(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169488
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】無鉛滑り軸受
(51)【国際特許分類】
B22F 7/00 20060101AFI20170713BHJP
B22F 1/00 20060101ALI20170713BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20170713BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20170713BHJP
C22C 9/02 20060101ALI20170713BHJP
C22C 9/10 20060101ALI20170713BHJP
F16C 33/12 20060101ALI20170713BHJP
F16C 33/14 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B22F7/00 E
B22F1/00 J
B22F7/04 H
C22C9/00
C22C9/02
C22C9/10
F16C33/12 B
F16C33/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2013-513563(P2013-513563)
(86)(22)【出願日】2010年6月10日
(65)【公表番号】特表2013-533920(P2013-533920A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】EP2010058145
(87)【国際公開番号】WO2011154039
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2013年3月12日
【審判番号】不服2015-200(P2015-200/J1)
【審判請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】510010436
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル ヴィースバーデン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL WIESBADEN GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】マイスター,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】レヴァンドフスキー,ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ブロニスツェフスキー,アンドレツェイ
【合議体】
【審判長】
鈴木 正紀
【審判官】
長谷山 健
【審判官】
板谷 一弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−001704(JP,A)
【文献】
特開2008−144253(JP,A)
【文献】
特開2003−089831(JP,A)
【文献】
特開2001−271129(JP,A)
【文献】
特開2003−269456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 7/00, C22C9/00-9/10, F16C33/12-33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無鉛滑り軸受を製造するための方法であって、
焼結に先立ち、アルミニウム元素、マグネシウム元素、シリコン元素、チタニウム元素、ジルコニウム元素及びクロミウム元素の単体を錫粉末及び銅粉末と混合して、合計で0.2重量%〜1重量%のアルミニウム元素、マグネシウム元素、シリコン元素、チタニウム元素、ジルコニウム元素及びクロミウム元素を単体で含み、0重量%〜15重量%のスズ(0重量%のスズを除く)を含み、残部銅及び不可避的不純物からなる銅基の材料を得るステップ、及び
前記材料を鋼の上に焼結して、無鉛滑り軸受を得るステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記材料は、最大で6重量%までのスズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料は、固体潤滑剤を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料は、h−BN及び/又はCを有する、固体潤滑剤を更に含む、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記材料は、酸化物、炭化物、窒化物、及び/又は、燐化物を有する、硬い粒子を更に含む、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無鉛滑り軸受を製造するための方法に関する。
【0002】
広範な要求が軸受(sliding
bearing)に置かれている。これらは、例えば、耐食性、滑り特性、及び、機械加工性に関する。
【背景技術】
【0003】
DE 10 2007 049 383 A1は、複合材料と、それを製造するための方法に関し、複合材料は、鋼基板と、圧延接合(roll bonding)を用いて塗布される硬化可能な銅合金の塗膜とで構成されている。
【0004】
DE 10 2005 014 301 A1から明らかなことは、銅−多成分合金で作製される滑り軸受の製造のための方法であり、そこでは、滑り表面にある少なくとも1つの相構成が酸を用いて溶解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎を形成する目的は、改良された特性、特に、耐食性に関して改良された特性を有する滑り軸受を製造し得る、滑り軸受を製造するための方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載する方法によって解決される。
【0007】
上記に従って、合計で0.1%〜3%のアルミニウム元素、マグネシウム元素、シリコン(ケイ素)元素、チタニウム(チタン)元素、ジルコニウム元素、クロミウム(クロム)元素が焼結される。滑り軸受を製造するために、そのような合金を、特に、鋼裏当て(steel backing)の上に焼結し得る。この結果、引用した元素は、有利な方法において腐食防止剤として作用する。既存の焼結工場において最大で1000℃までの焼結温度で新規な材料を製造し得ることが分かった。例えば、噴霧プロセス中に、組成Cu(Sn)Xの焼結粉末を経済的に好ましい方法において製造するために、チップの使用を考え得る。ここで、Xは、本発明の範囲内で要求されるアルミニウム、マグネシウム、シリコン、チタニウム、ジルコニウム、クロミウムである。
【0008】
好適実施態様を更なる請求項に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
合計で0.1%〜3%のアルミニウム元素、マグネシウム元素、シリコン(ケイ素)元素、チタニウム(チタン)元素、ジルコニウム元素、クロミウム(クロム)元素が焼結される。滑り軸受を製造するために、そのような合金を、特に、鋼裏当て(steel backing)の上に焼結し得る。この結果、引用した元素は、有利な方法において腐食防止剤として作用する。既存の焼結工場において最大で1000℃までの焼結温度で新規な材料を製造し得ることが分かった。例えば、噴霧プロセス中に、組成Cu(Sn)Xの焼結粉末を経済的に好ましい方法において製造するために、チップの使用を考え得る。ここで、Xは、本発明の範囲内で要求されるアルミニウム、マグネシウム、シリコン、チタニウム、ジルコニウム、クロミウムである。腐食に対する所望の保護が少なくとも0.2%及び/又は最大でも1%の濃度で既に起こることが初期試験で分かった。
【0010】
有利な方法において、新規な材料は、最大で15%までのスズ(錫)、特に約6%のスズを更に含み得る。これを用いることによって、要求プロファイルに従って硬度及び滑り特性を有利に調節し得る。スズ比率の上限は、スズ比率の増大が熱伝導率を減少させるという事実に起因する。よって、十分に高い熱伝導率を達成するために、規定の限界値が有利であることが証明された。
【0011】
焼結プロセスのための粉末を製造するときに、例えば、酸化物、炭化物、窒化物及び燐化物のような硬い粒子、並びに/或いは、例えば、h−BN及び炭素のような固体潤滑剤を添加することによって、本発明に従って製造される滑り軸受の滑り特性及び機械加工性を有利な方法において向上し得る。更に、焼結に先立つプロセス中に所謂チップブレーカ(chip breaker)を添加し得る。
【0012】
ここに記載するようなCuX型の新規な材料を混合することが有利であるのが更に証明された。ここで、Xは、焼結に先立ち錫粉末又は銅粉末を備える、Al、Mg、Ti,Zr、Crである。その結果、鋼の上に特に良く焼結し得る材料を製造し得る。腐食防止剤として作用する既述の材料及び元素が空中で不動態化するという硬化を補償するために、引用した元素は焼結添加剤として更に作用する。
【0013】
少なくとも最大で5%までの精密な比率、即ち、<5μmの粒子の好適な標的増大によって、焼結温度を有利な方法において下げることが可能である。これが更にもたらす利点は、流れ特性に悪影響を及ぼすことなく、技術的に必要な高比率の微細粉末を本発明の範囲内で使用し得ることである。