(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の現像ローラは、軸体及び弾性層を備えていれば、他の構成は特に限定されない。例えば、本発明の現像ローラは、弾性層の外周面の全部又は一部にコート層を有していてもよく、また、軸体と弾性層の間又は弾性層とコート層との間に接着層又はプライマー層等の中間層を有していてもよい。
ここで、現像ローラは、現像装置に配設され、表面に現像剤を担持して感光体に搬送及び供給するローラである。このように現像ローラは、現像剤を物理的及び電気的に吸着する機能と吸着した現像剤を解放して感光体に供給する機能とを有する。したがって、現像ローラは現像剤の物理的搬送性及び導電性が要求され、通常、伝導性は要求されない。また、現像ローラは、現像装置として、現像装置又は画像形成装置に装着されるものであるから、通常、小径である。例えば、本発明の現像ローラの外径は、20mm以下であるのが好ましく、より好ましくは12〜16mmであり、さらに好ましくは13〜16mmである。
これに対して、定着ローラは、上述のように、耐熱性、所望により伝導性が要求されるものの、導電性は基本的に要求されないことが多い。このように、現像ローラと定着ローラは導電性及び耐熱性(熱伝導性)について異なる特性が要求され、それらの作用機能は大きく異なる。
【0016】
本発明の現像ローラを、その一例を挙げて、説明する。本発明の現像ローラの一例である現像ローラは、
図1に示されるように、軸体2と弾性層3とコート層4とを備えている。
【0017】
軸体2は、従来公知の現像ローラにおける軸体と基本的に同様のものであればよい。この軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有している。軸体は熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよいが、金属で形成された、高伝導性のものが好ましい。
【0018】
弾性層3は、導電性付与剤及び金属ケイ素を含有する後述するシリコーンゴム組成物の硬化物で形成されている。したがって、この弾性層3は、導電性付与剤及び金属ケイ素を含有している。
弾性層3は、発泡ゴムからなる発泡層であってもよいが、放熱性が優れる点で、中実なゴム層であるのが好ましい。なお、本発明において「中実」とは、内部に中空部が存在しない場合に加えて、中空部が例えば0.1個/mm
2以下で内部に存在する場合をも包含する。
【0019】
弾性層3は、0.3〜0.9W/mKの熱伝導率を有しているのが、現像剤シール及び現像ブレードに現像剤が固着するのを防止できる点で、好ましい。この現像剤の固着をさらに効果的に防止できる点で、弾性層の熱伝導率は、0.4〜0.9W/mKであるのがより好ましく、0.5〜0.9W/mKであるのがさらに好ましい。
弾性層3の熱伝導率は次のようにして測定する。すなわち、伝導性率測定装置「QTM−500」及び測定プローブ「PD−11」(商品名、京都電子工業社製)を用いて、電流値3.0A、測定時間60秒の条件下で、現像ローラ1の弾性層3を、測定プローブの電熱線に対して平行且つ全面に接触させることで測定できる。
弾性層3の熱伝導率は、金属ケイ素の含有量等によって調整できる。具体的には、金属ケイ素の含有量を多くすると熱伝導率は増大し、後述する範囲内に設定すると弾性層3の熱伝導率を0.3〜0.9W/mKの範囲内に調整できる。
【0020】
弾性層3は、抵抗値が1×10
3〜1×10
8Ωであるのが好ましい。本発明において、抵抗値とは、現像ローラの抵抗値ではなく、弾性層に関する抵抗値であり、体積抵抗値又は電気抵抗値とは異なるものである。
【0021】
弾性層3の抵抗値の測定方法及び測定条件は次の通りである。現像ローラ、コート層4を備えている場合にはコート層4を除去した試験体を準備し、この現像ローラ又は試験体(現像ローラ等という)を、φ30mmの回転可能な金属製ローラ上に載置し、現像ローラ等の軸体2両端にそれぞれ1kgの重りを乗せて合計2kgの加重を掛ける。この状態で現像ローラ等を毎分25回転の速度で回転させ、350Vの電圧を軸体2とφ30mmの金属ローラに印加し流れる電流値を電流計(「デジタルマルチメータ、PC5000a」、三和電気計器社製)で計測する。抵抗値は印加電圧の350Vを電流値で除することで算出される。
【0022】
弾性層3は、抵抗値の上昇が抑えられており、下記測定方法における抵抗値の上昇率が1桁以下であるのが好ましく、0.5桁以下であるのがより好ましく、0.2桁以下であるのがさらに好ましい。
弾性層3が導電性付与剤に金属ケイ素を含有していると抵抗値の上昇が抑えられる理由の詳細についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、導電性付与剤として金属ケイ素を使用することにより、金属ケイ素粉末同士が接触する微小な接点部の電流経路の許容電流量を増大することができ、カーボンブラックの導電経路と比較して劣化が少ないためと考えられる。
【0023】
抵抗値の上昇率の測定方法及び測定条件は次の通りである。φ30mmの回転可能な金属製ローラ上に現像ローラ等を載置し、現像ローラ等の軸体2両端にそれぞれ1kgの重りを乗せて合計2kgの加重を掛ける。この状態で現像ローラ等を毎分25回転の速度で回転させ、350Vの電圧を軸体2とφ30mmの金属ローラに印加し流れる電流値を電流計(「デジタルマルチメータ、PC5000a」、三和電気計器社製)で計測する。抵抗値は印加電圧の350Vを電流値で除することで算出される。この状態を30分間継続した後の抵抗値を測定し、初期の抵抗値と30分間継続した後の抵抗値から、抵抗値の上昇率を下記式により算出する。抵抗値及び抵抗値の上昇率を上述の範囲に調整する方法は、例えば、金属ケイ素の添加量の調整等が挙げられる。
式: log(30分間継続した後の抵抗値/初期の抵抗値)
【0024】
弾性層3は、20〜50のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜50のJIS A硬度(JIS K6301)を有していると、現像ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、かつ、現像ローラ1としての、感光体への現像剤の転写性が優れる。
【0025】
弾性層3は、被当接体との当接状態において被当接体と弾性層3との均一なニップ幅を確保することができる等の点で、その厚さは1〜10mmであるのが好ましく、1〜5mmであるのが特に好ましい。
【0026】
コート層4は、弾性層3の外周面全面に配置されており、後述する樹脂組成物の硬化物で形成されている。
【0027】
コート層4は、現像ローラが導電性を有していれば、導電性を有していても有していなくてもよいが、導電性を有しているのが好ましい。コート層4の導電性は、例えば、後述する樹脂組成物における導電性付与剤の含有量によって調整することができる。
【0028】
コート層4は、通常、5〜25μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜20μmの層厚を有しているのがより好ましい。
【0029】
コート層4は、次の特性を有しているのが好ましい。例えば、算術平均粗さRaが挙げられる。その好適な範囲は0.5〜3.0μmである。算術平均粗さRaは、JIS B0601―1984に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、東京精密社製)に、現像ローラをセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、少なくとも3点を測定点として測定した値の平均値とする。
【0030】
本発明の現像ローラは、軸体の外周面に弾性層を形成し、さらに必要に応じて弾性層の外周面にウレタンコート層を形成して、製造される。
上述の本発明の好適な現像ローラ1を例にして、本発明の現像ローラの製造方法を具体的に説明する。
【0031】
まず、軸体2を準備又は作製する。軸体2は、上記材料を用いて、公知の方法により棒状体に作製される。なお、軸体2は、所望により、その外周面を洗浄、脱脂処理等してもよい。
【0032】
次いで、軸体2の外周に弾性層3を形成する。
弾性層3を形成するシリコーンゴム組成物を準備する。このシリコーンゴム組成物は、オルガノポリシロキサン、導電性付与剤及び金属ケイ素を含有するシリコーンゴム組成物であれば、特に制限されない。シリコーンゴム組成物は、イオン液体及び各種添加剤等を含有していてもよい。
【0033】
導電性付与剤は導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等の導電性粉末が挙げられる。
イオン液体としては、特に限定されず、例えば、ピリジニウム系、アミン系、イミダゾリウム系等の公知のイオン液体が挙げられる。
各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0034】
シリコーンゴム組成物として、軸体2との高い密着性を発現する点で、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物等が好ましく、これらのなかでも、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン、導電性付与剤及び金属ケイ素を含有するシリコーンゴム組成物がより好ましい。特に、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が好ましい。
【0035】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物として、例えば、(A)平均組成式:RnSiO
(4−n)/2(Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、(C)前記成分(B)に属するもの以外の導電性材料、及び、金属ケイ素を含有する付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、充填材(B)は11〜39質量部、導電性材料(C)は2〜80質量部が好ましい。
【0036】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cm
3である無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒と、金属ケイ素とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
オルガノポリシロキサン(D)100質量部に対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)は0.1〜30質量部、無機質充填材(F)は5〜100質量部、導電性付与剤(G)は2〜80質量部が好ましく、付加反応触媒(H)はオルガノポリシロキサン(D)及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)の合計質量に対して、0.5〜1,000ppmが好ましい。
【0037】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物として、(I)ビニル基含有シリコーン生ゴム(オルガノポリシロキサンともいう)と、(J)シリカ系充填材と、(K)発泡剤と、(L)付加反応架橋剤と、(M)付加反応触媒と、(N)反応制御剤と、(O)導電性付与剤と、金属ケイ素とを含有し、所望により(P)有機過酸化物架橋剤と(Q)各種添加剤とを含有する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(I)〜(Q)は、例えば、特開2008−076751号公報に記載されている「付加反応型発泡シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
ビニル基含有シリコーン生ゴム(I)100質量部に対して、シリカ系充填材(J)は5〜100質量部、発泡剤(K)は0.1〜10質量部、付加反応架橋剤(L)は0.01〜20質量部、反応制御剤(N)は0.1〜2質量部、導電性付与剤(O)は0〜15質量部が好ましく、付加反応触媒(M)は組成物全体に対して1〜1,000ppmが好ましい。
【0038】
金属ケイ素は上記した通りであり、良好な熱伝導性をもち、またモース硬度が低く、金属ケイ素の特性として、たたくと砕けやすく、展性が低いため、高剪断を与えても金属粉自体が凝集しにくい特性をもつ。そのため、粉砕による微粒子化が容易で、オルガノポリシロキサンヘの分散性が優れる特性をもつ。また、金属ケイ素粉末の表面には、ごく薄い自然酸化膜が形成され、形成された膜はガラスと同じで熱や酸や汚れに強く、電気が流れにくく、熱に安定である。
【0039】
ここで、本発明に用いる金属ケイ素粉末の製造方法としては、特に限定されるものではないが、ケイ石を還元して金属ケイ素としたものをボールミル等の既存の破砕機や粉砕器にて粉砕したもの、半導体製造工程等より発生する金属ケイ素(ウエハー)や切削くず等を原料として微粉化したものなど、粉砕法により粉末化したもの、金属ケイ素を高温で溶融したものを気相法で微粒子化し、冷却、固化して球状粒子としたものなどの球形金属ケイ素粉末等が挙げられる。ここで、「球状」又は「球形」とは、個々の粒子表面に鋭く尖ったエッヂ部分がない、なめらかな形状であることを意味するもので、通常、長径/短径の比率(アスペクト比)が1.0〜1.4、好ましくは1.0〜1.2程度のものを示す。金属ケイ素の結晶構造の単結晶、多結晶は任意である。微粒子化した金属ケイ素粉末の純度は、特に限定されるものではないが、熱伝導性付与の観点から50%以上(すなわち、50〜100%)が好適であり、より好ましくは80%以上(80〜100%)、更に好ましくは95%以上(95〜100%)であることが望ましい。純度の高い金属ケイ素粉末は表面の自然酸化膜に欠陥がなく、高温熱安定性が良好となる。なお、不純物としては、Fe、Ni、Alやこれらの酸化物及びSiO
2などが挙げられる。
【0040】
本発明に使用する金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は100μm以下、とりわけ50μm以下であり、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜25μm、特に1〜20μmであるものを使用する。平均一次粒子径が0.1μm未満の粒子は、製造が困難であると共に、多量に配合するのが困難となる場合があり、100μmを超えるとゴム硬化物の機械的強度が損なわれる場合があるだけでなく、ロール等としての表面が凹凸となり性能に問題が生じるおそれがある。
本発明において、平均一次粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(メジアン径)として求めることができる。
【0041】
また、金属ケイ素粉末は、シリコーンゴム組成物の熱安定性や粉体の配合性の向上を目的として、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により表面処理されたものであってもよい。これら処理は、無機粉体自体を予め処理しても、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の調製時に処理を行ってもよい。
【0042】
金属ケイ素の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは15〜55質量部、さらに好ましくは20〜50質量部である。金属ケイ素の含有量が上述の範囲内にあると、現像剤シール及び現像ブレードに現像剤が固着するのを防止できる。
【0043】
本発明には、低圧縮永久歪や耐熱性を損なわない範囲で他の熱伝導性物質を併用してもよい。その場合は、熱伝導性物質全体の体積容積率のうち50%以上が金属ケイ素粉末であることが好ましい。
他の熱伝導性物質としては、既知の物質が利用可能で、特に限定されるものではないが、具体的にはアルミナ、アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、グラファイト、繊維状グラファイト等が挙げられる。
【0044】
弾性層3は、上記シリコーンゴム組成物を軸体2の外周面に配置し、シリコーンゴム組成物を硬化して、成形される。シリコーンゴム組成物の硬化及び成形はシリコーンゴム組成物の配置と同時に行うことができ、またこれらを連続して行うこともできる。シリコーンゴム組成物の硬化方法はシリコーンゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。具体的には、シリコーンゴム組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、シリコーンゴム組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法、射出成形法を選択することができ、シリコーン組成物が付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には例えば、押出成形及び金型を用いる成形法を選択することができる。
【0045】
シリコーンゴム組成物を硬化させる際の加熱温度及び加熱時間は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は100〜500℃、特に120〜300℃であるのが好ましく、数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は100〜300℃、特に110〜200℃であるのが好ましく、5分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましく、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合は170〜500℃、特に200〜400℃であるのが好ましく、数分以上1時間以下、特に5〜30分間であるのが好ましい。このようにしてシリコーンゴム組成物を軸体2の外周面で硬化させる。このようにして硬化したシリコーンゴム組成物を、所望により、二次硬化させることもできる。
【0046】
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。また、このようにして形成された弾性層3は、ウレタンコート層4が形成される前に、前記プライマー層が形成されてもよい。
【0047】
ウレタンコート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工された樹脂組成物を加熱硬化させて、形成される。
【0048】
コート層4を形成する樹脂組成物は、樹脂を形成する前駆体と、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。樹脂は各種のものが挙げられ、中でもウレタン樹脂が好ましい。ウレタン樹脂を形成する前駆体であるウレタン調製成分は、ウレタン樹脂を形成できればよく、例えば、ポリオールとイソシアネートとの混合物が挙げられる。
【0049】
ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、ヘキサンジオール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。
【0050】
イソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族イソシアネートであるのが好ましい。芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。誘導体としては、ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。ポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
【0051】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7〜1.15であるのが好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましいなお、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して前記適正モル比の3〜4倍相当量を配合してもよい。
【0052】
ウレタン調整成分には、ポリオール及びポリイソシアネートに加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0053】
樹脂組成物の塗工は、例えば、樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。
このようにして塗工された樹脂組成物を硬化する方法は、樹脂組成物の硬化等に必要な熱又は水分を加えられる方法であればよく、例えば、樹脂組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法、樹脂組成物が塗工された弾性層3等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に120〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。
なお、塗工に代えて、樹脂組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層すると共に、又は、積層した後に、積層された樹脂組成物を硬化させる方法等が採用されることができる。
【0054】
このようにして形成されるコート層4においては、樹脂を形成する前駆体と導電性付与剤等が反応して一体になっていても複合体を形成していてもよく、導電性付与剤が樹脂を形成する前駆体と反応せず、樹脂中に分散していてもよい。
【0055】
次に、本発明の現像装置及び本発明の画像形成装置の一実施態様を、
図2を参照して、説明する。
画像形成装置10は、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。
【0056】
現像装置20Bは、この発明に係る現像装置の一例であり、
図2に示されるように、本発明の現像ローラと現像剤、例えばプラス帯電現像剤とを備えている。したがって、この画像形成装置10において、現像ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Y、すなわち、現像ローラとして装着されている。現像装置20Bは、具体的には、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23B例えば現像ローラと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードとを備えて成る。現像装置20Bにおいて、現像剤量調節手段24Bは、
図2に示されるように、現像剤担持体23Bの外周面に接触又は圧接している。すなわち、前記現像装置20Bは所謂「接触式現像装置」である。前記現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されている。
【0057】
画像形成装置10において、現像装置20Bの現像剤担持体23Bは、その表面が像担持体11Bの表面に接触又は圧接するように配置されている。現像装置20C、20M及び20Yも、現像装置20Bと同様に、その表面が現像剤担持体23C、23M及び23Yが像担持体11C、11M及び11Yの表面に接触又は圧接するように配置されている。すなわち、この画像形成装置10は所謂「接触式画像形成装置」である。
【0058】
定着手段30は、現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット41が設置されている。転写搬送ベルト6は複数の支持ローラ42に巻回されている。
【0059】
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。
【0060】
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16Bの表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
【0061】
このタンデム型画像形成装置10において、現像剤担持体23としてこの発明の現像ローラ1を用いると、現像剤漏れが実質的になく高品質の画像を長期わたって形成できる。
【0062】
本発明の現像ローラ、現像装置及び画像形成装置は、上記したものに限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0063】
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、本発明の現像ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置10に用いられる現像剤は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。
【0064】
前記画像形成装置10は、所謂「接触式画像形成装置」であるが、この発明において、画像形成装置は、現像剤担持体の表面が像担持体の表面に接触しないように間隙を有して配置される所謂「非接触式画像形成装置」であってもよい。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
図1に示される現像ローラ1を以下のようにして製造した。
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業社製)を塗布した。プライマー処理した軸体2を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
【0066】
次いで、弾性層3を形成するための下記組成を有するシリコーンゴム組成物を次のようにして調製した。
すなわち、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(D)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m
2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cm
3である珪藻土(F)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土社製)40質量部、アセチレンブラック(G)(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)5質量部、及び金属ケイ素30質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(E)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(H)(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0067】
次いで、調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により軸体2の外周面に成形した。液体射出成形において付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を10分間150℃に加熱して硬化させた。この成形体を研磨して外径20mmの弾性層3を形成した。
【0068】
また、下記組成を有するウレタンコート層形成用の樹脂組成物を調製した。
・ポリエステルポリオール28質量部(後述するヘキサメチレンジイソシアネートとポリエステルポリオールとのモル比(NCO/OH=1.1/1)
・カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン社製)5質量部
・小径シリカ(平均粒径1.5μm、商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製)4質量部(ポリウレタン調整成分100質量部に対して9.5質量部)
・ジブチル錫ジウラウレート(商品名「ジ−n-ブチルすずジウラウレート」、昭和化学社製)0.03質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成社製)14質量部
【0069】
この樹脂組成物を弾性層3の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚20μmのウレタンコート層4を形成した。このようにして、軸体2、弾性層3及びコート層4を備えた
図1に示す現像ローラ1を製造した。
【0070】
(実施例2
、3および参考例1、2)
金属ケイ素の含有量を表1に示す値に変更したこと以外は実施例1と同様にして
図1に示す現像ローラを製造した。
【0071】
(比較例1)
金属ケイ素を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、軸体、弾性層及びコート層を備えた現像ローラを製造した。
【0072】
(比較例2)
実施例1において金属ケイ素に代えてアルミナ粉(商品名「アルミナ標準粒A−12」、昭和電工社製)30質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、軸体、弾性層及びコート層を備えた現像ローラを製造した。
【0073】
(熱伝導率の測定)
製造した各現像ローラの弾性層の熱伝導率を上記方法及び条件で測定した。
【0074】
(JIS A硬度の測定)
製造した各現像ローラの弾性層のJIS A硬度を上記方法及び条件で測定した。
【0075】
(抵抗値の測定)
製造した各現像ローラのコート層を剥離して、弾性層の抵抗値を上記方法及び条件で測定し、上記式により抵抗値の上昇率を算出した。
【0076】
(現像剤漏れ評価)
製造した各現像ローラそれぞれを5本準備し、接触型モノクロ画像形成装置(商品名「HL−6180DW」、ブラザー工業社製)において、現像ローラとして、装着した。なお、現像剤及び現像剤規制部材は、この接触型モノクロ画像形成装置に付属の現像剤及び現像剤規制部材を用いた。この現像剤の帯電特性はプラスであった。
各現像ローラを装着した接触型カラー画像形成装置内の環境を、温度30℃、相対湿度80%の高湿環境に調整して、A4用紙の片面全面に白べた画像を1000枚印刷し、画像形成装置を分解して現像装置から現像剤が外部に漏れているか否かを目視にて確認した。
評価は、実施例
、参考例及び比較例それぞれにおける現像ローラ5本すべてにおいて現像装置外に現像剤の漏れを確認できなかった場合を「○」、実施例
、参考例及び比較例それぞれにおける現像ローラ5本すべてにおいて現像装置の周囲にごく微量の現像剤が付着していたが使用上問題ない場合を「△」、現像装置の周囲に使用上問題を生じる多量の現像剤が付着していた場合を「×」とした。その結果を第1表
(表1)に示す。
【0077】
(画像品質)
製造した各現像ローラを現像ローラとして装着した前記プリンター(商品名「HL−6180DW」、ブラザー工業社製)をパーソナルコンピュータに接続して、試験環境下(23℃、相対湿度10%)に24時間静置した。その後、前記プリンターの用紙設定を「普通紙厚め」、印字品質を「標準」、その他の設定を「デフォルト」に設定して、18%グレイ同等の濃度のモノクロ全面画像を表計算ソフト「エクセル」(マイクロソフト社)でパーソナルコンピュータの画面上に作成し、このモノクロ全面画像をハーフトーン画像としてモノクロモードで1枚印刷した。
印刷されたハーフトーン画像の均質度を目視にて評価した。評価は、ハーフトーン画像が濃度ムラのない均一な画像であった場合を「○」、ハーフトーン画像に実用上問題がない程度にわずかに濃度ムラが認められた場合を「△」、ハーフトーン画像に実用上許容できないほど濃度ムラが認められた場合を「×」とした。これらの評価結果を「画質評価」として第1表に示す。
【0078】
【表1】