(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内筒と、この内筒の外周側に配置された外筒と、前記内筒と外筒の間に軸方向に対向した状態で介在された一対の成形体と、前記外筒の内周に前記一対の成形体の間に位置して嵌着された中間部材を備え、前記一対の成形体はそれぞれ、前記内筒側に固定される内周補強筒と、前記外筒側に固定される外周補強筒と、これら内周補強筒と外周補強筒の間にゴム状弾性材料で一体成形された弾性体からなり、前記一対の成形体の間に、互いに軸方向に密接衝合された前記弾性体により円周方向に互いに分離した複数の液室が画成され、前記複数の液室間を互いに連通するオリフィスが、前記成形体と前記中間部材の互いの嵌合により形成された軸方向隙間からなることを特徴とする液体封入式円筒型マウント。
【背景技術】
【0002】
自動車のサスペンション用防振支持手段として、従来から、円筒型の液体封入式マウントが知られている。この種の液体封入式円筒型マウントは、基本的には
図9に示すように、サスペンション装置における例えばサスペンションアーム側と車体側のうちの一方に取り付けられる内筒110と、その外周にあって前記サスペンションアーム側と車体側のうちの他方に取り付けられる外筒120と、これら内筒110と外筒120の間に軸方向に対向した状態で介在された一対の成形体130,130を有し、各成形体130は、内筒110の外周面に圧入固定される金属製の内周補強筒131と、外筒120の内周面に圧入固定される金属製の外周補強筒132と、これら内周補強筒131と外周補強筒132の間にゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で一体成形された弾性体133からなる。そしてこの弾性体133円周方向へ互いに分離した状態に画成され非圧縮性の粘性流体(封入液)が封入された第一液室140及び第二液室150が、円周方向へ延びるオリフィス160を介して互いに連通されている。
【0003】
このため、例えば車体のバウンドによる衝撃等の大変位が入力されたような場合は、弾性体133の大きな変形によって、第一液室140と第二液室150との間で封入液がオリフィス160を反復流動することによって、変位力を速やかに減衰し、通常走行時のエンジンの機関振動による小振幅の継続振動に対しては、弾性体133の小刻みな変形によって液室内の液圧変化を吸収して動バネ定数を低下させるので、車体側への伝達振動を低減することができるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の液体封入式円筒型マウントは、オリフィス160の断面積や長さが、内周補強筒131、外周補強筒132及び弾性体133からなる成形体130からなる成形体130を成形するための金型の形状により規定されることから、オリフィス160により得られる減衰特性が特定されてしまい、要求される特性の異なる機種への転用が困難である。したがって、要求特性の異なる他の機種に対しては、オリフィス160の断面積や長さを変更する必要があり、成形体130を成形するための金型を新規に製作する必要がある。
【0006】
また、オリフィス160は、外周側へ開くと共に軸方向両側の立ち上がり面が弾性体133のゴム状弾性材料の一部からなる溝形状であることから、成形体130を成形するための金型は軸方向及び径方向へ開く4分割型とする必要があり、このため金型製作コストが高く、製品コスト上昇を招く問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、特性の異なる機種への転用が容易で、しかも安価に提供可能な液体封入式円筒型マウントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る液体封入式円筒型マウントは、内筒と、この内筒の外周側に配置された外筒と、前記内筒と外筒の間に軸方向に対向した状態で介在された一対の成形体と、前記外筒の内周に前記一対の成形体の間に位置して嵌着された中間部材を備え、前記一対の成形体はそれぞれ、前記内筒側に固定される内周補強筒と、前記外筒側に固定される外周補強筒と、これら内周補強筒と外周補強筒の間にゴム状弾性材料で一体成形された弾性体からなり、前記一対の成形体の間に、互いに軸方向に密接衝合された前記弾性体により円周方向に互いに分離した複数の液室が画成され、前記複数の液室間を互いに連通するオリフィスが、前記成形体と前記中間部材の互いの嵌合により形成された軸方向隙間からなるものである。
【0009】
請求項1の構成によれば、オリフィスが、成形体と中間部材との嵌合により形成された軸方向隙間からなるものであることから、オリフィスにおける減衰特性の変更は、中間部材の軸方向寸法の変更による前記軸方向隙間の軸方向幅(断面積)の変更によって行うことができる。またこのため、要求特性を変更しても成形体を転用することができる。しかも、オリフィスが外筒と成形体と中間部材によって分担形成されているため、成形体にオリフィスとなる独立した溝を形成する必要がなく、このため成形体の成形に用いる金型を簡易な構造とすることができる。
【0010】
請求項2の発明に係る液体封入式円筒型マウントは、請求項1に記載の構成において、液室へのオリフィスの開口部が中間部材に形成されたものである。
【0011】
請求項2の構成によれば、オリフィスにおける減衰特性の変更を、中間部材の軸方向寸法の変更による成形体と中間部材との嵌合部における軸方向隙間の軸方向幅(断面積)の変更によって行うことができるほか、中間部材に形成する開口部の位置の変更によってオリフィスの長さを変更することでも行うことができる。
【0012】
請求項3の発明に係る液体封入式円筒型マウントは、請求項1又は2に記載の構成において、中間部材に、振動入力による内筒と外筒の径方向相対変位量を制限するストッパが突設されたものである。
【0013】
請求項3の構成によれば、中間部材にオリフィス形成手段としての機能のほか、内筒と外筒の径方向相対変位量を制限することによって成形体における弾性体の過大変形を防止するストッパとしての機能を兼備することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液体封入式円筒型マウントによれば、オリフィスの断面積又は長さの変更を、中間部材の寸法変更によって行うことができるため、成形体の設計変更を行わずに要求特性を変更することができ、しかも成形体を成形するための金型も二つ割り等の簡素な構造にできることから、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る液体封入式円筒型マウントの好ましい実施の形態を、オリフィス位置で軸心と直交する平面によって切断して示す断面図である。
【
図2】本発明に係る液体封入式円筒型マウントの好ましい実施の形態を、軸心を通り振動変位入力方向へ延びる平面で切断して示す断面斜視図である。
【
図3】本発明に係る液体封入式円筒型マウントの好ましい実施の形態を、軸心を通り振動変位入力方向と直交する方向へ延びる平面で切断して示す断面斜視図である。
【
図4】
図1の液体封入式円筒型マウントから外筒を除去した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図2の液体封入式円筒型マウントから外筒を除去した状態を示す断面斜視図である。
【
図6】本発明に係る液体封入式円筒型マウントの好ましい実施の形態において使用される中間部材を示す斜視図である。
【
図7】本発明に係る液体封入式円筒型マウントの好ましい実施の形態において使用される成形体を示す斜視図である。
【
図8】本発明に係る液体封入式円筒型マウントの好ましい実施の形態の組立過程を示す斜視図である。
【
図9】従来の液体封入式円筒型マウントの一例を、軸心を通る平面によって切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る液体封入式円筒型マウントの好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
この液体封入式円筒型マウントは、
図1、
図2及び
図3に示すように、内筒1と、この内筒1の外周側に配置された外筒2と、この内筒1と外筒2との間に軸方向に対向した状態で介在された一対の成形体3,3と、外筒2の内周に前記一対の成形体3,3の間に位置して嵌着された中間部材4を備える。
【0018】
内筒1は中空軸状(管状)の金属からなるものであり、外筒2は円筒状の金属からなるものであって軸方向両端に内径側へ屈曲されて成形体3,3を抜け止めする屈曲部21及びカシメ端部22が形成されている。
【0019】
成形体3,3は互いに同一のものであって、内筒1の外周面に圧入固定される金属製の内周補強筒31と、外筒2の内周面に圧入固定される金属製の外周補強筒32と、これら内周補強筒31と外周補強筒32の間にゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で一体成形された弾性体33からなる。
【0020】
詳しくは
図7に示すように、成形体3の弾性体33は、内周補強筒31に加硫接着された内周筒部331と、外周補強筒32に加硫接着された外周嵌合部332と、前記内周筒部331の軸方向外端部と外周嵌合部332との間に円周方向へ連続して形成され対向方向へ倒れるように傾斜した円錐状の端壁部333と、内周筒部331と外周嵌合部332との間の空間を円周方向へ2分割するように、端壁部333から対向方向へ立ち上がると共に内周筒部331及び外周嵌合部332と連続した一対の仕切壁部334,335(
図1及び
図3参照)とを有する。このため弾性体33には、その内周筒部331、外周嵌合部332、端壁部333及び仕切壁部334,335に囲まれ、対向方向へ開口した円周方向一対の円弧状凹部33a,33bが形成されている。また、弾性体33の端壁部333及び仕切壁部334,335は、内径側ほど軸方向外側へ偏在するテーパ状をなすと共に、内径側ほど肉厚が増大する形状となっている。
【0021】
ここで、外周補強筒32は、中間部材4との対向端部側に小径段部32aが円周方向に連続して形成されており、弾性体33の外周嵌合部332の外周面には、前記小径段部32a内に沿って延びる小径段部332aが形成されている。この小径段部332aは、後述する中間部材4の本体部41と対応する円周方向有端のもので、前記外周嵌合部332の外周面のうち小径段部332a以外の部分は、
図3及び
図4に示すように周方向堰き止め部332b及び軸方向堰き止め部322cとなっており、外筒2の内周面に密嵌されるものである。
【0022】
中間部材4はポリアミド等の合成樹脂又は金属等で製作されたものであって、
図6に示すように円周方向有端すなわち略C字形を呈し
図2及び
図3に示すように外筒2の内周面に嵌合される円筒面状の本体部41と、円周方向両端4a,4bを挟む180度対称位置で本体部41の内周面から円弧状に隆起した一対のストッパ42,43と、このストッパ42,43における前記円周方向両端4a,4b寄りに位置して形成され、内外周へ貫通すると共に軸方向一端へ向けて延びる切欠44,45を有する。ストッパ42,43は本体部41の内周面のうち軸方向一側(切欠44,45が形成された側)に偏った位置に形成されており、これによって、切欠44,45が形成された側では本体部41の内周面は軸方向幅が成形体3の外周面における小径段部332aの軸方向幅より狭い幅狭内周面41aとなっており、その反対側の内周面は、軸方向幅が前記小径段部332aの軸方向幅と同等、すなわち前記幅狭内周面41aより軸方向幅が広い幅広内周面41bとなっている。
【0023】
そしてこの中間部材4は、
図2及び
図3に示すように、本体部41の外周面が外筒2の内周面に密嵌されると共に、本体部41におけるストッパ42,43の軸方向両側の内周面41a,41bに、成形体3,3における小径段部332aが嵌合されている。
【0024】
なお、成形体3における弾性体33には、内筒1の外周面と適当なつぶし代で密接されるシール突条331a(
図2、
図3及び
図7等参照)、周方向堰き止め部332bにおいて外筒2の内周面に適当なつぶし代で密接されるシール突条332d(
図4参照)、軸方向堰き止め部322cにおいて外筒2の屈曲部21又はカシメ端部22に適当なつぶし代で密接されるシール突条332e(
図4、
図5及び
図7等参照)、中間部材4の本体部41の幅狭内周面41aに切欠44,45より両端4a,4b側で近傍に適当なつぶし代で密接されるシール突条332f(
図4参照)が形成されている。
【0025】
図1、
図2及び
図3に示す組立状態において、軸方向に互いに対向された成形体3,3と(弾性体33,33)の間には、円弧状凹部33a,33a間の第一液室5と、円弧状凹部33b,33b間の第二液室6が形成されている。この第一液室5と第二液室6は、弾性体33,33のうち互いに軸方向に密接衝合された仕切壁部334,334及び335,335によって分離されている。また、第一液室5には、その外周部に、中間部材4における一方のストッパ42が成形体3,3の外周嵌合部332,332間を介して突出しており、第二液室6には、その外周部に、中間部材4における他方のストッパ43が前記外周嵌合部332,332間を介して突出している。
【0026】
図4及び
図5に示すように、中間部材4の本体部41と、この本体部41の幅狭内周面41aに嵌合した一方の成形体3における外周嵌合部332の小径段部332aとの間には、前記幅狭内周面41aと小径段部332aの軸方向幅の差によって、円周方向有端の軸方向隙間70が形成され、
図1、
図2及び
図3に示すように、この軸方向隙間70が外周側から外筒2で覆われることによって、オリフィス7が形成されている。
【0027】
オリフィス7は、一端近傍が、中間部材4に形成された一方の切欠44と一方の成形体3における外周嵌合部332によって形成される開口部7aを介して第一液室5に開口しており、他端近傍が、中間部材4に形成された他方の切欠45と一方の成形体3における外周嵌合部332によって形成される開口部7bを介して第二液室6に開口している。したがって、第一液室5と第二液室6はオリフィス7を介して互いに連通している。
【0028】
すなわち中間部材4は、ストッパ42,43によって内筒1と外筒2の径方向相対変位量を制限し、成形体3における弾性体33の端壁部333及び仕切壁部334,335の過大変形を防止する機能と、成形体3との嵌合によってオリフィス7を形成する手段としての機能を兼備するものである。
【0029】
第一液室5、第二液室6及びオリフィス7は、シリコーンオイル等、非圧縮性の粘性流体(以下、封入液という)で満たされている。そして、オリフィス7における液柱共振周波数は、それぞれの流路長さ及び流路断面積と、各成形体3の弾性体33における端壁部333及び仕切壁部334,335のバネ定数などによって、例えば衝撃入力による大変位の周波数域に同調されている。
【0030】
以上のように構成された液体封入式円筒型マウントは、例えば自動車のサスペンション用防振支持手段として用いられるものであって、内筒1が、例えばサスペンションアーム側と車体側のうちの一方に取り付けられ、外筒2が前記サスペンションアーム側と車体側のうちの他方に取り付けられる。したがって、サスペンションアーム側あるいは車体側からの振動が入力されると、内筒1と外筒2は、成形体3,3の弾性体33,33の変形を伴いながら相対的に反復変位される。
【0031】
このとき、入力された振動変位が低周波大振幅である場合は、この振動変位の半周期において、内筒1が外筒2に対して相対的に径方向へ大きく変位されることによって、弾性体33における端壁部333及び仕切壁部334,335が大きな変形を受け、第一液室5及び第二液室6のうち一方が加圧されるので、封入液は、第一液室5及び第二液室6のうち高圧側から下流側へ、オリフィス7を通じて移動する。そして次の半周期では、封入液は上述とは逆方向へ移動する。このとき、オリフィス7内では、入力された低周波振動に対する液柱共振によって、封入液が円滑に流れるため、前記弾性体33,33の内部摩擦による減衰力のほか、オリフィス7内を封入液が流れる時の摩擦によって減衰力を発生し、入力変位を短時間で収束させる。
【0032】
また、内筒1と外筒2の径方向相対変位量は、中間部材4に形成されたストッパ42,43の内周面と、成形体3の内周筒部331の外周面との接触によって制限される。このため、弾性体33における端壁部333及び仕切壁部334,335の過大変形による破損が防止される。また、このときの衝突音の発生は、ゴム状弾性材料からなる前記内周筒部331によって、有効に抑制される。
【0033】
また、入力された振動がエンジンの機関振動等による中・高周波数帯域の継続的な小振幅の振動変位である場合は、オリフィス7における液柱慣性が大きくなるので、封入液がこのオリフィス7内を反復移動しにくくなり、弾性体33,33における端壁部333,333が僅かに膨らむように小刻みに反復変形することによって、第一液室5及び第二液室6の液圧変化が有効に吸収され、動ばね定数が低下するので、車体側への伝達振動が有効に絶縁される。
【0034】
この液体封入式円筒型マウントの製造においては、
図5に示すような成形体3を成形する。すなわち不図示の金型内に、予め加硫接着剤を塗布した内周補強筒31及び外周補強筒32をセットし、型閉じによってこの補強筒31,32間に画成されたキャビティ内に未加硫ゴム材料を充填して加熱・加圧することにより、弾性体33を補強筒31,32と一体に加硫成形し、成形体3を得る。
【0035】
そして成形体3は、オリフィスとなる部分が軸方向に対してストレート(すなわち円筒面)をなす小径段部332aからなり、第一液室5及び第二液室6となる円弧状凹部33a,33aも軸方向へ開放された形状であるため、その成形に用いる金型は軸方向にのみ型締め・型開きが行われる二つ割りの単純な分割型とすることができる。
【0036】
一方、中間部材4は合成樹脂等で成形される。そしてこの中間部材4も、
図6に示すように本体部41の内周面41a,41bや切欠44,45などが軸方向へ開放された形状であることから、その成形に用いる金型を、軸方向にのみ型締め・型開きが行われる二つ割りの単純な分割型とすることができる。
【0037】
成形後は、一対の成形体3,3を中間部材4の軸方向両側で互いに対向するように、かつ成形体3の周方向堰き止め部332bと中間部材4の円周方向両端4a,4b間の部分とを位置合わせしながら、
図8に示すように、各成形体3における外周嵌合部332の小径段部332aを、中間部材4にその軸方向両側から嵌合すると共に、内周補強筒31を内筒1の外周に圧入する。
【0038】
中間部材4の本体部41における幅狭内周面41aは、成形体3の小径段部332aの軸方向幅より狭いため、その嵌合部には円周方向有端の軸方向隙間70が形成され、中間部材4の本体部41における幅広内周面41bは、成形体3の小径段部332aと軸方向幅が同等であるため、両者はほぼ隙間なく嵌合される。
【0039】
ここで、成形体3は、
図7に示す未組立状態では、
図2及び
図3に示す組立状態に比較して内周補強筒31が相対的に軸方向内側(中間部材4との対向方向)へ偏在し、かつ弾性体33の端壁部333及び仕切壁部334,335の傾斜が大きいものとなっている。このため、成形体3,3を、
図8の状態を経て
図5に示すように双方の内周補強筒31同士が衝合する位置まで内筒1の外周に圧入することによって、弾性体33の端壁部333及び仕切壁部334,335が軸方向への剪断及び圧縮変形を受けることになり、かつ内周補強筒31が強制的に拡径変形されるのに伴って前記端壁部333及び仕切壁部334,335が外径側へ圧縮される。したがって、前記端壁部333及び仕切壁部334,335は、加硫成形後の体積収縮によって生じた引張応力が解消されるばかりでなく、十分な予圧縮が与えられるので、所要の耐久性が確保される。
【0040】
そして次に、各成形体3の外周嵌合部332及び中間部材4の外周面を、外筒2の内周へ嵌挿する。このとき、外筒2のカシメ端部22はまだ径方向内側へ屈曲されていない円筒状をなしており、これによって外筒2への成形体3,3及び中間部材4の挿入が可能となっている。
【0041】
そして上述の挿入作業を、液槽に貯留したシリコーンオイル等の粘性流体中で行うことによって、その一部が封入液として第一液室5、第二液室6及びオリフィス7に閉じ込められ、封入される。一方の成形体3の外周嵌合部332が外筒2の屈曲部21と当接するまで、成形体3,3及び中間部材4を挿入した後、外筒2のカシメ端部22を径方向内側へ屈曲してカシメることによって、
図2及び
図3に示す組立状態となる。
【0042】
この実施の形態の構成によれば、オリフィス7が、中間部材4の本体部41と、この本体部41の幅狭内周面41aに嵌合した一方の成形体3における外周嵌合部332の小径段部332aによって形成される軸方向隙間からなるものであることから、成形体3にはオリフィスとするための独立した溝を形成する必要がない。したがって、先に説明したように、成形体3の成形に用いる金型は軸方向にのみ型締め・型開きが行われる二つ割りの単純な分割型とすることができ、金型のコストを低減することができる。
【0043】
ここで、オリフィス7を封入液が流動することによる減衰特性は、オリフィス7の長さ及び断面積によって異なるが、この実施の形態の構成によれば、オリフィス7が中間部材4における本体部41の幅狭内周面41aと、これに嵌合した一方の成形体3における外周嵌合部332の小径段部332aとの軸方向幅の差による軸方向隙間70(
図4及び
図5参照)を、外筒2で覆うことによって形成されているので、オリフィス7による減衰特性の変更は、中間部材4の本体部41における幅狭内周面41aの軸方向寸法の変更による前記軸方向隙間70の軸方向幅(断面積)の変更によって行うことができる。
【0044】
また、オリフィス7の長さは、
図4及び
図6に示す中間部材4に形成された切欠44,45(開口部7a,7b)の円周方向の位置によって決まるため、オリフィス7を封入液が流動することによる減衰特性は、前記切欠44,45の形成位置を変更することでも行うことができる。
【0045】
したがって、特性変更の要求があっても、上述のように中間部材4における本体部41における幅狭内周面41aの軸方向寸法の変更又は切欠44,45の位置変更によって対応することで、成形体3を転用することができるので、この点でもコストを低減することができる。