(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0020】
(DCモータ)
図1は、本実施の形態に係るDCモータの一部破断面図である。
図2は、ブラシとコミテータとの摺動部近傍を拡大した模式図である。
図1に示すDCモータ10は、2極3溝モータであり、筒状のハウジング12の内壁にマグネット14が1個または複数個配置されている。マグネット14は、内側に磁極(N極及びS極)が位置するように配置されており、ハウジング12の内壁の周方向に沿ってN極とS極が交互に並んでいる。
【0021】
ハウジング12の中央部にはロータ16が配置されている。ロータ16は、シャフト18、コア20と、巻線22と、コミテータ(整流子)24と、バリスタ26とを備える。シャフト18は、軸受28a,28bを介して、ロータ16を支持する回転軸である。また、シャフト18は、出力軸としても機能する。
【0022】
コア20は、複数の鋼板が積層されたものであり、その中心にはシャフト18が貫通した状態で固定されている。巻線22は、コア20の溝20aに巻き回されており、電流が流れることで磁力を生じさせる。
【0023】
コミテータ24は、コア20と同様にシャフト18に固定されている。コミテータ24は、接触するブラシ30を通して通電される電流を巻線22に適切なタイミングで流す接点である。ブラシ30は、例えば、貴金属等を主成分とするフォーク状の金属ブラシである。また、ブラシ30の可撓部にはダンパ(紙面裏側に配置:不図示)が取り付けられている。なお、ブラシは、カーボンブラシの場合もありうる。一方、コミテータ24は、例えば、ブラシ30との摺動部が銀含有金属で構成されている。
【0024】
ブラシ30は、端子となるブラシベース32と接続された状態で、ブラシホルダ34に固定されている。ブラシホルダ34は、ハウジング12内に装着される。そして、エンドベル36でハウジング12の開口部が蓋をされる。
【0025】
バリスタ26は、コア20とコミテータ24との間に配置されており、コミテータ24とブラシ30との間での火花の発生を抑制し火花摩耗を低減する素子である。バリスタ26には、例えば、ディスク状のセラミックバリスタが用いられる。
【0026】
図3は、ロータをシャフトの軸方向から見たブラシとコミテータとの接触状態を説明するための模式図である。
図3に示すように、コミテータ24は、3つのコミテータ片24a,24b,24cからなる。そして、
図3では、一対のブラシ30の一方のブラシ30aが一つのコミテータ片24aと接触し、他方のブラシ30bが他の一つのコミテータ片24bと接触している。そして、コミテータ24が回転することで、各ブラシ30a,30bと接触するコミテータ片が入れ替わり、整流が行われる。
【0027】
次に、ブラシとコミテータとの間の火花摩耗について説明する。
図4(a)は、ブラシとコミテータとの間で生じる火花摩耗を模式的に示した図、
図4(b)は、ブラシの摩耗箇所を模式的に示した図、
図4(c)は、コミテータの摩耗箇所を模式的に示した図である。
【0028】
図4(a)に示すように、コミテータ24とブラシ30との接触部38では、ロータの回転により、それまでブラシ30と接触していた一つのコミテータ片が離間する際に火花が発生することがある。その結果、
図4(b)に示すように、ブラシ30bの接触部40には摩耗が生じている。また、
図4(c)に示すように、コミテータ24の外側領域の一部領域42にも摩耗が生じている。このような摩耗について、本発明者らが鋭意検討したところ、適切な特性のバリスタ26を用いることで改善できることを見いだした。
【0029】
はじめに、摩耗深さの定義について説明する。
図5(a)は、
図4(a)のブラシ30bとコミテータ24との接触領域におけるブラシ30bの摩耗部分の拡大図、
図5(b)は、
図4(a)のブラシ30bとコミテータ24との接触領域におけるコミテータ24の摩耗部分の拡大図である。
【0030】
図5(a)に示す摩耗深さd1は、ブラシ30bの摺動部において、火花等の発生で生じる摩耗が最も深い領域の値である。
図5(b)に示す摩耗深さd2は、コミテータ片24bの摺動部において、火花等の発生で生じる摩耗がコミテータの径方向において最も深い領域の値である。
【0031】
ブラシ30bの摩耗深さd1やコミテータ24の摩耗深さd2は、モータの構成やバリスタの特性に大きく依存することを本発明者らは見いだした。以下、試験結果に基づいて適切なバリスタの構成やモータの構成について説明する。
【0032】
図14は、静電容量が異なるバリスタを用いたモータについて所定の寿命試験を行った結果を示す図である。グループLのバリスタは、任意の隣り合う電極間の1MHz測定時の静電容量が2.5〜3.4nFのものであり、グループHのバリスタは、任意の隣り合う電極間の1MHz測定時の静電容量が7.5〜8.5nFのものである。静電容量の測定電圧は1Vrmsとした。また、測定には一般的なLCRメータを用いた。寿命試験は、自動車の電装部品の一つであるステアリングロックの動作を想定したモードで行った。
【0033】
試験条件は、各バリスタをDCモータに装着し、常温下で電圧を13Vにして負荷状態で通電する。負荷は約180g・cmとした。通電条件は、モータを一方向に回転させるようにし、0.2s通電、7.3s停止(停止時、ショートブレーキあり。)を連続して38000サイクルまで行った(モード1)。モード1において38000サイクルに達する前にブラシやコミテータの摩耗が許容量を超えた場合は、そこまでのサイクル数が寿命となる。
【0034】
モータの一方向の断続回転動作が38000サイクルまで達した場合、モータが他方向に回転するように通電条件を変更する。具体的には、常温下で電圧を14Vにして負荷状態で通電する。負荷は約21g・cmとした。この際の通電条件は、モータを他方向に回転させるようにし、0.3s通電、2.7s停止(停止時、ショートブレーキあり。)を連続して38000サイクルまで行った(モード2)。モード2において38000サイクルに達する前にブラシやコミテータの摩耗が許容量を超えた場合は、モード1でのサイクル数を含めたそれまでのサイクル数が寿命となる。
【0035】
そして、モード1及びモード2を交互に繰り返しながら、ブラシやコミテータの摩耗が許容量を超えるまで寿命試験を行った。その結果、
図14に示すように、1MHz測定時の静電容量が比較的低いグループL(静電容量が2.5〜3.4nF)のバリスタを用いたモータ(サンプル数N=3)では、サイクル数は、33000サイクル、33000サイクル、26000サイクルであった。一方、1MHz測定時の静電容量が比較的高いグループH(静電容量が7.5〜8.5nF)のバリスタを用いたモータ(サンプル数N=3)では、サイクル数は、152000サイクル、221000サイクル、165000であった。このような結果から、バリスタの1MHz測定時の静電容量の相違が、モータの寿命(ブラシやコミテータの摩耗寿命)に大きく影響を与えることが予想される。
【0036】
なお、この寿命試験で用いたモータは、コミテータの位置が中性(進角でも遅角でもない位置)で設定してある。
図15は、ブラシとコミテータとの位置関係が中性位置となっている状態を示す模式図である。
図15に示すように、ロータ16では、回転方向において、コミテータ24のスリット24dとコア20の磁極の位相とが同じになるように構成されている。つまり、このようなロータを備えるDCモータは、正転動作及び逆転動作での使用を想定して構成されていることになる。
【0037】
(摩耗試験1)
図6は、DCモータを摩耗試験した場合の負ブラシの摩耗深さとバリスタの静電容量との関係を示す図である。
図7は、DCモータを摩耗試験した場合のコミテータの摩耗深さとバリスタの静電容量との関係を示す図である。試験に用いたDCモータは、例えば、後述する
図13に示す構成であり、車両電装品(例えばステアリングロック機構)の駆動に用いられるものであり、停動電流Isが約2.6Aである。ここで、停動電流Isとは、回転中のモータの負荷を増加させて、モータの回転が停止した時の電流値である。
【0038】
摩耗試験は、以下の条件で行った。はじめに、E
10値が13〜18.4Vのバリスタを用意した。そして、各バリスタの任意の隣り合う電極間の静電容量を1MHzで測定し、静電容量に応じて7つのグループ(A〜G)に分けた。グループAは静電容量が2.5〜3.4nF(1MHz測定時、以下、適宜省略する。)のもの、グループBは静電容量が4.2〜4.8nFのもの、グループCは静電容量が5.1〜5.5nFのもの、グループDは静電容量が5.6〜6.1nFのもの、グループEは静電容量が6.6〜7.0nFのもの、グループFは静電容量が7.5〜8.0nFのもの、グループGは静電容量が8.0〜8.5nFのものである。静電容量の測定電圧は1Vrmsとした。また、測定には一般的なLCRメータを用いた。各グループでのサンプル数Nは3である。
【0039】
そして、各バリスタをDCモータに装着し、常温下で電圧を13Vにして負荷状態で通電する。負荷は約180g・cmとした。通電条件は、モータを一方向に回転させるようにし、0.2s通電、7.3s停止(停止時、ショートブレーキあり。)を20000サイクル行った。その際の負荷時の電流は、約1.9Aである。その後、各モータから負ブラシ30bとコミテータ24とを取り出し摩耗深さd1,d2を測定し、グループ毎にその範囲と平均値とを算出した。
【0040】
図6に示すように、負ブラシの摩耗深さd1は、グループA〜グループE(静電容量が7nF以下)のバリスタを用いたDCモータの場合において非常に大きく、75μm程度である。一方、静電容量が7nFを超えているグループF,G(静電容量が7.5nF以上)のバリスタを用いたDCモータでは、負ブラシの摩耗深さd1は、非常に小さくなっており、20〜25μm程度である。
【0041】
また、
図7に示すように、コミテータの摩耗深さd2は、グループA〜グループE(静電容量が7nF以下)のバリスタを用いたDCモータの場合において非常に大きく、70〜80μm程度である。一方、静電容量が7nFを超えているグループF,G(静電容量が7.5nF以上)のバリスタを用いたDCモータでは、コミテータの摩耗深さd2は、非常に小さくなっており、35〜40μm程度である。
【0042】
このように、E10値が一定の範囲のバリスタを用いたにもかかわらず、ブラシやコミテータ摩耗の程度が大きく異なる場合がある。つまり、ブラシやコミテータの摩耗は、E10値のみには余り依存しないことがわかる。
【0043】
つまり、E
10値が13〜18.4Vであり、静電容量が7.0nFより大きい(より好ましくは7.5nF以上)バリスタを用いたDCモータでは、コミテータ24や負ブラシ30bの火花摩耗が約1/2〜1/3まで低減されるため、モータの寿命が向上する。
【0044】
(摩耗試験2)
次に、摩耗試験1とは異なる試験条件である摩耗試験2の場合について説明する。
図8は、DCモータを電動シェーバーでの使用を想定して摩耗試験した場合の負ブラシの摩耗深さとバリスタの静電容量との関係を示す図である。
図9は、DCモータを電動シェーバーでの使用を想定して摩耗試験した場合のコミテータの摩耗深さとバリスタの静電容量との関係を示す図である。試験に用いたDCモータは、例えば、
図1に示す構成であり、停動電流Isが約7Aである。
【0045】
また、ここで用いたモータは、コミテータの位置が進角で設定してある。
図10は、ブラシとコミテータとの位置関係が進角位置となっている状態を示す模式図である。
図10に示すように、ロータ16では、回転方向において、コミテータ24のスリット24dがコア20の磁極の位相に対して角度θ進んだ位置となるように構成されている。つまり、このようなロータを備えるDCモータは、一方向での使用を想定して構成されていることになる。
【0046】
摩耗試験は、以下の条件で行った。はじめに、E
10値が1.5〜3.5V程度のバリスタを用意した。そして、各バリスタの任意の隣り合う電極間の静電容量を1MHzで測定し、静電容量に応じて4つのグループ(A’〜D’)に分けた。グループA’は静電容量が25nF程度のもの、グループB’は静電容量が17nF程度のもの、グループC’は静電容量が11nF程度のもの、グループD’は静電容量が6nF程度のものである。なお、グループE’はバリスタがない場合である。静電容量の測定電圧は1Vrmsとした。また、測定には一般的なLCRメータを用いた。各グループでのサンプル数Nは3である。
【0047】
そして、各バリスタ(グループA’〜D’)をDCモータに装着し、常温下で電圧を1.1Vにして負荷状態で通電する。負荷は約13gとした。通電条件は、モータを一方向に回転させるようにし、120s通電、2s停止(停止時、ショートブレーキなし。)を2200サイクル行った。その際の負荷時の電流は、約1.9Aである。その後、各モータから負ブラシ30bとコミテータ24とを取り出し摩耗深さd1,d2を測定し、グループ毎にその範囲と平均値とを算出した。
【0048】
図8に示すように、負ブラシの摩耗深さd1は、グループD’(静電容量が6nF程度)のバリスタを用いたDCモータの場合、あるいはバリスタを用いていない(グループE’)DCモータの場合において大きく、30μm程度である。一方、静電容量が6nFを超えているグループA’〜C’(静電容量が7.5nF以上、より好ましくは静電容量が11nF以上)のバリスタを用いたDCモータでは、負ブラシの摩耗深さd1は、小さくなっており、20μm程度である。
【0049】
また、
図9に示すように、コミテータの摩耗深さd2は、バリスタを用いていない(グループE’)DCモータの場合において非常に大きく、100μmを超えている。一方、静電容量が6nFを超えているグループA’〜D’(静電容量が6nF以上)のバリスタを用いたDCモータでは、コミテータの摩耗深さd2は、非常に小さくなっており、20μm程度である。
【0050】
つまり、E
10値が1.5〜3.5Vであり、静電容量が6.0nFより大きい(より好ましくは7.5nF以上)バリスタを用いたDCモータであって、正転動作または逆転動作のいずれかの回転方向のみでの使用を想定して構成されているものであっても、コミテータ24やブラシ30の火花摩耗が低減されるため、モータの寿命が向上する。
【0051】
(摩耗試験3)
次に、停動電流Isが異なる6種類のDCモータについて、それぞれ静電容量の異なるバリスタを用いて摩耗試験を行った。
図11は、停動電流Isの異なる6つのDCモータを摩耗試験した場合の負ブラシの摩耗深さとバリスタの静電容量との関係を示す図である。
図12は、停動電流Isの異なる6つのDCモータを摩耗試験した場合のコミテータの摩耗深さとバリスタの静電容量との関係を示す図である。試験に用いたDCモータは、例えば、後述する
図13に示す構成であり、車両電装品(例えばステアリングロック機構)の駆動に用いられるものである。
【0052】
モータM1は停動電流Isが1.5A、モータM2は停動電流Isが1.8A、モータM3は停動電流Isが2A、モータM4は停動電流Isが2.2A、モータM5は停動電流Isが2.4A、モータM6は停動電流Isが3Aのものである。それぞれのモータについて、任意の隣り合う電極間の1MHz測定時の静電容量の異なるグループL(静電容量2.5〜3.5nF)とグループH(静電容量7.5nF〜8.3nF)のバリスタを用いて摩耗試験を行った。静電容量の測定電圧は1Vrmsとした。また、測定には一般的なLCRメータを用いた。なお、各グループのバリスタを用いたモータのサンプル数Nは3である。
【0053】
摩耗試験は、以下の条件で行った。はじめに、E10値が13〜18.4Vのバリスタを用意し、各バリスタをDCモータに装着し、常温下で電圧を13Vにして負荷状態で通電する。通電条件は、モータを一方向に回転させるようにし、0.2s通電、7.3s停止(停止時、ショートブレーキあり。)を10000サイクル行った。その際の負荷時の電流は、約0.6Aである。その後、各モータから負ブラシ30bとコミテータ24とを取り出し摩耗深さd1,d2を測定し、グループ毎にその範囲と平均値とを算出した。
【0054】
図11に示すように、負ブラシの摩耗深さd1は、モータM1(Is=1.5A)やモータM2(Is=1.8A)においては、グループL、グループHのいずれのバリスタを用いても、摩耗深さに大きな違いは生じなかった。一方、モータM3〜モータM6(Is=2A〜3A)においては、グループLよりもグループHのバリスタを用いた方が、摩耗深さが減少している。特に、モータM6(Is=3A)においては、グループLよりもグループHのバリスタを用いた方が、摩耗深さの減少がより大きくなっている。
【0055】
また、
図12に示すように、コミテータの摩耗深さd2は、モータM1(Is=1.5A)やモータM2(Is=1.8A)においては、グループL、グループHのいずれのバリスタを用いても、摩耗深さに大きな違いは生じなかった。一方、モータM3〜モータM6(Is=2A〜3A)においては、グループLよりもグループHのバリスタを用いた方が、摩耗深さが減少している。特に、モータM6(Is=3A)においては、グループLよりもグループHのバリスタを用いた方が、摩耗深さの減少がより大きくなっている。
【0056】
このように、停動電流Isが1.5Aを超えるように構成されているDCモータ、より好ましくは、停動電流Isが2.0A以上となるように構成されているDCモータのように、高入力が想定される用途では、任意の隣り合う電極間の1MHz測定時の静電容量が7.5nF以上のバリスタを用いることで、火花摩耗低減の効果がより高まる。
【0057】
上述のように、停動電流Isが2A以上となるように構成され、金属ブラシが用いられているDCモータの場合、摩耗はE10値のみに依存せずに、任意の隣り合う電極間の1MHz測定時の静電容量(7.5nF以上)に依存することがわかる。
【0058】
次に、DCモータの変形例について説明する。
図13(a)は、本実施の形態の変形例に係るDCモータの一部破断面図、
図13(b)は、
図13(a)のR領域の拡大図である。
【0059】
図13(a)、
図13(b)に示すDCモータ110は、4極6溝モータである点が
図1に示すDCモータ10と大きく異なる。DCモータ110は、筒状のハウジング112の内壁にマグネット114が1個または複数個配置されている。マグネット114は、内側に磁極(N極及びS極)が位置するように配置されており、ハウジング112の内壁の周方向に沿ってN極とS極が交互に並んでいる。
【0060】
ハウジング112の中央部にはロータ116が配置されている。ロータ116は、シャフト118、コア120と、巻線122と、コミテータ(整流子)124と、バリスタ126とを備える。シャフト118は、軸受128a,128bを介して、ロータ116を支持する回転軸である。また、シャフト118は、出力軸としても機能する。
【0061】
コア120は、複数の鋼板が積層されたものであり、その中心にはシャフト118が貫通した状態で固定されている。巻線122は、コア120の溝120aに巻き回されており、電流が流れることで磁力を生じさせる。
【0062】
コミテータ124は、コア120と同様にシャフト118に固定されている。コミテータ124は、接触するブラシ130を通して通電される電流を巻線122に適切なタイミングで流す接点である。ブラシ130は、例えば、貴金属等を主成分とするフォーク状の金属ブラシである。また、ブラシ130の可撓部にはダンパ131が取り付けられている。なお、ブラシは、カーボンブラシの場合もありうる。一方、コミテータ124は、例えば、ブラシ130との摺動部が銀含有金属で構成されている。
【0063】
ブラシ130は、端子となるブラシベース132と接続された状態で、ブラシホルダ134に固定されている。ブラシホルダ134は、ハウジング112内に装着される。そして、エンドベル136でハウジング112の開口部が蓋をされる。
【0064】
バリスタ126は、コア120とコミテータ124との間に配置されており、コミテータ124とブラシ130との間での火花の発生を抑制し火花摩耗を低減する素子である。バリスタ126には、例えば、ディスク状のセラミックバリスタが用いられる。
【0065】
次に、バリスタの電極数およびコミテータ片の数と、バリスタの好適な静電容量との関係を説明する。例えば、
図1に示すDCモータ10においては、コミテータ片の数n
1が3、バリスタの電極数n
2が3である。
図16は、
図1に示すDCモータ10の回路構成の一例を示す図である。
図17(a)は、電極が3極のディスクバリスタの上面図、
図17(b)は、電極が6極のディスクバリスタの上面図である。
【0066】
図16では、
図17(a)に示す3極のディスクバリスタを用いた場合について説明する。なお、本実施の形態に係るディスクバリスタは、例えば、チタン酸ストロンチウムを主成分とするものである。チタン酸ストロンチウムは、誘電率が高いため、コンデンサ兼用バリスタとして用いられる。
【0067】
コミテータ24は、各コミテータ片24a,24b,24cの一部と、バリスタ26の各電極26a,26b,26cとが接続されている。各電極は、互いに隙間を設けて円弧状に形成されている。また、コミテータ24の他部と巻線22が接続されている。詳述すると、コミテータ片24aとコミテータ片24bとの間に巻線22aが接続されており、コミテータ片24bとコミテータ片24cとの間に巻線22bが接続されており、コミテータ片24cとコミテータ片24aとの間に巻線22cが接続されている。なお、
図17(a)に示すバリスタ26は、外径が10〜11mm程度、内径が6〜7mm程度である。また、バリスタ26の電極1つ当たりの面積は、約12.6mm
2である。
【0068】
図18は、
図13に示すDCモータ110の回路構成の一例を示す図である。
図18では、
図17(b)に示す6極のディスクバリスタを用いた場合について説明する。
【0069】
コミテータ124は、円筒を回転方向に6つに分割した円弧状のコミテータ片124a,124b,124c,124d,124e,124fを有する。また、巻線122は、コア120の6つのティースに巻き回された6つの巻線122a,122b,122c,122d,122e,122fを有する。また、バリスタ126は、互いの間に隙間が設けられている6つの円弧状の電極126a,126b,126c,126d,126e,126fを有する。
【0070】
コミテータ124は、各コミテータ片124a,124b,124c,124d,124e,124fの一部と、バリスタ126の各電極126a,126b,126c,126d,126e,126fとが接続されている。また、コミテータ124の他部と巻線22が接続されている。詳述すると、コミテータ片124aとコミテータ片124eとの間に巻線122a,122dが接続されており、コミテータ片124bとコミテータ片124fとの間に巻線122b,122eが接続されており、コミテータ片124cとコミテータ片124dとの間に巻線122c,122fが接続されている。なお、
図17(b)に示すバリスタ126は、外径が8.6mm±0.2mm程度、内径が4.9mm±0.1mm程度である。また、バリスタ126の電極1つ当たりの面積は、約6.3mm
2である。なお、バリスタの静電容量を高めるためには電極1つ当たりの面積を広くすればよいが、バリスタが大きくなってしまう。そこで、好ましくは、バリスタ126の電極1つ当たりの面積は、6.3mm
2以下であるとよい。
【0071】
図16や
図18に示すように、コミテータ片の数n
1とバリスタの電極数n
2とが同じ(N=(n
1/n
2)=1)DCモータの場合、前述したように、バリスタは、任意の隣り合う電極間の1MHz測定時の静電容量が7.0nFより大きい(より好ましくは7.5nF以上である)とよい。
【0072】
次に、コミテータ片の数n
1(6片)とバリスタの電極数n
2(3極)とが異なる場合について説明する。
図19は、
図13に示すDCモータ110の回路構成の変形例を示す図である。なお、バリスタが3極である以外は、
図18に示す回路と同じである。
【0073】
このように、コミテータ片の数n
1がバリスタの電極数n
2の整数倍(N=(n
1/n
2)=2)のDCモータの場合、バリスタは、任意の隣り合う電極間の1MHz測定時の静電容量が7.0nF×Nより大きい(より好ましくは7.5nF×N以上である)とよい。
【0074】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。