(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用者が把持するグリップ部を一体に有するグリップハウジングと、該グリップハウジングに対してそれぞれ相互に独立して打ち込み方向に変位可能に支持され、かつそれぞれ反打ち込み方向に付勢された工具本体部と打ち込みノーズ部と、該打ち込みノーズ部に案内される打ち込み具打撃用のドライバを備えた打ち込み工具であって、
前記ドライバの打ち込み方向への移動時に、前記打ち込みノーズ部が前記付勢力に抗して打ち込み方向に変位する打ち込み工具。
請求項4記載の打ち込み工具であって、前記グリップハウジングにピニオンギヤが設けられ、前記打ち込みノーズ部と前記工具本体部にそれぞれラックギヤ部が設けれ、該両ラックギヤ部間に前記ピニオンギヤを間に挟んだ状態で噛み合わせて前記打ち込みノーズ部と前記工具本体部が相互に逆方向に同時に変位する構成とした打ち込み工具。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
図1に、第1実施形態に係る打ち込み工具1の概要が示されている。第1実施形態の打ち込み工具1は、工具本体部10と、使用者が把持するグリップ部20と、多数の打ち込み具を装填するためのマガジン30を備えている。工具本体部10は、本体ハウジング11内に、駆動機構40と打撃機構45を内装した構成を備えている。駆動機構40は、打撃機構45を初期位置まで戻す機能を有している。
【0013】
駆動機構40は、駆動源としての電動モータ41と、いずれも平歯車である第1リフトアップギヤ42と第2リフトアップギヤ43を備えている。電動モータ41は、本体ハウジング11の後部に設けたモータハウジング12内に収容されている。電動モータ41の出力軸に取り付けた駆動ギヤ41aは、従動ギヤ42aに噛み合わされている。従動ギヤ42aは、第1リフトアップギヤ42の後面に一体かつ同軸に設けられている。第1リフトアップギヤ42は、その中心に第1軸42cを備えている。第1軸42cは、軸受け42bを介してその軸線周りに回転自在に支持されている。第1リフトアップギヤ42は、第1軸42cの軸線を中心にして本体ハウジング11に回転自在に支持されている。第1リフトアップギヤ42の前面には、第1リフトアップローラ42dが回転自在に取り付けられている。第1リフトアップローラ42dは、第1軸42cに対して偏心距離d1だけ偏心した位置に取り付けられている。
【0014】
第1リフトアップギヤ42は、第2リフトアップギヤ43に噛み合わされている。第2リフトアップギヤ43は、その中心に第2軸43cを備えている。第2軸43cは、軸受け43bを介してその軸線回りに回転自在に支持されている。第2リフトアップギヤ43は、第2軸43cの軸線を中心にして本体ハウジング11に回転自在に支持されている。第2リフトアップギヤ43の前面には、第2リフトアップローラ43dが回転自在に取り付けられている。第2リフトアップローラ43dは、第2軸43cに対して偏心距離d2だけ偏心した位置に取り付けられている。第1リフトアップローラ42dと第2リフトアップローラ43dは、同じ外径を有している。軸方向の長さについては、第1リフトアップローラ42dが第2リフトアップローラ43dよりも大きな寸法に設定されている。
【0015】
電動モータ41が起動すると、駆動ギヤ41aと従動ギヤ42aとの噛み合いを経て第1リフトアップギヤ42が第1軸42cの軸線を中心にして回転する。第1リフトアップギヤ42が回転することにより、第1リフトアップローラ42dが第1軸42cの軸線を中心として半径d1(偏心距離d1)で公転する。第1リフトアップギヤ42が回転することにより、第2リフトアップギヤ43が第2軸43cの軸線を中心にして、第1リフトアップギヤ42とは逆方向に回転する。第2リフトアップギヤ43が第2軸43cの軸線を中心にして回転することにより、第2リフトアップローラ43dが第2軸43cの軸線を中心にして半径d2(偏心距離d2)で公転する。
【0016】
第1リフトアップローラ42dと第2リフトアップローラ43dの位相はほぼ180°ずれている。このため、第1及び第2リフトアップギヤ42,43が相互に逆方向に回転することにより、第1リフトアップローラ42dと第2リフトアップローラ43dは、上下方向の位置について相互に逆方向へ変位する。両リフトアップローラ42d,43dの動作により、打撃機構45において打ち込み具打撃用のドライバ46が下降端位置から概ね(d1×2+d2×2)だけリフトアップされて上死点に戻される。打撃機構45は、上記ドライバ46とピストン47と第1圧縮ばね48を備えている。打撃機構45の詳細については後述する。
【0017】
本体ハウジング11の下部に、グリップハウジング21が結合されている。本体ハウジング11の下部は、グリップハウジング21の内周側に挿入されている。本体ハウジング11の下部には、2つの平板形状の基台部13,13が設けられている。両基台部13,13は一定の間隔をおいて相互に平行に張り出している。前側の基台部13の後面と後ろ側の基台部13の前面には、それぞれラックギヤ部13a,13bが設けられている。両ラックギヤ部13a,13bにはそれぞれピニオンギヤ14が噛み合わされている。
【0018】
グリップハウジング21は、打ち込み方向(
図1において上下方向)へ相対変位可能かつ軸回り(後述するドライバの軸周り)には相対回転不能な状態で本体ハウジング11に結合されている。グリップハウジング21にグリップ部20が一体に設けられている。グリップ部20の基部下面には、起動操作用のスイッチレバー23が設けられている。グリップ部20の先端には、電源としてのバッテリパック22が装着されている。
【0019】
グリップハウジング21には、打ち込みノーズ部25が上下に一定の範囲で移動可能に支持されている。打ち込みノーズ部25は、グリップハウジング21の下面から打ち込み方向へ突き出すドライバガイド26と、ドライバガイド26の上部に一体に形成された支持筒部27と、支持筒部27の上部に一体に設けられた作動筒部28を備えている。支持筒部27は、グリップハウジング21の下部内周側に挿通されている。支持筒部27は、グリップハウジング21に対して打ち込み方向に変位可能に支持されている。支持筒部27のフランジ部27aと、グリップハウジング21の開口部21aとの間に、第2圧縮ばね29が介装されている。この第2圧縮ばね29によって打ち込みノーズ部25が反打ち込み方向(
図1において上方)へ変位する方向に付勢されている。支持筒部27の内周側には、ピストン下動端での衝撃を緩和するための下限ダンパ19が取り付けられている。
【0020】
図5に示すように打ち込みノーズ部25の作動筒部28は、外面が矩形で内面が円形の筒形を有している。作動筒部28の内周孔は、ピストン47を上下に案内するシリンダの機能を有している。作動筒部28の前後両側部には、ラックギヤ部28a,28bが設けられている。両ラックギヤ部28a,28bは、それぞれ本体ハウジング11側のラックギヤ部13a,13bに対向している。前側のラックギヤ部13aと前側のラックギヤ部28aとの間、及び後ろ側のラックギヤ部13bと後ろ側のラックギヤ部28bとの間には、それぞれピニオンギヤ14が噛み合わされている。
図5に示すように両ピニオンギヤ14,14は、それぞれ支軸14aを介してグリップハウジング21に回転自在に支持されている。グリップハウジング21に設けたピニオンギヤ14,14が、それぞれ本体ハウジング11側のラックギヤ部13a,13bと打ち込みノーズ部25側のラックギヤ部28a,28bとの間に噛み合わされていることにより、グリップハウジング21に対して工具本体10と打ち込みノーズ部25が打ち込み方向若しくは反打ち込み方向について相互に逆方向で同じ距離だけ同時に移動する。打ち込みノーズ部25は、第2圧縮ばね29に抗して打ち込み方向に変位する。打ち込みノーズ部25は、工具本体部10が反打ち込み方向(上方)に変位する結果として打ち込み方向(下方)に変位する。
【0021】
作動筒部28の内周孔内には、ピストン47が上下に変位可能に収容されている。ピストン47の外径寸法は、作動筒部28の内周孔に対してがたつきなく上下にスムーズに変位可能な径に設定されている。このピストン47の下面中心に、打ち込み具打撃用のドライバ46が一体に設けられている。ドライバ46は、打ち込み方向に長く延びる細径の棒形状を有している。ドライバ46の先端側は、ドライバガイド26内に進入している。ドライバガイド26内に供給された1本の打ち込み具nが下動するドライバ46で打撃されることによりドライバガイド26の先端から射出されて打ち込み材Wに打ち込まれる。ドライバガイド26にはマガジン30が併設されている。マガジン30には多数の打ち込み具n〜nを装填しておくことができる。打ち込み動作に連動してマガジン30から打ち込み具nが1本ずつドライバガイド26内に供給される。
【0022】
ピストン47と、本体ハウジング11の天板部(上部)との間に、打撃力発生用の第1圧縮ばね48が介装されている。この第1圧縮ばね48の付勢力によりピストン47が下動して打ち込み具nがドライバ46で打撃される。また、第1圧縮ばね48の付勢力により工具本体10が反打ち込み方向に変位して、ピストン47の下動に伴う反動が吸収される。ピストン47には、作動板部47aが一体に設けられている。作動板部47aは、ピストン47の周縁に沿った断面円弧形状を有している。作動板部47aは、ピストン47の上面から上方へ長く延びている。作動板部47aの上部外面には、2つの係合板部47b,47cが一体に設けられている。両係合板部47b,47cは、それぞれ駆動機構40側に向けて張り出している。上側の第1係合板部47bは、下側の第2係合板部47cよりも小さな寸法で張り出している。また、両係合板部47b,47cは、上下方向及び左右方向(周方向)に一定の間隔をおいてずれている。このため、
図1に示すように上側の第1係合板部47bに対して第1リフトアップローラ42dは係合可能である一方、第2リフトアップローラ43dは係合しない。また、下側の第2係合板部47cに対して第1リフトアップローラ42dは係合しない一方、第2リフトアップローラ43dが係合可能となっている。
【0023】
ピストン47は第1圧縮ばね47の付勢力により下動して打ち込み動作がなされ、駆動機構40の動作によりピストン47が下降端位置から上昇端位置に戻される。駆動機構40の動作により第1及び第2リフトアップローラ42d,43dが公転中上昇する過程においてそれぞれ第1係合板部47b、第2係合板部47cに順次係合することによりピストン47が第1圧縮ばね48に抗して上昇し、最終的に
図1に示す初期位置に戻される。ピストン47が初期位置に戻されると電動モータ41が停止する。
図1に示す初期位置においてグリップ部20のスイッチレバー23を引き操作すると、
図2に示すように電動モータ41が起動して第1リフトアップローラ42dが第1係合板部47bから外れる。第1係合板部47bから第1リフトアップローラ42dが外れることにより、ピストン47が第1圧縮ばね48の付勢力により下動して打ち込み動作がなされる。打ち込み機構45の打ち込み動作中、駆動機構40が引き続き動作する。
【0024】
図3に示すようにピストン47が下動端に至って打ち込みが完了した段階で、先ず第2リフトアップローラ43dが第2係合板部47cの下面に係合される。この係合状態のまま引き続き駆動機構40が動作して第2リフトアップローラ43dが上昇することにより、ピストン47が第2圧縮ばね48に抗して下降端位置から押し上げられる。引き続き駆動機構40が動作して第2係合板部47cに対する第2リフトアップローラ43dの係合状態から第1係合板部47bに対する第1リフトアップローラ42dの係合状態に移行することにより、ピストン47が第1圧縮ばね48に抗してさらに上昇して初期位置まで戻される。
【0025】
以上のように構成した本実施形態の打ち込み工具1によれば、
図1に示す初期状態において、グリップ部20を把持した手の指先でスイッチレバー23を引き操作すると電動モータ41が起動して打ち込み動作がなされる。電動モータ41が起動すると、
図2に示すように第1リフトアップローラ42dが第1係合板部47bから外れて、ピストン47が第1圧縮ばね48の付勢力により
図2中白抜き矢印(A)で示すように下動し始める。また、この時点で工具本体部10が第1圧縮ばね48の付勢力により
図2,3中白抜き矢印(C)で示すようにグリップハウジング21に対して反打ち込み方向に変位する。
図2に示すピストン下動開始時点から
図3に示す打ち込み完了までの間において、ピストン47の下動により発生する反動が、先ず工具本体部10が第1圧縮ばね48の付勢力により反打ち込み方向に変位することによって吸収され、これによりグリップ部20及びグリップハウジング21の反打ち込み方向への変位が抑制される。
【0026】
また、ピストン47が下降端に至って打ち込み具nが打ち込み材Wに打ち込まれる段階で発生する反動によってもグリップ部20及びグリップハウジング21が
図2,3中白抜き矢印(B)で示すように反打ち込み方向へ変位する。しかし、打ち込みノーズ部25と工具本体部10との間には、ピニオンギヤ14,14のラックギヤ部28a,28bに対する噛み合いが介在されている。このため、上記したようにピストン下動時に工具本体部10がグリップハウジング21に対して相対的に反打ち込み方向に変位すると、ピニオンギヤ14,14のラックギヤ部13a,13aに対する噛み合い位置が変化する結果、当該ピニオンギヤ14,14が回転する。ピニオンギヤ14,14の回転によりラックギヤ部28a,28aの噛み合い位置が変化することから、結果として打ち込みノーズ部25が第2圧縮ばね29に抗して打ち込み方向に変位する
【0027】
このように、ピストン下動時に工具本体部10が反打ち込み方向(白抜き矢印(C)方向)に変位する結果として、打ち込みノーズ部25がグリップハウジング21に対して打ち込み方向に変位する。このことから、打ち込み時の反動によりグリップ部20及びグリップハウジング21が反打ち込み方向(矢印(B)方向)に変位しても、打ち込みノーズ部25の先端部(射出口)は打ち込み材Wに当接された状態に維持される。ピストン下動時及び打ち込み時の反動によりグリップ部20が反打ち込み方向に変位しても、打ち込みノーズ部25の射出口が打ち込み材Wに当接した状態に維持されることから、打ち込み材Wに対する打ち込み具nの打ち込み位置が変化することがなく、正確な打ち込みを実現することができる。
【0028】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、グリップハウジング21に対して打ち込みノーズ部25を相対的に打ち込み方向に変位させ、かつ工具本体部10を反打ち込み方向に変位させて打ち込み時の反動を低減若しくは吸収する構成を例示したが、いずれか一方のみを変位可能とし他方についてはグリップハウジングに対して変位しない構成としてもよい。グリップハウジングに対して打ち込みノーズ部25のみが相対的に打ち込み方向に変位する構成若しくは工具本体部10のみが反打ち込み方向に変位する構成によっても打ち込み時の反動を低減若しくは吸収することができる。
【0029】
また、充電可能なバッテリパック22を電源とする充電式の打ち込み工具1を例示したが、交流電源を電源とする打ち込み工具について例示した反動低減機構を適用することができる。さらに、電動モータ41を駆動源とする電動式の打ち込み工具1を例示したが、圧縮エアを駆動源とする打ち込み工具について同様の構成を適用することにより、同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
図6及び
図7には、第2実施形態に係る反動低減機構70を備えた電動式の打ち込み工具50が示されている。この打ち込み工具50は、工具本体部51と、使用者が把持するループ形のグリップ部52と、打ち込み具が打ち出される打ち込みノーズ部53と、多数の打ち込み具を収容可能なマガジン54を備えている。第1実施形態とは異なって第2実施形態では、グリップ部52に対して工具本体部51及び打ち込みノーズ部53は固定されている。工具本体部51には、駆動機構60と打撃機構65と反動低減機構70が収容されている。グリップ部52の内周側には、使用者が把持した手の指先で引き操作するスイッチレバー52aが設けられている。グリップ部52の後部に、電源としてのバッテリパック55が装着されている。バッテリパック55は取り外して別途用意した充電器で充電することにより繰り返し使用可能な二次電池であり、本実施形態ではスライド取り付け形式のリチウムイオンバッテリが用いられている。
【0031】
駆動機構60は、駆動源として電動モータ56と2つのリフトアップギヤ57,59を備えている。電動モータ56は、工具本体部51の下部に収容されている。電動モータ56により、第1リフトアップギヤ57が回転する。第1リフトアップギヤ57には中間ギヤ58を介して第2リフトアップギヤ59が噛み合わされている。第1リフトアップギヤ57と第2リフトアップギヤ59は相互に同じ方向に回転する。第1リフトアップギヤ57と第2リフトアップギヤ59は打ち込み方向(上下方向)に沿って配置されている。第1リフトアップギヤ57の回転中心と第2リフトアップギヤ59の回転中心は、打ち込み軸線J上に位置している。第1リフトアップギヤ57と第2リフトアップギヤ59には、それぞれ1つのリフトアップローラが取り付けられている。
図6では、第1リフトアップギヤ57の第1リフトアップローラ57aのみが見えており、第2リフトアップギヤ59の第2リフトアップローラ59aは見えていない(
図8参照)。
【0032】
駆動機構60の前方に打撃機構65と反動低減機構70が左右に並列状態で収容されている。
図6及び
図7において左側(使用者から見て右側)に打撃機構65が収容され、右側(使用者から見て左側)に反動低減機構70が収容されている。打撃機構65は、第1支持バー66と第1圧縮ばね67と第1作動ベース68を有している。反動低減機構70は、第2支持バー71と第2圧縮ばね72と第2作動ベース73を有している。第1及び第2支持バー66,71は、工具本体51の本体ハウジング51aの下部と上部に固定して設けた下ブラケット51bと上ブラケット51cとの間に掛け渡された状態で固定されている。両支持バー66,71は相互に平行に支持されている。
【0033】
第1支持バー66に第1作動ベース68が上下に平行移動可能に支持されている。第2支持バー71に第2作動ベース73が上下に平行移動可能に支持されている。第1作動ベース68と上ブラケット51cとの間に第1圧縮ばね67が介装されている。この第1圧縮ばね67によって第1作動ベース68は打ち込み方向(下向き)に付勢されている。第1支持バー66の下部には、ウレタンゴム製の下限ダンパー66aが取り付けられている。この下限ダンパー66aによって第1作動ベース68が下降端に至った際の衝撃が吸収される。第2作動ベース73と下ブラケット51bとの間に第2圧縮ばね72が介装されている。この第2圧縮ばね72によって第2作動ベース73が反打ち込み方向(上向き)に付勢されている。
【0034】
第1圧縮ばね67の線径は、第2圧縮ばね72よりも太い素材が用いられている。このため、第1圧縮ばね67の付勢力(ドライバ69の打撃力)は、第2圧縮ばね72の付勢力よりも大きく設定されている。第2支持バー71の上部には、ウレタンゴム製の上限ダンパー71aが取り付けられている。この上限ダンパー71aによて第2作動ベース73が上昇端に至った際の衝撃が吸収される。
【0035】
第1作動ベース68に打ち込み具nを打撃するためのドライバ69が取り付けられている。ドライバ69は、打ち込みノーズ部53のガイド孔内に進入している。ドライバ69が上下に移動する経路が打ち込み軸線Jとなる。マガジン54からガイド孔内に供給された1本の打ち込み具がドライバ69で打撃されて、当該打ち込みノーズ部53の先端(射出口53a)から打ち出される。
【0036】
第1作動ベース68と第2作動ベース73には、それぞれ2つの係合縁部が設けられてる。
図6では、第1作動ベース68の係合縁部68a,68bのみが見えており、第2作動ベース73の係合縁部73a,73b(
図8参照)は見えていない。
図8には、駆動機構60による打撃機構65と反動低減機構70の作動状態が示されている。
図8では、駆動機構60として第1及び第2リフトアップギヤ57,59のみが示され、打撃機構65として第1作動ベース68及びその係合縁部68a,68bのみが示され、反動低減機構65として第2作動ベース73及びその係合縁部73a,73bのみが示されている。
【0037】
前記したように第1リフトアップギヤ57と第2リフトアップギヤ59は中間ギア58を介して同じ方向に回転する。本実施形態では
図8中矢印で示すようにそれぞれ時計回り方向に回転する。
図8中(A)は、
図6に示す初期状態に対応しており、ドライバ69が第1圧縮ばね67の付勢力により下降端に至った時点の状態であり、かつ第2作動ベース73が第2圧縮ばね72の付勢力により上動端位置に至った時点の状態を示している。
【0038】
図6に示す初期状態において、スイッチレバー52aの引き操作により電動モータ56が起動すると、第1及び第2リフトアップギヤ57,59が
図8中時計回り方向に回転する。第1リフトアップギヤ57が時計回り方向に回転すると、第1リフトアップローラ57aによって係合縁部68aが押し上げられることにより、第1作動ベース68が第1圧縮ばね67に抗して上動し、従ってドライバ69が上方へ戻される。一方、第2リフトアップギヤ59が時計回り方向に回転すると、第2リフトアップローラ59aによって係合縁部73bが押し下げられることにより、第2作動ベース59が第2圧縮ばね72に抗して下方へ押し下げられる。
【0039】
図8中(B)で示すように第1及び第2リフトアップギヤ57,59が引き続き時計回り方向に回転することにより第1作動ベース68が第1圧縮ばね67に抗して上動する一方、第2作動ベース73が第2圧縮ばね72に抗して下動する。
図8中(C)に示す段階を経て(D)に示す段階に至ると、第1リフトアップローラ57aが第1作動ベース68の下側の係合縁部68aの下面から第2作動ベース73の下側の係合縁部73aの上面に移行する。これと同時に、第2リフトアップローラ59aが第2作動ベース73の上側の係合縁部73bの上面から第1作動ベース68の上側の係合縁部68bの下面に移行する。これにより、引き続き第1作動ベース68が第2リフトアップローラ59aにより押し上げられてドライバ69が上方へ戻される一方、第2作動ベース73が第1リフトアップローラ57aにより押し下げられる。
【0040】
引き続き第1リフトアップギヤ57及び第2リフトアップギヤ59が時計回り方向に回転することにより、
図8中(E)に示すように第1作動ベース68が第2リフトアップローラ59aにより上昇端位置まで押し上げられる一方、第2作動ベース73が第1リフトアップローラ57aにより下降端まで押し下げられる。
図8中(E)に示す段階では、第2リフトアップローラ59aが第1作動ベース68の上側の係合縁部68bの下面から外れる直前であり、かつ第1リフトアップローラ57aが第2作動ベース73の下側の係合縁部73aの上面から外れる直前の状態となっている。このため、その後第1リフトアップギヤ57及び第2リフトアップギヤ59が時計回り方向にさらに回転すると、
図8中(F)に示すように第1リフトアップローラ57aが第2作動ベース73の下側の係合縁部73aの上面から外れ、同時に第2リフトアップローラ59aが第1作動ベース68の上側の係合縁部68bの下面から外れる。第1リフトアップローラ57aが第2作動ベース73の係合縁部73aから外れることにより、当該第2作動ベース73が第2圧縮ばね72の付勢力により上方へ移動する。これと同時に、第2リフトアップローラ59aが第1作動ベース68の係合縁部68bの下面から外れることにより、第1作動ベース68が第1圧縮ばね67の付勢力により下方へ移動し、これによりドライバ69が下動して打ち込みノーズ部53内の打ち込み具が打撃されて射出口53aから打ち出される。
【0041】
こうして第1作動ベース68が下動してその下側の係合縁部68aの下面に第1リフトアップローラ57aが当接して当該第1作動ベース68が下降端に至って
図8中(A)に示す初期位置に戻される。また、第2作動ベース73が上動してその上側の係合縁部73bの上面に第2リフトアップローラ59aが当接して当該第2作動ベース73が上動端に至って(A)に示す初期位置に戻される。以上で、当該打ち込み工具1の一連の打ち込み動作が完了する。
【0042】
以上のように構成した第2実施形態に係る打ち込み工具50によれば、第1作動ベース68が下動して打ち込みがなされる段階で、第2作動ベース73がほぼ同じ距離だけ逆方向に上動する。このことから、ドライバ69による打ち込み具の打ち込み動作により発生する反動が第2作動ベース73が第2圧縮ばね72の付勢力により上動することにより吸収され、若しくは低減される。
【0043】
このように第2実施形態の打ち込み工具50によれば、従来の動滑車機構により反動を低減する構成に代えて、第2圧縮ばね72の付勢力により第2作動ベース73を反打ち込み方向に変位させることにより打ち込み時の反動を低減する構成とした反動低減部70を備えることから、当該反動低減機構70ひいては当該打ち込み工具50の耐久性を高めることができる。
【0044】
さらに、打撃機構65と反動低減機構70が打ち込み軸線Jに対してほぼ左右対称となる位置に配置されていることから、当該打ち込み工具50の打ち込み時における左右の動的バランスを適正にとることができる。
【0045】
以上説明した第2実施形態についても種々変更を加えることができる。例えば、充電可能なバッテリパック55(二次電池)を電源とする充電式の打ち込み工具50を例示したが、交流電源を電源とする打ち込み工具についても例示した反動低減機構70を適用することにより同様の作用効果を得ることができる。また、電動モータを駆動源とする電動式の打ち込み工具に限らず、圧縮エアを駆動源とする打ち込み工具についても同様の適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…打ち込み工具(第1実施形態)
n…打ち込み具
10…工具本体部
11…本体ハウジング
12…モータハウジング
13…基台部、13a,13b…ラックギヤ部
14…ピニオンギヤ
19…下限ダンパ
20…グリップ部
21…グリップハウジング、21a…開口部
22…バッテリパック
23…スイッチレバー
25…打ち込みノーズ部
26…ドライバガイド
27…支持筒部、27a…フランジ部
28…作動筒部、28a,28b…ラックギヤ部
29…第2圧縮ばね
30…マガジン
40…駆動機構
41…電動モータ、41a…駆動ギヤ
42…第1リフトアップギヤ
42a…従動ギヤ、42b…軸受け、42c…第1軸、42d…第1リフトアップローラ
d1…第1リフトアップローラの偏心距離
43…第2リフトアップギヤ
43b…軸受け、43c…第2軸、43d…第2リフトアップローラ
d2…第2リフトアップローラの偏心距離
45…打撃機構
46…ドライバ
47…ピストン
47a…作動板部、47b…第1係合板部、47c…第2係合板部
48…第1圧縮ばね
50…打ち込み工具(第2実施形態)
51…工具本体部
51a…本体ハウジング、51b…下ブラケット、51c…上ブラケット
52…グリップ部、52a…スイッチレバー
53…打ち込みノーズ部、53a…射出口
54…マガジン
55…バッテリパック
56…電動モータ
57…第1リフトアップギヤ、57a…第1リフトアップローラ
58…中間ギヤ
59…第2リフトアップギヤ、59a…第2リフトアップローラ
60…駆動機構
65…打撃機構
66…第1支持バー、66a…下限ダンパー
67…第1圧縮ばね
68…第1作動ベース
68a…係合縁部(下側)、68b…係合縁部(下側)
69…ドライバ
J…打ち込み軸線
70…反動低減機構
71…第2支持バー、71a…上限ダンパー
72…第2圧縮ばね
73…第2作動ベース
73a…係合縁部(下側)、73b…係合縁部(上側)