(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脂肪酸エステル(A)が、トリメチロールプロパントリオクテート、トリメチロールプロパントリデカネート及びトリメチロールプロパントリラウレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の合成繊維処理剤。
処理剤の不揮発分に占める、前記化合物(C)の重量割合が30〜75重量%、前記化合物(D)の重量割合が5〜10重量%、前記化合物(E)の重量割合が5〜15重量%である、請求項6に記載の合成繊維処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の合成繊維処理剤は、3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)及びアニオン界面活性剤(B)を必須に含有し、前記脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸が炭素数6〜18の1価脂肪酸であり、前記アニオン界面活性剤(B)が、アルキルスルホネート塩(B1)、アルキルサルフェート塩(B2)、ポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩(B3)、アルキルホスフェート塩(B4)、ポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)、ジアルキルスルホコハク酸塩(B6)及び脂肪酸金属塩(B7)からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、前記脂肪酸エステル(A)と前記アニオン界面活性剤(B)との重量比率(B/A)が0.0001〜1.0である。
【0020】
[3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)]
本発明の3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)は、後述するアニオン界面活性剤(B)と特定の比率で併用し、合成繊維処理剤に含有されることで、処理剤の耐熱性が向上し、熱処理ヒーター及び熱処理ローラーの清掃周期を延長できる成分、つまり、耐熱性向上剤である。
1価又は2価アルコール脂肪酸エステル及びアニオン界面活性剤(B)を合成繊維処理剤に用いると、分子量が小さいためにヒーター等の熱履歴による劣化で粘度が上昇し易く、ヒーター又はローラーに脱落して熱履歴を受けた処理剤が、ヒーター上に固着し、走行糸条に再付着し難くなり、ヒーター又はローラー上に残る。
5価以上のアルコール脂肪酸エステル及びアニオン界面活性剤(B)を処理剤に配合すると、分子量が大きいため脱落油剤の揮発分が減少し、油剤残量が増えることで劣化する油剤量が増え、ヒーター汚れが増大する。
つまり、3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む繊維処理剤は、熱履歴により、適切な粘度及び分子量を有するため、ヒーター上に残らない。
この、処理剤の耐熱性が向上し、ヒーター又はローラーの清掃周期を延長する性能は、3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)単独では十分な効果を発揮することができない。
【0021】
前記3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する3又は4価アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0022】
前記3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸としては、炭素数が6〜18の一価脂肪酸である。このような脂肪酸として、特に限定はないが、直鎖でも分岐でもよく、飽和でも不飽和でもよい。当該脂肪酸は、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、やし脂肪酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等があげられ、これ等を2種類以上併用してもよい。
この中でも、配合した処理剤の耐熱性と平滑性の観点から、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸が好ましい。
【0023】
前記3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)としては、特に限定はないが、例えば、トリメチロールプロパントリオクテート、トリメチロールプロパントリデカネート及びトリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸エステル、グリセリントリイソステアレート、ペンタエリスリトールオクタネート、ペンタエリスリトールデカネート、ペンタエリスリトールラウレート、トリメチロールプロパントリイソステアレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオクタネート等が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリオクテート、トリメチロールプロパントリデカネート及びトリメチロールプロパントリラウレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である場合に、耐熱性向上剤としての性能、つまり、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、粘度が適度に上昇し、熱処理ヒーターの清掃周期をさらに延長させることができるので好ましい。
【0024】
[アニオン界面活性剤(B)]
本発明のアニオン界面活性剤(B)は、前記脂肪酸エステル(A)と特定の比率で併用し、合成繊維処理剤に含有されることで、処理剤の耐熱性が向上し、ヒーターの清掃周期を延長できる成分、つまり、耐熱性向上剤として用いられる。
前記アニオン界面活性剤(B)を前記脂肪酸エステル(A)と併用することで、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、アニオン界面活性剤(B)がヒーター、又は、ローラー上で被膜を形成し、前記脂肪酸エステル(A)が受ける熱履歴を緩和する作用を発揮し、タール化を遅延させることで、粘度が上昇することを抑制し、脱落した油剤が糸へ再付着し易くし、ヒーター、又は、ローラー上での脱落油剤量を低減させることが、前記脂肪酸エステル(A)とアニオン界面活性剤(B)を併用した場合に、ヒーターの清掃周期を延長できる要因と推定している。
【0025】
本発明のアニオン界面活性剤(B)は、アルキルスルホネート塩(B1)、アルキルサルフェート塩(B2)、ポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩(B3)、アルキルホスフェート塩(B4)、ポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)、アルキルスルホコハク酸塩(B6)及び脂肪酸金属塩(B7)からなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【0026】
本発明のアルキルスルホネート塩(B1)は、耐熱性向上剤としての観点から、アルキル基が1〜30であることが好ましく、4〜22がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。当該アルキル基は、直鎖若しくは分岐又は飽和若しくは不飽和又は脂肪族若しくは芳香族のいずれであってもよく、分布があってもよい。
本発明のアルキルスルホネート塩(B1)のアルキルスルホネートとしては、特に限定はないが、例えば、ブチルスルホネート、ヘキシルスルホネート、オクチルスルホネート、デシルスルホネート、ラウリルスルホネート、セチルスルホネート、ステアリルスルホネート、オレイルスルホネート、p−トルエンスルホネート、ドデシルフェニルスルホネート、オレイルフェニルスルホネート、ナフチルスルホネート、ジイソプロピルナフチルスルホネート等が挙げられ、耐熱性向上剤としての観点から、オクチルスルホネート、デシルスルホネート、ラウリルスルホネート、セチルスルホネート、ステアリルスルホネート、オレイルスルホネートが好ましく、ラウリルスルホネート、セチルスルホネート、ステアリルスルホネート、オレイルスルホネートがさらに好ましい。
本発明のアルキルスルホネート塩(B1)の塩としては、特に限定はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0027】
本発明のアルキルサルフェート塩(B2)は、耐熱性向上剤としての観点から、アルキル基が1〜30であることが好ましく、4〜22がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。当該アルキル基は、直鎖若しくは分岐又は飽和若しくは不飽和又は脂肪族若しくは芳香族のいずれであってもよく、分布があってもよい。
本発明のアルキルサルフェート塩(B2)のアルキルサルフェートとしては、特に限定はないが、例えば、メチルサルフェート、エチルサルフェート、ブチルサルフェート、ヘキシルサルフェート、オクチルサルフェート、デシルサルフェート、ラウリルサルフェート、セチルサルフェート、ステアリルサルフェート、オレイルサルフェート等が挙げられ、耐熱性向上剤としての観点から、ラウリルサルフェート、セチルサルフェート、ステアリルサルフェート、オレイルサルフェートが好ましく、ラウリルサルフェート、セチルサルフェート、ステアリルサルフェート、オレイルサルフェートがさらに好ましい。
本発明のアルキルサルフェート塩(B2)の塩としては、特に限定はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0028】
本発明のポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩(B3)は、耐熱性向上剤としての観点から、アルキル基が1〜30であることが好ましく、4〜22がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。当該アルキル基は、直鎖若しくは分岐又は飽和若しくは不飽和又は脂肪族若しくは芳香族のいずれであってもよく、分布があってもよい。
本発明のポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩のポリオキシアルキレンは、ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンである。ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンである場合には、ランダム型に付加重合させた化合物であってもよく、ブロック型に付加重合させた化合物であってもよい。生産性の点から、ランダム型に付加重合させた化合物が好ましい。
耐熱性向上剤としての観点から、当該ポリオキシアルキレンの付加モル数は1〜40であり、2〜30が好ましく、3〜25がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。当該ポリオキシアルキレンの付加モル数が40を超えると、繊維処理剤の耐熱性が低下する可能性がある。
本発明のポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩(B3)の塩としては、特に限定はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0029】
本発明のアルキルホスフェート塩(B4)は、耐熱性向上剤としての観点から、アルキル基が1〜30であることが好ましく、4〜22がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。当該アルキル基は、直鎖若しくは分岐又は飽和若しくは不飽和又は脂肪族若しくは芳香族のいずれであってもよく、分布があってもよい。
本発明のアルキルホスフェート塩(B4)のアルキルホスフェートとしては、特に限定はないが、例えば、メチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ブチルホスフェート、ヘキシルホスフェート、オクチルホスフェート、デシルホスフェート、ラウリルホスフェート、セチルホスフェート、ステアリルホスフェート、オレイルホスフェート、ジオクチルホスフェート、メチルオレイルホスフェート、ノニルフェニルオキシエトキシエチルメチルホスフェート等が挙げられる。
本発明のアルキルホスフェート塩(B4)の塩としては、特に限定はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0030】
本発明のポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)は、耐熱性向上剤としての観点から、アルキル基が1〜30であることが好ましく、4〜22がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。当該アルキル基は、直鎖若しくは分岐又は飽和若しくは不飽和又は脂肪族若しくは芳香族のいずれであってもよく、分布があってもよい。
本発明のポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)のポリオキシアルキレンは、ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンである。ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンである場合には、ランダム型に付加重合させた化合物であってもよく、ブロック型に付加重合させた化合物であってもよい。生産性の点から、ランダム型に付加重合させた化合物が好ましい。
耐熱性向上剤としての観点から、当該ポリオキシアルキレンの付加モル数は1〜40であり、2〜30が好ましく、3〜25がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。当該ポリオキシアルキレンの付加モル数が40を超えると、繊維処理剤の耐熱性が低下する可能性がある。
本発明のポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)の塩としては、特に限定はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0031】
本発明のアルキルスルホコハク酸塩(B6)は、耐熱性向上剤としての観点から、アルキル基が1〜30であることが好ましく、4〜22がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。当該アルキル基は、直鎖若しくは分岐又は飽和若しくは不飽和又は脂肪族若しくは芳香族のいずれであってもよく、分布があってもよい。2個のアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
本発明のアルキルスルホコハク酸塩(B6)としては、特に限定はないが、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジドデセニルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジミリスチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジステアリルスルホコハク酸ナトリウム塩等を挙げることができる。
本発明のアルキルスルホコハク酸塩(B6)の塩としては、特に限定はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0032】
本発明の脂肪酸金属塩(B7)は、耐熱性向上剤としての観点から、アルキル基が1〜30であることが好ましく、4〜22がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。当該アルキル基は、直鎖若しくは分岐又は飽和若しくは不飽和又は脂肪族若しくは芳香族のいずれであってもよく、分布があってもよい。
本発明の脂肪酸金属塩(B7)としては、特に限定はないが、例えば、酢酸、カプロン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、ペンタデセニルコハク酸等のカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0033】
本発明のアニオン界面活性剤(B)である、アルキルスルホネート塩(B1)、アルキルサルフェート塩(B2)、ポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩(B3)、アルキルホスフェート塩(B4)、ポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)、ジアルキルスルホコハク酸塩(B6)及び脂肪酸金属塩(B7)のうちでは、ローラー上で被膜を形成し、(A)が受ける熱履歴を緩和する作用を発揮し、タール化を遅延させる観点から、ポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩(B3)アルキルホスフェート塩(B4)、ポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)が好ましい。
【0034】
[アルキルポリエーテル化合物(C)]
本発明の処理剤に用いられるアルキルポリエーテル化合物(C)は、前記アルコール脂肪酸エステル(A)及び前記アニオン界面活性剤(B)からなる耐熱性向上剤を含んだ合成繊維処理剤に含まれると、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、粘度が上昇しやすいことで糸への再付着が容易になることから熱処理ヒーターの清掃周期をさらに延長させることができる成分である。
本発明の処理剤に用いられるアルキルポリエーテル化合物(C)は、一価アルコールにエチレンオキサイド(EO)を必須に含むアルキレンオキサイド(AO)を付加重合させた化合物であって、アルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合が70重量%以上であり、重量平均分子量が1000〜20000である。
なお、重量平均分子量は、東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、RI検出器で測定した最大ピーク値のことをいう。
【0035】
一価アルコールとしては、脂肪族の一価アルコール、脂環族の一価アルコール等が挙げられる。コストや反応性、また繊維用処理剤としての性能の点から、脂肪族の一価アルコールが好ましい。一価アルコールは、1級アルコール又は2級アルコールが好ましく、1級アルコールがさらに好ましい。また、一価アルコールからヒドロキシル基を除いた残基である炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。一価アルコールの炭素数は、繊維用処理剤としての性能の点から、4〜18が好ましく、6〜17がより好ましく、8〜16がさらに好ましい。
【0036】
一価アルコールとしては、例えば、ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール等の飽和脂肪族アルコール;ブテニルアルコール、ペンテニルアルコール、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコール等の不飽和脂肪族アルコール;メチルシクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール、アダマンチルアルコール等の環状脂肪族アルコール;等が挙げられる。
これらの中でも、ブタノール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、オレイルアルコールが好ましく、ブタノール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールがさらに好ましい。
【0037】
アルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合は、70重量%以上であり、70〜95重量%がより好ましく、80〜90重量%がさらに好ましく、80〜85重量%が特に好ましい。アルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合が70重量%未満の場合、合成繊維の仮撚り加工糸の生産において、仮撚り加工の工程で発生する毛羽・断糸・白粉・染色斑の加工欠点を低減させることができない。
【0038】
アルキレンオキサイド(AO)としては、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)等が挙げられる。エチレンオキサイド(EO)以外のアルキレンオキサイド(AO)を含む場合、ランダム型に付加重合させた化合物であってもよく、ブロック型に付加重合させた化合物であってもよい。生産性の点から、ランダム型に付加重合させた化合物が好ましい。
【0039】
アルキルポリエーテル化合物(C)の重量平均分子量は、1000〜20000であり、1500〜10000が好ましく、1500〜7000がより好ましく、1500〜3000がさらに好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合、仮撚り加工工程で熱処理された際、低分子量のため発煙が発生しヒーター汚れの原因となる。重量平均分子量が20000超の場合、高分子量に起因する粘度の増大により、処理剤を合成繊維に付着した際、動摩擦係数が大きくなり、毛羽・断糸の原因となる。また、粘度の増大により取り扱い性も困難となる。
【0040】
これらアルキルポリエーテル化合物(C)の中でも、発煙、粘度、動摩擦係数の点から、一価アルコールに、エチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とを付加重合させた化合物であって、PO/EOの付加割合(重量比)が0/100〜30/70であり、重量平均分子量が1000〜20000である化合物が好ましい。
PO/EOの付加割合(重量比)は、0/100〜20/80がより好ましく、10/90〜20/80がさらに好ましい。PO/EOの付加割合(重量比)が30/70超の場合、前述のアルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合が70重量%未満の場合と同様である。
【0041】
アルキルポリエーテル化合物(C)を製造する方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。例えば、以下が挙げられる。
撹拌、温度調節が可能で、アルキレンオキサイドチャージタンク、窒素供給管、圧力調整バルブの付いたオートクレーブ内に、出発原料アルコールとして前述の一価アルコールをアルカリ触媒(例えば、苛性カリや苛性ソーダ)と共に投入し、混合系内を窒素置換した後、80〜130℃にて1〜3時間脱水操作を行う。次いで、所望の比率となるよう、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイド(AO)をゲージ圧力0.1〜0.4MPa、反応温度80〜180℃で投入して(EO、POを同時に投入するとランダム型、交互に投入するとブロック型)、付加重合反応を行う。その後得られたアルキルポリエーテル化合物を回収する。このようにしてアルキルポリエーテル化合物(C)を合成することができる。なお、アルキルポリエーテル化合物の重量平均分子量を大きくするために、上記の出発原料アルコールの代わりに回収したアルキルポリエーテル化合物を使用して、上記と同様な工程を2〜5回繰り返し行ってもよい。
【0042】
[ポリエーテル化合物(D)]
ポリエーテル化合物(D)は、前記アルコール脂肪酸エステル(A)及び前記アニオン界面活性剤(B)からなる耐熱性向上剤を含んだ合成繊維処理剤に含まれると、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、ポリエーテル化合物(D)がより小さい分子量の成分に分解されるので、ヒーターに脱落した処理剤がタール化する前に、適度な粘度となることで脱落した処理剤が糸への再付着が容易になることから、熱処理ヒーターの清掃周期をさらに延長させることができる成分である。
本発明の処理剤に用いられるポリエーテル化合物(D)は、ニ価アルコールにエチレンオキサイド(EO)を必須に含むアルキレンオキサイド(AO)を付加重合させたポリアルキレングリコールであって、アルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合が70重量%以上であり、重量平均分子量が8000〜20000である。ポリエーテル化合物(D)は、二価アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させたポリアルキレングリコールであり、その両末端はヒドロキシル基(OH)である。
【0043】
二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングルコール、ブチレングリコール、ノナンジオール等の炭素数2〜9のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングルコール、トリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテル化合物(D)を生産するための反応の容易さやコストの点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
【0044】
アルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合は、70重量%以上であり、70〜90重量%がより好ましく、70〜85重量%がさらに好ましく、80〜85重量%が特に好ましい。アルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合が70重量%未満の場合、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、分解されにくく、粘度上昇が抑えられることで熱処理ヒーターの清掃周期が延長されない可能性がある。
【0045】
アルキレンオキサイド(AO)としては、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)等が挙げられる。エチレンオキサイド(EO)以外のアルキレンオキサイド(AO)を含む場合、ランダム型に付加重合させたポリアルキレングリコール共重合体であってもよく、ブロック型に付加重合させたポリアルキレングリコール共重合体であってもよい。生産性の点から、ランダム型に付加重合させたポリアルキレングリコール共重合体が好ましい。
【0046】
ポリエーテル化合物(D)の重量平均分子量は、8000〜20000であり、8000〜18000が好ましく、8000〜14000がより好ましく、10000〜14000がさらに好ましく、10000〜120000が特に好ましい。重量平均分子量が8000未満の場合、仮撚り加工工程で熱処理された際、低分子量のため発煙が発生しヒーター汚れの原因となり、また油膜強度も不十分である。重量平均分子量が20000超の場合、高分子量に起因する粘度の増大により、処理剤を合成繊維に付着した際、動摩擦係数が大きくなり、毛羽・断糸の原因となる。また、粘度の増大により取り扱い性も困難となる。
【0047】
これらポリエーテル化合物(D)の中でも、発煙、粘度、動摩擦係数の点から、二価アルコールにプロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とを付加重合させたポリアルキレングリコールであって、PO/EOの付加割合(重量比)が10/90〜30/70であり、重量平均分子量が8000〜20000である化合物が好ましい。
PO/EOの付加割合(重量比)は、15/85〜30/70がより好ましく、15/85〜20/80がさらに好ましい。PO/EOの付加割合(重量比)が10/90未満の場合、製品(処理剤)の保管条件によっては、成分が分離する可能性が高くなる。またポリエーテルの融点が高く、性状が固体となるため取り扱い性も悪くなるおそれがある。PO/EOの付加割合(重量比)が30/70超の場合は、前述のアルキレンオキサイド(AO)全体に占めるエチレンオキサイド(EO)の付加割合が70重量%未満の場合と同様である。
【0048】
ポリエーテル化合物(D)の製造方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。例えば、以下が挙げられる。
撹拌、温度調節が可能で、アルキレンオキサイドチャージタンク、窒素供給管、圧力調整バルブの付いたオートクレーブ内に、出発原料アルコールとして前述の二価アルコールをアルカリ触媒(例えば、苛性カリや苛性ソーダ)と共に投入し、混合系内を窒素置換した後、80〜130℃にて1〜3時間脱水操作を行う。次いで、所望の比率となるよう、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイド(AO)をゲージ圧力0.1〜0.4MPa、反応温度80〜180℃で投入して(EO、POを同時に投入するとランダム型、交互に投入するとブロック型)、付加重合反応を行う。その後得られたポリエーテル化合物を回収する。このようにしてポリエーテル化合物(A)を合成することができる。なお、ポリエーテル化合物の重量平均分子量を大きくするために、上記の出発原料アルコールの代わりに回収したポリエーテル化合物を使用して、上記と同様な工程を2〜5回繰り返し行ってもよい。
【0049】
[エーテルエステル化合物(E)]
本発明の処理剤に用いるエーテルエステル化合物(E)は、下記一般式(1)で表される。エーテルエステル化合物(E)は、前記アルコール脂肪酸エステル(A)及び前記アニオン界面活性剤(B)からなる耐熱性向上剤を含む合成繊維処理剤に含まれると、ヒーター、又は、ローラー上に脱落した処理剤がタール化する際に、分解されることで当該タール化物の粘度上昇が抑制されるので、熱処理ヒーター及び熱処理ローラーの清掃周期をさらに延長させることができる成分である。
R
1COO−(AO)
m−R
2 (1)
(式(1)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜24のアルキル基を示す。AOは、炭素数2及び/又は3のオキシアルキレン基を示す。mは1〜20の数を示す。)
【0050】
エーテルエステル化合物(E)は、前記一般式(1)に示す通り、R
2OHで示される一価のアルコールにAOで示されるオキシアルキレン基をmモル付加した(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルとR
1COOHで示される一価のカルボン酸とをエステル反応させて得られた構造を有するエーテルエステルである。
【0051】
R
1で示されるアルキル基又はアルケニル基の炭素数は1〜24であり、好ましくは8〜18であり、更に好ましくは10〜16であり、この順でヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に適度な粘度が保たれる。R
1COOHで示されるカルボン酸としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等が挙げられ、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましい。
【0052】
R
2OHで示される一価のアルコールは、脂肪族アルコールの場合には、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖であっても分岐であってもよい。R
2で示されるアルキル基、アルケニル基の炭素数は1〜24であり、好ましくは8〜18であり、更に好ましくは10〜16である。この順で、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、分解されることで当該タール化物の粘度上昇が抑制されるので、熱処理ヒーター、及び熱処理ローラーの清掃周期をさらに延長させることができる。R
2OHで示されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられ、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールが好ましい。
【0053】
R
2OHで示される一価のアルコールに付加した(AO)
mで示されるオキシアルキレン基について、付加されるエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドの付加の順序はいずれであってもよく、また付加形態もブロック付加、ランダム付加及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでも良く、特に制限はない。
【0054】
前記(AO)
mは、炭素数が2〜4であり、オキシプロピレン基を含有することが、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、分解されることで当該タール化物の粘度上昇が抑制されるので、熱処理ヒーター、及び熱処理ローラーの清掃周期をさらに延長させることができるため、好ましい。また、前記(AO)
mに占めるオキシプロピレン基の割合が20〜80モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましい。この順で、ヒーター上に脱落した処理剤がタール化する際に、分解されることで当該タール化物の粘度上昇が抑制されるので、熱処理ヒーター、及び熱処理ローラーの清掃周期をさらに延長させることができる。mはAOの平均付加モル数を表す。mは1〜20であり、ヒーター、又は、ローラー上に脱落した処理剤がタール化する際に適度な粘度が保たれるために、3〜18がより好ましく、5〜16がさらに好ましい。mが20を越えると、ヒーター、又は、ローラー上に脱落した処理剤がタール化した際に粘度上昇が著しく、熱処理ヒーター及び熱処理ローラーの清掃周期の延長ができない可能性がある。
【0055】
[合成繊維処理剤]
本発明の合成繊維処理剤は、3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)、アニオン界面活性剤(B)を必須に含有し、前記脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸が炭素数6〜18の1価脂肪酸であり、前記アニオン界面活性剤が、アルキルスルホネート塩(B1)、アルキルサルフェート塩(B2)、ポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩(B3)、アルキルホスフェート塩(B4)、ポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩(B5)、ジアルキルスルホコハク酸塩(B6)及び脂肪酸金属塩(B7)からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、前記脂肪酸エステル(A)と前記アニオン界面活性剤(B)との重量比率(B/A)が0.0001〜1.0である。
前記エステル(A)と前記アニオン界面活性剤(B)との重量比率(B/A)が0.0001〜1.0である場合に、アニオン界面活性剤(B)がヒーター又はローラー上で被膜を形成し、前記脂肪酸エステル(A)が受ける熱履歴を緩和する作用を発揮し、タール化を遅延させることで、粘度が上昇することを抑制し、脱落した油剤が糸へ再付着し易くし、ヒーター、又は、ローラー上での脱落油剤量を低減させることができる。前記重量比率(B/A)は、0.001〜0.99が好ましく、0.01〜0.95がより好ましく、0.05〜0.90がさらに好ましく、0.1〜0.85が最も好ましい。この順に、ヒーター又はローラー上で被膜を形成し、前記脂肪酸エステル(A)が受ける熱履歴を緩和する作用を発揮し、タール化を遅延させる能力が向上し、熱処理ヒーター及び熱処理ローラーの清掃周期がさらに延長ができる。
処理剤の不揮発分に占める、前記脂肪酸エステル(A)の重量割合が3〜16重量%であることが好ましく、4〜15重量%がより好ましく、5〜14重量%がさらに好ましく、6〜13重量%が最も好ましい。この順に、ヒーター、又は、ローラー上の処理剤が適切な粘度を有するため、処理剤が糸条に再付着し、ヒーター、又は、ローラー上に処理剤が残らないために熱処理ヒーター、及び熱処理ローラーの清掃周期を延長する効果が大きい。
【0056】
本発明の合成繊維処理剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物を含有すると、前記脂肪酸エステル(A)及び前記アニオン界面活性剤(B)が、熱処理履歴を緩和する作用を発揮し易いという観点から、さらに前記化合物(C)、前記化合物(D)及び前記化合物(E)からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有すると好ましい。
【0057】
本発明の合成繊維処理剤は、前記脂肪酸エステル(A)と前記化合物(C)との重量比率(C/A)が3〜30であると好ましく、4〜28がより好ましく、5〜26がさらに好ましく、6〜25が最も好ましい。この順に、ヒーター又はローラー上の処理剤が適切な粘度を有するため、処理剤が糸条に再付着し、ヒーター又はローラー上に処理剤が残らないために熱処理ヒーター及び熱処理ローラーの清掃周期を延長する効果が大きい。
【0058】
本発明の合成繊維処理剤は、処理剤の不揮発分に占める、前記化合物(C)の重量割合が30〜70重量%、前記化合物(D)の重量割合が5〜10重量%、前記化合物(E)の重量割合が5〜15重量%である場合に、ヒーター、又は、ローラー上に脱落した処理剤の粘度が適度になり、処理剤が糸条に再付着し、ヒーター、又は、ローラー上に処理剤が残らないために熱処理ヒーター、及び熱処理ローラーの清掃周期を延長する効果が大きいため、特に好ましい。
【0059】
[合成繊維の摩擦仮撚り用処理剤]
本発明の合成繊維処理剤は、下記に述べる観点から、合成繊維の摩擦仮撚り用処理剤である場合に適している。
一般に仮撚り加工糸(Draw Texturing Yarn;以下DTYと略す)は、摩擦仮撚り用処理剤を付与して部分配向糸(Partially Oriented Yarn;以下POYと略す)を生産した後、次に加熱装置(ヒーター)により糸条を加熱し、仮撚り装置にて糸条に撚りを与えながら延伸することで得られる。
この時、摩擦仮撚り用処理剤の付与量が多いほど、仮撚り加工の工程で発生する毛羽・断糸・白粉・染色斑の問題を抑えられるが、加熱装置(ヒーター)上への摩擦仮撚り用処理剤の脱落量が増大する。そのため、摩擦仮撚り用処理剤によってヒーターが汚れてしまい、ヒーター清掃のために多大な時間と労力を要し、生産性の低下につながってしまう。
よって、合成繊維処理剤の付与量が通常、(原料)合成繊維に対して、1.0重量%であるのに対して、摩擦仮撚り用処理剤の付与量は、0.25〜0.80重量%と低く設計されている。以上の事から、摩擦仮撚り用処理剤は、熱処理ヒーターの清掃周期の延長が重要であることが分かる。
【0060】
また、本発明の合成繊維処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤、浸透剤等を必要に応じて含有してもよい。処理剤の不揮発分に占めるこれら乳化剤、浸透剤等の合計の重量割合は、繊維の集束性向上や油膜強化といった特性をより発現させる点から、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、20重量%以下が最も好ましい。
【0061】
処理剤をエマルション化するために、繊維への付着性を補助するために、又は処理剤を付着させた繊維から処理剤を水洗し得るようにするために、乳化剤、浸透剤を使用してもよい。乳化剤、浸透剤としては、特に限定はなく、公知のものを採用できる。例えば、重量平均分子量が300以上1000未満である、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等を挙げることができる。さらに、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールジオレート、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル等の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの乳化剤、浸透剤は必要に応じて単独又は2種類以上のものを適宣併用する事ができる。処理剤の不揮発分に占める乳化剤、浸透剤の重量割合は、特に限定はないが、0.1〜40重量%が好ましく、0.1〜30重量%がさらに好ましい。なおこれらの乳化剤、浸透剤は、繊維糸条に制電性を付与したり、潤滑性や集束性を与えたりするために用いても構わない。
【0062】
以上述べた潤滑剤、乳化剤、浸透剤、制電剤等の成分以外にも、必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、シリコーン等の成分を用いても構わない。
【0063】
本発明の合成繊維処理剤は、さらに外観調整剤を含有することが好ましい。外観調整剤としては、特に限定はなく、公知のものを採用できる。外観調製剤としては、水や低級アルコールが挙げられる。例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、ブチルジグリコール等を挙げることができる。これらの中でも、水、エチレングリコール、グリセリンが好ましい。外観調製剤は必要に応じて単独又は2種類以上のものを適宣併用することができる。
【0064】
本発明の合成繊維処理剤は、不揮発分のみからなる前述の成分で構成されていてもよく、不揮発分と外観調整剤とから構成されてもよく、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈したものでもよく、水中に不揮発分を乳化した水系エマルションであってもよい。水中に不揮発分を乳化した水系エマルションの場合、不揮発分の濃度は5〜20重量%が好ましく、6〜15重量%がより好ましく、8〜12重量%がさらに好ましい。
本発明の合成繊維処理剤の製造方法については、特に限定なく、公知の方法を採用することができる。処理剤は、通常、構成する前記の各成分を任意の順番で混合することによって製造される。
【0065】
[合成繊維フィラメント糸条]
本発明の合成繊維フィラメント糸条は、本発明の合成繊維処理剤を(原料)合成繊維フィラメント糸状に付着させたものであり、合成繊維の生産において、ヒーターの清掃周期も延長させることができる。合成繊維処理剤の不揮発分の付着量は、(原料)合成繊維フィラメントに対して、0.1〜1.0重量%が好ましく、0.2〜0.8重量%がより好ましく、0.3〜0.6重量%がさらに好ましい。
(原料)合成繊維フィラメントに本発明の合成繊維処理剤を付与する方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することできる。通常、合成繊維フィラメントの紡糸工程又は延伸工程で付与され、(原料)合成繊維フィラメントに対して、不揮発分のみからなる処理剤、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤、又は水中に不揮発分を乳化した水系エマルション処理剤をローラーオイリング、ガイドオイリング等で給油する方法等が挙げられる。
【0066】
本発明の合成繊維処理剤は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維の仮撚り加工用途に特に適している。ポリエステル繊維としては、エチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PET)、トリメチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PTT)、ブチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PBT)、乳酸を主たる構成単位とするポリエステル(PLA)等が挙げられ、ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられ、ポリプロピレン繊維としては、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0067】
[仮撚り加工糸の製造方法]
本発明の仮撚り加工糸の製造方法は、前述の本発明の合成繊維処理剤を付着させた合成繊維フィラメント糸条を加熱して、延伸し、仮撚り加工する工程を含むものであり、仮撚り加工の工程で発生するヒーターの清掃周期も延長させることができる。仮撚り加工の方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。例えば、WO2009/034692号公報に記載された方法等が挙げられる。
仮撚り加工条件としては、特に制限しないが、本発明が、ヒーターに脱落した処理剤の粘度の適正化により、処理剤の糸への再付着によって清掃周期を延長することができるという点から、熱源の熱板に直接合成繊維フィラメント糸条を接触させて加熱する接触タイプ(熱板接触加熱方式)の仮撚り加工機を用いて仮撚り加工を行うことが好ましい。かかる熱板接触加熱方式の仮撚り加工機とは、ヒーター温度が160℃〜230℃、ヒーター長は150cm〜250cmであり、合成繊維フィラメント糸状が、ヒータープレートの表面と接触して走行するもののことである。加工速度は、通常500〜1000m/min、好ましくは600〜800m/minである。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、文中および表中に示されるパーセント(%)は特に限定しない限り、「重量%」を示す。実施例および比較例において、各評価は以下に示す方法に基づいて行った。
【0069】
(実施例1〜20、比較例1〜10)
下記(A)−1〜(E)−4の各成分を用い、表1〜3に記載の比率で混合を行い、撹拌して、各実施例・比較例の合成繊維処理剤の不揮発分を調製した。なお、下記において、POEはポリオキシエチレンを表し、PO/EOはポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンを表す。
(A)−1 ソルビタントリステアレート
(A)−2 ペンタエリスリトールトリオレート
(A)−3 トリメチロールプロパントリデカネート
(A)−4 トリメチロールプロパントリオクタネート
(A)−5 トリメチロールプロパントリラウレート
(A)−6 トリメチロールプロパントリオレエート
(A)−7 グリセリントリオクタネート
(A)−8 グリセリントリラウレート
(A)−9 グリセリントリオレエート
(B1)−1 アルカン(C
12〜15)スルホネートNa塩
(B1)−2 ステアリルスルホネートK塩
(B2)−1 ラウリルサルフェートNa塩
(B2)−2 ステアリルサルフェートK塩
(B3)−1 POE(3)ラウリルサルフェートNa塩
(B3)−2 POE(5)セチルサルフェートK塩
(B4)−1 C
12〜13セカンダリーアルコールホスフェートNa塩
(B4)−2 ラウリルホスフェート
(B5)−1 POE(3)ラウリルホスフェートNa塩
(B6)−1 ドデセニルコハク酸K塩
(B7)−1 やし脂肪酸K塩
(C)−1 PO/EO=20/80(ランダム) ラウリルエーテル(重量平均分子量 800)
(C)−2 PO/EO=50/50(ランダム) ラウリルエーテル (重量平均分子量1500)
(C)−3 PO/EO=50/50(ランダム) C
14〜15アルキルエーテル(重量平均分子量800)
(C)−4 PO/EO=50/50(ランダム) C
14〜15アルキルエーテル(重量平均分子量1500)
(D)−1 PO/EO=50/50 ランダムポリエーテル (Mw;5500)
(D)−2 PO/EO=50/50 ランダムポリエーテル (Mw;4500)
(D)−3 PO/EO=25/75 ランダムポリエーテル (Mw;2000)
(D)−4 PO/EO=50/50 ブロックポリエーテル (Mw;4000)
(E)−1 PO/EOオクチルエーテルラウレート
(E)−2 PO/EO=35/65 ラウリルエーテルオクタネート (重量平均分子量 600)
(E)−3 PO/EO=50/50 オクチルエーテルオクタネート(重量平均分子量 600)
(E)−4 PO/EO=35/65 ラウリルエーテルラウレート (重量平均分子量 800)
(F)−1 イソオクチルステアレート
(F)−2 ジオレイルアジペート
(F)−3 トリメチロールプロパントリエイコサネート
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
<揮発残分の性状>
まず、調製した合成繊維処理剤0.5gを、ステンレス皿(直径5cm)に均一に塗り、210℃にて3時間熱処理を行った後、性状を確認し、下記の5段階に分類した。
下記の5(透明液状)、4(褐色液状)及び3(粘性液状)を合格とした。
5:透明液状
4:褐色液状
3:褐色粘性液状(傾けると流れる)
2:固体(一部が液状)(傾けても流れない)
1:固体
【0074】
次に、調製した合成繊維処理剤に水を加え、不揮発分の重量割合が10重量%となる水系エマルジョンを調製した。次いで、エクストルーダーで口金から吐出、冷却固化された、酸化チタン含有量0.4%のポリエチレンテレフタレートフルダル糸条に対して、メタリングポンプ装置を用いたガイドオイリング方式にて、処理剤の不揮発分の付着量が0.3重量%となるよう水系エマルジョンを付与し、133デシテックス/36フィラメントの部分配向糸(Partially Oriented Yarn;以下POYと略す)を紡糸し、3300m/minの速度で巻き取ることで、13kg捲きチーズを得た。次に、得られたPOYを用いて、熱板接触加熱方式である仮撚り加工機にて、下記の仮撚り加工条件で、延伸仮撚り加工を10日間連続運転して行い、仮撚り加工糸(Draw Texturing Yarn;以下DTYと略す)を得た。仮撚り加工断糸、接触ヒーター汚染、白粉発生量、編地染色班の評価については、下記の方法にて行った。その結果を表1に示す。
【0075】
<仮撚り加工条件>
熱板接触加熱方式である仮撚り加工機の延伸仮撚り条件
仮撚り加工機:帝人製機(株)製 HTS−15V
加工速度:800m/min
延伸比(DR):1.60
撚り掛け装置:3軸ディスク摩擦方式 1−5−1
(ガイドディスク1枚−ワーキング(ポリウレタン)ディスク5枚−ガイドディスク1枚)
ディスク速度/糸速度(D/Y):1.8
オーバーフィード率:3%
第一ヒーター(加撚側)温度:200℃
第二ヒーター(解撚側)温度:室温
加工日数:10日間
【0076】
<接触ヒーター汚染>
熱処理ヒーターの清掃周期が延長可能かどうかの判断を、延伸仮撚り加工を10日間行った後、ヒーターの汚染状況を目視により、以下のように評価した。
下記の◎◎、◎及び○を合格と判断した。
◎◎:ヒーターが全く汚れていない。
◎:ヒーターが1/8未満しか汚れていない。
○:ヒーターが1/8以上〜1/4未満しか汚れていない。
△:ヒーターが1/4以上汚れているが、一部汚れていない部分がある。
×:ヒーターが全部汚れている。
【0077】
<白粉発生量>
延伸仮撚り加工を行った後、仮撚りディスクと、その周辺の白粉発生量を目視により、以下のように評価した。下記の◎及び○を合格と判断した。
◎:10日間加工後に白粉なし。
○:10日間加工後に一部白粉あり。
△:5日間加工後白粉が発生、堆積。
×:加工開始から白粉が発生、堆積。
【0078】
<編地染色班>
延伸仮撚り加工を行った後、得られた加工糸を(株)小池機械製作所製の丸編み機で筒編みを作製し、ポリエステル編地の染色処理を行った。得られた編地の染色性を、以下のように評価した。下記の○を合格と判断した。
○:染色斑が全く無し。
△:染色斑が少し認められる。
×:染色斑が多く認められる。
【0079】
表1〜3から分かるように、処理剤を熱処理した場合の揮発残分の性状と接触ヒーター汚染が相関していることが分かった。実施例1〜20では、本願発明の3又は4価アルコール脂肪酸エステル(A)及びアニオン界面活性剤(B)を必須に含有し、前記脂肪酸エステル(A)と前記アニオン界面活性剤(B)との重量比率(B/A)が0.0001〜1.0である合成繊維処理剤であれば、処理剤を熱処理した場合の揮発残分の性状が液状であり、熱処理ヒーターの清掃周期が延長可能になり、白粉発生量および編地染色斑が少なく、製糸性に優れる。
一方、比較例1〜10では、脂肪酸エステル(A)を含有しない(比較例2及び10)、アニオン活性剤(B)を含有しない(比較例1、6、8及び9)、3又は4価アルコール脂肪酸エステルではない(比較例3及び4)、脂肪酸のアルキル基が6〜18でない(比較例5)、重量比率(B/A)が1.0を超える(比較例7)ために、本願の効果が得られない。