である第2層と接触しないようにして、前記第2層を超えて前記上下方向に延びる配線部と、
前記第2層と接触しないようにして前記配線部に接続され、且つ、前記上下方向において前記第1層と共に前記第2層を挟むように配置された本体部とを備える
共振器が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第2の共振器として、第1の共振器であって、
前記第2層には、前記第2層を前記上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記配線部は、前記貫通孔を通過して延びている
共振器が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第3の共振器として、第1又は第2の共振器であって、
前記共振器はスタブである
共振器が得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第4の共振器として、第3の共振器であって、
前記共振器の本体部は、前記上下方向と直交する方向に長く延びている
共振器が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第5の共振器として、第3の共振器であって、
前記共振器の本体部は、前記上下方向と直交する平面内をらせん状に延びている
共振器が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第6の共振器として、第3乃至第5の共振器のいずれかであって、
前記共振器の前記本体部は、直流電力損失を避けつつ高周波電力を減衰させる損失成分を有している
共振器が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第7の共振器として、第6の共振器であって、
前記損失成分は、前記本体部に接続された抵抗器である
共振器が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第8の共振器として、第6の共振器であって、
前記損失成分は、前記本体部に近接配置された磁性体である
共振器が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第9の共振器として、第8の共振器であって、
前記磁性体は、組成式:MFe
2O
4(Mは金属元素)で示されるフェライト材料を含んでいる
共振器が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第10の共振器として、第8又は第9の共振器であって、
前記磁性体は、フェライトめっき法によって形成されている
共振器が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、第1の多層基板として、
第1乃至第10の共振器のいずれかを備えた多層基板であって、
少なくとも1つの前記電源層と少なくとも1つの前記グラウンド層とを備えている
多層基板が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、第2の多層基板として、第1の多層基板であって、
複数の前記共振器を備えている
多層基板が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、第1の電子機器として、
第1又は第2の多層基板を備えた
電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による共振器は、電源層及びグラウンド層のうちの一方の層(第1層)に接続され、且つ、電源層及びグラウンド層のうちの他方の層(第2層)と接触しないようにして、第2層を超えて延びる配線部と、第2層と接触しないようにして配線部に接続され、且つ、第1層と共に第2層を挟む本体部とを備えている。換言すれば、本発明による共振器は、電源層及びグラウンド層の双方の層と関与するようにして設けられており、且つ、一端に開放している。このため、電源層とグラウンド層との間で生じる平行平板共振を、より効果的且つより容易に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
図1に示されるように、本発明の第1の実施の形態による多層基板10は、絶縁体(即ち、誘電体)とパターンとをウエハース状に積み重ねて形成されている。パターンは、例えばビアホールによって電気的に互いに接続されている。多層基板10は、PC等の電子機器(図示せず)に搭載されて使用される。
【0026】
本実施の形態による多層基板10は、上述のパターンとして、1つの電源層100、1つのグラウンド層200及び1つの信号層300を備えている。但し、多層基板10は、例えば複数の電源層100を備えていてもよいし、複数のグラウンド層200を備えていてもよい。多層基板10が複数の電源層100を備えている場合、複数の電源層100は互いに接続されていてもよい。換言すれば、多層基板10は、少なくとも1つの電源層100と、少なくとも1つのグラウンド層200とを備えていればよい。
【0027】
多層基板10の内層プレーンである電源層100には、基幹電源(図示せず)から電源が供給される。多層基板10の表層である信号層300には、IC(Integrated Circuit)チップ(電子部品)310等の様々な電子部品が搭載されている。電子部品310は、ビアホールを経由して電源層100及び(多層基板10の内層プレーンである)グラウンド層200と接続されており、これにより、電源層100に供給された電源は電子部品310に供給される。
【0028】
本実施の形態によれば、電源層100及びグラウンド層200は、上下方向において互いに離間して設けられている。詳しくは、電源層100及びグラウンド層200は、絶縁体からなる誘電体層500を上下方向に挟むようにして、水平面上を延びている。
【0029】
本実施の形態による多層基板10は、2つの(即ち、複数の)スタブ(共振器)410を更に備えている。仮に、多層基板10がスタブ410を備えていない場合、下記のような問題が生じやすい。
【0030】
まず、以上のように構成された電源層100に電源が供給されると、電子部品310にノイズ(例えば、同期スイッチングノイズ)が生じる。発生したノイズは、誘電体層500に伝わる。誘電体層500に伝わったノイズは、他の電子部品に影響を与えるおそれがある。例えば、微弱な高周波信号を扱う電子部品(例えば、アンテナ信号を増幅するための低ノイズアンプ:図示せず)が、電子部品310と同様に信号層300に搭載されている場合、この電子部品が適切に動作しないおそれがある。
【0031】
更に、電源層100とグラウンド層200との間で平行平板共振が生じる。詳しくは、電源層100及びグラウンド層200に挟まれた誘電体層500において、共振周波数を有する電磁波(即ち、ノイズとなる定在波)が発生する。例えば、低ノイズアンプがこの定在波の腹の位置(即ち、定在波の振幅が最大になる位置)に配置されると、低ノイズアンプは大きな影響を受ける。更に、多層基板10の水平面における周囲は、開放端であるため必ず定在波の腹となる。このため、多層基板10の外部に意図しない電磁波が放出される。
【0032】
一方、本実施の形態による多層基板10は、スタブ410を備えているため、以下に説明するように、上述のような電源層100とグラウンド層200との間で生じるノイズ(即ち、多層基板10自体から生じる高周波ノイズ)を低減することができる。
【0033】
図1に示されるように、スタブ410の夫々は、配線部412と、本体部416とを備えている。本実施の形態によるスタブ410の本体部416は、信号層300に設けられている。換言すれば、本体部416が設けられたスタブ層(共振器層)400は、信号層300である。但し、スタブ層400と信号層300とは、互いに異なる層(パターン)であってもよい。
【0034】
本実施の形態によれば、電源層100は、グラウンド層200とスタブ層400とに挟まれている。スタブ層400に設けられたスタブ410の配線部412は、グラウンド層200に接続されており、電源層100と接触しないようにして、電源層100を超えてスタブ層400まで、上下方向に延びている。詳しくは、電源層100には、貫通孔110が形成されている。配線部412は、電源層100と接触しないようにして、貫通孔110を通過して信号層300まで延びている。
【0035】
本実施の形態によるスタブ410の本体部416は、スタブ層400を(即ち、上下方向と直交する平面内を)らせん状に延びている。本体部416の一端は、配線部412に接続されており、他端は開放端となっている。換言すれば、本体部416は、電源層100と接触しないようにして配線部412に接続され、且つ、上下方向においてグラウンド層200と共に電源層100を挟むように配置されている。
【0036】
本実施の形態によれば、電源層100及びグラウンド層200の間に生じる定在波の周波数をf
0とすると、スタブ長(即ち、スタブ410の本体部416の線路長):l(エル)は、スタブ410における共振周波数がf
0と一致するように設定されている。スタブ410を以上のように構成することで、スタブ410の開放端によって折り返された波により、周波数:f
0のノイズを効果的に低減することができる。換言すれば、スタブ長を変更することで、低減対象となる周波数を選択することができる。
【0037】
電源層100及びグラウンド層200の間に生じる定在波の周波数(即ち、共振周波数)は、多層基板10のサイズ等から求めることができる。即ち、ICチップ310等の電子部品を配置する前に、定在波の腹となる位置を求めることができる。スタブ410を、定在波の腹となる位置に設けることにより、ノイズを、より効果的に低減することができる。また、多層基板10には様々な周波数を有する定在波(ノイズ)が生じる。これらの周波数に夫々対応した複数のスタブ410(
図1参照)を設けることにより、ノイズを、更に効果的に低減することができる。
【0038】
以上に説明したスタブ410の本体部416は、らせん形状を有しており、これによりコンパクトに配置することができる。但し、本体部416の線路間隔が過度に小さくない限り、本体部416はどのような形状を有していてもよい。例えば、直線的な形状を有していてもよいし、ミアンダ形状を有していてもよい。また、電源層100及びグラウンド層200の位置関係は逆転していてもよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
図2に示されるように、本発明の第2の実施の形態による多層基板10aは、電源層100、グラウンド層200及びスタブ層(図示せず)を備えている。電源層100及びグラウンド層200は、第1の実施の形態と同様に、上下方向において互いに離間して設けられている。また、グラウンド層200及びスタブ層(図示せず)は、第1の実施の形態と同様に、上下方向において互いに離間して設けられている。詳しくは、電源層100とグラウンド層200との間には、厚さ:d1の誘電体層500が形成されている。同様に、グラウンド層200とスタブ層(図示せず)との間には、厚さ:d2の誘電体層が形成されている。グラウンド層200には、グラウンド層200を上下方向に貫通する貫通孔210が形成されている。本実施の形態によるグラウンド層200は、電源層100とスタブ層(図示せず)とに挟まれている。
【0040】
本実施の形態によるスタブ(共振器)410aは、配線部412と本体部416aとを備えている。本実施の形態による配線部412は、電源層100に接続されている。配線部412は、グラウンド層200と接触しないようにして、グラウンド層200を超えて上下方向に延びている。本実施の形態による本体部416は、上下方向と直交する方向に長く延びている(即ち、図示しないスタブ層に配置されている)。スタブ長:l(エル)は、第1の実施の形態と同様に、スタブ410における共振周波数がf
0と一致するように設定されている。
【0041】
図3から理解されるように、以上のように構成されたスタブ410aは、第1の実施の形態によるスタブ410と同様に、多層基板10自体から生じるノイズ(定在波)を低減することができる。
【0042】
図3に、多層基板10aの一例についての入力インピーダンス特性を示す。
図3に例示された多層基板10aは、15.5mm×64.5mmの矩形形状を有している。また、例示された多層基板10aの誘電体層500の誘電比率は、4.3である。例示された多層基板10aは、スタブ410aが設けられていない場合、1.1GHzの倍数の周波数において高い入力インピーダンス(Z
11)を有する(
図3の「スタブ等を設けない場合」参照)。このため、
図3に例示された多層基板10aには、1.1GHz(及びその倍数)の周波数を有する定在波が生じやすい。
【0043】
例えば、
図2の電源層100とグラウンド層200との間にキャパシタ(図示せず)を設けることで、1.1GHzの周波数における入力インピーダンスを低下させることができる(
図3の「キャパシタを設けた場合」参照)。しかしながら、この場合、1.1GHz以外の周波数における入力インピーダンスも全体的に低下する。詳しくは、キャパシタ(図示せず)を設けることで、設置しない場合とは異なる周波数で反共振が生じる。キャパシタ(図示せず)を複数設けた場合、更に異なる周波数で反共振が生じる。換言すれば、多層基板10aの入力インピーダンス特性が、好ましくない影響を受けるおそれがある。
【0044】
一方、本実施の形態によれば、その他の周波数における入力インピーダンスを低下させることなく、1.1GHz(及びその奇数倍)の周波数における入力インピーダンスを低下させることができる(
図3の「スタブを設けた場合」参照)。換言すれば、1.1GHz(及びその奇数倍)の周波数を有する定在波を減衰させることができる。
【0045】
以上の説明から理解されるように、上下方向において互いに離間して設けられた電源層100及びグラウンド層200のうちの一方の層である第1層に接続されたスタブ(共振器)410,410aを多層基板10,10aに設けることにより、電源層100とグラウンド層200との間で生じるノイズを、より効果的且つより容易に低減することができる。
【0046】
詳しくは、スタブ410,410aの配線部412は、第1層に接続すればよい。更に、配線部412は、電源層100及びグラウンド層200のうちの他方の層である第2層と接触しないようにして、第2層を超えて上下方向に延ばせばよい。詳しくは、配線部412は、例えば、第2層を上下方向に貫通する貫通孔210,110を通過するようにして延ばせばよい。また、スタブ410,410aの本体部416,416aは、第2層と接触しないようにして配線部412に接続すればよい。更に、本体部416,416aは、上下方向において第1層と共に第2層を挟むように配置すればよい。
【0047】
スタブ410,410aは、以下に説明するように様々に変形することができる。
【0048】
(第3の実施の形態)
図4に示されるように、本発明の第3の実施の形態による多層基板10bは、多層基板10aと同様に構成されている。但し、多層基板10bは、スタブ410aとやや異なるスタブ410bを備えている。
【0049】
より具体的には、本実施の形態によるスタブ410bは、配線部412及び本体部416aに加えて、抵抗器(損失成分)420を備えている。本実施の形態による抵抗器420の一端は、本体部416aの一端に接続されており、抵抗器420の他端は開放されている。換言すれば、スタブ410bの本体部416aは、直流電力損失を避けつつ高周波電力を減衰させる損失成分を有している。本実施の形態による損失成分は、本体部416aに接続された抵抗器420である。抵抗器420の抵抗値は、スタブ410bの本体部416aの特性インピーダンスに対し、例えば10〜30倍程度とすればよい。本実施の形態によれば、抵抗器420の端部が開放されているため、抵抗器420に直流電流が流れない。従って、直流電力の損失は生じない。但し、本体部416aと抵抗器420との間にキャパシタを設けてもよい。例えば、表面実装型キャパシタ、埋め込みキャパシタ、又は、銅パターンによる櫛形の平面型キャパシタを形成すればよい。
【0050】
図5から理解されるように、第1の実施の形態によるスタブ410又は第2の実施の形態によるスタブ410aを設けることにより、定在波(
図5の例において、約0.7GHzの共振周波数を有する)を減衰させることができる(
図5の「スタブを設けない場合」及び「スタブを設けた場合」参照)。しかしながら、スタブ410,410aを設けた場合、共振周波数の前後の周波数において反共振が発生する場合がある(
図5の「スタブを設けた場合」参照)。本実施の形態によるスタブ410bは、抵抗器(損失成分)420を備えているため、反共振を抑制することができる(
図5の「スタブを設けない場合」及び「スタブを設けた場合」参照)。
【0051】
図6から理解されるように、例えば、多層基板10bに、2つの周波数(
図6の例では、1.1GHz及び2.2GHz)を夫々有する定在波が生じる場合、抵抗器(損失成分)420を備えるスタブ410bを2つ設けることにより、より効果的に定在波を減衰させることができる。より具体的には、一方の定在波(
図6の例では、1.1GHzの定在波)の腹の部分に第1のスタブ410bを設け、他方の定在波(
図6の例では、2.2GHzの定在波)の腹の部分に第2のスタブ410bを設ければよい。
【0052】
図6に示された例によれば、第1のスタブ410bによって1.1GHzでのピーク(TM10)を10dB程度減衰することができる。また、第2のスタブ410bによって2.2GHzでのピーク(TM20)を10dB程度減衰することができる。また、第1のスタブ410b又は第2のスタブ410bのみを設けた場合、他の周波数に影響を与えることなく、1.1GHz又は2.2GHzでのピークを10dB程度減衰することができる。換言すれば、複数の定在波の周波数に夫々対応した複数のスタブ410bを設けることで、反共振を抑制しつつ、所望の定在波(ノイズ)を減衰させることができる。
【0053】
(第4の実施の形態)
図7に示されるように、本発明の第4の実施の形態による多層基板10cは、多層基板10bと同様に構成されている。但し、多層基板10cは、スタブ410bとやや異なるスタブ410cを備えている。
【0054】
より具体的には、本実施の形態によるスタブ410cは、直流電力損失を避けつつ高周波電力を減衰させる損失成分として、抵抗器420(
図4参照)に代えて磁性体(損失成分)430を備えている。換言すれば、本実施の形態によるスタブ410cの損失成分は、本体部416aに近接配置された(例えば、塗布された)磁性体430(の透磁率の虚数部)である。このように構成されたスタブ410cによってスタブ410bと同様な効果が得られるだけでなく、抑制可能な周波数帯域をより広く出来る場合もある。
【0055】
図8に、多層基板10cの一例についての2ポート間の減衰特性を示す。
図8に例示された多層基板10cのスタブ410cの磁性体430は、上述の磁性薄膜から形成されている。詳しくは、2μmの厚さと1.5のμ″(即ち、透磁率の虚数部)とを有する磁性薄膜を本体部416aに直接成膜し、この磁性薄膜を磁性体430として使用している。
図8から理解されるように、スタブ410cは上述の磁性体430を備えているため、定在波(
図8の例において、約0.7GHzの共振周波数を有する)を、反共振を抑制しつつ減衰させることができる(
図8の「スタブを設けない場合」及び「磁性体(損失成分)を有するスタブを設けた場合」参照)。
【0056】
図7及び
図8から理解されるように、本実施の形態によれば、適切な磁性体430を適切に配置することで、反共振を抑制しつつ定在波を減衰させることができる。より具体的には、以下に説明するように、磁性体430の損失(即ち、磁性体430の透磁率の虚数部の大きさ)、磁性体430の体積(即ち、磁性体430の幅,長さ及び厚さ)、及び磁性体430と本体部416aとの間の距離を適切に設定すればよい。例えば、磁性体430の損失に磁性体430の体積をかけた結果値(損失寄与値)を大きくすることで、定在波を大きく減衰させることができる。また、上述の損失寄与値が大きすぎる場合、磁性体430と本体部416aとの間の距離を大きくすることにより、損失寄与値を調整することができる。
【0057】
磁性体430は、多層基板10cに生じる定在波の周波数において高い損失成分(透磁率の虚数部)を有することが好ましい。より具体的には、磁性体430の損失成分は、0.1以上であることが好ましい。磁性体430が高い損失成分を有する場合、定在波を減衰させるために必要な磁性体430の体積を小さくすることができる。
【0058】
また、磁性体430は、高い表面抵抗率を有することが好ましい。より具体的には、磁性体430の表面抵抗率は、10
2Ω/sq以上であることが好ましい。磁性体430の表面抵抗率が高いほど、磁性体430周辺における電気回路定数の変化等の不具合が生じにくくなる。
【0059】
磁性体430は、例えば塗布や成膜により、スタブ410cの本体部416aに接触するように配置されていてもよい。また、磁性体430は、スタブ410cの本体部416aの近傍に配置されていてもよい。磁性体430を本体部416aの近傍に配置する場合、例えば、ポリイミド等の樹脂からなる基体に磁性薄膜(磁性体430)を成膜し、粘着層を介して本体部416aに貼付してもよい。また、例えば、磁性体430を、ソルダーレジスト等の絶縁体層を介して本体部416a上に配置してもよい。
【0060】
本実施の形態による磁性体430は、様々な材料から形成することができる。例えば、磁性体430は、フェライト薄膜等の軟磁性を有する薄膜であってもよい。また、磁性体430は、金属やフェライト等の軟磁性を有する粉末を樹脂等の媒体に分散させた磁性ペーストであってもよい。更に、磁性体430は、フェライト焼結体であってもよい。但し、以下に説明するように、磁性体430は、フェライトめっき薄膜であることが好ましい。
【0061】
フェライトめっき薄膜は、組成式:MFe
2O
4(Mは金属元素)で示されるスピネルフェライト材料を、フェライトめっき法により基体上に成膜したものである。金属元素Mは、例えばNi,Zn,Co,Mn,Feである。フェライトめっき法によれば、まず、Ni
2+,Zn
2+,Co
2+,Mn
2+,Fe
2+等の金属イオンを含む水溶液が基体の表面に接触し、金属イオンが基体の表面に吸着される。次に、Fe
2+イオンが酸化剤等により酸化され、Fe
3+イオンになる。Fe
3+イオンと水溶液中の水酸化金属イオンとの間にはフェライト結晶化反応が生じ、これにより基体の表面にフェライト膜が形成される。
【0062】
フェライトめっき法は水溶液プロセスを用いた無電解めっき法であり、フェライトめっき薄膜を、樹脂フィルムやプリント配線板等の基体に直接成膜することができる。更に、フェライトめっき法によれば、熱処理することなく、比較的高い表面抵抗率と優れた磁気特性とを併せ持つ膜を得ることができる。
【0063】
上述のように形成されたフェライトめっき薄膜は、バルクのフェライトや、磁性粉末と樹脂との複合体に比べて、高周波数帯域でも高い透磁率を有する。また、組成を変えることにより、透磁率の周波数特性を容易に変えることができる。換言すれば、フェライトめっき薄膜の組成は、多層基板10cに生じる定在波の周波数に合わせて選択することができる。例えば、フェライトめっき薄膜が、Ni
aZn
bCo
cMn
dFe
eO4(0≦a≦0.4,0≦b≦0.5,0≦c≦0.4,0≦d≦0.4,2.0≦e≦2.8,a+b+c+d+e=3)の組成を有する場合、高周波数帯域における優れた透磁率特性と、高い表面抵抗率が得られる。フェライトめっき薄膜は、大きな膜厚を有するほど、高い損失成分(透磁率の虚数部)を有する。但し、反共振を抑制しつつ定在波を減衰させ、更に、フェライトめっき薄膜と本体部416aとを直接的又は間接的に強固に密着させるため(例えば、フェライトめっき薄膜を本体部416aや前述のポリイミド等の樹脂からなる基体や前述のソルダーレジスト等の絶縁体層に強固に密着させるため)には、膜厚は、0.2〜20μmの範囲であることが好ましい。
【0064】
以上に説明したように、本実施の形態による共振器は、先端が開放したオープンスタブ(即ち、λ/4共振器)から構成されている。しかしながら、共振器は、このようなオープンスタブでなくてもよい。また、本実施の形態による共振器は、上述した他に、様々に変形可能である。例えば、損失成分は、共振器の配線部に付加してもよい。但し、製造工程を考慮すると、損失成分は、多層基板の表面に形成された信号層に設けることが好ましい。また、損失成分は、スタブ自体を所定の抵抗値を有する抵抗体にすることによって設けてもよい。例えば、スタブを、銅よりも抵抗率が大きな抵抗体によって形成してもよい。また、損失成分は、誘電損失成分(誘電率の虚数部)を有する誘電体をスタブに近接配置することにより設けてもよい。