(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169439
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20170713BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20170713BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20170713BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20170713BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20170713BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20170713BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/02
H05B33/10
H05B33/12 B
H05B33/14 A
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-171627(P2013-171627)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-41481(P2015-41481A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】古家 政光
【審査官】
野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−155987(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/046545(WO,A1)
【文献】
特開2012−209215(JP,A)
【文献】
特開2009−110793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H05B 33/02
H05B 33/10
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
有機エレクトロルミネッセンス膜並びに前記有機エレクトロルミネッセンス膜を挟む陽極及び陰極を含むように前記回路基板に形成され、前記回路基板とは反対側の上面に凹凸形状を有する素子層と、
前記素子層を封止する封止膜と、
を有し、
前記封止膜は、前記素子層の前記上面を覆うように前記回路基板に設けられて前記上面の前記凹凸形状に対応して凸部を表面に有する第1無機層と、前記第1無機層の前記表面を覆う第2無機層と、前記第1無機層及び前記第2無機層の間にある有機層と、を含み、
前記第1無機層の前記表面は、前記凸部の周囲の領域から前記凸部に変わっていく反曲領域と、前記素子層を囲む位置にあって平らに形成された平坦領域と、を有し、
前記平坦領域は、前記第1無機層の外端にある外周領域と、前記外周領域の内側にあって前記反曲領域に隣接する内周領域と、を含み、
前記有機層は、前記外周領域に端部を有し、前記反曲領域に他の部分を有し、前記内周領域を避けて設けられ、
前記内周領域には、前記第2無機層の一部が、前記第1無機層の前記表面に接触するように位置し、
前記有機層は、前記凸部の上端部を避けて設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記第1無機層の前記表面は、複数の前記凸部を有し、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有し、
前記有機層は、隣同士の前記反曲領域の間にある領域を避けて設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
回路基板と、
有機エレクトロルミネッセンス膜並びに前記有機エレクトロルミネッセンス膜を挟む陽極及び陰極を含むように前記回路基板に形成され、前記回路基板とは反対側の上面に凹凸形状を有する素子層と、
前記素子層を封止する封止膜と、
を有し、
前記封止膜は、前記素子層の前記上面を覆うように前記回路基板に設けられて前記上面の前記凹凸形状に対応して複数の凸部を表面に有する第1無機層と、前記第1無機層の前記表面を覆う第2無機層と、前記第1無機層及び前記第2無機層の間にある有機層と、を含み、
前記第1無機層の前記表面は、前記凸部の周囲の領域から前記凸部に変わっていく反曲領域と、前記素子層を囲む位置にあって平らに形成された平坦領域と、を有し、
前記平坦領域は、前記第1無機層の外端にある外周領域と、前記外周領域の内側にあって前記反曲領域に隣接する内周領域と、を含み、
前記有機層は、前記外周領域に端部を有し、前記反曲領域に他の部分を有し、前記内周領域を避けて設けられ、
前記内周領域には、前記第2無機層の一部が、前記第1無機層の前記表面に接触するように位置し、
前記第1無機層の前記表面は、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有し、
前記有機層は、前記複数の凸部の上端部及び隣同士の前記反曲領域の間にある領域に載るように設けられ、
前記有機層は、前記凸部の前記上端部に載る部分及び隣同士の前記反曲領域の間にある前記領域に載る部分が、前記反曲領域にある前記部分よりも薄くなるように設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
複数の製品に切り出されるための複数の製品領域にそれぞれ素子層が形成された多面取り回路基板に、前記素子層を封止するように封止膜を形成する工程と、
前記多面取り回路基板及び前記封止膜を切断する工程と、
を含み、
前記素子層は、有機エレクトロルミネッセンス膜並びに前記有機エレクトロルミネッセンス膜を挟む陽極及び陰極を含み、前記多面取り回路基板とは反対側の上面に凹凸形状を有し、
前記封止膜を形成する工程は、
前記素子層の前記上面に、前記上面の前記凹凸形状に対応して凸部を表面に有するように、第1無機層を形成する工程と、
前記第1無機層の前記表面に有機層を蒸着によって形成する工程と、
前記第1無機層の前記表面及び前記有機層を覆うように、第2無機層を形成する工程と、
を含み、
前記第1無機層の前記表面は、前記凸部の周囲の領域から前記凸部に変わっていく反曲領域と、それぞれの前記製品領域の前記素子層を囲んで平らに形成された平坦領域と、を有し、
前記平坦領域は、それぞれの前記製品領域の前記反曲領域から間隔をあけて離れた離間領域と、前記離間領域と前記反曲領域の間で前記反曲領域に隣接する隣接領域と、を含み、
前記蒸着は、表面形状が凹状に変化する領域に蒸着材料が付着しやすい特性を有し、前記特性から、前記蒸着材料が前記反曲領域に付着しやすくなり、相対的に、前記反曲領域に隣接する前記隣接領域に付着しにくくなり、
前記有機層は、前記隣接領域を避けて、前記離間領域及び前記反曲領域に設けられ、
前記多面取り回路基板を切断する工程で、前記第1無機層、前記有機層及び前記第2無機層の前記離間領域に設けられた部分を切断することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記平坦領域の前記離間領域は、隣り合う前記製品領域の隣接する端部同士が連続する領域であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記有機層を、前記第1無機層の前記凸部の上端部を避けて形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記第1無機層を、前記表面が、複数の前記凸部を有し、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有するように形成し、
前記有機層を、隣同士の前記反曲領域の間にある領域を避けて形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項4又は5に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記有機層を、前記第1無機層の前記凸部の上端部に載るように形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記第1無機層を、前記表面が、複数の前記凸部を有し、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有するように形成し、
前記有機層を、隣同士の前記反曲領域の間にある領域に載るように形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記有機層を、前記凸部の前記上端部に載る部分及び隣同士の前記反曲領域の間にある前記領域に載る部分が、前記反曲領域にある前記部分よりも薄くなるように形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置には、発光層などの有機EL(Electro-Luminescence)膜を大気から遮断するための封止構造が必要である。例えば、樹脂からなる有機膜を無機膜でサンドイッチした多層構造の封止膜を、有機EL膜の封止に使用した構造が知られている。この構造は、封止膜が有機膜を有することで高バリア性能を得ているが、有機膜が封止膜の端部で露出していると水分及び酸素の侵入経路になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4303591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、中間層である有機膜を無機膜より小さくして、有機膜の縁部を無機膜で封止する構造が開示されているが、この構造を実現するには有機膜のサイズを限定するための付加的プロセスが必要になる。また、封止膜の端部には無機膜が積層されているので、多面取り用大型パネルを個片のパネルに切断するときに、無機膜に応力が集中してクラックが生じる可能性がある。あるいは、無機膜同士が接触しているとその界面での剥がれが生じやすい。
【0005】
本発明は、プロセスを付加することなく、無機膜にクラックが発生することを防止し、無機膜が剥がれることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、回路基板と、有機エレクトロルミネッセンス膜並びに前記有機エレクトロルミネッセンス膜を挟む陽極及び陰極を含むように前記回路基板に形成され、前記回路基板とは反対側の上面に凹凸形状を有する素子層と、前記素子層を封止する封止膜と、を有し、前記封止膜は、前記素子層の前記上面を覆うように前記回路基板に設けられて前記上面の前記凹凸形状に対応して凸部を表面に有する第1無機層と、前記第1無機層の前記表面を覆う第2無機層と、前記第1無機層及び前記第2無機層の間にある有機層と、を含み、前記第1無機層の前記表面は、前記凸部の周囲の領域から前記凸部に変わっていく反曲領域と、前記素子層を囲む位置にあって平らに形成された平坦領域と、を有し、前記平坦領域は、前記第1無機層の外端にある外周領域と、前記外周領域の内側にあって前記反曲領域に隣接する内周領域と、を含み、前記有機層は、前記外周領域に端部を有し、前記反曲領域に他の部分を有し、前記内周領域を避けて設けられ、前記内周領域には、前記第2無機層の一部が、前記第1無機層の前記表面に接触するように位置することを特徴とする。本発明によれば、封止膜は、第1無機層及び第2無機層の間に有機層を有するのでバリア性能に優れている。また、有機層が封止膜の端部にも配置されているので、端部では、第1無機層及び第2無機層の接触によるクラックや剥離の発生を防止することができる。なお、大気又は水分の遮断は、平坦領域の内周領域で第1無機層及び第2無機層が接触することでなされている。
【0007】
(2)(1)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記有機層は、前記凸部の上端部を避けて設けられていることを特徴としてもよい。
【0008】
(3)(1)又は(2)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第1無機層の前記表面は、複数の前記凸部を有し、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有し、前記有機層は、隣同士の前記反曲領域の間にある領域を避けて設けられていることを特徴としてもよい。
【0009】
(4)(1)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記有機層は、前記凸部の上端部に載るように設けられていることを特徴としてもよい。
【0010】
(5)(4)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第1無機層の前記表面は、複数の前記凸部を有し、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有し、前記有機層は、隣同士の前記反曲領域の間にある領域に載るように設けられていることを特徴としてもよい。
【0011】
(6)(5)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記有機層は、前記凸部の前記上端部に載る部分及び隣同士の前記反曲領域の間にある前記領域に載る部分が、前記反曲領域にある前記部分よりも薄くなるように設けられていることを特徴としてもよい。
【0012】
(7)本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、複数の製品に切り出されるための複数の製品領域にそれぞれ素子層が形成された多面取り回路基板に、前記素子層を封止するように封止膜を形成する工程と、前記多面取り回路基板及び前記封止膜を切断する工程と、を含み、前記素子層は、有機エレクトロルミネッセンス膜並びに前記有機エレクトロルミネッセンス膜を挟む陽極及び陰極を含み、前記多面取り回路基板とは反対側の上面に凹凸形状を有し、前記封止膜を形成する工程は、前記素子層の前記上面に、前記上面の前記凹凸形状に対応して凸部を表面に有するように、第1無機層を形成する工程と、前記第1無機層の前記表面に有機層を蒸着によって形成する工程と、前記第1無機層の前記表面及び前記有機層を覆うように、第2無機層を形成する工程と、を含み、前記第1無機層の前記表面は、前記凸部の周囲の領域から前記凸部に変わっていく反曲領域と、それぞれの前記製品領域の前記素子層を囲んで平らに形成された平坦領域と、を有し、前記平坦領域は、それぞれの前記製品領域の前記反曲領域から間隔をあけて離れた離間領域と、前記離間領域と前記反曲領域の間で前記反曲領域に隣接する隣接領域と、を含み、前記蒸着は、表面形状が凹状に変化する領域に蒸着材料が付着しやすい特性を有し、前記特性から、前記蒸着材料が前記反曲領域に付着しやすくなり、相対的に、前記反曲領域に隣接する前記隣接領域に付着しにくくなり、前記有機層は、前記隣接領域を避けて、前記離間領域及び前記反曲領域に設けられ、前記多面取り回路基板を切断する工程で、前記第1無機層、前記有機層及び前記第2無機層の前記離間領域に設けられた部分を切断することを特徴とする。本発明によれば、封止膜は、第1無機層及び第2無機層の間に有機層を有するのでバリア性能に優れている。また、多面取り回路基板の切断位置には、第1無機層及び第2無機層の間に有機層があり、切断によって第1無機層及び第2無機層に生じる応力を有機層が吸収するので、第1無機層又は第2無機層にクラックが発生することを防止することができる。
【0013】
(8)(7)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記平坦領域の前記離間領域は、隣り合う前記製品領域の隣接する端部同士が連続する領域であることを特徴としてもよい。
【0014】
(9)(7)又は(8)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記有機層を、前記第1無機層の前記凸部の上端部を避けて形成することを特徴としてもよい。
【0015】
(10)(7)から(9)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記第1無機層を、前記表面が、複数の前記凸部を有し、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有するように形成し、前記有機層を、隣同士の前記反曲領域の間にある領域を避けて形成することを特徴としてもよい。
【0016】
(11)(7)又は(8)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記有機層を、前記第1無機層の前記凸部の上端部に載るように形成することを特徴としてもよい。
【0017】
(12)(11)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記第1無機層を、前記表面が、複数の前記凸部を有し、隣同士の間隔をあけて複数の前記反曲領域を有するように形成し、前記有機層を、隣同士の前記反曲領域の間にある領域に載るように形成することを特徴としてもよい。
【0018】
(13)(12)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記有機層を、前記凸部の前記上端部に載る部分及び隣同士の前記反曲領域の間にある前記領域に載る部分が、前記反曲領域にある前記部分よりも薄くなるように形成することを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のII−II線断面図である。
【
図3】
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のIII−III線断面図である。
【
図4】
図3に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のIV−IV線断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施形態の変形例に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の斜視図である。
図2は、
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のII−II線断面図である。
図3は、
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のIII−III線断面図である。
【0021】
図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、回路基板10を有する。回路基板10には、画像を表示するための素子を駆動するための集積回路チップ12が搭載されている。回路基板10には、外部との電気的接続のために、フレキシブル配線基板14が接続されている。
図2に示すように、回路基板10は、ガラスなどからなる第1基板16及び回路層18からなる。回路層18は、配線や、図示しない薄膜トランジスタを構成するための電極及び絶縁膜などを含む。
【0022】
図2に示すように、回路基板10には素子層20が設けられている。素子層20は、有機エレクトロルミネッセンス膜22を含む。有機エレクトロルミネッセンス膜22は、少なくとも発光層を含み、さらに、電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層及び正孔注入層のうち少なくとも一層を含んでもよい。有機エレクトロルミネッセンス膜22を構成する少なくとも一層は有機材料からなる。
図2に示す有機エレクトロルミネッセンス膜22が含む発光層は、一色(例えば白色)の光のみを発するように構成されているが、複数色の光を発するように構成してもよい。
【0023】
素子層20は、陽極24及び陰極26を含む。陽極24及び陰極26は、それぞれ、回路層18に電気的に接続される。
図2の例では、回路層18の上に複数の陽極24が形成されている。複数の陽極24は、複数の画素に対応して設けられる。複数の陽極24の上に連続的に有機エレクトロルミネッセンス膜22が設けられている。それぞれの陽極24の上に有機エレクトロルミネッセンス膜22が配置されている。有機エレクトロルミネッセンス膜22の上に連続的に陰極26が設けられている。したがって、素子層20は、有機エレクトロルミネッセンス膜22を挟む陽極24及び陰極26を含む。陽極24及び陰極26に電圧をかけることにより各々から正孔と電子を有機エレクトロルミネッセンス膜22に注入し、注入された正孔と電子が発光層で結合して光を発する。
【0024】
それぞれの陽極24の端部に載るように、樹脂などからなる絶縁体28が設けられている。絶縁体28が、陽極24の端部と有機エレクトロルミネッセンス膜22の間に介在することで、陽極24と陰極26のショートを防止している。絶縁体28は、画素を区画するようにバンクの形状になって盛り上がっている。これにより、素子層20は、回路基板10とは反対側の上面(陰極26の表面)に凹凸形状を有するようになる。
【0025】
素子層20は、封止膜30によって封止されている。封止膜30は、第1無機層32を含む。第1無機層32は、素子層20の上面を覆うように回路基板10に設けられている。第1無機層32は、素子層20の上面の凹凸形状に対応して、複数の凸部34を表面に有する。第1無機層32の表面は、凸部34の周囲の領域から凸部34に変わっていく反曲領域36を有する。詳しくは、第1無機層32の表面は、隣同士の間隔をあけて複数の反曲領域36を有する。
【0026】
図3に示すように、第1無機層32の表面は、素子層20を囲む位置にあって平らに形成された平坦領域38を有する。平坦領域38は、外周領域40及び内周領域42からなる。外周領域40は、第1無機層32(平坦領域38)の外端にある。内周領域42は、外周領域40の内側にあって反曲領域36に隣接する。
【0027】
封止膜30は、有機層44を含む。有機層44は、反曲領域36にその一部を有する。有機層44は、隣同士の反曲領域36の間にある領域を避けて設けられている。有機層44は、第1無機層32の凸部34の上端部を避けて設けられている。有機層44は、平坦領域38の内周領域42を避けて設けられている。有機層44は、平坦領域38の外周領域40に端部を有する。
【0028】
封止膜30は、有機層44の上に配置された第2無機層46を含む。第2無機層46は、第1無機層32の表面を覆う。第1無機層32及び第2無機層46の間に有機層44がある。封止膜30は、第1無機層32及び第2無機層46の間に有機層44を有するのでバリア性能に優れている。平坦領域38の内周領域42には、第2無機層46の一部が、第1無機層32の表面に接触するように位置する。これにより、大気又は水分の遮断が、平坦領域38の内周領域42でなされている。
【0029】
図4は、
図3に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のIV−IV線断面図である。
図3及び
図4に示すように、有機層44が封止膜30の端部にも配置されているので、端部では、第1無機層32及び第2無機層46の接触によるクラックや剥離の発生を防止することができる。
【0030】
表示装置は、対向基板48を有する。対向基板48は、回路基板10と間隔をあけて対向するように配置されている。対向基板48は、カラーフィルタ基板であって、第2基板50と、第2基板50の回路基板10側に設けられたブラックマトリクス52及び着色層54を含む。変形例として、有機エレクトロルミネッセンス膜22が、異なる色(例えば、赤、緑及び青)を発する複数の発光層を含む場合、着色層54は不要である。
【0031】
図3に示すように、回路基板10及び対向基板48は、周端部に設けられたシール材56で固定されている。封止膜30の上には充填剤58が設けられており、封止膜30と対向基板48との間のスペースを埋めるようになっている。
【0032】
図5〜
図7は、本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための図である。本実施形態では、多面取り回路基板60を用意する。多面取り回路基板60は、複数の製品(回路基板10)に切り出されるための複数の製品領域62を有する。製品領域62には、上述した素子層20が形成されている。つまり、素子層20は、有機エレクトロルミネッセンス膜22並びに有機エレクトロルミネッセンス膜22を挟む陽極24及び陰極26を含む。有機エレクトロルミネッセンス膜22は、蒸着又はスパッタリングによって形成する。素子層20は、多面取り回路基板60とは反対側の上面に凹凸形状を有する。その詳細は、上述した通りである。
【0033】
図5に示すように、第1無機層32を素子層20の上面に形成する。第1無機層32は、素子層20の上面の凹凸形状に対応して、複数の凸部34を表面に有するように形成する。第1無機層32は、その表面が、凸部34の周囲の領域から凸部34に変わっていく反曲領域36を有する。複数の反曲領域36が隣同士の間隔をあけて形成される。
【0034】
第1無機層32は、その表面に平坦領域38を有する。平坦領域38は、それぞれの製品領域62の素子層20を囲んで平らになった領域である。後述するように、平坦領域38に多面取り回路基板60の切断線Lが位置する(
図7参照)。
【0035】
素子層20を囲む平坦領域38は、1つの製品領域62で最も外側に位置する反曲領域36に隣接する隣接領域64を含む。平坦領域38は、最も外側に位置する反曲領域36から間隔をあけて離れた離間領域66を含む。離間領域66と反曲領域36との間に隣接領域64がある。離間領域66は、隣り合う製品領域62の隣り合う隣接領域64に挟まれた位置にある。離間領域66は、隣り合う製品領域62(個々の回路基板10に切り出される領域)の隣接する端部同士が連続する領域である。
【0036】
第1無機層32は、SiNからなり、例えば、プラズマCVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVD)法によって成膜することができる。SiNの成膜は、SiH
4、NH
3、N
2からなる混合ガス中にてプラズマを発生させて行う。SiNの膜厚は、500nm程度とすることができる。成膜処理において、多面取り回路基板60の温度は極力上げないことが好適であり、例えば100℃以下で成膜を行う。
【0037】
あるいは、第1無機層32は、スパッタリング、蒸着、昇華、CVD、電子サイクロトロン共鳴−プラズマ増強化学蒸着(Electron Cyclotron Resonance Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition:ECR−PECVD)法及びこれらの組合せなどの従来方式の真空プロセスを含む任意の適切なプロセスによって成膜することができる。
【0038】
図6に示すように、第1無機層32の表面に、蒸着によって有機層44を形成する。蒸着は、表面形状が凹状に変化する領域に蒸着材料が付着しやすい特性を有する。この特性から、蒸着材料は、反曲領域36に付着しやすくなる。相対的に、蒸着材料は、反曲領域36に隣接する隣接領域64に付着しにくくなる。その結果、有機層44は、隣接領域64を避けて反曲領域36に設けられる。また、反曲領域36から離れている離間領域66にも有機層44は形成される。
【0039】
蒸着材料は、反曲領域36に隣接する隣接領域64に付着しにくくなるのと同じ原理で、隣同士の反曲領域36の間にある領域にも付着しにくくなる。その結果、有機層44は、隣同士の反曲領域36の間にある領域も避けるように形成される。さらに、有機層44は、第1無機層32の凸部34の上端部を避けて形成される。これは、蒸着が、表面形状が凸状に変化する領域に蒸着材料が付着しにくい特性による。
【0040】
図7に示すように、第1無機層32の表面及び有機層44を覆うように、第2無機層46を形成する。第2無機層46は、SiNから、第1無機層32と同様の成膜技術によって形成することができる。例えば、第2無機層46は、第1無機層32と同様に、多面取り回路基板60の温度を100℃以下としてPECVDで形成する。SiNの膜厚は500nm程度としてもよい。こうして、多面取り回路基板60に、素子層20を封止するように、第1無機層32、有機層44及び第2無機層46を含む封止膜30を形成する。封止膜30は、第1無機層32及び第2無機層46の間に有機層44を有するのでバリア性能に優れている。
【0041】
そして、多面取り回路基板60及び封止膜30を切断する。切断線Lは離間領域66に位置する。したがって、第1無機層32、有機層44及び第2無機層46の離間領域66に設けられた部分を切断する。切断位置では、第1無機層32及び第2無機層46の間に有機層44があり、切断によって第1無機層32及び第2無機層46に生じる応力を有機層44が吸収するので、第1無機層32又は第2無機層46にクラックが発生することを防止することができる。
【0042】
図8は、本発明の実施形態の変形例に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
【0043】
この例では、有機層144は、凸部34の上端部に載るように設けられている。有機層144は、隣同士の反曲領域36の間にある領域にも載るように設けられている。ただし、有機層144は、凸部34の上端部に載る部分及び隣同士の反曲領域36の間にある領域に載る部分が、反曲領域36にある部分よりも薄くなるように設けられている。その他の内容は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0044】
この形状の有機層144は、蒸着、昇華及びこれらの組合せなどの従来方式の真空プロセス、並びにノズルプリンティング法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法や凸版印刷法、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法等の塗布プロセスを含めて、任意の適切なプロセスによって、モノマーを成膜し、当該モノマーを紫外線照射によって重合させることで、樹脂として形成される。本変形例では、有機層144はアクリル樹脂から形成する。アクリルモノマーの融点は−48℃であり、モノマー成膜時の多面取り回路基板の温度は例えば0℃に設定する。これによりアクリルモノマーは付着された多面取り回路基板の表面にて流動して凹部に局在化し、凹凸を平滑化する。しかる後、アクリルモノマーは重合される。
【0045】
製造プロセスにおいて、有機層144は、第1無機層32の凸部34の上端部に載るように形成する。また、有機層144は、隣同士の反曲領域36の間にある領域に載るように形成する。そして、有機層144を、凸部34の上端部に載る部分及び隣同士の反曲領域36の間にある領域に載る部分が、反曲領域36にある部分よりも薄くなるように形成する。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 回路基板、12 集積回路チップ、14 フレキシブル配線基板、16 第1基板、18 回路層、20 素子層、22 有機エレクトロルミネッセンス膜、24 陽極、26 陰極、28 絶縁体、30 封止膜、32 第1無機層、34 凸部、36 反曲領域、38 平坦領域、40 外周領域、42 内周領域、44 有機層、46 第2無機層、48 対向基板、50 第2基板、52 ブラックマトリクス、54 着色層、56 シール材、58 充填剤、60 多面取り回路基板、62 製品領域、64 隣接領域、66 離間領域、144 有機層。